特許第5969832号(P5969832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969832
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】発破によるコンクリート破砕方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20160804BHJP
   E21C 41/26 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   E04G23/08 F
   E21C41/26
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-139061(P2012-139061)
(22)【出願日】2012年6月20日
(65)【公開番号】特開2014-1593(P2014-1593A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】596118530
【氏名又は名称】テクノス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594071239
【氏名又は名称】株式会社カコー
(74)【代理人】
【識別番号】100080296
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英明
(72)【発明者】
【氏名】森田 栄治
(72)【発明者】
【氏名】山田 一宏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 伸和
(72)【発明者】
【氏名】河道 信二
(72)【発明者】
【氏名】木村 佳邦
(72)【発明者】
【氏名】新藤 孝志
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−042999(JP,A)
【文献】 特開2001−289599(JP,A)
【文献】 特開2007−332669(JP,A)
【文献】 特開平05−214886(JP,A)
【文献】 特開2001−289829(JP,A)
【文献】 特開2006−170649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21C 41/26
F42D 1/00 − 3/06
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕対象のコンクリートを破砕するための発破作業現場の周辺において発破振動を抑制したい対象地点を決めるとともに、コンクリートにおける前記対象地点から最も遠い地点に形成された1つの爆薬装填孔又は当該1つの爆薬装填孔を含む複数の爆薬装填孔を第1グループに決め、
当該第1グループの爆薬装填孔以外にコンクリートに形成された複数の爆薬装填孔を複数のグループにグループ分けし、
第1グループの爆薬装填孔内に装填された爆薬を爆発させる発破作業を行った後、その他のグループの爆薬装填孔内に装填された爆薬を爆発させる発破作業を行うことを特徴とする発破によるコンクリート破砕方法。
【請求項2】
第1グループの発破作業を行った後、前記対象地点より遠いグループから順番に発破作業を行うことを特徴とする請求項1に記載の発破によるコンクリート破砕方法。
【請求項3】
第1グループの発破作業を行った後は、当該第1グループに一番近かったグループの発破作業を行い、次に当該発破作業を終えたグループに一番近かったグループの発破作業を行うというように、発破作業を終えたグループの後に発破作業を行うグループを、発破作業を終えたグループに一番近かったグループに決めたことを特徴とする請求項1に記載の発破によるコンクリート破砕方法。
【請求項4】
第1グループ以外の各グループの爆薬装填孔内に装填する爆薬の量を第1グループの爆薬装填孔内に装填する爆薬の量よりも多くしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発破によるコンクリート破砕方法。
【請求項5】
第1グループの爆薬装填孔内に装填する爆薬の量を第1グループ以外の各グループの爆薬装填孔内に装填する爆薬の量よりも少なくしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発破によるコンクリート破砕方法。
【請求項6】
第1グループ以外の各グループの爆薬装填孔の数を、前記対象地点より遠いグループほど少なくし、かつ、各グループの各爆薬装填孔内にそれぞれ同量の爆薬を装填したことを特徴とする請求項2に記載の発破によるコンクリート破砕方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破砕対象としてのコンクリートを発破で破砕する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、破砕対象としてのコンクリートに爆薬装填孔を形成して、爆薬装填孔内に爆薬を装填し、爆薬を爆発させる発破作業を行ってコンクリートを破砕する方法が知られている(例えば特許文献1;2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−021700号公報
【特許文献2】特開2007−332669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリートを破砕するための発破作業を行う場合、発破作業現場の周辺において発破振動を低減したい対象地点に伝わる発破振動をできるだけ低減でき、かつ、コンクリートを効率的に破砕したいという目的がある。
しかしながら、従来の方法では、上記目的を達成できていない。
本発明は、発破作業現場の周辺において発破振動を低減したい対象地点に伝わる発破振動を低減でき、かつ、コンクリートを効率的に破砕可能なコンクリート破砕方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る発破によるコンクリート破砕方法は、破砕対象のコンクリートを破砕するための発破作業現場の周辺において発破振動を抑制したい対象地点を決めるとともに、コンクリートにおける前記対象地点から最も遠い地点に形成された1つの爆薬装填孔又は当該1つの爆薬装填孔を含む複数の爆薬装填孔を第1グループに決め、当該第1グループの爆薬装填孔以外にコンクリートに形成された複数の爆薬装填孔を複数のグループにグループ分けし、第1グループの爆薬装填孔内に装填された爆薬を爆発させる発破作業を行った後、その他のグループの爆薬装填孔内に装填された爆薬を爆発させる発破作業を行うので、発破作業現場の周辺において発破振動を低減したい対象地点に伝わる発破振動を低減でき、かつ、コンクリートを効率的に破砕できる。
また、第1グループの発破作業を行った後、前記対象地点より遠いグループから順番に発破作業を行うので、対象地点に伝わる発破振動をより低減でき、かつ、コンクリートをより効率的に破砕できる。
また、第1グループの発破作業を行った後は、当該第1グループに一番近かったグループの発破作業を行い、次に当該発破作業を終えたグループに一番近かったグループの発破作業を行うというように、発破作業を終えたグループの後に発破作業を行うグループを、発破作業を終えたグループに一番近かったグループに決めたので、対象地点に伝わる発破振動をより低減でき、かつ、コンクリートをより効率的に破砕できる。
また、第1グループ以外の各グループの爆薬装填孔内に装填する爆薬の量を第1グループの爆薬装填孔内に装填する爆薬の量よりも多くしたので、第1グループ以外の各グループでの発破作業によってコンクリートをより効率的に破砕できる。
また、第1グループの爆薬装填孔内に装填する爆薬の量を第1グループ以外の各グループの爆薬装填孔内に装填する爆薬の量よりも少なくしたので、第1グループの発破時の発破振動を少なくでき、対象地点に伝わる発破振動をより低減できる。
さらに、第1グループ以外の各グループの爆薬装填孔の数を、前記対象地点より遠いグループほど少なくし、かつ、各グループの各爆薬装填孔内にそれぞれ同量の爆薬を装填したので、第1グループ以外の各グループでの発破作業によってコンクリートをより効率的に破砕できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態における破砕対象のコンクリートを示す斜視図。
図2図1の平面図。
図3】コンクリートの実験サンプルを示す斜視図。
図4図3の平面図。
図5】実験サンプルを用いた実験結果を示す図。
図6】実験サンプルを用いた実験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態の発破によるコンクリート破砕方法は、破砕対象のコンクリートの一面からコンクリートの内部に延長する複数の爆薬装填孔をコンクリートの一面において間隔を隔てて並ぶように形成する孔形成ステップと、コンクリートを破砕するための発破作業現場の周辺において発破振動を抑制したい対象地点を決める対象地点設定ステップと、コンクリートに形成された複数の爆薬装填孔を複数のグループにグループ分けし、対象地点から最も遠い地点にある1つの爆薬装填孔又は当該対象地点から最も遠い地点にある1つの爆薬装填孔を含む複数の爆薬装填孔を第1グループに決めるグループ分けステップと、各グループの各爆薬装填孔内に爆薬を装填した後、グループ毎に時間をずらして各爆薬装填孔内の爆薬を爆発させる発破作業を行うに際して、第1グループの発破作業を行った後、その他のグループの発破作業を行う発破作業ステップと、を備える。
そして、発破作業ステップにおいて、各グループの爆薬装填孔内に装填する爆薬量を、第1グループ以外の各グループの爆薬装填孔内に装填する爆薬の量を第1グループの爆薬装填孔内に装填する爆薬の量よりも多くした。即ち、第1グループ以外の各グループでそれぞれ使用する爆薬の総量を第1グループで使用する爆薬の総量よりも多くした。
さらに、その他のグループの発破作業を行う場合には、対象地点より遠いグループから順番に発破作業を行うという条件、及び、発破作業を終えたグループの後に発破作業を行うグループを、発破作業を終えたグループに一番近かったグループに決めるという条件、のうちの少なくとも1つの条件を満たすように、その他のグループの発破作業を行う。
このようにすることで、対象地点に伝わる発破振動を低減でき、かつ、コンクリートを効率的に破砕できる。
【0008】
図1乃至図6を参照し、実施形態の発破によるコンクリート破砕方法の一例を説明する。
まず、図1及び図2に示すように、破砕対象のコンクリート1の一面2からコンクリート1の内部に延長する複数の爆薬装填孔3をコンクリート1の一面2において間隔を隔てて並ぶように形成し、かつ、当該コンクリート1を破砕するための発破作業現場の周辺において発破振動を低減したい対象地点4を設定する。
そして、コンクリート1に形成された複数の爆薬装填孔3を複数のグループにグループ分けするに際し、対象地点4から最も遠い地点にある1つの爆薬装填孔3又は対象地点4から最も遠い地点にある1つの爆薬装填孔3と当該爆薬装填孔3の近傍にある1つ又は複数の爆薬装填孔3を第1グループとするとともに、各グループの各爆薬装填孔内に爆薬を装填した後、グループ毎に時間をずらして各爆薬装填孔内の爆薬を爆発させる発破作業(段発発破作業)を行うに際して、第1グループの発破作業を行った後、その他のグループの発破作業を行う。
第1グループ以外のグループのグループ分けは、1つの爆薬装填孔3又は複数の爆薬装填孔3群で構成されたグループを形成するように、爆薬装填孔3をグループ分けする。
【0009】
例えば、図2に示すように、破砕対象のコンクリート1の一面2に複数の爆薬装填孔3が間隔を隔てて行列状に並ぶように形成されている場合、対象地点4から最も遠い箇所にある1つの爆薬装填孔31を第1グループAとし、対象地点4から2番目に遠い箇所にある爆薬装填孔32及び対象地点4から3番目に遠い箇所にある爆薬装填孔33を第2グループBとし、対象地点4から4番目、5番目、6番目に遠い箇所にある爆薬装填孔34;35;36を第3グループCとし、対象地点4から7番目、8番目、9番目、10番目に遠い箇所にある爆薬装填孔39;38;40;37を第4グループDとし、対象地点4から11番目、12番目に遠い箇所(即ち、対象地点4から1番目、2番目に近い箇所)にある残った爆薬装填孔41;42を第5グループEとする。
【0010】
言い換えれば、対象地点4から一番遠い位置にある1つの爆薬装填孔31からなる第1グループA、第1グループAの爆薬装填孔31よりも対象地点4に近い位置にあって互いに隣り合う複数個の爆薬装填孔32;33からなる第2グループB、第2グループBの爆薬装填孔32;33よりも対象地点4に近い位置にあって互いに隣り合う複数個の爆薬装填孔34;35;36からなり、かつ、爆薬装填孔3の数が第2グループBの爆薬装填孔3の数よりも多くなるように構成された第3グループC、第3グループCの爆薬装填孔3よりも対象地点4に近い位置にあって互いに隣り合う複数個の爆薬装填孔37;38;39;40からなり、かつ、爆薬装填孔3の数が第3グループCの爆薬装填孔3の数よりも多くなるように構成された第4グループD、残余の爆薬装填孔41;42により構成される第5グループ(最終グループ)Eというように、コンクリート1に形成された全ての爆薬装填孔3をグループ分けする。つまり、爆薬装填孔3の残余数が、爆薬装填孔3の残余数≦直前のグループを構成する爆薬装填孔3の数となった場合には、その残余の爆薬装填孔3により構成されるグループを最終グループとする。
即ち、各グループA〜Eの各爆薬装填孔3内にそれぞれ同量の爆薬を装填し、第1グループA以外のグループB〜Dの爆薬装填孔3の数を対象地点4より遠いグループほど少なすることで、対象地点4より遠いグループほど爆薬の量(総量)を少なくした。言い換えれば、第1グループA以外のグループB〜Dの爆薬装填孔3の数を対象地点4に近いグループほど多くすることで、対象地点4に近いグループほど爆薬の量(総量)を多くした。但し、最終グループEを構成する爆薬装填孔3の残余数が、最終グループEの直前のグループDを構成する爆薬装填孔3の数以下となった場合には、最終グループEの方が最終グループEの直前のグループDよりも対象地点4に近い場合でも、最終グループEの爆薬量≦最終グループEの直前のグループDの爆薬量とした。
【0011】
そして、全ての爆薬装填孔3内にそれぞれ同じ量の爆薬を装填し、番号の若いグループから順番に発破作業を行っていく。
例えば、第1グループAの1つの爆薬装填孔31内の爆薬を爆発させる第1発破作業を行い、当該第1発破作業から0.25秒後に第2グループBの2つの爆薬装填孔32;33内の爆薬を爆発させる第2発破作業を行い、当該第2発破作業から0.25秒後に第3グループCの3つの爆薬装填孔34;35;36内の爆薬を爆発させる第3発破作業を行い、当該第3発破作業から0.25秒後に第4グループDの4つの爆薬装填孔37;38;39;40内の爆薬を爆発させる第4発破作業を行い、当該第4発破作業から0.25秒後に最終グループである第5グループEの2つの爆薬装填孔41;42の最終発破作業を行うというように、段発発破作業を行ってコンクリート1を破砕する。
即ち、第1グループA以外の各グループB〜Eの爆薬装填孔3の数を、前記対象地点4より遠いグループほど少なくし、かつ、各グループA〜Eの各爆薬装填孔3内にそれぞれ同量の爆薬を装填して、第1グループAの発破作業を行った後、第1グループA以外のその他のグループB〜Eの発破作業を行う際、対象地点4より遠いグループから順番に発破作業を行った。つまり、第1グループA以外の各グループB〜Eでそれぞれ使用する爆薬の総量を第1グループAで使用する爆薬の総量よりも多くし、第1グループAの発破作業を行った後、対象地点4より遠いグループから順番に発破作業を行った。この場合、対象地点4より遠いグループから順番に発破作業を行うので、対象地点4に伝わる発破振動をより低減でき、かつ、第1グループA以外の各グループB〜Eでの発破作業によってコンクリート1をより効率的に破砕できる。
【0012】
実施形態の発破によるコンクリート破砕方法を実施した際の対象地点4での振動を計測した。
図3;4に示すように、発破作業現場に破砕対象のコンクリート1として直方体形状のマスコンクリートを設置し、コンクリート1の上面の長手方向両端側においてコンクリート1の一面2からコンクリート1の内部に延長する複数の爆薬装填孔3をコンクリート1の一面2において間隔を隔てて行列状に並ぶように形成した実験サンプル100A;100Bを作製して、全ての爆薬装填孔3内にそれぞれ同じ量の爆薬を装填し、コンクリート1の上面の長手方向中央側の上方において2つの対象地点4A;4Bを設定し、この2つの対象地点4A;4Bにそれぞれ加速度計50を設置し、当該加速度計50でグループ毎の発破時の振動加速度を計測した。加速度計50は、実験サンプル100A;100Bから離れた箇所に設けた。
実験サンプル100Aにおける爆薬装填孔3のグループ分けと対象地点4Aとの関係、及び、実験サンプル100Bにおける爆薬装填孔3のグループ分けと対象地点4Bとの関係を、上述した関係に設定し、実験サンプル100Aにおける爆薬装填孔3のグループ毎の発破作業の際の振動加速度を対象地点4Aで計測し、実験サンプル100Bにおける爆薬装填孔3のグループ毎の発破作業の際の振動振動を対象地点4Bで計測した。
【0013】
実験サンプル100Aにおける爆薬装填孔3のグループ毎の発破の際の振動を対象地点4Aで計測した結果を図5に示し、実験サンプル100Bにおける爆薬装填孔3のグループ毎の発破の際の振動を対象地点4Bで計測した結果を図6に示す。尚、GXはX軸方向(図4の左右方向)の加速度、GYはY軸方向(図4の上下方向)の加速度、GZはZ軸方向(図4の紙面と直交する方向)の加速度を示している。
この実験結果からわかることは、対象地点4Aや4Bから一番遠く離れていて発破作業で爆発させる爆薬量が最も少ない第1グループAの発破作業において対象地点4Aや4Bで計測される振動加速度値が他のグループの発破作業において対象地点4Aや4Bで計測される振動加速度値よりも大きいということがわかった。即ち、第2グループ以降は、第1グループAと比べて爆薬装填孔3が対象地点4Aや4Bに近く、かつ、斉発量(グループ毎の爆薬の量)が多くなるにもかかわらず、発破作業時において対象地点4Aや4Bで計測される振動加速度値が第1グループAの発破作業時において対象地点4Aや4Bで計測される振動加速度値よりも小さくなっており、発破振動が低減することがわかった。
これは、第1グループAの発破作業を行った後は、コンクリート1内に無数のマイクロクラックが発生してコンクリート1が密実な状態ではなくなるのでコンクリート1の動弾性係数が下がり、以降のグループでの発破作業を行った際の振動が減衰される(振動の減衰が大きくなる)ためであると考えられる。そして、以降のグループでの発破作業が繰り返されることで、マイクロクラックが発生し続けるので、振動の減衰がさらに大きくなる。
【0014】
上記実験結果から考えられることは、第2グループ以降においては、発破作業に使用する爆薬の量を第1グループAの発破作業で使用する爆薬の量より多くしても、第2グループ以降の発破作業において対象地点4に伝わる発破振動を、第1グループAの発破作業において対象地点4に伝わる発破振動と同程度以下に抑えることができるということである。従って、第2グループ以降の発破作業においては、第1グループAの爆薬装填孔3に装填される爆薬の量と同じ量の爆薬が装填された爆薬装填孔3を一度に爆発させる数を多くしたり、爆薬装填孔3に装填する爆薬の量を第1グループAの爆薬装填孔3に装填される爆薬の量よりも多くしても、対象地点4に伝わる発破振動を、第1グループAの発破作業において対象地点4に伝わる発破振動と同程度以下に抑えることができ、しかも、爆薬の量を多くできるので、コンクリート1を効率的に破砕できる。即ち、実施形態においては、第1グループA以外のグループB〜E毎に使用する爆薬の総量を第1グループAで使用する爆薬の総量よりも多くしたので、対象地点4に伝わる発破振動を低減でき、かつ、コンクリート1を効率的に破砕できる。
例えば、第1グループAの発破時において対象地点4で計測される発破振動が対象地点4で許容できる最大許容値(例えば発破作業現場での既設構造物への影響を鑑みて設定された振動規制値)以下になるようにして、かつ、第2グループ以降の発破作業においては、各グループB〜Eでそれぞれ使用する爆薬の総量を第1グループAで使用する爆薬の総量よりも多くすることで、第2グループ以降の発破作業によって、コンクリート1をより効率的に破砕でき、かつ、対象地点4に伝わる発破振動を前記最大許容値以下に抑えることが可能となる。
【0015】
即ち、実施形態では、対象地点4から最も遠い地点にある1つの爆薬装填孔3、又は、当該対象地点4から最も遠い地点にある1つの爆薬装填孔3を含む複数の爆薬装填孔3(対象地点4から最も遠い地点にある1つの爆薬装填孔3と当該爆薬装填孔3の近傍にある1つ又は複数の爆薬装填孔3)を第1グループAに決め、当該第1グループAの発破によってコンクリート1内に無数のマイクロクラックを発生させてコンクリート1の動弾性係数を下げ、第1グループAの後のグループB〜Eでの発破作業を行った際の振動の減衰が大きくなるようにし、第1グループA以外の各グループB〜Eでの発破作業に使用する爆薬量を第1グループAの発破作業に使用する爆薬量よりも多くできるようにしたことで、各グループA〜Eでの発破時の振動の低減、及び、コンクリート1のより効率的な破砕を実現できるようにした。
【0016】
また、第1グループA以外のその他のグループB〜Eの発破作業を行う際には、対象地点4より一番遠くて、かつ、発破作業を終えたグループに一番近かったという条件を満たすグループから順番に他のグループの発破作業を行うようにすれば、グループの発破作業において前のグループの発破作業でコンクリート1に発生したマイクロクラックによる効果を受けやすくなるので、対象地点4に伝わる発破振動をより低減でき、かつ、コンクリート1をより効率的に破砕できる。
【0017】
尚、第1グループAの爆薬装填孔3内に装填する爆薬の量(第1グループAで使用する爆薬の総量)を第1グループA以外の各グループB〜Eの爆薬装填孔3内に装填する爆薬の量(グループ毎に使用する爆薬の総量)よりも少なくすれば、第1グループAの発破時の発破振動を少なくでき、対象地点4に伝わる発破振動をより低減できるようになる。つまり、対象地点4で許容できる発破振動の最大許容値と第2グループBの発破時の発破振動との差が大きければ、第1グループAで使用する爆薬の総量を少なくすることにより、発破時の発破振動が各グループA〜E中で一番大きい第1グループAの発破時の発破振動を低減でき、破砕対象のコンクリートを破砕する際の発破振動の最大値を下げることができる。
【0018】
尚、実施形態では、その他のグループB〜Eの発破作業を行うステップにおいて、対象地点より遠いグループから順番に発破作業を行うという条件、及び、発破作業を終えたグループの後に発破作業を行うグループを、発破作業を終えたグループに一番近かったグループに決めるという条件、のうちの少なくとも1つの条件を満たすように、その他のグループの発破作業を行う例を示したが、その他のグループB〜Eの発破作業は、必ずしも上記条件を満たさなくても良い。この場合でも、第1グループAの発破作業を行うことで、コンクリート1内に無数のマイクロクラックを発生させてコンクリート1の動弾性係数を下げることができ、以降のグループでの発破作業を行った際の振動の減衰が大きくなるので、対象地点4に伝わる発破振動を低減でき、かつ、コンクリート1を効率的に破砕できるからである。
【0019】
また、実施形態では、孔形成ステップにおいて1回の作業ですべての爆薬装填孔3を形成する例を示したが、孔形成ステップにおいて1つ以上の爆薬装填孔3を形成する孔形成作業を複数回に分けて行うようにしてもよい。このように孔形成ステップにおいて1つ以上の爆薬装填孔3を形成する孔形成作業を複数回に分けて行う場合においては、各孔形成作業が終わる後にグループ分けを行ってグループ毎に発破作業を行うという一連の作業をすべての爆薬装填孔3の発破作業が終わるまで繰り返し行えばよい。
【0020】
また、実施形態では、孔形成ステップ、対象地点設定ステップ、グループ分けステップ、発破作業ステップの順番で行うコンクリート破砕方法について説明したが、対象地点設定ステップを一番最初に行うようにしてもよい。発破作業現場において破砕対象のコンクリートを破砕する場合には、実際には発破振動を抑制したい対象地点を最初に決めるので、このように対象地点設定ステップを一番最初に行うことが多い。
【0021】
対象地点設定ステップを一番最初に行う場合においては、対象地点設定ステップの後に、孔形成ステップ、グループ分けステップ、発破作業ステップの順番に作業を行うようにしても良いし、又は、対象地点設定ステップの後に、領域グループ分けステップ、孔形成ステップ、発破作業ステップの順番に作業を行うようにしても良い。
対象地点設定ステップの後に、孔形成ステップ、グループ分けステップ、発破作業ステップの順番に作業を行う場合においては、孔形成ステップにおいてすべての爆薬装填孔3を形成した後にグループ分けを行ってグループ毎に発破作業を行うようにしても良いし、孔形成ステップにおいて1つ以上の爆薬装填孔3を形成する孔形成作業を複数回に分けて行うようにしてもよい。このように孔形成ステップにおいて1つ以上の爆薬装填孔3を形成する孔形成作業を複数回に分けて行う場合においては、各孔形成作業が終わる後にグループ分けを行ってグループ毎に発破作業を行うという一連の作業をすべての爆薬装填孔3の発破作業が終わるまで繰り返し行えばよい。
また、対象地点設定ステップの後に、領域グループ分けステップ、孔形成ステップ、発破作業ステップの順番に作業を行う場合は、領域グループ分けステップにおいて、コンクリートにおける対象地点から最も遠い領域を決めた後、その他のすべての複数の領域を決め、各領域毎に1つ又は複数の爆薬装填孔3を形成して各グループを形成した後、各グループ毎に発破作業を行えばよい。この場合、コンクリートにおける対象地点から最も遠い領域を決めて当該領域に1つ又は複数の爆薬装填孔3を形成して第1グループとし、第1グループの爆薬装填孔3内に装填された爆薬を爆発させる発破作業を行った後、他の領域の設定及び領域毎の孔を形成することによる複数の他のグループの形成、他のグループ毎の発破作業を行うようにしてもよい。
【0022】
また、実施形態では、グループ毎に時間をずらして各爆薬装填孔3内の爆薬を爆発させる発破作業を行う際の当該時間を0.25秒とした例を示したが、当該時間は、どのように決めてもかまわない。
【0023】
本発明の発破によるコンクリート破砕方法は、コンクリート構造物の一部を除去する場合に適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 コンクリート、2 コンクリートの一面、3 爆薬装填孔、4 対象地点、
A〜E グループ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6