(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
天吊り型の空調機器の側面に取り付けられる取付板と、取付板の上端又は下端から屈曲されて水平に延びる水平取付片並びに該水平取付片の先端を折曲した折曲片とで構成され、
折曲片から水平取付片の中央に至る吊ボルト用の取付用切欠溝が形成され、該取付用切欠溝に吊ボルトを挿通して当該吊ボルトを係止する空調機器用の吊金具に装着される脱落防止具であって、
平行に対向する1対の水平プレートと、
前記1対の水平プレートの一端である第1端部同士を接続する接続部と、
前記1対の水平プレートを、それぞれ前記第1端部と反対側に位置する第2端部から前記第1端部に向かう方向に延びる切欠部によって、二股に分かつことで形成される分岐板部と、
前記分岐板部の少なくとも一つに、上下方向に対向する分岐板部に向かって突出して形成される第1の突出部と、を備え、
前記第1の突出部は、前記第2端部から前記第1端部へ向かう方向に沿って徐々にその突出量を大きくする傾斜を有し、当該傾斜の頂点と上下方向に対向する分岐板部との隙間が、前記吊金具の水平取付片の板厚より小さく形成され、
前記1対の水平プレートは、前記吊金具の取付板と折曲片との間に、前記1対の水平プレートで前記吊金具の水平取付片を挟み込むように挿入し、前記取付用切欠溝の開口部に前記第1の突出部が達することで、係止することを特徴とする脱落防止具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吊下げ型の空調機器に設置され、吊ボルトと固定される吊金具80、280、380、480、580が様々提案され、実用化されている(
図12(a)〜(e))。
図12(a)に示す吊金具80は、空調機器の側面に取り付けられる取付板80dと、取付板80dの上端又は下端から屈曲されて水平に延びる水平取付片80a並びに該水平取付片80aの先端を下向きに折曲した折曲片80bとで構成されており、折曲片80bから水平取付片80aの中央に至る取付用切欠溝80cが形成されている。取付用切欠溝80cの形状は吊ボルト60と空調機器50との位置調整を容易にするために溝奥が溝入口(開口部)に対して両方向に直角に切り取られたT字状に形成されている。
【0005】
図12(b)〜(e)に示す吊金具280、380、480、580も、上述した吊金具80と概略同様の構成を有する。即ち、取付板280d、380d、480d、580dと水平取付片280a、380a、480a、580a並びに折曲片280b、380b、480b、580bとで構成され、取付用切欠溝280c、380c、480c、580cが形成されている。
【0006】
図13に、上述の吊金具80を用いた従来の空調機器天吊り構造150を示す。従来の空調機器天吊り構造150は、吊ボルト60を取付用切欠溝80cに挿入し、上下方向からナット61、62を締結し、ナット61、62によって吊金具80の水平取付片80aを挟持することにより空調機器50を吊ボルト60に固定していた。
図12(b)〜(e)に示す吊金具280、380、480、580を用いた空調機器天吊り構造も、
図12(a)に示す吊金具80を用いた空調機器天吊り構造150と同様に、ナット61、62による締め付け構造を採用している。
【0007】
しかしながら、空調機器50が設置されるのは、天井付近であり、吊ボルト60と吊金具80の固定に用いるナット61、62の締結作業は、作業者が高所にて行う必要がある。即ち、作業がしづらく、施工に困難を要する。このため、水平取付片80aを上下からナット61、62によって挟み付けて確実に固定するという作業が、現場において必ずしもなされない虞があった。
また、作業条件の悪さから、吊ボルト60と吊金具80を固定するナット61、62を締結する際、十分なトルクを加えることが困難であり、しかも、締結後のトルクのチェックが十分に行われないことがあった。
加えて、空調機器50は、モーター等を備え、当該モーター等の振動により、場合によっては、ナット61、62にゆるみが発生する虞があった。
【0008】
吊ボルト60と吊金具80を締結するナット61、62にゆるみが生じていると、建物に大きな地震力が作用し建物全体が大きく揺れ、水平方向及び垂直方向において天井スラブと空調機器との間に大きな相対変位と力が加わった場合において、吊金具80の取付用切欠溝80cから吊ボルト60が外れ、空調機器50が室内に転落する虞があった。
【0009】
本発明は上記した従来の問題点を解消するためになされたものあって、従来提案されている様々な形状を有する吊金具に適用可能であり、しかも、作業性及び作業の信頼性が高く、外れにくい、空調機器天吊り構造を実現するための、脱落防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の脱落防止具は、天吊り型の空調機器の側面に取り付けられる取付板と、取付板の上端又は下端から屈曲されて水平に延びる水平取付片並びに該水平取付片の先端を折曲した折曲片とで構成され、折曲片から水平取付片の中央に至る吊ボルト用の取付用切欠溝が形成され、該取付用切欠溝に吊ボルトを挿通して当該吊ボルトを係止する空調機器用の吊金具に装着される脱落防止具であって、平行に対向する1対の水平プレートと、前記1対の水平プレートの一端である第1端部同士を接続する接続部と、前記1対の水平プレートを、それぞれ前記第1端部と反対側に位置する第2端部から前記第1端部に向かう方向に延びる切欠部によって、二股に分かつことで形成される分岐板部と、前記分岐板部の少なくとも一つに、上下方向に対向する分岐板部に向かって突出して形成される第1の突出部と、を備え、前記第1の突出部は、前記第2端部から前記第1端部へ向かう方向に沿って徐々にその突出量を大きくする傾斜を有し、当該傾斜の頂点と上下方向に対向する分岐板部との隙間が、前記吊金具の水平取付片の板厚より小さく形成され、前記1対の水平プレートは、前記吊金具の取付板と折曲片との間に、前記1対の水平プレートで前記吊金具の水平取付片を挟み込むように挿入し、前記取付用切欠溝の開口部に前記第1の突出部が達することで、係止することを特徴とする。
【0011】
また、前記脱落防止具であって、前記第1の突出部と、上下方向に対向する分岐板部に、前記第1の突出部と対向して突出する第2の突出部を形成し、前記第1の突出部と、前記第2の突出部との最小隙間は、前記吊金具の水平取付片の板厚より小さくされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の脱落防止具を吊金具に装着することで、吊金具の取付用切欠溝の開口部を脱落防止具の分岐板部が閉塞することとなり、脱落防止具が外れない限り、吊ボルトから吊金具が脱落することがない。
また、本発明の脱落防止具は、突出部を有しており、当該突出部の頂点と上下方向に対向する分岐板部との隙間が、前記吊金具の水平取付片の板厚より小さくなるように形成されている。したがって、吊金具の取付用切欠溝の開口部に当該突出部が嵌り込むことにより、脱落防止具が抜け止めされ、脱落防止具はその挿入方向に外れることはない。
【0013】
更に、前記取付板と折曲片との間に、脱落防止具の1対の水平プレートを挿入する構成を有する。したがって、脱落防止具に、水平面内であって脱落防止具の挿入方向と垂直な方向へ力が加わったとしても、水平プレートが前記取付板又は折曲片に当接し、係る方向へ脱落防止具が外れることはない。
【0014】
加えて、前記第1の突出部は、前記第2端部から前記第1端部方向に向かう方向に徐々にその突出量を大きくする傾斜を有する。したがって、脱落防止具は、吊金具に挿入する際、弾性変形し水平プレート間の隙間を開きながら挿入され、前記吊金具の切欠部に前記突出部が達することで、水平プレート間の距離が所定の距離に戻る。即ち、ワンタッチで吊金具に脱落防止具を確実に装着することができ、作業が簡易となるばかりではなく、作業者が、所定の位置に脱落防止具が設置されたことが容易にわかり、作業の信頼性が増す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した一実施形態である脱落防止具について図面を用いて詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0018】
図1に、本発明の第1実施形態である脱落防止具1を適用した空調機器50の天井吊下げ構造を示す。
空調機器50は、例えば、換気装置や冷暖房装置等の室内装置又は屋外装置であり、天井のスラブ(図示略)に取り付けられ、天井から垂下された複数本の吊ボルト60によって天井空間又は天井近くの空間に吊下される。
【0019】
空調機器50の側面には、吊金具80が設けられ、当該吊金具80と吊ボルト60が接続されることにより、空調機器50が保持されている。吊金具80には、本発明の第1実施形態である脱落防止具1が取り付けられ、これによって本発明の種々の効果を得ることができる。
【0020】
なお、以下に説明する第1実施形態、第2実施形態、並びに第3実施形態及びこれらの各変形例に係る天吊り構造において、
図12(a)に示した吊金具80を用いた構成を例示するが、吊金具の種類は、これに限定されるものではない。
【0021】
脱落防止具1は
図2に示す取付手順によって、
図3に示す様に吊金具80に取り付けられ天吊り構造10を構成する。
図2に示す様に、まず、空調機器50の側面に取り付けられた吊金具80の取付用切欠溝80cに、吊ボルト60を挿入した状態で、当該吊金具80の水平取付片80aを挟み込むように脱落防止具1を水平に挿入する。
更に
図3に示す様に、その上下方向から上ナット61及び下ナット62を締結することにより、吊ボルト60と吊金具80を固定する。
【0022】
図4(a)〜(e)に本発明の第1実施形態に係る脱落防止具1を示し、これを基に脱落防止具1の構成を詳しく説明する。
本発明に係る脱落防止具1の材質は、弾性を有する物であれば特に限定されるものではないが、一例として鉄鋼材料などを用いる事ができる。また、アルミニウムなどの金属材料又は樹脂材料からなるものであっても良い。
本明細書においては、脱落防止具1は、鉄鋼材料からなり、所定の板厚T
1の板金材料を板金加工によって形成したものが好ましい。
【0023】
脱落防止具1は、所定の距離C
1で平行に対向する矩形状の第1の水平プレート2及び第2の水平プレート3と、これらの短辺端部である第1端部2b、3bを接続する接続部4とによって略コの字形状を形成している。
【0024】
第1の水平プレート2と第2の水平プレート3との距離C
1(
図4(d)参照)は、吊金具80の水平取付片80aの板厚t
1(
図12(a)参照)より若干大きく形成されているため、第1及び第2の水平プレート2、3で水平取付片80aを挟み込むように挿入することができる。
【0025】
また、第1及び第2の水平プレート2、3のうち一方を他方に対して若干長く形成しても良い(図示略)。この場合においては、第1及び第2の水平プレート2、3のうち若干長く形成された一方を水平取付片80aへ当接させた後に挿入することで、挿入作業が容易となる。
【0026】
また、第1及び第2の水平プレート2、3の短辺の長さB
1(
図4(c)参照)は、吊金具80の取付板80dと折曲片80bとの距離b
1(
図12(a)参照)より若干小さく形成されているため、第1及び第2の水平プレート2、3を取付板80dと折曲片80bとの間に、挿入することができる。
【0027】
第1の水平プレート2は、それぞれ第1端部2bの反対側の端部である第2端部2cから、前記第1端部2b方向に延びる切欠部5によって1対の分岐板部2aを形成する。同様に第2の水平プレート3も、1対の分岐板部3aを形成する。
切欠部5の幅A
1(
図4(c)参照)は、吊ボルト60の径d
1(
図2参照)より大きく形成されているため、吊ボルト60に干渉することなく、吊金具80に脱落防止具1を挿入することができる。
【0028】
第2の水平プレート3の1対の分岐板部3aのうち、一方には、対向する分岐板部2aに向かって突出する突出部(第1の突出部)6が形成される。突出部6は、分岐板部3aの縁部を曲げ加工することによって形成されている。
図中において突出部6は、コーナー部分や角部分は角張っているように記載されているが、通常、コーナー部分や角部分は円弧状に形成されている。
【0029】
図4(e)は、
図4(d)に示す突出部6を拡大して示したものである。突出部6は、第2の水平プレート3の第2端部3cから前記第1端部3b(即ち、接続部4)方向に向かう方向(以下、挿入方向)に沿って徐々にその突出量を大きくする傾斜6bを有し、その頂点6aと上下方向に対向する分岐板部2aは鉛直方向に隙間E
1を有する。
突出部6の先端側に傾斜6bを有することによって、
図12(a)に示す吊金具80に挿入する際に、突出部6が、水平取付片80aにスムーズに乗り上げ、容易に挿入することができる。
【0030】
突出部6の頂点6aと分岐板部2aとの隙間E
1は、吊金具80の水平取付片80aの板厚t
1(
図12(a)参照)よりも狭く構成される。また、突出部6の頂点6aと対向する分岐板部2aは接触していても良い。
突出部6の頂点6aと対向する分岐板部2aの隙間E
1が、吊金具80の水平取付片80aの板厚t
1より小さく形成されることによって、脱落防止具1を吊金具80に挿入後、突出部6が吊金具80の取付用切欠溝80cの開口部に嵌り込み、脱落防止具1が抜け止めされ、脱落防止具1はその挿入方向に外れることがない。
【0031】
突出部6の挿入方向の幅D
1(
図4(c)参照)は、吊金具80の取付用切欠溝80cの開口部の幅a
1(
図12(a)参照)より若干小さく形成される。これにより、突出部6が、吊金具80の取付用切欠溝80cに嵌り、突出部6によって吊金具80の取付用切欠溝80cの開口部に、脱落防止具1が抜け止め係止される。
【0032】
次に、
図2、
図3、
図5を基に、脱落防止具1の取付方法及び、当該脱落防止具1を取り付けた、吊金具80と吊ボルト60による空調機器50の天吊り構造10について詳しく説明する。
まず、
図2に示すように空調機器50を天井スラブの下の所定の高さで水平に保持し、天井スラブから吊下げられた吊ボルト60下端部を空調機器50の側面に取り付けられた吊金具80の取付用切欠溝80cに対してその側方から挿入する。吊ボルト60には所定の間隔をあけて上下にナット61、62を予め螺入しておき、取付用切欠溝80cの挿入は上下のナット61、62間で行う。
【0033】
図2に示す状態で脱落防止具1の第2端部2c、3cを吊ボルト60側に向け、水平取付片80aを、第1の水平プレート2と第2の水平プレート3で挟み込みできる位置に脱落防止具1を水平に向ける。
次いで、脱落防止具1を
図2の矢印X方向に水平に移動させ、吊金具80の取付板80dと折曲片80bとの間に脱落防止具1の第2端部2c、3cを挿入し、分岐板部3aの突出部6を取付用切欠溝80cに嵌り込むまで挿入する。
【0034】
これによって吊金具80の取付用切欠溝80cと、脱落防止具1の切欠部5とが重なり合い、なおかつ分岐板部3aが取付用切欠溝80cの開口部分を閉塞して吊ボルト60の周囲を取り囲む。
【0035】
上述したように、脱落防止具1の突出部6は、第2端部3cから第1端部3bへ向かう方向に沿って徐々にその突出量を大きくする傾斜6bを有する。当該の傾斜6bの作用により、脱落防止具1を水平取付片80aに挿入するに従って、突出部6が水平取付片80aに徐々に乗り上げる。
【0036】
また、挿入前の突出部6の頂点6aと対向する分岐板部2aとの隙間E
1は水平取付片80aの板厚t
1より狭く形成されるが、脱落防止具1は弾性を有する材質からなるため、突出部6が水平取付片80aに乗り上げることによって、突出部6の頂点6aと対向する分岐板部2aが水平取付片80aの板厚t
1だけ離間する。即ち、脱落防止具1は、弾性変形により接続部4を起点に第1及び第2の水平プレート2、3同士が、開いた状態で挿入される。
【0037】
更に、突出部6の頂点6aが取付用切欠溝80cに到達し嵌り込む時、弾性変形により開いた第1及び第2の水平プレート2、3は、平行に対向した状態に戻る。この時、第2の水平プレート3が、水平取付片80aを打ち付け、音が発生する。
この打ち付け音は、挿入作業を行う作業者に音又は振動として伝わり、作業者は、突出部6を取付用切欠溝80cに嵌入したことを容易に判定することができる。即ち、脱落防止具1の挿入不足による取付不備を防止することができる。
【0038】
次に、
図3、
図5に示すように吊金具80に装着された脱落防止具1の上下両側において上下のナット61、62を締結し、ナット61、62によって脱落防止具1を上下から挟持することにより天吊り構造10を構成する。
【0039】
なお、本実施形態において、脱落防止具1は吊金具80に向かって右方から、吊金具80に挿入する取付方法を説明した。しかしながら、反対方向(吊金具80に向かって左方)から挿入し取り付けることもできる(図示略)。その場合においては、脱落防止具1の第2の水平プレート3を上側に(第1の水平プレート2を下側に)することで、突出部6が吊金具80の取付用切欠溝80cの開口部側に向くようにセットする。
したがって、脱落防止具1は、吊金具80に対して左右どちらからでも挿入することが可能であり、作業者が現場における作業性に応じて脱落防止具1の挿入方向を適宜選択することができる。
【0040】
また、上述したように、第1及び第2の水平プレート2、3の短辺の長さB
1(
図4(c)参照)は、吊金具80の取付板80dと折曲片80bとの距離b
1(
図12(a)参照)より若干小さく形成されているので、脱落防止具1を前記取付板80dと折曲片80bとの間に、第1及び第2の水平プレート2、3で水平取付片80aを挟み込むように挿入することができる。また、吊ボルト60が脱落防止具1の分岐板部3aにて閉塞された取付用切欠溝80cの内部に挿通されている
【0041】
したがって、地震時などに作用する振動により空調機器50が揺られて、分岐板部3aに吊ボルト60が衝突して脱落防止具1を前記取付用切欠溝80cの開口側に移動させようとしても、第2の水平プレート3が折曲片80bに当接して脱落防止具1の移動を阻止するため、脱落防止具1が取付用切欠溝80cから外れることはない。
【0042】
更に、突出部6が取付用切欠溝80cの開口部に嵌り込んでおり、なおかつ上下からナット61、62によって挟み込まれているので、脱落防止具1が吊金具80から脱落するようなことがない。
【0043】
本実施形態の脱落防止具1を適用した天吊り構造10は以上の構成を有し、吊ボルト60を挿通した吊金具80に、脱落防止具1を挿入するという容易な取り付けによって、地震の入力時に、空調機器50が大きく揺れても、吊金具80が吊ボルト60から外れることがなく、空調機器50の脱落を防止することができる。したがって、安全な天吊り構造10を実現することができる。
【0044】
なお、本実施形態において、天吊り構造10は、
図3に示すように吊金具80に装着された脱落防止具1の上下両側においてナット61、62を締め脱落防止具1を挟持し、天井の所定高さ位置に空調機器50を吊設する構成を示した。このような構成を有することにより、吊ボルト60と吊金具80は強固に固定される。
【0045】
しかしながら、第1及び第2の水平プレート2、3は、吊金具80の水平取付片80aを挟み込むように保持している。したがって、上ナット61を使わず、下ナット62だけでも、天吊り構造を構成することが可能であり(図示略)、その場合であっても、地震時に、吊金具80が吊ボルト60から外れることがない構造を提供できる。
上ナット61を用いることなく天吊り構造10を構成する場合においては、天井付近の高所にて、上ナット61の締結作業を行う必要がなく、より施工を簡略化することができる。
【0046】
<第2実施形態>
図6(a)〜(e)は、本発明の第2実施形態である脱落防止具11を表し、第1実施形態の脱落防止具1を示す
図4(a)〜(e)に対応する。なお、上述の第1実施形態と同一の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
脱落防止具11は、第1実施形態の脱落防止具1と比較すると、第1の突出部16とこれに対向する第2の突出部17を有する点において異なっている。
【0047】
即ち、脱落防止具11は、分岐板部2aに第1の突出部16を形成し、当該第1の突出部16と上下方向に対向する分岐板部3aに、第1の突出部16と対向して突出する第2の突出部17を有する。
第1の突出部16及び第2の突出部17は、分岐板部2a、3aの縁部を曲げ加工することによって形成されている。
【0048】
図6(e)は、
図6(d)に示す第1の突出部16及び第2の突出部17を拡大して示したものである。
第1の水平プレート2に形成された第1の突出部16は、第2端部2cから第1端部2bへ向かう方向に沿って徐々にその突出量を大きくする傾斜16bを有する。一方、第2の水平プレート3に形成された第2の突出部17は、先端側に傾斜を有しておらず、第2の突出部17において、第1の突出部16に対向する対向面17aは、第2の水平プレート3と平行に形成されている。
【0049】
第1の突出部16の頂点16aと第2の突出部17の対向面17aは、接触していても離間していても良く、離間している場合においては、頂点16aと対向面17aとの隙間E
2は、吊金具80の水平取付片80aの板厚t
1(
図12(a)参照)よりも狭く構成される。
【0050】
本実施形態において、第2の突出部17において第1の突出部16と対向する対向面17aは、第2の水平プレート3と平行に形成されるが、第1の突出部16と同様に、第2端部3cから第1端部3bへ向かう方向に沿って徐々にその突出量を大きくする傾斜を有していても良い。
【0051】
以上の構成を有する第2実施形態の脱落防止具11の取付方法は、第1実施形態の脱落防止具1の取付方法と同じくすることができ、これにより第1実施形態の天吊り構造10が奏する種々の効果と同様の効果を得ることができる。
また、第1及び第2の水平プレート2、3のいずれにも突出部(第1の突出部16、第2の突出部17)を備えることによって、吊金具80の取付用切欠溝80cに、第1の突出部16と第2の突出部17とが上下方向から嵌り係止される構成となる。したがって、吊金具80が脱落防止具11により強固に係止される。
【0052】
<第2実施形態の変形例1>
図7(a)〜(e)は、本発明の第2実施形態の変形例1である脱落防止具12を表し、第2実施形態の脱落防止具11を示す
図6(a)〜(e)に対応する。なお、上述の第2実施形態と同一の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
脱落防止具12の構成は、第2実施形態の脱落防止具11の構成と比較すると、第1の突出部16に代わって第1の突出部26を有し、第2の突出部17に代わって第2の突出部27を有する点において異なっている。
【0053】
図7(a)に示すように、第1の突出部26は、1対の分岐板部2aのうち一方の縁近傍の一部を曲げ加工することによって形成されている。
第2の突出部27は、第1の突出部26と対向する分岐板部3aをプレス加工によって塑性変形させることによって、円形に突出させて形成されている。
【0054】
図7(e)は、
図7(d)に示す第1の突出部26及び第2の突出部27を拡大して示したものである。
第1の水平プレート2に形成された第1の突出部26は、先端側に曲げ加工によって、第2端部2cから第1端部2bへ向かう方向に沿って徐々にその突出量を大きくする傾斜26bを有する。一方、第2の水平プレート3に形成された第2の突出部27は、プレス加工による塑性変形によって、第1の突出部26に対向する側に、頂部27bを形成する。
【0055】
第1の突出部26の頂点26aと第2の突出部27の頂部27bは、接触していても離間していても良く、離間している場合においては、頂点26aと頂部27bとの隙間E
2は、吊金具80の水平取付片80aの板厚t
1(
図12(a)参照)よりも狭く構成される。
【0056】
また、
図7(d)において、第1の突出部26の先端部分(図中右端部分)と、第2の突出部27において第2端部3cに最も近い部分(図中左端部分)との挿入方向に沿う幅D
2は、吊金具80の取付用切欠溝80cの開口部の幅a
1(
図12(a)参照)より小さく形成される。これにより、第1の突出部26及び第2の突出部27が、吊金具80の取付用切欠溝80cに嵌り、第1の突出部26及び第2の突出部27によって吊金具80の取付用切欠溝80cに係止される。
【0057】
以上の構成を有する第2実施形態の変形例1の脱落防止具12は、第2実施形態の脱落防止具11と取付方法を同じくすることができ、第2実施形態の脱落防止具11における種々の効果と同様の効果を得ることができる。
【0058】
<第2実施形態の変形例2>
図8(a)〜(e)は、本発明の第2実施形態の変形例2である脱落防止具13を表し、第2実施形態の脱落防止具11を示す
図6(a)〜(e)に対応する。なお、上述の第2実施形態と同一の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
脱落防止具13の構成は、第2実施形態の脱落防止具11の構成と比較すると、第1の突出部16に代わって第1の突出部36を有し、第2の突出部17に代わって第2の突出部37を有する点において異なっている。
【0059】
図8(a)に示すように、第1の突出部36は、1対の分岐板部2aのうち一方の中央付近の一部を曲げ加工によって、形成されている。
第2の突出部37は、第1の突出部36と対向する分岐板部3aに、第1及び第2の水平プレート2、3と略同厚さの、板材を溶接等の接合技術によって、接合することによって形成されている。また、第2の突出部37は、分岐板部3aを曲げ加工によってその断面を凸形状として形成することもできる。
【0060】
図8(e)は、
図8(d)に示す第1の突出部36及び第2の突出部37を拡大して示したものである。
第1の水平プレート2に形成された第1の突出部36は、曲げ加工によって、第2端部2cから第1端部2bへ向かう方向に沿って徐々にその突出量を大きくする傾斜36bを有する。一方、第2の水平プレート3に形成された第2の突出部37において、第1の突出部36に対向する側に、対向面37bが形成されている。
【0061】
第1の突出部36の頂点36aと第2の突出部37の対向面37bは、接触していても離間していても良く、離間している場合においては、頂点36aと対向面37bとの隙間E
2は、吊金具80の水平取付片80aの板厚t
1(
図12(a)参照)よりも狭く構成される。
【0062】
以上の構成を有する第2実施形態の変形例2の脱落防止具13は、第2実施形態の脱落防止具11と取付方法を同じくすることができ、第2実施形態の脱落防止具11における種々の効果と同様の効果を得ることができる。
【0063】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について
図9〜
図12を基に説明する。
図9は、本発明の第3実施形態としての天吊り構造91を表し、第1実施形態の天吊り構造10を示す
図5に対応する。なお、上述の第1実施形態と同一の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
天吊り構造91は、第1実施形態の天吊り構造10と比較して、脱落防止具1の第1の水平プレート2に吊ボルト装着具30が更に設けられたものである。
【0064】
即ち、吊ボルト装着具30は、コ字状の金属製の装着部本体31の下片31bに、脱落防止具1の第1の水平プレート2を、溶接、ボルト止め又はカシメなどの接続方法により、接続したものである。
【0065】
図10(a)、(b)並びに
図10(a)のA−B−C−D縦断面図である
図11に示す様に、装着部本体31の上片31aには、上片31aの通孔32に装着された上ゴム筒33、上ゴム筒33の直下に設けられた下ゴム筒34、上ゴム筒33と下ゴム筒34をつなぐコイルばね35及び下ゴム筒34の下面に取り付けられた座金38とで構成されている。
【0066】
空調機器50を吊ボルト60に取り付けるにあたっては、床上に置かれた空調機器50に取り付けた吊金具80の水平取付片80aに対して側方から脱落防止具1を挿入する。その後に、
図9に示すようにボルト40とナット41のような締結具とで吊金具80に脱落防止具1を装着する。この状態で空調機器50を天井の所定高さまで持ち上げ、天井から吊るされた吊ボルト60の下端部分を上ゴム筒33から座金38に至る通孔39に挿入し、吊ボルト60の下端をナット42で止める。
【0067】
また、別の取付方法として、天井から吊るされた吊ボルト60に先に吊ボルト装着具30を取り付けておいて、その後、第1実施形態の天吊り構造10の取付方法に従って、空調機器50の吊金具80に脱落防止具1を装着するようにしてもよい。
【0068】
これにより第1実施形態の天吊り構造10が奏する種々の効果と同様の効果を得ることができるのみならず、上ゴム筒33、下ゴム筒34、コイルばね35の作用により、地震による振動を減衰させることができる。
【0069】
以上に、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。