(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
本発明の実施形態の内視鏡用部品について説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態の内視鏡用部品の概略構成を示す模式的な断面図である。
図1(b)は、
図1(a)におけるA視図である。
図1(c)は、
図1(b)におけるB−B断面図である。
図2(a)、(b)、(c)、(d)は、本発明の実施形態の内視鏡用部品の溶融固化部の模式的な断面図である。
【0016】
本実施形態の湾曲管1は、
図1(a)に示すように、医療用または工業用の内視鏡において、先端部10(2点鎖線参照)に接続して用いられる内視鏡用部品であり、内視鏡の操作部(図示略)から伝達される牽引力に応じて湾曲することで、先端部10の位置や姿勢を変更するために用いられる。
湾曲管1は、全体として管状に形成されており、内周部には、例えば、処置具、ライトガイドファイバー、イメージガイドファイバー等の機能部品を配置するための空間が軸方向にわたって形成されている。
湾曲管1の概略構成は、先端節輪2(部品基材)、撚り線ワイヤー3(線状部材)、中間節輪4、および回動ピン5を備える。
なお、湾曲管1の湾曲方向は、1軸方向でも2軸方向でもよいが、以下では、一例として、1軸方向に湾曲する場合の例で説明する。2軸方向に湾曲する湾曲管に本実施形態の構成を適用するには、撚り線ワイヤー3の本数増やすとともに、中間節輪4を湾曲方向に応じて2種類のものを交互に連結する周知構成に置き換えればよい。
【0017】
先端節輪2は、一端側(
図1(a)の図示左側)に先端部10と接合するための円状の開口を有する管状部2aと、中間節輪4の1つと回動可能に連結するため管状部2aの他端側の端部から軸方向に突設された一対の突片部2bとを備える管状部材である。
本実施形態では、管状部2aは、一定の厚さtを有する円筒状であり、外周面2eおよび内周面2dはいずれも円筒面からなる。
各突片部2bは、管状部2aの中心軸線Oを挟んで互いに対向されており、後述する回動ピン5を挿通して回動支点を構成するための挿通孔がそれぞれ設けられている。この対向する挿通孔の中心同士を結ぶ軸線R(
図1(b)参照)は、中心軸線Oと直交する位置関係にある。
先端節輪2の材質は、金属材料、例えば、ステンレス鋼、超弾性合金、鉄系合金等を採用することができる。本実施形態では、ステンレス鋼であるSUS304を採用している。
【0018】
撚り線ワイヤー3は、湾曲管1を湾曲させるため、先端節輪2に内視鏡の操作部による牽引力を伝達する線状部材である。
撚り線ワイヤー3の線径およびワイヤー構成は、強度、耐久性等を考慮して、適宜の設定することができるが、本実施形態では、
図1(c)に示すように、素線径d
0の7本の金属素線3aを、1本は芯線として中心に配置し、他の6本をこの芯線の回りに撚り合わせた1×7のワイヤー構成を採用している。なお、撚り方向は特に限定されない。
【0019】
金属素線3aの材質としては、湾曲管1に使用する際に、撚り線ワイヤー3単体として満たすべき強度、耐久性等の条件に加えて、先端節輪2の金属材料とともに溶融し固化させて接合した際の接合部(後述する溶融固化部2c)が、同様な条件を満たす金属材料を採用する。
金属素線3aとして好適となる材質としては、例えば、ステンレス鋼、鉄系合金、銅系合金、アルミ系合金、ニッケル・チタン系合金、チタン系合金、コバルト系合金等を挙げることができる。このため、これらのうちから、先端節輪2の材料と融合した場合の強度、耐久性等を考慮して選択すればよい。
金属素線3aの材料が、先端節輪2と同じ材料であれば、融合体を形成しても、一般には、強度や耐久性は変化しないため、先端節輪2と同じ材料は好適に用いることができる。
本実施形態では、一例として、先端節輪2の材質と同じ材料であるSUS304を採用している。
【0020】
このような構成の各撚り線ワイヤー3は、
図1(a)、(b)に示すように、先端節輪2の内周面2dおよび中心軸線Oに沿う方向に延ばして配置され、各一端部がそれぞれ溶融固化部2cを介して先端節輪2と接合されている。
溶融固化部2cは、撚り線ワイヤー3の金属材料が溶融、固化して、管状部2aと一体化された部位である。本実施形態では、溶融固化部2cは、突片部2bの対向方向(軸線Rに沿う方向)と90°ずれた方向において中心軸線Oを挟んで互いに対向する2箇所の位置に形成されている。
溶融固化部2cの側面視の形状は、撚り線ワイヤー3のワイヤー外径d
1よりも大径の略円形状(円形の場合も含む)である。本実施形態では、溶融固化部2cは、管状部2aの厚さ方向に貫通して形成されている。また、外周面2eにおける側面視の外形と、内周面2dにおける外形とは同一である。
【0021】
各溶融固化部2cの断面構成は、例えば、
図2(a)に示すように、撚り線ワイヤー3の金属材料が溶融、固化して形成された線状部材溶融固化部M
0と、撚り線ワイヤー3の金属材料と中間節輪4の金属材料とが溶融して融合した状態で固化した融合部M
1とを備える。本実施形態では、後述する製造方法により、融合部M
1が溶融固化部2cの外周部、すなわち管状部2aとの境界領域に形成され、線状部材溶融固化部M
0が溶融固化部2cの中心部に形成されている。そして、本実施形態では、溶融固化部2cは、管状部2aとは融合部M
1を介して接合されており、撚り線ワイヤー3とは、撚り線ワイヤー3の構成材料からなる線状部材溶融固化部M
0を介して接続されている。
ただし、
図2(a)は模式的に描いており、実際の断面では、溶融時の流動状態や溶融固化部2cの大きさによっては、それぞれの占める体積や分布状態は変化する。例えば、溶融固化部2cの径が小さいほど、溶融時に融合が進行する領域が相対的に大きくなるため、融合部M
1の占める体積が増大する。溶融固化部2cの径が充分小さい場合には、線状部材溶融固化部M
0が消失し、溶融固化部2cが融合部M
1のみで形成されることになる。このように溶融固化部2cは、融合部M
1のみで構成されていてもよい。
【0022】
溶融固化部2cの厚さ方向の断面形状は、例えば、
図2(a)に示すように、管状部2aと同一厚さに形成され、溶融固化部2cの表面が外周面2e、内周面2dと整列することが好ましい。
さらに充分な接合強度が確保されていれば、例えば、
図2(b)に示すように、管状部2aの厚さよりも薄くてもよく、表面が外周面2eや内周面2dから凹んだ形状でもよい。
これらの場合、溶融固化部2cが管状部2aの外部に突出しないため、湾曲管1の最大外径を抑制することができる。また溶融固化部2cが管状部2aの内部にも突出しないため、管状部2aの内部の有効スペースを広くとることができるため好ましい。
【0023】
ただし、突出量が許容範囲となる場合には、
図2(c)に示すように、外周面2e、内周面2dよりも突出した形状を有していてもよい。
特に管状部2aの内部側には、内周面2dに沿って撚り線ワイヤー3が配されているため、溶融固化部2cが撚り線ワイヤー3の外径以下の範囲で突出していても、管状部2a内の有効スペースは実質的に変化しないため充分に許容できる。
したがって、溶融固化部2cは、
図2(d)に示すように、外周面2eから突出することなく、内周面2dからの撚り線ワイヤー3の配置高さ以下の範囲で突出する断面形状も、溶融固化部2cの好ましい断面形状の一つである。
このような場合には、溶融固化部2cは、例えば、固化部M
2のように、内周面2dに沿って配置された撚り線ワイヤー3と内周面2dの間の隙間に表面張力で浸透して固化した形態も可能である。また、特に図示しないが、例えば、固化部M
2の厚さがさらに厚くなって、溶融固化部2cの近傍の撚り線ワイヤー3を埋めるような固化部が形成されていてもよい。
これら場合、固化部M
2等は、撚り線ワイヤー3を内周面2dに接合する作用があるため、撚り線ワイヤー3の接合強度をより向上することができる。
【0024】
また、
図1(b)では、溶融固化部2cの外周部全体が管状部2aと接合されている場合の例を図示したが、充分な接合強度が得られる場合には、溶融固化部2cの一部が管状部2aから離間していてもよい。すなわち、管状部2aと溶融固化部2cとの間に厚さ方向に貫通する孔部が形成されていてもよい。
【0025】
中間節輪4は、
図1(a)に示すように、管状部2aと同程度の内径および外径を有する略円環状の部材であり、軸方向の一端側(
図1(a)の左側)に、先端節輪2または他の中間節輪4と回動可能に連結するための一対の突片部4aを有し、軸方向の他端側(
図1(a)の右側)に、他の中間節輪4の突片部4aと回動可能に連結するための一対の突片部4bを有している。また、特に図示しないが、中間節輪4の内周部には、撚り線ワイヤー3を軸方向に進退可能に案内するガイド部が設けられている。
本実施形態の湾曲管1は、1軸方向に湾曲するため、一対の突片部4aの対向方向と、一対の突片部4bの対向方向とは、互いに平行である。
湾曲管1においては、複数の中間節輪4が、隣接して配置され、隣接する中間節輪4の間で、突片部4a、4bが回動ピン5によって回動可能に連結されている。
また、このような中間節輪4の連結体の一端側の中間節輪4は、突片部4aと先端節輪2の突片部2bとが回動ピン5によって回動可能に連結されている。
【0026】
このような構成により、湾曲管1は1軸方向に湾曲可能とされ、その湾曲量が1対の撚り線ワイヤー3の牽引量および繰り出し量に応じて制御できるようになっている。
【0027】
次に、本実施形態の内視鏡用部品の製造方法について、先端節輪2と撚り線ワイヤー3との接合を行う工程を中心に説明する。
図3は、本発明の実施形態の内視鏡用部品の製造方法の工程フローを示すフローチャートである。
図4(a)は、本発明の実施形態の内視鏡用部品の貫通孔形成工程で形成された部品基材の模式的な平面図である。
図4(b)は、
図4(a)におけるC−C断面図である。
図5(a)、(b)は、本発明の実施形態の内視鏡用部品の製造方法における溶融部形成工程を説明する模式的な工程説明図である。
図6(a)、(b)は、本発明の実施形態の内視鏡用部品の製造方法における線状部材配置工程を説明する模式的な工程説明図である。
図7(a)、(b)は、本発明の実施形態の内視鏡用部品の製造方法の溶融充填工程を説明する模式的な工程説明図である。
図8(a)、(b)は、本発明の実施形態の内視鏡用部品の製造方法で製造された内視鏡用部品の溶融固化部の一例を示す写真画像である。
【0028】
湾曲管1を製造するにあたって、先端節輪2に撚り線ワイヤー3を接合するには、
図3に示すように、貫通孔形成工程S1、溶融部形成工程S2、線状部材配置工程S3、溶融充填工程S4、融合工程S5、および固化工程S6を行う。
以下では、具体例に基づいて説明する場合、特に断らない限りは一例として、先端節輪2の厚さtが、t=0.13(mm)、1×7構成の撚り線ワイヤー3の金属素線3aの素線径d
0が、d
0=0.09(mm)、撚り線ワイヤー3のワイヤー外径d
1が、d
1=0.27(mm)の場合の例で説明する。
【0029】
まず貫通孔形成工程S1を行う。本工程は、
図4(a)、(b)に示すように、部品基材である先端節輪2の管状部2aに2つの貫通孔部12を形成する工程である。
貫通孔部12は、溶融固化部2cを形成する位置に設けられた直径D
0の円形の貫通孔であり、円筒面状の孔内周面12aと、孔内周面12aが外周面2eに交差して形成される円形の稜線からなる外周側開口12b(一方の開口)と、孔内周面12aが内周面2dに交差して形成される円形の稜線からなる内周側開口12c(他方の開口)とから構成される。
貫通孔部12の内径D
0は、少なくとも撚り線ワイヤー3のワイヤー外径d
1よりも大径であって、後述する溶融部3Bの外径d
2(
図5(b)参照)よりも小径とする。
貫通孔部12の形成位置は、貫通孔部12の中心が、先端節輪2に形成すべき溶融固化部2cの中心位置に合う位置とする。
【0030】
本工程は、後述の線状部材配置工程S3を開始する前までに完了していれば、いつ実施してもよい。
例えば、貫通孔部12以外の形状を形成した後に、先端節輪2の側面に後加工して形成してもよいし、先端節輪2の成形と同時に形成してもよい。
貫通孔部12を後加工によって形成する場合には、例えば、プレス加工、切削加工、レーザ加工などの適宜の孔加工方法を採用することができる。
貫通孔部12がすべて形成されたら貫通孔形成工程S1が終了する。
【0031】
次に、溶融部形成工程S2を行う。本工程は、
図5(b)に示すように、線状部材である撚り線ワイヤー3の一部を溶融、固化させることにより、撚り線ワイヤー3の端部に接続する塊状の溶融部3Bを形成する工程である。
本工程で形成される溶融部3Bは、後述する溶融充填工程S4によって、再溶融された後、管状部2aに形成された貫通孔部12に充填され、貫通孔部12の近傍から溶融する管状部2aの一部の金属材料とともに、溶融固化部2cを形成するものである。
【0032】
本実施形態では、溶融部3Bは、直径d
2の略球状(球状を含む)に形成される。なお、溶融部3Bが厳密な球形でない場合の直径d
2は、撚り線ワイヤー3の中心軸線に直交する方向の平均直径を意味するものとする。
直径d
2は、貫通孔部12の内径D
0より大きく、かつ、溶融部3Bの体積が、所望の溶融固化部2cの形状を形成するために必要な体積となるように決める。
溶融固化部2cが形成される場合に、材料の融合によって体積がほとんど変化しないと仮定すれば、所望の溶融固化部2cの形状の体積から、欠損部である貫通孔部12の容積を引いた量が、溶融部3Bに必要な体積となる。
ここで、所望の溶融固化部2cとは、
図2(a)、(b)、(c)、(d)などを参照して上述した種々形状から必要に応じて選択した形状であり、例えば数値シミュレーションや実験などによって求めることができる。
【0033】
例えば、
図2(a)に示すように、溶融固化部2cが、外周面2eおよび内周面2d整列する形状を形成するには、欠損部である貫通孔部12の容積と等しい体積とすればよいことになる。ただし、融合時の体積変化や、表面張力によって発生する表面の湾曲などにより、厳密な平面を形成することは困難であるため、これらの製作誤差を考慮して、貫通孔部12の容積と略等しい(等しい場合を含む)体積となるように寸法に設定することになる。
また、加熱条件によっては、溶融固化部2cと重なる範囲に配置された撚り線ワイヤー3の一部も溶融するおそれがあり、この分が無視できない場合には、このような増量分も考慮する必要がある。
また、
図2(b)、(c)、(d)に示す形状を形成する場合も同様にして、溶融固化部2cの形状と貫通孔部12の容積とに基づいて、溶融部3Bの体積を設定することができる。
【0034】
上記具体例の場合、例えば、D
0=0.35(mm)とすると、例えば、
図2(d)の場合のように、固化部M
2のように内周面2dに回り込む分を考慮した結果、d
2=0.45(mm)が好適であった。
【0035】
溶融部3Bを形成するには、
図5(a)に示すように、ワイヤー固定治具7によって、撚り線ワイヤー3のワイヤー端部3Aが一定の長さh
1だけ、ワイヤー固定治具7から突出するように撚り線ワイヤー3を保持する。本実施形態では、ワイヤー端部3Aが鉛直方向に沿って突出するように保持する。
ワイヤー端部3Aの長さh
1は、長さh
1のワイヤー端部3Aを溶融させて固化させたときに、直径d
2の球状の塊が形成される長さとする。
次に、ワイヤー端部3Aの上方に、レーザ照射装置6を配置する。レーザ照射装置6は、ワイヤー端部3Aを加熱溶融できる出力を有する適宜のレーザ光源を採用することができる。本実施形態では、波長1070nm、最大出力60W〜110W、スポット径20μm〜40μmのレーザ光源を採用することができる。
【0036】
次に、
図5(b)に示すように、ワイヤー端部3Aの上方に配置したレーザ照射装置6から、レーザ光8をワイヤー端部3Aに照射する。これにより、ワイヤー端部3Aが加熱されて、金属素線3aが溶融して液体の塊となり、表面張力によって略球状(厳密な球形を含む)に変形する。
ワイヤー固定治具7は、撚り線ワイヤー3に比べて熱容量が大きいため、撚り線ワイヤー3から伝導した熱は迅速に放熱され、これによりワイヤー固定治具7に保持された撚り線ワイヤー3は、レーザ光8の照射される間、固体状態を維持することができる。
【0037】
ワイヤー端部3Aがすべて溶融したら、レーザ光8を停止して、放冷する。
これにより、ワイヤー固定治具7で保持された撚り線ワイヤー3の上端部に塊状の溶融部3Bが形成される。
すなわち、溶融部3Bは、液体状態において表面張力によって略球状となり、その形状のまま、放冷によって固化する。ここで、略球状の範囲は、表面張力および重力のつりあいや固化時の収縮などによる形状誤差を含む近似球面を意味する。
このようにして形成される溶融部3Bは、ワイヤー端部3Aの長さを調整することで、体積管理が容易であるため、溶融固化部2cの形状の再現性が良好となる。
【0038】
例えば、上記具体例では、レーザ出力40Wのレーザ光8をパルス幅100msで、1パルス照射することで、ワイヤー端部3Aが溶融した。この場合、固化時の溶融部3Bの直径d
2は、d
2=0.45(mm)になった。
以上で、溶融部形成工程S2が終了する。
上記、貫通孔形成工程S1および溶融部形成工程S2の実行順序はどちらを先に行ってもよく、それぞれを並行して行ってもよい。
【0039】
貫通孔形成工程S1および溶融部形成工程S2が終了したら、線状部材配置工程S3を行う。本工程は、溶融部3Bが先端節輪2の外部側から見える状態で溶融部3Bの少なくとも一部を貫通孔部12内に配置するとともに溶融部3Bを貫通孔部12に当接させ、かつ撚り線ワイヤー3の線状部分を外部側に露出させることなく先端節輪2の内部側に配置する工程である。
ここで、先端節輪2の外部側は、貫通孔部12の一方の開口である外周側開口12bに臨む側になっており、先端節輪2の内部側は、貫通孔部12の他方の開口である内周側開口12cに臨む側になっている。
【0040】
まず、撚り線ワイヤー3の溶融部3Bが形成されていない方の端部を、先端節輪2の外部側から、貫通孔部12に挿入し、先端節輪2の内部に通して、突片部2b側に引き出す。さらに、撚り線ワイヤー3を外周面2eに沿って引っ張って、溶融部3Bを、貫通孔部12に引っ掛けて、先端節輪2に対して位置決めする。
これにより、
図6(a)に示すように、溶融部3Bが貫通孔部12に外部側から当接する。本実施形態では、溶融部3Bが略球状であり、貫通孔部12が円筒孔であるため、溶融部3Bは、貫通孔部12の外周側開口12bに当接する。
また、本実施形態では、図示略の保持手段によって、撚り線ワイヤー3の線状部分が、先端節輪2の内周面2dに沿うとともに中心軸線Oに平行となるように位置決めして、撚り線ワイヤー3の線状部分を保持している。
【0041】
このとき、撚り線ワイヤー3のワイヤー外径d
1は貫通孔部12の内径D
0より小径であって、溶融部3Bが略球状であるため、貫通孔部12の内部では、内周面12aと、溶融部3Bの表面および撚り線ワイヤー3の側面との間に隙間が生じている。
このようにして、溶融部3Bは、先端節輪2の外部から見えるとともに貫通孔部12の内部に、一部が配置された状態になっている。また、撚り線ワイヤー3の線状部分は、外部側に露出することなく、先端節輪2の内部に配置されている。
特に図示しないが、同様にして、他方の貫通孔部12にも他の撚り線ワイヤー3を配置する。
以上で、線状部材配置工程S3が終了する。
【0042】
次に、溶融充填工程S4、融合工程S5、および固化工程S6を行う。
これらの工程は、本実施形態では、貫通孔部12に配置された溶融部3Bに向けて、レーザ光を照射することにより、全体としてこの順序に沿って進行する工程であるが、微視的に見ると、部位によっては異なる工程が進行している場合がある。
また、線状部材配置工程S3、溶融充填工程S4は、レーザ光照射による加熱温度が、溶融部3B、管状部2aの融点を超えている間、続くが、固化工程S6は、本実施形態では、放熱冷却によって行うため、レーザ光の照射が終了した時点から実質的に開始されている。
【0043】
溶融充填工程S4は、線状部材配置工程S3で配置された溶融部3Bに向けて、先端節輪2の外部側からレーザ光を照射して、溶融部3Bを溶融させて、貫通孔部12内に溶融した材料を充填する工程である。
ここで、充填とは、溶融された溶融部3Bが貫通孔部12に完全に充填される場合も含むが、部分的に充填される場合も含まれる。貫通孔部12の容積に対する充填率は、接合強度が得られれば、特に限定されないが、少なくとも貫通孔部12の中心を通って横断するように孔内周面12a内に充填されることが好ましく、厚さ方向に貫通する孔部が形成されないように充填されることがより好ましい。また、一部が充填され、一部が、貫通孔部12の外部に移動する状態に充填されてもよい。
【0044】
本工程では、例えば、
図7に示すように、溶融部3Bの上方に配置したレーザ照射装置6から、レーザ光8を溶融部3Bに照射する。
なお、
図7(a)におけるレーザ光8は模式化して記載しているが、レーザ光8の照射範囲は、外周面2eの高さでは、貫通孔部12を覆うことができる程度の照射範囲とすることが好ましい。これにより、溶融部3Bが溶融する過程で、溶融部3Bとともに、貫通孔部12の外周における管状部2a上にもレーザ光8照射されるようになる。
レーザ光8のレーザ出力およびパルス幅は、溶融部3Bの熱容量を考慮して、溶融部3Bと貫通孔部12の近傍の管状部2aを溶融できる程度に設定する。
例えば、上記具体例の溶融部3Bの場合、レーザ光8のスポット径が0.4mm程度、となるようにして溶融部3Bの頂部近傍に照射する。このとき、レーザ出力は、100W、パルス幅は、100ms、パルス数は1が好適であった。
【0045】
本実施形態では、レーザ光8を、先端節輪2の外部側から、照射対象の溶融部3Bが見える状態で照射するため、先端節輪2のように内径が小さい部品基材であっても、正確かつ容易にレーザ照射を行うことができる。
このとき、撚り線ワイヤー3の線状部分は、先端節輪2の内部側にあって、外部側に露出していないため、レーザ光8が照射されても溶融部3Bや管状部2aに遮られる。このように、溶融部3Bの溶融時に、レーザ光8が直接照射されないため、熱容量の小さい細径の撚り線ワイヤー3であっても、レーザ光8が照射されて溶断される不具合を防止できる。
特に、撚り線ワイヤー3と溶融部3Bとの接続部は、レーザ光8の照射方向に対して、熱容量が格段に大きい溶融部3Bの裏面側に位置している。また、溶融部3Bが貫通孔部12に当接していることにより、溶融部3Bの熱が貫通孔部12を通して管状部2aに熱伝導する。これらが相俟って、溶融部3Bとの接続部における撚り線ワイヤー3の熱的な負荷が軽減されており、溶融部3Bとの接続部でも撚り線ワイヤー3の溶断を防止することができる。
【0046】
レーザ光8が照射されると、溶融部3Bが溶融し貫通孔部12内の隙間に回り込んで充填され、
図7(b)に示すように貫通孔部12が液体状の溶融体3Cが充填される。溶融部3Bが溶融している間は、表面張力が作用するため、溶融された溶融部3Bの金属材料は、貫通孔部12を埋めて、管状部2aの厚さ内にとどまろうとする。あるいは、撚り線ワイヤー3が、内周面2dに充分近接している場合には、その隙間に浸透しようとする。
溶融部3Bが、貫通孔部12内に充填されると溶融充填工程S4が終了する。
【0047】
融合工程S5は、少なくとも貫通孔部12における管状部2aを溶融させて、貫通孔部12内に充填された溶融部3Bの材料(溶融体3C)と管状部2aの材料とが融合した融合部M
1を形成する工程である。
本工程は、溶融充填工程S4において形成された溶融体3Cと、溶融体3Cからの熱伝導やレーザ光8の加熱によって溶融した管状部2aの一部の材料が接触して、液体状態で融合することで行われる。このため、本工程は、溶融体3Cが管状部2aと接触した部位では、他の部位で溶融充填工程S4が進行中であっても開始されることになる。
本実施形態では、溶融体3Cは、貫通孔部12内に充填され、まず、貫通孔部12と貫通孔部12の近傍の部位から管状部2aに接触していくため、融合部M
1は、貫通孔部12と貫通孔部12の近傍の部位から形成されていく。
上記の具体例の場合、融合部M
1は、貫通孔部12の外周側に同心円状に広がって、貫通孔部12よりも大径の直径0.7mm程度となった。このように広がる融合部M
1は、最外周では、溶融していない管状部2aと接続しているため、表面張力によって、溶融前の板状の形状が保たれている。
融合工程S5は、レーザ光8によるエネルギー供給が終了することで、温度が低下し、融合部M
1の流動性が失われると終了する。
【0048】
固化工程S6は、溶融充填工程S4および融合工程S5で溶融された部位を固化させて溶融固化部2cを形成し、先端節輪2の管状部2aと撚り線ワイヤー3とを接合する工程である。
レーザ光8の照射が終了すると、溶融体3Cおよび液体状の融合部M
1の放熱冷却が開始される。このため、溶融体3Cおよび液体状の融合部M
1は、徐々に流動性が減少し、固化が始まる。溶融体3Cおよび液体状の融合部M
1がすべて固化すると、溶融固化部2cが形成され、固化工程S6が終了する。
【0049】
撚り線ワイヤー3の接合を行った場合の接合部の写真画像の一例を
図8(a)、(b)に示す。
図8(a)は、先端節輪2の外部側から撮影した溶融固化部2cの様子を示し、
図8(b)は、先端節輪2の内部側から撮影した溶融固化部2cおよび撚り線ワイヤー3の様子を示している。
図8(a)によれば、溶融固化部2cは、外周面2eの表面に比べても滑らかな湾曲面となっており、外周面2eと略整列していることが分かる。
また、
図8(b)によれば、溶融固化部2cは、内部泡にわずかに突出しているものの、撚り線ワイヤー3のワイヤー外径を越えない程度の突出量であることが分かる。また、撚り線ワイヤー3は、溶断されておらず、略同じワイヤー外径を維持した状態で、溶融固化部2cと接続していることが分かる。
【0050】
同様にして、他の貫通孔部12において、他の撚り線ワイヤー3を用いて、上記と同様の工程を行うことにより、先端節輪2に1対の撚り線ワイヤー3を接合できる。
なお、湾曲管1の製造においては、各中間節輪4を先端節輪2から順次連結したのち、撚り線ワイヤー3を中間節輪4の内部に挿通した状態で、上述のようにして撚り線ワイヤー3を先端節輪2に接合する。
【0051】
本実施形態の内視鏡用部品の製造方法および内視鏡用部品によれば、撚り線ワイヤー3の材料を溶融させて先端節輪2に貫通する領域に少なくとも一部が先端節輪2と融合して形成された溶融固化部2cを介して先端節輪2と撚り線ワイヤー3とを接合するため、先端節輪2
と撚り線ワイヤー3との接合部を省スペース化することができるとともに効率的に製造することができる。
【0052】
また、本実施形態の内視鏡用部品の製造方法によれば、撚り線ワイヤー3の端部に溶融部3Bを形成するとともに、撚り線ワイヤー3を先端節輪2の内部側に配置することで、撚り線ワイヤー3に伝熱しにくい状態で、溶融部3Bを加熱溶融して接合するため、小径の撚り線ワイヤー3が溶断することを防止できる。
【0053】
また、管状部2aに貫通孔部12を設けて、溶融された溶融部3Bが、貫通孔部12内に充填されてから固化させるため、溶融固化部2cを管状部2aの厚さと略同程度の範囲に形成できる。これにより、外周面2eや内周面2dから溶融固化部2cが盛り上がって固化されることを防止または低減することができる。このため、先端節輪2の外部や内部の有効スペースを増大させることができ、従来のワイヤーの接合方法を採用する場合に比べて、内視鏡のさらなる小型化が可能となる。
【0054】
また、例えばロウづけなどの接合方法と異なり、撚り線ワイヤー3の溶融部3Bを溶融させることで接合を行うため、例えば、フラックスなどが不要となり、接合後に余分なフラックスを除去する洗浄作業などを省略することができるため、効率的に製造することができる。
【0055】
また、本実施形態では、貫通孔部12の中心部に撚り線ワイヤー3のワイヤー外径よりも大径の線状部材溶融固化部M
0を形成することができるため、撚り線ワイヤー3の端部が撚り線ワイヤー3と同材質の状態で接合することができる。このため、撚り線ワイヤー3の端部で、異材質と融合することによる接合強度の低下のおそれがないため、耐久性を向上することができる。
また、管状部2aに対しては、線状部材溶融固化部M
0の外周に形成された融合部M
1を介して接合することができるため、管状部2aと撚り線ワイヤー3との材料組成が異なる場合でも、双方の組成が融合した中間層が形成され、材質の異なる明確な界面が生じないため、接合強度を向上することができる。
【0056】
[第1〜3変形例]
次に、本実施形態の第1変形例の内視鏡用部品の製造方法について説明する。
図9(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態の第1〜第3変形例の内視鏡用部品の製造方法に用いる貫通孔部の模式的な断面図である。
【0057】
第1〜第3変形例は、上記実施形態と略同様な構成を有する湾曲管1を製造するため、貫通孔形成工程S1で形成する貫通孔部12の断面形状を変更した方法である。以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
第1〜第3変形例は、いずれも、外周面2eに形成される開口が内周面2dに形成される開口よりも大径である点は共通しており、外周面2eの肉厚が厚い場合に特に好適となる変形例である。
【0058】
第1変形例は、
図9(a)に示すように、上記実施形態の貫通孔部12に代えて、貫通孔部13を用いる。
貫通孔部13は、外周面2e側の開口が、溶融部3Bの外径d
2より大径の円形の開口13cであり、内周面2d側の開口が、
溶融部3Bの外径d2より小径の円形の開口13dである。
貫通孔部13の内周部は、開口13cから開口13dに向かって開口13dと同径となるまで漸次縮径するテーパ面13aと、テーパ面13aの端部と開口13dと接続する円筒面13bとからなる。
【0059】
このような貫通孔部13によれば、溶融部3Bを配置すると、開口13c、13dの大きさにより、溶融部3Bが、テーパ面13aと円筒面13bとの境界部で当接した状態(
図9(a)参照)、または、テーパ面13aの中間部で接して当接する状態(図示略)で、溶融部3Bを貫通孔部13内に配置することができる。
小径の円筒面13bで溶融部3Bの抜け防止を行うことができるため、開口13cの径およびテーパ面13aの深さの変更自由度が大きい。このため、貫通孔部13の容積を適宜の容積に調整しやすくなる。
【0060】
第2変形例は、
図9(b)に示すように、上記実施形態の貫通孔部12に代えて、貫通孔部14を用いる。
貫通孔部14は、外周面2e側の開口が、溶融部3Bの外径d
2より大径の円形の開口14dであり、内周面2d側の開口が、
溶融部3Bの外径d2より小径の円形の開口14eである。
貫通孔部14の内周部は、開口14dと同径の円筒面14aと、開口14eと同径の円筒面14bと、円筒面14a、14bの境界に形成されて外周面2e、2dと平行な段部14cとからなる。
【0061】
このような貫通孔部14によれば、溶融部3Bを配置すると、段部14cと円筒面14bとが交差して形成される円形の稜線に、溶融部3Bが当接した状態で、溶融部3Bを貫通孔部14内に配置することができる。
小径の円筒面14bで溶融部3Bの抜け防止を行うことができるため、円筒面14aの内径およびその深さの変更自由度が大きい。このため、貫通孔部14の容積を適宜の容積に調整しやすくなる。
【0062】
第3変形例は、
図9(c)に示すように、上記実施形態の貫通孔部12に代えて、貫通孔部15を用いる。
貫通孔部15は、外周面2e側の開口が、溶融部3Bの外径d
2より大径の円形の開口15bであり、内周面2d側の開口が、
溶融部3Bの外径d2より小径の円形の開口15cである。
貫通孔部13の内周部は、開口15bから開口15cに向かって漸次縮径するテーパ面15aからなる。
【0063】
このような貫通孔部15によれば、溶融部3Bを配置すると、溶融部3Bが、テーパ面15aの中間部で接して当接する状態で、溶融部3Bを貫通孔部13内に配置することができる。
本変形例によれば、小径の開口15cで溶融部3Bの抜け防止を行うことができるため、開口15bの径を変えてテーパ角を変化させることにより、貫通孔部13の容積を適宜の容積に調整しやすくなる。また、内周面がテーパ面15aのみからなるため、管状部2aの肉厚が薄い場合でも容易に加工することが可能である。
【0064】
[第4変形例]
次に、本実施形態の第4変形例の内視鏡用部品の製造方法について説明する。
図10は、本発明の実施形態の第4変形例の内視鏡用部品の製造方法における線状部材配置工程を説明する模式的な工程説明図である。
【0065】
本変形例は、上記実施形態と同様の湾曲管1を製造するため、線状部材配置工程S3における撚り線ワイヤー3の配置の仕方を変えた変形例である。以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
本変形例では、線状部材配置工程S3において、
図10に示すように、撚り線ワイヤー3を貫通孔部12に挿通させることなく、内周面2dに沿って配置し、溶融部3Bを内周面2d側から貫通孔部12の内部に挿入して配置する。これにより、溶融部3Bは、開口12cにおいて、貫通孔部12と当接されている。
このような配置によれば、上記実施形態と同様に、先端節輪2の外部側から溶融部3Bが見えるとともに、撚り線ワイヤー3の線状部分が露出しない配置が実現される。
【0066】
この場合、上記実施形態と同様にして溶融充填工程S4を行うことができるが、本変形例では、溶融部3Bの多くが、先端節輪2の内部側に位置しているため、
図10に示すように、溶融部3Bが貫通孔部12よりも上方となる姿勢で溶融充填工程S4を行うことがより好ましい。
【0067】
本変形例によれば、撚り線ワイヤー3を小径の貫通孔部12に挿通することなく、より大径の先端節輪2の軸方向の端部の開口から挿入すればよいため、作業性がよくなる。
【0068】
なお、上記実施形態の説明では、撚り線ワイヤー3の金属素線3aの材料が1種類の場合の例で説明したが、撚り線ワイヤー3の強度や可撓性を調整するため、異なる材料の2種類以上の金属素線を混合して撚り合わせた構成としてもよい。
【0069】
また、上記実施形態の説明では、溶融部の形状が略球状の場合の例で説明したが、溶融部が貫通孔部をすり抜けないように、貫通孔部と係止できる形状であって、溶融部の体積が、必要な溶融固化部の形状を形成できる大きさであれば、溶融部の形状は、略球状に限定されるものではない。
例えば、線状部材の軸方向に偏平な板状に形成されてもよい。
【0070】
また、上記実施形態の説明では、線状部材が、少なくとも特定方向で部品基材に囲まれる位置関係に配置された場合の例で説明したが、部品基材は、単に板状であってもよい。
【0071】
また、上記実施形態、および各変形例の説明では、貫通孔部の開口の形状が円形の場合の例で説明したが、貫通孔部は、線状部材の線状部分を挿通して、溶融部の挿通を阻止できる形状であれば、開口形状は特に限定されない。例えば、角形、適宜の多角形形状を有する開口や、星形や、スリット状の開口形状であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態、および各変形例の説明では、線状部材が撚り線ワイヤーからなる場合の例で説明したが、線状部材は撚り線ワイヤーには限定されない。例えば、単線ワイヤーなどでもよい。
【0073】
また、上記実施形態、各変形例に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせを変えたり、削除したりして実施することができる。