特許第5969642号(P5969642)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969642
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】複合鋳造工具
(51)【国際特許分類】
   B22D 19/00 20060101AFI20160804BHJP
   B22D 19/06 20060101ALI20160804BHJP
   B22D 19/16 20060101ALI20160804BHJP
   B22C 9/08 20060101ALN20160804BHJP
【FI】
   B22D19/00 X
   B22D19/00 G
   B22D19/06 Z
   B22D19/16 Z
   !B22C9/08 B
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-41511(P2015-41511)
(22)【出願日】2015年3月3日
(62)【分割の表示】特願2010-549604(P2010-549604)の分割
【原出願日】2009年3月5日
(65)【公開番号】特開2015-110252(P2015-110252A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】0800521-7
(32)【優先日】2008年3月6日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】512296508
【氏名又は名称】フェルクティグス アリアンス イー ヘスレホルム アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】スヴェンソン、スリステル
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン、トマス
【審査官】 川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−071050(JP,A)
【文献】 特開昭57−025276(JP,A)
【文献】 特開昭59−007001(JP,A)
【文献】 特開平03−189065(JP,A)
【文献】 特開2004−255424(JP,A)
【文献】 特開昭49−049830(JP,A)
【文献】 米国特許第05000244(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 19/00,19/06,19/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼鉄からなりかつ工具の加工部材を含む2以上の第1部分(10)と、ねずみ鋳鉄からなりかつ工具の基部をなす本体部材を含む1つの第2部分(11)と、を有し、該鋼鉄第1部分と該ねずみ鋳鉄第2部分との間の2以上の結合領域を介して、1つの連続鋳造体を構成する複合鋳造工具であって、
第2部分(11)は本体部材から該加工部材の方向に延在する2以上の第2の壁状突起部分(9)を含み、
第1部分(10)は該本体部材の方向に延在する第1の壁状突起部分(8)を各々含み、
第2の壁状突起部分の各々はその上端面において、対応する第1の壁状突起部分と互いに平面状の結合領域(7)で結合されており、
前記結合領域(7)は第2の壁状突起部分の上端面において各別に形成され、
すべての該結合領域が同一の平面上に配されていることを特徴とする、複合鋳造工具。
【請求項2】
前記結合領域(7)を介して結合するそれぞれの前記第1、第2の壁状突起部分(8,9)は、該結合領域の範囲において、互いに同じ断面形状及び断面面積を有する、ことを特徴とする、請求項1に記載の複合鋳造工具。
【請求項3】
前記第1部分(10)の前記第1の壁状突起部分(8)は、前記結合領域(7)から離れるにつれて、次第に断面積が減少することを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合鋳造工具。
【請求項4】
前記第1、第2の壁状突起部分(8,9)は、前記結合領域(7)において、前記第1、第2の壁状突起部分(8,9)の全長にわたり、同じ厚さを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の複合鋳造工具。
【請求項5】
前記第1の壁状突起部分(8)の高さが最も低い箇所であっても、その箇所の高さが前記結合領域(7)における前記第1の壁状突起部分(8)の厚さよりも大きいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の複合鋳造工具。
【請求項6】
前記第2の壁状突起部分(9)の高さは、前記結合領域における前記第2の壁状突起部分(9)の厚さよりも大きいことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の複合鋳造工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼鉄からなりかつ工具の加工部材を含む、1以上の第1部分と、ねずみ鋳鉄からなりかつ工具の本体部材を含む、1つの第2部分とを有し、該鋼鉄と該ねずみ鋳鉄との間に少なくとも1つの結合領域がある、1つの連続体を構成するよう鋳造された複合鋳造工具に関する。
【背景技術】
【0002】
板状の金属を、例えば切断、穴あけ、曲げあるいは他の形状に加工するための工具を製造する場合、これまで長い間、工具の本体部材だけをねずみ鋳鉄で単独で鋳造することが行われてきた。そしてこの本体部材に、例えば鋼鉄製のカッターのような加工部材をいくつか取り付けていた。
【0003】
鋳造により製造されるこの本体部材は、鋳造工程後にしばしば熱処理が必要となり、次いで、鋼鉄製カッターを取り付け、またその工具を別の装置に取り付けるために必要な台座、ガイドシャフト、ボルト穴等を機械加工する。
【0004】
加工部材の製造にあたっては、例えば鋼鉄製カッターは、出発点は棒状の材料であり、これを正確な形状に加工し、固定ボルト、ガイドシャフト等の穴を開け、次いで熱処理をしてさらに研磨等の機械処理をする。
【0005】
上記のような手順で工具を製造することは非常に時間がかかり、これはしばしば異なる製品を製造するために必要な時間の大部分を占めることになる。
【0006】
WO03/041895A1には、複合鋳造工具とその製造方法が開示されている。この文献によれば、この工具は単一の鋳型による鋳造品であり、溶解した鋼鉄と溶解したねずみ鋳鉄とを流し込む(鋳込む)ものである。これらの材料を流し込むときに、境界面ないし結合領域が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO03/041895A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記文献による技術では、上記境界面ないし結合領域の位置決めと形成に関して大きな問題が生じる。これは結合領域の内部と周囲の機械的強度に悪影響を与える。
【0009】
さらに、上記技術では、結合領域全体にわたって温度を精度良くコントロールすることができない。そのため、大きな温度変化が生じ、それにより結合領域の機械的強度の問題が生じる。
【0010】
本発明の目的は、上記技術分野の工具に関し、鋼鉄とねずみ鋳鉄との境界面ないし結合領域を精度よく位置決めできる工具を提供することである。本発明のさらなる目的は、結合領域の温度を良好に制御できる工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、上記技術分野の工具であって、次のような特徴を有する工具により達成される。即ち、上記第1部分は上記本体部材の方向に延在する1以上の突起ないし壁を含み、上記第2部分は上記加工部材の方向に延在する1以上の突起ないし壁を含み、上記第1部分の突起ないし壁と上記第2部分の対応する突起ないし壁とは、互いに上記結合領域で結合されており、上記結合領域は実質的に平面である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明を以下の添付図面を参照しつつ、詳細に説明する。
図1】本発明の一実施例に係る工具の製造鋳型の断面図である。
図2】本発明の一実施例に係る工具の、製造時の方向の逆方向から見た斜視図である。
図3図2に示す工具のうち、鋼鉄で製造される加工部材をすべて省略した部材である。
図4】本発明の一実施例に係る工具の、結合領域付近の断面図である。
図5】本発明の他の実施例に係る工具の、結合領域付近の断面図である。
図6】本発明のさらに別の実施例に係る工具の、結合領域付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施例に係る工具の鋳造用鋳型の概略断面図である。この鋳型には、第1の型空洞部(キャビティセクション)1と第2の型空洞部2とがある。第1の型空洞部1は、鋼鉄を鋳造するための部分であり、第2の型空洞部2はねずみ鋳鉄を鋳造するための部分である。符号3は鋳型枠を示し、符号4は鋳型枠の中の鋳型砂を示す。鋳型には鋼鉄用の湯口5と、ねずみ鋳鉄用の湯口6とがある。鋼鉄用湯口システム(湯道)は、少なくとも一部が第1の型空洞部1の下部位置まで延在している(湯道の延在部分は図示省略)。したがって、鋼鉄は底部から上に向かって鋳込みされる。二つの型空洞部1と2との間には、鋼鉄とねずみ鋳鉄との結合領域の位置となるべき分割面7がある。分割面7は平面状であり、鋳型の鋳込み位置において水平に配置されている。本発明を正しく実施すれば、この結合領域は約1〜2.5mmの厚さを有する。
【0014】
第1の型空洞部1(単数又は複数)において鋼鉄で鋳造される工具の部材10(単数又は複数)は、工具の加工部材(単数又は複数)を構成するものであり、第2の型空洞部2においてねずみ鋳鉄で鋳造される工具の部材11は、工具の本体部材を構成するものである。工具の加工部材の数は、1つの場合もあるし、かなり多数にのぼる場合もある。
【0015】
第1の型空洞部1で鋳造される鋼鉄部材10は、(ねずみ鋳鉄で鋳造された)本体部材に向って上方に延在する1以上の突起ないし壁8を含む。それに対応するように、ねずみ鋳鉄で鋳造された第2の部材11は、加工部材又はその加工部材(複数)に向かって下方に延在する1つの突起ないし壁9を有する。これらの突起ないし壁8,9の、分割面7の領域における幅ないし厚さは、突起ないし壁の全長にわたって同じである必要があり、その現実的な1例としては50mmから150mm程度の範囲である。壁8、9の厚さの大きな、あるいは急激な変化は、分割面7の近傍では避ける必要がある。もしも1つの工具において複数の突起ないし壁が用いられる場合は、すべての厚さを実質的に同じにする必要がある。壁8、9の高さは、幅ないし厚さと同程度又はそれより大きくする必要がある。しかし30〜40mm[sic, mm]以上でなければならない。
【0016】
図2、3は図1と比べて上下逆である。即ち、図2、3における上面は図1では下を向いている。
【0017】
図2は、鋼鉄製の8個の第1部分10と、ねずみ鋳鉄製の1つの第2部分11とからなる工具の斜視図である。図2では、鋼鉄製の第1部分10は最下部に、即ち第2部分11に向いた方向に突起ないし壁8を有することがわかる。それに対応して、第2部分11には、第1部分10と同じように、上方に向いた、即ち鋼鉄製の第1部分に向いた壁ないし突起9があることがわかる。2つの材料部材の間にある結合領域の仮想的な位置を分割面7で示している。
【0018】
図3図2に対応するものであるが、鋼鉄製の第1部分10をすべて省略したものである。そのため、第2部分11の、加工部材に向かって延在する壁ないし突起9の構成がより明確になっている。さらに、分割面7が平面状であること、及び壁9が基本的にその長さ全体にわたって同じ厚さであることもわかる。
【0019】
図3から、第2部分11の壁9が、工具の少なくとも一部である、よりずっと広い断面積を持つ、符号12で示される領域に合流していることもわかるであろう。しかしこの移行領域12の位置は、結合領域、即ち分割面7の想定位置から安全な距離(約40mm[sic, mm]未満)を有している。
【0020】
上述のとおり、鋼鉄は第1の型空洞部1の底部から鋳込まれる。この鋼鉄の鋳込みは、鋼鉄の上部表面が分割面7の位置に来たときに終了する。その後鋳込みプロセスは一時休止する。この休止期間中、第1部分10の温度は、図1でのもっとも低い位置に示す部分が最も早く低下し、分割平面7の部分が最も遅く低下する。鋼鉄製の第1部分10の温度が、分割平面7の位置において鋼鉄の液相線温度から凡そマイナス30〜150℃の範囲である第1のレベル(最も典型的には1440〜1330℃である)に到達した時点ではじめて、ねずみ鋳鉄の鋳込みを、ねずみ鋳鉄の液相線温度よりプラス100〜150℃である第2の温度レベル(例えば1320℃)で行う。
【0021】
本発明によれば、鋼鉄製の第1部分10の分割面での温度が、分割面の表面全体にわたってできるだけ均一であることが重要である。壁8、9の厚さを均一に構成する理由はこのためである。
【0022】
図4は、分割面7の領域における工具の部分断面図である。鋼鉄製の第1部分10は、図示の例では、図の下端部に切断刃13を形成している。
【0023】
鋼鉄製の第1部分10の分割面7が時間的にもっとも遅く温度低下することを確実にするため、鋼鉄製の第1部分10は、分割面7から離れるにしたがって少しずつ厚さが小さくなっている。このことは図において、下から上に行くほど大きさが大きくなる円を複数追記することで示されている。この形状は鋼鉄製部分の温度低下を制御するのに好ましいが、また分割面7が沈下する可能性もある。
【0024】
図5は2つの切断刃13を有する2連切断工具の変形実施例である。この実施例においても、鋼鉄製の第1部分10の厚さは、追記した円で示すように、分割面7から離れるにしたがって小さくなり、切断刃13の領域で最も小さくなっている。
【0025】
図6は、鋼鉄製の第1部分10は2つの切断刃13と、ねずみ鋳鉄製の第2部分11に向かう2つの壁8を持つ変形実施例である。この実施例においても、鋼鉄製の第1部分10の厚さは、分割面7から離れるにしたがって小さくなり、最も遠いところで最も小さくなっている。この関係は鋼鉄製の第1部分10に追記された円でわかるとおりである。
【0026】
この鋼鉄製の第1部分10が分割面(結合領域を意図したもの)より下方で有するこの下向きくさび形状は、図4〜6には明示されていないが、5〜30°の範囲(のくさび角)である。
【0027】
なお、本発明は、以下の好ましい実施形態も含む。
第1の視点において、鋼鉄からなりかつ工具の加工部材を含む、1以上の第1部分と、ねずみ鋳鉄からなりかつ工具の本体部材を含む、1つの第2部分とを有し、該鋼鉄と該ねずみ鋳鉄との間に少なくとも1つの結合領域がある、1つの連続体を構成する鋳造の複合鋳造工具であって、該第1部分は該本体部材の方向に延在する1以上の突起ないし壁を含み、該第2部分は該加工部材の方向に延在する1以上の突起ないし壁を含み、該第1部分の突起ないし壁と該第2部分の対応する突起ないし壁とは、互いに該結合領域で結合されており、該結合領域は実質的に平面であること、を特徴とする、複合鋳造工具が提供される。
上記の複合鋳造工具において、結合領域で結合するそれぞれの突起ないし壁は、該結合領域の範囲において、実質的に同じ断面形状及び断面面積を有することが好ましい。
また、上記の複合鋳造工具において、第1部分の前記突起ないし壁は、結合領域から離れるにつれて、次第に断面積が減少することが好ましい。
また、上記の複合鋳造工具において、結合領域は、突起ないし壁の全長にわたり、実質的に同じ幅を有することが好ましい。
また、上記の複合鋳造工具において、第1部分の前記突起ないし壁の最も低い高さが、結合領域の幅よりも大きいことが好ましい。
また、上記の複合鋳造工具において、第2部分の突起ないし壁の高さは、結合領域のおよその幅よりも大きいことが好ましい。
また、上記の複合鋳造工具において、2以上の第1部分と、2以上の結合領域を含み、すべての該結合領域が同一の平面上に配されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0028】
1 第1の型空洞部
2 第2の型空洞部
3 鋳型枠
4 鋳型砂
5 鋼鉄用湯口
6 ねずみ鋳鉄用湯口
7 分割面
8 突起ないし壁
9 突起ないし壁
10 第1部分
11 第2部分
12 移行領域
13 切断刃
図1
図2
図3
図4
図5
図6