(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全図中、同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
<第1実施形態>
まず本発明の色素増感太陽電池モジュールの第1実施形態について
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る色素増感太陽電池モジュールの第1実施形態を示す断面図、
図2は、
図1の色素増感太陽電池モジュールを示す部分平面図である。
【0020】
図1に示すように、色素増感太陽電池モジュール100は、透明基板10と、透明基板10の一面10a上に設けられる複数(
図1では3つ)の色素増感太陽電池セル20とを有する。すなわち、透明基板10は、全色素増感太陽電池セル20に共通の透明基板となっている。以下、説明の便宜上、色素増感太陽電池モジュール100において3つの色素増感太陽電池セル20を色素増感太陽電池セル20A,20B,20Cと呼ぶことがある。
【0021】
まず色素増感太陽電池セル20Aについて説明する。
【0022】
色素増感太陽電池セル20Aは、透明基板10上に設けられる作用極(第1電極)30と、作用極30に対向する対極(第2電極)40と、作用極30と対極40との間に配置される電解質60と、作用極30及び対極40を接続し、作用極30及び対極40とともに電解質60を封止する環状の封止部50とを備えている。
【0023】
作用極30は、透明基板10の上に設けられる透明導電膜31と、透明導電膜31の上に設けられる多孔質酸化物半導体層32と、透明導電膜31の上において多孔質酸化物半導体層32の周囲に設けられる配線部33とを有している。透明導電膜31は、封止部50の内側に位置する本体部31aと、封止部50の外側に位置する接続部31bとで構成されている。配線部33は、透明導電膜31上に設けられる集電配線34と、集電配線34を覆って電解質60から保護する配線保護層35とを有している。多孔質酸化物半導体層32には光増感色素が担持されている。
【0024】
対極40は、対極基板41と、対極基板41の作用極30側に設けられて触媒反応を促進する触媒層42とを備えている。対極40は、封止部50の内側に位置する本体部40aと、封止部50の外側に位置する接続部40bとを有している。
【0025】
色素増感太陽電池セル20B,20Cも、色素増感太陽電池セル20Aと同様の構成を有している。
【0026】
ここで、色素増感太陽電池セル20A〜20Cの透明導電膜31、環状の封止部50、及び対極40は透明基板10上で互いに離間して設けられている。そして、複数の色素増感太陽電池セル20A〜20Cは直列接続されている。
【0027】
ここで、複数の色素増感太陽電池セル20A〜20Cのうち隣り合う色素増感太陽電池セル間の接続構造について詳細に説明する。
【0028】
まず色素増感太陽電池セル20Aにおいて、
図2に示すように、対極40の接続部40bは、封止部50の外側に位置し、隣りの色素増感太陽電池セル20B側に向けられている。
【0029】
一方、色素増感太陽電池セル20Bにおいては、
図2に示すように、対極40の本体部40aの縁部の一部に切欠き40cが形成されている。また封止部50には、対極40の縁部に形成された切欠き40cを避けるように凹部51が形成されており、その凹部51において透明導電膜31の一部である接続部31bが露出されている。
【0030】
そして、色素増感太陽電池セル20Bの封止部50の凹部51に、色素増感太陽電池セル20Aの対極40の接続部40bが挿入され、色素増感太陽電池セル20Bにおける透明導電膜31の接続部31bと、導電性接着剤を含む導電部材70を介して接続されている。また、導電部材70と色素増感太陽電池セル20Bの封止部50との間には、色素増感太陽電池セル20Aにおける対極40の接続部40bと色素増感太陽電池セル20Bにおける作用極30の接続部31bとを接続する絶縁部材80が設けられている。具体的には、絶縁部材80は、導電部材70を包囲するようにU字形状をなしている(
図2参照)。また本実施形態では、絶縁部材80は、色素増感太陽電池セル20Aにおける対極40の接続部40bと色素増感太陽電池セル20Bにおける作用極30の接続部31bとの間に設けられている。
【0031】
また色素増感太陽電池セル20Bと色素増感太陽電池セル20Cとの接続構造も、色素増感太陽電池20Aと色素増感太陽電池20Bとの接続構造と同様となっている。
【0032】
この色素増感太陽電池モジュール100によれば、色素増感太陽電池セル20Aと色素増感太陽電池セル20Bとを接続する導電部材70と色素増感太陽電池セル20Bの封止部50との間に、色素増感太陽電池セル20Aにおける対極40の接続部40bと色素増感太陽電池セル20Bにおける作用極30の透明導電膜31の接続部31bとを接続する絶縁部材80が設けられている。このため、導電部材70に過大な力が加わろうとしても、その力が絶縁部材80によって緩和される。また導電部材70に過大な力が加わり、導電部材70に含まれる導電性接着剤が押し潰されても、その押し潰された導電性接着剤が、色素増感太陽電池セル20Bの対極40に向かうことが阻止される。このため、隣り合う2つの色素増感太陽電池セル20A,20Bの対極40同士間の導通が防止され、隣り合う2つの色素増感太陽電池セル20A,20B同士間の短絡を十分に抑制することができる。同様に、色素増感太陽電池モジュール100では、色素増感太陽電池セル20Bと色素増感太陽電池セル20Cとを接続する導電部材70と色素増感太陽電池セル20Cの封止部50との間に、色素増感太陽電池セル20Bにおける対極40の接続部40bと色素増感太陽電池セル20Cにおける作用極30の透明導電膜31の接続部31bとを接続する絶縁部材80が設けられている。このため、導電部材70に過大な力が加わろうとしても、その力が絶縁部材80によって緩和される。また導電部材70に過大な力が加わり、導電部材70に含まれる導電性接着剤が押し潰されても、その押し潰された導電性接着剤が、色素増感太陽電池セル20Cの対極40に向かうことが阻止される。このため、隣り合う2つの色素増感太陽電池セル20B,20Cの対極40同士間の導通が防止され、隣り合う2つの色素増感太陽電池セル20B,20C同士間の短絡を十分に抑制することができる。よって、色素太陽電池モジュール100によれば、全体として短絡の発生を十分に抑制することができる。
【0033】
次に、透明基板10、作用極30、光増感色素、対極40、封止部50、電解質60、導電部材70及び絶縁部材80について詳細に説明する。
【0034】
(透明基板)
透明基板10は、光透過性の材料からなる基板により構成される。このような材料としては、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられ、通常、光電変換素子の透明基材として用いられる材料であればいかなるものでも用いることができる。透明基板10は、これらの中から電解質60への耐性などを考慮して適宜選択される。また、透明基板10は、光透過性に優れる基材であることが好ましく、光透過率が90%以上の基材であることがより好ましい。
【0035】
(作用極)
透明導電膜31は、作用極30の透明性を著しく損なわない構造とするために、導電性金属酸化物からなる薄膜であることが好ましい。このような導電性金属酸化物としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素添加酸化スズ(FTO)、酸化スズ(SnO
2)などが挙げられる。また、透明導電膜31は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電膜31が単層で構成される場合、透明導電膜31としては、成膜が容易かつ製造コストが安価であるという観点から、ITO、FTOが好ましく、また、高い耐熱性及び耐薬品性を有する観点から、FTOがより好ましい。
【0036】
また、透明導電膜31が複数の層で構成される積層体により構成されると、各層の特性を反映させることが可能となることから好ましい。中でも、ITOからなる膜にFTOからなる膜が積層されてなる積層膜であることが好ましい。この場合、高い導電性、耐熱性及び耐薬品性を持つ透明導電膜31が実現でき、可視域における光の吸収量が少なく、導電率が高い透明導電性基板を構成することができる。また、透明導電膜31の厚さは例えば0.01〜2μmの範囲にすればよい。
【0037】
多孔質酸化物半導体層32を形成する酸化物半導体は、特に限定されず、通常、光電変換素子用の多孔質酸化物半導体層を形成するのに用いられるものであれば、いかなるものでも用いることができる。このような酸化物半導体としては、例えば、酸化チタン(TiO
2)、シリカ(SiO
2)、酸化スズ(SnO
2)、酸化タングステン(WO
3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)酸化インジウム(In
3O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化タリウム(Ta
2O
5)、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ホルミウム(Ho
2O
3)、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
これら酸化物半導体の粒子の平均粒径は1〜1000nmであることが、色素で覆われた酸化物半導体の表面積が大きくなり、より多くの電子を生成することができることから好ましい。また、多孔質酸化物半導体層32は、粒度分布の異なる酸化物半導体粒子を積層させて構成されることが好ましい。この場合、半導体層内で繰り返し光の反射を起こさせることが可能となり、多孔質酸化物半導体層32の外部へ逃がす入射光を少なくして、効率よく光を電子に変換することができる。多孔質酸化物半導体層32の厚さは、例えば0.5〜50μmとすればよい。なお、多孔質酸化物半導体層32は、異なる材料からなる複数の酸化物半導体の積層体で構成することもできる。
【0039】
集電配線34を構成する材料は、透明導電膜31より低い抵抗を有する金属を含むものであればよい。このような金属としては、例えば銀が用いられる。
【0040】
配線保護層35は、集電配線34を覆って電解質60から集電配線34を保護するものである。配線保護層35は、電解質60から集電配線34を保護するものであればよく、例えば無機物からなる無機層、樹脂を含む樹脂層、又はこれら無機層と樹脂層との積層体で構成される。
【0041】
無機物としては、低融点ガラスなどの無機絶縁材料が挙げられる。ここで、低融点ガラスとしては、例えば150〜550℃の軟化点を有するものを用いることができる。
【0042】
樹脂としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の各種変性ポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂、及び、紫外線硬化樹脂が挙げられる。
【0043】
(光増感色素)
光増感色素としては、ビピリジン構造、ターピリジン構造などを配位子に含むルテニウム錯体、ポリフィリン、フタロシアニンなどの含金属錯体、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素などが挙げられ、これらの中から、用途、使用半導体に適した挙動を示すものを特に限定なく選ぶことができる。具体的には、N3、N719、N749などを使用することができる。
【0044】
(対極)
対極基板41としては、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン、SUS等の耐食性の金属材料や、上述した透明基板10にITO、FTO等の導電性酸化物からなる膜を形成したもので構成される。対極基板41の厚さは、色素増感太陽電池モジュール100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば0.005〜0.1mmとすればよい。
【0045】
触媒層42は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。
【0046】
対極40の厚さは例えば0.005〜0.5mmの範囲内であればよい。
【0047】
(封止部)
封止部50を構成する材料としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの各種変性ポリオレフィンや、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体が挙げられる。なお、封止部50は樹脂のみで構成されてもよいし、樹脂と無機フィラーとで構成されていてもよい。
【0048】
(電解質)
電解質60は、例えばI
−/I
3−などの酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、バレロニトリル、ピバロニトリル、グルタロニトリル、メタクリロニトリル、イソブチロニトリル、フェニルアセトニトリル、アクリロニトリル、スクシノニトリル、オキサロニトリル、ペンタニトリル、アジポニトリルなどを用いることができる。酸化還元対としては、例えばI
−/I
3−のほか、臭素/臭化物イオン、亜鉛錯体、鉄錯体、コバルト錯体などのレドックス対が挙げられる。また電解質60は、有機溶媒に代えて、イオン液体を用いてもよい。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩であって、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が用いられる。このような常温溶融塩としては、例えば、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド、ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、エチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、ジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド、ブチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、又は、メチルプロピルイミダゾリウムアイオダイドが好適に用いられる。
【0049】
また、電解質60は、上記有機溶媒に代えて、上記イオン液体と上記有機溶媒との混合物を用いてもよい。
【0050】
また電解質60には添加剤を加えることができる。添加剤としては、LiI、I
2、4−t−ブチルピリジン、グアニジウムチオシアネート、1−メチルベンゾイミダゾール、1-ブチルベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0051】
さらに電解質60としては、上記電解質にSiO
2、TiO
2、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化した電解質を用いてもよい。
【0052】
(導電部材)
導電部材70は導電性接着剤を含むものであればよい。従って、導電部材70は、導電性接着剤のみで構成されてもよいし、透明導電膜31の接続部31bの上に設けられる端子(図示せず)と端子の上に設けられる導電性接着剤とで構成されてもよい。
【0053】
導電性接着剤は、導電性を有する接着剤であればいかなるものであってもよく、例えば銀、銅、金、ニッケル、パラジウム、白金、アルミなどの金属粉と有機系や無機系のバインダーとを含む接着剤で構成される。有機系のバインダーとしては、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられ、無機系のバインダーとしては、例えば低融点ガラスなどが挙げられる。低融点ガラスとしては、例えば150〜550℃の軟化点を有するものを用いることができる。また端子は、例えば銀、銅などで構成される。
【0054】
(絶縁部材)
絶縁部材80は、絶縁性を有する材料であればよく、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの各種変性ポリオレフィン樹脂、紫外線硬化樹脂、ビニルアルコール重合体などの有機物のほか、低融点ガラスなどの無機絶縁材料が挙げられる。ここで、低融点ガラスとしては、例えば150〜550℃の軟化点を有するものを用いることができる。
【0055】
絶縁部材80は、封止部50と同一の熱膨張係数を有する材料で構成されていることが好ましい。この場合、絶縁部材80と封止部50とが同一の熱膨張係数を有する材料で構成されているため、絶縁部材80および封止部50は、温度が変化しても同様の伸縮挙動を示す。このため、絶縁部材お70よび封止部50に接続されている対極40は、絶縁部材80および封止部50の挙動に連動した挙動を示す。従って、例えば色素増感太陽電池セル20Aの対極40の接続部40aと、色素増感太陽電池セル20Bの対極40とが直接接触することを十分に抑制することが可能となる。同様に、色素増感太陽電池セル20Bの対極40の接続部40aと、色素増感太陽電池セル20Cの対極40とが直接接触することを十分に抑制することが可能となる。なお、絶縁部材80を封止部50と同一の熱膨張係数を有する材料で構成するには、例えば絶縁部材80を封止部50と同一の材料で構成すればよい。
【0056】
次に、上述した色素増感太陽電池モジュール100の製造方法について説明する。
【0057】
[作用極準備工程]
まず作用極30を準備する。作用極30は、以下のようにして得ることができる。
【0058】
はじめに透明基板10の上に、透明導電膜31を形成するための透明導電層を形成する。透明導電層の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法及びCVD法などが用いられる。続いて、透明導電層をレーザ加工等により、互いに離間する3つの透明導電膜31に分割する。
【0059】
次に、透明導電膜31上に、多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを印刷する。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストは、酸化物半導体粒子のほか、ポリエチレングリコールなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、バーコート法などを用いることができる。
【0060】
次に、多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを焼成して透明導電膜31上に多孔質酸化物半導体層32を形成する。焼成温度は酸化物半導体粒子により異なるが、通常は140〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子により異なるが、通常は1〜5時間である。
【0061】
次に、透明導電膜31上であって、多孔質酸化物半導体層32の周囲に配線部33を形成する。
【0062】
そのためには、まず集電配線34を形成する。集電配線34は、例えば導電ペーストを、スクリーン印刷法などを用いて透明導電膜31上に塗膜し、加熱して焼成することによって得ることができる。このとき、導電ペーストとしては、例えば、金属粒子とポリエチレングルコールなどの増粘剤とを配合したものを用いることができる。
【0063】
次に、集電配線34を配線保護層35で被覆する。こうして透明導電膜31上に配線部33が形成される。こうして透明基板10上に3つの作用極30を形成する。
【0064】
[光増感色素担持工程]
次に、作用極30の多孔質酸化物半導体層32に光増感色素を担持させる。このためには、作用極30を、光増感色素を含有する溶液の中に浸漬させ、光増感色素を多孔質酸化物半導体層32に吸着させるか又は光増感色素を含有する溶液を多孔質酸化物半導体層32に塗布した後、乾燥させることによって光増感色素を多孔質酸化物半導体層32に吸着させればよい。
【0065】
[対極準備工程]
一方、対極40は、以下のようにして得ることができる。
【0066】
すなわちまず3枚の対極基板41を準備する。そして、各対極基板41の上に触媒層42を形成する。触媒層42の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法などが用いられる。これらのうちスパッタ法が膜の均一性の点から好ましい。このとき、対極40は、本体部40aと本体部40aの縁部から突出する接続部40bとを有するように形成する。
【0067】
[接着剤圧着工程]
そして、例えば各作用極30の透明導電膜31の上に、例えば環状の封止部形成材料を配置し、作用極30に溶融圧着させる。このとき、封止部形成材料の一部に凹部51を形成しておく。また各透明導電膜31の一部である接続部31bが凹部51に面するように封止部形成材料を各作用極30の透明導電膜31の上に配置し、溶融圧着させる。続いて、隣り合う作用極30の環状の封止部形成材料同士の間であって、透明導電膜31の接続部31b上に絶縁部材形成材料を配置し、溶融圧着させる。
【0068】
[電解質配置工程]
次に、例えば作用極30上であって封止部形成材料の内側に電解質60を配置する。電解質60は、作用極30上であって環状の封止部形成材料の内側に注入したり、印刷したりすることによって配置することができる。
【0069】
[導電部材形成材料固定工程]
次に、環状の封止部形成材料が形成されている各透明導電膜31のうちの接続部31bの上に、その封止部形成材料との間に絶縁部材形成材料を挟むように導電部材形成材料を配置し、固定させる。
【0070】
次いで、作用極30に対し、対極40を対向させて重ね合わせる。このとき、対極40の接続部40bと、隣りの色素増感太陽電池セルを構成することとなる透明導電膜31の接続部31bとの間に絶縁部材形成材料および導電部材形成材料が配置されるようにする。そして、封止部形成材料、絶縁部材形成材料および導電部材形成材料を加熱溶融させながら加圧する。こうして色素増感太陽電池モジュール100の製造が完了する。このとき、封止部形成材料、絶縁部材形成材料および導電部材形成材料はそれぞれ、封止部50、絶縁部材80および導電部材70となる。この製造方法によれば、導電部材70を加熱溶融して加圧した際に、熱や圧力が高く、例えば色素増感太陽電池セル20Aと色素増感太陽電池セル20Bとを接続する導電部材70が色素増感太陽電池セル20Bに向おうとしても、絶縁部材80があることで、導電部材70が、色素増感太陽電池セル20B側に向かうことを防止できる。同様に、色素増感太陽電池セル20Bと色素増感太陽電池セル20Cとを接続する導電部材70が色素増感太陽電池セル20Cに向おうとしても、絶縁部材80があることで、導電部材70が、色素増感太陽電池セル20C側に向かうことを防止できる。このため、隣り合う色素増感太陽電池セル20の対極40同士が導通することが防止され、短絡の発生を十分に抑制することができる。
【0071】
また上記のように、導電部材70の形成と、封止部50及び絶縁部材80の形成とが同一の工程で行われると、光増感色素や電解質60に対して加熱が行われる回数が1回で済むため、光増感色素や電解質60の熱劣化が十分に抑制される。
【0072】
なお、導電部材70の形成と、封止部50及び絶縁部材80の形成とは別々の工程で行われてもよい。すなわち、導電部材70を形成した後、封止部50及び絶縁部材80の形成が行われてもよいし、逆に、封止部50及び絶縁部材80の形成が行われた後、導電部材70が形成されてもよい。
【0073】
<第2実施形態>
次に、本発明の色素増感太陽電池モジュールの第2実施形態について
図3を参照しながら説明する。
図3は本発明に係る色素増感太陽電池モジュールの第2実施形態を示す断面図である。
【0074】
図3に示すように、本実施形態の色素増感太陽電池モジュール200は、色素増感太陽電池セル20Aにおける対極40の接続部40bと、色素増感太陽電池セル20Bにおける透明導電膜31の接続部31bとを接続する絶縁部材80と、色素増感太陽電池セル20Bにおける封止部50とが結合して一体化されており、且つ、色素増感太陽電池セル20Bにおける対極40の接続部40bと、色素増感太陽電池セル20Cにおける透明導電膜31の接続部31bとを接続する絶縁部材80と、色素増感太陽電池セル20Cにおける封止部50とが結合して一体化されている点で、第1実施形態の色素増感太陽電池モジュール100と相違する。
【0075】
本実施形態の色素増感太陽電池モジュール200によれば、色素増感太陽電池セル20Aにおける対極40の接続部40bと、色素増感太陽電池セル20Bにおける透明導電膜31の接続部31bとを接続する絶縁部材80に対して色素増感太陽電池セル20Bの封止部50側に向かう力が働いたとしても、絶縁部材80と色素増感太陽電池セル20Bの封止部50とが結合して一体化されているため、絶縁部材80が色素増感太陽電池セル20Bの封止部50側に向かって動くことが規制される。このため、絶縁部材80に接続されている色素増感太陽電池セル20Aの対極40が、色素増感太陽電池セル20Bの対極40と接触することがより十分に抑制され、隣り合う2つの色素増感太陽電池セル20A,20B同士間の短絡がより十分に抑制される。同様に、色素増感太陽電池セル20Bにおける対極40の接続部40bと、色素増感太陽電池セル20Cにおける透明導電膜31の接続部31bとを接続する絶縁部材80に対して色素増感太陽電池セル20Cの封止部50側に向かう力が働いたとしても、絶縁部材80と色素増感太陽電池セル20Cの封止部50とが結合して一体化されているため、絶縁部材80が色素増感太陽電池セル20Cの封止部50側に向かって動くことが規制される。このため、絶縁部材80に接続されている色素増感太陽電池セル20Bの対極40が、色素増感太陽電池セル20Cの対極40と接触することがより十分に抑制され、隣り合う2つの色素増感太陽電池セル20B,20C同士間の短絡がより十分に抑制される。
【0076】
なお、本実施形態の色素増感太陽電池モジュール200においては、隣り合う色素増感太陽電池セルの対極40同士の間に隙間が形成されているが、その隙間に絶縁性材料が充填されていることが好ましい。この場合、隣り合う対極40同士間の短絡が絶縁性材料によって確実に防止される。絶縁性材料は、絶縁性を有する材料であればいかなるものでもよく、例えば絶縁部材80と同一の材料で構成することができる。
【0077】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば上記実施形態では、透明導電膜31上に配線部33が形成されているが、配線部33は省略が可能である。
【0078】
また上記実施形態では、色素増感太陽電池モジュールが3つの色素増感太陽電池セルを有する場合を例にして説明したが、色素増感太陽電池セルの数は、複数であればよく、3つに限られるものではない。
【0079】
さらに上記実施形態では、対極40の接続部40bが本体部40aの縁部の一部から隣りの色素増感太陽電池セル側に向かって突出しているが、対極40の接続部40bが本体部40aの縁部の全部から隣りの色素増感太陽電池セル側に向かって突出したものであってもよい。この場合、導電性部材70は対極40の本体部40aの縁部に沿って直線状に配置されてもよく、その場合には、隣りの色素増感太陽電池セル20の封止部50において凹部51は形成されない。このため、絶縁部材80は、導電部材70に沿って直線状に配置されることとなる。
【0080】
さらに上記実施形態では、対極40の接続部40bが本体部40aの縁部の一部から隣りの色素増感太陽電池セル側に向かって突出しているが、対極40の接続部40bは必ずしも隣りの色素増感太陽電池セル側に向かって突出していなくてもよい。例えば対極40の縁部に2つの切り込みを入れて形成される部分を接続部40bとしてもよい。この場合は、例えば
図4に示す色素増感太陽電池モジュール300のように、色素増感太陽電池セル20Aにおける封止部50の色素増感太陽電池セル20B側に凹部51が形成され、その凹部51に隣りの色素増感太陽電池セル20Bの透明導電膜31bの接続部31bが入り込み、色素増感太陽電池セル20Aにおける対極40の接続部40bと導電部材70及び絶縁部材80を介して接続されていてもよい。同様に、色素増感太陽電池セル20Bにおける封止部50の色素増感太陽電池セル20C側に凹部51が形成され、その凹部51に隣りの色素増感太陽電池セル20Cの透明導電膜31bの接続部31bが入り込み、色素増感太陽電池セル20Bにおける対極40の接続部40bと導電部材70及び絶縁部材80を介して接続されていてもよい。この場合でも、色素増感太陽電池モジュール100において、隣り合う色素増感太陽電池セル20の対極40同士間の導通が防止され、短絡の発生が十分に抑制される。