特許第5969880号(P5969880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969880
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】中子搬送台車
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/12 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   B29D30/12
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-220312(P2012-220312)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-69559(P2014-69559A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】鬼松 博幸
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−160949(JP,A)
【文献】 特開2002−254529(JP,A)
【文献】 特開2014−69560(JP,A)
【文献】 特開2011−143680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面にタイヤ構成部材を順次貼り付けることにより生タイヤを形成する剛性中子を、軌道上の2つの中子搬送台車間で受け渡し可能に保持しうる中子搬送台車であって、
前記剛性中子は、生タイヤが形成されるトロイド状の中子本体と、この中子本体に取り付きかつ中子軸心とは同心に中子軸心方向両外側に突出する支持軸部とを具え、
前記中子搬送台車は、
前記軌道上を搬送方向に移動可能な搬送台と、
前記搬送台に支持され、かつ垂直な旋回軸心廻りで旋回可能な旋回台と、
前記旋回台に支持され、かつ前記旋回軸心を通る水平なF方向線上を第1位置から第2位置まで水平移動可能な水平移動台と、
前記水平移動台に支持され、かつ前記剛性中子の一方の支持軸部と着脱自在に連結しうる連結部を有する中子支持台とを具えるとともに、
前記第1位置において、前記旋回軸心は、前記連結部により一方の支持軸部が保持された剛性中子の赤道面が前記中子軸心と交わる中子中心点を通り、
しかも前記F方向線が搬送方向と平行となる旋回基準状態かつ前記第2位置において、前記連結部により一方の支持軸部が保持された剛性中子の赤道面は、前記搬送台、旋回台及び水平移動台よりも搬送方向外側に位置することを特徴とする中子搬送台車。
【請求項2】
前記水平移動台は、前記第1位置と第2位置との間を、シリンダによって位置替えしうることを特徴とする請求項1記載の中子搬送台車。
【請求項3】
軌道上で隣り合う2つの中子搬送台車は、それぞれ前記旋回基準状態かつ第2位置において、隣り合う一方の中子搬送台車によって一方の支持軸部が保持された剛性中子の他方の支持軸部を、隣り合う他方の中子搬送台車が保持することにより、前記剛性中子の受け渡しが行われることを特徴とする請求項1又は2記載の中子搬送台車。
【請求項4】
前記支持軸部は、中子軸心方向外端に同心に凹設された連結孔部を具えるとともに、
前記連結部は、前記連結孔部に挿入される連結筒部、及び前記連結孔部と連結筒部との間をロックするボールロック機構を具えることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の中子搬送台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道上の2つの中子搬送台車間で、剛性中子を受け渡し可能に保持しうる中子搬送台車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤの形成精度を高めるため、剛性中子を用いたタイヤ形成方法(以下、「中子工法」と呼ぶ。)が提案されている(例えば特許文献1、2参照。)。前記剛性中子は、加硫済みタイヤのタイヤ内腔面と略等しい外形形状を有し、この剛性中子の外表面上でインナーライナ、カーカスプライ、ベルトプライ、サイドウォールゴム、トレッドゴム等のタイヤ構成部材を順次貼り付けることにより、生タイヤが形成される。又前記生タイヤは、剛性中子ごと加硫金型内に投入され、これにより内型である剛性中子と外型である加硫金型との間に挟まれて、生タイヤが加硫成形される。
【0003】
このように中子工法では、生タイヤの形成開始から加硫終了に至るまで、剛性中子は、タイヤから取り外されることなくタイヤと一体に取り扱われる。そのため中子工法では、従来とは異なる中子工法特有のタイヤ製造ラインが要求される。
【0004】
具体的には、それぞれのタイヤ構成部材を貼り付ける作業ステーションを所定の軌道に沿って配置する。そして中子搬送台車を用いて剛性中子を前記軌道上で移動させ、それぞれの作業ステーションにて、前記剛性中子の外表面に、タイヤ構成部を前記配置の順序で貼り付けて行くのである。
【0005】
しかし前記製造ラインにおいて、中子搬送台車を製造ラインの始端から終端まで移動させる場合には、中子搬送台車の移動距離が非常に長くなる。そのため、中子搬送台車への送電が複雑化してしまうという問題がある。しかも前記軌道全体を、直線状、及び/又は半径が十分大きな円弧状に形成する必要があるとともに、軌道内に、屈曲部、不連続部等の形成ができなくなる。そのため軌道の自由度、ひいては工場設計の自由度に大きな制約を受けるとともに、工場の小型化の妨げとなる。
【0006】
そのため本発明者は、各作業ステーションに、中子搬送台車とタイヤ構成部材の貼付装置とを配し、隣り合う作業ステーションの中子搬送台車間で剛性中子を順次受け渡すことを提案した。これによれば、中子搬送台車の移動範囲が、隣り合う作業ステーション間以下に減じることができ、中子搬送台車への送電を簡略化することが可能となる。又受け渡し位置に、軌道の屈曲部、不連続部等を形成できるため、軌道の自由度や工場設計の自由度を高めるとともに、工場の小型化を図ることが可能となる。
【0007】
しかしそのためには、軌道上の2つの中子搬送台車間で、剛性中子を受け渡し可能に保持しうる新規な構造が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−161896号公報
【特許文献2】特開2011−167979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、剛性中子を、軌道上の2つの中子搬送台車間で受け渡しでき、中子搬送台車の移動距離を減じて送電を簡略化しうるとともに、軌道に屈部、不連続部等の形成が可能となるなど軌道の自由度や工場設計の自由度を高めることができ、又工場の小型化にも貢献しうる中子搬送台車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、外表面にタイヤ構成部材を順次貼り付けることにより生タイヤを形成する剛性中子を、軌道上の2つの中子搬送台車間で受け渡し可能に保持しうる中子搬送台車であって、
前記剛性中子は、生タイヤが形成されるトロイド状の中子本体と、この中子本体に取り付きかつ中子軸心とは同心に中子軸心方向両外側に突出する支持軸部とを具え、
前記中子搬送台車は、
前記軌道上を搬送方向に移動可能な搬送台と、
前記搬送台に支持され、かつ垂直な旋回軸心廻りで旋回可能な旋回台と、
前記旋回台に支持され、かつ前記旋回軸心を通る水平なF方向線上を第1位置から第2位置まで水平移動可能な水平移動台と、
前記水平移動台に支持され、かつ前記剛性中子の一方の支持軸部と着脱自在に連結しうる連結部を有する中子支持台とを具えるとともに、
前記第1位置において、前記旋回軸心は、前記連結部により一方の支持軸部が保持された剛性中子の赤道面が前記中子軸心と交わる中子中心点を通り、
しかも前記F方向線が搬送方向と平行となる旋回基準状態かつ前記第2位置において、前記連結部により一方の支持軸部が保持された剛性中子の赤道面は、前記搬送台、旋回台及び水平移動台よりも搬送方向外側に位置することを特徴としている。
【0011】
また請求項2では、前記水平移動台は、前記第1位置と第2位置との間を、シリンダによって位置替えしうることを特徴としている。
【0012】
また請求項3では、軌道上で隣り合う2つの中子搬送台車は、それぞれ前記旋回基準状態かつ第2位置において、隣り合う一方の中子搬送台車によって一方の支持軸部が保持された剛性中子の他方の支持軸部を、隣り合う他方の中子搬送台車が保持することにより、前記剛性中子の受け渡しが行われることを特徴としている。
【0013】
また請求項4では、前記支持軸部は、中子軸心方向外端に同心に凹設された連結孔部を具えるとともに、
前記連結部は、前記連結孔部に挿入される連結筒部、及び前記連結孔部と連結筒部との間をロックするボールロック機構を具えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の中子搬送台車は、搬送台を具えるため、搬送方向両側で隣り合う中子搬送台車との受け渡し位置まで移動しうる。又中子搬送台車は、旋回台を具えるため、搬送方向一方側で隣り合う中子搬送台車から受け渡された剛性中子を、搬送方向他方側で隣り合う中子搬送台車に向けて向き替えできる。そしてこの向き替えにより、一方側の中子搬送台車から受け渡された剛性中子を、他方側の中子搬送台車に受け渡すことが可能となる。
【0015】
又中子搬送台車は、前記旋回台に支持される水平移動台を具える。この水平移動台は、剛性中子にタイヤ構成部材を貼り付けるための第1位置と、剛性中子を隣の中子搬送台車に受け渡すため第2位置との間を水平移動しうる。
【0016】
ここで、タイヤ構成部材を剛性中子の外表面に貼り付ける場合、剛性中子の外周面とタイヤ構成部材とがタイヤ構成部材の巾中心で接する接触姿勢を保つことが、皺や変形を抑えて貼付け精度を高める上で必要である。この時、剛性中子を、その中子中心点を通る垂直な軸心廻りで旋回させた場合には、タイヤ構成部材側の姿勢を変えることなく、前記接触姿勢を保つことが可能となる。即ち、前記旋回台の旋回軸心が剛性中子の中子中心点を通る第1位置において、タイヤ構成部材の貼り付けを行う場合、前記旋回台の旋回によって、複雑な剛性中子の外周面にもタイヤ構成部材を前記接触姿勢を保ちながら貼り付けすることが可能となる。
【0017】
又第2位置では、保持された剛性中子の赤道面が、搬送台及び水平移動台よりも搬送方向外側に位置する。これにより、隣り合う中子搬送台車間で搬送台同士、、旋回台同士、及び水平移動台同士が衝突を起こすことなく、剛性中子の受け渡しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の中子搬送台車を用いた生タイヤ製造ラインの一実施例を概念的に示す平面図である。
図2】中子搬送台車の正面図である
図3】中子搬送台車の斜視図である。
図4】中子搬送台車の側面図である。
図5】剛性中子の中子搬送台車間での受け渡しを示す側面図である。
図6】剛性中子の分解斜視図である。
図7】支持軸部と連結部との連結構造を示す断面図である。
図8】本発明の製造ラインで形成される生タイヤの断面図である。
図9】(A)はタイヤ構成部材のうちのゴム部材を形成するゴムストリップの斜視図、(B)はコードプライを形成するコードストリップの斜視図、(C)はビードコアを形成するゴム引きのビードワイヤの斜視図である。
図10】(A)、(B)はコードストリップによるカーカスプライの形成方法を示す説明図、(C)、(D)はコードストリップによるベルトプライの形成方法を示す説明図である。
図11】(A)、(B)はタイヤ構成部材の剛性中子との接触姿勢を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1には、本発明の中子搬送台車2を用いた生タイヤ製造ライン1の一実施例が概念的に示される。前記生タイヤ製造ライン1は、中子搬送台車2が通る軌道3と、この軌道3に沿って配置される複数の作業ステーション4とを具える。そして前記軌道3上を移動する剛性中子5の外表面に、それぞれの作業ステーション4にてタイヤ構成部材Tを前記配置の順序で貼り付けることにより、生タイヤ6が形成される。
【0020】
図8に、前記製造ライン1で形成される生タイヤ6の一実施例が示される。この生タイヤ6は、本例では、
(ア)トレッド部6aからサイドウォール部6bへてビード部6cに至るカーカスT1、
(イ)前記カーカスT1の半径方向外側かつ前記トレッド部6aの内部に配されるベルト層T2、
(ウ)前記ベルト層T2のさらに半径方向外側に配されるバンド層T3、
(エ)前記トレッド部6aの外表面をなすトレッドゴムT4、
(オ)前記サイドウォール部6bの外表面をなすサイドウォールゴムT5、
(カ)前記ビード部6cの外表面をなすリムズレ防止用のチェーファゴムT6、
(キ)タイヤ内腔面をなすインナライナゴムT7、
(ク)前記ビード部6cに配され、かつ前記カーカスT1の半径方向内端部を固定するビードコアT8、及び
(ケ)前記ビードコアT8から立ち上がるビード補強用のビードエーペックスゴムT9である複数のタイヤ構成部材Tによって形成される。
【0021】
前記カーカスT1は、タイヤ赤道Cに対して例えば90°の角度で配列するカーカスコードをトッピングゴムで被覆した1枚以上、本例では1枚のカーカスプライT1aから形成される。前記ベルト層T2は、タイヤ赤道Cに対して例えば10〜40°の角度θ(図示しない。)で配列するベルトコードをトッピングゴムで被覆した2枚以上、本例では2枚のベルトプライT2a、T2bから形成される。前記バンド層T3は、タイヤ周方向に配列するバンドコードをトッピングゴムで被覆した1枚以上、本例では1枚のバンドプライT3aから形成される。前記トレッドゴムT4は、半径方向内側のトレッドベースゴムT4aと、半径方向外側のトレッドキャップゴムT4bとから形成される。前記ビードコアT8は、カーカスT1の半径方向内端部をタイヤ軸方向両側から挟んで固定する内外のビードコア部T8a、T8bからなる。前記ビードエーペックスゴムT9は、前記内外のビードコア部T8a、T8bから立ち上がる内外のエーペックスゴム部T9a、T9bから形成される。
【0022】
これらタイヤ構成部材Tのうち、前記トレッドゴムT4、サイドウォールゴムT5、チェーファゴムT6、インナライナゴムT7、ビードエーペックスゴムT9であるゴム部材は、図9(A)に示すように、長尺テープ状のゴムストリップ8を螺旋状に巻回する所謂ストリップワインド法(STW法)にて形成される。前記ゴムストリップ8のゴム組成、及び断面寸法は、タイヤ構成部材T毎に設定される。
【0023】
又前記タイヤ構成部材Tのうち、前記カーカスプライT1a、ベルトプライT2a、T2b、バンドプライT3aであるコードプライは、図9(B)に示すコードストリップ9を用いて形成される。前記コードストリップ9は、長さ方向に引き揃えたタイヤコード9aの配列体をトッピングゴム9bで被覆した長尺テープ状をなす。前記カーカスプライT1aの場合、図10(A)、(B)に示すように、前記コードストリップ9を所定長さで切断した短冊片9Aを、そのタイヤコード9aがタイヤ赤道Cに対して直角となる向きで、タイヤ周方向に順次貼り付けることにより形成される。又ベルトプライT2a、T2bの場合、図10(C)、(D)に示すように、前記コードストリップ9を所定長さで斜めに切断した短冊片9Bを、そのタイヤコード9aがタイヤ赤道Cに対して前記角度θで傾斜する向きで、タイヤ周方向に順次貼り付けることにより形成される。又バンドプライT3aは、前記コードストリップ9を、タイヤ周方向に螺旋状に連続して巻回することにより形成される。なお前記コードストリップ9におけるタイヤコード9aの材質、太さ、コード間距離、及びトッピングゴム9bのゴム組成等は、タイヤ構成部材T毎に設定される。
【0024】
又前記タイヤ構成部材Tのうち、前記内外のビードコア部T8a、T8bは、図9(C)に示すゴム引きのビードワイヤ7を、半径方向内側から外側に渦巻き状に巻回することにより形成される。
【0025】
次に、前記剛性中子5は、図6に示すように、トロイド状の中子本体11と、この中子本体11に取り付きかつ中子軸心5jと同心に中子軸心5j方向両外側に突出する支持軸部16とを具える。
【0026】
具体的には、本例の剛性中子5は、中子本体11と、この中子本体11の中心孔11hに内挿される円筒状のコア12と、前記中子本体11の軸心方向両側に配される一対の側壁体13L、13Uとを具える。前記中子本体11の外表面11sは、加硫済みタイヤのタイヤ内腔面と略等しい外形形状を有し、この外表面11s上に生タイヤ6が形成される。前記中子本体11は、タイヤ周方向に分割された複数のセグメント14から構成される。前記セグメント14は、タイヤ周方向に交互に配置される第1、第2のセグメント14A、14Bからなる。第1のセグメント14Aの周方向両端面は、半径方向内方に向かって周方向巾が漸減する向きに傾斜する。又第2の1セグメント14Bの周方向両端面は、半径方向内方に向かって周方向巾が漸増する向きに傾斜する。
【0027】
前記コア12の外周面、及び前記セグメント14の内周面には、中子軸心方向にのび、かつ互いに係合する蟻溝15a及び蟻ほぞ15bの一方、他方が形成される。これにより、コア12とセグメント14とは、中子軸心方向にのみ相対移動可能に連結される。前記コア12の軸心方向の一方側の端部には、側壁体13Lが固着され、又他方側の端部には、側壁体13Uが着脱自在に取り付く。本例では前記側壁体13Uは、前記コア12の中心孔12hに螺着される。
【0028】
前記側壁体13L、13Uには、前記支持軸部16が突設される。各支持軸部16は、その外端部に同心に凹設される連結孔部17を有するとともに、この連結孔部17の内周面には、周溝17Aが設けられる。この支持軸部16は、中子搬送台車2に設ける連結部42Bと着脱自在に自動連結される。
【0029】
次に、図1に示すように、前記製造ライン1の軌道3は、本例では、コ字状に折れ曲がった屈曲軌道として形成される。具体的には、軌道3は、互いに平行にのびる直線状の横の軌道部3A、3Cと、この横の軌道部3A、3Cの一端部間をのびる直線状の縦の軌道部3Bとから形成される。そして、前記横の軌道部3Aの他端部を始端位置P1とし、軌道部3A→軌道部3B→軌道部3Cを通って、前記横の軌道部3Cの他端部である終端位置P2まで、剛性中子5を案内する。なお前記軌道部3Aと軌道部3Bとの交わり部、及び軌道部3Bと軌道部3Cと交わり部に、屈曲部Qa(不連続部Qbでもある。)が形成される。前記軌道3は、本例では、互いに平行な一対のレール20によって形成される。
【0030】
次に、前記軌道3に沿って配置される複数の作業ステーション4のそれぞれには、前記軌道3上を移動しうる中子搬送台車2と、前記中子搬送台車2に保持された剛性中子5に、タイヤ構成部材Tを貼り付ける貼付装置21とが配される。
【0031】
なお前記貼付装置21としては、
(1)前記ゴムストリップ8を貼り付けることによって前記トレッドゴムT4、サイドウォールゴムT5、チェーファゴムT6、インナライナゴムT7、ビードエーペックスゴムT9を形成するゴムストリップ貼付装置、
(2)前記コードストリップ9から切断された短冊片9Aを貼り付けることによって前記カーカスプライT2aを形成するコードストリップ貼付装置、
(3)前記コードストリップ9から切断された短冊片9Bを貼り付けることによって前記ベルトプライT2a、T2bを形成するコードストリップ貼付装置、
(4)前記コードストリップ9を貼り付けることによって前記バンドプライT3aを形成するコードストリップ貼付装置、
(5)前記ゴム引きのビードワイヤ7を貼り付けることによって前記ビードコア部T8a、T8bを形成するワイヤ貼付装置、
等を挙げることができ、これらは、生タイヤ6を形成する順序で、軌道3に沿って配される。代表としてゴムストリップ貼付装置が図2に例示されるが、各貼付装置21として種々な構造のものが採用しうる。
【0032】
次に、前記中子搬送台車2は、図2〜4に示すように、前記剛性中子5を水平な中子軸心5j廻りで回転可能に保持し、かつ前記軌道3上を移動しうる。又中子搬送台車2は、この中子搬送台車2が属する作業ステーション4の貼付装置21によりタイヤ構成部材Tが貼り付けられた後、保持した剛性中子5を、隣の作業ステーション4に属する中子搬送台車2に受け渡ししうる。即ち、中子搬送台車2は、軌道3上で隣り合う2つの中子搬送台車2、2間で剛性中子5を受け渡し可能に構成される。
【0033】
具体的には、中子搬送台車2は、前記軌道3上を搬送方向に移動可能な搬送台40と、前記搬送台40に支持され旋回台41と、前記旋回台41に支持される水平移動台47と、水平移動台47に支持される中子支持台42とを具える。
【0034】
前記搬送台40は、軌道3をなす一対の前記レール20に案内されて、軌道3上を搬送方向に移動しうる。前記搬送台40の駆動手段43として、本例では搬送台40に取り付くサーボモータM1、及びこのサーボモータM1によって回転制御されるギヤー44Aと、レール20に沿って敷設されかつ前記ギヤー44Aと噛合するラック44Bとを有するギヤラック機構44を具えるものが例示される。しかし、例えば周知のボールネジ機構なども好適に採用しうる。
【0035】
本例では、前記搬送台40の上面に、リング状のガイド部40Aが配される。又前記旋回台41の下面には、前記ガイド部40Aとは軸受け45を介して枢支されるボス部41Aが突設される。これにより前記旋回台41は、ガイド部40Aと同心かつ垂直な旋回軸心J廻りで旋回可能に支持される。前記旋回台41の駆動手段46として、本例では搬送台40に取り付くサーボモータM2が用いられるとともに、その出力軸が前記ボス部41Aに同心に連結される。
【0036】
又前記水平移動台47は、前記旋回台41の上面に敷設されるガイドレール41Bに案内され、前記旋回軸心Jを通る水平なF方向線F1上を、第1位置N1から第2位置N2まで水平移動しうる。前記水平移動台47の駆動手段48として、本例では前記旋回台41上に取り付く例えばロッドレスのシリンダ48Aが用いられる。このシリンダ48Aにより、前記水平移動台47は、前記第1位置N1と第2位置N2との2位置を位置替えしうる。
【0037】
又前記中子支持台42は、前記水平移動台47に立設する支持台本体42Aと、この支持台本体42Aに設けられる連結部42Bとを具える。この連結部42Bは、前記剛性中子5の一方の支持軸部16と着脱自在に連結する。
【0038】
前記連結部42Bは、前記支持台本体42Aに取り付く駆動モータM3により、水平な中子軸心5j廻りで回転駆動される。又連結部42Bは、図7に示すように、剛性中子5の支持軸部16に設ける前記連結孔部17内に挿入される連結筒部57、及び前記連結孔部17と連結筒部57との間をロックするボールロック機構58を具える。
【0039】
前記ボールロック機構58は、剛性ボール60と、ピストン片63と、プランジャ64とを具える。前記剛性ボール60は、前記連結筒部57の周壁に形成される複数の貫通孔59内に保持される。各前記貫通孔59は、周方向に分散配置され、かつ前記周壁を半径方向内外に貫通する。前記ピストン片63は、前記連結部42B内に設けるシリンダ室61内に収納される。そしてピストン片63は、前記シリンダ室61への圧縮空気の給排により、前記シリンダ室61内を軸心方向内外に移動する。又前記プランジャ64は、前記連結筒部57の中心孔57H内に配されるとともに、前記ピストン片63とは一体移動可能に連結される。
【0040】
前記プランジャ64は、前記ピストン片63による軸心方向外側への移動により、各剛性ボール60を半径方向外側に押し出す。これにより各剛性ボール60が周溝17Aに押し付けられ、支持軸部16と連結部42Bとがロックされる。又前記プランジャ64は、ピストン片63による軸心方向内側への移動により、前記剛性ボール60の押し出しが解除される。これにより連結部42Bは、支持軸部16との連結が解除され取り外される。
【0041】
ここで前記第1位置N1は、剛性中子5にタイヤ構成部材Tを貼り付けるための位置であって、第2位置N2は、隣の中子搬送台車2との間で剛性中子5を受け渡すため位置である。
【0042】
図3に示すように、前記第1位置N1では、前記旋回軸心Jは、前記連結部42Bにより保持された剛性中子5の赤道面5Sが前記中子軸心5jと交わる中子中心点5Pを通る。ここで、タイヤ構成部材Tを剛性中子5の外表面に貼り付ける場合、図11に例示されるように、剛性中子5の外周面とタイヤ構成部材Tとがタイヤ構成部材Tの巾中心Tcで接する接触姿勢を保つことが、皺や変形を抑えて貼付け精度を高める上で必要である。この時、剛性中子5を、前記中子中心点5Pを通る垂直な軸心廻りで旋回させた場合には、タイヤ構成部材T側の姿勢を変えることなく、前記接触姿勢を保つことが容易となる。即ち、前記旋回台41の旋回軸心Jが中子中心点5Pを通る第1位置N1において、タイヤ構成部材Tの貼り付けを行う場合、前記旋回台41の旋回によって、複雑な剛性中子5の外周面にもタイヤ構成部材Tを前記接触姿勢を保ちながら貼り付けすることが容易となる。
【0043】
他方、前記第2位置N2では、図5に示すように、前記連結部42Bにより保持された剛性中子5の赤道面5Sは、F方向線F1が搬送方向と平行となる旋回基準状態Rにおいては、前記搬送台40、旋回台41及び水平移動台47よりも搬送方向外側に位置している。従って、水平移動台47が第2位置N2にあり、かつ旋回台41が旋回基準状態Rにある2つの中子搬送台車2、2が近づいてきたとき、搬送台40同士、旋回台41同士、及び水平移動台47同士、互いに衝突させることなく、一方の中子搬送台車2によって一方の支持軸部16が保持された剛性中子5の他方の支持軸部16を、隣り合う他方の中子搬送台車2が保持することができ、これにより剛性中子5の受け渡しが行われる。
【0044】
そして、この中子搬送台車2、2間での剛性中子5の受け渡しにより、中子搬送台車2の移動範囲を、隣り合う作業ステーション4、4間以下に減じることができ、中子搬送台車2への配電を簡略化しうるのである。又受け渡し位置に、軌道の屈曲部Qa、不連続部Qbを形成できるため、軌道3の自由度や工場設計の自由度を高めるとともに、工場の小型化を図ることも可能になる。
【0045】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0046】
2 中子搬送台車
3 軌道
5 剛性中子
5j 中子軸心
5P 中子中心点
6 生タイヤ
11 中子本体
16 支持軸部
17 連結孔部
40 搬送台
41 旋回台
42B 連結部
43 中子支持台
47 水平移動台
48A シリンダ
57 連結筒部
58 ボールロック機構
J 旋回軸心
N1 第1位置
N2 第2位置
R 旋回基準状態
T タイヤ構成部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11