(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の相互接続されたアトミックブロック(A、B)を有するブロック図(200)によって表される非線形システムの分散モデルを最適化する方法であって、前記アトミックブロックの各々は、対応する信号リンクを介して入力信号を受信するための少なくとも1つの入力ポートを含み、各アトミックブロックは前記非線形システムのサブシステムを表し、該方法(300)は、
前記ブロック図(200)中の少なくとも一部の信号リンクを弾性リンクに置き換えるステップであって、各弾性リンクが、対応する入力ポートを、前記入力信号に置き換わる置換信号(sig)を生成する信号発生器を用いて増強し、前記置換信号は、未知の時間関数であり、前記対応するアトミックブロックの変域に制限される、ステップと、
各弾性リンクについて、前記ブロック図(200)における前記入力ポートによって受信される前記入力信号と前記置換信号(sig)との間の差分を計算するステップと、
各弾性リンクについて、前記差分を補助信号として出力するステップと、
前記分散モデルの最適化のために、前記複数のアトミックブロック(A、B)の前記ポートのそれぞれからの前記補助信号を大域コスト関数において用いるステップと
を含む方法。
【背景技術】
【0002】
制御された技術の簡略化された数学モデルの作成は、一般に、制御システムの監視、診断、又はリアルタイム最適化システム設計における最初のステップである。システムの成功は、モデルの精度及び信頼性に大きく依存する。コントローラー又はオプティマイザーのアルゴリズムは、通例、汎用的であり、十分に試験され、その後、複数の用途にわたって再利用されるが、これらのモデルは、通例、用途ごとに新しく作成及び較正されなければならない。たとえば、乗用車のエンジン制御ユニットは、その制御アルゴリズムが実際には同一である可能性があるが、異なるエンジンタイプを有する異なる車両モデルでは正しく機能しないであろう。モデルの作成及び較正は、制御システム設計内におけるボトルネックを象徴するものである。多くの現代のモデルベース制御手法では、モデルは、実際には、汎用コントローラーを所与の用途向けにパラメーター化する主要なパラメーター(ペナルティ及び制約を除く)である。
【0003】
信頼性のあるほとんどのモデルは、第1原理、すなわち力学的法則、熱力学法則、化学的法則、及び他の法則から得られる。このようなモデルは、当然、質量保存の法則又はエネルギー保存の法則等に従う。このようないずれの法則も、同定問題に対して付加的な制約を課し、したがって、問題の不確実性(多くの場合、未知数の数と等しい)を取り除く。その結果、第1原理モデルは、純粋に経験的なブラックボックスモデル(すなわち、利用可能なアプリオリな情報がないシステムのモデル)に必要なデータセットと比較して小さなデータセットを用いて較正することができる。通常、第1原理モデルは、ブラックボックスモデルと比較すると、較正に用いられるデータセットに向かうにつれてより大きな予測誤差を示す。しかし、較正に用いられないデータセット上でモデル予測精度を比較する(すなわち、較正データからさらにモデルの挙動を推定する)と、その逆のことが通例、当てはまる。第1原理から導出されるモデルは、それでも、複数の未知のパラメーターを有する可能性がある。それらの値を同定することは、(ブラックボックス同定と区別するために)「グレイボックス同定問題」と呼ばれる(ここで、モデル構造は任意であり、物理法則から導出されない)。
【0004】
複雑な大規模非線形システムのグレーボックスモデル同定の手法には、局所的方法及び大域的方法の2つの手法がある。局所的方法を利用すると、個々の構成要素(ブロックの図的表現におけるブロック又はサブシステム)は、それらの局所的な入力データ及び出力データを用いて別々に適合されるのに対して、大域的方法では、システム全体の予測を常に評価しながら、すべての構成要素が同時に適合される。大域的方法は、局所的同定から始めることができ、その後、それらの結果を大域的方法の初期状態として用いることができる。双方の手法に利点がある。たとえば、局所的方法は、より優れた収束特性を有する一方、大域的方法は統計的により効率的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明者らは、付加的な利益を提供することに加えて双方の利点を組み合わせる新たな方法が必要であると考えている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の概要は、開示した実施の形態に特有の革新的な特徴のうちのいくつかの理解を容易にするために提供され、完全な説明であることを意図したものではない。本明細書に開示される実施の形態のさまざまな態様の完全な理解は、明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全体を全体的にみることによって得ることができる。
【0007】
本発明の一態様は、ブロック図として表される非線形システムの分散モデル同定の方法を提供することである。
本発明の別の態様は、ブロックのそれぞれによって受信される値の置換信号値(s
ig)を生成する信号発生器を用いてブロックの各入力ポートを増強することによってブロック図にわたるすべての信号リンクを弾性リンクに置き換えることにより、ブロック図として表される非線形システムの分散モデル同定の改良された方法を提供することである。
【0008】
本発明の別の態様は、受信値と置換信号値との間の差分を計算すると共に、ブロック図の弾性リンクの弾性を制御する補助信号としてその差分を出力することである。同定過程中、補助信号の絶対値がゼロまで次第に最小にされる。
【0009】
前述した態様並びに他の目的及び利点は、この時、本明細書に説明するように達成することができる。ブロック図として表される非線形システムの分散モデル同定の方法が開示される。この分散モデル同定は、まず、複数のブロックのそれぞれによって受信される値の置換信号値(s
ig)を生成する信号発生器を用いて複数のブロックの各入力ポートを増強することによりブロック図にわたるすべての信号リンクを弾性リンクに置き換えることによって達成される。次に、受信値と置換信号値との間の差分が計算され、弾性リンクの弾性を制御する補助信号として出力される。
【0010】
変更されたブロック図の同定の期間中、補助信号発生器のパラメーター及び初期条件の双方が操作されて、1)可能な限りデータに近い図出力を設定すること、及び2)送信信号値と受信信号値との間のすべての差分を消滅させる(annihilate)ことの2つの目標が同時に達成される。この問題は、ブロック出力を局所データに適合させることを達成するブロックパラメーターの局所最適化と、ゼロの補助出力を達成する信号発生器の大域的協調(global coordination)とに分離することができる。大域的同定結果は、送信信号値と受信信号値とを一致させ、したがってそれらの絶対差分を最小にする一連の局所的同定問題を解くことで探し出される。
【0011】
添付図面は、実施形態をさらに示し、詳細な説明と共に、本明細書で開示される実施形態を説明する働きをする。添付図面において、同様の参照番号は、別々の図を通じて同一の要素又は機能的に類似の要素を指し、添付図面は明細書に組み込まれ、明細書の一部を成す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明は、限定の目的ではなく例示の目的で提供されることが当業者によって理解されるべきである。当業者は、本発明の趣旨内及び添付の特許請求の範囲の範囲内にある多くの変形が存在することを理解する。既知の機能及び動作の不必要な詳細は、本発明を不明確にしないように本説明から省略されることがある。
【0014】
図1は、開示した実施形態による制御システムの代表的なブロック図の生成に利用することができるデータ処理装置100を示している。データ処理装置100は、1つ又は複数のソフトウェアモジュールの使用を含むことに留意されたい。ソフトウェアモジュールは、一般に、データ処理装置のメモリロケーション内に記憶可能な命令媒体を含み、通常は2つの部分で構成される。第1に、ソフトウェアモジュールは、他のモジュール又はルーチンがアクセスすることができる定数、データタイプ、変数、ルーチン等を列挙することができる。第2に、ソフトウェアモジュールは、プライベート(すなわち、おそらくそのモジュールにのみアクセス可能)とすることができる実施態様として構成することができ、モジュールが基づいているルーチン又はサブルーチンを実際に実現するソースコードを含む。したがって、用語「モジュール」は、本明細書で利用されるとき、一般に、ソフトウェアモジュール又はその実施態様を指すことができる。このようなモジュールは、別々に又は共に利用されて、伝送媒体及び/又は記録可能媒体を含む信号担持媒体を通じて実施することができるプログラム製品を形成することができる。このようなモジュールの一例は、
図1に示すモジュール111である。
【0015】
実施形態は、完全に機能的なデータ処理システム(たとえばコンピューターシステム)のコンテキストで説明されるが、当業者は、これらの実施形態のメカニズムをさまざまな形態のプログラム製品として配布することができること、及び配布を実際に行うのに利用される特定のタイプの信号担持媒体に関わらず、本発明は等しく適用されることを理解することに留意することが重要である。信号担持媒体の例には、USBドライブ、DVDディスク、CD−ROMディスク等の記録可能なタイプの媒体、及びアナログ通信リンク又はデジタル通信リンク等の他の伝送タイプの媒体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
図面、特に
図1を参照して、メモリ105、プロセッサ(CPU)110、読み出し専用メモリ(ROM)115、及びランダムアクセスメモリ(RAM)120は、一般に、装置100のシステムバス125に接続されている。メモリ105は、たとえば、ROM、RAM、それらの組み合わせ、又は単純に一般的なメモリユニットとして実施することができる。モジュール111は、メモリ105内に記憶することができ、その後、特定のタスクを実行するためにプロセッサ110を介してリトリーブして処理することができる。キーボード、マウス、又は別のポインティングデバイス等のユーザー入力デバイス140は、PCI(周辺コンポーネント相互接続)バス145に接続することができる。
【0017】
図1に示すデータ処理装置100は、CPU110、ROM115、及びRAM120を備えることができ、これらは、周辺コンポーネント相互接続(PCI)ホストブリッジ135を通じてPCIローカルバス145に連結することができる。PCIホストブリッジ135は、低レイテンシパスを提供することができ、この低レイテンシパスを通じて、プロセッサ110は、バスメモリ及び/又は入出力(I/O)のアドレス空間内のいずれかの場所にマッピングされたPCIデバイスに直接アクセスすることができる。PCIホストブリッジ135は、PCIデバイスがRAM120に直接アクセスすることを可能にする高帯域幅パスも提供する。
【0018】
PCIローカルバス145には、通信アダプター155、小型コンピューターシステムインターフェース(SCSI)150、及び拡張バスブリッジ170も取り付けられている。通信アダプター155は、デジタル処理装置100をネットワーク165に接続するのに利用される。SCSI150は、高速SCSIディスクドライブ160を制御するのに利用される。PCI対ISAバスブリッジ等の拡張バスブリッジ170は、ISAバス175をPCIローカルバス145に連結するのに利用することができる。PCIローカルバス145は、モニター130にもさらに接続することができることに留意されたい。モニター130は、ユーザー用のデータ及び情報を表示すると共に、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)をインタラクティブに表示するディスプレイ(たとえばビデオモニター)として機能する。
【0019】
用語「GUI」(グラフィカルユーザーインターフェース)は、コンピューターモニタースクリーン上にグラフィック表示されるアイコン、メニュー、及びダイアログボックスによってプログラム、ファイル、オプション等を表すタイプの環境を一般に指すことに留意されたい。ユーザーは、GUIとインタラクトして、たとえばマウス等のポインティング等のユーザー入力デバイス及び/又はキーボードでポインティング及びクリックすることにより、そのようなオプションを選択及びアクティブ化することができる。GUIは、これらの要素をハンドリングする標準的なソフトウェアルーチン(たとえばモジュール111)を提供し、ユーザーの動作を報告するので、或る特定の項目は、すべてのアプリケーションにおいてユーザーに対して同じように機能することができる。
【0020】
制御システムを記述するのにブロック図を作成する際、構成要素又はサブシステムのパラメーターは、通例、それらの入力データ及び出力データに個々に適合される。このような構成要素レベルの較正は、最適ではなく、測定においてすべての情報コンテンツを利用するとは限られない。この主張を例示するために、図のブロックを接続する信号リンクが等式制約を表し、ブロックによって生成される値が他のブロックによって受け取られる値に等しい一般的な制約付き最適化問題としてモデル較正を表すことができる。これらの制約は「構造制約」と呼ぶことができる。パラメーター及び信号のデカルト積では、確率は、構造制約に違反するポイントにおいてゼロである。
【0021】
図2は、開示した実施形態による2つのアトミック機能ブロック又はアトミック機能サブシステムA及びBのカスケードのブロック
図200を示している。信号s
1は、Aによって処理されてs
2になり、最終的にs
2はBによって処理されて、s
3が生成される。測定値mは、理論的には正しいが未知の値sとは異なる可能性がある。差分m−sは、eとして表され(すべてのeの値の集合は、本明細書ではEとして表される)。E及び未知のブロックパラメーターは、確率(不確実な)変数を表す。ベイズのパラダイムを用いると、E及びA、Bの未知のパラメーターのデカルト積で事前確率分布を定義することができる。この事前確率分布及びブロック図は同定問題の統計モデルを表す。
【0022】
ブロック図構造制約及び測定の値によって定義される制約は、e及びA、Bのパラメーターの事後確率分布を定義する事前情報と組み合わせることができる。この図では、構造制約及び測定制約は以下の式となる。
【0024】
ここで、e
2は、2つのバージョンa及びbに分割される。これらの2つのバージョンは同一であることが分かる。したがって、事前確率は、次の集合、すなわち集合A及びB並びに集合Eのこのデカルト積Pで定義される。集合A及びBは、すべての可能なパラメーター値の集合を表し、集合Eはすべてのeの信号値を表す。
【0026】
同定問題は、或る特定の最適性指標、たとえば最大事後確率解に関して上記デカルト積の集合Pの要素を探索する。P個の要素の相対的確率は、事前情報によって与えられるのに対して、構造制約は、等式制約を充足するポイントを除いて確率をゼロに設定する。事前確率の消滅(prior probability annihilation)は、測定における情報コンテンツがモデルパラメーターについての情報に投射される方法である。
【0027】
この設定において、局所的同定と大域的同定との間の差分が明らかにされる。局所的ブロックレベル較正は、式(1)の最後の等式制約を用いない。これは、Pにおける或る特定の要素、すなわち、式(1)の制約3ではなく制約1〜2を充足する要素について確率がゼロに設定されないことを示す。これは、未知のパラメーター値が、より大きな集合Pにおいて探し出され、さらに、探索から除かれておくべきである信号及びパラメーターの値の組み合わせがゼロの事後確率を有することから、これらの組み合わせの中においても探し出されることを示す。このより大きな集合にわたって探索する結果、平均推定誤差は確実により大きくなる。
【0028】
その結果として、すべての構造制約が尊重されるとは限らないので、サブシステムが別々に取り扱われるときは常に、推定誤差は増加する。最良の平均推定精度は、モデルパラメーターが最適化されたときに予想され、したがって、ブロック図の予測誤差が全体として、すなわち大域的に最小になる。
【0029】
上記は、大域的同定方法が局所的同定方法よりも良好な精度を有するはずであることを実証している。あいにく、大域的方法は、通常、より狭い収束集合を有する。精度を改善する構造制約によって、複数の局所解(最適化問題の複数の局所的極値)も追加されることを示すことができる。したがって、大域的同定の大域的最小値はより良い推定値であるが、勾配方法等の凸数値最適化方法を介してその推定値を発見することはより困難又は不可能であり得る。大域的同定方法は、数値安定性に関する問題も有する可能性がある。
【0030】
評価にはその微分方程式の数値解が必要とされるというだけの理由で、非線形ブロック図の予測を評価する際に困難が生じる。フィードバックパスを有するブロック図について、解は、不安定である場合もあるし、有限発散時間(finite escape time)にさえなる場合もある(いくつかの信号は有限時間で無限値に至る)。比較すると、サブシステムレベル又はブロックレベルの同定には、一般的に、はるかに単純かつ高速で信頼性のあるサブシステムの解決法しか必要とされない。構造制約を加味したときに、ブロック方程式を別々に解くことは、それらのすべてを同時に解くことよりも高速である。
【0031】
さらに、サブシステムのいくつかは、制限された変域を有する場合がある。これは、いくつかの入力値が認められない場合があることを意味する。たとえば、第1原理は、絶対零度を下回る温度については物理的意味を何ら持たないことから、ほとんどの温度信号は絶対零度を下回る値を許容しない。このような違反値は、式で形式的に用いられると、多くの場合、オーバーフロー結果(たとえばゼロの除算又はゼロの対数)、複素結果、又は未定義の結果をもたらす。多くの第1原理法則は変域境界上で不連続である。たとえば、変域Dを有する除算アトミックブロックを考える。
【0033】
この除算ブロックの入力がブロック図の外部入力の1つではなく、その代わり、未知のパラメーターを有する他のブロックによって生成された内部信号であり、かつ初期s
i符号が正しくない場合、収束性は失われる場合がある。適合基準値は、s
i=0において無限大となる可能性がある。その場合、明らかに、凸最適化方法は変域境界を横切るはずがない。換言すれば、s
i符号は同定によって変更されないことになる。除算ブロックを次のように変更することは効果的でないことに留意されたい。
【0035】
この結果、s
i≦εの場合の勾配ds
0/ds
iは消滅し、その結果として、最適化は、s
i値を変更することができるいかなるものの更新も停止する。局所的同定では、サブシステム入力がより多く制御下に置かれるので、これはそれほど問題ではない。したがって、入力信号値s
i≦0は同定に用いられない。
【0036】
上記考慮すべき事項に基づいて、局所的同定方法及び大域的同定方法の利点を組み合わせる必要がある。最も直接的かつ広く用いられる方法は、局所的同定によって提供される初期条件から大域的同定を開始することに基づくものである。本明細書では、より完全な解決法である分散同定を説明する。この方法は、信号値の等式制約を信号差分のソフトペナルティ(soft penalization)に置き換える。換言すれば、受信ブロックの入力によって受信される値と必然的に同一である送信ブロックの出力によって提供される信号値に代わって、本発明の一実施形態は、信号の絶対差分を最小にすることを試みる。したがって、信号差分は、最適化を受ける大域コスト関数になることができる。したがって、受信する入力によって用いられる信号値は、同定過程中にブロック出力によって送信された値と必ずしも等しくない。ブロック図における信号リンクは、単一の値ではなく2つの値を表す。機械的技術における類推から、ブロック間に固定継手の代わりに弾性継手が用いられる。リンクの弾性は、送信値と受信値との間でどれくらいの差分が認められるのかによって制御することができる。同定が完了した後、受信信号値は、送信値に等しくなるはずであり、発見された解は大域的同定の解である。
【0037】
図3は、ブロック図にわたるすべての信号リンクを弾性リンクに置き換えるために、各アトミックブロックの各入力ポートが信号発生器を用いて変更される分散モデル同定の方法300を示している。信号発生器は、受信される値の置換信号値を提供する。受信値と置換信号値との間の差分は、リンク弾性を制御するために出力される。
【0038】
ブロックの変更は、次のように表すことができ、ブロックAは入力信号ベクトルs
iの処理を行う。
【0040】
これは、信号発生器出力s
ig及び補助出力s
aによって増強された同じブロックに置き換えられることになる。
【0042】
発生したs
igは、未知の時間関数であり、ブロックAの変域Dに制限されなければならない。ブロック図が定常状態のデータに向けて適合される場合、最も単純な信号発生器を用いることができる。この場合、s
igは単純に未知の定数ベクトルとなる。送信値と受信値との間の差分は、局所的ブロック図同定手法と大域的ブロック図同定手法との間の相違を生み出すまさに自由度である余分な自由度を追加する。
【0043】
2つのブロックA及びBをカスケードした場合、信号s
2を送信値及び受信値の2つに分けることによって、ブロックBは、Aの出力と必ずしも等しくない入力値で適合される。これは局所的同定方法である。信号s
aがゼロであるとき、局所的同定方法の解は大域方法の解にもなる。弾性ブロックの図を適合させ、s
aノルムを目的関数として用いると、局所的同定から大域的同定への円滑な移行を行うことが可能である。これによって、これらの2つの同定の利点が組み合わせられる。さらに、(Bがたとえば除算ブロックである場合)余分な自由度を用いてすべての入力をそれぞれの変域に常にプッシュすることができる。そうでない場合、Bブロックの入力値がAブロックのパラメーターの複雑な関数であり得るので、変域の充足を保証することは非自明となる。これは、フィードバックパスを有するブロック図ではさらに複雑になる。また、弾性ブロック図は、フィードバックパスが存在する場合であっても、すべての信号発生器及びすべての基本サブシステムが安定である場合には不安定な又は有限の発散時間になるはずがないことに留意されたい。
【0044】
分散同定は、
図3に示すようにすべての基本モデリングブロックを変更するときに達成することができる。他のブロックによって送信されるか又は外部から入力される入力値を用いる代わりに、置換信号値が用いられる。置換信号値は、そのブロックに送信された値が常に有効であるように元のサブシステムの変域に射影される。入力は出力に対して直接的な影響を有しないので、ブロック図に可能なフィードバックループがないことに留意すべきである。それらの出力は、補助出力最小化を介してのみ連結される。
【0045】
ブロック入力が変域の外部にある場合、入力信号を送信しているブロックは、まだ補助信号最小化を介して変域内信号を提供するように制御されているいるので、勾配は消滅しないことに留意すべきである。補助信号は、すべてのブロック入力がそれぞれの変域にある場合にのみゼロになる。それでもなお、先祖ブロックパラメーター(ancestor block parameters)の出力に関する勾配はゼロ化されることがある。
【0046】
上記に開示した特徴及び機能並びに他の特徴及び機能の変形形態、又はそれらの代替形態を望ましくは組み合わせて、多くの他の異なるシステム又はアプリケーションにすることができることが理解されよう。また、それらにおける現在予見又は予期されていないそのさまざまな代替形態、変更形態、変形形態、又は改良形態を当業者はその後行うことができ、これらも、次の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。