特許第5969776号(P5969776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケイミュー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5969776-出隅部材用の印刷装置 図000002
  • 特許5969776-出隅部材用の印刷装置 図000003
  • 特許5969776-出隅部材用の印刷装置 図000004
  • 特許5969776-出隅部材用の印刷装置 図000005
  • 特許5969776-出隅部材用の印刷装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969776
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】出隅部材用の印刷装置
(51)【国際特許分類】
   E04F 19/06 20060101AFI20160804BHJP
   E04F 19/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   E04F19/06 A
   E04F19/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-49245(P2012-49245)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2013-185316(P2013-185316A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】榎本 孝之
(72)【発明者】
【氏名】高木 章次
【審査官】 小林 俊久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−009287(JP,A)
【文献】 特開2007−313392(JP,A)
【文献】 特開2004−255357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/00
E04F 19/06
E04F 13/08
B05D 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略L字形状でこのL字の角に面取り部を有した出隅部材に対して、前記面取り部を印刷するインクジェット式の印刷装置であって、
前記面取り部を上方に向けた姿勢で前記出隅部材を搬送する搬送路と、前記面取り部を検出する検出部と、前記検出部の検出結果から前記面取り部に印刷する印刷部とを備え、
前記検出部が、前記出隅部材の高さを測定する測定部を有し、
前記印刷部が、前記面取り部の上面から垂直距離で下方に所定の高さ寸法までの部位を頂部として印刷するものであり、
前記搬送路が、前記搬送路の搬送方向に略直交した向きに視て断面略L字形状となる姿勢で前記出隅部材を搬送するものである
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記頂部となる前記高さ寸法の閾値が、前記面取り部の上面から垂直距離で下方に1mm以上から3mm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記検出部が、搬送方向に略直交した向きに長尺なラインセンサを有するものである
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記搬送路の搬送方向を基準として、前記印刷部より上流側に、前記面取り部の高さ位置の良否を判定する良否判定部を設けたものである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出隅部材用の印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築板で住宅等の外壁を構成する場合、外壁のコーナー部には、断面L字形状の出隅部材が配置される。出隅部材は、所定幅で切断した二つの建築板で形成される。建築板は端部に夫々傾斜面を有しており、この傾斜面を貼り合わせることで、出隅部材のL字形状を形成している。そして、出隅部材は、溢れた接着剤やバリ等を除去するために、このL字の角に切削加工等の後加工を施してある。そのため、出隅部材は前記後加工によって、前記角に面取り部を有する。そして、この面取り部は、刷毛等で塗装して、後加工の跡を保護している。しかしながら、出隅部材の第1面に施されたインクジェット印刷による模様と異なり、面取り部は刷毛で塗装するために模様を形成し難く、出隅部材は面取り部において意匠性を低下させ易い。そこで、特許文献1等では、出隅部材の面取り部を含めたその周辺をデジタルカメラで撮影し、その撮影データ(画像)から面取り部の輪郭の位置情報を取得し、その取得した輪郭をカバーするようにインクジェット印刷を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−9287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1等のデジタルカメラ等で面取り部を撮像するものでは、撮像データから面取り部を検出するため、情報処理時の負荷が大きく、情報処理に時間を要し易いものになっている。具体的には、例えば撮像データから明暗や色彩等を読み取り、その読み取った情報に所謂画像解析等の演算処理を行い、明暗等に基づく高さの分布や等高線等の情報を求めて、撮像した出隅部材の三次元の仮想図面等を作成する。その後、作成した仮想図面等から、面取り部に相当する部位と他の部位とを判別する等の演算処理を行い、面取り部の輪郭を決定することで、面取り部を検出することになる。
【0005】
以上のように、従来の印刷装置では、面取り部の範囲等の印刷する範囲を検出する(決定する)までに、情報処理等で時間を要し易い。そして、従来の印刷装置では、出隅部材の搬送を中断したり、搬送速度を遅くしたりして、前記情報処理等に要する時間を確保しており、この搬送の中断等によって生産性(生産効率)の低下を生じ易いという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、前記従来の問題点に鑑みて発明したもので、その目的とするところは、搬送の中断等に伴う生産性の低下を抑制して、面取り部を印刷可能な出隅部材用の印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、断面略L字形状でこのL字の角に面取り部を有した出隅部材に対して、前記面取り部を印刷するインクジェット式の印刷装置であって、前記面取り部を上方に向けた姿勢で前記出隅部材を搬送する搬送路と、前記面取り部を検出する検出部と、前記検出部の検出結果から前記面取り部に印刷する印刷部とを備え、前記検出部が、前記出隅部材の高さを測定する測定部を有し、前記印刷部が、前記面取り部の上面から垂直距離で下方に所定の高さ寸法までの部位を頂部として印刷するものであり、前記搬送路が、前記搬送路の搬送方向に略直交した向きに視て断面略L字形状となる姿勢で前記出隅部材を搬送するものであることを特徴とする。
【0008】
この印刷装置として、前記頂部となる前記高さ寸法の閾値が、前記面取り部の上面から垂直距離で下方に1mm以上から3mm以下であることが好ましい。
【0010】
この印刷装置として、前記検出部が、搬送方向に略直交した向きに長尺なラインセンサを有するものであることが好ましい。
【0011】
この印刷装置として、前記搬送路の搬送方向を基準として、前記印刷部より上流側に、前記面取り部の高さ位置の良否を判定する良否判定部を設けたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の印刷装置は、前記構成を備えたことで、撮像データに比べて情報処理時の負荷が軽いデータで、面取り部の位置や範囲を検出することができる。そのため、本発明の印刷装置は、撮像データを用いる印刷装置に比べて、前記位置等の検出時の情報処理の負荷を軽減することができて、情報処理の完了待ちによる搬送の中断等を生じ難くすることができる。これによって、本発明は、撮像する印刷装置に比べて、搬送の中断等に伴う生産性の低下を抑制して、面取り部を印刷可能な印刷装置を提供し易くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】印刷装置の模式的な構成の説明図である。
図2】面取り部印刷前の状態の出隅部材の平面図であり、(a)が全体図であり、(b)が領域Bの拡大図である。
図3】同上の領域Bの拡大図であり、面取り部印刷後の状態である。
図4】同上の建築板(出隅部材の基材)の断面図である。
図5】第1面の塗装を不図示とした状態の図2のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を、添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0015】
本実施形態の印刷装置1は、出隅部材5の面取り部6(詳細は後述する)にインクジェット塗装を行う塗装装置である。出隅部材5は、図5に示すように、第1面51aに略直交して切断した断面が略L字形状になっている。そして、出隅部材5は、二つの板状の基材51を略直角に貼り合わせて形成してある。基材51は、建造物の壁面等を形成する建築板を所定の幅で切断して構成してある。この建築板は繊維補強セメント製等の板状部材となっている。なお、前記略L字形状とは、略直角のものに限らず、鋭角や鈍角に形成したものであってもよい。
【0016】
前記建築板(基材51)は、図4に示すように、出隅部材5の第1面51aとなる基材51の板面上に、下塗層52、印刷層53、無機質層54をこの順番で備える。印刷層53は、インクジェット塗装装置(不図示)によって、インクを塗装した層であり、この塗装による模様で出隅部材5の第1面51aに意匠面を形成する。下塗層52は、例えば、インクジェット塗装のインクを出隅部材5上に定着し易くする機能を有する。無機質層54は、インクジェット塗装を施した面(印刷層53)を覆う透明な層(クリア層)であり、例えば、印刷層53を保護するために設けられる。
【0017】
また、基材51は、図5に示すように、夫々L字の角側の端部に傾斜面51bを有する。そして、出隅部材5は、この傾斜面51b同士を接着剤で貼り合わせる等で固着することで、断面略L字形状に形成してある。更に、出隅部材5は、溢れた接着剤や切断時のバリ等を除去するために、このL字の角に切削加工等の後加工を施してある。そのため、出隅部材5は前記後加工によって、図2に示すように、前記角に面取り部6を有する。
【0018】
そして、面取り部6の加工面(前記角の後加工で露出した面)には、本実施形態の印刷装置1によって、インクジェット塗装を施されており、第2の印刷層62が設けてある。これによって、出隅部材5は、図3に示すように、面取り部6と第1面51aとの二つの境界線のうち、少なくとも一方を目立ち難くすることができる。以下、出隅部材5において、前記断面に対して略直交する向きを、長手方向D1とし、方向の一基準とする。
【0019】
本実施形態の印刷装置1は、図1に示すように、搬送路2と、検出部3と、印刷部4とを備える。搬送路2は、面取り部6を上向きにした姿勢で、出隅部材5が供給配置される。そして、搬送路2は、出隅部材5を搬送する搬送方向D2が、出隅部材5の長手方向D1と略直交した向きになっている。搬送路2は、例えば、タイミングベルト等の無限帯状のベルト21と、このベルト21を懸架するプーリ(不図示)とを備えるベルトコンベアとなっている。もちろん、搬送路2はベルトコンベアに限らない。
【0020】
以下、特に規定しない限り、出隅部材5は、前記搬送路2に配置した姿勢を基準に説明する。そして、搬送方向D2及び長手方向D1の両方向に直交する向きを上下方向とし、上下方向において、出隅部材5を基準にベルト21側を下方とし、反対側を上方とし、情報出隅部材5の面取り部6の加工面を上面6aと定める。更に、ベルト21から上方側の上下方向に沿った寸法を高さ寸法とし、搬送方向D2に沿った寸法を幅とする。
【0021】
検出部3は、出隅部材5の高さ寸法及び搬送速度を測定する測定部31と、測定部31の測定結果から面取り部6を検出する検出結果作成部(不図示)とを備える。
【0022】
測定部31は、例えば、ドップラーセンサ等となっている。この場合、測定部31は、電磁波等の測定波を発信する発信部と、測定部31位で反射された波(反射波)を受信する受信部とを有する。そして、測定部31は、受信した反射波の信号情報を検出結果作成部に出力する。更に、測定部31(ドップラーセンサ)は、面取り部6の長手方向D1の寸法と略同じ或いは面取り部6より長いラインセンサになっている。そして、ラインセンサは搬送方向D2に略直交し、且つ長手方向D1に沿った向きで設けてある。
【0023】
検出結果作成部は、例えば、電子回路や、コンピュータ等になっている。そして、検出結果作成部は、入力された信号情報(測定結果)から、面取り部6の範囲と、面取り部6の搬送路2上の位置と、頂部61の範囲(幅)とを検出したり算出したりする。この搬送路2上の位置と、搬送速度とが、印刷部4(詳細は後述する)で印刷動作を行うタイミングの基準となる。
【0024】
具体的には、前記信号情報のうち、ドップラー信号の大きさ(信号強度)を、出隅部材5における測定部31位の高さ寸法の指標とし、ドップラー周波数を、出隅部材5の搬送速度の指標とする。言い換えると、検出結果作成部は、電圧値や周波数等の高さ寸法等の指標に利用可能な数値情報で検出結果が入力される。そのため、検出結果作成部は、撮像データから三次元の仮想画像を作成する画像処理を行う場合に比べて、情報処理時の負荷を軽減し易くなっている。
【0025】
そして、頂部61とする範囲は、図5に示すように、搬送状態の出隅部材5の姿勢を基準として、面取り部6の上面6aから、垂直距離で下方に所定寸法低くなる位置までの面取り部6を含む範囲(幅)になっている。言い換えると、印刷装置1は、出隅部材5の搬送路2からの垂直距離が所定の高さ寸法L1以上になる部位(範囲)を、頂部61としている。
【0026】
所定の高さ寸法L1は閾値L2として、面取り部6の上面6aからの下方への垂直距離を1mm以上から3mm以下までとすることで、測定誤差等で検出結果の面取り部6の範囲が実際の面取り部6より狭い際等に面取り部6の塗り残し生じ難くすることができて好ましい。
【0027】
また、検出結果作成部は、面取り部6及び頂部61の範囲と、面取り部6の搬送路2上の位置とを検出結果とし、この検出結果を、印刷部4に出力する、或いは検出結果作成部や印刷装置1に設けた記憶部等に記憶して印刷部4に読み取らせる。以下、印刷部4等が、検出結果等の情報や信号を出力されたり、読み取ったりすることを纏めて、取得すると記載する。
【0028】
印刷部4は、インクの液滴を噴射する所謂インクジェット式の構成になっている。具体的には、図1に示すように、印刷部4が、塗装ノズルヘッド41と、塗料供給タンク(不図示)と、印刷制御部(不図示)とを備える。塗装ノズルヘッド41は搬送路2の上方に配置される。そして、塗装ノズルヘッド41は、搬送路2上の位置及び搬送速度の情報に基づき、面取り部6を含む頂部61が直下に来た際に、搬送路2の上方から頂部61に向けて前記液滴を噴射して、頂部61に印刷する。更に、各塗装ノズルヘッド41は、長手方向D1と略平行に並ぶ長尺なラインヘッドとして形成してある。
【0029】
また、塗装ノズルヘッド41は四つ設けてあり、搬送方向D2に沿って配列してある。この四つの塗装ノズルヘッド41は各々噴射するインクの色が異なる。例えば、各塗装ノズルヘッド41の色は搬送方向D2の上流側から順番に、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(キー・プレート)となっている。
【0030】
塗料供給タンクは、各塗装ノズルヘッド41に対して夫々設けてある。言い換えると、塗料供給タンクは、塗装ノズルヘッド41と同数設けてあり、対をなしている。そして、塗料供給タンクは夫々、対をなす塗装ノズルヘッド41に供給されるインクを貯留している。なお、塗装ノズルヘッド41の個数は、使用するインクの種類に応じて適宜変更される。
【0031】
印刷制御部は、印刷データ作成部、塗装制御部、ノズル制御部の機能を有する。印刷データ作成部は、色柄パターン等の印刷データを記憶して保存する。この印刷データは、インクジェット塗装によって面取り部6等の出隅部材5上の所定位置に所定パターンの塗装模様を形成するように作成される。
【0032】
具体的には、印刷データが、例えば、建築板の印刷面の色柄パターンに用いた建築板用データから作成してある。印刷データは、建築板用データの色柄パターンから所定の幅で抜き取った色柄パターンのデータになっており、幅方向における異なる部位で、複数箇所から抜き取ってある。言い換えると、印刷データ作成部は、異なる色柄パターンの印刷データを複数記憶している。なお、印刷データは、毛羽立てた柄やザラツキ感を与える柄等の、切削部位とした印象を表現した色柄パターンであってもよい。
【0033】
塗装制御部は、前記印刷データを印刷データ作成部から取得し、前記検出結果を検出部3(検出結果作成部)から取得する。そして、塗装制御部は、取得した印刷データ及び検出結果に基づいて、ノズル制御部に制御信号を出力する。ノズル制御部は塗装制御部から入力される制御信号に基づいて塗装ノズルヘッド41を制御する。塗装ノズルヘッド41は、ノズル制御部の制御によって、印刷データの色柄パターンを頂部61に印刷する。なお、塗装制御部は、検出結果から得た頂部61の範囲(印刷幅)が、取り込んだ印刷データの幅より小さい場合、印刷データから更に抜き取る等で印刷幅に対応した寸法に調整して、ノズル制御部に制御信号を出力してもよい。
【0034】
次に、印刷装置1による面取り部6(頂部61)の印刷方法を説明する。本印刷装置1で出隅部材5を印刷するにあたっては、まずベルトコンベア(搬送路2)に出隅部材5が供給される。このとき、例えば、搬送路2には、搬送方向D2において間隔をあけて複数の出隅部材5が順次供給される(搬送される)。搬送される出隅部材5は、検出部3(測定部31)の下方を通過する際、検出部3によって、面取り部6及び頂部61の範囲と、面取り部6の搬送路2上の位置とが検出される。
【0035】
そして、搬送される出隅部材5は、印刷部4の各塗装ノズルヘッド41の下方を通過する際、各塗装ノズルヘッド41から面取り部6を含む頂部61に向けて、インクがインクジェット方式で噴射されて、インクジェット塗装が施される。このようにして、印刷装置1は、図3に示すように、出隅部材5の頂部61に印刷データの模様を印刷することで、面取り部6と第1面51aとの両境界線のうち少なくとも一方を目立ち難くする。
【0036】
以上のように、本実施形態の印刷装置1は、出隅部材5の第1面51aのように、インクジェット印刷によって、面取り部6に模様を印刷することができる。これによって、印刷装置1は、出隅部材5の面取り部6に刷毛等で塗装した場合に比べて、第1面51aの模様に近い模様等の第1面51aとの違和感が少ない模様で面取り部6を塗装し易くすることができる。そのため、印刷装置1は、製造する出隅部材5の商品価値を向上し易くすることができる。
【0037】
そして、印刷装置1は、検出部3が測定部31を備えたことで、撮像データに比べて情報処理時の負荷が軽いデータで、面取り部6の位置や範囲を検出することができる。言い換えると、印刷装置1は、検出結果の作成に測定部31の測定結果を用いたことで、撮像データから三次元の仮想画像を作成する画像解析等を行う場合に比べて、検出結果作成時に情報処理の負荷を軽減し易くすることができる。これによって、印刷装置1は、情報処理に完了待ちによる搬送の中断等の遅延を生じ難くすることができる。そのため、印刷装置1は、撮像データや画像解析等を用いる装置に比べて、搬送の遅延等に伴う生産性(生産効率)の低下を抑制して、面取り部6に模様を施す(インクジェット印刷する)ことができる。
【0038】
更に、印刷装置1は面取り部6を含む頂部61に印刷したことで、面取り部6のみを印刷する場合に比べて、測定誤差を生じた際に、面取り部6の塗り残しを生じ難くすることができる。これによって、印刷装置1は、面取り部6と第1面51aとの間に、未印刷部位による境界を生じ難くすることができて、外観の意匠性の低下を抑制した出隅部材5を製造し易くすることができる。
【0039】
そして、搬送方向D2を長手方向D1に直交した向きにしたことで、長手方向D1に沿って搬送する場合に比べて、搬送方向D2における出隅部材5毎の占有幅を低減し易くすることができる。これによって、搬送路2は搬送方向D2における距離(搬送距離)を短くし易くすることができる。更に、印刷装置1は、測定部31にラインセンサを用いたことで、測定部31を長手方向D1に移動させる移動機構を設けなくても、面取り部6の長手方向D1に沿った略全体を測定することができる。そのため、印刷装置1は、測定に伴う搬送の中断等の遅延を生じ難くすることができて、生産性を向上し易くすることができる。
【0040】
また、印刷装置1は、面取り部6の高さ位置の良否を判定する良否判定部(不図示)をさらに備えることが好ましい。この場合、印刷装置1は良否判定部で不良品と判定された出隅部材5に対して、印刷部4で印刷しない。
【0041】
良否判定部は、面取り部6の高さ位置を検知する判定用の検知部と、この検知部の検知結果から良否を判定する判定システムとを備える。判定システムは、例えば、電子回路や、コンピュータ等で構成される。そして、前記検知部は、搬送路2の検出部3(測定部31)より上流側に検出部3とは別部材で設けた場合と、検出部3の測定部31を検知部として用いた場合とがある。
【0042】
検知部を検出部3と別部材で設けた場合、検知部は、例えば、出隅部材5の通過を検知する通過検知部で構成される。通過検知部は異なる高さ位置に二つ設けられる。そして、この二つの通過検知部は、面取り部6の高さ位置における上限位置を若干上回る位置に配置された第1の通過検知部と、下限位置に配置された第2の通過検知部とに区別される。以下、第1の通過検知部を上限検知部とし、第2の通過検知部を下限検知部とする。
【0043】
判定システムは、出隅部材5が上限検知部に検知されず且つ下限検知部に検知される場合に、良品と判定し、出隅部材5が上限検知部に検知される或いは下限検知部に検知されない場合に、不良品と判定する。印刷部4は、判定システムから良品か不良品かの判定結果を取得し、良品の判定結果の出隅部材5に対して、印刷を行い、不良品の判定結果の出隅部材5に対して、印刷を行わない。
【0044】
次に、検出部3が判定用の検知部としての機能を兼ねた場合を説明する。この場合、良否判定部は、例えば、測定部31を判定用の検知部に用いる。判定システムは、面取り部6の高さ位置における上下の許容範囲(上限と下限)が、予め記憶、或いは設定してある。そして、判定システムは、測定部31で測定した面取り部6の高さ寸法に関する情報を取得して、この情報が前記許容範囲内に収まるか否かから、良品か不良品かを判定する。
【0045】
更に、判定システムは、出隅部材5が前記範囲内に収まる場合、良品と判定し、出隅部材5が前記範囲内に収まらない場合、不良品と判定する。印刷部4は、判定システムから良品か不良品かの判定結果を取得し、良品の判定結果の出隅部材5に対して、印刷を行い、不良品の判定結果の出隅部材5に対して、印刷を行わない。
【0046】
このように、印刷装置1は、良否判定部の検知部を印刷部4より上流側に設けたことで、不良品への印刷による生産効率の低下を抑制し易くすることができる。
【0047】
なお、本発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更を行うことが可能である。例えば、検出結果作成部が、印刷制御部の機能を有したものや、判定システムの機能を有したもの等であってもよい。この場合、印刷装置1は、検出結果作成部が印刷部4や良否判定部の構成に含まれる。また例えば、検出部3は、一つの測定部31で高さ寸法と搬送速度との両方を測定するものに限らず、高さ寸法を測定する高さ測定部と、搬送速度を測定或いは検出する速度測定部(速度検出部)とを夫々有したもの等であってもよい。この場合、高さ測定部は、例えば、発信部及び受信部を有した測距型光電センサ(所謂測距センサ)等となる。そして、速度測定部(速度検出部)は、例えばベルトを駆動する駆動源やプーリの回転速度等を搬送速度の指標として検出するロータリーエンコーダ(所謂エンコーダ)等となる。もちろん、高さ測定部や速度測定部(速度検出部)は、ドップラーセンサ、測距センサやエンコーダ等の例示の構成のみに限らない。
【0048】
また例えば、印刷装置1は、判定システムが不良品と判定した際のみ判定結果を印刷部4に出力して、印刷部4が判定結果の入力された際のみ印刷を行わないものであってもよい。また例えば、印刷装置1は、判定システムが良品と判定した際のみ判定結果を印刷部4に出力し、印刷部4が判定結果の入力された際のみ印刷を行うものであってもよい。また例えば、良否判定部は、検出部3の測定部31を検知部に用いてもよい。この場合、搬送路2上に、検知部設置用のスペースを追加せずに済み易く、検知部の追加に伴う搬送路2のベルト長等の搬送距離の増加を軽減し易くすることができる。
【0049】
また例えば、印刷装置1は、印刷部4より上流側に、頂部61に下塗層を形成する第1の塗装部を設けたり、印刷部4より下流側に、頂部61に無機質層(クリア層)を形成する第2の塗装部を設けたりしてもよい。この場合、頂部61は、図5に示す基材51(建築板)の第1面51aと略同様に積層して塗装した状態にすることができて、第1面51aとの境界を目立ち難くすることができて、出隅部材5が、連続した外観を有し易くすることができる。そして、出隅部材5は、頂部61にクリア層を設けたことで、印刷層62を保護することができて、印刷層62の剥離等に伴う意匠性の低下を抑制し易くすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 印刷装置
2 搬送路
3 検出部
31 測定部
4 印刷部
5 出隅部材
6 面取り部
6a 上面(加工面)
61 頂部
D1 長手方向
D2 搬送方向
L1 所定の高さ寸法
L2 閾値
図1
図2
図3
図4
図5