(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969736
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】熱応動式スチームトラップ
(51)【国際特許分類】
F16T 1/10 20060101AFI20160804BHJP
F16T 1/14 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
F16T1/10
F16T1/14 C
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-157342(P2011-157342)
(22)【出願日】2011年7月19日
(65)【公開番号】特開2013-24270(P2013-24270A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智行
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−247391(JP,A)
【文献】
特開平08−312891(JP,A)
【文献】
特開平06−213393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/10
F16T 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ケーシングで入口と、前記入口に連通する弁室と、第1導出路及び第2導出路を介して前記弁室に連通する出口とが形成されており、第1ダイヤフラム及び第2ダイヤフラムの間の内部空間全体に同一の膨脹媒体が封入されており、第1ダイヤフラムを開弁方向に付勢する弾性部材が設けられており、前記内部空間の前記第1ダイヤフラム側と前記第2ダイヤフラム側とを連通する開口を有するとともに、前記第1導出路を開口した前記第1ダイヤフラム及び前記第2導出路を開口した前記第2ダイヤフラムの夫々の開弁方向への所定以上の変位を規制するストッパ部材を前記第1ダイヤフラム及び前記第2ダイヤフラムの間の前記内部空間に設けた温度制御機素が前記第1導出路及び前記第2導出路の間に配置されており、前記膨脹媒体の膨脹収縮による前記第1ダイヤフラム及び前記第2ダイヤフラムの変位によって前記第1導出路及び前記第2導出路を開閉するようにしたことを特徴とする熱応動式スチームトラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気と復水で加熱冷却されその温度に応じて膨脹収縮する媒体を含む温度制御機素を用いて、各種蒸気使用機器や蒸気配管で発生する復水を自動的に排出する熱応動式スチームトラップに関し、特に多量の復水を排出できる多量用の熱応動式スチームトラップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱応動式スチームトラップは、例えば特許文献1に開示されている。これは、弁ケーシングで入口と、入口に連通する弁室と、第1導出路及び第2導出路を介して弁室に連通する出口を形成し、第1ダイヤフラム及び第2ダイヤフラムの間の内部空間に膨脹媒体を封入し、第1ダイヤフラムを開弁方向に付勢する弾性部材を設けた温度制御機素を第1導出路及び第2導出路の間に配置し、膨脹媒体の膨脹収縮による第1ダイヤフラム及び第2ダイヤフラムの変位によって第1導出路及び第2導出路を開閉するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−312891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の熱応動式スチームトラップは、弁室内に所定温度以上の高温流体が流入してくると膨脹媒体が膨脹して先ず第2ダイヤフラムが第2導出路を閉止し続いて第1ダイヤフラムが第1導出路を閉止し、所定温度以下の低温流体が流入してくると膨脹媒体が収縮して先ず第1ダイヤフラムが第1導出路を開口し続いて第2ダイヤフラムが第2導出路を開口することにより、温度制御機素によって第1導出路及び第2導出路を開閉するので、排出容量を大きくでき、多量の復水を排出できるという優れたものであるが、膨脹媒体が収縮して内部空間の内圧が減少したときに、第1導出路を開口した第1ダイヤフラムのみが更に開弁方向に変位して第2ダイヤフラムが第2導出路を開口できない場合は多量の復水を排出できないという問題点があった。
【0005】
したがって本発明が解決しようとする課題は、第1ダイヤフラム及び第2ダイヤフラムが確実に夫々第1導出路及び第2導出路を開口することのできる熱応動式スチームトラップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の熱応動式スチームトラップは、弁ケーシングで入口と、入口に連通する弁室と、第1導出路及び第2導出路を介して弁室に連通する出口を形成し、第1ダイヤフラム及び第2ダイヤフラムの間の内部空間に膨脹媒体を封入し、第1ダイヤフラムを開弁方向に付勢する弾性部材を設け、第1導出路を開口した第1ダイヤフラム及び第2導出路を開口した第2ダイヤフラムの開弁方向への所定以上の変位を規制するストッパ部材を第1ダイヤフラム及び第2ダイヤフラムの間の内部空間に設けた温度制御機素を第1導出路及び第2導出路の間に配置し、膨脹媒体の膨脹収縮による第1ダイヤフラム及び第2ダイヤフラムの変位によって第1導出路及び第2導出路を開閉するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1導出路を開口した第1ダイヤフラム及び第2導出路を開口した第2ダイヤフラムの開弁方向への所定以上の変位を規制するストッパ部材を第1ダイヤフラム及び第2ダイヤフラムの間の内部空間に設けたものであるので、一方の導出路を開口した一方のダイヤフラムのみが更に開弁方向に変位することを防止でき、第1ダイヤフラム及び第2ダイヤフラムが確実に夫々第1導出路及び第2導出路を開口することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係わる熱応動式スチームトラップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、
図1を参照して説明する。本体1と端部材2をボルト(図示せず)で結合して、内部に弁室3を有する弁ケーシングが形成される。端部材2には入口4が形成され、本体1には入口4と同軸上の出口5が形成されている。入口4は本体1に形成された流入通路6,7を通して弁室3に連通している。
【0010】
弁室3と出口5の間の隔壁部に、第1導出路8を開けた第1弁座部材9と、第2導出路10を開けた第2弁座部材11が同軸上にねじ結合されている。弁室3は第1及び第2の導出路8,10から隔壁部の外側を通して出口5に連通している。
【0011】
第1弁座部材9と第2弁座部材11の間に、温度制御機素12が配置され、ばね13で保持されている。温度制御機素12は、第1及び第2のダイヤフラム14,15の間に中央に開口を有するストッパ部材21を介在させて夫々の外周縁を固着し、第1及び第2のダイヤフラム14,15の間に形成した内部空間に膨脹媒体16を封入したものである。ストッパ部材21は第1導出路8を開口した第1ダイヤフラム14及び第2導出路10を開口した第2ダイヤフラム15の開弁方向への所定以上の変位を規制する。膨脹媒体16は、水、水より沸点の低い液体、或いはそれらの混合物で形成される。第1及び第2のダイヤフラム14,15には夫々中央に第1及び第2の導出路8,10を開閉する弁部材17,18が固着されている。また第1及び第2のダイヤフラム14,15の外周縁には、中央に弁部材17,18が出入する開口が開けられた壁部材19,20の外周縁が固着されている。そして第1ダイヤフラム14を開弁方向に付勢する弾性部材としてのコイルばね23が第1弁座部材9と第1ダイヤフラム14の間に配置されている。
【0012】
上記の熱応動式スチームトラップの動作は下記の通りである。弁室3内に流入してくる流体の温度が高い場合、第1及び第2のダイヤフラム14,15の間の内部空間に封入した膨脹媒体16が膨脹して内部空間の内圧が増大し、先ず第2ダイヤフラム15が第2弁座部材11側に変位して弁部材18で第2導出路10を閉止し、続いて第1ダイヤフラム14が第1弁座部材9側に変位して弁部材17で第1導出路8を閉止する。
【0013】
弁室3内の温度が放熱等によって低下したり弁室3内に流入してくる流体の温度が低い場合は、膨脹媒体16が収縮して内部空間の内圧が減少し、先ず第1ダイヤフラム14が第1弁座部材9から遠ざかり弁部材17が第1導出路8を開口し、続いて第2ダイヤフラム15が第2弁座部材11から遠ざかり弁部材18が第2導出路10を開口する。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、蒸気と復水で加熱冷却されその温度に応じて膨脹収縮する媒体を含む温度制御機素を用いて、各種蒸気使用機器や蒸気配管で発生する復水を自動的に排出する熱応動式スチームトラップに利用することができる。
【符号の説明】
【0015】
1 本体
2 端部材
3 弁室
4 入口
5 出口
8 第1導出路
10 第2導出路
12 温度制御機素
14 第1ダイヤフラム
15 第2ダイヤフラム
16 膨脹媒体
21 ストッパ部材
23 コイルばね