【実施例】
【0076】
本願発明を、以下の実施例により説明する。ただし、これらは本願発明の範囲を制限するものではない。
1.セルロース複合体の体積平均粒子径
(1)セルロース複合体を、1質量%濃度の水分散液とし、高せん断ホモジナイザー(日本精機(株)製、エクセルオートホモジナイザーED−7、処理条件;15,000rpmを5分間)を用いてイオン交換水に分散させた。
(2)得られた水分散液を、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、LA−910、前処理として超音波処理を1分、屈折率1.20)で粒度分布を測定した。ここで得られた体積頻度粒度分布における、積算50%の粒子径を体積平均粒子径とした。
2.セルロース複合体のコロイド状セルロース成分含有率
(1)セルロース複合体の1質量%濃度の水分散液を上記1.(1)と同様にして作成した。
(2)遠心分離した。(久保田商事(株)製、6800型遠心分離機、ロータータイプRA−400、処理条件:遠心力2,000rpm(5600G、Gは重力加速度)×15分間、仕込量:50g(遠沈管))
(3)遠心分離後の上澄み液をガラス製秤量瓶に導入し、60℃で15時間、その後105℃で2時間乾燥し、デシケーター内で恒量した後、重量を測定した。また、別途、未遠心の水分散体も同様に乾燥し、重量を測定した。それらの結果から、上澄みに残存するセルロース固形分の質量百分率を、以下の式より求めた。
セルロース成分含有率=(上澄み50gの固形分)/(未遠心50g中の固形分)×100
3.セルロース複合体の貯蔵弾性率の測定方法
(1)セルロース複合体の1.8量%濃度の水分散液を上記1.(1)と同様にして作成した。
(2)その分散液と、0.2MでpH4のMcllvaine緩衝液(0.2Mのリン酸水素二ナトリウムと0.1Mのクエン酸の水溶液)とを混合して、セルロース複合体の濃度が1.0質量%(全量300g、イオン濃度0.06mol/L、pH4)に調整した後、得られた水分散体を3日間室温で静置させた。
(3)この水分散体の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、角速度:20rad/秒、ひずみ:1→794%の範囲で掃引)により測定した。得られた歪み−応力曲線において、歪み20%の値をセルロース複合体の貯蔵弾性率(G‘)として用いた。
4.セルロースの粒子形状
セルロース複合体を、1質量%濃度で水分散液を作成したものを、イオン交換水で0.1質量%に希釈した。これをスポイドで、マイカ上に1滴キャストした。エアダスターにて余分な水を吹き飛ばして風乾させ、サンプルを調製した。原子間力顕微鏡(Digital Instruments社製、Nano ScopeIV MM、スキャナーEV、測定モードTapping、プローブNCH型シリコン単結晶プローブ)で計測された画像をもとに、長径(L)が2μm以下の粒子の形状から、長径(L)と短径(D)を求め、その比(L/D)をセルロース粒子の形状とした。100〜150個の粒子の平均値を算出した。
5.懸濁安定性の評価方法
液体調味料の懸濁安定性について、以下の指標に基づき目視により判定した。
◎(優):分離、凝集、沈降、浮上の発生なし、○(良):分離、凝集、沈降、浮上が一部で発生、△(可):分離、凝集、沈降、浮上が部分的に発生、×(不可):分離、凝集、沈降、浮上が全面に激しく発生。
6.粘度
液体調味料の粘度を測定した。粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、以下の条件で選択したローターを試作した液体中に差込み、1分間静置した後に30秒間回転させたときの値を測定した。回転数は、6rpmで測定した。
7.TI値
流動性の指標として、液体調味料の粘度を測定して、TI値を算出した。上記で測定した6rpm及び60rpmで測定した液体調味料の粘度の値の比を、TI=(6rpmで測定した粘度値)/(60rpmで測定した粘度値)として算出した。
8.塩濃度
液体調味料の塩濃度は、以下に調製した。
ごまぽん酢:1.5 mol/L
ゆずぽん酢:1.4 mol/L
焼肉のたれ:0.9 mol/L
ポタージュ:0.15 mol/L
味噌汁 :0.25 mol/L
9.官能評価
液体調味料を、年齢や性別の異なる10人のパネラーがブラインドで試食して評価を行い、1〜5段階で点数をつけてもらった。そのうち、一番高い点数と低い点数を一人ずつ除外し、8人の点数の平均値を採用した。点数は最高点を5点とし、以下4、3、2、1として点数をつけてもらった。評価の基準は、「味がおいしい」、「素材の味が生きている」、「素材の風味が生きている」、「喉越しがよい」という4つの観点から総合的に判断してもらった。どれも際立って優れているものを5点、以下、4項目のうちいずれか1項目にて物足りなさを感じた場合は4点、2項目にて物足りなさを感じたら3点、3項目全てにて物足りなさを感じたら2点、すべてにおいて物足りなさを感じたら1点として、それぞれ点数をつけてもらった。
10.セルロース複合体の構造:セルロースからの親水性ガムの広がりの観察
(1)セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間、全量300g)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%の純水分散体を調製した。
(2)上記水分散体と、0.2MでpH3.5のMcllvaine緩衝液(0.2Mのリン酸水素二ナトリウムと、0.1Mのクエン酸の水溶液)とを混合して、セルロース複合体の濃度を0.5質量%(イオン濃度0.06mol/L、pH4.0)に調製した後、純水でセルロース複合体の濃度を0.1質量%に希釈した。
(3)(1)及び(2)で得られた水分散体を、3日間以上、室温で静置した。水分散体の微細構造を壊さないよう、スポイトを使用して、5μlをゆっくりと吸出し、1cm×1cmの壁開されたマイカ上に、ゆっくり滴下し、エアダスターで余分な水分を吹き飛ばし、マイカ上に定着したサンプルを、AFM(島津製作所製 走査型プローブ顕微鏡SPM−9700、位相モード、オリンパス社製プローブOMCL−AC240TSを使用)にて、観察した。
(実施例1)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロース(MCC)を作製した(平均重合度は220であった)。
【0077】
次に、ウエットケーキ状のMCC、PSG((株)MRCポリサッカライド製、PG020、1質量%溶解液の粘度40mPa・s)、CMC−Na(第一工業製薬(株)、F−7A、1%溶解液の粘度11mPa・s)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)にMCC/PSG/CMC−Naの質量比が90/5/5となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
【0078】
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Aを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、0.6kWh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
【0079】
得られたセルロース複合化物Aの貯蔵弾性率(G’)は0.48Paであった。また、セルロース複合体Aの体積平均粒子径は6.2μmであり、コロイド状セルロース成分は55質量%、粒子L/Dは1.6であった。
また、AFMの観察像において、セルロース粒子は高さ2nm以上の棒状粒子として観察され、イオン交換水(中性)で調製した水分散体(
図3)及びpH4に調製した水分散体(
図4)のいずれにおいても、そのセルロース粒子から周囲に放射状に伸びる高さ2nm未満の親水性ガムが観察された。
【0080】
このセルロース複合体Aを用いて次のようにしてごま強化ぽん酢を作成した。
【0081】
まず、イオン交換水を、TKホモミキサーで5,000rpmで攪拌しながら、全量に対してセルロース複合体Aが5質量%となるよう、少しずつ粉を添加し、全量投入してから5分間攪拌し、水分散液を作成した。市販のごま強化ぽん酢(フンドーキン醤油(株)、商品名ごま風味ぽん酢甘口)90質量%に対し、セルロース複合体Aの5質量%の水分散液を全量に対し、0.3質量%となるよう添加し、残りはイオン交換水でメスアップした。これらを、TKホモジナイザーを用いて、4,000rpmで5分間攪拌させた。その後、脱泡コンディショニングミキサー((株)シンキー、商品名あわとり錬太郎AR−250)に入れ、脱泡モードで3分間運転して、脱泡処理した後、容器に入れて保存した。
【0082】
これを室温で静置し、評価を実施した。評価項目は、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例2)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が90/3/7、固形分40質量%の条件でセルロース水分散体を調製した。このセルロース水分散体を、実施例1と同様の装置で混練し、セルロース複合体Bを得た。混練エネルギーは、0.1kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
【0083】
貯蔵弾性率(G’)は0.2Pa、体積平均粒子径は6.8μm、コロイド状セルロース成分は45質量%、粒子L/Dは2.0であった。
【0084】
また、このセルロース複合体Bを用いて実施例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例3)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/GLG(CPケルコ製、ケルコゲル、Lot070628、1質量%溶解液の粘度1222mPa・s)との質量比が90/9/1となるよう秤量し、固形分が49.5質量%となるように加水した後、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Cを得た。混練エネルギーは、0.5kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
【0085】
得られたセルロース複合化物Cの貯蔵弾性率(G’)は0.18Pa、体積平均粒子径は7.5μm、コロイド状セルロース成分は53質量%、粒子L/Dは1.6であった。
【0086】
また、このセルロース複合体Cを用いて実施例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例4)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が50/25/25となるよう秤量し、固形分49質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Dを得た。混練エネルギーは、0.6kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
【0087】
貯蔵弾性率(G’)は0.2Pa、体積平均粒子径は5.8μm、コロイド状セルロース成分は36質量%、粒子L/Dは1.6であった。
【0088】
また、このセルロース複合体Dを用いて実施例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
【0089】
(実施例5)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/ARG−Na((株)キミカ製、キミカアルギン SKAT−UVL、1%溶解液の粘度4.1mPa・s)との質量比が95/2.5/2.5、となるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Eを得た。混練エネルギーは、0.6kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
【0090】
貯蔵弾性率(G’)は0.5Pa、体積平均粒子径は7.8μm、コロイド状セルロース成分は43質量%、粒子L/Dは1.6であった。
【0091】
また、このセルロース複合体Eを用いて実施例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(
参考例6)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSGとの質量比が90/10、となるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Fを得た。混練エネルギーは、0.5kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
【0092】
貯蔵弾性率(G’)は0.15Paで、体積平均粒子径は7.4μm、コロイド状セルロース成分は56質量%、粒子L/Dは1.6であった。
【0093】
また、このセルロース複合体Fを用いて実施例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
【0094】
(実施例7)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/LMP(ユニテックフーズ(株)製、LNSN325)との質量比が90/5/5なるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Gを得た。混練エネルギーは、0.5kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
【0095】
貯蔵弾性率(G’)は0.17Paで、体積平均粒子径は7.2μm、コロイド状セルロース成分は54質量%、粒子L/Dは1.6であった。
【0096】
また、このセルロース複合体Gを用いて実施例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを得た。このセルロース複合体Aの5%の水分散液を全量に対して1質量%添加して、セルロース複合体の濃度が0.05質量%となるよう添加して、実施例1と同様にしてごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを得た。このセルロース複合体Aの6質量%の水分散液を全量に対して10質量%添加して、セルロース複合体の濃度が3質量%となるよう添加して、実施例1と同様にしてごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例1を参考にして、ゆず果汁ぽん酢を試作した。まず、実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを作成し、イオン交換水中に分散させて、5質量%の水分散液を準備した。
【0097】
市販のゆずぽん酢(馬路村農業共同組合、商品名ぽん酢しょうゆ・ゆずの村)90質量%に対し、セルロース複合体Aの水分散液を4質量%添加し、全量に対し、0.2質量%となるよう添加し、残りはイオン交換水でメスアップした。これらを、TKホモジナイザーを用いて、4,000rpmで5分間攪拌させた。その後、脱泡コンディショニングミキサーに入れ、脱泡モードで3分間運転して、脱泡処理した後、容器に入れて保存した。
【0098】
室温で静置し、5分後及び1日後のゆず果汁成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例11)
実施例1を参考にして、焼肉のたれを試作した。まず、実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを作成し、イオン交換水に分散させて、5質量%の水分散液を準備した。
【0099】
市販の焼肉のたれ(エバラ食品工業(株)、商品名黄金の味中辛)90質量%に対し、セルロース複合体Aの水分散液を4質量%添加し、全量に対し、0.2質量%となるよう添加した。これらを、TKホモジナイザーを用いて、4,000rpmで5分間攪拌させて、焼肉のたれを試作した。これを容器に入れて保存した。
【0100】
室温で静置し、5分後及び1日後の水不溶性成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例12)
実施例1を参考にして、ポタージュスープを試作した。まず、実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを作成し、イオン交換水中に分散させて、5質量%の水分散液を準備した。
【0101】
市販のカップスープ(味の素(株)、商品名きのこのポタージュ)の粉末を容器に入れ、5質量%のセルロース複合体Aの水分散液9gと90℃のイオン交換水140gを混ぜ合わせた分散液を添加し、スプーンで1分間攪拌させた。これに、パセリのみじんぎり1g(全量に対して0.15質量%)を入れて、さらにスプーンで1分間攪拌させた(セルロース複合体の添加量:0.3質量%)。
【0102】
これを室温で静置し、5分後及び1日後のポタージュスープ中のパセリの懸濁安定状態について、目視観察して評価した。また、1日保存後に、粘度、及びTI値、pH、官能評価について評価した。評価結果を表1に示す。
(実施例13)
実施例1を参考にして、ねぎ入り味噌汁を試作した。まず、実施例1と同様にしてセルロース複合体Aを作成し、イオン交換水中に分散させて、5質量%の水分散液を準備した。
【0103】
市販の味噌汁((株)永谷園、あさげ)の粉末を容器に入れ、5質量%のセルロース複合体Xの水分散液9gと90℃のイオン交換水144gを混ぜ合わせた分散液を添加し、スプーンで1分間攪拌させた(セルロース複合体の添加量:0.3質量%)。
【0104】
これを容器に入れて室温で静置し、5分後及び1日後の味噌汁中のねぎの懸濁安定状態について、目視観察して評価した。また、1日保存後に、粘度、及びTI値、pH、官能評価について評価した。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が80/0/20となるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Hを得た。混練エネルギーは0.5kWh/kgであり、混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
【0105】
セルロース複合体Hの貯蔵弾性率(G’)は0.02Pa、体積平均粒子径は8.8μm、コロイド状セルロース成分は35質量%、粒子L/Dは1.6であった。
【0106】
また、このセルロース複合体Hを用いて実施例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表3に示す。
(比較例2)
市販DPパルプを裁断後、比較例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が90/5/5となるよう秤量し、固形分28質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Iを得た。混練エネルギーは0.04kWh/kgであり、混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
【0107】
セルロース複合体Iの貯蔵弾性率(G’)は0.01Pa、体積平均粒子径は13.5μm、コロイド状セルロース成分は28質量%、粒子L/Dは2.4であった。
【0108】
また、このセルロース複合体Iを用いて比較例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表3に示す。
(比較例3)
市販DPパルプを裁断後、10質量%塩酸中で105℃、20分間加水分解して得られた酸不溶性残渣をろ過、洗浄した後、固形分10質量%のセルロース水分散体を調製した(平均重合度は200であった)。この加水分解セルロースの平均粒径は17μmであった。このセルロース水分散体を媒体攪拌湿式粉砕装置(コトブキ技研工業株式会社製アペックスミル、AM−1型)で、媒体として直径1mmφのジルコニアビーズを用いて、攪拌翼回転数1800rpm、セルロース水分散体の供給量0.4L/minの条件にて2回通過で粉砕処理を行い、微細セルロースのペースト状物を得た。
【0109】
ペースト状微細セルロース/PSG/CMC−Na(置換度0.90、粘度7mPa・s)との質量比が80/0/20、となるよう秤量し、総固形分濃度が11質量%となるよう純水で調製し、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製、MARKII)を用いて8,000rpmで20分間分散してペースト状水分散体を調製した(アペックスミルと、TKホモジナイザーの消費電力と処理量から混練エネルギーを算出したところ、0.03kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった)。
【0110】
この水分散体を、ドラムドライヤー(楠木機械製作所(株)製、KDD−1型)で、水蒸気圧力2Kg/cm2、回転数0.6rpmで乾燥し、スクレーパーで掻き取り出し、フラッシュミル(不二パウダル(株)製)で粗砕し、薄片状、鱗片状のセルロース複合体Jを得た。混練エネルギーは0.03kWh/kgであり、セルロース複合体Jの貯蔵弾性率(G’)は0.01Pa、体積平均粒子径は3.4μm、コロイド状セルロース成分は40質量%、粒子L/Dは2.4であった。
【0111】
また、このセルロース複合体Jを用いて比較例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表3に示す。
(比較例4)
市販のDPパルプを裁断後、10質量%の塩酸中で105℃、20分間、加水分解して得られた酸不溶性残渣をろ過、洗浄して水分60質量%のウェットケーキ状のセルロースを得た(平均重合度は200)。固形分45質量%となるように加水し、これを実施例1と同様の条件で、プラネタリーミキサーにて2時間処理を行った。この摩砕処理物に、水を加え、固形分を7質量%として、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた。その後に、2500Gの遠心力で、10分間遠心分離し、上層部として、固形分4質量%のMCC水分散体を得た。
【0112】
次に、MCC水分散体に、PSGとCMC−Naを、実施例1の組成になるように仕込み、プロペラ式攪拌機を用いて、均一混合し、水分散体を調製した(この際の固形分は4〜5質量%)。この水分散体を、ドラムドライヤー((株)楠木機械製作所製KDD−1型)で、ドラム表面をシリコーン離型剤で処理した後、水蒸気圧力0.12MPa、回転数1.0rpmで乾燥してフィルム状のセルロース複合体Kを得た。
【0113】
混練エネルギーは、総量として0.08kWh/kgであった(プラネタリーミキサーが0.08kWh/kgであり、その他は総量としても0.005kWh/kg未満であった)。親水性ガムとの共存下での、混練温度(プロペラ攪拌)は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
【0114】
体積平均粒子径は3.5μm、コロイド状セルロース成分は72質量%粒子L/Dは1.6であった(体積平均粒子径の測定で得られた粒度分布における10μm以上の粒子の割合は2.5%であった)。実施例1と同様の操作で、貯蔵弾性率を測定した結果、0.01Paであった。
【0115】
比較例4は、セルロースにかけた混練エネルギーとしては、本願発明の好ましい範囲に入るものであるが、混練エネルギーの大部分を占めるプラネタリーミキサーの処理においてPSG、CMC−Naが存在しなかったので、MCCとPSG、CMC−Naとの複合化は当然進まず、貯蔵弾性率が本願発明の範囲を外れたと考えられる。
【0116】
また、このセルロース複合体Kを用いて比較例1と同様にして、ごま強化ぽん酢を作成した。5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表3に示す。
(比較例5)
平均粒径の異なる2種類のセルロース複合体を併用して添加した。比較例2で作成したセルロース複合体Iと、比較例4で作成したセルロース複合体Kを1:1の割合で混合し、全量で0.3質量%となるよう添加し、ごま強化ぽん酢を作成した。分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
【0117】
異なる平均粒径を持つ2種類のセルロス複合体を併用して添加したが、相乗効果は得られず、本願発明の範囲を外れたと考える。
(比較例6)
キサンタンガム(三栄源FFI(株)製、商品名ビストップD−3000)を用いて、ごま強化ぽん酢を試作した。
【0118】
あらかじめ、キサンタンガムを、イオン交換水に対し1質量%用意し、TKホモミクサーを用いて4,000rpmで攪拌させながら、徐々に添加し、全量入れた後10分間攪拌して、1質量%の水溶解液を準備する。
【0119】
市販のごま強化ぽん酢90質量%に対し、キサンタンガム1質量%水溶解液を3質量%添加し、全量に対し、0.03質量%となるよう添加し、残りはイオン交換水でメスアップした。これらを、TKホモジナイザーを用いて、4,000rpmで5分間攪拌させた。その後、脱泡コンディショニングミキサーに入れ、脱泡モードで3分間運転して、脱泡処理した後、容器に入れて保存した。
【0120】
室温で静置し、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例7)
比較例5と同様にして、キサンタンガム入りごま強化ぽん酢を作成した。キサンタンガム1%水溶液は10質量%添加し、全量の0.1%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例8)
比較例5と同様にして、ジェランガム及びカラギナン入りごま強化ぽん酢を作成した。ネイティブジェランガム及びイオタカラギナンを2/1の割合で混合し、これの1.5質量%の水溶液を作成し、これを10質量%添加して、全量に対して0.15質量%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例9)
比較例5と同様にして、タマリンドシードガム(DSP五協フード&ケミカル(株)、グリエイト)及び微結晶セルロース製剤(旭化成ケミカルズ(株)、セオラスCL−611)入りごま強化ぽん酢を作成した。タマリンドシードガム5質量%及び微結晶セルロース製剤4質量%をあらかじめ粉混合したものの水分散液を作成し、この混合水分散液を10質量%添加して、全量に対して0.9質量%となるよう添加した。作成したごま強化ぽん酢を室温で静置し、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例10)
比較例5と同様にして、ペクチン入りごま強化ぽん酢を作成した。ペクチン(三栄源エフ・エフ・アイ(株)、商品名ビストップD−1382)水溶解液は、70℃下で、10質量%のペクチン水溶解液を10質量%添加し、全量に対し1質量%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後のごま成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例11)
実施例11を参考にして、ゆず果汁入りぽん酢を作成した。キサンタンガム2%水溶液は10質量%添加し、全量の0.2質量%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後のゆず成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例12)
比較例9と同様にして、ゆず果汁入りぽん酢を作成した。澱粉は5質量%水溶解液を10質量%添加し、全量に対し0.5質量%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後のゆず成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
(比較例13)
実施例12を参考にして、焼肉のたれを作成した。キサンタンガム1%水溶液は10質量%添加し、全量の0.1%となるよう添加した。室温で静置し、5分後及び1日後の水不溶性成分の懸濁安定状態、及び1日保存後の、粘度、及びTI値、官能評価について実施した。評価結果を表4に示す。
〔粘弾性測定の評価〕
セルロース複合体A(実施例1)と、セルロース複合体J(比較例3)の粘弾性測定の結果を
図1、2に示す。
【0121】
図1から、セルロース複合体Aは、純水分散体と比較して、酸性の水分散体における歪み20%付近の貯蔵弾性率が高いことが分かる(純水:0.02Pa→pH4:0.58Pa)。また、
図2から、セルロース複合体J(特許文献3の実施例に準拠した製法で得られたセルロース複合体)は、純水分散体と比較して、酸性の水分散体における歪み20%付近の貯蔵弾性率が低いことが分かる(純水:0.24Pa→pH4:0.01Pa)。
【0122】
通常のエネルギーで混練したセルロース複合体では、酸性での貯蔵弾性率は純水中に比べて低下し、懸濁安定性が低くなる。それに対して、高いエネルギーで混練したセルロース複合体では、酸性での貯蔵弾性率が上昇し、懸濁安定性が向上することがわかる。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】