特許第5969706号(P5969706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許5969706-光電部品および光電部品の製造方法 図000002
  • 特許5969706-光電部品および光電部品の製造方法 図000003
  • 特許5969706-光電部品および光電部品の製造方法 図000004
  • 特許5969706-光電部品および光電部品の製造方法 図000005
  • 特許5969706-光電部品および光電部品の製造方法 図000006
  • 特許5969706-光電部品および光電部品の製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969706
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】光電部品および光電部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/60 20100101AFI20160804BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   H01L33/60
   B29C45/17
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-527904(P2015-527904)
(86)(22)【出願日】2013年8月21日
(65)【公表番号】特表2015-529393(P2015-529393A)
(43)【公表日】2015年10月5日
(86)【国際出願番号】EP2013067383
(87)【国際公開番号】WO2014029804
(87)【国際公開日】20140227
【審査請求日】2015年3月12日
(31)【優先権主張番号】102012107829.7
(32)【優先日】2012年8月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン,デイヴィッド
【審査官】 金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−047787(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/150824(WO,A1)
【文献】 特開2007−157805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
B29C 45/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの第1の凹部(3A)を有するハウジング(2)と、
前記第1の凹部(3A)内に配置された少なくとも一つの第1の半導体チップ(4A)と、
を備えた光電部品(1)であって、
前記第1の凹部(3A)は、前記第1の半導体チップ(4A)の動作中に生成される放射を反射するための第1のリフレクタとして構成されており、
前記第1のリフレクタは、前記第1の半導体チップ(4A)の動作中に放出される放射の放射特性(6)を目的に応じて調整し得るように構成された表面と、前記第1の凹部(3A)の表面上に形成された金属層とを有し、
前記ハウジング(2)は、第2のリフレクタとして構成された少なくとも1つの第2の凹部(3)を有し、
前記第2のリフレクタは、前記第2の凹部(3)の表面上に形成された金属層を有し、
該第2の凹部(3)内に第2の半導体チップ(4)が配置され、
前記第1のリフレクタは、前記第1の半導体チップ(4A)から放出される放射を拡散反射させるように構成され、
前記第2のリフレクタは、前記第2の半導体チップ(4)から放出される放射を指向性反射させるように構成され、
前記第1の凹部(3A)と前記第2の凹部(3)は、同一の表面粗さを有し、
前記第1の凹部(3A)の表面上に形成された金属層と前記第2の凹部(3)の表面上に形成された金属層は、異なる厚さを有する、光電部品(1)。
【請求項2】
少なくとも一つの第1の凹部(3A)を有するハウジング(2)と、
前記第1の凹部(3A)内に配置された少なくとも一つの第1の半導体チップ(4A)と、
を備えた光電部品(1)であって、
前記第1の凹部(3A)は、前記第1の半導体チップ(4A)の動作中に生成される放射を反射するための第1のリフレクタとして構成されており、
前記第1のリフレクタは、前記第1の半導体チップ(4A)の動作中に放出される放射の放射特性(6)を目的に応じて調整し得るように構成された表面と、前記第1の凹部(3A)の表面上に形成された金属層とを有し、
前記ハウジング(2)は、第2のリフレクタとして構成された少なくとも1つの第2の凹部(3)を有し、
前記第2のリフレクタは、前記第2の凹部(3)の表面上に形成された金属層を有し、
前記第2の凹部(3)内に第2の半導体チップ(4)が配置され、
前記第1の凹部(3A)と前記第2の凹部(3)は、異なった表面粗さを有し、
前記第1の凹部(3A)の表面上に形成された金属層と前記第2の凹部(3)の表面上に形成された金属層は、略同一の厚さを有し、
前記第1のリフレクタの表面粗さは、前記第2のリフレクタの表面粗さよりも大きい、
光電部品(1)。
【請求項3】
前記第1のリフレクタの表面粗さは、前記第2のリフレクタの表面粗さよりも大きく、
及び/又は、
前記第1のリフレクタ及び第2のリフレクタの各表面は、少なくとも部分的に金属層を有し、前記第1のリフレクタの前記金属層は、前記第2のリフレクタの前記金属層よりも薄い、
請求項1に記載の光電部品(1)。
【請求項4】
前記第1のリフレクタの前記表面は、少なくとも1つの第1の領域と少なくとも1つの第2の領域とを有し、
前記第1のリフレクタの前記表面の前記第1の領域は、前記第1の半導体チップ(4A)から放出される放射を拡散反射させるように構成され、
前記第1のリフレクタの前記表面の前記第2の領域は、前記第1の半導体チップ(4A)から放出される放射を、前記第1の領域よりも指向性を有するように反射させるように構成されている、請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の光電部品(1)。
【請求項5】
前記第1のリフレクタの前記表面の前記第1の領域は、前記第1のリフレクタの前記表面の前記第2の領域よりも大きな表面粗さを有している、請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の光電部品(1)。
【請求項6】
前記第1の領域の表面粗さは、前記第1の半導体チップ(4A)から放出される放射の波長以上であり、
前記第2の領域の表面粗さは、前記第1の半導体チップ(4A)から放出される放射の波長よりも小さい、請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の光電部品(1)。
【請求項7】
前記第1のリフレクタの表面粗さは、前記第2のリフレクタの表面粗さよりも大きい、請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の光電部品(1)。
【請求項8】
前記第1のリフレクタの表面粗さは、前記第1の半導体チップ(4A)から放出される放射の波長以上であり、前記第2のリフレクタの表面粗さは、前記第2の半導体チップ(4)から放出される放射の波長よりも小さい、請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の光電部品(1)。
【請求項9】
前記ハウジング(2)はプラスチックから形成されている、請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載の光電部品(1)。
【請求項10】
前記第1のリフレクタの表面は、少なくとも部分的に金属層を有し、
前記第2の領域における前記金属層は、前記第1の領域における前記金属層よりも厚い、請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の光電部品(1)。
【請求項11】
前記第1のリフレクタおよび前記第2のリフレクタのそれぞれの表面は、少なくとも部分的に金属層を有し、
前記第1のリフレクタの前記金属層は、前記第2のリフレクタの前記金属層よりも薄い、請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載の光電部品(1)。
【請求項12】
請求項1から請求項11のうちいずれか一項に記載の光電部品(1)を製造するための方法において、
表面を有する少なくとも一つの凹部(3A)が形成されており、プラスチック材料からなるハウジング(2)を射出成型法により用意するステップと、
前記少なくとも1つの半導体チップ(4A)を用意するステップと、
動作中に前記光電部品(1)から放出される放射の放射特性(6)を目的に応じて調整するために反射表面(5)を形成する前記凹部(3A)の前記表面の1つの領域に少なくとも前記金属層を電気めっきまたは無電解めっきするステップと、
前記半導体チップ(4A)を前記凹部(3A)内に配置するステップと、
前記ハウジング(2)の射出形成前に射出金型又は射出成形型の表面を研磨するステップと、
を含み、
前記ハウジング(2)は、第2のリフレクタとして構成された少なくとも1つの第2の凹部(3)を有し、該第2の凹部(3)内に第2の半導体チップ(4)が配置され、
前記第1のリフレクタは、前記第1の半導体チップ(4A)から放出される放射を拡散反射させるように構成され、
前記第2のリフレクタは、前記第2の半導体チップ(4)から放出される放射を指向性反射させるように構成され
前記第1の凹部(3A)を形成するための射出成形過程において用いられる射出金型の表面は、前記第2の凹部(3)を形成するために用いられる射出金型の表面よりも研磨の時間が短い、及び/又は研磨の程度が軽度である、方法。
【請求項13】
前記第1の領域における前記金属層は、前記第2の領域における前記金属層よりも薄く、及び/又は前記少なくとも1つのリフレクタ内の前記金属層は、少なくとも1つの他のリフレクタ内の前記金属層よりも薄い、請求項1から請求項12のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から請求項11のうちいずれか一項に記載の光電部品(1)を製造するための方法において、
表面を有する少なくとも一つの凹部(3A)が形成されており、プラスチック材料からなるハウジング(2)を射出成形法により形成するステップと、
動作中に前記光電部品(1)から放出される放射の放射特性(6)を目的に応じて調整するために、前記ハウジング(2)の射出成形前に、射出金型の1つの表面の少なくとも1つの領域を研磨するステップと、
前記少なくとも1つの半導体チップ(4A)を用意するステップと、
反射表面(5)を形成する前記凹部(3A)の前記表面の1つの領域に少なくともスパッタリングまたは熱蒸着により前記金属層を蒸着するステップと、
前記半導体チップ(4A)を前記凹部(3A)内に配置するステップと、
を含む方法。
【請求項15】
前記第2の領域における前記表面は、前記射出金型の前記表面を研磨することにより、前記第1の領域における前記表面よりも滑らかであり、
及び/又は、前記少なくとも1つのリフレクタにおける前記表面は、前記射出金型の前記表面を研磨することにより、少なくとも1つの他のリフレクタにおける表面よりも滑らかである、請求項1から請求項14のうちいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光電部品が提供される。さらに、光電部品を製造するための方法が提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本出願の解決すべき課題は、特に効率的でコスト上好ましい光電部品を提供することである。さらに、本出願の解決すべき課題は、特に効率的でコスト上好ましい光電部品を製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
この課題は、請求項1の構成を備えた光電部品、および、請求項11および請求項13の構成を備えた方法によって解決される。
【0004】
1つの観点によれば、光電部品は少なくとも1つの第1の半導体チップを有している。光電部品は第2、第3、第4または更なる半導体チップを有していてよい。第1の半導体チップとは、好ましくはIII−V族半導体材料をベースにした半導体チップである。第1の半導体チップは電磁放射線を放射するために適している。第1の半導体チップは例えば光を放射する。しかし第1の半導体チップは紫外線(UV)または赤外線(IR)を放射してもよい。第1の半導体チップは好ましくはLEDチップである。
【0005】
第1の半導体チップは高出力半導体チップであってよい。すなわち、第1の半導体チップは少なくとも1Wの、特に少なくとも3Wの入力電力を有していてよい。第1の半導体チップは直接照明のために構成されていてよい。例えば、第1の半導体チップはカメラのフラッシュ機能のために光を放出するチップとして使用することができる。半導体チップは、光の状態が悪い場合にディスプレイを背面から照明するためにも特に好適に使用することができる。第1の半導体チップは、携帯電話のフラッシュ機能のために赤外線を放射することができ、或いは、距離センサ用のエミッターとして赤外線を放射することができる。
【0006】
これとは択一的に、第1の半導体チップは低エネルギー半導体チップであってよい。このケースでも、半導体チップは距離センサ用の赤外線エミッターとして機能することができる。これとは択一的に、半導体チップは種々の色を放射するために構成されていてよい。例えば半導体チップは着色光、多色光、または白色光を放射することができる。
【0007】
光電部品のすべての半導体チップは、すなわち第1、第2、第3、第4および他の各半導体チップは同一構成であってよい。これとは択一的に、光電部品が有利には異なるスペクトル範囲で放出を行うように構成された種々の半導体チップ、特に異なる半導体材料をベースにした半導体チップを含んでいてもよい。この場合、異なる半導体チップは異なる機能のために、例えば直接照明または間接照明のために設けられていてよい。
【0008】
光電部品は、ハウジングをさらに有している。光電部品は好ましくは表面実装可能な光電部品である(SMDまたはsurface mounted device)。特に、光電部品のハウジングは表面実装可能である。ハウジングは、第1の半導体チップを受容するために構成されている。ハウジングは、半導体チップを外部の影響から保護するために構成されている。ハウジングは少なくとも1つの第1の凹部を有している。凹部はハウジングのベース体に窪み、凹部、又は中空部として形成されている。原理的には、凹部のいかなる任意の形状も考えられる。例えば、凹部の開口は、該凹部を平面図で見て円形、角形または楕円形の形状を有していてよい。凹部は好ましくは漏斗状または円錐状に形成されている。第1の半導体チップは第1の凹部内に配置されている。好ましくは、第1の半導体チップは凹部の底部に固定されている。例えば、半導体チップは底部に結合され、すなわち特に蝋付けまたは導電性接着されている。この場合、凹部の底部上には、半導体チップを電気接続可能にする接続導線または接続個所が露出していてよい。
【0009】
第1の凹部は少なくとも部分的に、特に全体的に第1のリフレクタとして構成されている。第1の凹部または第1のリフレクタは、第1の半導体チップの動作中に生成される放射を反射させるように構成されている。第1の凹部または第1のリフレクタは1つの表面を有している。この表面は第1の半導体チップのまわりに配置されている。表面は反射性を持つように形成されている。表面は、動作中に第1の半導体チップから放射される放射の放射特性を目的に応じて調整するために形成されている。
【0010】
第1のリフレクタの表面の目的に応じた構成、および特に表面の特性の目的に応じた選択により、光電部品はその特定された使用にあたり、まさに必要な条件通りに適合され得る。
【0011】
例えば、表面は、少なくとも部分的に、特に全体的に、光電部品から放出された放射が指向性反射または鏡反射されるように構成されていてよい。特に、表面は、半導体チップから放出される放射を合焦させるように構成されていてよい。これに関連して、合焦または指向性反射とは、入射する放射が面法線に対し+/−15゜だけまたはこれ以下で散乱するということを意味している。これは、光電部品が赤外線を放射するために設けられている場合に特に有利であると指摘できる。赤外線は利用者によって、例えば携帯電話所有者によって知覚されず、その結果赤外線を放出する光電部品、例えば携帯電話の赤外線フラッシュ機能用の光電部品は、赤外線カメラとともに使用され、惑わされるものとして、眩しいものとして、または不快なものとして知覚されない。
【0012】
これとは択一的に、表面は少なくとも部分的に、特に全体的に、光電部品から放出される放射が拡散するように、すなわち複数の方向に散乱及び/又は反射するように構成されていてよい。これに関連して、拡散する散乱及び/又は反射とは、入射する放射が面法線に対し+/−60゜だけ散乱することを意味している。これは、例えば、強すぎる合焦放射によって利用者を眩しくさせたり、惑わせたりしないようにするため、光電部品が可視放射を生成するために設けられている場合に特に有利である。
【0013】
これとは択一的に、表面は、光電部品から放出される放射を指向性反射または合焦放射させるとともに、拡散反射をもさせることができるように構成されていてよい。すなわち表面の異なる個所または異なる領域で表面は異なる態様で構成されていてよい。
【0014】
従って、表面を目的に応じて構成することにより、光電部品の放射特性を光学的要件に依存して光電部品に目的に応じて調整することができる。このようにして特に効率的な光電部品が提供される。放射特性を調整するために表面のみが対応的に構成されずに過ぎず、更なるコンポーネント、例えばレンズを必要としないので、光電部品は特にコスト上好ましい。
【0015】
光電部品の少なくとも1つの実施態様によれば、表面は少なくとも1つの第1の領域と少なくとも1つの第2の領域とを有している。第1の領域は、第2の領域の拡がりに対応する拡がりを有していてよい。これとは択一的に、第1の領域は第2の領域よりも大きくてもよく、或いはその逆であってもよい。表面の第1の領域は、例えば凹部の、半導体チップ付近に配置されている部分、すなわち凹部の底部付近に配置されている部分に配置されていてよい。第2の領域は、凹部の、半導体チップからより離れている部分、すなわち例えば光電部品のデカップリング面の領域に配置されていてよい。原理的には、凹部内での第1および第2の領域のいかなる空間的配置も可能である。
【0016】
表面の第1の領域は、第1の半導体チップから放出される放射を拡散反射及び/又は拡散散乱させるように構成されている。この場合、第1の領域は放射を特に光学的に拡張させることができる。表面の第2の領域は、第1の半導体チップから放出される放射を、第1の領域よりも指向性反射させるように構成されている。特に、表面の第2の領域は、半導体チップから放出される放射を合焦させるように構成されている。換言すれば、表面の、放射が入射する領域に依存して、拡散反射させるか、或いは、指向性反射させる。第1の領域に入射する放射は例えばすべての方向において(拡散)散乱されて、少なくとも部分的には第2の領域にも確実に入射し、該第2の領域により放射はさらに指向性反射される。これにより、光電部品に対する光学的要求と一致するように光電部品の放射特性を目的に応じて調整することができる。
【0017】
光電部品の少なくとも1つの実施態様によれば、表面の第1の領域は表面の第2の領域よりも大きな表面粗さを有している。表面粗さと、特に第1の領域の粗さ測定の絶対値の相加平均とは、好ましくは第1の半導体チップから放出される放射の波長以上となる。表面粗さが大きければ大きいほど、衝突する放射が第1の領域によって拡散反射する程度が大きい。
【0018】
好ましくは、表面粗さと、特に第1の領域の粗さ測定の絶対値の相加平均、すなわち平均粗値Raとは、第1の半導体チップから放出される放射の波長の1.0ないし2.0倍の大きさである。好ましくは、可視範囲(λ=0.4μmないし0.8μm)において放射される放射の半導体チップに対する第1の領域の平均粗値Raは、1μmと2μmの間、例えば1.5μm程度である。好ましくは、赤外線範囲(λ=約1μm)において放射される放射の半導体チップに対する第1の領域の平均粗値Raは、2μmよりも大きいかこれに等しく、例えば2.5μm程度である。この平均粗値の場合、半導体チップから放射される放射は第1の領域によって拡散反射する。
【0019】
表面粗さと、特に第2の領域の粗さ測定の絶対値の相加平均とは、好ましくは第1の半導体チップから放出される放射の波長よりも小さい。第2の領域の表面粗さが小さければ小さいほど、第2の領域に入射する放射は、より指向性をもって反射する。好ましくは、表面粗さと、特に第2の領域の粗さ測定の絶対値の相加平均とは、第1の半導体チップから放出される放射の波長の0.1ないし0.9倍の大きさである。半導体チップから放射される放射を第2の領域によって鏡反射させるため、赤外線を放射する半導体チップ(λ=約1μm)に対し、第2の領域の平均粗値Raは好ましくは0.1μmよりも小さいかこれに等しく、例えば0.09μmである。半導体チップから放射される放射を第2の領域によって鏡反射させるため、可視放射を放射する半導体チップ(λ=0.4μmないし0.8μm)に対し、第2の領域の平均粗値Raは好ましくは0.08μm以下であって、例えば0.04μm又は0.01μmである。
【0020】
光電部品の少なくとも1つの実施態様によれば、ハウジングは少なくとも1つの第2の凹部を有している。第2の凹部は特に第2のリフレクタとして構成されている。ハウジングは第3、第4またはそれ以上の、リフレクタとして構成される凹部を有していてもよい。第2または他の各凹部は、第1の凹部と同一構成されていてよい。特に、第2及び/又は他の各凹部は、底面とは逆の側の開口部の同一径及び/又は第1の凹部と同一の深さを有していてよい。第2及び/又は他の各凹部は、第1の凹部と同一の形状を有していてよい。これとは択一的に、第2及び/又は他の各凹部は第1の凹部と異なるサイズを有することができる。例えば、第2及び/又は他の各凹部は第1の凹部よりも小さなサイズまたは小さな径を有していてよい。同様に、第2及び/又は他の各凹部は第1の凹部よりも浅く形成されていてよい。第2及び/又は他の各凹部は、第1の凹部とは異なる形状を有していてよい。好ましくは、第2及び/又は他の各凹部は楕円形または円形に成形されている。
【0021】
第2の半導体チップは第2の凹部内に配置されている。好ましくは、第2の半導体チップは第2の凹部の底部上に結合され、すなわち特に蝋付けまたは導電性接着されている。第1のリフレクタは、特に第1のリフレクタの表面は、第1の半導体チップから放出される放射を少なくとも大部分拡散反射させるように構成されている。第2のリフレクタ、特に第2のリフレクタの表面は、第2の半導体チップから放出される放射を大部分指向性反射させるように構成されている。特に第2のリフレクタは、第2の半導体チップから放出される放射を、第1の半導体チップから放出される放射を反射させる第1のリフレクタよりもより指向性をもって反射させるように構成されている。
【0022】
この構成は、例えば赤外線を放出する半導体チップと、可視放射線を放出する半導体チップとを、1つの光電部品内で組み合わせるために特に有利である。赤外線を放出する半導体チップから放射される放射は、好ましくは指向性反射させることができる(第2の半導体チップ)。他の(第1の)半導体チップの可視放射線は、有利には拡散散乱及び/又は拡散反射せしめられる。このように、異なるスペクトル範囲で放射する多数の半導体チップの組み合わせが1つの光電部品内で可能である。
【0023】
光電部品の少なくとも1つの実施態様によれば、第1のリフレクタの表面粗さは第2のリフレクタの表面粗さよりも大きい。第1のリフレクタの表面粗さ、特に表面の粗さ測定の絶対値の相加平均は、好ましくは第1の半導体チップから放出される放射の波長よりも大きいかこれに等しい。この場合、表面粗さが大きければ大きいほど、それだけ拡散され、衝突する放射は第1のリフレクタまたは第1のリフレクタの表面によって反射及び/又は散乱せしめられる。好ましくは、第1のリフレクタの表面粗さ、特に表面の粗さ測定の絶対値の相加平均は、第1の半導体チップから放出される放射の波長の1.0倍ないし2.0倍の大きさである。
【0024】
第2のリフレクタの表面粗さ、特に表面の粗さ測定の絶対値の相加平均は、好ましくは第2の半導体チップから放出される放射の波長よりも小さい。第2のリフレクタの表面粗さが小さければ小さいほど、第2のリフレクタに入射する放射はそれだけ指向性をもって反射する。好ましくは、第2のリフレクタの表面粗さ、特に表面の粗さ測定の絶対値の相加平均は、第2の半導体チップから放出される放射の波長の0.1倍ないし0.9倍の大きさである。
【0025】
光電部品の少なくとも1つの実施態様によれば、ハウジングはプラスチックから形成されている。光電部品は例えばいわゆるMolded Interconnect Device (MID)技術を用いて形成されていてよい。この場合、ハウジングは射出成形法で製造される。これとは択一的に光電部品は、金属めっきフレーム実装(Metal Plated Frame Implementation) 技術を用いて形成されていてよい。この場合もハウジングは好ましくは射出成形法で製造される。金属めっきフレーム実装方法は文献WO2011/157515A1に詳細に記載されており、その開示内容をここでは援用する。
【0026】
光電部品の少なくとも1つの実施態様によれば、第1のリフレクタの表面は少なくとも部分的に金属層を有している。これは特に、MID技術を用いて形成されている光電部品に対するケースである。好ましくは、第1のリフレクタの表面全体が金属層を有している。金属層は、半導体チップの高い歩留まりを可能にする。金属層は、表面に入射する放射を反射させるために用いる。同時に金属層は光電部品の電気接続導体としても機能することができる。金属層は例えばアルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)及び/又は金(Au)を有していてよい。
【0027】
第1のリフレクタまたは第1の凹部の第2の領域にある金属層は、好ましくは第1のリフレクタまたは第1の凹部の第1の領域にある金属層よりも厚い。好ましくは、第1の領域の金属層は、第2の領域の金属層の厚さの10%ないし90%に相当する厚さを有している。金属層の下にあるプラスチック表面の粗さに依存して、第1の領域の金属層は1μm以下の厚さ、例えば0.05μmの厚さを有している。第2の領域の金属層は、好ましくは10μm以上の厚さ、例えば15μmの厚さを有している。
【0028】
第2の領域の金属層をより厚く構成することにより、第1のリフレクタの第2の領域は、第1のリフレクタの第1の領域よりも小さな表面粗さを有している。特に、第2の領域の表面は該第2の領域のより厚い金属層によって滑らかに形成されている。これにより、第2の領域に入射する放射は、第1の領域に入射する放射よりもより指向性をもって反射せしめられる。
【0029】
従って、金属層を目的に応じて蒸着することにより、光電部品の放射特性を目的に応じて調整し、特に効率的な光電部品を提供することができる。
【0030】
第2のリフレクタの表面も好ましくは少なくとも部分的に金属層を有している。好ましくは、第2のリフレクタの表面全体が金属層を有している。第1のリフレクタの金属層は、好ましくは第2のリフレクタの金属層よりも薄い。好ましくは、第1のリフレクタの金属層は、第2のリフレクタの金属層の厚さの10%ないし90%に相当する厚さを有している。
【0031】
第2のリフレクタの金属層のより厚い構成により、第2のリフレクタは第1のリフレクタよりも小さな表面粗さを有している。従って、第2の半導体チップから放出されて第2のリフレクタに入射する放射は、第1の半導体チップから放出されてその後第1のリフレクタに入射する放射よりもより指向性をもって反射する。
【0032】
従って、金属層を目的に応じて被着させ構成することにより、光電部品の放射特性を目的に応じて調整し、特に効率的な光電部品を提供することができる。
【0033】
他の観点にしたがって、光電部品の、好ましくは上述した光電部品の製造方法を説明する。好ましくは、以下の方法によって、MID技術をベースにした光電部品が製造される。特に、この場合に製造される光電部品は好ましくはここで述べている光電部品に対応している。従って、光電部品に対し開示されている構成要件はすべて、この方法に対しても開示されており、その逆でもある。この方法は以下のステップを有している。
【0034】
第1のステップでハウジングを用意する。ハウジングは好ましくは射出成形ステップによって準備される。ハウジングは好ましくはプラスチックから形成されている。
【0035】
ハウジングは、少なくとも、上述した第1の凹部を有している。好ましくは、ハウジングは複数の、例えば2つ、3つまたは4つの凹部を有している。これらの凹部は空間的に互いに切り離されている。それぞれの凹部は1つの表面を有しており、その表面は方法によって生じ且つ材料によって生じる表面粗さを有している。例えば、表面の粗さは約10μmである。
【0036】
更なるステップで、少なくとも1つの半導体チップ、特に上述した第1の半導体チップを用意する。好ましくは複数の、例えば2つ、3つまたは4つの半導体チップを用意する。この場合、半導体チップの数量はハウジング内に形成されている凹部の数量に対応している。
【0037】
更なるステップでは、金属層を少なくとも凹部の表面の領域に、好ましくは凹部の表面全体に形成させる。この場合、金属層の形成は、少なくとも凹部の表面の領域で金属層を電気めっきまたは無電解めっき(英語でelectroless platingまたはchemical platingともいう)することによって行なう。凹部またはリフレクタの表面上に金属層を形成することにより、反射表面が形成される。さらに、凹部またはリフレクタの表面上に金属層を形成することは、動作中に光電部品から放出される放射の放射特性を目的に応じて調整するために用いる。例えば、金属層は、上述した第2の領域でよりも上述した第1の領域でより薄いように、及び/又は、少なくとも1つの他のリフレクタでよりも少なくとも1つのリフレクタでより薄いように、形成される。
【0038】
次のステップで、半導体チップを凹部中に配置する。好ましくは、半導体チップを凹部の底部上に結合させ、すなわち特に蝋付けまたは導電性接着で結合させる。
【0039】
上述したように、射出成形ステップによって得られるハウジング、特に凹部は、製造プロセスと使用する材料とによって設定される表面粗さを有している。金属被覆部を目的に応じて形成することにより、表面粗さを目的に応じて調整することができる。特に、より大きな表面粗さを備えた領域/リフレクタは、衝突する放射を拡散散乱及び/又は拡散反射させることのできるより薄い金属層を蒸着することによって形成させることができる。さらに、より小さな表面粗さを備えた領域/リフレクタは、衝突する放射を指向性反射させることのできるより厚い金属層、または、より大きな表面粗さを備えた領域/リフレクタよりもより指向性をもって反射させることのできるより厚い金属層を蒸着することによって形成させることができる。このように、それぞれの領域/リフレクタの反射特性または散乱特性を、よって光電部品の放射特性を、目的に応じて調整することができる。これによって、特に効率的な光電部品が提供される。本来必要な製造ステップおよび製造パラメータを簡単に変更することによって放射特性を得ることができることにより、および追加のコンポーネントが不要になることにより、光電部品またはその製造は特にコスト上好ましくなる。
【0040】
他の観点にしたがって、光電部品の、好ましくは上述した光電部品の製造方法を説明する。好ましくは、以下の方法により、金属めっきフレーム実装(Metal Plated Frame Implementation) 技術をベースにした光電部品が製造される。特に、その際に製造される光電部品は好ましくはここで説明している光電部品に対応している。従って、光電部品に対し開示されている構成要件はすべて、この方法に対しても開示されており、その逆でもある。この方法は以下のステップを有している。
【0041】
第1のステップで、射出成形法を用いて光電部品のハウジングを製造するための射出金型または射出成形金型を用意する。次のステップで、動作中に光電部品から放射される放射の放射特性を目的に応じて調整するために、射出金型の表面の少なくとも1つの領域の研磨をおこなう。射出金型の表面粗さは、以後の工程で製造されるハウジングの表面の粗さ、特に凹部の表面粗さを決定する。その結果、射出金型の研磨の長さ及び/又は強さ及び/又は選定領域により、ハウジングのそれぞれのプラスチック表面の表面粗さを修正または調整することができる。射出金型の表面または表面領域が厚ければ厚いほど、または、長ければ長いほど、ハウジングの、次のステップで射出成形法の経過中に射出金型の該当領域によって形成されるこの該当領域の表面粗さは小さくなる。
【0042】
この場合、第1の凹部を成形するために設けられる射出金型の表面領域は、例えば他の凹部を成形するために設けられる射出金型の表面領域よりも、短く及び/又は弱く研磨される。このようにして、他の凹部の表面の表面粗さは、第1の凹部の表面の表面粗さよりも著しく減少しており、または、減少が小さい。好ましくは、射出金型の表面の、上述の第2の領域及び/又は第2のリフレクタの形成のために設けられている領域は、射出金型の表面の、上述の第1の領域及び/又は第1のリフレクタの形成のために設けられている領域よりも、滑らかに研磨されている。射出金型の表面の、上述の第1の領域及び/又は第1のリフレクタの形成のために設けられている領域は、例えば研磨しないままでもよい。
【0043】
次のステップで、上述のハウジングを射出成形ステップによって用意する。ハウジングは、少なくとも、上述の第1の凹部を有している。好ましくは、ハウジングは多数の、例えば2つ、3つまたは4つの凹部を有している。これらの凹部は互いに空間的に分離されている。
【0044】
それぞれの凹部は1つの表面を有している。この表面は、射出金型の表面を目的に応じて研磨することによって目的に応じて調整されている表面粗さを有している。
【0045】
更なるステップで、少なくとも1つの半導体チップ、特に上述の第1の半導体チップを用意する。好ましくは、多数の、例えば2つ、3つまたは4つの半導体チップを用意する。この場合、半導体チップの数量は、ハウジングに形成されている凹部の数量に対応している。
【0046】
更なるステップでは、上述した金属層を少なくとも凹部の表面の領域において被着させる。好ましくは、金属層を表面全体に被着させる。その際被着はスパッタリングまたは熱蒸着によって行う。このようにして反射表面を形成させる。その際金属層は好ましくは次のような薄さであり、すなわち射出金型の表面を研磨することによって調整される、1つのリフレクタの複数の領域または複数のリフレクタの複数の領域の表面粗さが、金属層によって補償されないような薄さである。特に、金属層は表面の粗さに作用しない。金属層はその下にある表面と例えば一致した投影像を有している。好ましくは、金属層は約100nmの厚さを有している。
【0047】
最後のステップで、半導体チップを凹部内に配置する。好ましくは、半導体チップを凹部の底部上に結合させる。
【0048】
射出成形ステップによって得られるハウジング、特に凹部は、上述したように、製造プロセスと射出金型の研磨と材料とによって設定される表面粗さを有している。特に射出金型の複数の領域を目的に応じて処理することにより、或いは、目的に応じて研磨することにより、ハウジングの個々の領域の表面粗さを目的に応じて調整することができる。特に、より大きな表面粗さを備えた領域/リフレクタを、射出金型の付属の領域をより短く及び/又はより弱く研磨することによって形成することができる。これらの領域/リフレクタは、衝突する放射を散乱及び/又は拡散反射させる。さらに、より小さな表面粗さを備えた領域/リフレクタを、射出金型の付属の領域をより長く及び/又はより強く研磨することによって形成することができる。これらの領域/リフレクタは、衝突する放射を指向性反射させ、或いは、より高い表面粗さを備えた領域よりもより指向性をもって反射させる。このように、それぞれのリフレクタの反射特性または散乱特性を、よって光電部品の放射特性を目的に応じて調整することができる。これにより、生成された放射が使用必要条件に関し最適に活用されるような、特に効率的な光電部品が提供される。
【0049】
本来必要な製造ステップおよび製造パラメータを簡単に変更することによって放射特性を得ることができることにより、且つ付加的な要素が必要ないことにより、光電部品またはその製造は特にコスト上好ましい。
【0050】
次に、光電部品とその製造方法とを、いくつかの実施形態とその図面とを用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】少なくとも1つの実施形態に係る光電部品の斜視図である。
図2図1の光電部品の平面図である。
図3A図1の光電部品の少なくとも一部分の横断面図である。
図3B図3Aの光電部品の放射特性を示す図である。
図4A図1の光電部品の少なくとも一部分の横断面図である。
図4B図4Aの光電部品の放射特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図面では、同一の要素、同種の要素、又は同じ作用をする要素には同一の参照符号が付してある。図と、図に示した要素相互のサイズ比率とは縮尺どおりのものではない。むしろ、個々の要素は、明確に図示できるようにするため、及び/又は、分かり易くするため、過度に大きく図示されている場合がある。
【0053】
図1は光電部品1を示している。光電部品1はハウジング2を有している。ハウジング2は、好ましくは射出成形法を用いて、プラスチックから製造されている。光電部品1は好ましくは表面実装可能な光電部品である。特に、光電部品1のハウジング2は表面実装可能に形成されている。
【0054】
ハウジング2は4つの凹部3,3Aを有している。特に、ハウジングは、1つの第1の凹部3Aと、3つの他の凹部3とを有している。ハウジング2は4つよりも少ない凹部3,3Aを有していてもよく、例えば1つまたは2つまたは3つの凹部3,3A(明確に図示せず)を有していてもよい。ハウジング2は4つよりも多い凹部3,3Aを有していてもよく、例えば5つまたは6つまたは7つの凹部(明確に図示せず)を有していてもよい。
【0055】
凹部3,3Aは、ハウジング2のベース体2Aの中に形成されている。凹部3,3Aは、ベース体2Aに設けた凹部である。凹部3,3Aの構成は異なっている。第1の凹部3Aは、他の3つの凹部3よりも大きな拡がりを有している。第1の凹部3Aは、他の3つの凹部3よりも大きな径を有している。第1の凹部3Aは、他の3つの凹部3よりも深く形成されていてもよい。しかし、択一的な実施例(明確に図示せず)では、凹部3,3Aは同一のサイズを有していてもよい。
【0056】
凹部3,3Aは異なる形状を有している。第1の凹部3Aは漏斗状に形成されている。しかし、第1の凹部3Aに対し他のいかなる形状も想定可能である。例えば、第1の凹部3Aは角形、円形、または楕円形に形成されていてもよい。他の凹部3は、第1の凹部3Aよりも丸い形状を有している。しかし、択一的実施例(明確に図示せず)では、第1の凹部3Aと他の各凹部3とは同一の形状を有していてもよい。
【0057】
それぞれの凹部3,3A内には1つの半導体チップ4,4Aが配置されている。好ましくは、半導体チップ4,4Aは凹部3,3Aの底部に結合されている。
【0058】
第1の凹部3A内には第1の半導体チップ4Aが配置されている。第1の半導体チップ4Aは、好ましくは高出力半導体チップである。第1の半導体チップ4Aは照明用に構成されている。第1の半導体チップ4Aは電磁放射線を放出し、好ましくは光または赤外線を放出する。例えば、第1の半導体チップ4Aはカメラのフラッシュ機能用に光を放出するチップとして使用することができる。第1の半導体チップ4Aは、赤外線カメラを備えた携帯電話のフラッシュ機能用に赤外線を放射してもよく、或いは、距離センサ用のエミッターとして赤外線を放射してもよい。
【0059】
他の3つの凹部3内にはそれぞれ1つの他の半導体チップ4が配置されている。これらの半導体チップ4は好ましくは低エネルギー半導体チップである。他の半導体チップ4も照明用に構成されている。半導体チップ4は電磁放射線、好ましくは光または赤外線を放出する。
【0060】
択一的な実施例では、光電部品1のすべての半導体チップ4,4Aはすべて同一の構成であってよい。それぞれの凹部3,3Aはリフレクタとして構成されている。特に、それぞれの凹部3,3Aは、それぞれの半導体チップ4,4Aから放出される放射を指向性反射または合焦性反射させるため、或いは、拡散反射または散乱反射させるために用いられる。その際、それぞれの放射特性は、以下でさらに詳細に説明するようにそれぞれのリフレクタの特性に依存している。
【0061】
凹部3,3Aまたはリフレクタは反射表面5を有している(特に図3A図4Aを参照)。表面5はそれぞれの半導体チップ4,4A側にある。反射表面5は金属層で被覆されている。金属層は、例えばAl,Ag,Cu,Ni及び/又はAuを有していてよい。
【0062】
第1の凹部3Aによって形成されている第1のリフレクタは、大きな表面粗さを備えた反射表面5を有している(図4Aを参照)。特に、第1のリフレクタの反射表面5の表面粗さは、他の凹部3によって形成されている他のリフレクタのそれぞれの反射表面5の表面粗さよりも大きい(加えて図3Aを参照)。この場合、反射表面5の表面粗さは種々のファクタによって制御することができる。一実施例では、表面粗さは、反射表面5を形成するために被着される金属層の厚さによって制御される。他の実施例では、それぞれの凹部3,3Aの表面粗さは、さらに以下で詳細に説明するように、それぞれの凹部3,3Aを形成するための製造プロセスで設けられている射出金型の表面の領域を目的に応じて研磨することによって制御することができる。
【0063】
表面粗さと、特に第1のリフレクタの反射表面5の粗さ測定の絶対値の相加平均とは、第1の半導体チップ4Aから放出された放射の波長よりも大きいか、これに等しい。好ましくは表面粗さと、特に第1のリフレクタの反射表面5の粗さ測定の絶対値の相加平均とは、第1の半導体チップ4Aから放出された放射の波長の1.0ないし2.0倍の大きさである。
【0064】
表面粗さと、特に他の凹部3によって形成される他のリフレクタの反射表面5の粗さ測定の絶対値の相加平均とは、それぞれ他の半導体チップ4から放出された放射の波長よりも小さい。好ましくは、表面粗さと、特に他のリフレクタの反射表面5の粗さ測定の絶対値の相加平均とは、それぞれ他の半導体チップ4から放出された放射の波長の0.1ないし0.9倍である。
【0065】
第1の凹部3Aによって形成される第1のリフレクタは、第1の半導体チップ4Aから放出された放射を反射させ、及び/又は、散乱、拡散させる。この場合、第1のリフレクタの反射表面5の表面粗さが大きければ大きいほど、衝突する放射は反射表面5によって反射及び/又は散乱する。すなわちリフレクタの表面を目的に応じて構成することにより、第1の半導体チップ4Aの放射特性6を目的に応じて調整することができる。なお、拡散反射とは、入射する放射がすべての空間方向へ反射することである。これに関連して、拡散散乱及び/又は反射とは、入射する放射が面法線に対して+/−60゜までだけ散乱することを意味している(図4Bの放射特性6を参照)。これは、例えば、光電部品1の利用者を惑わせないように、さらには不快感を与えないようにするために、第1の半導体チップ4Aが可視放射を生成するために設けられている場合に、特に有利である。
【0066】
他の凹部3によって形成される他のリフレクタは、放射を指向性反射または合焦反射する。特に、他の半導体チップ4の放射は、第1の半導体チップ4Aの放射よりもより指向性をもって反射される。この場合、他のリフレクタの反射表面5の表面粗さが小さければ小さいほど、衝突する放射はそれぞれの反射表面5によってより指向性をもって反射される。これに関連して、合焦または指向性反射は、入射する放射が面法線に対し+/−15゜でまたはこれ以下で散乱することを意味している(図3Bの放射特性6を参照)。これは、それぞれの半導体チップ4が赤外線を放射するために設けられている場合に特に有利であることを証明し得る。赤外線は利用者、例えば携帯電話の所有者によって知覚されず、その結果赤外線を放出する光電部品、例えば携帯電話のフラッシュ機能のために使用される光電部品は、惑わせたり不快感を与えたりしないものとして認識される。
【0067】
他の1実施例(明確に図示せず)では、第1の(第1の凹部3Aによって形成される)リフレクタも、他のリフレクタよりも小さな表面粗さを有していてよく、その結果第1の半導体チップ4Aによって放出される放射は、他の半導体チップ4から放出される放射よりもより指向性をもって反射する。
【0068】
他の1実施例(明確に図示せず)では、第1のリフレクタまたは第1のリフレクタの反射表面5は、種々の領域を有していてよい。この場合、第1の領域は第2の領域よりも大きな表面粗さを有していてよい。このようにして、第1の半導体チップ4Aから放出されて第1の領域に入射する放射は、反射表面5の第2の領域に入射する放射よりもより拡散性をもって反射する。このように、第1の半導体チップ4Aの放射特性を完全に目的に応じて調整することができる。
【0069】
他の1実施例(明確に図示せず)では、他の(他の凹部3によって形成されている)リフレクタまたはそれぞれの反射表面5は、それぞれ上述の第1および第2の領域を有していてよい。
【0070】
他の1実施例(明確に図示せず)では、第1のリフレクタと他のリフレクタのうちの少なくとも1つの反射表面5は、上述の第1および第2の領域を有していてよい。
【0071】
上述の光電部品1は、第1実施例によれば、以下のようにして製造される(加えて図2を参照)。なお、この製造方法は、特にMolded Interconnect Device (MID)技術に対応している。
【0072】
第1のステップで、ハウジング2を用意する。ハウジング2の準備は、射出成形法によって行う。この製造技術を用いると、任意に構成されたハウジング2と、任意に構成されたリフレクタまたは凹部3,3Aとを簡単に製造することができる。その結果得られるハウジング2はプラスチックから形成されている。それぞれの凹部3,3Aは特にプラスチックから成る表面を有している。射出成形法と使用する材料とにより、それぞれの凹部3,3Aの表面はある程度の表面粗さを有している。この表面粗さは当初はすべての凹部3,3Aで同一である。
【0073】
更なるステップで、上述の半導体チップ4,4Aを製造する。
【0074】
次のステップで、それぞれの凹部の反射表面5を形成させる。これは、それぞれのリフレクタの表面上に金属層を電気めっきまたは無電解めっきさせることによって行う。この場合、金属層の析出は、第1のリフレクタの反射表面5の金属層が他のリフレクタの、すなわち他の凹部3によって形成されるリフレクタの反射表面の金属層よりも薄くなるように行う。
【0075】
他の凹部3のプラスチック表面上のより厚い金属層により、これらの他の凹部3のプラスチック表面の表面粗さが補償される。従って、他のリフレクタの反射表面5は、第1のリフレクタの反射表面5よりも小さな表面粗さを有している。第1のリフレクタの反射表面5は、その下にあるプラスチック表面の表面粗さに略対応している表面粗さを有する。第1のリフレクタの反射表面5の金属層は、その厚さが薄いためにプラスチック表面の粗さを補償できず、或いは、少なくとも完全には補償できない。その結果、光電部品1の作製が完了すると、他の半導体チップ4の放射は第1の半導体チップ4Aよりもより指向性をもって反射する。
【0076】
従って、それぞれ反射表面5の金属層の厚さを目的に応じて選定することにより、それぞれの半導体チップ4,4Aの放射特性6を目的に応じて調整することができる(図3B図4Bを参照)。
【0077】
金属層は図2で示すように光電部品1の電気的接触部8として作用する。
【0078】
4つのリフレクタのうちの少なくとも1つのリフレクタの反射表面5が上述の第1および第2の領域を有している。前記実施例に関連して、第1の領域に、第2の領域よりもより薄い金属層を被着させる。このようにして、第1の領域は第2の領域よりも高い表面粗さを有する。最後のステップで、それぞれの半導体チップ4,4Aをそれぞれの凹部3,3A内に配置する。特に、第1の半導体チップ4Aを第1の凹部3A内に配置し、好ましくは第1の凹部3Aの底部に結合させて配置する。他の半導体チップ4はそれぞれ他の凹部3内に配置し、好ましくはそれぞれの他の凹部3の底部に結合させて配置する。
【0079】
最後に、それぞれのリフレクタを、それぞれの半導体チップ4,4Aを完全に取り囲む透明なグラウチング材で充填してよい(明確に図示せず)。
【0080】
上述した光電部品1は、第2実施例によれば、以下のようにして製造される(加えて図2をも参照)。なお、この製造方法は、特に金属めっきフレーム実装(Metal Plated Frame Implementation) 技術に対応している。
【0081】
第1のステップでは、上述のハウジング2が用意される。ハウジング2の用意は、ここでも射出成形法によって行う。射出成形法によって得られるハウジング2はプラスチックから形成され、上述の凹部3,3Aを有している。それぞれの凹部3,3Aはそれぞれプラスチックから形成される表面を有している。
【0082】
この方法では、ハウジング2を射出成形する前に、射出金型または射出成形金型の表面の研磨を行なう(明確に図示せず)。射出金型の表面粗さは、ハウジング2の射出成形後にハウジング2の、特に凹部3,3Aの粗さを限定する。射出金型の表面を研磨する長さ及び/又は強さにより、結果的にハウジング2のそれぞれのプラスチック表面の表面粗さを修正または調整することができる。
【0083】
この場合、射出成形ステップで第1の凹部3Aを成形するために設けられている射出金型の表面は、他の凹部3を成形するために設けられている射出金型の表面よりも研磨をより短く及び/又はより弱く行う。このようにして、ハウジング2の形成後の他の凹部3の表面の表面粗さは、第1の凹部3の表面の表面粗さよりも小さい。換言すれば、射出金型の研磨工程およびこれに続く射出成形後には、第1の凹部3Aの表面は他の凹部3のそれぞれの表面よりもより大きな表面粗さを有している。
【0084】
結果的に、射出成形法と、射出金型の研磨と、使用する材料とにより、それぞれの凹部3,3Aの表面は特定のまたは調整された表面粗さを有している。
【0085】
更なるステップで、上述した半導体チップ4,4Aを用意する。
【0086】
更なるステップで、それぞれの凹部3,3Aの反射表面5を形成させる。つまり、それぞれのプラスチック表面上に金属層をスパッタリングまたは熱蒸着することによって行う。その際マスクを用いると、金属層の所望の構造を得ることができる。この場合に生成される金属層は、MID技術をベースとした上述の方法で生成される金属層よりも薄い。MID技術をベースとした方法は米国特許出願公開第2007/0269927号明細書に記載されており、その開示内容はここで援用される。好ましくは、ここで生成される金属層は約100nmの厚さを有している。
【0087】
この実施例での金属層は厚さがわずかであるため、それぞれの凹部3,3Aのプラスチック表面の表面粗さを補償することができない。それ故この製造方法では、プラスチック表面の表面粗さの補償は、射出金型または射出金型の個々の領域を上述のように研磨することによって行う。このとき、4つの凹部3,3Aの反射表面5の金属層の厚さは略同一である。他の凹部3のプラスチック表面は第1の凹部3Aのプラスチック表面よりも滑らかであるので、第1の凹部の反射表面5は、他の凹部3の反射表面5よりもより大きな表面粗さを有している。その結果、光電部品1の作製が完成すると、他の半導体チップ4の放射は第1の半導体チップ4Aの放射よりも指向性をもって反射する。
【0088】
4つのリフレクタのうちの少なくとも1つのリフレクタの反射表面5が上述の第1および第2の領域を有している前記実施例に関連して、第1の領域は、射出金型を目的に応じて研磨することにより、第2の領域よりも滑らかさが少ないように形成されている。このようにして、第1の領域は第2の領域よりも大きな表面粗さを有する。
【0089】
最後のステップで、それぞれの半導体チップ4,4Aをそれぞれの凹部3,3Aに配置する。特に、第1の半導体チップ4Aを第1の凹部3Aの中に配置し、好ましくは第1の凹部3Aの底部に結合させて配置する。他の半導体チップ4をそれぞれ他の凹部3のなかに配置し、好ましくはそれぞれの他の凹部3の底部に結合させて配置する。
【0090】
最後に、それぞれのリフレクタを、それぞれの半導体チップ4,4Aを完全に取り囲む透明なグラウチング材で充填してよい(明確に図示せず)。
【0091】
本発明は、いくつかの実施形態を用いた説明によってこれら実施例に限定されるものではない。むしろ、本発明は新たないかなる構成要件およびこれら構成要件の組み合わせをも含むものであり、特に構成要件の各組み合わせは、仮にこの構成要件またはその組み合わせ自体が特許請求の範囲または実施例に明確に記載されていなくとも、特許請求の範囲に包含されている。
【0092】
本特許出願は独国特許出願第102012107829.7号の優先権を主張し、その開示内容はここで援用される。
【符号の説明】
【0093】
1 光電部品
2 ハウジンク
3,3A 凹部
4,4A 半導体チップ
5 反射表面
6 放射特性
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B