特許第5969715号(P5969715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5969715
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】シール材
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/00 20060101AFI20160804BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   E21D11/00 B
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 N
   C09K3/10 Q
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-559369(P2015-559369)
(86)(22)【出願日】2015年6月24日
(86)【国際出願番号】JP2015068181
【審査請求日】2015年12月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安野 浩一朗
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正稔
(72)【発明者】
【氏名】島岡 晶子
(72)【発明者】
【氏名】江口 信也
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−200786(JP,A)
【文献】 特開2000−256647(JP,A)
【文献】 特開平9−208943(JP,A)
【文献】 特開平7−331993(JP,A)
【文献】 特開平2−167997(JP,A)
【文献】 特開昭58−173180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D11/00、
C09K3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、
シール素材と、を有し、
前記シール素材は、
水溶性のセルロース系増粘剤と、
直鎖状のノニオン系高分子増粘剤と、
有機繊維で構成される繊維状充填剤と、
有機系の消泡剤と、
水分を保持させるための保湿剤と、
無機化合物で構成される無機充填剤と、
を含むことを特徴とするシール材。
【請求項2】
前記繊維状充填剤が、
長さが3ミリメートル以上の第1繊維状充填剤と、
長さが2ミリメートル以下の第2繊維状充填剤と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のシール材。
【請求項3】
前記セルロース系増粘剤、前記ノニオン系高分子増粘剤、前記繊維状充填剤、および前記消泡剤が、前記水の100重量部に対して合計で8.0重量部以上18.0重量部以下の添加量で添加される
ことを特徴とする請求項1または2に記載のシール材。
【請求項4】
前記無機充填剤が、前記水の100重量部に対して、5.0重量部以上15.0重量部以下の添加量で添加される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシール材。
【請求項5】
前記保湿剤が、前記水の100重量部に対して、2.0重量部以上の添加量で添加される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシール材。
【請求項6】
前記第1繊維状充填剤が、前記第2繊維状充填剤の0.875倍以上4倍以下の添加量で添加される
ことを特徴とする請求項2に記載のシール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘削機などに用いられるテールクリアランス充填用のシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘削機のテールシール構造には、特許文献1〜3に示すものなどがある。テールシール構造とセグメントとの間には、掘削時に隙間(テールクリアランス)が生じる。この隙間を介して地盤からの漏水や背後の外周部分に充填する裏込め材が漏洩することを防止するためにテールクリアランス充填用シール材(テールシール材)が用いられる。
【0003】
シール材は、止水、裏込め材の漏洩防止、およびシールド掘削機の滑剤としての役割を担っている。
シールド掘削機に用いられるシール材には、水およびカルシウム石鹸と鉱油とポリプロピレン樹脂を含むもの(特許文献4、段落21参照)や、グアガムあるいはその変性品、ローカストビーンガム、ガラクトマンノース重合体を主成分とする天然高分子などを含むもの(特許文献5、段落15参照)などがある。また、繊維状充填剤として、ベントナイトやモンモリロナイトなどの鉱物系の繊維状物質を含むシール材(特許文献6、段落19参照)も提案されている。
【0004】
また、特許文献7には、水溶性の高分子系増粘剤としてカルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの水溶性のセルロースエーテル、天然ガムおよび人工ガムの中から選ばれる少なくとも1種を含有するシール材が記載されている。特許文献7に記載されたシール材は油分を主成分としていないため、火気による事故の危険が少なく、また、裏込め材に用いられるセメントミルクに混ざった場合にも、油分を主成分とするシール材に比べて、硬化性能に悪影響を及ぼす可能性が低い(段落35参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−40998号公報
【特許文献2】特開2001−355393号公報
【特許文献3】特開2011−42938号公報
【特許文献4】特開平7−109893号公報
【特許文献5】特許3235425号明細書
【特許文献6】特開2001−115777号公報
【特許文献7】特許2938418号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば特許文献4に記載されたシール材では、軟膏状を呈する基剤に油分が含まれているため、セメント系の裏込め材との接触によりセメントの硬化反応を阻害する可能性がある。また、ポリプロピレンなどの樹脂材料は、シール材の充填性や接着性を向上させる硬化を有するものの、硬いためにテールクリアランスに充填する際に抵抗が生じ、配管の目詰りが生じ易いなどの課題がある。
また、例えば特許文献5に記載されたシール材では、繊維状充填剤がないため止水性が低く、天然高分子とゲル化剤を用いる必要があるため、地盤条件によってはpHの違いによる粘性にばらつきが生じ、シール材としての性能にもばらつきが生じ易いという課題がある。
【0007】
本発明の目的の1つは、セメントの硬化を妨げる成分を含まず、かつ、止水性および潤滑性を有するシール材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明に係るシール材は、水と、シール素材と、を有し、前記シール素材は、水溶性のセルロース系増粘剤と、直鎖状のノニオン系高分子増粘剤と、有機繊維で構成される繊維状充填剤と、有機系の消泡剤と、水分を保持させるための保湿剤と、無機化合物で構成される無機充填剤と、を含むことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記繊維状充填剤が、長さが3ミリメートル以上の第1繊維状充填剤と、長さが2ミリメートル以下の第2繊維状充填剤と、を含むとよい。
【0010】
好ましくは、前記セルロース系増粘剤、前記ノニオン系高分子増粘剤、前記繊維状充填剤、および前記消泡剤が、前記水の100重量部に対して合計で8.0重量部以上18.0重量部以下の添加量で添加されるとよい。
【0011】
好ましくは、前記無機充填剤が、前記水の100重量部に対して、5.0重量部以上15.0重量部以下の添加量で添加されるとよい。
【0012】
好ましくは、前記保湿剤が、前記水の100重量部に対して、2.0重量部以上の添加量で添加されるとよい。
【0013】
好ましくは、前記第1繊維状充填剤が、前記第2繊維状充填剤の0.875倍以上4倍以下の添加量で添加されるとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシール材は、セメントの硬化を妨げる成分を含まず、かつ、止水性および潤滑性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、シール材は、水にシール素材を添加することで製造される。シール素材には、少なくとも増粘剤と、繊維状充填剤と、消泡剤と、保湿剤と、無機充填剤と、を含む。
【0016】
増粘剤は、セルロース系増粘剤と、ノニオン系高分子増粘剤とを含む。セルロース系増粘剤とは、セルロースを含んだ水溶性の増粘剤である。
セルロース系増粘剤は、1重量パーセント水溶液の粘度を、25℃/200rpmの条件下でビスコメータにより測定し、2500mPa・s(ミリパスカル秒)以上、4500mPa・s(ミリパスカル秒)以下と測定されるものを用いる。このセルロース系増粘剤は、水と混合することでその水の粘性を上昇させる特性を有する。このセルロース系増粘剤を含むことにより、水の粘性が上昇し、シール材はクリアランス空間内における追随性が向上する。
【0017】
ノニオン系高分子増粘剤とは、炭素原子が直鎖状に結合し、かつ、それらの炭素原子のいずれかに例えばヒドロキシル基など親水性を示す官能基が結合していることにより、水溶性でありながらイオン化しない高分子材料であり、例えば、工業用用途に用いられている分子量1万以上100万以下の高分子材料である。
ノニオン系高分子増粘剤には、例えば、ポリビニルアルコールやポリエチレンオキサイドなどが挙げられる。
【0018】
繊維状充填剤は、セルロース系繊維などの天然繊維や、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリエチレン系繊維などの合成繊維といった有機繊維で構成される。
【0019】
また、繊維状充填剤は、その長さによって第1繊維状充填剤と第2繊維状充填剤とに区分される。第1繊維状充填剤は、長さが3ミリメートル以上の繊維状充填剤である。第2繊維状充填剤は、長さが2ミリメートル以下の繊維状充填剤である。繊維状充填剤は、これらの第1繊維状充填剤および第2繊維状充填剤を含む。
なお、第1繊維状充填剤および第2繊維状充填剤の直径または厚さは、いずれも2ミリメートル以下であればよい。これら2種類の繊維状充填剤をそれぞれ含むことにより、シール材は、テールクリアランスの止水性が向上する。
【0020】
消泡剤には、シリコン系やオイル系などがあるが、ここでは有機系の消泡剤が用いられる。この消泡剤を含むことにより、シール材は、充填剤と水とを混ぜ合わせるときやクリアランス内でシールド掘削機が移動したときなどに空気が混入することを防止し、混入した空気により止水性が低下することを抑制する。
【0021】
保湿剤とは、水分を保持させてシール材の乾燥を防ぐためのものである。保湿剤には、例えば、尿素や吸水性樹脂などが挙げられる。なお、吸水性樹脂にはポリアクリル酸塩架橋体などがある。
【0022】
無機充填剤とは、増粘剤と繊維状充填剤とを馴染みやすくするための物質であり、JIS Z8801−1規格の試験ふるいの公称目開き250マイクロメートル(μm)、つまりASTMメッシュNo.60を通過し、試験ふるい150マイクロメートル(μm)、つまりASTMメッシュNo.100を通過しない粉体状の無機化合物を90%以上含むものである。
【0023】
無機充填剤には、例えば、ケイ酸カルシウム、雲母、ウォラストナイト、などが挙げられる。
【0024】
水溶性のセルロース系増粘剤と、直鎖状のノニオン系高分子増粘剤と、有機繊維で構成される繊維状充填剤と、有機系の消泡剤と、水分を保持させるための保湿剤と、無機化合物で構成される無機充填剤と、を含むシール素材を水に添加して得られるシール材は、セメントの硬化を妨げず、かつ、良好な止水性および潤滑性を有することがわかった。
【実施例】
【0025】
(1)試料に用いる材料
水溶性のセルロース系増粘剤、直鎖状のノニオン系高分子増粘剤、繊維状充填剤、消泡剤、保湿剤および無機充填剤を混合し、試料1〜25のシール素材をそれぞれ作成した。
セルロース系増粘剤には、関東化学株式会社製のメチルセルロース(CAS番号:9004−67−5)を用いた。
ノニオン系高分子増粘剤には、ポリビニルアルコール(ポバール、クラレ社製)を用いた。
【0026】
繊維状充填剤としては、第1繊維状充填剤としてアクリル系充填剤と、第2繊維状充填剤としてセルロース系充填剤とを用いた。
アクリル系充填剤には、太さ1ミリメートル、長さ5〜10ミリメートル程度のアクリル毛糸を用いた。これは、長さが3ミリメートル以上の第1繊維状充填剤の一例である。
セルロース系充填剤には、セルロースを主成分とする古紙を太さ0.1ミリメートル、長さ1ミリメートル程度の繊維状に作成したものを用いた。これは長さが2ミリメートル以下の第2繊維状充填剤の一例である。
【0027】
消泡剤には、関東化学株式会社製のポリエーテル系消泡剤(試薬品)を用いた。
保湿剤には、尿素(関東化学社製、試薬品)を用いた。
無機充填剤には、ケイ酸カルシウムを用いた。
【0028】
(2)試験
(ア)流動性試験1
表1に示す添加量で水100重量部に各材料を添加する試料1〜5を作成した。添加量の比率は以下の方針1に従った。試料1〜5は、水100重量部、保湿剤2重量部、および無機充填剤10重量部に対して添加する、増粘剤、繊維状充填剤および消泡剤の合計添加量を3重量部から23重量部まで変化させたものである。
<方針1>
・セルロース系増粘剤:ノニオン系高分子増粘剤:消泡剤=15.4:1:0.924
・第1繊維状充填剤:第2繊維状充填剤=9.5:5.5
・(増粘剤+消泡剤):繊維状充填剤=4.5:7.5
【表1】
【0029】
試料1〜5に対し、ポンプ圧送試験を行った。ポンプ圧送試験は、それぞれ20リットルの試料1〜5をグリスポンプにより2センチメートル管の入口から2メートルにわたって押し出し、出口から連続的に押し出されるか否かにより判定した。判定結果は表2の通りとなった。
【表2】
【0030】
判定結果は、出口から押し出された試料を「良」として、押し出されなかった試料を「不可」として評価した。
【0031】
流動性試験1の結果により、水100重量部に対する増粘剤、繊維状充填剤および消泡剤の合計添加量が23重量部まで増加すると粘性が高過ぎることとなり、流動性が著しく低下することがわかった。また、この合計添加量を3重量部まで減少させると材料分離が生じるため、連続的に押し出されなくなり、配管内に目詰りが生じることがわかった。
【0032】
したがって、増粘剤(セルロース系増粘剤、ノニオン系高分子増粘剤)、繊維状充填剤、および消泡剤が、水100重量部に対して合計で8.0重量部以上18.0重量部以下の添加量で添加されたシール材は良好な流動性を示すことが確認された。
【0033】
(イ)止水試験1
表3に示す添加量で水100重量部に各材料を添加する試料6〜10を作成した。添加量の比率は上述した方針1に従った。試料6〜10は、水100重量部、および保湿剤2.50重量部に対して添加する、増粘剤、繊維状充填剤および消泡剤の合計添加量を10.0重量部に固定し、無機充填剤の添加量を0重量部から20重量部まで変化させたものである。
【表3】
【0034】
試料6〜10に対し、止水試験1を行った。止水試験1は、試料に対して加える圧力を0.1MPaから4.0MPaまで変化させて、それぞれ水の漏洩が有るか否かにより判定した。判定結果は表4の通りとなった。
【表4】
【0035】
判定結果は、水の漏洩が無かった試料を「良」として、水の漏洩が有った試料を「不可」として評価した。なお、低圧で水の漏洩が有った試料に対して圧力を上げても、当然、水の漏洩が有ることが予想されるため、試験を行わなかった。この場合の判定結果は「−」と表記した。
【0036】
止水試験1の結果により、水100重量部に対して無機充填剤の添加量が0重量部では止水性能が十分でないが、5重量部以上では十分な止水性能が得られることがわかった。
【0037】
(ウ)流動性試験2
表5に示す添加量で水100重量部に各材料を添加する試料11〜15を作成した。添加量の比率は上述した方針1に従った。試料11〜15は、水100重量部、および保湿剤10重量部に対して添加する、増粘剤、繊維状充填剤および消泡剤の合計添加量を20重量部に固定し、無機充填剤の添加量を5重量部から25重量部まで変化させたものである。
【表5】
【0038】
試料11〜15に対し、上述したポンプ圧送試験を行った。判定結果は表6の通りとなった。
【表6】
【0039】
判定結果は、出口から押し出された試料を「良」として、押し出されなかった試料を「不可」として評価した。
【0040】
流動性試験2の結果により、水100重量部に対して増粘剤、繊維状充填剤および消泡剤の合計添加量が20重量部であると、無機充填剤の添加量が20重量部以上に増加したときに流動性が著しく低下することがわかった。この原因は、フィラー効果によるものと推測される。
【0041】
したがって、止水試験1および流動性試験2の結果により、無機充填剤が、水100重量部に対して、5.0重量部以上15.0重量部以下の添加量で添加されたシール材は良好な止水性および流動性を示すことが確認された。
【0042】
(エ)保湿性試験
表7に示す添加量で水100重量部に各材料を添加する試料16〜20を作成した。添加量の比率は上述した方針1に従った。試料16〜20は、水100重量部、および無機充填剤10重量部に対して添加する、増粘剤、繊維状充填剤および消泡剤の合計添加量を15重量部に固定し、保湿剤の添加量を0重量部から20重量部まで変化させたものである。
【表7】
【0043】
試料16〜20に対し、保湿性試験を行った。保湿性試験は、試料の作成から1時間後に再度撹拌を行って、手触りに大きな変化が生じているか否かを確認することにより判定した。判定結果は表8の通りとなった。
【表8】
【0044】
判定結果は、水の漏洩が無かった試料を「良」として、手で触れたときに脱水が生じていることが感じられた場合、若しくは、水の漏洩が有った試料を「不可」として評価した。なお、低圧で水の漏洩が有った試料に対して圧力を上げても、当然、水の漏洩が有ることが予想されるため、試験を行わなかった。この場合の判定結果は「−」と表記した。
【0045】
保湿性試験の結果により、水100重量部に対して保湿剤の添加量が0重量部では保湿性能が十分でないが、2.0重量部以上では十分な保湿性能が得られることがわかった。
【0046】
(オ)止水試験2
表9に示す添加量で水100重量部に各材料を添加する試料21〜25を作成した。添加量の比率は以下の方針2に従った。試料21〜25は、水100重量部、保湿剤5重量部、無機充填剤10重量部に対して添加する、増粘剤、繊維状充填剤および消泡剤の合計添加量を12重量部に固定し、第1繊維状充填剤と第2繊維状充填剤の各添加量の比率を変化させたものである。
<方針2>
・セルロース系増粘剤:ノニオン系高分子増粘剤:消泡剤=15.4:1:0.924
・(増粘剤+消泡剤):繊維状充填剤=4.5:7.5
【表9】
【0047】
試料21〜25に対し、止水試験2を行った。止水試験2は、試料に対して加える圧力を0.1MPaから4.0MPaまで変化させて、それぞれ水の漏洩が有るか否かにより判定した。判定結果は表10の通りとなった。
【表10】
【0048】
判定結果は、水の漏洩が無かった試料を「良」として、シール材として使えなくはないが、水の漏洩が有った試料を「可」として評価した。なお、低圧で水の漏洩が有った試料に対して圧力を上げても、当然、水の漏洩が有ることが予想されるため、試験を行わなかった。この場合の判定結果は「−」と表記した。
【0049】
止水試験2の結果により、水100重量部に対して繊維状充填剤を7.5重量部に固定した場合、第1繊維状充填剤および第2繊維状充填剤のいずれかの添加量が0重量部では止水性能が十分でないが、第1繊維状充填剤は3.5重量部以上、第2繊維状充填剤は1.5重量部以上で、十分な止水性能が得られることがわかった。すなわち、シール材には、長さが3ミリメートル以上の第1繊維状充填剤と、長さが2ミリメートル以下の第2繊維状充填剤と、を含むことが望ましい。
【0050】
また、第1繊維状充填剤の添加量の第2繊維状充填剤の添加量に対する比率では、第1繊維状充填剤が、第2繊維状充填剤の0.875(=3.5/4)倍以上4(=6/1.5)倍以下の添加量で添加されていると、十分な止水性能が得られることがわかった。
【要約】
本発明は、セメントの硬化を妨げる成分を含まず、かつ、止水性および潤滑性を有するシール材を提供する。本発明にかかるシール材は、水とシール素材とからなり、シール素材は、水溶性のセルロース系増粘剤と、直鎖状のノニオン系高分子増粘剤と、有機繊維で構成される繊維状充填剤と、有機系の消泡剤と、水分を保持させるための保湿剤と、無機化合物で構成される無機充填剤と、を含む。繊維状充填剤が、長さが3ミリメートル以上の第1繊維状充填剤と、長さが2ミリメートル以下の第2繊維状充填剤と、を含むことが望ましい。