特許第5969671号(P5969671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5969671ガラス基板の製造方法、および、ガラス基板の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969671
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ガラス基板の製造方法、および、ガラス基板の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/06 20060101AFI20160804BHJP
   C03B 25/12 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   C03B17/06
   C03B25/12
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-172610(P2015-172610)
(22)【出願日】2015年9月2日
(62)【分割の表示】特願2012-218268(P2012-218268)の分割
【原出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2016-6014(P2016-6014A)
(43)【公開日】2016年1月14日
【審査請求日】2015年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】598055910
【氏名又は名称】AvanStrate株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】前田 伸広
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/018072(WO,A1)
【文献】 特表2009−502706(JP,A)
【文献】 特開2003−262473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 17/06
C03B 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体から熔融ガラスをオーバーフローさせてガラスシートを成形する成形工程と、
成形された前記ガラスシートを下方に引き延ばしながら冷却する冷却工程と、
冷却された前記ガラスシートを切断してガラス基板を得る切断工程と、
を備え、
前記成形体から離れた前記ガラスシートが徐冷点近傍になるまで冷却される空間の少なくとも一部において、前記ガラスシートの幅方向の中央領域の表面と対向する冷却速度制御部材が設けられ、
前記冷却速度制御部材を挟んで前記ガラスシートの反対側にある後方冷却空間は、前記ガラスシートの進行方向に沿って配置されている複数の冷却室から構成され、
前記冷却室の少なくとも一部は、冷却器によって冷却され、
前記冷却工程では、前記ガラスシートは、前記冷却室に接する前記冷却速度制御部材と対向しながら前記進行方向に沿って移動することで、段階的または連続的に冷却され、
前記冷却器の少なくとも一部は、
前記冷却室と、前記進行方向に沿って前記冷却室に隣接する空間との間の熱移動を抑制する断熱板と、
液体冷媒が内部を流れることで前記冷却室を冷却する冷媒管と、
を有し、
前記冷媒管は、前記断熱板の長手方向において複数回往復するように配置され、かつ、往復する前記冷媒管の列からなる平面である管平面を形成し、
前記管平面は、前記断熱板の下面と平行な平面である、
ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記冷却工程は、
前記ガラスシートの前記中央領域の温度が徐冷点になるまで、第1平均冷却速度で前記ガラスシートが冷却される第1冷却工程と、
前記ガラスシートの前記中央領域の温度が、徐冷点から、歪点より50℃低い温度になるまで、第2平均冷却速度で前記ガラスシートが冷却される第2冷却工程と、
を有し、
前記第1平均冷却速度は、前記第2平均冷却速度より大きい、
請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記冷却工程では、前記冷却速度制御部材によって、前記進行方向における前記ガラスシートの冷却速度が制御される、
請求項1または2に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記成形体から離れた前記ガラスシートが冷却される空間において、前記ガラスシートの幅方向の端部を冷却する端部冷却装置が設けられ、
前記冷却工程では、前記端部冷却装置によって、前記ガラスシートの前記端部が、前記ガラスシートの前記中央領域よりも大きい速度で冷却されるように、前記ガラスシートが冷却される、
請求項1から3のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記冷却速度制御部材の、前記ガラスシートの対向面とは反対側の面には、前記ガラスシートの幅方向に沿って保温部材が設置され、
前記冷却工程では、前記保温部材によって、前記ガラスシートの幅方向の厚みおよび/または反りが制御される、
請求項1から4のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項6】
前記冷却工程では、前記ガラスシートの前記中央領域の温度が軟化点近傍になるまでの空間の少なくとも一部において、前記保温部材の寸法の変更によって、前記ガラスシートの幅方向の板厚分布に応じて、前記ガラスシートの厚みが制御される、
請求項5に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項7】
前記冷却工程では、前記ガラスシートの厚みが制御された後、前記保温部材の寸法の変更によって、前記ガラスシートの前記中央領域から前記端部に向かって、前記ガラスシートの温度が段階的または連続的に下がるような温度プロファイルが形成されて、平面度が所定の範囲内となるように前記ガラスシートの反りが制御される、
請求項6に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項8】
成形体から熔融ガラスをオーバーフローさせてガラスシートを成形するための成形部と、
成形された前記ガラスシートを下方に引き延ばしながら冷却するための冷却部と、
冷却された前記ガラスシートを切断してガラス基板を得るための切断部と、
を備え、
前記成形体から離れた前記ガラスシートが徐冷点近傍になるまで冷却される空間の少なくとも一部において、前記ガラスシートの幅方向の中央領域の表面と対向する冷却速度制御部材が設けられ、
前記冷却速度制御部材を挟んで前記ガラスシートの反対側にある後方冷却空間を冷却するための冷却器を有し、
前記冷却器は、
前記空間を複数の冷却室に分割し、かつ、隣接する前記冷却室の間の熱移動を抑制する断熱板と、
液体冷媒が内部を流れることで前記冷却室を冷却する冷媒管と、
を備え
前記冷媒管は、前記断熱板の長手方向において複数回往復するように配置され、かつ、往復する前記冷媒管の列からなる平面である管平面を形成し、
前記管平面は、前記断熱板の下面と平行な平面である、
ガラス基板の製造装置。
【請求項9】
前記冷媒管は、その外径以上の間隔を空けて複数回往復するように配置され
前記断熱板は、前記冷却室の壁面の内の一面を構成し、かつ、前記管平面に平行に、および、前記管平面に接しながら、前記冷媒管の列の上に、その自重を預けて設置される、
請求項8に記載のガラス基板の製造装置。
【請求項10】
前記冷却器は、その両端部が支持された状態における、長手方向の中央部の自重によるたわみ量が、長手方向の長さに関わらず20mm以下であるような剛性を有する、
請求項8または9に記載のガラス基板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の製造方法、および、ガラス基板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板を製造する方法としてオーバーフローダウンドロー法が用いられている。オーバーフローダウンドロー法では、成形体からオーバーフローした熔融ガラスを、成形体の両側面に沿って流下させた後、成形体の下端部の近傍で合流させることにより、ガラスシートが成形される。成形されたガラスシートは、下方に引き延ばされながら冷却される。冷却されたガラスシートは、所定の寸法に切断されて、ガラス基板が得られる。
【0003】
オーバーフローダウンドロー法において、成形されたガラスシートを冷却する際に、ガラスシートの冷却速度を制御するための技術が用いられている。例えば、特許文献1(国際公開第2012/018072号パンフレット)には、成形体の下方の空間において、ガラスシートの進行方向に沿って複数の冷却速度制御部材を配置し、冷却速度制御部材のそれぞれに所定の温度の気体を吹き付けることで、ガラスシートの温度を制御する方法が開示されている。また、成形されたガラスシートが最終的な厚さにより迅速に到達するように、特許文献2(特表第2009−502706号公報)には、成形体の下端から離れた直後のガラスシートを急速に冷却する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、成形体の下端から離れた直後のガラスシートを急速に冷却する場合、特許文献1に開示されている冷却速度制御部材を用いる方法では、ガラスシートを冷却する能力が不十分である。また、この方法では、冷却速度制御部材に吹き付けられる気体の、ガラスシート幅方向における僅かな流量差に起因して、ガラスシートの温度差が発生する。また、この方法では、冷却速度制御部材に吹き付けられる気体の一部が、意図せずに漏れ出してガラスシートに衝突することに起因して、ガラスシートの温度差が発生する。そして、ガラスシートの温度差によって、ガラスシートの板厚偏差が増加してしまうおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、成形されたガラスシートが冷却される空間において、ガラスシートと効率的かつ制御性に優れた熱交換を行うことができるガラス基板の製造方法、および、ガラス基板の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガラス基板の製造方法は、成形工程と、冷却工程と、切断工程とを備える。成形工程は、成形体から熔融ガラスをオーバーフローさせてガラスシートを成形する。冷却工程は、成形されたガラスシートを下方に引き延ばしながら冷却する。切断工程は、冷却されたガラスシートを切断してガラス基板を得る。成形体から離れたガラスシートが徐冷点近傍になるまで冷却される空間の少なくとも一部において、冷却速度制御部材が設けられる。冷却速度制御部材は、ガラスシートの幅方向の中央領域の表面と対向する。冷却速度制御部材を挟んでガラスシートの反対側にある後方冷却空間は、ガラスシートの進行方向に沿って配置されている冷却室から構成される。冷却室の少なくとも一部は、冷却器によって冷却される。冷却工程では、ガラスシートは、冷却室に接する冷却速度制御部材と対向しながら進行方向に沿って移動することで、段階的または連続的に冷却される。冷却器の少なくとも一部は、断熱板と、冷媒管とを有する。断熱板は、冷却室と、進行方向に沿って冷却室に隣接する空間との間の熱移動を抑制する。冷媒管は、液体冷媒が内部を流れることで冷却室を冷却する。
【0007】
このガラス基板の製造方法では、成形体の下端から離れた直後のガラスシートは、冷却器によって徐冷点近傍まで急冷される。冷却器は、断熱板と冷媒管とから構成される。断熱板は、ガラスシートの進行方向、すなわち、鉛直方向に沿って、後方冷却空間を複数の冷却室に区画するための隔壁である。冷媒管は、内部を流れる液体冷媒と、断熱板によって隔てられた2つの空間の一方との間において、輻射熱伝達および自然対流熱伝達による効率的な熱交換を行う。冷却器は、冷媒管内部の液体冷媒の流量を調節したり、液体冷媒の温度を変更したりすることで、熱交換量を制御することができる。なお、冷却速度調整可能範囲をより拡大したい場合には、冷媒管の往復回数を増減して冷媒管の表面積を変更するか、冷媒管に供給される液体冷媒の温度を変更する必要がある。
【0008】
従って、このガラス基板の製造方法は、成形されたガラスシートが冷却される空間において、ガラスシートと効率的かつ制御性に優れた熱交換を行うことができる。
【0009】
また、冷却工程は、第1冷却工程と第2冷却工程とを有することが好ましい。第1冷却工程では、ガラスシートの中央領域の温度が徐冷点になるまで、第1平均冷却速度でガラスシートが冷却される。第2冷却工程では、ガラスシートの中央領域の温度が、徐冷点から、歪点より50℃低い温度になるまで、第2平均冷却速度でガラスシートが冷却される。第1平均冷却速度は、第2平均冷却速度より大きいことが好ましい。
【0010】
第1冷却工程では、ガラスシートの中央領域の温度が1200℃〜徐冷点であり、熱収縮率の影響が小さい。この温度領域では、ガラス分子が容易に移動するので、歪みが発生し難い。一方、第2冷却工程では、ガラスシートの中央領域の温度が徐冷点〜歪点近傍であり、熱収縮率の影響が大きいので、できるだけゆっくり冷却することが好ましい。この温度領域では、第1冷却工程と比べて、ガラス分子の移動に要する時間が長く、歪みが発生しやすい。従って、第1平均冷却速度は、第2平均冷却速度より大きいことが好ましい。
【0011】
また、冷却工程では、冷却速度制御部材によって、進行方向におけるガラスシートの冷却速度が制御されることが好ましい。冷却速度制御部材は、ガラスシートの幅方向の温度を均一にすることができる。
【0012】
また、成形体から離れたガラスシートが冷却される空間において、ガラスシートの幅方向の端部を冷却する端部冷却装置が設けられることが好ましい。冷却工程では、端部冷却装置によって、ガラスシートの端部が、ガラスシートの中央領域よりも大きい速度で冷却されるように、ガラスシートが冷却される。端部冷却装置は、ガラスシートの幅方向の収縮を抑制することができる。
【0013】
また、冷却速度制御部材の、ガラスシートの対向面とは反対側の面には、ガラスシートの幅方向に沿って保温部材が設置されることが好ましい。冷却工程では、保温部材によって、ガラスシートの幅方向の厚みおよび/または反りが制御される。
【0014】
また、冷却工程では、ガラスシートの中央領域の温度が軟化点近傍になるまでの空間の少なくとも一部において、保温部材の寸法の変更によって、ガラスシートの幅方向の板厚分布に応じて、ガラスシートの厚みが制御されることが好ましい。
【0015】
冷却工程において、保温部材を用いることによって、ガラスシートの幅方向の温度分布を制御することができる。これにより、冷却工程において、ガラスシートの板厚偏差および反りを低減するために適したガラスシートの温度分布を実現することができる。
【0016】
また、冷却工程では、ガラスシートの厚みが制御された後、保温部材の寸法の変更によって、ガラスシートの中央領域から端部に向かって、ガラスシートの温度が段階的または連続的に下がるような温度プロファイルが形成されて、平面度が所定の範囲内となるようにガラスシートの反りが制御されることが好ましい。
【0017】
本発明に係る冷却器は、空間を冷却するための冷却器であって、断熱板と、冷媒管とを備える。断熱板は、空間を複数の冷却室に分割し、かつ、隣接する冷却室の間の熱移動を抑制する。冷媒管は、液体冷媒が内部を流れることで冷却室を冷却する。
【0018】
この冷却器では、冷媒管は、内部を流れる液体冷媒と、断熱板によって隔てられた2つの空間の一方との間において、輻射熱伝達および自然対流熱伝達による効率的な熱交換を行う。この冷却器は、冷媒管内部の液体冷媒の流量を調節したり、液体冷媒の温度を変更したりすること、および、冷媒管の往復回数を変更して冷媒管の表面積を変更することで、熱交換量を制御することができる。
【0019】
従って、この冷却器は、熱源が存在する空間において、熱源と効率的かつ制御性に優れた熱交換を行うことができる。
【0020】
また、冷媒管は、その外径以上の間隔を空けて複数回往復するように配置され、かつ、往復する冷媒管の列からなる平面である管平面を形成することが好ましい。断熱板は、冷却室の壁面の内の一面を構成し、かつ、管平面に平行に、および、管平面に接しながら、冷媒管の列の上に、その自重を預けて設置される。
【0021】
この冷却器は、周囲の雰囲気と接触する冷却管の表面積を大きく取れるので、熱源が存在する空間において、熱源と、より効率的な熱交換を行うことができる。また、冷却管の鉛直方向の寸法が小さいため、この冷却器は、設置スペースの鉛直方向の寸法が制限されている場合においても、熱交換効率を低下させることなく設置することができる。
【0022】
また、冷却器は、その両端部が支持された状態における、長手方向の中央部の自重によるたわみ量が、長手方向の長さに関わらず20mm以下であるような剛性を有することが好ましい。そのため、この冷却器は、その長手方向の中央部における支持を必要としない。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るガラス基板の製造方法、および、ガラス基板の製造装置は、成形されたガラスシートが冷却される空間において、ガラスシートと効率的かつ制御性に優れた熱交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施液体に係るガラス基板製造装置の概略構成図である。
図2】成形装置の正面図である。
図3図2のIII−III線における、成形装置の断面図である。
図4】冷却速度制御部材の外観図である。
図5】冷却速度制御部材の近傍における図2の拡大図である。
図6】端部冷却装置の外観図である。
図7】冷却器の外観図である。
図8】冷却器の側面図である。
図9】変形例Aに係る冷却器の上面図である。
図10】変形例Aに係る冷却器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(1)ガラス基板製造装置の全体構成
本発明に係るガラス基板の製造方法および冷却器の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態で用いられるガラス基板製造装置100の概略構成図である。ガラス基板製造装置100は、図1に示されるように、熔解槽200と、清澄槽300と、成形装置400とから構成される。熔解槽200では、ガラス原料が加熱されて熔解ガラスが生成される。清澄槽300では、熔解槽200で生成された熔融ガラスに含まれる気泡が除去される。成形装置400では、清澄槽300で気泡が除去された熔融ガラスから、オーバーフローダウンドロー法によって、ガラスシートが連続的に成形される。成形されたガラスシートは、所定の寸法に切断され、製品サイズのガラス基板が得られる。ガラス基板は、端面加工工程、洗浄工程および検査工程等を経て、梱包されて出荷される。
【0026】
ガラス基板製造装置100によって製造されるガラス基板は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイおよび有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造に用いられる。このガラス基板は、例えば、0.2mm〜0.8mmの厚みを有し、かつ、縦680mm〜2200mmおよび横880mm〜2500mmの寸法を有する。
【0027】
(2)成形装置の詳細構成
図2は、成形装置400の正面図である。図2は、成形装置400によって成形されるガラスシート90の表面に垂直な方向に沿って見た、成形装置400の外観図である。図3は、図2のIII−III線における、成形装置400の断面図である。成形装置400は、主として、成形体10と、上部仕切り部材20と、冷却ローラ30と、冷却ユニット40と、冷却器51a〜51fと、下部仕切り部材60と、引下げローラ70と、制御装置(図示せず)とから構成される。
【0028】
(2−1)成形体
成形体10は、図3に示されるように、略楔状かつ五角形の断面形状を有する。成形体10は、耐火レンガで成形され、かつ、上部仕切り部材20の上方の空間である成形体収容空間410に設置される。成形体10は、略楔状の断面形状の尖端が下端に位置するように設置される。
【0029】
成形体10の上端面には、成形体10の長手方向に沿って、溝12が形成されている。成形体10の長手方向の端部には、溝12と連通しているガラス供給管14が取り付けられている。溝12は、ガラス供給管14と連通している一方の端部から他方の端部に向かうに従って、徐々に浅くなるように形成されている。
【0030】
清澄槽300から送られてきた熔融ガラスは、ガラス供給管14を経由して、溝12に流し込まれる。成形体10の溝12からオーバーフローした熔融ガラス80は、成形体10の両側面を伝いながら流下し、成形体10の下端の近傍において合流する。合流した熔融ガラス80は、ガラスシート90となる。ガラスシート90は、連続的に成形され、上部仕切り部材20の下方、かつ、下部仕切り部材60の上方の空間である冷却空間420において、流下しながら冷却される。
【0031】
(2−2)上部仕切り部材
上部仕切り部材20は、成形体10の下端の近傍に設置される一対の板状の断熱部材である。上部仕切り部材20は、図3に示されるように、ガラスシート90の厚み方向の両側に設置される。上部仕切り部材20は、成形体収容空間410と冷却空間420とを鉛直方向に仕切る。成形体収容空間410は、成形体10が設置される空間である。冷却空間420は、ガラスシート90が流下しながら冷却される空間である。上部仕切り部材20は、成形体収容空間410から冷却空間420への熱の移動を遮断する。
【0032】
(2−3)冷却ローラ
冷却ローラ30は、冷却空間420を流下するガラスシート90を急冷するための部材である。冷却ローラ30は、図2に示されるように、ガラスシート90の幅方向の両端部を冷却する。冷却ローラ30は、図3に示されるように、ガラスシート90の厚み方向の両側に設置される。従って、ガラスシート90は、その幅方向の両端部を、2対の冷却ローラ30によって挟まれて急冷される。
【0033】
(2−4)冷却ユニット
冷却ユニット40は、冷却空間420を流下するガラスシート90の冷却速度を調節しながら、ガラスシート90を徐冷点近傍まで冷却するユニットである。ここで、徐冷点近傍は、ガラスシート90の徐冷点に100℃を足した温度から、ガラスシート90の歪点とガラスシート90の徐冷点とを足して2で除した温度までの温度領域である。冷却ユニット40は、ガラスシート90の流下方向に沿って、ガラスシート90を段階的または連続的に冷却するように制御される。冷却ユニット40は、主として、冷却速度制御部材41a〜41fと、端部冷却装置42と、保温部材43とを有している。
【0034】
(2−4−1)冷却速度制御部材
本実施形態では、図3に示されるように、6対の冷却速度制御部材41a〜41fが、上部仕切り部材20の下方の冷却空間420に設置されている。冷却速度制御部材41a〜41fは、ガラスシート90の流下方向、すなわち、鉛直方向に沿って設置されている。冷却速度制御部材41a〜41fは、鉛直方向に隙間なく並べられている。なお、鉛直方向に配置される冷却速度制御部材41a〜41fの数は、成形装置400の寸法、および、ガラスシート90の徐冷点近傍までの冷却工程において設定したい、異なる冷却速度パターンの数等に応じて、適宜に決定されてもよい。
【0035】
冷却速度制御部材41aは、6個の冷却速度制御部材41a〜41fの内、ガラスシート90の流下方向に対して、最も上流に設置されている。冷却速度制御部材41fは、6個の冷却速度制御部材41a〜41fの内、ガラスシート90の流下方向に対して、最も下流に設置されている。冷却速度制御部材41aは、上部仕切り部材20の下方に隣接して設置され、冷却速度制御部材41fは、概ね下部仕切り部材60の上方に設置されている。各冷却速度制御部材41a〜41fは、同じ構成を有している。次に、冷却速度制御部材41aを例として、冷却速度制御部材41a〜41fの構成について説明する。
【0036】
一対の冷却速度制御部材41aは、ガラスシート90の両表面の近傍に、それぞれ設置されている。冷却速度制御部材41aは、ガラスシート90の幅方向、すなわち、水平方向に延びている部材である。冷却速度制御部材41aは、図2に示されるように、ガラスシート90の幅方向の中央領域90aの表面と対向する位置に設置されている。以下、ガラスシート90の中央領域90aは、板厚を均一にする対象の部分を含む領域であり、ガラスシート90の端部90bは、製造後に切断される対象の部分を含む領域である。冷却速度制御部材41aの長手方向の長さは、ガラスシート90の幅方向の長さよりも短い。
【0037】
図4は、冷却速度制御部材41aの一部の外観図である。冷却速度制御部材41aは、折り曲げ加工された板状の金属部材である。この金属部材は、大気中で600℃以上の耐熱性を有し、少なくとも30W/m・K以上の熱伝導率を有し、使用温度領域で0.85以上の放射率特性を有することが好ましい。冷却速度制御部材41aの金属部材は、例えば、純ニッケルである。
【0038】
冷却速度制御部材41aは、図4に示されるように、折り曲げ部62aと主部63aとを有するチャンネル(溝形鋼)である。折り曲げ部62aは、冷却速度制御部材41aの鉛直方向の両端部に位置し、金属部材が折り曲げられて形成された水平部である。主部63aは、折り曲げ部62a以外の鉛直部である。主部63aは、ガラスシート90に対向する面を有している。主部63aの鉛直方向の寸法hは、例えば、50mm〜250mmである。主部63aは、例えば、4mm以上の厚みtを有することが好ましい。折り曲げ部62aの水平方向の寸法wは、例えば、40mm〜90mmである。
【0039】
図5は、冷却速度制御部材41aの近傍における図2の拡大図である。図5では、端部冷却装置42が省略されている。図3に示されるように、冷却速度制御部材41aは、鉛直方向に隣接している冷却速度制御部材41bと、ネジ止めによって連結されている。具体的には、冷却速度制御部材41aの下側の折り曲げ部62aは、冷却速度制御部材41bの上側の折り曲げ部62bと、ネジ止めによって連結されている。同様に、冷却速度制御部材41bの下側の折り曲げ部62bは、冷却速度制御部材41cの上側の折り曲げ部62cと、ネジ止めによって連結されている。
【0040】
図3において、後方冷却空間422は、冷却速度制御部材41a〜41fを挟んで、ガラスシート90の反対側にある空間である。すなわち、後方冷却空間422は、ガラスシート90側から見て、冷却速度制御部材41a〜41fの後方にある空間である。後方冷却空間422は、冷却空間420の一部である。冷却空間420において、後方冷却空間422は、後方冷却空間422以外の空間と仕切られている。具体的には、ガラスシート90の幅方向における、後方冷却空間422の両側部は、冷却速度制御部材41a〜41fと同じ形状を有するチャンネル等の部材によって仕切られている。後方冷却空間422の、冷却速度制御部材41a〜41fと対向する側部は、成形装置400の内壁や断熱部材によって仕切られている。後方冷却空間422の上部および下部は、それぞれ、冷却器51aおよび下部仕切り部材60によって仕切られている。後方冷却空間422は、冷却器51b〜51fによって、ガラスシート90の進行方向に沿って、複数の冷却室422a〜422fに分割されている。
【0041】
(2−4−2)端部冷却装置
端部冷却装置42は、冷却空間420において、ガラスシート90の幅方向の両端部を冷却するユニットである。端部冷却装置42は、図2に示されるように、ガラスシート90の幅方向の両端部90bにおいて、ガラスシート90の両表面と対向する位置に設置されている。端部冷却装置42は、ガラスシート90の幅方向において、冷却速度制御部材41a〜41fの両側に設置されている。また、図2に示されるように、複数の端部冷却装置42が、ガラスシート90の流下方向に沿って設置されている。
【0042】
図6は、端部冷却装置42の外観図である。端部冷却装置42は、主として、水冷板42aと、給水管42bと、排水管42cとから構成されている。水冷板42aは、熱伝導率が比較的高く、耐酸化性および耐熱性に優れた部材で構成されている。本実施形態では、水冷板42aは、ステンレスで成形されている。水冷板42aは、冷却水が流れる流路を内部に有している。給水管42bおよび排水管42cは、水冷板42aの流路と連通している。水冷板42aは、ガラスシート90の表面と対応する表面を有している。端部冷却装置42は、ガラスシート90に対して、近接または離反させることができる構造を有している。
【0043】
冷却水は、給水管42bを通って、水冷板42aの流路に供給される。水冷板42aの流路を通過して温められた冷却水は、排水管42cから排出される。ガラスシート90の幅方向の両端部90bは、水冷板42aからの輻射熱伝達によって冷却される。
【0044】
冷却速度制御部材41a〜41fおよび端部冷却装置42によって、ガラスシート90の両端部90bは、ガラスシート90の中央領域90aよりも大きい速度で冷却される。これにより、端部冷却装置42は、ガラスシート90の幅方向の収縮を抑制すると共に、ガラスシート90の幅方向に所要の温度分布を形成することができる。
【0045】
(2−4−3)保温部材
保温部材43は、図5に示されるように、冷却速度制御部材41aの下側の折り曲げ部62aに固定されている。すなわち、保温部材43は、後方冷却空間422に設置されている。冷却速度制御部材41aは、その長手方向に沿って、複数の保温部材43が取り付けられている。保温部材43は、ガラスシート90の中央領域90aの温度が軟化点近傍になるまでの空間の少なくとも一部において、ガラスシート90の肉厚分布形状に応じて、ガラスシート90の幅方向において間欠的に、かつ、不規則に配置されている。ここで、軟化点近傍は、ガラスシート90の軟化点に100℃を足した温度から、ガラスシート90の軟化点から100℃を引いた温度までの温度領域である。保温部材43は、ガラスシート90の中央領域90aの温度が軟化点より低い空間において、ガラスシート90の幅方向の中央領域90aから両端部90bに向かってガラスシート90の温度が段階的または連続的に下がるような温度プロファイルを形成するために、ガラスシート90の幅方向において概ね規則的に、かつ、隙間無く配置されている。他の冷却速度制御部材41b〜41fのそれぞれも、冷却速度制御部材41aと同様に、複数の保温部材43が取り付けられている。
【0046】
保温部材43は、冷却速度制御部材41a〜41fからの放熱を抑制する。保温部材43は、例えば、セラミックファイバーボードおよびブランケットである。保温部材43によって、ガラスシート90の厚みおよび反りが制御される。例えば、ガラスシート90の幅方向の中央領域90aの温度が軟化点近傍まで冷却される空間の少なくとも一部において、保温部材43の寸法を適宜に調節することによって、ガラスシート90の幅方向の板厚分布に応じて、ガラスシート90の厚みが制御される。
【0047】
また、保温部材43を用いることによって、ガラスシート90の幅方向の温度分布を制御することができる。これにより、ガラスシート90の板厚偏差および反りを低減するために適したガラスシート90の温度分布を実現することができる。
【0048】
また、保温部材43の寸法を適宜に調節することによって、ガラスシート90の中央領域90aから両端部90bに向かって、ガラスシート90の温度が段階的または連続的に下がるような温度プロファイルを形成することができる。これにより、平面度が所定の範囲内となるように、ガラスシート90の反りが制御される。このような温度プロファイルを形成するためには、例えば、冷却速度制御部材41b〜41fの長手方向の中央部に設置される保温部材43を、両端部に設置される保温部材43よりも厚くしたり高くしたりする。
【0049】
(2−5)冷却器
冷却器51a〜51fは、ガラスシート90の進行方向に沿って、後方冷却空間422を鉛直方向に分割する部材である。一対の後方冷却空間422のそれぞれは、図3に示されるように、5個の冷却器51b〜51fによって、6つの冷却室422a〜422fに分割されている。冷却室422a〜422fは、それぞれ、ガラスシート90側から見て、冷却速度制御部材41a〜41fの後方にある空間である。冷却室422aは、6つの冷却室422a〜422fの内、ガラスシート90の流下方向に対して、最も上流に位置している。冷却室422fは、6つの冷却室422a〜422fの内、ガラスシート90の流下方向に対して、最も下流に位置している。なお、冷却室422a〜422fの少なくとも一部が、冷却器51a〜51fによって冷却されていればよい。
【0050】
図3に示されるように、冷却器51aは、冷却速度制御部材41aの上側の折り曲げ部62aの高さ位置に設置されている。冷却器51bは、冷却速度制御部材41aと冷却速度制御部材41bとの間の高さ位置に設置されている。すなわち、冷却器51bは、冷却速度制御部材41aに対応する冷却室422aと、冷却速度制御部材41bに対応する冷却室422bとの間の高さ位置に設置されている。同様に、冷却器51cは、冷却速度制御部材41bと冷却速度制御部材41cとの間の高さ位置に設置されている。すなわち、冷却器51cは、冷却速度制御部材41bに対応する冷却室422bと、冷却速度制御部材41cに対応する冷却室422cとの間の高さ位置に設置されている。他の冷却器51d〜51fに関しても、同様である。
【0051】
冷却室422aは、冷却速度制御部材41a、冷却器51aおよび冷却器51bによって取り囲まれ、冷却室422bは、冷却速度制御部材41b、冷却器51bおよび冷却器51cによって取り囲まれている。冷却室422c〜422eに関しても、同様である。冷却室422fは、冷却速度制御部材41f、冷却器51fおよび下部仕切り部材60によって取り囲まれている。
【0052】
各冷却器51a〜51fは、同じ構成を有している。次に、冷却器51bの構成について説明する。なお、以下の説明は、他の冷却器51a,51c〜51fにも適用可能である。冷却器51bは、主として、断熱板52bと、冷媒管53bと、支持部54bとから構成される。図7は、冷却器51bを下方から見た外観図である。図8は、冷却器51bの側面図である。
【0053】
(2−5−1)断熱板
断熱板52bは、ガラスシート90の幅方向において、冷却速度制御部材41a〜41fとほぼ同じ長さを有している。断熱板52bは、冷却器51bによって隔てられている冷却室422aと冷却室422bとの間の熱の移動を抑制する。
【0054】
断熱板52bは、冷却器51bの上部に取り付けられる。すなわち、図7は、後方冷却空間422に設置される冷却器51bを、下方から見た外観図である。断熱板52bの長手方向は、冷却速度制御部材41a〜41fの長手方向、および、ガラスシート90の幅方向と平行である。断熱板52bは、0.07m2・K/W以上の熱抵抗を有することが好ましい。
【0055】
(2−5−2)冷媒管
冷媒管53bは、冷却器51bの下部に取り付けられる。冷媒管53bは、内部を冷却水が流れる管である。冷媒管53bは、断熱板52bの下面に取り付けられる。冷媒管53bは、主として、複数の角管91と、複数のロングエルボ92と、流入管93と、流出管94とから構成される。本実施形態では、図7に示されるように、冷媒管53bは、4本の角管91と、3個のロングエルボ92とを有している。なお、角管91、ロングエルボ92、流入管93および流出管94としては、市販のステンレスパイプおよび銅パイプ等が用いられる。角管91は、略正方形の断面形状を有する。ロングエルボ92、流入管93および流出管94は、略円形の断面形状を有する。
【0056】
4本の角管91は、断熱板52bの長手方向に沿って、断熱板52bの下面に取り付けられている。4本の角管91は、所定の間隔を空けて、互いに平行に設置されている。隣接する角管91間の間隔は、角管91の外径以上である。ロングエルボ92は、図7に示されるように、隣接する角管91の端部同士を連結するU字形の管である。流入管93および流出管94は、断熱板52bの両端に設置されている2本の角管91の端部に連結されている。流入管93および流出管94に連結されていない2本の角管91は、その両端部において、互いに異なる2本の角管91と、ロングエルボ92で連結されている。ロングエルボ92の断面積は、流入管93および流出管94の断面積と、ほぼ等しい。角管91の断面積は、流入管93および流出管94の断面積の4倍未満である。
【0057】
冷媒管53bの内部を流れる水は、流入管93から供給されて、角管91およびロングエルボ92を交互に流れて、流出管94から排出される。冷媒管53b内部を流れる水は、図7に示されるように、断熱板52bの長手方向において、複数回往復する。
【0058】
(2−5−3)支持部
支持部54bは、冷却器51bの両側部に取り付けられる。一対の支持部54bは、それぞれ、4本の角管91の端部に連結されている。角管91は、図8に示されるように、熱伝セメント96によって支持部54bに固着されている。4本の角管91の上端面は、図8に示されるように、管平面95に含まれる。管平面95は、4本の角管91の上端面を含む仮想上の平面である。管平面95は、断熱板52bの下面と平行な平面である。断熱板52bは、管平面95と接した状態で、4本の角管91の上端面に、その自重を預けて支持されている。すなわち、4本の角管91の上端面は、断熱板52bの下面と接着する面である。
【0059】
支持部54bは、冷却空間420を構成する壁面に固定されている。冷却器51bは、一対の支持部54bによって、その両端部が支持された状態で、後方冷却空間422に設置されている。冷却器51bは、その長手方向の中央部の自重によるたわみ量が20mm以下であるような剛性を有している。
【0060】
(2−6)下部仕切り部材
下部仕切り部材60は、冷却ユニット40の下方に設置される板状の断熱部材である。下部仕切り部材60は、図3に示されるように、ガラスシート90の厚み方向の両側に設置される。下部仕切り部材60は、冷却空間420と、冷却空間420の下方の徐冷空間430とを鉛直方向に仕切る。下部仕切り部材60は、冷却空間420から徐冷空間430への熱の移動を遮断する。
【0061】
(2−7)引下げローラ
引下げローラ70は、図2および図3に示されるように、徐冷空間430に設置され、ガラスシート90を引き下げるための部材である。徐冷空間430は、ガラスシート90が引下げローラ70によって引き下げられながら徐々に冷却される空間である。引下げローラ70は、ガラスシート90の厚み方向の両側、および、ガラスシート90の幅方向の両端部に設置されている。引下げローラ70は、モータ駆動により回転する。引下げローラ70の回転によって、ガラスシート90は引き下げられる。
【0062】
ガラスシート90の中央領域90aの温度が徐冷点になるまでのガラスシート90の平均冷却速度は、ガラスシート90の中央領域90aの温度が徐冷点から歪点より50℃低い温度になるまでのガラスシート90の平均冷却速度より大きい。ガラスシート90の中央領域90aの温度が徐冷点になるまで冷却される空間は、冷却空間420である。ガラスシート90の中央領域90aの温度が徐冷点から歪点より50℃低い温度になるまで冷却される空間は、徐冷空間430の一部の空間である。
【0063】
(2−8)制御装置
制御装置は、主として、CPU、RAM、ROMおよびハードディスク等から構成される。制御装置は、冷却ローラ30、端部冷却装置42、冷却器51a〜51fおよび引下げローラ70等と接続されている。制御装置は、例えば、冷却ローラ30および引下げローラ70の回転速度を調節する。制御装置は、例えば、端部冷却装置42の水冷板42aを通過する冷却水の流量を調節する。制御装置は、例えば、冷却器51aの冷媒管53aを通過する冷却水の流量を調節する。
【0064】
(3)ガラス基板製造装置の動作
成形体10の溝12からオーバーフローした熔融ガラス80は、成形体10の両側面を伝って流下して、成形体10の下端の近傍で合流する。合流した熔融ガラス80は、ガラスシート90になる。ガラスシート90は、連続的に成形され、冷却空間420および徐冷空間430を流下しながら冷却される。
【0065】
冷却空間420では、最初に、冷却ローラ30によって、ガラスシート90の幅方向の両端部が急冷される。次に、冷却ユニット40によって、ガラスシート90の冷却速度が調節されながら、ガラスシート90が徐冷点近傍まで冷却される。徐冷空間430では、ガラスシート90は、引下げローラ70によって引き下げられながら徐々に冷却される。冷却されたガラスシート90は、所定の寸法に切断されて、製品サイズのガラス基板が得られる。
【0066】
(4)ガラス基板製造装置の特徴
(4−1)
本実施形態に係る冷却器51b(以下、他の冷却器51a,51c〜51fについても同様である。)では、角管91の断面積は、ロングエルボ92、流入管93および流出管94の断面積の4倍未満であり、流入管93と角管91との連結部、角管91とロングエルボ92との連結部、および、角管91と流出管94との連結部において、冷媒管53bの流路断面積の変化率が、所定の値未満に抑えられている。すなわち、冷媒管53bの流路全体は、流路断面積が急激に拡大する部分、および、流路断面積が急激に縮小する部分を有さない。
【0067】
熱交換に用いられる液体冷媒が内部を流れる冷媒管が、流路断面積が急激に変化する部分を有している場合、冷媒管の内部に、冷媒の流れが滞留する部分が発生する。冷媒が滞留する部分では、冷媒管を流れる冷媒と、冷媒管の周囲の雰囲気との熱交換効率が低下する。また、冷媒の清浄度が低い場合、冷媒が滞留する部分において、冷媒に含まれる不純物が沈降および堆積して、冷媒管が詰まる原因となる可能性がある。また、流路断面積が急激に変化する等、冷媒管の流路形状が複雑である場合、冷媒管に冷媒を満たす際に冷媒管内部の空気が完全に抜け切らないおそれがある。これにより、冷媒に接していない冷媒管の壁面が、局所的に加熱および酸化され、破損する可能性がある。
【0068】
本実施形態では、上述したように、冷媒管53bは、流路断面積が急激に変化する部分を有さないので、冷媒が滞留する部分の発生が抑えられる。そのため、冷媒管53b内部を流れる冷媒と、冷媒管53bの周囲の雰囲気との熱交換の効率が低下することが抑制され、冷媒に含まれる不純物で冷媒管53bが詰まることが抑制される。また、冷媒管53b内部に空気が滞留する部分が発生することが抑制されるため、冷媒管53bの壁面が局所的に加熱されて破損することが抑制される。
【0069】
従って、本実施形態に係る冷却器51a〜51fは、熱交換効率の低下を抑制することができるので、冷却器51a〜51fを備えるガラス基板製造装置100は、成形されたガラスシート90が冷却される冷却空間420において、ガラスシート90と効率的に熱交換を行うことができる。
【0070】
(4−2)
本実施形態に係る冷却器51bでは、冷媒管53bを構成する4本の角管91の上端面は同一の管平面95に含まれる。断熱板52bは、4本の角管91によって支持されている。断熱板52bは、冷却器51bの上方の冷却室422aと、冷却器51bの下方の冷却室422bとを分離する。そのため、冷却室422aと冷却室422bとの間において、気流の移動が発生せず、熱移動が遮断されている。
【0071】
これにより、断熱板52bの下面に取り付けられる冷媒管53bと、冷却器51bの下方の冷却室422bの雰囲気との間の熱交換が行われる。一方、冷媒管53bと、冷却器51bの上方の冷却室422aの雰囲気との間の熱交換は、断熱板52bによって抑制される。すなわち、冷却器51bは、冷却室422aに接している冷却速度制御部材41aの温度に影響を与えることなく、冷却室422bに接している冷却速度制御部材41bの温度を調節することができる。
【0072】
そのため、冷却器51a〜51fは、それぞれ、冷却速度制御部材41a〜41fの温度のみを調節することができる。これにより、例えば、制御装置を用いて、各冷却器51a〜51fを通過する冷媒の流量を制御することで、各冷却速度制御部材41a〜41fの温度を独立に調節することができる。
【0073】
従って、本実施形態に係る冷却器51a〜51fは、冷却速度制御部材41a〜41fを介して、ガラスシート90と効率的かつ制御性に優れた熱交換を行うことができる。これにより、冷却器51a〜51fは、ガラスシート90の冷却速度を適切に制御することができる。
【0074】
(4−3)
本実施形態に係る冷却器51bでは、4本の角管91が、間隔を空けて互いに平行に配置されている。各角管91の上端面は、断熱板52bの下面に接着されている。そのため、冷却器51bの各角管91の上端面以外の3つの面は、冷却室422bの雰囲気に接している。このように、4本の角管91が間隔を空けて配置されることで、冷却室422bと接する角管91の表面積を大きく取れるので、冷却器51bの熱交換効率が向上する。
【0075】
従って、本実施形態に係る冷却器51a〜51fは、高い熱交換効率を有するので、冷却器51a〜51fを備えるガラス基板製造装置100は、ガラスシート90が冷却される冷却空間420において、ガラスシート90と効率的に熱交換を行うことができる。また、4本の角管91が間隔を空けて配置されている構成によって、冷却器51bの軽量化を実現することができる。
【0076】
(4−4)
本実施形態に係る冷却器51bでは、冷媒管53bの流路の大部分を占める角管91は、断熱板52bの下面に取り付けられ、かつ、ロングエルボ92、流入管93および流出管94のみが、図8に示されるように、角管91の下端面から下方に突出している。ロングエルボ92、流入管93および流出管94は、角管91の端部に連結されている。そのため、冷却器51bの長手方向の両端部を除いて、冷却器51bの高さ寸法は、断熱板52bの高さ寸法と、角管91の高さ寸法とを合わせた値以内に納まっている。
【0077】
従って、本実施形態に係る冷却器51a〜51fは、その長手方向の両端部を除いて、高さ寸法を抑えることができる。そのため、冷却空間420の高さ寸法が制限されている場合においても、熱交換効率を低下させることなく、複数の冷却器51a〜51fを設置することができる。
【0078】
(4−5)
本実施形態に係る冷却器51bでは、冷媒管53bを構成する角管91、ロングエルボ92、流入管93および流出管94として、市販のステンレスパイプおよび銅パイプ等が用いられる。また、冷媒管53bを組み立てるためには、角管91とロングエルボ92との連結部、角管91と流入管93との連結部、および、角管91と流出管94との連結部を全周溶接するだけでよい。
【0079】
従って、本実施形態に係る冷却器51a〜51fは、単純な構造を有する冷媒管53bを備えるので、冷媒管53bを組み立てるための工数およびコストを抑えることができる。
【0080】
(4−6)
本実施形態に係る冷却器51bでは、角管91の両端部は、熱伝セメント96によって一対の支持部54bに固着されている。熱伝セメント96は、高い熱伝導率を有するので、支持部54bは、角管91内部を流れる冷媒によって冷却されやすい。
【0081】
支持部54bの一方の端部は、冷却速度制御部材41bの近傍に位置しているため、流下しているガラスシート90の熱によって加熱されやすい。支持部54bが加熱されて酸化すると、支持部54bの破損および熱変形が発生するおそれがある。
【0082】
本実施形態では、角管91内部を流れる冷媒によって支持部54bが冷却されやすいので、支持部54bの破損および熱変形が抑制される。
【0083】
(4−7)
本実施形態に係る冷却器51bは、一対の支持部54bによって、その両端部が支持された状態で設置されている。冷却器51bは、その長手方向の寸法に関わらず、その長手方向の中央部の自重によるたわみ量が20mm以下であるような剛性を有している。そのため、冷却器51bの両端部のみが一対の支持部54bによって支持されている状態においても、冷却器51bの中央部は、自重によってほとんど垂れ下がらない。すなわち、冷却器51bの中央部は、他の支持部材によって支持される必要がない。
【0084】
従って、冷却器51bは、その長手方向の中央部が他の支持部材によって支持される必要がないので、熱交換効率の低下を抑制することができる。また、冷却器51bは、その長手方向の中央部の近傍の空間へのアクセスが妨げられない。そのため、冷却器51bが設置される後方冷却空間422を、冷却器51bの長手方向において、効率的に利用することができる。
【0085】
(4−8)
本実施形態に係るガラス基板製造装置100では、冷却空間420において、ガラスシート90の流下方向に沿って、複数の冷却速度制御部材41a〜41fが設置されている。冷却速度制御部材41a〜41fは、それぞれ、冷却室422a〜422fに接している。冷却室422a〜422fは、それぞれ、冷却器51a〜51fによって冷却される。すなわち、冷却器51a〜51fは、それぞれ、冷却速度制御部材41a〜41fの温度を調節する。これにより、流下されながら冷却されるガラスシート90の冷却速度が制御される。
【0086】
従来のガラス基板製造装置では、例えば、成形体の下端から離れた直後のガラスシートを急速に冷却するために、冷却用の気体を冷却速度制御部材に吹き付けて、ガラスシートの温度を調節する方法が用いられていた。しかし、この方法では、冷却速度制御部材に吹き付けられる気体の、ガラスシート幅方向における僅かな流量差に起因して、ガラスシートの温度差が発生するため、ガラスシートの温度を調節しにくい。また、冷却速度制御部材に吹き付けられる気体の一部が、意図せず漏れ出してガラスシートに衝突することに起因して、ガラスシートの温度差が発生するおそれがある。そのため、この方法では、ガラスシートの冷却速度を調整することが困難であるため、ガラスシートの板厚偏差が増加してしまう問題がある。
【0087】
本実施形態に係るガラス基板製造装置100では、冷却器51a〜51fは、それぞれ、冷却速度制御部材41a〜41fの温度を独立して調節することができる。そのため、冷却器51a〜51fは、ガラスシート90の流下方向に沿って、ガラスシート90の冷却速度を所望の値に容易に調節することができる。従って、ガラス基板製造装置100は、ガラスシート90の板厚偏差を増加させることなく、ガラスシート90を効率的に量産することができる。
【0088】
(5)変形例
(5−1)変形例A
本実施形態に係る冷却器51b(以下、他の冷却器51a,51c〜51fについても同様である。)では、熱交換用の冷媒が内部を流れる角管91は、略正方形の断面形状を有する管である。しかし、角管91の代わりに、略円形の断面形状を有する円管が用いられてもよい。
【0089】
図9および図10は、本実施形態に係る冷却器51bの変形例である冷却器151bを表す。図9は、冷却器151bの上面図である。図10は、冷却器151bの側面図である。冷却器151bは、主として、断熱板152bと、冷媒管153bと、支持部154bとから構成される。なお、冷却器151bは、本実施形態に係る冷却器51bと同じ位置に配置され、かつ、同じ効果を有する。
【0090】
冷却器151bの断熱板152bおよび支持部154bは、それぞれ、本実施形態に係る冷却器51bの断熱板52bおよび支持部54bと、同一の構成を有している。冷却器151bの冷媒管153bは、本実施形態に係る冷却器51bの冷媒管53bと、異なる構成を有している。冷媒管153bは、図9に示されるように、4本の円管191と、3個のロングエルボ192と、流入管193と、流出管194とから構成される。円管191の断面積は、ロングエルボ192と、流入管193および流出管194の断面積と、ほぼ同じである。ロングエルボ192、流入管193および流出管194は、熱伝セメント196によって支持部154bに固着されている。
【0091】
4本の円管191は、間隔を空けて互いに平行に配置されている。各円管191の上端は、断熱板152bの下面に接着されている。流入管193および流出管194は、断熱板152bの両端に設置されている2本の円管191の端部に連結されている。流入管193および流出管194に連結されていない2本の円管191は、その両端部において、互いに異なる2本の円管191と、ロングエルボ192で連結されている。
【0092】
本変形例では、図10に示されるように、ロングエルボ192および流入管193は、円管191と同じ高さ位置に設置されている。流出管194は、円管191との連結部を除く部分において、円管191より低い高さ位置にある。
【0093】
冷媒管153bの内部を流れる冷却水は、流入管193から流入して、円管191およびロングエルボ192を交互に流れて、流出管194から流出する。冷媒管153bの内部を流れる冷却水は、図9に示されるように、断熱板152bの長手方向において、複数回往復する。
【0094】
本変形例では、冷却器151bの冷媒管153bは、円管191を有している。円管191は、本実施形態の角管91と比べて、断熱板152bとの接着面積が小さい。しかし、4本の円管191が間隔を空けて配置されている構成により、断熱板152bの下方の冷却室と接する円管191の表面積が大きい。従って、冷却器151bは、本実施形態に係る冷却器51bと同様に、高い熱交換効率を有する。
【0095】
(5−2)変形例B
本実施形態に係る冷却器51bでは、冷媒管53bは、間隔を空けて複数回往復するように配置されている。具体的には、冷媒管53b内部を流れる冷媒は、4本の角管91を通過することで、断熱板52bの長手方向に沿って、2回往復する。しかし、冷媒管53bの往復回数は、角管91の断面積および断熱板52bの寸法等に応じて、適宜に変更されてもよい。
【0096】
また、角管91の断面積も、適宜に変更されてもよい。本実施形態では、角管91の断面積は、流入管93および流出管94の断面積の4倍未満である。しかし、角管91の断面積は、流入管93および流出管94の断面積とほぼ同じであることが好ましい。これにより、角管91と流入管93との連結部等における、冷媒管53bの流路断面積の変化率が抑えられるので、冷媒の流れが滞留する部分がより発生しにくくなる。
【0097】
(5−3)変形例C
本実施形態に係る冷却器51bでは、冷媒管53bの角管91は、ステンレスパイプおよび銅パイプ等で成形されている。角管91の上端面以外の3つの面は、冷却室422bの雰囲気に接している。そのため、角管91の上端面以外の3つの面に、高放射率塗料が塗布されてもよい。これにより、角管91の熱輻射の吸収率が増加するので、角管91内部を流れる冷媒と、冷却室422bの雰囲気との熱交換効率が向上する。
【0098】
なお、角管91の表面に高放射率塗料を塗布する前に、角管91の表面をサンドブラスト加工してもよい。これにより、角管91の表面における高放射率塗料の付着性が向上する。
【0099】
(5−4)変形例D
本実施形態に係る冷却器51bでは、冷媒管53bは、4本の角管91を有している。しかし、4本の角管91の内、熱源に近い位置にあり加熱されやすい角管91が、「変形例A」の円管191で置き換えられてもよい。具体的には、冷却速度制御部材41a〜41fに最も近い位置にある角管91が、円管191で置き換えられてもよい。
【0100】
冷却速度制御部材41a〜41fに最も近い位置にある角管91において、冷却速度制御部材41a〜41fと対向する面である対向面と、対向面に対して直角に連結している面との間では、熱輻射熱伝導により受ける熱量が大きく異なる。そのため、この角管91には、その表面に応じて大きな温度差が生じるので、その温度差に起因する熱変形によって、角管91の角部に大きな応力が発生するおそれがある。これにより、角管91が破損するおそれがある。そのため、熱源に近い位置にある角管91は、円管191で置き換えられることが好ましい。
【0101】
(5−5)変形例E
本実施形態では、冷却速度制御部材41a〜41fの材料として、純ニッケルが用いられているが、熱伝導率の高い他の材料、例えば、モリブデン、焼結SiC、再結晶SiC、人造黒鉛、鉄およびタングステンが用いられてもよい。
【0102】
しかし、モリブデンは、非酸化雰囲気下で用いられることが好ましい。また、モリブデンを酸化雰囲気下で用いる場合には、冷却速度制御部材41a〜41fに耐酸化コートを施すことが好ましい。また、焼結SiCおよび再結晶SiCは、酸化雰囲気下で用いることができ、人造黒鉛、鉄およびタングステンは、非酸化雰囲気下で用いることができる。
【0103】
(5−6)変形例F
本実施形態では、冷却速度制御部材41a〜41fとして、チャンネル(溝形鋼)が用いられているが、他の形状を有する金属部材が用いられてもよい。この場合、鉛直方向に隣接している冷却速度制御部材41a〜41f同士の接触を最小限にすることで、隣接している冷却速度制御部材41a〜41f同士の熱伝導が抑えられる構成が好ましい。
【0104】
(5−7)変形例G
本実施形態では、幅方向の長さが2200mmであるガラスシート90を冷却するためのガラス基板製造装置100として、冷却速度制御部材41a〜41fの長手方向の長さ、および、冷却速度制御部材41a〜41fの数を例示した。しかし、ガラス基板製造装置100によって製造されるガラスシート90の幅方向の長さおよび厚み等に応じて、冷却速度制御部材41a〜41fの長手方向の長さ、および、冷却速度制御部材41a〜41fの数が変更されてもよい。
【0105】
(5−8)変形例H
本実施形態において、冷却速度制御部材41aの主部63aは、鉛直方向に延びているが、例えば、鉛直方向に対して傾斜し、または、鉛直方向に沿って凸凹部が形成されてもよい。これにより、ガラスシート90の表面に沿って発生する上昇気流が抑制され、鉛直方向におけるガラスシート90の冷却速度の差を抑えることができる。従って、本変形例では、冷却空間420において、ガラスシート90をほぼ一定の速度で冷却することができる。
【0106】
(5−9)変形例I
本実施形態において、後方冷却空間422は、5個の冷却器51b〜51fによって、ガラスシート90の進行方向に沿って、6個の冷却室422a〜422fに分割されている。しかし、後方冷却空間422は、少なくとも一部が冷却器51a〜51fによって分割されていれば、他の断熱部材等によって分割されてもよい。
【0107】
(5−10)変形例J
本実施形態において、冷却室422a〜422fは、それぞれ、冷却器51a〜51fによって冷却される。しかし、冷却室422a〜422fは、少なくとも一部が冷却器51a〜51fによって冷却されていれば、例えば、本実施形態に係る冷却器51a〜51fと異なる構成を有する冷却器、および、他の冷却手段によって冷却されてもよい。
【符号の説明】
【0108】
10 成形体
41a〜41f 冷却速度制御部材
42 端部冷却装置
43 保温部材
51a〜51f 冷却器
52b 断熱板
53b 冷媒管
80 熔融ガラス
90 ガラスシート
95 管平面
422 後方冷却空間
422a〜422f 冷却室
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】
【特許文献1】国際公開第2012/018072号パンフレット
【特許文献2】特表第2009−502706号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10