特許第5969707号(P5969707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5969707RFキャリア同期と位相アライメントの方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969707
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】RFキャリア同期と位相アライメントの方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/14 20060101AFI20160804BHJP
   H04L 7/033 20060101ALI20160804BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   H04L27/14 Z
   H04L7/033
   H04L7/00 970
【請求項の数】2
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-534821(P2015-534821)
(86)(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公表番号】特表2016-500217(P2016-500217A)
(43)【公表日】2016年1月7日
(86)【国際出願番号】US2013062935
(87)【国際公開番号】WO2014055569
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2015年10月19日
(31)【優先権主張番号】61/708,116
(32)【優先日】2012年10月1日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515087536
【氏名又は名称】パーク、ジョシュア
【氏名又は名称原語表記】PARK,Joshua
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】パーク、ジョシュア
【審査官】 羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−075275(JP,A)
【文献】 特開昭63−211850(JP,A)
【文献】 特開平02−084847(JP,A)
【文献】 特開昭62−025543(JP,A)
【文献】 特開昭58−215156(JP,A)
【文献】 特開昭60−072454(JP,A)
【文献】 特開2000−253089(JP,A)
【文献】 特開2001−103111(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0146122(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0159534(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0322288(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0128824(US,A1)
【文献】 国際公開第01/008292(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/00−27/38
H04L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した変調キャリア信号をLO周波数を有するローカル発振器(LO)信号と混合することによってベースバンド情報信号を生成することと;
同相信号サンプルおよび直交信号サンプルを含む前記ベースバンド情報信号のベースバンド信号サンプルを取得することと;
前記同相信号サンプルと前記直交信号サンプルとの間で推定された相関を基にオフセット周波数の回転を判断することと;
前記オフセット周波数の回転を利用して前記ベースバンド情報信号を処理することとを含み、
また、前記同相信号サンプルと前記直交信号サンプルとの間で推定された前記相関に関連するオフセット位相を判断することと;
前記オフセット位相を利用して前記ベースバンド情報信号を処理することとを含み、
前記オフセット周波数の回転および前記オフセット位相は、前記推定された相関の最大値に対して判断され、前記推定された相関は、第1の範囲に対して候補となる複数の位相オフセットおよび第2の範囲に対して候補となる周波数回転を用いて計算される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記推定された相関の最大値を再計算することによって前記オフセット周波数の回転および前記オフセット位相を更新することをさらに含み、前記第1の範囲および前記第2の範囲は少なくとも一方が減らされる
請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照:
本出願は、「RF Carrier Synchronization and Phase Alignment Methods and Systems」と題する特許文献1の非仮出願であり、米国特許法第119条に基づき同出願から利益を主張し、その全容を参照することにより本願に援用する。
【背景技術】
【0002】
基地局間で使用される従来の同期技術は、正確なタイムスタンプならびに1Hzの基準信号をブロードキャストするGPS信号に頼っている。基地局は、このタイミング情報を復調プロセスを通して取得でき、その情報を用いてVCXOやOCXOなどのローカル発振器を訓練するのに必要な正確な時間ならびに周波数基準を取得でき、その精度自体は、かなり正確ではあるものの、基地局で使用するには十分正確ではない。小規模な基地局(以下、これを総称して「マイクロセル」基地局という)が増加すると予想した場合、GPSベースの解決策では、(1)マイクロセル基地局が別個のGPS受信器を内蔵するようになっていればコスト高の選択肢になるか、あるいは(2)マイクロセル基地局が設置されている環境が原因で利用不可能であるかのいずれかである可能性がある。4G以上の要求を満たすのに十分正確である唯一のその他のキャリア同期方法は、IEEE1588規格に規定されている高精度時間プロトコル(Precision Time Protocol、PTP)である。IEEE1588に基づくPTPは、無線アクセスを通したイーサネット(イーサネットは登録商標である)の利用可能性に依存しており、このイーサネットは、所与のマイクロセル環境で常に利用可能ではないことがある。例えば、マクロ基地局へのバックホール通信リンクも提供するスタンドアローン型のマイクロセルであれば、無線イーサネットアクセスなしに、同期方法の必要性もなくどこかに設置できる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/708,116号
【発明の概要】
【0004】
したがって、改良したRF同期および位相アライメントのシステムおよび方法が必要である。
【0005】
添付の図面では、以下の詳細な説明とともに、別個の図全体を通して同じ符号は同一または機能的に同様の要素を指し、これらの図面は、明細書に組み込まれるとともに明細書の一部を形成し、特許請求の対象である本発明を含む概念の実施形態をさらに詳しく示す役割を果たし、そのような実施形態の様々な原理および利点を説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】いくつかの実施形態による複素IQベースバンド信号の説明図
図2】いくつかの実施形態による累積位相値のグラフのチャート
図3】いくつかの実施形態による周波数ロックシステムの概略図
図4】いくつかの実施形態による周波数ロックシステムの概略図
図5】いくつかの実施形態による周波数ロックアルゴリズムのフローチャート
図6】いくつかの実施形態による周波数ロックアルゴリズムのアルゴリズムに基づく周波数誤差のグラフ
図7】いくつかの実施形態によるIQ相関の計算のグラフ
図8】いくつかの実施形態によるIQ相関の計算のグラフ
図9】いくつかの実施形態によるIQ相関の計算のグラフ
図10】いくつかの実施形態によるIQ相関の計算のグラフ
図11】いくつかの実施形態による周波数ロックアルゴリズムのフローチャート
図12】いくつかの実施形態による周波数ロックアルゴリズムのフローチャート
図13】いくつかの実施形態による時間同期アルゴリズムのタイミング説明図
図14】いくつかの実施形態による測位アルゴリズムの説明図
図15】いくつかの実施形態による到達する測位アルゴリズムの角度の説明図
図16】いくつかの実施形態による測位アルゴリズムの説明図
図17】いくつかの実施形態による測位アルゴリズムのメッセージの流れを示す説明図
図18】いくつかの実施形態による測位アルゴリズムのメッセージの流れを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0007】
当業者であれば、図中の要素は簡略化および明瞭化のために示されているのであって、必ずしも原寸通りには描かれていないことがわかる。例えば、図中のいくつかの要素の寸法は、本発明の実施形態の理解を高めやすいように他の要素に対して誇張されていることがある。
【0008】
図面において、機器および方法の構成要素は、必要に応じて慣習的な記号で表現され、本発明の実施形態を理解するのに適切なそのような特定の詳細のみを示しており、本明細書の説明の利益に資する当業者にとって容易に明らかになる詳細を含んだ本開示が不明瞭にならないようにするものである。
【0009】
1つの実施形態では、1つの方法は:受信した変調キャリア信号をLO周波数を有するローカル発振器(LO)信号と混合することによってベースバンド情報信号を生成すること;ベースバンド信号の大きさおよびベースバンド信号の位相を含むベースバンド情報信号のベースバンド信号サンプルを取得すること;ベースバンド信号の大きさが閾値よりも大きいベースバンド信号サンプルと関連する累積位相の測定値を判断すること;および、累積位相に基づいてLO周波数のLO周波数オフセットを補償するために補正信号を適用することを含む。
【0010】
さらに別の実施形態では、1つの方法は:受信した変調キャリア信号をLO周波数を有するローカル発振器(LO)信号と混合することによってベースバンド情報信号を生成すること;同相信号サンプルおよび直交信号サンプルを含むベースバンド情報信号のベースバンド信号サンプルを取得すること;同相信号サンプルと直交信号サンプルとの間で推定された相関を基にオフセット周波数の回転を判断すること;および、オフセット周波数の回転を利用してベースバンド情報信号を処理することを含む。
【0011】
本明細書に記載するのは、上記の実施形態および追加の実施形態であり、そのうちのいくつかは、無線通信で使用する高周波(RF)キャリア同期を実行するのに特に有益である。4G LTE、およびLTEアドバンストなどの高度な無線通信ネットワークは、キャリア周波数に対して0.05パーツ・パー・ミリオン(50ppb)の最低精度を必要とする。この要件に対する従来の手法は、GPS受信器をシステムに組み入れて基地局間の時間および周波数を同期させることであった。しかしながら、マイクロセルおよびピコセルの基地局に対する需要が増すにつれて、GPSベースの解決策に頼っていると費用がかかりすぎるかオプションとして利用不可能になる。本明細書で紹介するのは、正確なRFキャリア同期および位相アライメントを物理層レベルで達成するための2つの代替方法である。本明細書に記載する同期方法は、変調方法に関わらずどのような変調通信システムでも実施できる。本明細書に記載する技術は、小セルの基地局を経済的に大容量で電解するのに重要なキャリア同期のための第2の発信源の需要を満せるものである。
【0012】
本明細書に記載する方法は、GPS信号またはイーサネット接続などの通信ネットワークの外部に余分な発信源を設けることなく通信ネットワークのノード間でキャリア同期を達成する。代わりに、この方法では、受信したRF信号の特性を利用して高精度の同期を実現し、いくつかの実施形態ではこれを利用して受信端末の水晶発振器(XO)を訓練することができ、正確なタイミング情報を維持する。この新規な方法により、マイクロセルが接続している後続の有線または無線のネットワークに対してマイクロセルをクロックおよびタイミング基準の第一発信源にすることができる。
【0013】
本明細書に紹介するキャリア同期方法の実施形態は、少なくとも(i)粗い広範囲の同期方法および(ii)正確な狭範囲の同期方法を含む。粗い広範囲の同期方法では、基本的な範囲制限なしに約0.1パーツ・パー・ミリオン(すなわち100ppb)の精度を達成する。正確な狭範囲の同期技術では、周波数ロックを1パーツ・パー・ミリオンよりも良好に(<1ppb)達成すると同時に、復調したベースバンド信号に対する位相アライメントを実現する。
【0014】
広範囲同期技術の実施形態では、直交変調信号のランダム性を利用する。一般に直交変調信号は、ランダムで瞬間的な振幅および位相を有する。しかしながら、同期の基準としてBB中の変調信号の瞬間的な位相のランダム性を利用しようとすると、その累積的な長期にわたる平均は必ずしも累積的なゼロ回転に集束しないことがわかる。さらに、ベースバンドの配位が細かくなるほど、その累積位相回転はランダムになる。この現象は、瞬間的なサンプルの大きさが小さくなるほど、サンプルの振幅が大きいときよりも所与のサンプル間隔内での急激な位相変化が生じることがあるという事実が一因である。極端な例は、信号が1サンプル期間内でIQ平面上の原点で交わった際に、180度の位相シフトが起こるというものである。一方、信号がその最大振幅の近くにあるとき、サンプル間で生じ得る増分角度の変化は、原点から最も離れているために最も小さい。
【0015】
本明細書に記載する同期技術では、振幅が大きいときにその位相回転が制限される傾向にあるという事実を利用する。その結果、伝送された周波数と受信器で復調された周波数との不適合によって起こる過剰な位相回転を観察しやすくする。
【0016】
この現象を説明するため、複数のシミュレーション結果を示す。図1には、ランダムに生成されたIおよびQのデータを含む64QAMのベースバンド信号のグラフを示している。このグラフは、キャリア周波数からダウンコンバートした後の信号位相およびベースバンド信号位相の大きさを追跡している。図2には、時間に対する累積位相回転202を示し、この図からわかるように、全サンプルを考慮した場合の全体的な累積回転は、時間に対してゼロに集束するようには見えない。代わりに、時間が経過するにつれて方々に動いて離れていく傾向にある。しかしながら、大きさが大きい信号のみを検討する場合(この例では80%)、累積位相は、周波数オフセットの誤差がない状態でゼロ回転に極めて近いところに留まる。そのため、特定の閾値を上回るサンプルのみ(この例では80%以上)を検討する場合、方々に動く作用は、図2のグラフ204に示したように急激に低減するように見える。公正に比較するため、80%のシミュレーションでさらに長い期間を費やし、累積回転角を計算するのに使用する同数のサンプルを捕捉する。このシミュレーションから、いずれの場合も同数のサンプルからの結果であるにもかかわらず、より大きい振幅のみを検討した場合は累積位相が急激に減少していることがわかる。閾値の80%を上回るシミュレーション結果から、1000万の合計サンプルに対して累積回転角のπ/2ラジアン以下であることがわかる。様々な実施形態でその他の閾値を使用してもよい。
【0017】
図3は、前述した方法を用いてキャリア同期を達成するシステム全体を実施する方法の一例を示している。サンプルの開ループシステムを簡易化したブロック図を図3に示している。この実施形態では、各反復の後、オフセット値は、平均化されたδφ(i)に基づいて更新される。このオフセット値がデジタル式に更新される速度は、最終値までどれだけ速く集束するかを実際に決定づけるものである。様々な実施形態では、更新された速度は、反復が進むにつれてソフトウェア内で変化することがある。例えば、最初にシステムは、高速で更新し、反復が進んでオフセット値が最終値に向かって集束するにつれて徐々に更新速度を落とすことができる。このように更新速度を変化させられることによって、全体的な集束時間が短くなる。1つの更新方法は、高次伝達関数を備えるアキュムレータの形態であってよく、これは、閉ループシステムで高次ループフィルタを有することと同等である。
【0018】
図4に閉ループシステムを描いている。閉ループシステムは、信号経路402で示したようにVCXOを調製し、本明細書に記載する方法を用いて受信したRFキャリアと同期させる。閾値係数αを用いて、振幅の大きい信号をどれだけ検討するかを判断できる。ここで示すシミュレーションでは閾値α=0.8を用いるが、これは、位相の比較に対してピークが80%以上あるサンプルのみを検討するという意味である。
【0019】
図5には、1つの実施形態による方法500を記載している。この方法は、502で、受信した変調キャリア信号をLO周波数を有するローカル発振器(LO)信号と混合することによって、ベースバンド情報信号を生成すること;504で、ベースバンド信号の大きさおよびベースバンド信号の位相を含むベースバンド情報信号のベースバンド信号サンプルを取得すること;506で、ベースバンド信号の大きさが閾値よりも大きいベースバンド信号サンプルと関連する累積位相の測定値を判断すること;および、508で、累積位相に基づいてLO周波数のLO周波数オフセットを補償するために補正信号を適用することを含む。
【0020】
LO信号は一般に、同相キャリア信号および直交キャリア信号を含み、ベースバンド信号サンプルは、同相チャネルサンプルおよび直交チャネルサンプルから判断される。このようなLO構造はよく知られ、水晶発振器および信号スプリッタを備えていてよく、信号分岐の1つは、直交キャリア成分を生成するために90度の位相オフセットを含んでいる。累積位相の測定値を判断するステップには、複数の差動位相を蓄積することが含まれてよく、複数の差動位相の各々は、最初の信号点と最後の信号点との間の位相差であり、最初の信号点および最後の信号点の各々は、閾値αよりも大きさが大きい。代替実施形態では、連続するIQ点どうしの間の位相差は、大きさが閾値を上回っているIQ点に対してそれぞれ計算されてよい。いくつかの実施形態では、累積位相の測定値は、(i)所定の時間間隔または(ii)所定のサンプル数のいずれかに対して判断される。時間間隔またはサンプル数は、平均位相のオフセット/間隔または位相のオフセット/時間を判断するのに使用されてよい。
【0021】
補正信号を適用する方法は、1つの実施形態では、LO制御信号を調整することを含む。LO制御信号は、累積位相のローパスフィルタリングされたバージョンに基づいた同調電圧であってよい。代替実施形態では、補正信号の適用方法は、ベースバンド信号サンプルに対する複素回転を適用することを含む。いくつかの実施形態の方法は、補正信号を適用した後に累積位相の測定値を再判断することをさらに含んでよい。その他の実施形態は、累積位相の測定値を繰り返し判断し、それに応答して補正信号を調整することを含んでよい。補正信号は、ループフィルタの特性を調整することによって更新されてもよく、このようにすると、最初の大きなオフセットを迅速に高い更新率で調整でき、時間の経過とともに更新率を下げて低いループ帯域を提供するとともに、少ないオーバーシュートで集束できる。
【0022】
その他の実施形態では、図3に示したような機器が:ミキサー306およびローカル発振器(LO)308を有し、受信した変調キャリア信号をLO周波数を含むLO信号と混合することによってベースバンド情報信号を生成するように構成された復調器;ベースバンド情報信号のベースバンド信号サンプルを生成するように構成されたアナログ−デジタル変換器316;ベースバンド信号サンプルを受信し、ベースバンド信号の大きさが閾値よりも大きいベースバンド信号サンプルに関連する累積位相の測定値を判断するように構成された位相アキュムレータ318;および、補正信号を適用して累積位相に基づいてLO周波数のLO周波数オフセットを補償するように構成されたLO補正モジュール318を備えていてよい。LO308は、同相キャリア信号生成器および直交キャリア信号生成器を備えている。位相アキュムレータ318は、同相ベースバンド信号サンプルおよび直交ベースバンド信号サンプルに基づいて大きさおよび位相の情報を生成するように構成された大きさおよび位相変換器と、差動位相値を判断するように構成された差動位相モジュールと、閾値を上回る大きさに相当する差動位相値を識別するように構成された大きさと閾値との比較器とを備えている。LO補正モジュールは、制御信号402を生成するように構成されたLO制御モジュールを備えていてよい。LO補正モジュールは、累積位相のフィルタリングされたバージョンに基づいて同調電圧の形態で制御信号402を生成するように構成されたローパスフィルタを備えていてよい。LO補正モジュールは、ループフィルタの特性を調整するように構成されてよい。
【0023】
代替実施形態では、LO補正モジュールは、ベースバンド信号サンプルを回転させるように構成された複素回転モジュールを備えている。この種の補正は、補正がLO自体にフィードバックされないように開ループで実行されてよいが、LOの誤差によって引き起こされた周波数回転の誤差は、複素正弦波を複素乗算して補正される。
【0024】
いくつかの実施形態における位相アキュムレータは、さらに、LO補正モジュールが補正信号を適用した後に累積位相の測定値を再判断するように構成される。この機器は、累積位相の測定値を繰り返し判断し、それに応答して補正信号を調整するように構成されてよい。
【0025】
そのため、ベースバンド内にある2つの隣接するサンプル間の瞬間的な位相増分δφ(i)は、N個のサンプルに対して平均されてよく、その平均はループフィルタにフィードバックされ、これによってVCXOに対する同調電圧を生成する。このようにフィードバックシステムができ、このシステムでは、平均されたサンプル数(N)およびループフィルタの特性は、全体的なフィードバックループの伝達関数に影響を及ぼし、この伝達関数が今度はVCXOの適応速度を決定する。シミュレーションは、適応速度が遅いほど(すなわちループの利得が小さいほど)、VCXOは補正値に対してより正確に集束することを示している。だたしこれは、整定時間が長くなることを犠牲にした上で成り立つことである。シミュレーションは、閾値の値が大きいほど、システムの集束が良好になることも示している。しかしながら、これはループの整定を制御するのに遙かに多くの時間がかかることを犠牲にした上で成り立つことである。図6は、閉ループのシミュレーション結果を描いており、キャリア同期ループが集束する挙動を示している。この図は、この方法によって同期の誤差を約100パーツ・パー・ビリオン(0.1ppm)まで減らせることを示している。
【0026】
さらに別の実施形態では、より高精度の狭範囲の同期技術を提供する。本明細書に記載するRF同期技術では、2つの直交信号、すなわちキャリア波形の形に変調されている同相信号(I)および直交位相信号(Q)の基本的に無相関の性質を利用する。このほか、I信号とQ信号との相関が1つの時間間隔の枠に対して取られたデータ群内で監視されている際は、同期誤差が特定の範囲内であれば、伝送されたキャリア周波数および復調している周波数内の小さな不適合を観察できるという点を利用する。したがって、この方法は、前段落に記載した広範囲の同期技術とうまく働くことができ、これを最初に適用して「粗い」同期を得ることができる。次に、この狭範囲の同期技術をその後に適用して同期の精度をさらに改善することができる。代替実施形態では、送受信の周波数の公差によって周波数オフセットが小さくなったかのように、粗い同期とは関係なく狭範囲の技術を用いてよい。
【0027】
直交信号がキャリア周波数ωcで変調される場合、受信されたRF信号を以下のように表すことができる。
【0028】
【数1】
【0029】
式中、以下の通りである。
【0030】
【数2】
【0031】
受信器が−εの周波数誤差を含んでいる場合、その復調周波数ω0を以下のように表すことができる。
【0032】
【数3】
【0033】
そして、受信したRF信号r(t)を以下のように表すことができる。
【0034】
【数4】
【0035】
式中、以下の通りである。
【0036】
【数5】
【0037】
式中IR(t)およびQR(t)は、周波数同期の誤差を含んでいる復調されたベースバンド信号を表している。上記の式は、同期誤差が原因で復調された直交信号が、周波数誤差εから生じるIR(t)とQR(t)との何らかの相関を示すことを示している。特に関心があるのは{IR(t)}2と{QR(t)}2との相関であり、その相互共分散は以下のように定義される。まず、値AおよびBを同相信号および直交信号の二乗であると定義する。
【0038】
【数6】
【0039】
その平均値はそれぞれμΑおよびμΒである。すると、その相互共分散を以下のように表すことができる。
【0040】
【数7】
【0041】
ただし、以下のように仮定する。
【0042】
【数8】
【0043】
次に、式(3.10)中の相互共分散の第1項を展開すると、以下のようになる。
【0044】
【数9】
【0045】
この式から、第1項の予想はゼロになることがわかる。したがって、以下のようになる。
【0046】
【数10】
【0047】
予想したように、同期誤差がない場合(すなわちε=0)、相互共分散(この場合は一種の相関値として表記)は、E{AB}=μ2であるためゼロになる。ただし、ε≠0のときは、式(3.12)によると、I2(t)およびQ2(t)の相互共分散は、cos(4εt)の項があるために変動することがわかる。この数学による誘導は、本明細書に記載する高精度の同期技術の基礎を提供するものである。
【0048】
上記の手法をやや変形させた例として、もう1つの実施形態では、式(3.7)中のAおよびBを同相信号および直交信号の絶対値であると定義する。
【0049】
【数11】
【0050】
これにより、以下のように相互共分散または相関表現にわずかな変更を伴って、実際には同じ所望の結果が生じる。
【0051】
【数12】
【0052】
次に、高精度の同期手順を説明していく。式(3.10)中に表された相互共分散の非定数項のみが、以下に書き直したような項E{(IR(t)2・(QR(t))2}であることに注意されたい。
【0053】
【数13】
【0054】
いくつかの実施形態では、cos(4εt)の項に十分な変更を観察するために、十分に長い観察枠ΔΤを使用する。例えば4εΔΤ=π/2かつε=200Hzであれば、以下の間隔が得られる。
【0055】
【数14】
【0056】
復調されたベースバンド信号が100MHzで観察枠の1.96msにわたってサンプリングされた場合、これは196,350個のサンプルになるということである。
【0057】
式(3.13)にあるAおよびBの代替定義を用いると、非定数項は以下のようになる。
【0058】
【数15】
【0059】
このとき、2εΔΤ=π/2である場合、392,700個のサンプルを使用できる。この事例は2倍のサンプルサイズが必要になるが、前回の事例のようにサンプルを二乗する演算を必要としないため、これ以降は、簡略化のためにこの事例を用いてその他の様々な実施形態を説明する。受信したRF信号が2GHzで、その受信器でのダウンコンバージョンが100パーツ・パー・ビリオンの精度でLO周波数の発信源を用いて行われた実施形態では、これによってεが+/−200Hzの周波数誤差になる。サンプルが取られると、最初の周波数誤差は、最初の+/−200Hzの誤差範囲内になることが知られている。サンプリングされたデータ内の周波数誤差(同期誤差)は、相互共分散値を観察している間に増分が有限である予想していた誤差範囲内で、サンプリングされたデータに周波数の誤差補正(余分な位相として)の量を適用することによって補正できる。
【0060】
さらに詳細には、以下の相関値を観察する。
【0061】
【数16】
【0062】
代替の形態で表し、一連の値を以下の式から算出できる。
【0063】
【数17】
【0064】
式中、Nはサンプル合計数を表し、S(i)は、元の観察データに対して実行された様々な可能性のある周波数誤差補正をiに対して繰り返し行うことによって計算される。つまり、IR,i(k)およびQR,i(k)は、I個およびQ個のサンプルが回転したバージョンであり、その位相はi番目の周波数誤差補正で補正されたものである。例えば、周波数補正量が−200Hzから+200Hzまで20Hzずつ増分する場合、21セットのS(i)があることになり、iの範囲は1〜21である。現在の周波数誤差が122Hzであった場合は、−120Hzの補正が最良の補正になることがわかり、そのセット内で最高の値S(i)になる。図7および図8に示したのは、64QAMを用いたシミュレーション結果であり、変調された信号には周波数誤差があるものとないものとがある。まず図7は、周波数同期誤差のない10個の異なるサンプル群から取った10個の異なるグラフを示している。各グラフは、所与のサンプル群に対して+/−10の増分周波数調整が行われたことを示す21の点を有する。予想した通り、どの調整事例でも(中間点)10本のグラフすべてに対して一貫して最良の結果を示しているものはなく、最高値は、|IR|と|QR|との相関が最小であることを意味する。この方法が基本的にデータの統計性に頼っているにもかかわらず結果が一貫した所与の任意のデータ群であることを説明するために、複数のグラフ(合計で10)を図面に示している。これは、各グラフが実際には、式(3.18)に表したような全サンプルNの積分(または和)であり、個々のサンプルのランダム性がない結果になるという事実によるものである。
【0065】
図8は、周波数オフセットの同期誤差がある10個の新たなサンプル群を繰り返しシミュレーションした様子を示している。次に、各サンプル群に対して+/−10の増分周波数すべての調整を行った。10通りの結果すべてが一貫して、左から6番目の調整(−12)で最良の周波数オフセットおよび同期誤差補正を実現していることを示している。
【0066】
この情報を利用して、システムは、作表からどれだけの補正が必要かを明かにすることで周波数誤差を補正できる。各反復で、アルゴリズムは、サンプル数が増加している間に増分をより小さい値に減らすことによって、必要な周波数補正の正確な量を判断できる。誤差は反復のたびに小さくなるため、式(3.17)中のcos(2εt)の期間が長くなるにつれて必要なサンプルサイズは大きくなってよい。シミュレーションは、この方法を用いると、実際のシステムで予想されたノイズレベルおよびIとQとの不適合を考慮した後であっても1パーツ・パー・ビリオン以上の同期精度を達成できることを示している。
【0067】
所望の結果が、受信器内に既存のクロック発信源の正確なオフセットを維持するためだけのものであれば、正確な周波数誤差(または基準の水晶発振器での誤差)をこの方法で取得でき、ローカルの受信器のシステムクロックは、前述した手順を用いて(すなわちIQサンプルデータの複素回転を介して)デジタルドメインで更新できる。一方、最終目標が電圧制御水晶発振器(VCXO)を微調整することであれば、前述した必要なサンプリングおよび計算を最小限まで簡易化し、各反復から必要な最低限の情報のみを取得して基準周波数をどの方向に修正する必要があるかを明らかにするという実施形態を用いてよい。その後、PLLのようなフィードバックループを用いて最終補正値に整定できる。掃引範囲は、可能性のある誤差範囲全体をカバーするために、最初は大きく開始してよい。しかしながら、その範囲および増分は、2、3回反復した後に遙かに細かい値まで減らすことができ、これによって今度はフィードバックの遅延が最小になり、基準の水晶発振器(VCXO)をよりよくノイズシェーピングするためにさらに広いループ帯域が可能になる。もう1つの代替方法は、前述の方法を用いて周波数誤差の正確な量を取得すれば、基準の水晶発振器をチューニングする代わりに周波数誤差を補正する方法として位相ロックループ(PLL)の分数分周比を調整することである。
【0068】
そのため、図11に描いた1つの実施形態では、方法1100は、1102で、受信した変調キャリア信号をLO周波数を有するローカル発振器(LO)信号と混合することによってベースバンド情報信号を生成すること;1104で、同相信号サンプルおよび直交信号サンプルを含むベースバンド情報信号のベースバンド信号サンプルを取得すること;1106で、同相信号サンプルと直交信号サンプルとの間で推定された相関を基にオフセット周波数の回転を判断すること;および、1108で、オフセット周波数の回転を利用してベースバンド情報信号を処理することを含む。1つの実施形態では、オフセット周波数の回転を利用してベースバンド情報信号を処理する方法は、LO制御信号を用いてLO周波数を調整することを含む。さらに別の実施形態では、補正信号を適用する方法は、ベースバンド信号サンプルに対して複素回転を適用することを含む。いくつかの実施形態では、同相信号サンプルと直交信号サンプルとの間で推定された相関は、二乗した同相サンプルおよび二乗した直交サンプルに基づいている。代替実施形態では、同相信号サンプルと直交信号サンプルとの間で推定された相関は、同相サンプルの絶対値および直交サンプルの絶対値に基づいている。
【0069】
本明細書に記載した実施形態では、さらに位相アライメント技術を用いてよい。前回のセクションで作られた1つの暗黙の仮定は、観察枠の最初に(t=0)完全な位相アライメントがあるというものである。しかしながら、実際には復調された複素信号(I+j*Q)は、位相オフセットを含むほか、同期誤差εから生じる周波数オフセットも含んでいる。しかしながら、セクション3.3に記載したサンプリングデータ群の相関の挙動は、データの位相オフセットに関する情報も提供していることがわかる。時間t=0にある位相オフセットがゼロの場合、式(3.18)中の作表済みデータ群Sは、最小の相関を表すi’番目のセットに関する対称性を示している。これは、(3.16)および(3.17)中に示された相関式が偶関数だからである。しかしながら、t=0に位相オフセットがあれば、この対称性はシミュレーション結果とともに図9に示したように失われる。
【0070】
図9は、周波数オフセットの同期誤差のないデータサンプルを用いて推定された位相オフセットとの相関のグラフを描いている。予想した通り、位相オフセットがなければ(902)、周波数の補正が行われない(中間点)場合に最大値が発生し、グラフ全体がy軸に対して対称性を維持する。しかしながら、残りの曲線が位相オフセットのある(しかし周波数オフセットはない)サンプルデータから生成されていると、ピーク値は誤った周波数オフセットの補正値で発生し、グラフ全体に偶関数の対称性は見られない。
【0071】
いくつかの実施形態では、この対称特性を利用してよく、位相アライメントと周波数同期とを両方同時に実現できる。そのため、1つの実施形態では、サンプリングされたデータ群に関する周波数誤差補正の作表を実現した後、対称性が確立されるまでアルゴリズムがデータ群の位相オフセットを調整してよい。これは、データ群が対称性を示すまで0からπ/2までの位相値を掃引してよいというかなり直接的な手順である。この対称性は、IおよびQがオフセットがπ/2であることからπ/2ごとに繰り返される。周波数同期の補正を実現するために、アルゴリズムは、この手順を最初に用いて位相アライメントを実行できる。周波数誤差εは反復ごとに小さくなっていくため、必要な位相アライメントも同じように小さくなっていく。
【0072】
図10に示したように、相関の推定がグラフで表され、様々な位相オフセットの補正が、−10の周波数オフセット誤差を含むが位相オフセットは含んでいないIQの複素サンプルデータ群に対して表示されている。予想した通り、位相オフセットのない曲線は、正しい周波数オフセットの補正を示している。
【0073】
通信チャネルにおける位相アライメントは通常、周波数の同期が実現された後に上層で行われてよい。したがって、特にシステムにMIMO無線、またはアクティブアレイアンテナなどにある複数の受信器が配置されている場合は、周波数同期を実行している間に位相アライメントを実現することが有益な要点である。
【0074】
ここで、εが大きすぎて始められない場合は、組み込まれたコサイン曲線を観察するのに必要な適切なサンプルサイズ(時間枠)が小さくなりすぎることに注意することも重要である。そのため、組み込まれたコサインパターンを観察するためには、データ群を1回捕捉するだけでは統計的にあまりにも信頼できず、これは正確な位相の補正を妨げるものである。このような理由から、前述したこの高精度の同期方法は主に、最初に妥当な同期が達成されれば適している。したがって、前述した広範囲の同期方法と組み合わせたこの方法は、予想した周波数誤差が開始するのにかなり大きければうまく機能する。
【0075】
図12は、同期および位相アライメントプロセスの1つの実施形態を描いている。ただしこれは一例にすぎず、本明細書に記載した同期誤差がある際のIとQとの相関挙動を利用する多くの変形例があってよい。キャリア同期および位相アライメントの手順を記載しているこの例のフローチャートは、継続的または周期的に低速間隔で繰り返されてよい。なぜなら、基準の水晶発振器にある周波数誤差の追跡は高速である必要がないからである。さらに別の実施形態では、方法1200は、1202で、受信した変調キャリア信号をLO周波数を有するローカル発振器(LO)信号と混合することによってベースバンド情報信号を生成すること;1204で、同相信号サンプルおよび直交信号サンプルを含むベースバンド情報信号のベースバンド信号サンプルを取得すること;1206で、同相信号サンプルと直交信号サンプルとの間で推定された相関を基に位相オフセットおよびオフセット周波数の回転を判断すること;および、1208でオフセット周波数の回転およびオフセット位相を利用してベースバンド情報信号を処理することを含む。1つの実施形態では、オフセット位相は、推定された相関の対称特性に基づいて判断され、対称特性は、複数の周波数オフセットに対して測定される。その他の実施形態では、オフセット周波数の回転およびオフセット位相は、推定された相関の最大値に対して判断され、推定された相関は、第1の範囲に対して候補となる複数の位相オフセットおよび第2の範囲に対して候補となる周波数回転を用いて計算される。その他の実施形態では、本方法は、推定された相関の最大値を再計算することによってオフセット周波数の回転およびオフセット位相を更新することを含んでよく、第1の範囲および第2の範囲は少なくとも一方が小さい。さらに、同相信号サンプルと直交信号サンプルとの間で推定された相関は、二乗した同相サンプルおよび二乗した直交サンプルまたは同相信号および直交信号の絶対値に基づいている。
【0076】
【0077】
ここで、T1、T2、T3、T4は理想時間を意味している。図13に関して記載した上記の例は、セルAが、時間情報を1回交換するだけでどのようにしてセルAとセルBとの間の距離を算出できるのかを説明している。まずセルAは、時間T1でそのローカル時間情報(T1A)を送信する。次にセルBは、そのローカル時間に応じて到達時間(T2)を記録し、これがT2Bと表示される。次にセルBは、伝送時間(T3B)に応じて時間T3でセルAにこの到達時間を送り返す。この2つの値(T2BおよびT3B)はいずれも、同期した基準周波数を含んでいるために2つのセル間の現在の距離によって起こる現在の時間遅延がどのくらいであるかを算出するためにセルAが必要とするものである。遅延式の導出を以下に示す。
【0078】
【数18】
【0079】
式中、εfAおよびεfBは、ノードにおける基準周波数誤差を表し、セルAおよびセルBはそれぞれ分数で表され、例えばセルAの周波数誤差が1ppmであれば、εfAは1e−6になる。DR値が計算され、これは、セルAからセルBへ光の速度で移動する電波の時間遅延を表す。この値は一般にかなり小さくなる;例えば、300メートルの距離では1usの時間遅延をもたらす。一方、DBはセルBでの処理遅延を表し、これは容易に数ミリ秒にできる。したがって、式(3.23)からわかるように、2つのノードの周波数が同期していない場合、それによって生じる計算はこの処理遅延時間DBに容易に支配される可能性があり、これがこの方法を非効率にしている。しかしながら、2つのノードの周波数が同期すれば、(3.23)の第2項はなくなり、この計算は2つのノード間の現在の時間遅延を正確に示す。
【0080】
この計算からわかるように、遅延推定誤差は相対的な周波数誤差(同期誤差)の関数であり、絶対的な周波数誤差は、両セルでの周波数誤差が同じである限り、換言すれば、εfA=εfBである限り、距離遅延の計算の精度に対して微々たる影響しかない。絶対的な時間誤差は、遅延式中でなくなり、距離遅延、DR測定値の精度に対して微々たる影響しかないこともわかる。
【0081】
そのため、引き続きその他の実施形態では、同期技術は、図13に関して記載した時間同期プロトコルと合わせて使用されてよい。
【0082】
その他の実施形態は、ネットワークの時間同期に対して前述した周波数同期技術を使用することを含む。ネットワークのノードが前述の方法および装置を用いて高度な周波数同期を達成できれば、ネットワークの時間同期はネットワーク内の様々なノードによって達成できる。ノードはすべてその基準周波数で同期しており、その相対距離も前述した方法に従って算出できるため、各ノードは、基準ノード(マスターノード)からの時間情報の交換に従事でき、これがネットワークに対するマスタークロックになる。マスターノードからの時間遅延は、前述した測位方法(または多くの用途では、他の手段ですでに知られている可能性がある)を用いて正確に測定できるため、各ノードは、時間情報を1回交換しただけでマスタークロックと同期した正確な時間を計算できる。周波数および時間同期ステップは、設定した間隔で繰り返して、ネットワーク内の時間の乱れに対して高度な同期を維持できる。
【0083】
周波数同期技術を用いる測位システムには、モバイルどうしの測位システム、メッシュネットワークシステム、およびネットワークシステムなどがあってよい。
【0084】
モバイルどうしの測位システムでは、周波数同期および測位アルゴリズムならびに前述した方法論を、互いに通信するように設計されている無線グループで用いることができる。通信している2つの任意の無線があるとすると、前述の方法により両当事者は2つの無線間の距離を計算できる。これを図14に示している。
【0085】
このほか、周波数同期アルゴリズムは、副産物として到達した信号の位相オフセットも取得するため、多入力受信器を使用することで、システムは、受信器の2つの入力部でこの位相オフセットの調整を単純に比較することによって、入ってくる電波の到達角度を計算することもできる。距離情報に応じた到達角度がわかることで、1つの無線ユニットが、平坦な表面積のような2次元空間にある標的の位置を特定できる。受信器に3つの受信器が備わっていれば、標的を3次元空間で特定できる。
【0086】
モバイルどうしの測位システムを図15に示し、
【0087】
【数19】
【0088】
であるので、
【0089】
【数20】
【0090】
であり、式中δφは、ノードAでの2つの受信信号間の位相オフセットの差であり、λおよびfは波長および周波数であり、cは光の速度である。
【0091】
メッシュネットワーク測位システムでは、多数の個別の移動無線を含むメッシュネットワークは、前述の周波数同期と測位アルゴリズムとを一緒に用いて、各々のメッシュノードの相対位置を算出できる。以下に記載するのは、4つのモバイルユニットがあり、各ユニットが前述の方法を用いて他の3つのユニットまでの距離を算出できる事例である。互いに距離情報を共有することによって、ノードは、4つすべての互いに対する相対位置には、図16に示したような2つの可能な解法しかないことを明らかにできる。したがって、2つの解法の許容可能な向きに対処する1つの余分な情報があるだけで、ノードは、前述の測位方法を用いて、正確に各ノードが互いに対してどこにあるのかを判断できる。さらに、最初の向きを算出するには、その相対的な位置と向きを初期化するための3つのユニットが必要なだけである。これは、ネットワークを展開する前のメッシュネットワークへの初期化プロセスとして容易に実現できる。
【0092】
ネットワークベースの測位システムでは、全ネットワークノードの周波数および時間同期が前述の方法を用いて達成される。これが実現されると、ネットワークは、個々のモバイルユニットがどこに位置しているのかを判断できる。ネットワーク上の個々のユーザ(ユーザ機器:UE)の位置を特定する2つの方法を以下に記載する。
【0093】
ネットワークベースの測位システムでは、図17に示したようにアップリンク信号を使用してよい。ネットワークのノードはすでに「完全に」同期しているため、ネットワークは、モバイルユニット信号が、複数のネットワークノード1702、1704、および1708(例えば基地局)からのモバイルユニット1708から来た到達時間を比較できる。図17の実施形態では、ネットワークノード1702および1704への到達時間は、比較ためのノード1708へ送られる。到達時間の差は、モバイルユニットとネットワークのノードとの間の距離の差を示している。3つのネットワークノードを必要とする3つの測定値のみを使用して、3次元空間にあるモバイルユニットの位置を特定できることが理想的である。この方法では、モバイルユニットの測位には、モバイルユニットの無線(UE)をネットワークノードと同期させる必要がない。この方法は、モバイルユニットで実行する計算も必要としない。
【0094】
ネットワークベースの測位システムでは、図18に示したようにダウンリンク信号を使用してよい。本明細書に記載した周波数同期および測位アルゴリズムを用いるネットワークベースの測位システムのこの実施形態では、ネットワークノード1802、1804、および1808は、タイミングおよび測位の情報をブロードキャストする。ユニット1806などの個々のモバイルユニットは、これらの信号を多数のネットワークノード(基地局)から受信し、三辺測量方法を用いてそれ自体の位置を計算できる。
【0095】
上記では、本発明について、本明細書で明かにしたさらに広義の本発明を単に例示する特定の実施形態を参照して示し説明した。もちろん、当業者は、代替実施形態を構想でき、例えば、本発明の主な特徴が念頭にある当業者であれば、以上に述べた例示的な実施形態の局面すべてを取り入れていなくとも、1つまたは主な特徴を取り入れている実施形態を作り上げることができる。
【0096】
以上の明細書では、特定の実施形態について記載した。しかしながら、一当業者は、以下の特許請求の範囲に記載した本発明の範囲を逸脱しないかぎり、様々な修正および変更を加えてもよい。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく説明的な意味でであり、そのような修正はすべて本教示の範囲内に含まれる。
【0097】
利益、利点、課題に対する解決策、およびより明白にするまたは明白になるために何らかの利益、利点、解決策をもたらす可能性のある(1つまたは複数の)要素が、特許請求の範囲のいずれかまたはすべてにとって重要、必要、または不可欠な特徴もしくは要素である。本発明は、本明細書の審理中に加えられたあらゆる補正および発行されたそれらの請求項の均等物すべてを含む、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0098】
さらに本明細書において、第1および第2、上および下などの関係を表す用語は、1つの実体または行為を別の実体または行為と区別するためだけに使用していることがあり、必ずしもそのような実体または行為どうしの実際のそのような関係または順序を必要としたり暗示したりするものではない。「comprises(備える)」、「comprising(備えている)」、「has(有する)」、「having(有している)」、「includes(含む)」、「including(含んでいる)」、「contains(含有する)」、「containing(含有している)」という用語、またはその他の任意のこれらの派生語は、非排他的に含有されるものを範囲に入れることを意図しているため、列挙した要素を備える、有する、含する、含有するプロセス、方法、物品、または機器は、それらの要素のみを含んでいるわけではなく、列挙したものには明示していないか、またはそのようなプロセス、方法、物品または機器に固有のその他の要素を含んでいてもよい。「comprises...a(1つの〜を備える)」、「has...a(1つの〜を有する)」、「includes...a(1つの〜を含む)」、「contains...a(1つの〜を含有する)」という用語で始まる要素は、さらに多くの制約がなくとも、その要素を備える、有する、含する、含有するプロセス、方法、物品または機器中に別の同じ要素の存在を排除するものではない。「a(1つの)」および「an(1つの)」という用語は、特に別途記載のない限り1つ以上という意味に定義される。「substantially(実質的に)」、「essentially(本質的に)」、「approximately(およそ)」、「about(約)」という用語、またはその他の任意のこれらの派生語は、一当業者が理解するものに近い意味に定義され、1つの非限定的な実施形態では、その用語は、10%以内、別の実施形態では5%以内、別の実施形態では1%以内、別の実施形態では0.5%以内であると定義される。本明細書で使用した「coupled(連結した)」という用語は、接続したという意味に定義されるが、必ずしも直接的ではなく、必ずしも機械的でもない。特定の方法で「構成される」装置または構造は、少なくともその方法で構成されるが、列挙していない方法で構成されてもよい。
【0099】
いくつかの実施形態は、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、カスタマイズされたプロセッサなどの1つ以上の一般的または特別なプロセッサ(または「処理装置」)と、特定の非プロセッサ回路と合わせて、本明細書に記載した方法および/または機器のいくつか、ほとんど、またはすべての機能を実施するための1つ以上のプロセッサを制御するフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)および唯一の格納されたプログラム命令(ソフトウェアとファームウェアとの両方を含む)とで構成されてよいことが理解されるであろう。このようにする代わりに、いくつかまたはすべての機能を、格納されたプログラム命令のないステートマシンによって実施してもよく、あるいは、1つ以上のアプリケーションの特定の集積回路(ASIC)では、各機能または特定の機能のいくつかの組み合わせがカスタム論理回路として実施される。もちろん、2つの手法を組み合わせたものを用いてもよい。
【0100】
さらに、(例えばプロセッサを備えている)コンピュータをプログラミングして、本明細書に記載し特許請求した方法を実施するために、格納されたコンピュータ可読コードを有するコンピュータ可読記憶媒体として1つの実施形態を実施できる。このようなコンピュータ可読記憶媒体の例には、ハードディスク、CD−ROM、光学記憶装置、磁気記憶装置、ROM(読み出し専用メモリ)、PROM(プログラム可能な読み出し専用メモリ)、EPROM(消去可能でプログラム可能な読み出し専用メモリ)、EEPROM(電気的に消去可能でプログラム可能な読み出し専用メモリ)およびフラッシュメモリがあるが、これに限定されない。さらに、本明細書に開示した概念および原理によって導かれる場合に、例えば、利用可能な時間、最新技術、および経済的な考慮が理由で、多大な努力および多くの設計上の選択が必要になる可能性があったとしても、一当業者であれば、最低限の実験でそのようなソフトウェアの命令やプログラムおよびICを容易に作製できるであろうことが予想される。
【0101】
技術的な開示の本質をすばやく確認できるように、本発明の要約を提供する。要約は、特許請求の範囲または意味を解釈したり限定したりするために用いられるのではない。このほか、上記の詳細な説明において、本開示を簡素化する目的で、様々な特徴が様々な実施形態に一緒にまとめられている。この開示方法は、特許請求した実施形態が各請求項に明示した内容以上の特徴を必要とする意図を反映していない。むしろ、以下の特許請求の範囲に示したように、本発明の主題は、開示した単一の実施形態の全特徴よりも少ない範囲にある。そのため、以下の特許請求の範囲は、詳細な説明に組み入れられ、各請求項は別々に特許請求された主題としてその請求項自体を主張している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図18