特許第5969651号(P5969651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5969651
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】風車翼
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/00 20160101AFI20160804BHJP
   F03D 3/06 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   F03D11/00 A
   F03D3/06 G
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-86525(P2015-86525)
(22)【出願日】2015年4月21日
【審査請求日】2015年4月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】711007781
【氏名又は名称】中島 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 紳一郎
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−169292(JP,A)
【文献】 特開2006−118384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/00
F03D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風を受けて揚力を発生し、主翼部が縦長に形成され、翼端に傾斜部が設けられた風車翼であって、前記傾斜部の外側面の形状は、前記傾斜部の基底部に於ける外側形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して形成され、前記傾斜部の内側面の形状は、前記傾斜部の基底部に於ける内側形状を、前記傾斜部の外側形状の曲率よりもなる曲率の曲線に沿って延出して形成されると共に、前記傾斜部の側面外郭形状は、前記傾斜部の外側の形成面と、前記傾斜部の内側の形成面とが交差して成る交差線で形成されることを特徴とする風車翼。
【請求項2】
風を受けて揚力を発生し、主翼部が縦長に形成され、翼端に傾斜部が設けられた風車翼であって、前記傾斜部の外側面の形状は、前記傾斜部の基底部に於ける外側形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して形成され、前記傾斜部の内側面の形状は、前記傾斜部の基底部に於ける内側形状を、直線に沿って延出して形成されると共に、前記傾斜部の側面外郭形状は、前記傾斜部の外側の形成面と、前記傾斜部の内側の形成面とが交差して成る交差線で形成されることを特徴とする風車翼。
【請求項3】
前記主翼部と前記傾斜部との間に曲成部が設けられ、前記曲成部の外側面の形状は、前記主翼部の端部に於ける外側形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して形成され、前記曲成部の内側面の形状は、前記主翼部の端部に於ける内側形状を、前記曲成部の外側形状の曲率よりもなる曲率の曲線に沿って延出して形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の風車翼。
【請求項4】
前記主翼部と前記傾斜部との間に曲成部が設けられ、前記曲成部は、前記主翼部の端部に於ける断面形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の風車翼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車翼に係り、特に垂直軸風車に用いられて揚力を発生する風車翼に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電用の風車として、プロペラ型風車が一般的であるが、プロペラ型を代表とする水平軸風車は、風向に合わせ回転面を対向させる風向制御が必要であり、また風車の構造上、発電機等の重い部品が支柱の上部に設置されるため、支柱の強度面、風車の保守点検面で大きな課題を有している。
【0003】
一方、垂直軸風車は、無指向性であるため風向制御が不必要であり、また発電機等を地表に近い位置に容易に配置可能であるという利点がある。
【0004】
このような垂直軸風車としては、大きな起動トルクを得られやすい抗力型と、高い周速比を得られやすい揚力型とにグループ分けでき、高効率の垂直軸風力発電風車として揚力型が有力視されている。
【0005】
しかし、揚力型の風車は高効率であるがゆえに、回転速度が高くり、風車の翼の翼端の後方の空気の流れが渦となったり空気の流れに乱れが生じ易くなるため、風車の回転効率が低下したり、騒音を発生させる等の課題を残している。尚、翼の翼端の後方に生じる空気の流れの渦は、翼端渦と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4184847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、風車装置に複数設置されている風車翼の翼端の高さ位置を隣接する翼で異なる高さにする(請求項1に係る発明)ことで、翼に生じる翼端渦と他の翼に生じる翼端渦との干渉を抑制することで、翼の後方に生じる空気の乱れを低減させようとするものである。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の前記構成(請求項1に係る発明)では、それぞれの翼の翼端渦そのものを抑制しておらず、それぞれの翼に生じた翼端渦によって、それぞれの翼の回転効率が低下することを抑制してはいない。
【0009】
また、特許文献1には、翼端に傾斜部を有するウィングレットを設ける(請求項4に係る発明)ことで、当該翼端渦のエネルギーを小さくさせることで、騒音の発生を抑制し風車の回転効率を向上を図ろうとするものもある。
【0010】
しかし、特許文献1に記載の前記構成(請求項4に係る発明)では、傾斜部を有するウィングレットに於いて、翼の回転力の元となる揚力を発生させるための形状として考慮している記述はなく、また、当該図面(図7)を見るにつけ、このウィングレットの領域から適正な揚力を得られる効果は期待されない。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、翼端に設けられた傾斜部によって、翼端渦の発生による翼の回転効率の低下を抑制すると共に、主翼部だけでなく当該翼の傾斜部の領域からも、翼の回転力の元となる揚力を高効率に発生させる風車翼を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するため、(1)〜()に記載する風車翼を提供する。
【0013】
(1)風を受けて揚力を発生し、主翼部が縦長に形成され、翼端に傾斜部が設けられた風車翼であって、前記傾斜部の外側面の形状は、前記傾斜部の基底部に於ける外側形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して形成され、前記傾斜部の内側面の形状は、前記傾斜部の基底部に於ける内側形状を、前記傾斜部の外側形状の曲率よりもなる曲率の曲線に沿って延出して形成されると共に、前記傾斜部の側面外郭形状は、前記傾斜部の外側の形成面と、前記傾斜部の内側の形成面とが交差して成る交差線で形成されることを特徴とする風車翼。
【0014】
(2)風を受けて揚力を発生し、主翼部が縦長に形成され、翼端に傾斜部が設けられた風車翼であって、前記傾斜部の外側面の形状は、前記傾斜部の基底部に於ける外側形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して形成され、前記傾斜部の内側面の形状は、前記傾斜部の基底部に於ける内側形状を、直線に沿って延出して形成されると共に、前記傾斜部の側面外郭形状は、前記傾斜部の外側の形成面と、前記傾斜部の内側の形成面とが交差して成る交差線で形成されることを特徴とする風車翼。
【0015】
(3)前記主翼部と前記傾斜部との間に曲成部が設けられ、前記曲成部の外側面の形状は、前記主翼部の端部に於ける外側形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して形成され、前記曲成部の内側面の形状は、前記主翼部の端部に於ける内側形状を、前記曲成部の外側形状の曲率よりもなる曲率の曲線に沿って延出して形成されることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の風車翼。
【0016】
(4)前記主翼部と前記傾斜部との間に曲成部が設けられ、前記曲成部は、前記主翼部の端部に於ける断面形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して形成されることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の風車翼。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、翼端に形成されている傾斜部によって、翼端渦の発生を低減させ、翼の回転力の低下を抑制することが出来る。それと同時に、当該翼の傾斜部の外側面及び内側面の全域が、揚力を効率的に発生する形状を維持して形成されるため、前記傾斜部の形成面からも、揚力を効率的に発生させるため、主翼部と傾斜部とを含む風車翼全体としての回転力を向上させることが出来る。
【0019】
また、前記傾斜部の側面外郭形状は、前記傾斜部の外側の形成面と、前記傾斜部の内側の形成面とが交差して成る交差線で形成されることで、滑らかな曲線で形成されるため、風車翼が回転して翼端が風を切る時に生じる風切り音を低減させることが出来る。
【0020】
特に前記(2)に記載の風車翼によれば、翼端に形成された傾斜部の内側面が、直線に沿って形成されているため、寸法測定管理及び製造が容易となり、翼の製造コストを低減させることが出来る。
【0021】
特に前記(3)に記載の風車翼によれば、主翼部の端部と傾斜部との間に、滑らかで連続的に曲成する形状に形成されている曲成部を有することで、傾斜部が主翼の端部から急激に折り曲げて形成されることがなく、曲成部に於いて大きな曲げ応力が発生することを抑制することが出来る。
【0022】
特に前記(4)に記載の風車翼によれば、前記曲成部は、一定の断面形状が維持されながら曲成されて形成される。このため、曲成部の上側端部の形状は、主翼部の端部の断面形状と同一となり、かつ、曲成部の上側端部の断面形状を基底部として形成される傾斜部の外側面及び内側面の形状は、揚力を効率的に発生させる目的で形成された主翼部の断面形状が延出されて生成される形状と同一となり、傾斜部の外側面及び内側面から生じる揚力を、主翼部から生じる揚力と同様に、よりいっそう効率的に発生させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態に係る風車翼の翼端を示す正面図。
図2図1の上面図。
図3図1のA−A線断面図。
図4図1の斜視図。
図5図1の側面図。
図6】本発明の実施の形態に係る風車翼の曲成部及び傾斜部が形成される過程を示す正面図。
図7図6の斜視図。
図8】本発明の実施の形態に係る風車翼が用いられる回転体を示す正面図。
図9図8の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る風車翼の実施の形態について、図を参照して説明する。尚、以下の説明に於いて、「上」及び「下」とは、水平面又は床面に対して垂直な鉛直方向に於ける上及び下をいうものとする。
【0026】
また、以下の風車翼の説明に於いては、風車翼を上側から見た時に、風車翼が回転する際に進行する方向に位置する側を「前側」といい、その逆を「後側」という。また、風車翼を前側から見た時に、翼端に形成されている傾斜部が傾斜している方向に位置する側を「内側」といい、その逆を「外側」という。また、風車翼を内側又は外側から見た際に見える面を「側面」という。
【0027】
以下に、図1から図5を参照して、本発明に係る風車翼の特徴を説明する。図1は、本発明に係る風車翼1を前側から見た正面図であり、風車翼1の上側の翼端領域が示されている。
【0028】
図2は、図1を上から見た上面図で、傾斜部4の外側面4aが大部分を占め、他には、曲成部3の外側面3aと主翼部2の外側面2aの稜線が示されている。
【0029】
図3は、図1のA−A線断面図で、主翼部2の断面形状が示されている。
【0030】
図4図1の斜視図で、主に風車翼1の内側面が示されている。また、図5は風車翼を外側から見た側面図で、主に風車翼1の外側面が示されている。図5に示されているように、傾斜部4の側面外郭線5は、図3で示されている主翼部2の断面形状の膨らみの偏りに応じて、曲率に偏りを持った滑らかな曲線で形成されている。より具体的には、主翼部2の断面形状の前側の平均曲率が、その後側の平均曲率よりも大きく設定されている場合、傾斜部4の側面外郭線5の前側の平均曲率は、その後側の平均曲率よりも大きく形成されている。
【0031】
図1に示されるように、風車翼1は、縦長に形成された主翼部2と、主翼部2の端部2cから曲成形状に形成された曲成部3と、曲成部3の上側端部3cから主翼部2に対して傾斜して形成された傾斜部とで構成されている。
【0032】
ここで、以下の説明に於いて、風車翼1の翼端とは、主翼部2の端部領域と、曲成部3と、傾斜部4とで構成される領域と定義する。
【0033】
主翼部2は、一定の断面形状が、鉛直方向に伸びて縦長に形成されている。図3に示されるように、風車翼1は、風を受けると風車翼1の進行方向Fの向きに、すなわち、前側向きに進む。主翼部2の断面形状は、その前側(進行方向側)の平均曲率が、その後側の平均曲率よりも大きく設定されており、すなわち、その前側がより膨らみを持つ形状を成している。また、主翼部2の外側に形成されている外側面2aの平均曲率が、主翼部2の内側に形成されている内側面2bの平均曲率よりも大きく設定されており、すなわち、外側面2aが内側面2bよりも膨らみを持つ形状を成している。このように、膨らみに偏りを持って全域が滑らかな曲線で形成されている断面形状は、風車翼1が風を受けた時に効率よく揚力を発生し得る形状とされている。
【0034】
曲成部3は、主翼部2の端部2cの断面形状を基底部として形成され、曲成部3の外側に形成されている外側面3aは、主翼部2の端部2cの断面形状(曲成部3の基底部)のうち、主翼部2の外側に形成されている外側面2aの形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して曲成されることで形成されている。また、曲成部3の内側に形成されている内側面3bは、主翼部2の端部2cの断面形状(曲成部3の基底部)のうち、内側に形成されている内側面2bの形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して曲成されることで形成されている。曲成部3は、外側面3aと内側面3bとで囲まれる領域で形成され、曲成部3の上側には上側端部3cが形成される。
【0035】
ここで、曲成部3の外側面3aは、前記の方法で形成された曲成部3の外側の形成面であり、同様に、曲成部3の内側面3bは、前記の方法で形成された曲成部3の内側の形成面である。曲成部3の外側面3aを形成するために用いた前記の曲線の曲率は、形成された外側面3aに反映され、曲成部3の内側面3bを形成するために用いた前記の曲線の曲率は、形成された内側面3aに反映されている。
【0036】
ここで、曲成部3が形成されるために用いた前述の所定の曲率の曲線とは、風車翼1よりも内側の空間にあって、風車翼1の進行方向Fに向いた軸線を中心軸とする円弧であり、外側面3aに形成されている曲率と、内側面3bに形成されている曲率とは、それぞれ任意に設定出来る。また、理想的には、主翼部2の端部2cの断面形状(曲成部3の基底部)含む面に、この軸線が含まれる配置に設定することが望ましい。その場合、曲成部3は、主翼部2に対して、滑らかに連続的に形成される。
【0037】
曲成部3の、内側面3bに形成されている曲線の曲率を、外側面3aに形成されている曲線の曲率に比べて大きく設定すると、曲成部3の任意の位置に於ける断面形状及びその厚さは、変化が少なく安定する。さらに、外側面3aを形成するために用いた前記曲線の前記軸線と、内側面3bを形成するために用いた前記曲線の前記軸線とを一致させると、曲成部3の任意の位置に於いて、いずれの部位の断面形状が同一となる。すなわち、その場合、主翼部2の端部2cの断面形状(曲成部3の基底部)と、曲成部3の上側端部3cの断面形状とは、同一となる。
【0038】
上述のように、曲成部3の任意の位置に於ける断面形状を、類似的又は同一に形成させることが可能であり、この場合、揚力を効率的に発生し得るように形成された主翼部2の断面形状が、曲成部3の全域に反映されることになり、曲成部3の全域からも、高効率に揚力を発生させることが可能となる。
【0039】
傾斜部4は、曲成部3の上側端部3cの断面形状を基底部として形成され、傾斜部4の外側に形成されている外側面4aは、曲成部3の上側端部3cの断面形状(傾斜部4の基底部)のうち、外側に形成されている外側面3aの形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して曲成されることで形成されている。また、傾斜部4の内側に形成されている内側面4bは、曲成部3の上側端部3cの断面形状(傾斜部4の基底部)のうち、内側に形成されている内側面3bの形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して曲成されることで形成されている。
【0040】
傾斜部4は、外側面4aと内側面4bとで囲まれる領域で形成され、傾斜部4を側面から見た際に現れる側面外郭形状は、外側面4aと内側面4bとが交差して成る交差線5によって形成されている。
【0041】
ここで、傾斜部4の外側面4aは、前記の方法で形成された傾斜部4の外側の形成面であり、同様に、傾斜部4の内側面4bは、前記の方法で形成された傾斜部4の内側の形成面である。傾斜部4の外側面4aを形成するために用いた前記の曲線の曲率は、形成された外側面4aに反映され、傾斜部4の内側面4bを形成するために用いた前記の曲線の曲率は、形成された内側面4aに反映されている。
【0042】
傾斜部4の、内側面4bに形成されている曲率は、外側面4aに形成されている曲率に比べて小さく設定されている。このような関係の場合、傾斜部4は、その基底部となる曲成部3の上側端部3cから、その先端部4cに向けて次第に厚さ及び幅が小さくなっていき、図5に示されているように、傾斜部4の側面外郭形状を成す交差線5は、図3で示されている主翼部2の断面形状の曲率の偏りに応じて、曲率に偏りを持った滑らかな曲線で形成されている。より具体的には、主翼部2の断面形状の前側の平均曲率が、その後側の平均曲率よりも大きく設定されている場合、交差線5の前側の平均曲率も、その後側の平均曲率よりも大きく形成されている。
【0043】
ここで、傾斜部4が形成されるために用いた前述の所定の曲率の曲線とは、風車翼1よりも内側の空間にあって、風車翼1の進行方向Fに向いた軸線を中心軸とする円弧である。また、理想的には、曲成部3の上側端部3cの断面形状(傾斜部4の基底部)含む面に、この軸線が含まれる配置に設定することが望ましい。その場合、傾斜部4は、曲成部3に対して、滑らかに連続的に形成される。
【0044】
上述したように、曲成部3のいずれの部位の断面形状を類似的に、又は同一に形成させることが可能であることを鑑みると、傾斜部4の外側面4aは、揚力を効率的に発生し得るように形成された主翼部2の断面形状のうち、外側に形成されている外側面2aの形状を、傾斜部4の外側面4aの全域に反映させることが可能となり、同様に、主翼部2の断面形状のうち、内側に形成されている内側面2bの形状を、傾斜部4の内側面4bの全域に反映させることが可能となる。このため、傾斜部4の全域からも、主翼部2と同様に、高効率に揚力を発生させることが可能となる。
【0045】
勿論、傾斜部4は、従来の翼端に形成されているウィングレットの目的としての機能も持ち合わせている。すなわち、翼端渦の発生を低減して、翼端渦のエネルギーを小さくさせ、騒音の発生を抑制し風車の回転効率を向上させることも同時に達成している。
【0046】
次に、図6図7を参照して、曲成部3と傾斜部4が主翼部2の端部2cから生成されていく過程を説明する。
【0047】
図6及び図7は、共に、アルファベット順に枝番号(a1)及び(a2)から枝番号(e1)及び(e2)に向けて移行して、すなわち、図中の左側の図から右側の図に向けて移行して、曲成部3と傾斜部4が生成されていく過程が示されている。尚、実際には、曲成部3と傾斜部4とは、主翼部2を含み、全体が風車翼1として一体に形成されているが、図6及び図7では、説明と図示を分かりやすくするため、主翼部2、曲成部3、及び傾斜部4とを、それぞれ別体として扱って説明する。
【0048】
図6及び図7に於ける枝番号(a1)及び(a2)は、曲成部3及び傾斜部4が生成される前の主翼部2を示している。
【0049】
図6及び図7に於ける枝番号(b1)及び(b2)は、曲成部3が生成されている状態を示している。曲成部3は、主翼部2の端部2cの断面形状を曲成部3の基底部とし、主翼部2の端部2cの断面形状(曲成部3の基底部)を所定の曲率の曲線に沿って延出して生成されている。
【0050】
図6及び図7に於ける枝番号(c1)及び(c2)は、傾斜部4の外側面4aが生成されている状態を示している。傾斜部4の外側面4aを生成するために、曲成部3の上側端部3cの断面形状を当該基底部とし、曲成部3の上側端部3cの断面形状(当該基底部)を、所定の曲率の曲線に沿って延出して、傾斜部4の外側面生成要素4dが生成されている。外側面生成要素4dの外側面上に、傾斜部4の外側面4aが形成されている。
【0051】
図6及び図7に於ける枝番号(d1)及び(d2)は、傾斜部4の内側面4bが生成されている状態を示している。傾斜部4の内側面4bを生成するために、曲成部3の上側端部3cの断面形状を当該基底部とし、曲成部3の上側端部3cの断面形状(当該基底部)を、傾斜部4の外側面4aに反映して形成された曲線の曲率よりもなる曲率の曲線に沿って延出して、傾斜部4の内側面生成要素4eが生成されている。内側面生成要素4eの内側面上に、傾斜部4の内側面4bが形成されている。また、傾斜部4の外側面生成要素4dと内側面生成要素4eとが重なって交差している外郭稜線から成る交差線5が生成される。
【0052】
図6及び図7に於ける枝番号(e1)及び(e2)は、傾斜部4が生成されている状態を示してしる。傾斜部4は、外側面生成要素4dと内側面生成要素4eとが重なっている領域で形成されている。傾斜部4を側面から見た際に見られる側面外郭形状は、交差線5によって形成されている。
【0053】
上述で説明した、主翼部2の端部2cから曲成部3と傾斜部4とが生成される過程は、曲成部3と傾斜部4とを立体的に設定する設計方法としても有効に活用出来る。すなわち、曲成部3の外側面3aの曲率及び延出長さ、曲成部3の内側面3bの曲率及び延出長さを設定するだけで、曲成部3を立体的に確実に設定することが出来る。また、傾斜部4の外側面4aの曲率と、傾斜部4の内側面4bの曲率を設定するだけで、傾斜部4を立体的に確実に設定することが出来る。
【0054】
また、曲成部3と傾斜部4とでウィングレットが構成されるが、このウィングレットの形状を立体的に設定する際に、曲成部3の外側面3aの曲率及び延出長さ、曲成部3の内側面3bの曲率及び延出長さ、傾斜部4の外側面4aの曲率、傾斜部4の内側面4bの曲率の組み合わせることで自在に調整可能となり、当該ウィングレットを立体的に設定する設計方法として有効性が高い。
【0055】
また、上述で説明したように、傾斜部4の側面外郭形状は、外側面4aと内側面4bとが交差して成る交差線5によって形成されている。このため、傾斜部4の外側面4a及び内側面4bの全域に、揚力を効率的に発生し得るように設計して形成された主翼部2の断面形状を反映させることが可能となる。このことは、他の設計方法によって類似する形状に傾斜部4を形成したとしても、傾斜部4の全域に、主翼部2の断面形状を反映させることにはならず、傾斜部4の側面外郭形状である交差線5に相当する部位に厚みを生じてまい、その分、傾斜部4の面積が小さくなるか、傾斜部4の形成面が、主翼部2の断面形状を適正に反映されていない形状となってしまう。つまり、傾斜部4の全域に無駄なく主翼部2の断面形状を反映させ、かつ、形状を管理調整できる設計方法は、上述した本発明の設計方法に限られている。このことは、曲成部3についても同様のことがいえる。
【0056】
ここで、より具体的な実施例の適正な設定範囲を、以下に記す。
【0057】
曲成部3の外側面3aと内側面3bのそれぞれの延出長さは、対応する曲率に応じて設定されることが望ましい。すなわち、外側面3aの曲率が内側面3bの曲率よりも小さい場合、外側面3aの延出長さ内側面3bの延出長さよりも大きく設定することが望ましい。
【0058】
また、曲成部3の外側面3aと内側面3bに形成されている、それぞれの曲線の曲率は、曲線の半径で定義することが出来る。外側面3aに形成されている曲線の半径は、主翼部2の端部2cの幅T以上に設定することが望ましい。また、内側面3bに形成されている曲線の半径は、外側面3aに形成されている曲線の半径の半分以下に設定することが望ましい。このような関係で曲成部3の各要素寸法を設定することで、曲成部3に生じる応力を効果的に分散し、かつ、曲成部3の任意の位置に於ける幅及び断面形状の変化を少なくさせ、十分な強度を有させることが可能となる。
【0059】
傾斜部4の外側面4aに形成されている曲線の半径は、主翼部2の端部2cの幅Tの2倍以上に設定することが望ましい。また、傾斜部4の内側面4bに形成されている曲線の半径は、傾斜部4の外側面4aに形成されている曲線の半径の2倍以上に設定することが望ましい。このような関係で傾斜部4の各要素寸法を設定することで、傾斜部4は、曲成部3と比べて大きな寸法とし得るため、曲成部3と傾斜部4とで構成されるウィングレットの大きさを、必要とされる大きさに形成させることが可能となる。
【0060】
図8及び図9は、本発明の風車翼1が用いれれる風車の回転体を示し、図8は、その正面図であり、図9は、その上面図である。図8及び図9に示されているように、当該風車の回転体は、自転する回転軸7と、回転軸7から回転軸7の半径方向に伸びる支持アーム6と、複数の風車翼1とが一体となって結合されている。風車翼1は、前記回転体の外周部に配置され、支持アーム6によって支持されている。また、風車翼1は、縦長の主翼部2の軸線を鉛直方向に向けて配置されている。
【0061】
ここで、上述までの説明では、傾斜部4の、内側面4bに形成されている曲率は、外側面4aに形成されている曲率に比べて、小さく設定されているとしたが、内側面4bに形成されている曲率を極めて小さくした場合に、有限な長さを持つ傾斜部4の範囲に於いては、内側面4bに形成されている曲率の曲線を、直線(曲率の曲線)とみなすことが出来る。
【0062】
このように、傾斜部4の内側面4bは、曲成部3の上側端部3cの断面形状のうち、曲成部3の内側面3bの形状を、直線に沿って延出して形成されても良く、その場合にも、上述した内容と同等の効果及び形状が得られる。
【0063】
また、上述までの説明では、風車翼1には、主翼部2と傾斜部4との間に曲成部3を設けていたが、曲成部3を無くして、主翼部2の端部2cから傾斜部4を直接形成しても良く、その場合、傾斜部4は、その基底部となっていた曲成部3の上側端部3cを、主翼部2の端部2cに置き換えて、その他は、上述した同様の過程で形成しても良く、その場合にも上述した内容と同等の効果及び形状が得られる。
【0064】
同様に、風車翼1は、必要に応じて、傾斜部4を無くして、主翼部2と曲成部3のみで構成しても良い。
【0065】
また、上述までの説明では、主翼部2は、一定の断面形状が鉛直方向に伸びて成る縦長形状としていたが、その断面形状は、鉛直方向に沿って変化しても良く、例えば、当該断面形状は、鉛直方向に沿ってサイズが異なる相似形としても良い。
【符号の説明】
【0066】
1…風車翼、2…主翼部、3…曲成部、4…傾斜部、5…交差線,6…支持アーム、7…回転軸
【要約】      (修正有)
【課題】翼端渦の抑制と揚力の発生とを両立して高効率に実施する風車翼を提供する。
【解決手段】曲成部3は、主翼部2の端部2cの断面形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して曲成されることで形成される。傾斜部4は、曲成部3の上側端部3cの断面形状のうち、外側に形成されている外側面3aの形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して曲成され、内側面3bの形状を、外側面3aに反映された曲線の曲率よりも小なる曲率の曲線に沿って延出して曲成されることで形成される。傾斜部4の側面外郭稜線は、外側面4aと内側面4bとが交差して成る交差線5で形成される。以上を特徴とする風車翼。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9