【課題を解決するための手段】
【0012】
有機性廃水を前処理した後の前処理水にはアンモニア性窒素が残存している。本発明者等は、この前処理水に塩素系化合物を添加すれば、クロラミンを水処理装置内で生成させることが可能となり、逆浸透膜のバイオファウリング予防を、低コストで連続して行うことが可能であることを見出した。また、本発明者等は、前処理水中のアンモニア濃度が高い場合には、無機塩素系薬剤のみを被処理水に添加してクロラミンを生成させ、前処理水中のアンモニア濃度が低い場合には、さらにアンモニア系薬剤も添加すれば、使用する薬剤量を必要最低限に抑制しつつ、逆浸透膜のバイオファウリングの予防が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
具体的に、本発明の有機性廃水の処理装置は、
有機性廃水を処理する前処理装置と、
前記前処理装置によって処理された前処理水を貯水する貯水槽と、
前記貯水槽へと無機塩素系薬剤を供給する塩素供給装置と、
前記貯水槽へとアンモニア系薬剤を供給するアンモニア供給装置と、
前記貯水槽から供給される前処理水を膜分離する逆浸透膜装置と、
前記貯水槽へと供給される前処理水の流量を測定する流量計と、
前記貯水槽へと供給される前処理水のアンモニア性窒素濃度を測定するアンモニア性窒素濃度測定装置と、
前記流量計及び前記アンモニア性窒素濃度測定装置の測定結果に基づいて、前記貯水槽への無機塩素系薬剤及び/又はアンモニア系薬剤の供給量を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前処理水のアンモニア濃度が2ppm以上であれば、前処理水中の有効塩素濃度が2ppm以上となるように、前記塩素供給装置が前記貯水槽へと供給する無機塩素系薬剤量を制御し、
前処理水のアンモニア濃度が2ppm未満であれば、アンモニア濃度が2ppm以上となるように、前記アンモニア供給装置が前記貯水槽へと供給するアンモニア系薬剤
量を制御し、
前記貯水槽内の前処理水に無機塩素系薬剤及び/又はアンモニア系薬剤を供給することにより有効塩素濃度として2ppm以上の濃度でクロラミン類を生成させ、
前記クロラミン類を含む前処理水を前記逆浸透膜装置に供給することにより逆浸透膜のバイオファウリングを防止することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の有機性廃水の処理方法は、
有機性廃水を前処理する前処理工程と、
前処理された前処理水を貯水槽に貯水する貯水工程と、
前記貯水槽へと無機塩素系薬剤を供給する塩素供給工程と、
前記貯水槽へとアンモニア系薬剤を供給するアンモニア供給工程と、
前記貯水槽へと供給される前処理水の流量と、前記貯水槽へと供給される前処理水のアンモニア濃度とを測定する測定工程と、
前記測定工程によって測定された前処理水の流量及びアンモニア性窒素濃度に基づいて、前記貯水槽への無機塩素系薬剤及び/又はアンモニア系薬剤の供給量を制御する供給量制御工程と、
前記塩素供給工程及び/又は前記アンモニア供給工程を実行して3分間以上経過させ、貯水された前処理水中に有効塩素濃度として2ppm以上の濃度でクロラミン類を生成させるクロラミン生成工程と、
前記クロラミン類を含む前処理水を逆浸透膜装置に供給して膜分離することにより逆浸透膜のバイオファウリングを予防するバイオファウリング防止工程と、
を有し、
前記供給量制御工程は、
前処理水のアンモニア濃度が2ppm以上であれば、前処理水中の有効塩素濃度が2ppm以上となるように、前記貯水槽へと供給する無機塩素系薬剤量を制御し、
前処理水のアンモニア濃度が2ppm未満であれば、アンモニア濃度が2ppm以上となるように、前記貯水槽へと供給するアンモニア系薬剤
量を制御することを特徴とする。
【0015】
クロラミンと比較すると、次亜塩素酸ナトリウムのような無機塩素系薬剤、又は硫酸アンモニウムのようなアンモニウム塩は安価である。本発明では、前処理水に対して外部からクロラミンを添加するのではなく、前処理水に含有されているアンモニア性窒素と、前処理水に添加する無機塩素系薬剤とを反応させることによって、前処理水中にクロラミンを生成させるため、クロラミンの分解が問題とならず、しかも薬剤のコストが低い。
【0016】
アンモニア性窒素を含有する前処理水に無機塩素系薬剤を添加しても、すぐにはクロラミンが生成しないため、逆浸透膜装置に供給する直前に、前処理水に無機塩素系を添加しても、逆浸透膜のバイオファウリングを有効に予防することは困難である。しかし、本発明では、貯水槽に前処理水を貯水し、無機塩素系薬剤及び/又はアンモニア系薬剤を供給してから3分間以上経過させるため、前処理水中にクロラミン類を有効濃度で生成させることが可能である。このクロラミン類を含む前処理水を逆浸透膜装置に供給することで、逆浸透膜のバイオファウリングを有効に予防することが可能となる。
【0017】
本発明では、逆浸透膜装置に供給される前処理水中のクロラミン濃度を、有効塩素濃度として2ppm以上、より好ましくは5ppm以上とすることにより、微生物の増殖を抑制し、逆浸透膜のバイオファウリングを有効に予防し得る。
【0018】
本発明の有機性廃水の処理装置は、
前記貯水槽へと供給される前処理水の流量を測定する流量計と、
前記前処理水のアンモニア性窒素濃度を測定するアンモニア性窒素濃度測定装置と、
前記流量計及び前記アンモニア性窒素濃度測定装置の測定結果に基づいて、前記貯水槽への無機塩素系薬剤及び/又はアンモニア系薬剤の供給量を制御する制御装置とをさらに備え
る。
【0019】
同様に、本発明の有機性廃水の処理方法は、
前記貯水槽へと供給される前処理水の流量と、前記貯水槽へと供給される前処理水のアンモニア濃度とを測定する測定工程と、
前記測定工程によって測定された前処理水の流量及びアンモニア性窒素濃度に基づいて、前記貯水槽への無機塩素系薬剤及び/又はアンモニア系薬剤の供給量を制御する供給量制御工程とをさらに備え
る。
【0020】
前処理水中のアンモニア性窒素濃度が高い場合には、理論量の無機塩素系薬剤を添加すれば、前処理水中のクロラミン濃度を一定濃度以上に維持することが可能である。しかし、前処理水中のアンモニア性窒素濃度が低い場合には、無機塩素系薬剤の添加量を増やしても、貯水槽内の前処理水中のクロラミン濃度を一定濃度以上に維持することはできない。そこで、貯水槽へ供給される前処理水の流量及びアンモニア性窒素濃度を測定し、アンモニア性窒素濃度が低い場合には、アンモニア系薬剤を貯水槽に前処理水の流量に応じて添加し、貯水槽内の前処理水中のクロラミン濃度を一定濃度以上とす
る。
【0021】
本発明の有機性廃水の処理装置は、
前記逆浸透膜装置の濃縮水を前記前処理装置へと返送する返送経路をさらに備えることが好ましい。
【0022】
同様に、本発明の有機性廃水の処理方法は、
前記逆浸透膜装置の濃縮水を、前記前処理工程を行う前処理装置へと返送する回収工程をさらに有することが好ましい。
【0023】
逆浸透膜装置に供給されたクロラミンを含有する前処理水は、透過水と濃縮水とに分けられる。透過水は、飲料水、産業用水又は農業用水として利用されるが、濃縮水は、前処理装置へと返送される。
【0024】
本発明の処理装置及び処理方法において、
前記無機塩素系薬剤は、次亜塩素酸ナトリウムであることが好ましく、前記アンモニア系薬剤が硫酸アンモニウムであることが好ましい。
【0025】
これら薬剤は、クロラミンと比較して価格が安く、しかも入手が容易だからである。