(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塗工が施された長尺状ウェブの両面側にウェブ搬送方向に間隔をあけ、且つ、ウェブ両面側で交互にウェブ搬送方向に千鳥状にずれて配置され、ウェブ幅方向全長に亘って延びるボックス状をなす複数のノズルと、該各ノズルに空気を供給する空気供給手段とを備え、上記ウェブを搬送する過程で上記各ノズルから空気を上記ウェブ両面に向かって吐出することにより、上記ウェブを浮かせた状態で蛇行させながら搬送して塗工液を乾燥させるフローティングドライヤであって、
上記各ノズルは、上記ウェブに対面する対面壁、該対面壁に対向するとともに上記空気供給手段から空気を導入する空気導入部をウェブ幅方向略中央に有する対向壁、該対向壁の長辺側両端縁から上記対面壁の長辺側両端縁に向かって延びる一対の第1側壁、及び上記対面壁と上記対向壁との短辺側両端縁同士を連結する一対の第2側壁で内部空間を有するように形成され、且つ、該内部空間は、仕切板でウェブに対して前側となる第1空間とウェブに対して後側となる第2空間とに前後に仕切られ、
上記対面壁の長辺側両端縁と上記各第1側壁の延出端とは互いに離間して両者間にウェブ幅方向全長に亘って延びる一対の吐出口が形成され、
上記仕切板のウェブ搬送方向中程には、ウェブ幅方向全長に亘って延びる空気通過口が形成され、
該空気通過口の長辺側両端縁には、上記対面壁に接近するように互いに離間しながら延び、上記第2空間から上記空気通過口を通過して上記第1空間に導入された空気が上記空気通過口に逆向きに向かうようにガイドして空気を第1空間に滞留させる一対の第1ガイド板が設けられ、
上記各第1側壁内方には、上記対面壁の長辺側両端縁から上記仕切板に向かって延び、その延出端が上記第1ガイド板の延出端より上記仕切板側に位置し、当該仕切板との間に第1隙間を形成するとともに上記第1ガイド板の延出端との間に第2隙間を形成し、且つ、上記第1側壁との間に上記吐出口に繋がる吐出通路を形成し、上記第1ガイド板により上記第1空間に滞留する空気が上記第2隙間を通過して上記仕切板に向かうように、且つ、上記第1隙間及び上記吐出通路を順に通過するようにガイドする一対の第2ガイド板が設けられていることを特徴とするフローティングドライヤ。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、塗工装置により塗工が施された長尺状のウェブは、フローティングドライヤで乾燥されるようになっている。該フローティングドライヤは、ウェブ幅方向全長に亘って延びるボックス状のノズルを複数備え、該各ノズルは、塗工が施されたウェブの両面側にウェブ搬送方向に間隔をあけて、且つ、ウェブ両面側で交互にウェブ搬送方向に千鳥状にずれて配置されている。そして、上記ウェブを搬送する過程で上記各ノズルから空気をウェブ両面に向かって吐出することにより、上記ウェブを浮かせた状態で蛇行させながら搬送してウェブに付着した塗工液を乾燥させるようになっている。
【0003】
ところで、上記ノズルからウェブ表面に空気を吐出する際、吐出する空気の流速をウェブ幅方向に均一にしておかないと、ウェブの搬送時におけるウェブ幅方向の蛇行や乾燥ムラを引き起こしてしまう。
【0004】
ウェブ幅方向においてノズルから吐出する空気の流速を均一にするために、送風機からノズルに供給される空気を出来るだけノズル内部に滞留させてノズルの内部圧力をウェブ幅方向に均一にすることが望ましいことが一般的に知られており、例えば、特許文献1に開示されているノズルは、ウェブに対面する対面壁、該対面壁に対向する対向壁、該対向壁の長辺側両端縁から上記対面壁の長辺側両端縁に向かって延びる一対の第1側壁、及び上記対面壁と上記対向壁との短辺側両端縁同士を連結する一対の第2側壁で内部空間を有するように形成され、当該内部空間は、仕切板でウェブに対して前側となる第1空間とウェブに対して後側となる第2空間とに前後に仕切られている。上記仕切板のウェブ搬送方向中程には、ウェブ幅方向全長に亘って延びる空気通過口が形成され、該空気通過口の長辺側両端縁には、一対の第1ガイド板が対面壁に向かって平行に延びている。また、上記対面壁の長辺側両端縁と各第1側壁の延出端とは互いに離間して両者間にウェブ幅方向全長に亘って延びる吐出口が形成され、上記各第1側壁内方には、上記対面壁の長辺側両端縁から上記仕切板に向かって延びる一対の第2ガイド板が設けられ、該各第2ガイド板の延出端は、上記第1ガイド板の延出端より上記仕切板側に位置し、当該仕切板との間に隙間を形成している。
【0005】
そして、送風機から上記第2空間に供給された空気は、上記空気通過口を介して第1空間に移動するとともに、空気が第1空間にできるだけ滞留するように上記第1及び第2ガイド板によって上記第1空間をS字状に移動して上記吐出口からウェブに向けて吐出されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の如き構造であっても、ノズル内部に空気を滞留させる時間が十分ではなく、ノズルの内部圧力を測定すると、ウェブ幅方向に均一にならず、吐出口から吐出される空気の流速をウェブ幅方向に均一にすることができず、ウェブの搬送時におけるウェブ幅方向の蛇行や乾燥ムラを引き起こしていた。また、ノズル内部の空気の滞留時間を長くするために、ノズル内部を特許文献1の構造よりもさらに複雑にして送風機から供給される空気を第1及び第2空間に長く滞留させることも考えられるが、部品コストや加工コスト等が嵩むこととなってしまう。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウェブ幅方向に均一の流速で空気を吐出すことができる低コストな構造のノズルを有するフローティングドライヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、ノズル内部の第1空間に一対の第1ガイド板を略ハの字状に設けたことを特徴とする。
【0010】
具体的には、塗工が施された長尺状ウェブの両面側にウェブ搬送方向に間隔をあけ、且つ、ウェブ両面側で交互にウェブ搬送方向に千鳥状にずれて配置され、ウェブ幅方向全長に亘って延びるボックス状をなす複数のノズルと、該各ノズルに空気を供給する空気供給手段とを備え、上記ウェブを搬送する過程で上記各ノズルから空気を上記ウェブ両面に向かって吐出することにより、上記ウェブを浮かせた状態で蛇行させながら搬送して塗工液を乾燥させるフローティングドライヤを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明では、上記各ノズルは、上記ウェブに対面する対面壁、該対面壁に対向するとともに上記空気供給手段から空気を導入する空気導入部をウェブ幅方向略中央に有する対向壁、該対向壁の長辺側両端縁から上記対面壁の長辺側両端縁に向かって延びる一対の第1側壁、及び上記対面壁と上記対向壁との短辺側両端縁同士を連結する一対の第2側壁で内部空間を有するように形成され、且つ、該内部空間は、仕切板でウェブに対して前側となる第1空間とウェブに対して後側となる第2空間とに前後に仕切られ、上記対面壁の長辺側両端縁と上記各第1側壁の延出端とは互いに離間して両者間にウェブ幅方向全長に亘って延びる一対の吐出口が形成され、上記仕切板のウェブ搬送方向中程には、ウェブ幅方向全長に亘って延びる空気通過口が形成され、該空気通過口の長辺側端縁には、上記対面壁に接近するように互いに離間しながら延び、上記第2空間から上記空気通過口を通過して上記第1空間に導入された空気が当該第1空間で滞留するように上記空気通過口に逆向きに向かうようにガイドする一対の第1ガイド板が設けられ、上記各第1側壁内方には、上記対面壁の長辺側両端縁から上記仕切板に向かって延び、その延出端が上記第1ガイド板の延出端より上記仕切板側に位置し、当該仕切板との間に第1隙間を形成するとともに上記第1ガイド板の延出端との間に第2隙間を形成し、且つ、上記第1側壁との間に上記吐出口に繋がる吐出通路を形成し、上記第1ガイド板により上記第1空間に滞留する空気が上記第2隙間を通過して上記仕切板に向かうように、且つ、上記第1隙間及び上記吐出通路を順に通過するようにガイドする一対の第2ガイド板が設けられていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、上記各第1側壁の延出端側は、上記第1ガイド板側に緩やかに湾曲し、その端部は上記対面壁に接近していることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記各第
1ガイド板のウェブ搬送方向に対する角度が、30度以上で、且つ、45度以下に設定されていることを特徴とする。
【0014】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、上記空気通過口の短辺側寸法が、上記ノズルの短辺側寸法に対して10%以上で、且つ、20%以下に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明では、空気供給手段から第2空間に供給された空気は、第2空間から第1空間に空気通過口を介して移動した後、ウェブ側に向かって真っ直ぐに流れてウェブ側の壁に衝突し、その後、各第2ガイド板に向けて分かれて流れるとともに、各第2ガイド板に衝突して当該各第2ガイド板に沿って仕切板に向かって流れる。そして、各第2ガイド板に沿って仕切板に向かって流れる空気は、第2ガイド板と第1ガイド板の先端との間の第2隙間が狭いので、その一部が第2隙間を通過せずに上記各第1ガイド板に案内されて空気通過口に向かって流れ、当該空気通過口からウェブ側の壁に向かって流れる空気に合流して第1ガイド板のウェブ側で渦を巻くようになる。したがって、特許文献1のノズルの構造から大きな変更を行わずして第1空間の空気の滞留時間を長くすることができ、ノズル内部の圧力が均一となり、低コストな構造のノズルでウェブ幅方向に均一の流速で空気を吐出でき、ウェブ搬送時におけるウェブ幅方向の蛇行や乾燥ムラを防止することができる。
【0016】
第2の発明では、吐出通路において第2ガイド板に沿って吐出口に向かって流れる空気に対し、第1側壁に沿って吐出口に向かって流れる空気が上記第1側壁のウェブ側の湾曲部分で流れる方向が変わり、第2ガイド板に沿って流れる空気に対して交差して流れる。したがって、吐出口から吐出する空気の圧力損失が大きくなってウェブ幅方向及びウェブ搬送方向の吐出口から吐出される空気の流速が平均化され、吐出口からの空気の吐出をウェブ幅方向だけでなくウェブ搬送方向にも均一にでき、ウェブ搬送時におけるウェブ幅方向の蛇行や乾燥ムラだけでなく、ウェブのバタツキをも防止することができる。
【0017】
第3の発明では、空気が第2空間から第1空間に空気通過口を介して移動した後、第1空間で確実に渦を巻くようになるので、空気を第1空間に滞留させる時間が長くなり、吐出口から吐出される空気の流速をウェブ幅方向で確実に均一にできる。
【0018】
第4の発明では、空気供給手段がノズルのウェブ幅方向中央部分に空気を供給する構造であっても、第2空間に空気が滞留し易くなって第2空間の内部圧力をウェブ幅方向に平均化させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態の生産ライン1を示す。該生産ライン1は、略水平方向に搬送される長尺状のウェブWの両面に塗工を施す上下一対の塗工装置3を備え、該塗工装置3のウェブ搬送方向下流側には、上記塗工装置3を通過した略水平方向に搬送されるウェブWを乾燥させるフローティングドライヤ4が設けられている。ここで塗工とは、印刷又はコーティングを含む概念を示している。
【0022】
図1の紙面左側下部には、上記ウェブWを繰り出す繰出ロール2が設けられる一方、
図1の紙面右側下部には、上記ウェブWを巻き取る巻取ロール5が設けられている。そして、上記繰出ロール2と上記巻取ロール5との間には、複数のガイドロールGが設けられ、上記ウェブWは、上記各ガイドロールGに巻き掛けられて上記両塗工装置3及び上記フローティングドライヤ4を順に通過しながら搬送されるようになっている。
【0023】
上記フローティングドライヤ4は、ウェブWに向かって空気を吐出する複数のノズル6を備え、該各ノズル6は、略水平方向に搬送されるウェブWの上下両側にウェブ搬送方向に間隔をあけ、且つ、ウェブ両側で交互にウェブ搬送方向に千鳥状にずれて配置されている。
【0024】
上記ノズル6は、
図2に示すように、ウェブWの幅方向全長に亘って延びるボックス状をなし、上記ウェブWに対面する対面壁6a、該対面壁6aに対向する対向壁6b、該対向壁6bの長辺側両端縁から上記対面壁6aの長辺側端縁に向かって延びる一対の第1側壁6c、及び上記対面壁6aと上記対向壁6bとの短辺側両端縁同士を連結する一対の第2側壁6dで内部空間S(
図3に示す)を有するように形成されている。
【0025】
上記ノズル6内部の上下略中央には、
図3に示すように、ウェブ幅方向全長に亘って延びる仕切板61が設けられ、該仕切板61により、上記内部空間Sは、ウェブWに対して前側(ウェブWに近い側)となる第1空間S1とウェブWに対して後側(ウェブWに遠い側)となる第2空間S2とに前後に仕切られている。
【0026】
上記対面壁6aの長辺側両端縁と上記各第1側壁6cの延出端とは互いに離間して両者間にウェブ幅方向全長に亘って延びる吐出口62が一対形成されている。
【0027】
上記仕切板61のウェブ搬送方向中程には、ウェブ幅方向全長に亘って延びる空気通過口64が貫通形成され、該空気通過口64の短辺側寸法L1は、上記ノズル6の短辺側寸法Lに対して約10%の値に設定されている。
【0028】
該空気通過口64の長辺側両端縁には、上記対面壁6aに接近するように上記第1空間S1側に互いに離間しながら延びる一対の第1ガイド板65が設けられている。
【0029】
該各第1ガイド板65は、ウェブ搬送方向に対する角度θが約45度に設定され、上記第2空間S2から上記空気通過口64を通過して上記第1空間S1に導入された空気が上記空気通過口64に逆向きに向かうようにガイドして空気を第1空間S1に滞留させるようになっている。
【0030】
上記各第1側壁6cの内方には、上記対面壁6aの長辺側両端縁から上記仕切板61に向かって延びる一対の第2ガイド板63が設けられている。
【0031】
該各第2ガイド板63は、その延出端が上記第1ガイド板65の延出端より上記仕切板61側に位置し、当該仕切板61との間に第1隙間D1を形成するとともに、上記第1ガイド板65との間に第2隙間D2を形成していて、該第2隙間D2は、上記ノズル6の短辺側寸法Lに対して約10%の値に設定されている。
【0032】
また、上記各第2ガイド板63は、上記各第1側壁6cとの間に上記吐出口62に繋がる吐出通路68を形成し、上記第1ガイド板65により上記第1空間S1に滞留する空気が上記第2隙間D2を通過して上記仕切板61に向かうように、且つ、上記第1隙間D1及び上記吐出通路68を順に通過するようにガイドしている。
【0033】
また、上記第1側壁6cの延出端側は、上記第2ガイド板63側に緩やかに湾曲し、その端部は、対面壁6aに接近している。
【0034】
さらに、上記各第1空間S1のウェブW側には、上記各第2ガイド板63を橋絡する橋絡壁67が上記対面壁6aに並設されている。
【0035】
上記対向壁6bのウェブ幅方向略中央には、
図2に示すように、上記第2空間S2に空気を導入する貫通孔66(空気導入部)が形成され、該各貫通孔66には、エア配管7aが接続されている。該エア配管7aには、当該エア配管7aを介して上記各ノズル6の第2空間S2に空気を供給する送風機7bが接続され、上記エア配管7aと上記送風機7bとで空気供給手段7を構成している。
【0036】
そして、上記フローティングドライヤ4は、上記ウェブWを搬送する過程において、上記送風機7bから上記各ノズル6の第2空間S2に供給した空気を上記第1空間S1を介して各吐出口62から上記ウェブWに向かって吐出させることにより、上記ウェブWを浮かせた状態で蛇行させながら搬送して、ウェブWの表裏面に付着した塗工液を乾燥させるようになっている。
【0037】
次に、各ノズル6内部の空気の流れについて説明する。
【0038】
まず、上記送風機7bから各ノズル6の第2空間S2に空気を供給する。すると、
図3に示すように、各ノズル6の第2空間S2に貫通孔66から流入した空気は、上記ウェブW側に向かって流れた後、大半の空気が矢印X1のように空気通過口64を通過して第1空間S1に移動する一方、一部の空気が仕切板61に衝突して進路を各第1側壁6c側に変更して矢印X2のように円弧軌道を描く。そして、矢印X2のように流れる空気は、その一部が矢印X1の空気の流れに合流しつつ上記第2側壁6dに向かって渦を巻きながら流れる。
【0039】
ここで、上記空気通過口64の短辺側寸法L1は、上記ノズル6の短辺側寸法Lに対して約10%の値に設定されているので、本発明の実施形態のように、空気供給手段7がノズル6のウェブ幅方向中央部分に空気を供給する構造であっても、第2空間S2に空気が滞留し易くなって第2空間S2の内部圧力をウェブ幅方向に平均化させることができる。
【0040】
尚、本発明の実施形態では、空気通過口64の短辺側寸法L1を上記ノズル6の短辺側寸法Lに対して約10%の値に設定しているが、10%以上で、且つ、20%以下の設定であれば、第2空間S2に空気が滞留し易くなる。
【0041】
次に、矢印X1のように上記第1空間S1に移動した空気は、ウェブW側に向かって真っ直ぐに流れて橋絡壁67に衝突した後、進路を各第2ガイド板63に変更して流れ、その後、矢印X3のように各第2ガイド板63に衝突して各第2ガイド板63に沿って仕切板61側に流れる。
【0042】
次いで、各第2ガイド板63に沿って仕切板61側に流れる空気は、大半の空気が矢印X4のように第2隙間D2を通過する一方、一部の空気が矢印X5のように上記各第1ガイド板65にガイドされて空気通過口64に逆向きに向かうとともに、その一部が矢印X1の空気の流れに合流しつつ上記第2側壁6dに向かって渦を巻きながら流れる。
【0043】
しかる後、矢印X4のように第2隙間D2を通過した空気は、仕切板61に衝突して矢印X6のような略U字状の流れと矢印X9のような第1ガイド板65の仕切板61側で渦を巻く流れとに分かれ、矢印X6のように流れる空気は、吐出通路68を吐出口62に向かって真っ直ぐに流れる。
【0044】
その後、吐出通路68を吐出口62に向かって流れる空気のうち、矢印X7のように第1側壁6cに沿って流れる空気は、第1側壁6cのウェブW側の湾曲部分で流れる方向が変わり、矢印X8のように第2ガイド板63に沿って流れる空気に対して交差して流れ、そして、ウェブWに吐出口62から空気が吐出される。
【0045】
次に、ノズル6における第1ガイド板65の構造を変更して実験した結果について説明する。
【0046】
図4及び
図5は、本発明の実施形態に係るノズル6でウェブWに空気を吐出している状態の内部圧力を測定したデータである。
【0047】
この結果から分かるように、第1ガイド板65のウェブW側で空気が渦を巻くことによって、第1空間S1の空気の滞留時間が長くなり、
図5に示すように、第1空間S1における吐出口62手前の内部圧力が、ウェブ幅方向で略均一となる。
【0048】
一方、
図6及び
図7は、第1ガイド板65がウェブW側に平行に延出する従来構造のもので実験したノズル6の内部圧力を測定したデータであるが、これでは、第1空間S1で空気が渦を巻き難く、第1空間S1の空気の滞留時間が短くなって、
図7に示すように、第1空間S1における吐出口62手前の内部圧力が、ウェブ幅方向で均一にならない。
【0049】
このように、本発明の実施形態によると、空気供給手段7から第2空間S2に供給された空気は、第2空間S2から第1空間S1に空気通過口64を介して移動した後、ウェブW側に向かって真っ直ぐに流れてウェブW側の橋絡壁67に衝突し、その後、各第2ガイド板63に向けて分かれて流れるとともに、各第2ガイド板63に衝突して当該各第2ガイド板63に沿って仕切板61に向かって流れる。そして、各第2ガイド板63に沿って仕切板61に向かって流れる空気は、第2ガイド板63と第1ガイド板65の先端との間の第2隙間D2が狭いので、その一部が第2隙間D2を通過せずに上記各第1ガイド板65に案内されて空気通過口64に向かって流れ、当該空気通過口64から橋絡壁67に向かって流れる空気に合流して第1ガイド板65のウェブW側で渦を巻くようになる。したがって、特許文献1のノズルの構造から大きな変更を行わずして第1空間S1の空気の滞留時間を長くすることができ、ノズル6内部の圧力が均一となり、低コストな構造のノズル6でウェブ幅方向に均一の流速で空気を吐出でき、ウェブWの搬送時におけるウェブ幅方向の蛇行や乾燥ムラを防止することができる。
【0050】
また、上記各第1ガイド板65は、ウェブ搬送方向に対する角度θが約45度に設定されているので、空気が第2空間S2から第1空間S1に空気通過口64を介して移動した後、第1空間S1で確実に渦を巻くようになる。したがって、空気を第1空間S1に滞留させる時間が長くなり、吐出口62から吐出される空気の流速をウェブ幅方向で確実に均一にできる。
【0051】
尚、本発明の実施形態では、各第1ガイド板65のウェブ搬送方向に対する角度θを約45度に設定しているが、角度θが30度以上で、且つ、45度以下の設定であれば、第1空間S1において空気が確実に渦を巻くようにできる。
【0052】
次に、ノズル6における吐出口62周りの構造を変更して実験した結果について説明する。
【0053】
図8(a)は、本発明の実施形態のノズル6を、
図8(b)は、
図8(a)の第1側壁6c端部の位置を第2空間S2側に変更した構造のノズル6を、
図8(c)は、
図8(a)の第1側壁6c端部の形状を略くの字に変更した構造のノズル6を、
図8(d)は、
図8(c)の第1側壁6c端部の位置を第2空間S2側に変更した構造のノズル6をそれぞれ示す。
【0054】
そして、
図9は、
図8に示す各ノズル6において、吐出口62のウェブ搬送方向のE、F、Gの3箇所におけるウェブ幅方向の複数個所の流速を測定して評価したデータである。
【0055】
図8(a)では、吐出する空気の流速がウェブ搬送方向及びウェブ幅方向において略均一であり、これは、
図3に示す矢印X7のように第1側壁6cに沿って吐出口62に向かって流れる空気が矢印X8に示すように第2ガイド板63に沿って流れる空気に対して交差して流れる際に、吐出口62から吐出する空気の圧力損失を大きくして吐出口62から吐出される空気の流速を効果的に平均化できる形状であることが分かる。
【0056】
一方、
図8(b)〜(d)では、吐出する空気の流速がウェブ搬送方向及びウェブ幅方向の少なくともいずれか一方においてばらつきが発生しており、これは、
図3に示す矢印X7のように第1側壁6cに沿って吐出口62に向かって流れる空気が矢印X8に示すように第2ガイド板63に沿って流れる空気に対して交差して流れ難く、吐出口62において期待する圧力損失が発生しないことで吐出口62から吐出される空気の流速が平均化されない形状であることが分かる。
【0057】
このように、上記吐出通路68において矢印X8のように第2ガイド板63に沿って吐出口62に向かって流れる空気に対し、矢印X7のように第1側壁6cに沿って吐出口62に向かって流れる空気が上記第1側壁6cのウェブW側の湾曲部分で流れる方向が変わり、第2ガイド板63に沿って流れる空気に対して交差して流れるので、吐出口62から吐出する空気の圧力損失が大きくなってウェブ幅方向及びウェブ搬送方向の吐出口62から吐出される空気の流速が平均化され、吐出口62からの空気の吐出をウェブ幅方向だけでなくウェブ搬送方向にも均一にでき、ウェブWの搬送時におけるウェブ幅方向の蛇行や乾燥ムラだけでなく、ウェブWのバタツキをも防止することができる。
【0058】
尚、本発明のフローティングドライヤ4は、塗工装置3で塗工されたウェブWを乾燥させているが、印刷機で塗工が施されたウェブWを乾燥させるのに用いてもよい