特許第5969752号(P5969752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5969752-合成樹脂製ブローボトル 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969752
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】合成樹脂製ブローボトル
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   B65D1/02 250
   B65D1/02 221
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-236728(P2011-236728)
(22)【出願日】2011年10月28日
(65)【公開番号】特開2013-95428(P2013-95428A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080687
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 順三
(74)【代理人】
【識別番号】100077126
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 盛夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107227
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 史朗
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 浩通
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 高雄
【審査官】 植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−269359(JP,A)
【文献】 特表2002−513720(JP,A)
【文献】 国際公開第97/034808(WO,A1)
【文献】 特開2010−173713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00−1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の注出口を形成する口頚部と、この口頚部につながり下部へ向けて拡径する肩部と、この肩部に環状溝部を介してつながる胴部と、この胴部の下端につながり、前記肩部、前記胴部と協働してその内側に内容物の充填空間を形成する底部とを備えた合成樹脂製ブローボトルであって、
前記胴部は、上辺の端部にそれぞれ鋭角角部と鈍角角部を有し、ボトルの軸芯に対して傾きをもつ傾斜パネルにて形成された複数の減圧吸収壁と、この減圧吸収壁の相互間に位置し、前記胴部の周りに沿い該減圧吸収壁と交互に配列された柱壁とを備え、
前記胴部の、前記鈍角角部の直上位置に、前記環状溝部に沿って延伸する短尺の補強リブ設けられ
前記補強リブは、前記減圧吸収壁の上辺の長さと同等の周長を有し、その長手方向中央部鈍角角部の直上に位置さるか、その半分以上該上辺に位置さたものであることを特徴とする合成樹脂製ブローボトル。
【請求項2】
前記補強リブは、前記胴部の上部壁面を、前記充填空間に向けて凹ませた溝部からなることを特徴とする請求項1に記載した合成樹脂製ブローボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸ブロー成形によって形成される合成樹脂製ブローボトル、とくに、胴部に柱壁と減圧吸収壁を交互に配列した合成樹脂製ブローボトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペットボトルに代表される合成樹脂製ブローボトルは、軽量で取り扱いが容易であること、また、透明性を確保することが可能でありガラス製の容器と比較して遜色のない外観を呈すること、しかも、コスト的にも安価であることから、近年、食品や飲料、化粧料あるいは薬剤等を入れる容器として多用されている。
【0003】
ところで、この種の容器においては、コストのさらなる削減、ゴミの減量化等の観点から、ボトル1本当たりに使用する樹脂量を極力少なくすべく、ボトルの薄肉化が図られている。
【0004】
しかし、ボトルの胴部に減圧吸収壁が設けられている耐熱用のブローボトルにあっては、とくに、減圧吸収能力の向上や、デザインの多様化を図る等、ボトルの軸芯に対して傾きをもたせた、例えば特許文献1に開示のような傾斜パネルによって減圧吸収壁を形成する場合に、その輪郭形状によっては、ハンドリングや搬送の際に外的衝撃力(横荷重)が付加されたとき、該傾斜パネルの上辺部から肩部の境界にかけて潰れ変形(折れ)が生じる不具合がある(とくに、傾斜パネルの上辺角部において、該上辺とこれにつながる側辺とのなす角度が鈍角である場合に顕著となる)。
【0005】
なお、上記の潰れ変形は、ボトルの肩部と胴部の境界に形成される環状溝部と傾斜パネルの上辺との距離を短縮することにより防止することが可能であるが、この場合、ブロー成形に際して該環状溝部を意図した形状に成形することが困難となり(賦形性を損なう)、この環状溝部が本来もつ機能(補強機能)を有効に発揮させることができなくなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007―269359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、外的衝撃力が付加された場合においても減圧吸収壁の直上で起こり得る上記の如き潰れ変形を、ブロー成形における賦形性を損なうことなしに確実に回避できる合成樹脂製ブローボトルを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内容物の注出口を形成する口頚部と、この口頚部につながり下部へ向けて拡径する肩部と、この肩部に環状溝部を介してつながる胴部と、この胴部の下端につながり、前記肩部、前記胴部と協働してその内側に内容物の充填空間を形成する底部とを備えた合成樹脂製ブローボトルであって、前記胴部は、上辺の端部にそれぞれ鋭角角部と鈍角角部を有し、ボトルの軸芯に対して傾きをもつ傾斜パネルにて形成された複数の減圧吸収壁と、この減圧吸収壁の相互間に位置し、前記胴部の周りに沿い該減圧吸収壁と交互に配列された柱壁とを備え、前記胴部の、前記鈍角角部の直上位置に、前記環状溝部に沿って延伸する短尺の補強リブを設け
前記補強リブは、前記減圧吸収壁の上辺の長さと同等の周長を有し、その長手方向中央部を鈍角角部の直上に位置させるか、その半分以上を該上辺に位置させたものであることを特徴とする合成樹脂製ブローボトルである。
【0009】
上記の構成からなる合成樹脂製ブローボトルにおいては、補強リブを、ボトルの胴部の上部壁面を、充填空間に向けて凹ませた溝部とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成からなる本発明の合成樹脂製ブローボトルによれば、鈍角角部の直上に、短尺の補強リブを設けたため、環状溝部と傾斜パネルとの距離を短くすることなく、その部位の強度を高めることが可能となり、ハンドリング、搬送時等においてその部位に外的衝撃力が付加されたとしても潰れ変形が生じるのを回避することができる。
【0012】
また、本発明に係る合成樹脂製ブローボトルによれば、短尺の補強リブを、胴部の上部壁面を充填空間に向けて凹ませた溝部にて形成するようにしたため、ブロー成形に際して賦形性が保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に従う合成樹脂製ブローボトルの実施の形態を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従う合成樹脂製ブローボトルの側面を模式的に示した図である。
【0015】
図における符号1は、内容物の注出口を形成する口頚部、2は、口頚部1につながり、下部に向けて拡径する肩部、3は、肩部2に環状溝m、mを介してつながる筒状の胴部である。胴部3は、この例では、胴部中央の径が、その上端、下端の径よりも小さくした鼓状の中細り形状をなすものとして示している。
【0016】
上記胴部3には、その上端から下端に向けて角度θで延伸するとともに、その周りに間隔をおいて配置された複数本の柱壁(この例では、60°間隔で6本設けたものを例として示してある)4と、この柱壁4の相互間に位置してボトル内の減圧に伴う優先的な変位によってボトルの外観形状を安定的に保持する減圧吸収壁5が設けられている。
【0017】
上記の減圧吸収壁5は、環状の段差壁5aを輪郭とする内側壁5bを充填空間に向けて凹ませることによって形成されるものであり、上辺5cの端部には、頂部に丸みをつけた鋭角角部5c、鈍角角部5cがそれぞれ設けられ、下辺5dの端部には、上辺5cとは逆配列になる鋭角角部5d、鈍角角部5dが設けられ、その全体がボトルの軸芯Lに対して角度θで傾いた平行四辺形状の傾斜パネルとして構成されている。
【0018】
ここに、鋭角角部5c(5d)とは、上辺5c(下辺5d)と側辺5eとのなす角度が鋭角になる角部をいうものとし、鈍角角部5c(5d)とは、上辺5c(下辺5d)と側辺5eとのなす角度が鈍角になる角部をいうものとする。
【0019】
また、6は、環状溝部mを介して胴部3の下端につながるとともに、肩部2、胴部3と協働してその内側に内容物の充填空間を形成する底部、7は、胴部3の、傾斜パネルの上辺5cの鈍角角部5cの直上位置、かつ、環状溝部mの直下に設けられた短尺の補強リブである。
【0020】
この短尺の補強リブ7は、環状溝部mに沿って延伸する溝部からなる。
【0021】
さらに、8a、8bは、上辺5c、下辺5dに沿って側辺5eに至るように前記内側壁5bに形成され、傾斜パネルの局所的な座屈を防止する逆U字、U字形状をなす補強リブ(細溝)である。
【0022】
減圧吸収壁5と柱壁4とを交互に配列した上記の如き構成になる合成樹脂製のブローボトルにおいては、鋭角角部5cの下方には柱壁4が位置しているため、ハンドリング時や搬送時に外的衝撃力がボトルに加えられても簡単に変形することはない。
【0023】
しかし、鈍角角部5cの下方には、実質的に平滑な面をもつ内側壁5cが位置しているため、減圧吸収壁5がたわみ易く、環状溝部mにてボトルの径方向の強度を補完するこの種のブローボトルにおいては、減圧吸収壁5の上部において外的衝撃力が付加された場合に、潰れ変形を引き起こすことが懸念される。
【0024】
本発明においては、胴部3における鈍角角部5cの直上位置(減圧吸収壁5と環状溝部mとの間)に短尺の補強リブ7を設けたため、外的衝撃力が付加されても、該補強リブ7により減圧吸収壁5のたわみが抑制される結果、潰れ変形を確実に回避することができる。
【0025】
短尺の補強リブ7は、その長手方向中央部を鈍角角部5cの直上に位置させるのがよく、またその周長は、上辺5cと同等の長さとする。これにより、環状溝部mと減圧吸収壁5との間に短尺の補強リブ7を設けてもブロー成形の際に賦形性が損なわれるのを抑制することができる(意図した断面形状に成形することができる)
【0026】
前記補強リブ7は、少なくとも前記鈍角角部5cの周方向幅(上辺5cとの連結部から側辺5eとの連結部位までの周方向距離)を有し、当該鈍角角部5cを上方から覆うように配置するのが好ましいが、ボトルの剛性に応じて、前記周方向幅よりも短くしてもよい。
【0027】
なお、上掲図1に記載したボトルにおいては、胴部3の上端(環状溝部mと上辺5cとの間)に、径方向外方に突出し、柱壁4との間に段差を形成する環状凸部を設け、この環状凸部に前記補強リブ7を形成した場合を例として示しているが、該環状凸部は設けなくともよく、この場合は、柱壁4と連続的に形成される胴部3の上端周壁に補強リブ7が形成されることとなる。
【実施例】
【0028】
内容物を充填した充填容量が500mlになる上掲図1に示したようなPETボトル(溝幅2mm、深さ0.5mm、周長18mmとなる短尺の補強リブを形成したもの)を箱詰め(24本入りのカートン)して、JIS Z 0205の傾斜衝撃試験に準じた試験(走行距離の測定間隔を10cmとし、ボトルに潰れが発生するまでその距離を延長する)を実施してボトルの潰れ変形の発生状況について調査を行った。
【0029】
その結果、短尺の補強リブを設けなかった比較ボトルにおいては、走行距離が70cmに達した場合において、5本のボトルにおいて減圧吸収壁の上部(鈍角角部の上部)に潰れ変形が発生したのに対して本発明に従うボトルにおいては、潰れ変形が一切生じないことが確認された。
【0030】
なお、本発明に従うボトルにつき、走行距離を90cmとした試験においては、ボトルの肩部に変形を来たしたものが3本、減圧吸収壁の上部(鈍角角部の上部)において潰れ変形を起こしたものが1本であることが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、ハンドリングあるいは搬送時において外的衝撃力が付加されても減圧吸収壁の上部において潰れ変形が生じることのない剛性の高い合成樹脂製ブローボトルが提供できる。
【符号の説明】
【0032】
1 口頚部
2 肩部
3 胴部
4 柱壁
5 減圧吸収壁
5a 段差壁
5b 内側壁
5c 上辺
5c 鋭角角部
5c 鈍角角部
5d 下辺
5d 鋭角角部
5d 鈍角角部
6 底部
7 補強リブ
環状溝部
環状溝部
環状溝部
L 軸芯
図1