【実施例】
【0025】
(1)試料に用いる材料
水溶性のセルロース系増粘剤、直鎖状のノニオン系高分子増粘剤、繊維状充填剤、消泡剤、保湿剤および無機充填剤を混合し、試料1〜25のシール素材をそれぞれ作成した。
セルロース系増粘剤には、関東化学株式会社製のメチルセルロース(CAS番号:9004−67−5)を用いた。
ノニオン系高分子増粘剤には、ポリビニルアルコール(ポバール、クラレ社製)を用いた。
【0026】
繊維状充填剤としては、第1繊維状充填剤としてアクリル系充填剤と、第2繊維状充填剤としてセルロース系充填剤とを用いた。
アクリル系充填剤には、太さ1ミリメートル、長さ5〜10ミリメートル程度のアクリル毛糸を用いた。これは、長さが3ミリメートル以上の第1繊維状充填剤の一例である。
セルロース系充填剤には、セルロースを主成分とする古紙を太さ0.1ミリメートル、長さ1ミリメートル程度の繊維状に作成したものを用いた。これは長さが2ミリメートル以下の第2繊維状充填剤の一例である。
【0027】
消泡剤には、関東化学株式会社製のポリエーテル系消泡剤(試薬品)を用いた。
保湿剤には、尿素(関東化学社製、試薬品)を用いた。
無機充填剤には、ケイ酸カルシウムを用いた。
【0028】
(2)試験
(ア)流動性試験1
表1に示す添加量で水100重量部に各材料を添加する試料1〜5を作成した。添加量の比率は以下の方針1に従った。試料1〜5は、水100重量部、保湿剤2重量部、および無機充填剤10重量部に対して添加する、増粘剤、繊維状充填剤および消泡剤の合計添加量を3重量部から23重量部まで変化させたものである。
<方針1>
・セルロース系増粘剤:ノニオン系高分子増粘剤:消泡剤=15.4:1:0.924
・第1繊維状充填剤:第2繊維状充填剤=9.5:5.5
・(増粘剤+消泡剤):繊維状充填剤=4.5:7.5
【表1】
【0029】
試料1〜5に対し、ポンプ圧送試験を行った。ポンプ圧送試験は、それぞれ20リットルの試料1〜5をグリスポンプにより2センチメートル管の入口から2メートルにわたって押し出し、出口から連続的に押し出されるか否かにより判定した。判定結果は表2の通りとなった。
【表2】
【0030】
判定結果は、出口から押し出された試料を「良」として、押し出されなかった試料を「不可」として評価した。
【0031】
流動性試験1の結果により、水100重量部に対する増粘剤、繊維状充填剤および消泡剤の合計添加量が23重量部まで増加すると粘性が高過ぎることとなり、流動性が著しく低下することがわかった。また、この合計添加量を3重量部まで減少させると材料分離が生じるため、連続的に押し出されなくなり、配管内に目詰りが生じることがわかった。
【0032】
したがって、増粘剤(セルロース系増粘剤、ノニオン系高分子増粘剤)、繊維状充填剤、および消泡剤が、水100重量部に対して合計で8.0重量部以上18.0重量部以下の添加量で添加されたシール材は良好な流動性を示すことが確認された。
【0033】
(イ)止水試験1
表3に示す添加量で水100重量部に各材料を添加する試料6〜10を作成した。添加量の比率は上述した方針1に従った。試料6〜10は、水100重量部、および保湿剤2.50重量部に対して添加する、増粘剤、繊維状充填剤および消泡剤の合計添加量を10.0重量部に固定し、無機充填剤の添加量を0重量部から20重量部まで変化させたものである。
【表3】
【0034】
試料6〜10に対し、止水試験1を行った。止水試験1は、試料に対して加える圧力を0.1MPaから4.0MPaまで変化させて、それぞれ水の漏洩が有るか否かにより判定した。判定結果は表4の通りとなった。
【表4】
【0035】
判定結果は、水の漏洩が無かった試料を「良」として、水の漏洩が有った試料を「不可」として評価した。なお、低圧で水の漏洩が有った試料に対して圧力を上げても、当然、水の漏洩が有ることが予想されるため、試験を行わなかった。この場合の判定結果は「−」と表記した。
【0036】
止水試験1の結果により、水100重量部に対して無機充填剤の添加量が0重量部では止水性能が十分でないが、5重量部以上では十分な止水性能が得られることがわかった。
【0037】
(ウ)流動性試験2
表5に示す添加量で水100重量部に各材料を添加する試料11〜15を作成した。添加量の比率は上述した方針1に従った。試料11〜15は、水100重量部、および保湿剤10重量部に対して添加する、増粘剤、繊維状充填剤および消泡剤の合計添加量を20重量部に固定し、無機充填剤の添加量を5重量部から25重量部まで変化させたものである。
【表5】
【0038】
試料11〜15に対し、上述したポンプ圧送試験を行った。判定結果は表6の通りとなった。
【表6】
【0039】
判定結果は、出口から押し出された試料を「良」として、押し出されなかった試料を「不可」として評価した。
【0040】
流動性試験2の結果により、水100重量部に対して増粘剤、繊維状充填剤および消泡剤の合計添加量が20重量部であると、無機充填剤の添加量が20重量部以上に増加したときに流動性が著しく低下することがわかった。この原因は、フィラー効果によるものと推測される。
【0041】
したがって、止水試験1および流動性試験2の結果により、無機充填剤が、水100重量部に対して、5.0重量部以上15.0重量部以下の添加量で添加されたシール材は良好な止水性および流動性を示すことが確認された。
【0042】
(エ)保湿性試験
表7に示す添加量で水100重量部に各材料を添加する試料16〜20を作成した。添加量の比率は上述した方針1に従った。試料16〜20は、水100重量部、および無機充填剤10重量部に対して添加する、増粘剤、繊維状充填剤および消泡剤の合計添加量を15重量部に固定し、保湿剤の添加量を0重量部から20重量部まで変化させたものである。
【表7】
【0043】
試料16〜20に対し、保湿性試験を行った。保湿性試験は、試料の作成から1時間後に再度撹拌を行って、手触りに大きな変化が生じているか否かを確認することにより判定した。判定結果は表8の通りとなった。
【表8】
【0044】
判定結果は、水の漏洩が無かった試料を「良」として、手で触れたときに脱水が生じていることが感じられた場合、若しくは、水の漏洩が有った試料を「不可」として評価した。なお、低圧で水の漏洩が有った試料に対して圧力を上げても、当然、水の漏洩が有ることが予想されるため、試験を行わなかった。この場合の判定結果は「−」と表記した。
【0045】
保湿性試験の結果により、水100重量部に対して保湿剤の添加量が0重量部では保湿性能が十分でないが、2.0重量部以上では十分な保湿性能が得られることがわかった。
【0046】
(オ)止水試験2
表9に示す添加量で水100重量部に各材料を添加する試料21〜25を作成した。添加量の比率は以下の方針2に従った。試料21〜25は、水100重量部、保湿剤5重量部、無機充填剤10重量部に対して添加する、増粘剤、繊維状充填剤および消泡剤の合計添加量を12重量部に固定し、第1繊維状充填剤と第2繊維状充填剤の各添加量の比率を変化させたものである。
<方針2>
・セルロース系増粘剤:ノニオン系高分子増粘剤:消泡剤=15.4:1:0.924
・(増粘剤+消泡剤):繊維状充填剤=4.5:7.5
【表9】
【0047】
試料21〜25に対し、止水試験2を行った。止水試験2は、試料に対して加える圧力を0.1MPaから4.0MPaまで変化させて、それぞれ水の漏洩が有るか否かにより判定した。判定結果は表10の通りとなった。
【表10】
【0048】
判定結果は、水の漏洩が無かった試料を「良」として、シール材として使えなくはないが、水の漏洩が有った試料を「可」として評価した。なお、低圧で水の漏洩が有った試料に対して圧力を上げても、当然、水の漏洩が有ることが予想されるため、試験を行わなかった。この場合の判定結果は「−」と表記した。
【0049】
止水試験2の結果により、水100重量部に対して繊維状充填剤を7.5重量部に固定した場合、第1繊維状充填剤および第2繊維状充填剤のいずれかの添加量が0重量部では止水性能が十分でないが、第1繊維状充填剤は3.5重量部以上、第2繊維状充填剤は1.5重量部以上で、十分な止水性能が得られることがわかった。すなわち、シール材には、長さが3ミリメートル以上の第1繊維状充填剤と、長さが2ミリメートル以下の第2繊維状充填剤と、を含むことが望ましい。
【0050】
また、第1繊維状充填剤の添加量の第2繊維状充填剤の添加量に対する比率では、第1繊維状充填剤が、第2繊維状充填剤の0.875(=3.5/4)倍以上4(=6/1.5)倍以下の添加量で添加されていると、十分な止水性能が得られることがわかった。