(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1以下の図面は本発明に係る車両用シートリクライニング装置を実施するためのより具体的な形態を示し、特に
図1は全体の概略的な側面図を、
図2は
図1の要部の拡大図を、
図3は
図2の背面図をそれぞれ示している。さらに、
図4は
図2,3での主要部をなすリクライナ5の分解図を示している。
【0016】
図1に示すように、車両用シートリクライニング装置1は、シートクッション3とシートバック4とからなる車両用シート2において、起倒可能なシートバック4の姿勢を調整するために、シートクッション3とシートバック4との連結部に設けられる略偏平円盤状のリクライナ5を主要素として構成され、このリクライナ5がリクライニング機能実現のための関節部またはヒンジ部として機能することになる。
【0017】
より詳しくは、
図1のほか
図2,3に示すように、シートクッション3の骨格となる図示外のシートクッションフレームにロアブラケット6が固定される一方、シートバック4の骨格となる図示外のシートバックフレームにアッパブラケット7が固定されるようになっていて、それらのロアブラケット6とアッパブラケット7との連結部に予めユニット化された略偏平円盤状のリクライナ5が介装される。そして、リクライナ5からはリクライニング操作のための操作レバー8が突出している。なお、シートバック4には、図示しないばね手段により常に前傾方向の付勢力が付与されている。
【0018】
ここで、
図1から明らかなように、後傾姿勢にあるシートバック4の標準的な姿勢位置を設計上の基準位置と捉えてこれをニュートラル位置P1とし、同時にニュートラル位置P1よりもわずかに前傾側でシートバック4がほぼ直立姿勢となる位置を初段ロック位置P2とする。この場合において、先にも述べたように、初段ロック位置P2からシートバック4の最後傾位置(いわゆるフルフラット位置)P3までの範囲では、シートバック4の後傾姿勢位置を任意に調整しつつそのロックが可能であり、この範囲がリクライニング範囲R1となる。また、上記初段ロック位置P2からシートバック4の最前傾位置P4までの範囲では、シートバック4がロックされることなくアンロック状態にあって自由にその前後傾(回動)が可能であり、この範囲がフリー範囲R2となる。そして、フリー範囲R2にあるシートバック4を後傾させた場合に、最初にロックされてシートバック4の姿勢が拘束される位置が先に述べた初段ロック位置P2となる。
【0019】
リクライナ5は、
図4に示すように、ベース部材として機能する略浅皿円盤状のベースプレート9と、このベースプレート9に対して突き合わされるように重合配置されるカバー部材としての略浅皿円盤状のカバープレート10と、それらのベースプレート9とカバープレート10とを相対回転可能に拘束・保持するためのリテーニングリング11と、上記ベースプレート9とカバープレート10との間に介装されるセクタギヤ状の三つのツースプレート12A,12B,12Cと、上記三つのツースプレート12A〜12Cの内周側に配置されるカム部材としての略三角形状のカム14と、このカム14が三つのツースプレート12A,12B,12Cを外側に押す方向にカム14を付勢する付勢手段としての三つの渦巻きばね13と、から構成される。なお、カム14には、後述するように
図1に示した操作レバー8側の回転軸8aがセレーション結合される。
【0020】
図5の(A),(B)は、
図4に示したベースプレート9と渦巻きばね13との配置関係を示す正面図および断面図である。
図4のほか
図5に示すように、ベースプレート9は均一板厚の円板状の素材を例えば高精度プレス成形法にて板厚方向に印圧成形して浅皿状に成形したものであって、その内底面の円周方向三等分位置には一段低いばね収容凹部15を形成してあるとともに、そのばね収容凹部15のほぼ中央部にはいわゆる半抜き方式にてばね受け突起部16を突出形成してある。そして、ばね収容凹部15には渦巻きばね13の内周側の端部13aをばね受け突起部16に係止させるようにしてそれぞれの渦巻きばね13が収容される。
【0021】
また、ベースプレート9における内底面の円周方向の三等分位置には、ばね収容凹部15と干渉しないように、ツースプレート12A〜12Cのための支持突起部17と案内用エンボス部18とを互いに位相をずらすかたちでばね収容凹部15とは逆方向に突出形成してある。
図6の(A),(B)は、ベースプレート9に渦巻きばね13のほか三つのツースプレート12A〜12Cおよびカム14を収容した正面図および断面図を示していて、
図4のほか
図5,6に示すように、ばね収容凹部15に収容される渦巻きばね13と円周方向の同じ位置に一部重なり合うように三つのツースプレート12A〜12Cを収容し、各ツースプレート12A〜12Cに切欠形成された受け凹部19を軸受部として上記支持突起部17に係合させることで、円周方向の三等分位置に配置されたそれぞれのツースプレート12A〜12Cが揺動可能に、すなわち各ツースプレート12A〜12Cはその外歯ギヤ20が上記支持突起部17を支点としてベースプレート9の半径方向に揺動変位可能に支持されることになる。なお、互いに係合することになる上記支持突起部17と受け凹部19は、その機能よりしてベースプレート9の円周方向に対応する両端部分が相対回転可能な円筒面となっている。
【0022】
ここで、先に述べたように三つのツースプレート12A〜12Cはいわゆるセクタ(扇形)状のものであって、各ツースプレート12A〜12Cの外周面には外歯ギヤ20と受け凹部19とが並んで形成してあるとともに、
図4のカバープレート10と対向することになる面にはそれぞれにいわゆる半抜き方式にてガイド突起部21a〜21cのいずれかを突出形成してある。すなわち、ツースプレート12Aには第1の突起部21aを、ツースプレート12Bには第2の突起部21bを、残る一つのツースプレート12Cには第3の突起部21cをそれぞれ突出形成してある。
【0023】
さらに、
図4のほか
図6に示すように、上記三つのツースプレート12A〜12Cの配列中央部にはそれらのツースプレート12A〜12Cの内周側に位置するようにしてカム14が収容される。各ツースプレート12A〜12Cの内周面側には凹部を含む所定プロフィールのドリブン(従動)側となるカム面22をそれぞれに形成してあるとともに、カム14の三箇所の頂部には同様に所定プロフィールのドライブ(駆動)側となるカム面23をそれぞれ形成してある。そして、カム14のドライブ側となるカム面23を各ツースプレート12A〜12Cのドリブン側となるカム面23の凹部にて受容するようになっている。
【0024】
なお、
図4,6に示したカム14の中心には雌セレーション14aが形成されていて、他方、
図1,4に示した操作レバー8側の回転軸8aには雄セレーション8bが形成されていて、これらの雌雄のセレーション結合によってカム14に操作レバー8が一体回転するように連結される。
【0025】
ここで、
図4〜6に示すように、カム14にはその三箇所にいわゆる半抜き方式にてベースプレート9側に向けてばね受け突起部24を突出形成してある。そして、各渦巻きばね13の外周側の端部13bをカム14側のばね受け突起部24に係止させてある。これにより、各渦巻きばね13のばね力が
図4〜6におけるカム14の時計回り方向の力として作用し、結果としてカム14はそれぞれのツースプレート12A〜12Cをベースプレート9の半径方向外側に向けて付勢していることになる。
【0026】
また、
図5,6から明らかなように、隣接する案内用エンボス部18,18同士の間にそれぞれのツースプレート12A〜12Cのいずれかが位置するように配置されていて、各ツースプレート12A〜12Cはその両側の案内用エンボス部18の円弧状案内面18a,18bにより揺動変位可能に支持される。これにより、支持突起部17を支点として揺動変位することになるそれぞれのツースプレート12A〜12Cは、同時にその外周側を案内用エンボス部18によっても案内されて、スムーズな動きができるようになっている。
【0027】
図4に示すカバープレート10はベースプレート9と同様に均一板厚の円板状の素材を板厚方向にプレス成形して浅皿状に成形したものであって、
図4のカバープレート10を反対方向から見た
図7に示すように、その内周壁面には全周にわたって内歯ギヤ25を形成してある。また、カバープレート10の内底面には一段低い環状溝26を凹設するかたちで形成してあり、この環状溝26は内歯ギヤ25よりも内周側に位置するものの内歯ギヤ25と同心状のものとして形成してある。
【0028】
そして、この環状溝26の内周側の小径の壁面を内周壁面26aとし、外周側の大径の壁面を外周壁面26bとした場合に、内周壁面26aには半径方向外側に突出するかたちで、内周壁面26aそれ自体よりも直径の大きな第1のガイド面27と、この第1のガイド面27よりもさらに直径の大きな第2のガイド面28と、を円周方向において直列に形成してある。つまり、環状溝26の内周壁面26aは、円周方向において内周壁面26aそれ自体と第1のガイド面27および第2のガイド面28とに区分されていることになる。
【0029】
他方、環状溝26の外周壁面26bの一部には、半径方向内側に突出するかたちで、外周壁面26bそれ自体よりも直径の小さな第3のガイド面29が形成されていて、この第3のガイド面29は円周方向において第2のガイド面28と一部オーバーラップしている。さらに、環状溝26の外周壁面26bのうちの第3のガイド面29以外の部分には、半径方向外側に向かって間歇的に複数の切欠凹部30を形成してある。
【0030】
そして、
図4に示したベースプレート9とカバープレート10とを突き合わせた状態では、カバープレート10側の内歯ギヤ25に対して三つのツースプレート12A〜12Cの外歯ギヤ20がそれぞれに噛み合い可能に配置されるとともに、各ツースプレート12A〜12Cに突出形成されているガイド突起部21a〜21cをカバープレート10側の環状溝26内に受容するようになっている。
【0031】
図8の(A)は
図4のそれぞれの構成要素からなるリクライナ5をカバープレート10側から見た図として、同図(B)は同図(A)のC−C線に沿った断面を示している。なお、
図9〜
図11は
図8の(B)のD−D線に沿った断面を示している。
【0032】
図4,8に示すように、渦巻きばね13や三つのツースプレート12A〜12Cおよびカム14を収容したベースプレート9に対してカバープレート10を突き合わせた上で、
図4に示したリテーニングリング11に例えばロールフォーミングあるいはカーリングの手法にて塑性加工を施すことで、ベースプレート9とカバープレート10は軸心方向へ互いに離れることが規制されると共に、互い同心状で且つ相対回転可能に結合される。
【0033】
そして、各渦巻きばね13のばね力を受けてカム14が三つのツースプレート12A〜12Cを半径方向外側に押圧していることから、
図8に示すように、それぞれのツースプレート12A〜12Cの外歯ギヤ20はカバープレート10側の内歯ギヤ25に噛み合ってロック状態となっている。つまり、三つの渦巻きばね13は、同じく三つのツースプレート12A〜12Cを、内歯ギヤ25と外歯ギヤ20とが噛み合うロック方向に付勢している付勢手段として機能することになる。
【0034】
また、
図7に示したカバープレート10の環状溝26の内周壁面26aに形成された第1のガイド面27の直径よりも第2のガイド面28の直径の方が大きいことは先に述べた。同様に、環状溝26の外周壁面26bに形成された第3のガイド面29の直径は、第2のガイド面28の直径よりも大きく設定されている。このような第1〜第3のガイド面27,28,29同士の直径の相違に併せて、各ツースプレート12A〜12Cに突出形成された第1〜第3のガイド突起部21a〜21cの半径方向位置も相互に異ならせてある。より詳しくは、
図6,8に示すように、ベースプレート9の中心から第1の突起部21aまでの距離が最も小さく、次いでベースプレート9の中心から第2の突起部21bまでの距離が小さく、ベースプレート9の中心から第3の突起部21cまでの距離が最も大きいものとなるように予め設定してある。
【0035】
そして、
図8の状態において、第1〜第3の突起部21a〜21cはいずれもが環状溝26内に位置しているとともに、第1の突起部21aは第1のガイド面27の円周方向始端部側に近接していて、同様に第2の突起部21bは第2のガイド面28の円周方向始端部側に近接している。さらに、第3の突起部21cは第3のガイド面29の円周方向始端部側に近接している。このように、第1〜第3のガイド突起部21a〜21cは、対応する第1〜第3のガイド面27,28,29に乗り上げ、そして外れるタイミングがほぼ同じとなるように設定されている。
【0036】
ここで、
図2,4のほか
図8の(B)から明らかなように、ベースプレート9の三箇所にばね収容凹部15が印圧成形されていることで、ベースプレート9の背面側にはそれらのばね収容凹部15の形状に応じた外周面が凹凸形状の膨出部31が形成されている。この膨出部31があることによってベースプレート9の背面一般部との間には比較的おおきな段差が生じており、
図8の(B)に示すように膨出部31に対してロアブラケット6側の異形の取付穴32を嵌合させた上で溶接にて固定してある(
図8の(B)に溶接部を符号W1で示す)。
【0037】
同様に、
図7に示すカバープレート10には第3のガイド面29や切欠凹部30を含む環状溝26が印圧成形されていることで、
図8の(B)に示すようにカバープレート10の背面側にはそれらの環状溝26の形状に応じた外周面が凹凸形状の膨出部33が形成されている。この膨出部33があることによってカバープレート10の背面一般部との間には比較的大きな段差が生じており、
図3に示すように膨出部33に対してアッパブラケット7側の異形の取付穴34を嵌合させた上で溶接にて固定してある(
図8の(B)に溶接部を符号W2で示す)。
【0038】
そして、ベースプレート9およびカバープレート10共に上記のような結合構造を採用することで、それぞれのブラケット6,7との結合のための段差部を別途設定する必要がないだけでなく、リクライナ5と双方のブラケット6,7との回り止めも同時に施されて、きわめて好都合となる。
【0039】
なお、ここでは、ロアブラケット6にリクライナ5のベースプレート9が、アッパブラケット7にリクライナ5のカバープレート10がそれぞれ溶接接合される場合の例を示しているが、双方のブラケット6,7に対するベースプレート9とカバープレート10の相対位置関係は上記と逆であっても良い。
【0040】
次に、このように構成されたリクライナ5の作用を
図9以下の図面に基づいて説明する。なお、
図4〜
図8では、リクライナ5の内部構造の理解を容易にするためにカバープレート10側からベースプレート9を見た図としてあるのに対して、
図9〜
図11では、リクライナ5の動きに主眼をおいてベースプレート9側からカバープレート10を見た図としてある。
【0041】
図9はリクライナ5が
図1のニュートラル位置P1にある状態を示している。同図に示す状態では、
図1〜3のロアブラケット6に固定されたベースプレート9が固定側となり、アッパブラケット7に固定されたカバープレート10が可動側となっていて、三つのツースプレート12A〜12Cの中央部に配置されたカム14の先端のトライブ側のカム面23は、それぞれのツースプレート12A〜12Cのドリブン側のカム面22のうち揺動支点として機能する支持突起部17よりも
図9の反時計回り方向側の部位に当接している。また、第1〜第3のガイド突起部21a〜21cはそれぞれにカバープレート10側の環状溝26内に納まっているものの、対応する第1〜第3のガイド面27〜29に乗り上げていない状態にある。この状態では、第1〜第3のガイド突起部21a〜21cは、内周壁面26a、第1のガイド面27,外周壁面26bとそれぞれ円周方向で重なる位置にあり、半径方向に隙間を有して対向している。
【0042】
そのため、それぞれのツースプレート12A〜12Cは支持突起部17を支点としてベースプレート9の半径方向外側にカム14によって押圧され、各ツースプレート12A〜12C側の外歯ギヤ20はカバープレート10側の内歯ギヤ25に噛み合うことができる。これより、内歯ギヤ25が形成されているカバープレート10は同図に示す位置に拘束されて実質的にロック状態にあり、結果として
図1のシートバック4はニュートラル位置P1にロックされていることになる。
【0043】
図9の状態において、
図1に示した操作レバー8を時計回り方向に引き上げると、その操作レバー8と一体的に連結されているカム14は
図9の時計回り方向に回動する。このカム14の回動に伴いそのドライブ側のカム面23はそれぞれのツースプレート12A〜12Cのドリブン側のカム面22のうち揺動支点として機能する支持突起部17よりも
図9の時計回り方向側の部位に当接するようになる。そのため、それぞれのツースプレート12A〜12Cは支持突起部17を支点としてべースプレート9の半径方向内側に揺動変位し、それまでの各ツースプレート12A〜12Cの外歯ギヤ20とカバープレート10側の内歯ギヤ25との噛み合いが外れてアンロック状態となる。
【0044】
そして、このアンロック状態(
図1の操作レバー8を引き上げた状態)を維持したままで、シートバック4を前傾または後傾させれば、
図1の初段ロック位置P2および最後傾位置P3を含むリクライニング範囲R1内の任意の位置でそのシートバック4の姿勢位置を変更することができて、操作レバー8の操作力を解除すれば直ちにその任意の位置で先のロック状態に復元することになる。また、上記のようなアンロック状態では、必要に応じて
図1のフリー範囲R2はもちろん、フリー範囲R2の限界位置である最前傾位置P4までもシートバック4を倒すことが可能となる。
【0045】
図10はリクライナ5が
図1のフリー範囲R2のうち任意位置P5にある状態を示している。
【0046】
先に
図9のニュートラル位置P1の状態に基づいて説明したように、
図9の状態から操作レバー8を引き上げ操作して、それぞれのツースプレート12A〜12C側の外歯ギ20とカバープレート10側の内歯ギヤ25との噛み合いに基づくロック状態を解除したアンロック状態において、そのアンロック状態を維持したままシートバック4を前倒しすれば、シートバック4は
図1の任意位置P5を含むフリー範囲R2に位置させることが可能である。
【0047】
すなわち、
図9の状態からアンロック状態とした上でシートバック4を前倒しすれば、そのシートバック4と共にカバープレート10は反時計回り方向に回動することになる。そして、そのカバープレート10に形成された環状溝26の内外周壁面26a,26bに第1〜第3のガイド面27〜29が振り分けて形成されていることから、
図10に示すように、第1のガイド突起部21aが第1のガイド面27に、第2のガイド突起部21bが第2のガイド面28に、第3のガイド突起部21cが第3のガイド面29に、それぞれ乗り上げるかたちとなる。このように、第1〜第3のガイド突起部21a〜21cが第1〜第3のガイド面27〜29に乗り上げると、操作レバー8の操作力を解除したとしても、
図10のようにそれぞれのツースプレート12A〜12C側の外歯ギヤ20とカバープレート10側の内歯ギヤ25との噛み合いが解除されたアンロック状態を自己保持することが可能となる。この状態は、シートバック4が
図1のフリー範囲R2のいずれの位置にあっても同様である。
【0048】
なお、先に述べたように、シートバック4には図示しないばね手段により前倒し方向への付勢力が常時付与されているので、シートバック4がフリー範囲R2にある状態でシートバック4そのものの拘束力を解除すれば、シートバック4は最前傾位置P4まで前傾して、いわゆるシートクッション3と重ね合わされた状態なってその状態を自己保持することになる。そして、本実施の形態では、シートバック4が最前傾位置P4にある状態でも、第1〜第3のガイド突起部21a〜21cが第1〜第3のガイド面27〜29に乗り上げたままとなるように設定されている。
【0049】
その一方、
図10の状態、すなわち
図1のフリー範囲R2内の任意の位置P5からシートバック4を後傾させれば、
図11のような初段ロック状態に移行する。
図10の状態において、シートバック4を後傾させることはカバープレート10が時計回り方向に回動することを意味し、三つのツースプレート12A〜12C側の第1〜第3のガイド突起部21a〜21cがそれぞれに対応する第1〜第3のガイド面27〜29に乗り上げているアンロック状態を維持しながら、それらの第1〜第3のガイド突起部21a〜21cと第1〜第3のガイド面27〜29とが相対回転することになる。
【0050】
そして、
図11に示すように、第1〜第3のガイド突起部21a〜21cが対応する第1〜第3のガイド面27〜29から外れると、その瞬間に三つの渦巻きばね13のばね力でカム14が図中反時計回り方向に回動して、それぞれのツースプレート12A〜12Cがベースプレート9の半径方向外側に揺動変位し、各ツースプレート12A〜12C側の外歯ギヤ20がカバープレート10側の内歯ギヤ25と噛み合ってロック状態となり、その初段ロック位置P2にシートバック4を自己保持することが可能となる。また、
図11の初段ロック状態において、
図1の操作レバー8を引き上げ操作してアンロック状態とすれば、シートバック4を
図1のリクライニング範囲R1の任意の位置まで後傾させることが可能となる。
【0051】
このように本実施の形態によれば、ベースプレート9と突き合わされるカバープレート10に環状溝26が形成されていて、この環状溝26の内周壁面26aに第1,第2のガイド面27,28が、環状溝26の外周壁面26bに第3のガイド面29がそれぞれ形成されていて、実質的に環状溝26の内外周壁面26a,26bの双方に振り分けられるかたちで第1〜第3のガイド面27〜29が形成されていることになる。すなわち、環状溝26の内周壁面26aに形成したガイド面27,28に対応するガイド突起部21a,21bを、ベースプレート9の円周方向において、ツースプレート12A,12Bの揺動支点となる支持突起部17を挟んだ外歯ギヤ20の反対側に形成することで、内周壁面26aを噛み合い規制のためのガイド面として用いることができる。
【0052】
そのため、リクライナ5の軸心方向において、従来のように第1〜第3ガイド面27〜29の位置を異ならせることなく、それらの第1〜第3のガイド面27〜29の位置がリクライナ5の軸心方向において互いに一致していることになる。
【0053】
これにより、カバープレート10の厚みひいてはリクライナ5の厚みを大きくすることなく、リクライナ5本来の機能を具備することができ、リクライナ5の薄型化と軽量化を図ることができる。
【0054】
また、先に
図2,3に基づいて説明したたように、ベースプレート9の背面側の膨出部31に対してロアブラケット6側の異形の取付穴32を嵌合させた上で溶接にて固定してあるとともに、カバープレート10の背面側の膨出部33に対してアッパブラケット7側の異形の取付穴34を嵌合させた上で溶接にて固定してある。この結合構造のために、それぞれのブラケット6,7との結合のための段差部をベースプレート9またはカバープレート10側に別途設定する必要がなく、これによってもリクライナ5の薄型化ひいては小型化に寄与できるとともに、リクライナ5と双方のブラケット6,7との回り止めも同時に施されてきわめて好都合となるほか、ブラケット6または7が装着されることになる図示外のシートクッションフレームまたはシートバックフレームの剛性向上にも寄与できることになる。
【0055】
ここで、上記実施の形態では、環状溝26の内周壁面26aに第1,第2のガイド面27,28を、環状溝26の外周壁面26bに第3のガイド面29をそれぞれ形成した場合について示しているが、これらは一例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。要は、第1〜第3のガイド面27〜29のうちいずれか一つまたは二つが環状溝26の内周壁面26aに、残りのものが環状溝26の外周壁面26bに形成されていれば良い。
【0056】
また、例えば
図9において、第1,第2のガイド突起部21a,21bは対応するツースプレート12A,12Bのうち揺動支点となる支持突起部17を挟んだ外歯ギヤ20の反対側に形成されていて、第3のガイド突起部21cのみ対応するツースプレート12Cのうち揺動支点となる支持突起部17に対して同じ外歯ギヤ20側に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、各ツースプレート12A〜12Cに必要な動きさえ確保されるならば、第1〜第3のガイド突起部21a〜21cの位置は特に限定されるものではない。