特許第5969732号(P5969732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5969732組み込まれた近接センサを備えるOLED照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969732
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】組み込まれた近接センサを備えるOLED照明装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/955 20060101AFI20160804BHJP
   H05B 33/08 20060101ALI20160804BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20160804BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160804BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20160804BHJP
   H05B 37/02 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   H03K17/955 G
   H05B33/08
   H05B33/12 B
   H05B33/14 A
   H05B33/26
   H05B37/02 E
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-543619(P2010-543619)
(86)(22)【出願日】2009年1月27日
(65)【公表番号】特表2011-514700(P2011-514700A)
(43)【公表日】2011年5月6日
(86)【国際出願番号】IB2009050319
(87)【国際公開番号】WO2009095848
(87)【国際公開日】20090806
【審査請求日】2012年1月16日
【審判番号】不服2014-12070(P2014-12070/J1)
【審判請求日】2014年6月25日
(31)【優先権主張番号】08101062.1
(32)【優先日】2008年1月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ヘンテ ディルク
【合議体】
【審判長】 菅原 道晴
【審判官】 山本 章裕
【審判官】 山中 実
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第(EP,A1)1589407
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/74-17/98 G06F 3/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極、陽極及び活性スタックを備えるOLED装置であり、前記陽極は、各々OLEDセグメントを規定している複数の陽極セグメントに分割されており、前記OLED装置は更に、基準点に対する各陽極セグメントの有効静電容量値を決定する静電容量測定ユニットを有するOLED装置であって、前記静電容量測定ユニットは更に、前記OLED装置に近づく誘電体の相対位置に応じた前記複数の陽極セグメントの間の前記有効静電容量値の変化を検出するように構成された、OLED装置。
【請求項2】
前記静電容量測定ユニットが、複数の陽極セグメントにおける電流の変化をそれぞれ測定する、請求項1に記載のOLED装置。
【請求項3】
前記OLEDセグメントは、コモン陰極を有しており、並列接続において予め規定されている電圧を前記OLEDセグメントに供給するドライバが、設けられている、請求項1又は2に記載のOLED装置。
【請求項4】
前記OLEDセグメント各々が、セグメント陰極を有しており、直列接続において予め規定されている電圧を前記OLED装置に供給するドライバが設けられている、請求項1又は2に記載のOLED装置。
【請求項5】
前記予め規定されている電圧が、全てのOLEDセグメントに対して同じである、請求項3又は4に記載のOLED装置。
【請求項6】
前記ドライバは、高周波数発生器である、請求項5に記載のOLED装置。
【請求項7】
前記OLEDの領域の一部のみが、OLEDセグメントに分割されている、請求項1乃至6の何れか一項に記載のOLED装置。
【請求項8】
前記OLEDセグメントは、付加的な空間次元による位置検出を可能にする互いに対する相対的な方位及び/又は形状を有する、請求項1乃至7の何れか一項に記載のOLED装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLED装置及び近接場イメージングタッチセンサの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチセンサは、種々の技術分野において利用されている。これらは、単に操作スクリーンのような表面の予め規定されている領域をタッチすることによって装置を制御する可能性を提供している。このために、しばしば、アースに対する「コモンモード」の静電容量の変化が、使用されている。これとは対照的に、近接場イメージングは、局所的な場の変化に反応し、そして、アースに対する「コモンモード」の静電容量に反応しない。従って、近接場イメージングは、「コモンモード」の技術において動作される標準的なタッチセンサと比較して、タッチセンサを動作させるより信頼できる仕方を提供する。更に、近接場イメージングは、指のような外部の物体の接近だけでなく、物体の位置も検出するのを可能にする。従って、例えば、近接場イメージングは、更に、それぞれの機能を有する異なるスクリーン領域上で指先によって示すことにより、タッチスクリーンセンサの助けを借りてシステムを制御することも可能にする。タッチセンサによるものは、種々の技術分野において広く知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
米国特許第2003/0159910 A1号から、容量性タッチセンサ及びOLED装置の組合せが、知られている。この文献に記載されている装置の主な目的は、組み込まれている照明されるタッチセンサ装置を提供することにある。このOLED装置において、このタッチ応答切換装置の少なくとも1つの電極は、当該発光装置の少なくとも1つの電極に結合されている。
【0004】
しかしながら、上述の原理によって動作されているタッチセンサ装置は、特に厳しい環境条件において、故障しやすいことが知られている。このことは、予め規定されている閾値を超えた場合(例えば、容量性センサ内の誘導電流が閾値を超えた場合)に、検出信号が生成されるという事実によるものである。しかしながら、この絶対値は、当該センサ装置の温度及び/又は表面の状態によって変化し得る。従って、前記タッチセンサ装置は、十分に信頼できない可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、信頼できる近接場イメージング機能を提供する照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、陰極、陽極及び活性スタックを備えるOLED装置であって、前記陽極は、OLEDセグメントを各々規定している複数の陽極セグメントに分割され、少なくとも2つの陽極セグメント間及び/又は少なくとも1つの陽極セグメントと基準点との間の複数の静電容量係数をそれぞれ測定する静電容量測定ユニットが設けられている、OLED装置によって達成される。
【0007】
従って、従来技術のOLED装置のように本発明によるOLED装置は、陽極、陰極、及び陽極と陰極との間の少なくとも1つ活性層を有する活性スタックを有する。しかしながら、本発明によれば、少なくとも前記陽極が、複数の陽極セグメントに分割される。従って、異なる陽極セグメントを備える少なくとも2つのOLEDセグメントを有するOLEDであって、これらの陽極セグメントの一方及び/又は他方と基準点(例えば、周囲のアース)との間、及び/又は前記陽極セグメント自身間の静電容量をそれぞれ測定する可能性を提供するOLED装置の提供が、本発明の主なフィーチャである。
【0008】
この設計は、上述されたように、この検出が、典型的には知られていない絶対値に関連付けられていないが、検出された信号の勾配変化に関連付けられている場合、容量性のタッチセンサの故障率が減少されることができるという認識に基づいている。従って、絶対値の変化は、本質的に取り除かれる。結果として、堅牢なタッチ感知型の照明される装置は、達成される。
【0009】
本発明によれば、例えば、異なる陽極セグメント間、及び/又は陽極セグメントと周囲のアースとの間のような、少なくとも2つの静電容量係数が、測定される。この静電容量の測定は、種々の技術に基づくことができ、特に、前記静電容量は、直接的に又は間接的に測定されることができる。更に、この測定は、質的に又は量的になされることができる。更に、前記静電容量係数の変化が発生していることを検出するのに十分なものであり得る。
【0010】
本発明の好ましい実施例によれば、前記静電容量測定ユニットは、複数の陽極セグメントの電流変化をそれぞれ測定する。このことは、本発明の好ましい実施例によれば、少なくとも、2つの異なる陽極セグメントにおけるそれぞれの電流変化が決定される。次いで、電流変化から、対応する静電容量値が、推定されることができる。
【0011】
このOLEDセグメントは、種々の仕方で設計されることができる。本発明の好ましい実施例によれば、前記OLEDセグメントは、コモン陰極を有し、並列接続において予め規定されている電圧を前記OLEDセグメントに供給するドライバが設けられる。本発明の代替的な好ましい実施例によれば、前記OLEDセグメントの各々は、これら「自身の」セグメント陰極を有しており、直列接続において予め規定されている電圧をOLEDセグメントに供給するドライバが、設けられている。従って、前記OLEDセグメントの互いからの「隔離」は、異なる仕方において達成されることができる。コモン陰極が、「隔離されている」前記OLEDセグメントに対して設けられているか否かの問題に依存して、前記陽極セグメントに、予め規定されている電圧を供給する異なる駆動方式が、使用される。
【0012】
一般に、前記OLEDセグメントは、種々の予め規定されている電圧を供給されることができる。しかしながら、本発明の好ましい実施例によれば、前記予め規定されている電圧は、全ての前記OLEDセグメントに対して同じものである。このようにして、クロスカップリング静電容量及び内部のOLED静電容量の影響が、回避されることができ、当該装置を更に信頼できるものにする。
【0013】
ドライバとして、一般に、異なる種類が使用されることができる。しかしながら、本発明の好ましい実施例によれば、前記ドライバは、高周波数発生器である。このことは、前記OLED装置が近接センサとして使用されている場合、前記高周波数発生器は、アースに対して全てのOLEDセグメントに結合されており、これらのセグメントを、好ましくは同じ予め規定されている電圧によって駆動することを意味する。各セグメントに流入する電流は、各セグメントとアースと間の有効静電容量の基準である。
【0014】
既に上述したように、好ましくは、電流センサが、個々のOLEDセグメント各々に流入している電流を検波するために使用される。誘電性の物体(例えば、指先)が、前記OLEDセグメントに接近した場合、一般に、アースに対する大幅な静電容量の変化が生じる。この静電容量の変化は、全てのOLEDセグメントに影響を及ぼし、従って各セグメントの電流が変化する。前記誘電性の物体の位置に依存して、静電容量の変化量は、前記セグメント内で変化し、前記セグメントのアレイに対する前記誘電性の物体の相対的な位置に依存する。
【0015】
一般に、前記OLED装置の領域全体が、OLEDセグメントに分割されることができる。しかしながら、本発明の好ましい実施例によれば、前記OLED装置の一部だけが、OLEDセグメントに分割される。更に、一般に、前記OLEDセグメントは、均一な形状を有しても良い。しかしながら、本発明の好ましい実施例によれば、前記OLEDセグメントは、付加的な空間次元による位置検出を可能にする互いに対する相対的な方位及び形状を有する。このようにして、カップリング係数は、それぞれのセグメントに沿って前記物体の位置を決定するのを可能にするOLEDセグメントの変化する形状に沿って位置依存するようになる。
【0016】
更に、本発明の好ましい実施例によれば、前記OLED装置は、照明装置の調光及び/又は色調節のために使用される。
【0017】
本発明のこれら及び他の見地は、以下に記載される実施例を参照して、明らかになり、説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の好ましい実施例によるOLED装置の模式図である。
図2】本発明の前記第1の好ましい実施例によるOLED装置のための接続方式を示している。
図3a】誘電性の物体が前記OLED装置に接近した場合の電荷分布を示している。
図3b】誘電性の物体が前記OLED装置に接近した場合の電荷分布を示している。
図4】本発明の第2の好ましい実施例によるOLED装置を示している。
図5】本発明の前記第2の好ましい実施例によるOLED装置のための接続方式を示している。
図6】本発明の第3の好ましい実施例によるOLED装置を模式的に示している。
図7】本発明の第4の好ましい実施例によるOLED装置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から、本発明の第1の好ましい実施例によるOLED装置が見られる。この単純化された描写は、陰極1、陽極2及び活性スタック3を備えるOLED装置を示している。この活性スタック3は、少なくとも1つの活性層を有している。図1から分かるように、陰極1、陽極2及び活性スタック3は、コモンガラス基板5上に設けられている3つのOLEDセグメント4に分割されている。従って、各OLEDセグメントは、セグメント陰極6、活性スタックセグメント7及び陽極セグメント8を有する。ITO(酸化インジウムスズ)でできている陽極2及びガラス基板5が使用されるので、活性スタック3の少なくとも1つの活性層において生成される光は、陽極2及びガラス基板5を通って発されることができる。

【0020】
本発明の前記第1の好ましい実施例によれば、複数のOLEDセグメント4が、容量性近接センサとして使用される。このために、基準点(アース)に対する各セグメントに関する有効静電容量値が決定され、前記有効静電容量値の変化は、指先のような誘電性の物体が前記OLED装置に接近した場合に検出される。
【0021】
以下で、本発明の第1の好ましい実施例による前記OLED装置がどのように駆動され、静電容量係数の変化がどのように決定されるかが、記載される。
【0022】
図2から、本発明の前記第1の好ましい実施例によるOLED装置の電源及びタッチ感知機能に関する接続方式が、見られることができる。3つのOLEDセグメント4は、コモン陰極を有していないが、各々はそれぞれセグメント陰極6を有しており、OLEDセグメント4は、直列接続において設けられている。OLEDセグメント4のためのドライバ9として、全てのOLEDセグメント4に対して同じである予め規定されている電圧を3つのOLEDセグメント4に供給する高周波数発生器が、使用される。
【0023】
通常操作の間、即ち照明光目的のため、本発明の前記第1の好ましい実施例による前記OLED装置は、直流電圧源10に接続されている。近接センサとして使用される場合、直流電圧源10は、スイッチ11の助けを借りて前記OLED装置から分離される。次いで、前記高周波数発生器は、全てのOLEDセグメント4に結合される。各々個々のOLEDセグメント4に流入する電流の検出のための電流センサ13を有する静電容量測定ユニット12が、設けられる。
【0024】
誘電性の物体がOLEDセグメント4に接近した場合、アースに対する大幅な静電容量の変化が生じる。一般に、このことは、全てのOLEDセグメント4に影響を及ぼし、従って、OLEDセグメント4の各電流が変化するであろう。前記誘電性の物体の位置に依存して、前記静電容量の変化は、前記セグメント間で変化し、前記セグメントのアレイに対する前記誘電性の物体の相対的な位置に依存する。
【0025】
図3a及び3bから見られる一例は、誘電性の物体14が、左側においてOLEDセグメント4に接近した場合の、有効静電容量に関する測定としての電荷分布を示している。このようにして、OLED装置内に組み込まれている信頼できる近接センサが、達成される。
【0026】
本発明の第2の好ましい実施例を示している図4及び5から分かるように、類似の回路配置は、コモン陰極15を有していると共に、従って並列接続されているOLEDセグメント4に関して実現されることができる。
【0027】
更に、図6から、本発明の第3の好ましい実施例によるOLED装置が、見られることができる。本発明の前記第3の好ましい実施例によれば、OLEDセグメント4も、コモン陰極1を有する。しかしながら、互いから「分離されている」OLEDセグメント4は、OLED領域全体を埋めているものではない。その代わり、本発明の前記第3の好ましい実施例によるOLED装置は、部分的な分割のみを有する。このようにして、静電容量近接センサの機能は、上述したように、前記OLED装置の予め規定されている領域に対してのみ実現される。
【0028】
図7から、部分的な分割を有する他のOLED装置が、見られることができる。本発明の前記第4の好ましい実施例によるこのOLED装置は、不均一なOLEDセグメント4を有する。このことは、カップリング係数が、各OLEDセグメント4の変化する断面に沿って位置依存するようになるので、付加的な空間次元による位置検出を可能にする。
【0029】
本発明は、添付図面及び上述の記載において、詳細に説明及び記載されたが、このような図例及び説明は、説明的なもの又は例示的なものとみなされるべきであり、限定的なものとみなされるべきではなく、本発明は、開示されている実施例に限定されるものではない。
【0030】
開示されている前記実施例に対する他の変化は、前記添付図面、本明細書及び添付請求項の熟慮により、添付請求項に記載の本発明を実施する際に当業者によって理解され、行われることができる。「有する」という語は、請求項に記載されていない構成要素又はステップの存在を排除するものではない。単数形の構成要素は、複数のこのような構成要素を排除するものではない。特定の手段が、相互に異なる従属請求項において引用されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利になるように使用されることができないと示すものではない。前記請求項における如何なる符号も、前記請求項の範囲を制限するものとして解釈されてはならない。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7