(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下の説明における方向の概念は、本発明の実施形態に係る鞍乗型車両の一例として示す自動二輪車に騎乗した運転者から見た方向を基準としている。
【0024】
(自動二輪車の全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る鞍乗型車両の一例として示す自動二輪車1の左側面図である。
図1に示すように、自動二輪車1は、前輪2及び後輪3を備えており、前輪2は、フロントフォーク4の下端部に回転可能に支持されている。フロントフォーク4は、あるキャスター角をもって前輪2から後に傾きながら上方に延びている。フロントフォーク4は、上端部においてステアリングシャフト5に連結されている。ステアリングシャフト5は、上端部においてハンドル6と連結されている。ステアリングシャフト5は、車体フレームの前端部を成すヘッドパイプ9に回転可能に支持されている。ハンドル6の後方には燃料タンク7を介してシート8が配置されている。シート8に跨った運転者は、両手でハンドル6に設けられた左右のグリップそれぞれを握り、ハンドル6を回動操作することができる。ハンドル6が操作されると、ステアリングシャフト5がフロントフォーク4と共に回転し、前輪2を転向させることができる。
【0025】
シート8の下方には、サイドスタンド10が設けられている。本実施形態に係るサイドスタンド10は、前後方向において前輪2と後輪3との間に配置され、車体左側部に揺動可能に設けられている。サイドスタンド10が揺動して接地すると、前輪2、後輪3及びサイドスタンド10の3点で車体が地面上に支持され、車体が左に若干倒れた状態で静止する。
【0026】
ヘッドパイプ9よりも前方には、車両前方を照明するヘッドランプユニット11と、運転者を走行風から保護するウインドシールド(風防板)12とが設けられている。この自動二輪車1はいわゆるフルカウル式のカウル15を備えており、このカウル15は、ヘッドランプユニット11の周囲、フロントフォーク4上部の側方、ヘッドパイプ9の側方、燃料タンク7の下側方、エンジンEの側方に亘って、車体の前部を覆っている。
【0027】
カウル15は、複数のカウル部材を組み合わせたものである。カウル部材には、アッパーカウル16、左右のサイドカウル17,18(右サイドカウル18については
図2参照)が含まれる。その他、カウル部材には、ロアカウル19、左右のサイドアッパーカウル20(左側のみ示す)も含まれる。なお、右サイドカウル18は左サイドカウル17と左右に対称であるので、以降における右サイドカウル18の説明では、左サイドカウル17の説明と重複する内容を適宜省略又は簡易化する。
【0028】
図2は、
図1に示すカウル15の正面図である。
図2に示すように、アッパーカウル16は、ヘッドランプユニット11の周囲、特にヘッドランプユニット11の上側を覆っている。左サイドカウル17は、フロントフォーク4(
図1参照)上部の左方、エンジンE(
図1参照)の左方を覆っている。左サイドカウル17は、その上端部に、アッパーカウル16と共にヘッドランプユニット11の周囲を覆う左ランプカバー部17aを有する。左ランプカバー部17aは、アッパーカウル16の左端部と組み合わされ、主としてヘッドランプユニット11の左後側及び左下側を覆っている。左ランプカバー部17aとアッパーカウル16とは精度良く組み合わされており、細い分割線15cが略後方に(詳しくは、若干上向きに傾斜しながら後方に)延びている。右サイドカウル18も、上端部に右ランプカバー部18aを有している。右ランプカバー部18aは、アッパーカウル16の右端部と精度良く組み合わされ、主としてヘッドランプユニット11の右後側及び右下側を覆っている。
【0029】
ヘッドランプユニット11は、左右に並ぶ2つのヘッドランプ11a,11bを有している。アッパーカウル16は、正面視でY字状又はT字状に形成されており、ヘッドランプユニット11の上側であって2つのヘッドランプ11a,11bの上方を覆う上ランプカバー部16aと、上ランプカバー部16aの左右方向中央部から下方に延びる前ランプカバー部16bとを有している。前ランプカバー部16bは2つのヘッドランプ11a,11bの間を上下方向に延びており、ヘッドランプユニット11の前側であって左ヘッドランプ11aの右方及び右ヘッドランプ11bの左方を覆っている。
【0030】
左ランプカバー部17aは、左ヘッドランプ11aの左縁及び下縁に沿って前側に延び、ヘッドランプユニット11の左側であって左ヘッドランプ11aの左方及び下方を覆っている。左ランプカバー部17aは、前端部において前ランプカバー部16bの下端部に組み合わされている。右ランプカバー部18aは、右ヘッドランプ11bの右縁及び下縁に沿って前側に延びて右ヘッドランプ11bの右方及び下方を覆っており、その前端部において前ランプカバー部16bの下端部に組み合わされている。
【0031】
アッパーカウル16、左
ランプカバー部17a及び右
ランプカバー部18aは、ヘッドランプユニット11の一部を前面に露出させる左右一対の開口部15a,15bを形成する。左開口部15aは、上ランプカバー部16a、前ランプカバー部16b及び左ランプカバー部17aにより囲まれ、左開口部15aにより左ヘッドランプ11aが前に露出する。右開口部15bは、上ランプカバー部16a、前ランプカバー部16b及び右ランプカバー部18aにより囲まれ、右開口部15bにより右ヘッドランプ11bが前に露出する。アッパーカウル16と左
ランプカバー部17aの2本の分割線のうち一方15cは、左開口部15aの左上端部から略後方に延び、他方15dは、左開口部15aの右下端部から略下方に延びる。アッパーカウル16と右
ランプカバー部18aの2本の分割線のうち一方15eは、右開口部15bの右上端部から略後方に延び、他方15fは、右開口部15bの左下端部から略下方に延びる。
【0032】
なお、ウインドシールド12は、上ランプカバー部16aの上縁に固定され、上ランプカバー部16aから後に傾きながら上方に延びている。自動二輪車1は、左右一対のサイドミラー13a,13bを備えており、各サイドミラー13a,13bは、ウインドシールド12上に設置され、その下側に配置されたカウルステー14(
図3等参照)に取り付けられている。カウルステー14は、車体フレームに固定される剛性部品であり、カウルステー14には、ヘッドランプユニット11、アッパーカウル16及び左右のサイドカウル17,18のように、車両の前部に配置される複数の装置及び部品が取り付けられる。
【0033】
後述のとおり、本実施形態に係る自動二輪車1によれば、ヘッドランプユニット11をアッパーカウル16と組み付けた状態にして、ヘッドランプユニット11を車体フレーム側の部品に(本実施形態ではカウルステー14)取り付けたり、車体フレーム側の部品から取り外したりすることができる。このため、ヘッドランプユニット11を車体フレーム側の部品(本実施形態ではカウルステー14)に簡便に取り付けることができ、また、車体フレーム側の部品から簡便に取り外すことができる。
【0034】
(カウルステー、ヘッドランプユニット及びアッパーカウルの構造)
図3は、カウルステー14、ヘッドランプユニット11及びアッパーカウル16を後、左及び下から見て示す分解斜視図である。以下、
図3を参照しながら、カウルステー14、ヘッドランプユニット11及びアッパーカウル16の構造について説明する。なお、
図3では表しにくい構造を
図7〜
図10の単品図で適宜示す。
【0035】
<カウルステー>
図3に示すように、カウルステー14は、鋼又はアルミニウム合金等の金属製であり、複数の金属パイプ及び複数の板金を溶接により一体化して成る。カウルステー14は、車体フレームの前端部を成すヘッドパイプ9(
図1参照)に取り付けられるパイプ取付部21を有している。パイプ取付部21は、ヘッドパイプ9の外周面に前外側から取り付けられる。
【0036】
カウルステー14は、更に、張出し部22、中央バー23、左右一対のバーティカルバー24,25、ロアバー26、アッパープレート27及び左右のリアバー28,29を有している。張出し部22は、パイプ取付部21から前方に延びている。中央バー23は、張出し部22の前端部から左右両側に延びている。左右のバーティカルバー24,25は、中央バー23の左端部及び右端部それぞれから上下両側に延びている。ロアバー26は、中央バー23の下方で略左右方向に延び、左バーティカルバー24の下端部を右バーティカルバー25の下端部に接続している。アッパープレート27は、中央バー23の上方で略左右方向に延び、左バーティカルバー24の上端部を右バーティカルバー25の上端部に接続している。
【0037】
左右のリアバー28,29は、左右のバーティカルバー24,25それぞれから後方に延びている。左右のリアバー28,29は、後端部それぞれに貫通穴28a,29aを有している。これら貫通穴28a,29aに挿し通したボルト(図示せず)を利用して、車体フレームのうちヘッドパイプ9から後方に延びる部分にカウルステー14を固定することができる。
【0038】
このように構成されるカウルステー14は、その前部に、左右のバーティカルバー24,25、ロアバー26及びアッパープレート27によって構成されたフロントフレーム30を備えている。フロントフレーム30は、張出し部22及びパイプ取付部21を介して、また、左右のリアバー28,29を介して、車体フレームに取り付けられる。本実施形態では、フロントフレーム30は、正面又は背面から見て矩形枠状に形成される。中央バー23は、フロントフレーム30の上下方向中央部で左右に架け渡された梁として機能し、これによりフロントフレーム30の剛性が高くなる。
【0039】
フロントフレーム30の上部には、左右一対のアッパーステー31,32が設けられている。より具体的に言えば、左右一対のアッパーステー31,32が、アッパープレート27の左端部及び右端部それぞれに設けられている。各アッパーステー31,32は、板金をL字に曲げ加工することによって製作される。左アッパーステー31は、アッパープレート27の左端部に溶接されるベース面31aと、ベース面31aの端縁から連続するステー面31bとを有し、ステー面31bはフロントフレーム30よりも上方に配置される。なお、ベース面31aの裏面は左バーティカルバー2
4の上端部に溶接される。ベース面31aは、フロントフレーム30から前方且つ上方に延びている。ステー面31bは、水平に対して傾斜しており、左方且つ前方に向くように倒れている。ステー面31bには、ステー面31bの法線方向上側に延びるボス31c(本実施形態では、前後に離れた2つのボス)が設けられている。右アッパーステー32も、上記同様のベース面32a、ステー面32b及びボス32cを有している。
【0040】
フロントフレーム30には、ヘッドランプユニット11を固定するための複数のランプステー33〜36が設けられている。本実施形態に係るカウルステー14は、左右の第1ランプステー33,34と、左右の第2ランプステー35,36とで構成される合計4個のランプステーを有している。左右の第1ランプステー33,34は、左右のバーティカルバー2
4,2
5それぞれから左右外側に突出し、円形の貫通穴33a,34aを有している。貫通穴33a,34aの軸線は前後方向に延びている。左右の第2ランプステー35,36は、左右のバーティカルバー2
4,2
5それぞれから左右外側に突出している。左右の第2ランプステー35,36にはナットが溶接されている。それにより、左右の第2ランプステー35,36はねじ穴35a,36aをそれぞれ有し、これらねじ穴35a,36aの軸線は前後方向に延びている。第1ランプステー33,34は、第2ランプステー35,36よりも上に配置され、アッパーステー31、32よりも下方に配置されている。
【0041】
フロントフレーム30には、カウル15(アッパーカウル16及び左右のランプカバー部17a,18
a)を固定するための左右一対のアッパーカウルステー37,38が設けられている。本実施形態に係る左右のアッパーカウルステー37,38は、左右の第1ランプステー33,34それぞれに一体に設けられ、対応する第1ランプステー33,34の車幅方向先端から後方に延びている。左右のアッパーカウルステー37,38にはナットが溶接されている。それにより、左右のアッパーカウルステー37,38は、ねじ穴37a,38
aをそれぞれ有し、各ねじ穴37a,38aの軸線は左右方向に延びている。
【0042】
<ヘッドランプユニット>
ヘッドランプユニット11は、前述のとおり、左右一対のヘッドランプ11a,11bを有している。ヘッドランプユニット11は、更に、これらヘッドランプ11a,11bを収容する収容空間を有したランプ収容部41と、ランプ収容部41の前面に取り付けられて収容空間を前から塞ぐ左右一対のランプカバー42,43(右ランプカバー43については、
図2及び
図8参照)とを有している。ランプカバー42,43は、光透過性を有する合成樹脂材料製であり、ヘッドランプ11a,11bが点灯すると、対応するランプカバー42,43を通して車両前方を照明することができる。
【0043】
ヘッドランプユニット11は、ランプ収容部41の後面から後方に突出する左右一対の係合部44,45を有している。各係合部44,45は、段付き円柱状に形成されており、基端側円柱部の半径が先端側円柱部の半径よりも大きくなっている。左係合部44は、ランプ収容部41の後面のうちの左上隅に配置され、右係合部45は、ランプ収容部41の後面のうちの右上隅に配置されている。左係合部44は、左ヘッドランプ11aから見て上方及び左方(すなわち、車幅方向外側)に配置されており、右係合部
45は、右ヘッドランプ11bから見て上方及び右方(すなわち、車幅方向外側)に配置されている。
【0044】
左ランプカバー42の左縁は、下方に向かうほど右側(すなわち、車幅方向中心側)に傾斜している。右ランプカバー43の右縁も、下方に向かうほど左側(すなわち、車幅方向中心側)に傾斜している。一方、ヘッドランプユニット11は、ランプ収容部41の左下端部及び右下端部それぞれから左右外側へと突出する左右一対のステー締結部46,47を有している。左右のステー締結部46,47は、貫通穴46a,47aをそれぞれ有しており、各貫通穴46a,47aの軸線は前後方向に延びている。ステー締結部46,47の先端は、ランプカバー42,43の上端部よりも車幅方向中心側に位置している。
【0045】
ヘッドランプユニット11は、複数のカウル締結部48〜50を有している。本実施形態に係るヘッドランプユニット11は、ヘッドランプユニット11の上部に左右に離れて配置された2個のカウル締結部48,49と、ヘッドランプユニット11の下部であって左右方向中央部に配置された1個のカウル締結部50とで構成される合計3個のカウル締結部48〜50を有している。上2個のカウル締結部48,49は、ランプ収容部41から上方に突出し、貫通穴48a,49aをそれぞれ有している。下1個のカウル締結部50は、2つのランプカバー42,43の左右間に配置され、貫通穴50aを有している(
図9も参照)。貫通穴48a,49a,50aの軸線はいずれも前後方向に延びている。
【0046】
<アッパーカウル>
アッパーカウル16は、前述したように上ランプカバー部16a及び前ランプカバー部16bを有し、正面視でY字状又はT字状に形成されている。アッパーカウル16は樹脂成型品であり、アッパーカウル16には複数の金属製ランプブラケット61〜63が取り付けられる。本実施形態に係るアッパーカウル16には、ヘッドランプユニット11のカウル締結部48〜50に対応させて合計3個のランプブラケット61〜63が取り付けられる。そのうち2個のランプブラケット61,62が、上ランプカバー部16aの内面(後面)に左右に離れて設置される。残り1個のランプブラケット63が、前ランプカバー部16bの内面(後面)下端部に設置される。なお、アッパーカウル16は、これらランプブラケット61〜63をそれぞれ取り付けるため、3個のブラケット取付部64〜66を有しており、これらブラケット取付部64〜66がアッパーカウル16の内面(後面)から後方に突出している。ランプブラケット61〜63の前面(
図3に示されている面の裏側の面)にはナットが溶接されている。これによりランプブラケット61〜63は、ねじ穴61a,62a,63aをそれぞれ有し、これらねじ穴61a,62a,63aの軸線はいずれも前後方向に延びている。
【0047】
上ランプカバー部16aの左上端部及び右上端部それぞれには、2つのボス挿通孔67,68が設けられている(左側2つのボス挿通孔67については
図4及び
図10も参照)。また、アッパーカウル16は、上ランプカバー部16aの左端部及び右端部それぞれから下方に突出する左右一対のステー取付部69,70を有している。各ステー取付部69,70は、前後に並ぶ第1貫通穴69a,
70a及び第2貫通穴
69b,70bをそれぞれ有している。これら第1貫通穴69a,
70a及び第2貫通穴
69b,70bの軸線はいずれも左右方向に延びている。
【0048】
前ランプカバー部16bの下端部には、左右両側に突出する左右一対のサイドカウル取付部71,72が設けられている。サイドカウル取付部71,72は、前ランプカバー部16bの下端よりも上方に配置され、前ランプカバー部16bの前面下端部よりも後方に配置されている。
【0049】
(組立て)
カウルステー14、ヘッドランプユニット11、アッパーカウル16及び左右のサイドカウル17,18を組み立てるにあたっては、まず、(1)カウルステー14が車体フレームに取り付けられ、(2)ヘッドランプユニット11がアッパーカウル16に組み付けられる。(3)次に、ヘッドランプユニット11及びアッパーカウル16の組立体がカウルステー14に組み付けられる。(4)次に、左右のサイドカウル17,18等がアッパーカウル16に組み付けられる。以下、上記手順(2)及び(3)について説明する。
【0050】
<ヘッドランプユニットのアッパーカウルとの組付け>
手順(2)においては、
図3に示すように、ヘッドランプユニット11をアッパーカウル16に向かって前方に移動させ、3個のカウル締結部48〜50を3個のランプブラケット61〜63それぞれに対応させ、締結具の一例としてのボルト81〜83を後からカウル
締結部48〜50の貫通穴48a,49a,50a及びこれに対応するランプブラケット61〜63のねじ穴61a,62a,63aに挿し通す。これにより、左右のランプカバー42,43が前に露出する状態で、アッパーカウル16がボルト81〜83でヘッドランプユニット11に結合される。このとき、アッパーカウル16のうち左開口部15a及び右開口部15bの縁を成す部分が、左右のランプカバー42,43の縁部に沿って配置される。
【0051】
本実施形態では、ヘッドランプユニット11が、左右に離れて配置されたヘッドランプ11a,11b及びランプカバー42,43を有し、アッパーカウル16が、これらヘッドランプ11a,11bの左右間、ランプカバー42,43の左右間を上下方向に延びる前ランプカバー部16bを有している。このため、左右に離れた2点だけでなく、これら2点の左右方向中間であってこれら2点と上下方向に離れた1点との合計3点で、ヘッドランプユニット11をアッパーカウル16に結合することができる。このため、ヘッドランプユニット11をアッパーカウル16に強固に結合することができ、走行風でアッパーカウル16がヘッドランプユニット11に対してばたつくのを抑えることができる。しかも、前ランプカバー部16bの下端部は、左右のランプカバー42,43よりも下方に達している。このため、前ランプカバー部16bをランプ収容部41の下端部に好適に結合することができ、結合強度を高くすることができる。
【0052】
また、3点を結んで形成される三角形の辺は、アッパーカウル16のうち左開口部15a及び右開口部15bの縁を成す部分に近似しており、本実施形態では、三角形を成す三辺が当該縁を成す部分と交差するように配置される。この3点でアッパーカウル16をヘッドランプユニット11に固定するので、アッパーカウル16のうち左開口部15a及び右開口部15bの縁を成す部分を、左右のランプカバー42,43の縁部に沿って精度良く配置することができる。
【0053】
また、ボルト81〜83が、アッパーカウル16に挿し通されるのではなく、これに設置されたランプブラケット61〜63に後から挿し通される。すると、アッパーカウル16の前面に、ランプブラケット61〜63と結合するための締結具や貫通穴が露出しない。したがって、自動二輪車1の美観が高くなる。
【0054】
また、ヘッドランプユニット11をカウルステー14に取り付けたり、サイドカウル17,18をアッパーカウル16に取り付けたりすることなく、ヘッドランプユニット11をアッパーカウル16と組み付けることができる。このため、アッパーカウル16をヘッドランプユニット11に組み付ける作業の効率が向上するし、また、アッパーカウル16とヘッドランプユニット11との組付け誤差を少なくすることができる。なお、ヘッドランプユニット11とアッパーカウル16との組付け誤差は、自動二輪車1の美観に大きな影響を与えるので、その公差は小さく設定されがちである。本実施形態によれば、組付け誤差を要求される範囲内に容易に収めることができ、自動二輪車1の美観を担保しやすい。
【0055】
このようにヘッドランプユニット11をアッパーカウル16に高精度で組み付けた後、その組立体がカウルステー14に組み付けられる。本実施形態では、アッパーカウル16が、ヘッドランプ11a,11bの左側も右側も下側も覆っていない。よって、この組立体を正面から見ると、左右一対のステー締結部46,47が、ランプ収容部41からの車幅方向における突出量を小さくしながら、アッパーカウル16で隠されることなく露出する(
図4参照)。
【0056】
<組立体のカウルステーとの組付け>
図4は、カウルステー14、ヘッドランプユニット11及びアッパーカウル16を組み立てた状態にして示す正面図である。
図5は、カウルステー14、ヘッドランプユニット11及び
アッパーカウル16を組み立てた状態にして示す左側面図である。
図6は、
図4のVI−VI線に沿って切断して示す断面図である。以下、手順(3)について、
図3を主に参照し、
図4〜
図6を適宜参照しながら説明する。
【0057】
手順(3)においては、
図3に示すように、左右一対の第1ランプステー33,34の貫通穴33a,34aそれぞれに左右一対のリングダンパ84,85を嵌め込んでおく(
図6も参照)。また、左右一対のステー締結部46,47の貫通穴46a,47aそれぞれに左右一対のリングダンパ86,87を嵌め込み、これらリングダンパ86,87の内周側それぞれに左右一対の円筒カラー88,89を嵌め込んでおく(
図6も参照)。リングダンパ84,85は、ゴム等の弾性を有した材料で製作され、防振及び組付け誤差吸収等の効果を発揮する。
【0058】
次に、ヘッドランプユニット11及びアッパーカウル16の組立体をカウルステー14に向かって後方及び下方に移動させ、左側2個のボス挿通孔67(
図4及び
図10も参照)を左アッパーステー31のボス31cに上から嵌め込み、右側2個のボス挿通孔68を右アッパーステー32のボス32cに上から嵌め込む。これにより、組立体をカウルステー14に対して粗位置決めすることができる。
【0059】
粗位置決めをするとき、組立体の下部は、ボス挿通孔67,68が配置されている組立体の上部と比べ、カウルステー14に対して自由である。そこで、粗位置決めをするにあたっては、組立体の下部をカウルステー14に対して若干前に離間するように位置させておく。そして、全てのボス挿通孔67,68を対応するボス31c,32cに嵌め込みながら、組立体の下部を後方に押し付け、左右の係合部44,45を第1ランプステー33,34に係合させる。本実施形態では、左右の係合部44,45をリングダンパ84,85の内周側それぞれに嵌め込むことになる(
図6も参照)。
【0060】
係合部44,45はランプ収容部41から後方に突出していると共に第1ランプステー33,34の貫通穴33a,34a(及びリングダンパ84,85の穴)の軸線は前後方向に延びているので、組立体をカウルステー14に対してある程度位置合わせしておけば、組立体の下部をカウルステー14に向かって後方に移動させるだけで、係合部44,45を容易に第1ランプステー33,34に係合させることができる。また、本実施形態では、弾性を有したリングダンパ86,87の内周側に係合部44,45を嵌め込むようにしている。このため、組立体上部のカウルステー14に対する位置がボス31c,32cで規制されていても、係合部44,45をコジってリングダンパ86,87に簡単に嵌め込むことができる。
【0061】
しかも、左右の係合部44,45は、ランプ収容部41の後面の上隅に設けられている。特に、係合部44,45は重量物である左右のヘッドランプ11a,11bよりも上方に配置されている。このため、組立体全体の重量のうち係合部44,45よりも上方の部分の重量が小さくなる。したがって、左右の係合部44,45が第1ランプステー33,34に係合すると、手を離しても、係合部44,45よりも上方の部分が不所望に前に倒れるようなことがなく、ヘッドランプユニット11がカウルステー14に吊り下げられた状態で安定的に静止する。
【0062】
また、ボス挿通孔67,68(左側のボス挿通孔67については
図4も参照)にボス31c,32cが嵌め込まれていることも、組立体の安定的静止に貢献する。しかも、上ランプカバー部16aは、ボス挿通孔67,68が形成されている位置周辺において内面を矩形状に凹ませて成る左右一対の凹部73,74(
図10も参照)を有しており、左右のステー面31b,32bをこれら凹部73,74にそれぞれ収容することができる。このため、組立体をカウルステー14に吊り下げたときに、左右の凹部73,74それぞれで左右のアッパーステー31,32を引っ掛けることができる。よって、ヘッドランプユニット11の重量に基づく過大な負荷が係合部44,45やボス挿通孔67,68に作用するのを抑えることができ、組立体の寿命が長くなる。
【0063】
組立体を吊り下げた状態で、前述のように露出した左右一対のステー締結部46,47を第2ランプステー35,36に対応させる。係合部44,45は弾性を有したリング
ダンパ84,85の内周側に嵌め込まれているので、係合部44,45を第1ランプステー33,34に係合させた状態を維持しながら、ステー締結部46,47を第2ランプステー35,36に位置合わせするのを許容することができる。
【0064】
次に、2つのボルト91,92を、左右のステー締結部46,47に設置されたカラー
88,89の内周側それぞれに前から挿し込み、対応する第2ランプステー35,36のねじ穴35a,36aに螺合させる。これにより、組立体を強固にカウルステー14に結合することができる。このとき、組立体はカウルステー14で吊り下げられた状態で安定的に静止しているので、ボルト91,92を挿し通す作業を行うときに重量物である組立体を下から支持する必要はなく、締結作業を簡単に行うことができる。
【0065】
なお、粗位置決めをすると、第1貫通穴69a,70aをアッパーカウルステー37,38のねじ穴37a,38aに整合させることができ、図示しないボルトが車幅方向外側から第1貫通穴69a,70a及びこれに対応するねじ穴37a,38
aに挿し通される。これにより、アッパーカウル16がアッパーカウルステー14に強固に結合される。この不図示のボルトの挿通は、左右の係合部44,45を第1ランプステー33,34に係合させた後(ボルト91,92を挿し通す前か挿し通した後かは特に限定されない)に行われる。これにより、アッパーカウル16の左端部及び右端部をカウルステー14に強固に結合することができる。したがって、走行風によってアッパーカウル16の左端部及び右端部がばたつくのを抑えることができる。
【0066】
図5に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1はいわゆるフルカウル式であるにも関わらず、組立体をカウルステー14に組み付ける作業中はもちろん作業後においても、カウルステー14の左方、右方、後方、上方及び下方が開放されている。このため、組立体をカウルステー14に組み付けた後に、ヘッドランプ11a,11bに繋がる配線体を簡単に結線することができる。その他、車体の前部に配置される電装品の結線作業を簡単に行うことができる。このように車体の前部に配置される電装品には、例えば、ハンドル6の周辺に設けられるスイッチ類、ハンドル6の前に設けられる計器類などが含まれる。
【0067】
本実施形態では、カウルステー14の右リアバー29に、GPSユニット95(
図7参照)を取り付けるためのGPSステー39(
図3及び
図7参照)が設けられている。前述したとおり、本実施形態に係る自動二輪車1は、サイドスタンド10(
図1参照)を利用した車体静止時に、車体が若干左に倒れる。すると、右リアバー29(
図3及び
図7参照)に取り付けられたGPSユニット95(
図7参照)が車体の上側に位置する。したがって、車体静止時にGPSユニット95(
図7参照)の受信感度が高くなる。
【0068】
また、本実施形態では、カウルステー14の左側に、盗難防止用のサイレン96(
図7参照)と共に、エンジンE(
図1参照)により駆動されるACジェネレータA(
図1参照)により発生された交流を整流する整流器97(
図7参照)が設置される。このように整流器97が左側に配置されるので、エンジンE(
図1参照)が稼動している間に、整流器97周辺で生ずる電磁波等がGPSユニット95のノイズとなってGPSユニット95の動作に悪影響を及ぼすのを抑えることができる。また、ACジェネレータAはエンジン出力軸の左端部に設けられているので、ACジェネレータAと整流器97との間の結線作業も簡単に行うことができる。
【0069】
このようにヘッドランプ11a,11bの結線作業、カウルステー14への電装品の取付作業、カウルステー14周辺に設置された電装品の結線作業を全部又はある程度終えた後に、左右のサイドカウル17,18(
図2参照)がカウルステー14及びアッパーカウル16に組み付けられる。
【0070】
図4及び
図5に示すように、アッパーカウル16の上ランプカバー部16aの左端部及び右端部には、その残余部分の表面に対して下方に下がった段差面16c,16dが設けられている。左サイドカウル17の左ランプカバー部17aは、この段差面16
cに載せ置かれる。これにより、左ランプカバー部17aの表面が、上ランプカバー部16aの残余部分の表面と滑らかに連続する。また、左サイドカウル17の左ランプカバー部17aの内面上端部には、右方に突出するボスが設けられており、段差面16c上に載せ置く際に、当該ボスが、アッパーカウル16の第2貫通穴69bに挿し込まれる。また、左ランプカバー部17aの内面前端部には、上下方向に延びるボスが設けられており、当該ボスが、アッパーカウル16の左サイドカウル取付部71の貫通穴(図示せず)に挿し込まれる。これにより、左ランプカバー部17aをアッパーカウル16に強固に取り付けることができ、走行風によって左ランプカバー部17aがアッパーカウル16に対してばたつくのを良好に抑制することができる。
【0071】
第2貫通穴69bが設けられている左ステー取付部69は、段差面16cの左端縁から下方に延びている。一方、左サイドカウル17の左ランプカバー部17aは、段差面16cに載せ置かれる部分と、当該部分から下方に延びる部分とを有している。それにより、左ランプカバー部17aをアッパーカウル16に取り付けると、ボルトが左ランプカバー部17aで覆われる。このため、アッパーカウル16をカウルステー14に強固に取り付けながらも、そのために設けた部品が外部に露出するのを防ぐことができ、自動二輪車1の美観が高くなる。また、左サイドカウル取付部71も、前ランプカバー部16bの前面よりも後に設けられているので、左サイドカウル17で簡単に隠すことができる(
図1参照)。
【0072】
そして、左サイドカウル17で左ステー締結部46を隠すことができる。このため、左ステー締結部46を設けることで組立体をカウルステー14に簡単に組み付けることを可能にしながら、そのための部分及び部品が車両外面に露出して自動二輪車1の美観が損なわれるのを防止することができる。
【0073】
左ステー締結部46は、アッパーカウル16をヘッドランプユニット11に組み付けた状態において、少なくとも正面から見て(本実施形態では車幅方向外側から見ても)露出している(
図4参照)。このため、前からボルト91,92を挿し通すことが可能になる。そして、左ステー締結部46は、分割線15cよりも下方に位置し、組立体は、当該分割線15cよりも上に位置したカウル部材であるアッパーカウルをヘッドランプユニット11に組み付けることによって構成される。このように、左ステー締結部46は、アッパーカウル16がヘッドランプユニット11に取り付けられていても露出しやすい位置に設けられており、ランプ収容部41からの突出量が小さくても、ステー締結部46を正面から見て露出させる構造を簡単に実現することができる。
【0074】
しかも、本実施形態では、前述したとおり、左ランプカバー42の左縁が下方に向かうほど車幅方向中心側に傾斜しているのに対し、左ステー締結部46は、ランプ収容部41の左下端部から左右外側へと突出している。このため、左ステー締結部46は、左ランプカバー42の上端部よりも車幅方向中心側に位置する。したがって、左サイドカウル17が殊更左方に突出していなくても、左ステー締結部46を簡単に隠すことができる。
【0075】
上ランプカバー部16aの右端部にも同様にして段差面16dが設けられており、右サイドカウル18も左サイドカウル17と同様にしてアッパーカウル16に取り付けられ、それにより左サイドカウル17と同様の作用効果を奏する。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記構成は単なる一例に過ぎず、適宜変更可能である。なお、上記実施形態では、鞍乗型車両の一例として自動二輪車を例示したが、その他の鞍乗型車両にも本発明を好適に適用可能である。また、鞍乗型車両の走行駆動源にエンジンを適用する場合を例示したが、本発明に係る鞍乗型車両の走行駆動源には、エンジンに替えて又はエンジンに加えて電気モータを適用してもよい。