(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記形状特徴抽出手段は、前記加工前形状データから前記加工後形状データを引算することで双方の差分としての加工除去部の形状データを生成し、当該加工除去部の形状データから加工すべき部位の前記形状特徴を立体型の形状特徴として抽出する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の加工データ一貫生成装置。
前記ツーリング決定手段は、干渉が発生しない1又は複数の前記ツーリングの剛性を推定し、最も剛性の高いと推定される前記ツーリングを予め登録されたツーリングテーブルから選定することによって、前記ツーリングを決定し、
前記切削条件決定手段は、前記ツーリング決定手段によって決定された前記ツーリングについて、前記ツーリング決定手段によって推定された前記ツーリングの剛性に基づいて、剛性に見合った高能率な前記切削条件を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の加工データ一貫生成装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の加工データ一貫生成装置1が具備する各手段は、コンピュータに専用のソフトウエアをインストールすることによって実現される。
【0020】
図1は、加工データ一貫生成装置1のハードウエア構成例を示す図である。
図1のハードウエア構成は一例であり、用途、目的に応じて様々な構成を採ることが可能である。
【0021】
加工データ一貫生成装置1は、制御部11、記憶部12、メディア入出力部13、通信制御部14、入力部15、表示部16、周辺機器I/F部17等が、バス18を介して接続される。
【0022】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0023】
CPUは、記憶部12、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス18を介して接続された各装置を駆動制御し、加工データ一貫生成装置1が行う後述する処理を実現する。ROMは、不揮発性メモリであり、加工データ一貫生成装置1のブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部12、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部11が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0024】
記憶部12は、HDD(ハードディスクドライブ)等であり、制御部11が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OS(オペレーティングシステム)に相当する制御プログラムや、後述する処理を加工データ一貫生成装置1に実行させるためのアプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、制御部11により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
【0025】
メディア入出力部13(ドライブ装置)は、データの入出力を行い、例えば、CDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、DVDドライブ(−ROM、−R、−RW等)等のメディア入出力装置を有する。通信制御部14は、通信制御装置、通信ポート等を有し、加工データ一貫生成装置1とネットワーク間の通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワークを介して、他の加工データ一貫生成装置1との通信制御を行う。ネットワークは、有線、無線を問わない。
【0026】
入力部15は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。入力部15を介して、加工データ一貫生成装置1に対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。表示部16は、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携して加工データ一貫生成装置1のビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。尚、入力部15及び表示部16は、タッチパネルディスプレイのように、一体となっていても良い。
【0027】
周辺機器I/F(インタフェース)部17は、加工データ一貫生成装置1に周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部17を介して加工データ一貫生成装置1は周辺機器とのデータの送受信を行う。周辺機器I/F部17は、USBやIEEE1394やRS−232C等で構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。バス18は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0028】
図2A、
図2Bは、加工データ一貫生成装置1のソフトウエア構成の第1例、第2例を示す図である。
図2Aに示すように、例えば、加工データ一貫生成装置1は、加工データ生成手段21、加工工程決定手段22、ツーリング決定手段23、切削条件決定手段24、統合データベース25等を具備する。
図2Aに示す例では、市販の汎用CAMシステムを活用する場合である。市販の汎用CAMシステムを活用しない場合、
図2Bに示すように、加工データ一貫生成装置1は、入力手段211、形状特徴抽出手段213、加工諸元生成手段214、加工工程決定手段22、部分加工データ生成手段215、ツーリング決定手段23、切削条件決定手段24、統合加工データ生成手段216等を具備する。以下では、
図2Aに基づいて、加工データ一貫生成装置1の機能を説明する。
【0029】
統合データベース25は、工法データベース26、設備データベース27等を含む。統合データベース25は、形状特徴の加工諸元に基づいて加工工程を決定するためのルールを定めた一つまたは複数のテーブルを含む。統合データベース25の構成例は、
図3に示す(詳細は後述)。また、加工データ一貫生成装置1は、必要に応じて、市販の汎用CADシステムに相当する製品形状設計手段28や固定治具設定手段29等を具備しても良い。
【0030】
加工データ一貫生成装置1を実現するコンピュータに専用のソフトウエアがインストールされることによって、制御部11が、加工データ生成手段21、加工工程決定手段22、ツーリング決定手段23、切削条件決定手段24、製品形状設計手段28、固定治具設定手段29として機能し、記憶部12や外部記憶装置が、統合データベース25として機能する。
【0031】
例えば、加工データ一貫生成装置1が複数台のコンピュータによって実現される場合を考える。第1のコンピュータの製品形状設計手段28によって設計される製品形状は、製品形状データとして、平面などの一般的な形状加工用の加工データを生成するために、第2のコンピュータの加工データ生成手段21に、第2のコンピュータの入力手段211(例えば、メディア入出力部13、通信制御部14、入力部15、周辺機器I/F部17等)を介して入力される。
【0032】
また、必要に応じて、製品形状は、IGES(Initial Graphics Exchange Specification)やSTEP(Standard for The Exchange of Product model data)などの定められた入出力形式に変換された後、製品形状データとして入力されることもある。
【0033】
また、例えば、加工データ一貫生成装置1が1台のコンピュータによって実現される場合を考える。製品形状設計手段28によって設計される製品形状は、製品形状データとして、RAMや記憶部12に保持されるなどして、加工データ生成手段21に受け渡される。
【0034】
製品形状データが入力された後、又は受け渡された後、加工データ生成手段21には、入力手段211(例えば、メディア入出力部13、通信制御部14、入力部15、周辺機器I/F部17等)を介して、素材の形状諸元及び材質、並びに加工に使用する加工機名が入力される。
【0035】
ここで、素材の形状諸元としては、例えば、ブロック材の場合にはその寸法諸元を、鋳物素材などの場合には製品形状から上積みした厚み量を入力する。また、素材の材質としては、例えば、鋳鉄などの材質名や所定の材質記号を入力する。また、加工機名は、例えば、事前に統合データベース25の加工機テーブルに設定した加工機名のいずれかを入力する。これら素材の形状諸元及び材質、並びに加工機名を入力する入力手段211は、例えば、マウスやキーボードなどの入力部15を用いてユーザが入力する場合や、ファイルに一括して記述し、メディア入出力部13、通信制御部14、入力部15、周辺機器I/F部17等を介して入力する場合がある。また、事前に記憶部12に記憶されている場合もある。
【0036】
まず、加工データ生成手段21は、入力された素材の形状諸元をもとに、素材形状データを生成する。このとき、素材の形状諸元が製品の形状からの厚みとして指定された場合などでは、製品形状データも参照する。また、加工データ生成手段21が素材形状生成手段212を含み、素材形状生成手段212が素材形状データを生成しても良い。また、素材形状データを生成した後、固定治具設定手段29が、素材を加工機のテーブルに固定する固定治具を設定しても良い。固定治具設定手段29は、予め登録されている固定治具の形状と、ユーザが入力部15を用いて入力する設置位置に基づいて固定治具を設定する。
【0037】
次に、加工データ生成手段21は、製品形状の中から、加工すべき部位の個々の形状特徴(以下「フィーチャ」とも言う。)を抽出し(形状特徴抽出手段213による処理)、抽出されたフィーチャごとの加工諸元を生成する。加工データ生成手段21に含まれる形状特徴抽出手段213は、製品形状の中から予め定義しておいた基本フィーチャ(
図4参照)を探索し、フィーチャの種別、形状諸元、基準位置、基準軸方向などを認識し、更にフィーチャを構成する各面の要求面粗度と要求精度(形状精度と寸法精度)を認識することによって、フィーチャを抽出する。
【0038】
ここで、形状特徴抽出手段213は、素材形状生成手段212によって生成された素材の形状データから製品の形状データを引算することで双方の差分としての加工除去部の形状データを生成し、加工除去部の形状データから立体型のフィーチャを抽出しても良い。この場合、抽出された立体型のフィーチャは、加工除去部の形状特徴に位置づけられる。尚、このように抽出された立体型のフィーチャも、以後の処理では、製品形状から抽出されたフィーチャと同様に扱うことができる。
【0039】
次に、加工データ生成手段21は、抽出されたフィーチャ情報から基本フィーチャ(
図4参照)ごとの加工諸元32(
図5参照)を生成し(加工諸元生成手段214による処理)、生成された加工諸元32を加工工程決定手段22に受け渡す。ここで、形状特徴抽出手段213及び加工諸元生成手段214による処理は、個々のフィーチャごとに行われる。
【0040】
次に、加工工程決定手段22は、加工データ生成手段21から取得した個々のフィーチャの加工諸元と素材の材質をもとに、工法データベース26(
図3参照)の工程モードテーブル33(
図6参照)、切削モードテーブル34(
図7参照)、適用工具グループテーブル35(
図8参照)、工具動作モードテーブル36(
図9参照)を順次参照して、フィーチャごとの加工諸元として指示されたフィーチャの要求面粗度や要求精度を満足するフィーチャごとの部分加工工程を
図10に示す処理手順(詳細は後述)によって決定する。加工工程決定手段22によって決定される部分加工工程データ37の一例は
図11に示す(詳細は後述)。決定されたフィーチャごとの部分加工工程データ37は、加工データ生成手段21に受け渡される。ここで、加工工程決定手段22による処理は、個々のフィーチャごとに行われる。
【0041】
次に、加工データ生成手段21は、加工工程決定手段22から取得したフィーチャごとの部分加工工程データ37をもとに、フィーチャを加工するための工具の移動経路を計算し、これにもとづいて個々のフィーチャ加工の部分加工データを生成する(部分加工データ生成手段215による処理)。ここで、部分加工データとは、個々のフィーチャに対応した、そのフィーチャを加工するための部分的な加工データを意味する。生成された個々のフィーチャごとの部分加工データは、素材形状データおよび加工工程決定手段22によって決定されたフィーチャごとの部分加工工程データ37とともに、個々のフィーチャを加工するときの工具とホルダの組合せ形態であるツーリングを決定するツーリング決定手段23に受け渡される。ここで、必要に応じて、加工に使用する加工機名と素材の材質も受け渡される。
【0042】
次に、ツーリング決定手段23は、フィーチャごとの部分加工工程データ37と部分加工データをもとに、素材形状データを用い、設備データベース27(
図3参照)の工具テーブル及びツーリングテーブル、並びに必要に応じて加工機テーブル及び固定治具テーブルを参照して加工シミュレーションを行うことにより、個々のフィーチャの加工において干渉が無く、最も剛性の高いと予測される個々のフィーチャ加工の最適ツーリングを
図12に示す処理手順(詳細は後述)によって決定する。
図13には、最適ツーリングの決定手法の概念図を示す(詳細は後述)。
【0043】
最適ツーリングの決定においては、事前に工具とホルダが組み合わされた状態で固定ツーリングとして登録されたツーリングテーブルから候補を引用して決定する手法の他、設備データベース27(
図3参照)の工具テーブル及びホルダテーブルの双方を用いて、工具とホルダを個別に引用して、工具とホルダの組合せ形態も含めて決定する手法も有効である。後者においては、工具の刃長や突き出し長及び複数のホルダを組み合わせる場合のホルダ突き出し長も決定できる利点がある。
【0044】
ツーリング決定手段23によって決定されたフィーチャごとの最適ツーリングは、加工データ生成手段21に受け渡される。ここで、ツーリング決定手段23による処理は、個々のフィーチャごとに行われる。
【0045】
次に、加工データ生成手段21は、ツーリング決定手段23から取得したフィーチャごとの最適ツーリングを切削条件決定手段24に受け渡し、切削条件決定手段24からツーリング剛性を考慮した個々のフィーチャ加工の最適切削条件を取得する。切削条件決定手段24における最適切削条件決定の処理手順は
図14に示す(詳細は後述)。
【0046】
その後、加工データ生成手段21は、全てのフィーチャを加工するためのアプローチ経路とリトラクト経路、すなわち、先行して加工する加工対象フィーチャから退避し、直後に加工する加工対象フィーチャに到達するまでの工具の移動経路を順次決定し、個々のフィーチャ加工の部分加工データに個々のフィーチャ加工の最適切削条件を付与し、さらに全てのフィーチャを加工するためのアプローチ経路とリトラクト経路に基づいてこれらを統合して、全てのフィーチャを加工するための統合加工データを生成し(統合加工データ生成手段216による処理)、加工工程、最適ツーリング、及び統合加工データを出力手段(例えば、メディア入出力部13、通信制御部14、表示部16、周辺機器I/F部17)を介して出力する。ここで、加工データ生成手段21は、個々のフィーチャについては、段取り状態(加工機にセッティングした状態)において上部のフィーチャから先に加工する等のルールによって、フィーチャ間を接続する加工パスを生成し、統合加工データを生成する。また、加工データ生成手段21は、加工工程、最適ツーリング、及び統合加工データを記憶部12に記憶させるようにしても良い。
【0047】
以上のように、本発明の実施の形態における加工データ一貫生成装置1は、加工データ生成手段21を中核として、加工工程決定手段22、ツーリング決定手段23、切削条件決定手段24及び統合データベース25を有機的に結合することにより、加工工程、ツーリング形態及び切削条件が総合的に吟味された加工データが、人手を介さずに一貫して自動生成できる。加工データ一貫生成装置1の中核となる加工データ生成手段21は、
図15に示すような処理を順次行っていく(詳細は後述)。
【0048】
図3は、統合データベース25の構成例を示す図である。
図3に示すように、統合データベース25は、工法に関する情報を記憶する工法データベース26、設備に関する情報を記憶する設備データベース27を含む。
【0049】
工法データベース26は、工程モードテーブル、適用工具グループテーブル、切削モードテーブル、工具動作モードテーブルなどを含む。工程モードテーブルは、各種条件ごとの工程モードに関する情報を記憶する。適用工具グループテーブルは、使用可能な工具グループに関する情報を記憶する。例えば、「フェースミル」という工具グループには、正面フライスなど何種類かの工具が含まれる。切削モードテーブルは、各種条件ごとの切削モードに関する情報を記憶する。工具動作モードテーブルは、加工動作モードや工具移動モードなどの工具動作モードに関する情報を記憶する。
【0050】
設備データベース27は、加工機テーブル、工具テーブル、固定治具テーブル、ホルダテーブル、切削条件テーブル、ツーリングテーブルなどを含む。加工機テーブルは、使用可能な加工機に関する情報を記憶する。工具テーブルは、使用可能な工具に関する情報を記憶する。固定治具テーブルは、使用可能な固定治具に関する情報を記憶する。切削条件テーブルは、工具回転数や工具送り速度などの切削条件に関する情報を記憶する。ホルダテーブルは、使用可能なホルダに関する情報を記憶する。ツーリングテーブルは、工具テーブルに記憶されている工具と、ホルダテーブルに記憶されているホルダを組み合わせた固定ツーリングに関する情報を記憶する。
【0051】
図4は、基本フィーチャ群31の一例を示す図である。基本フィーチャ群31に含まれるフィーチャ(形状特徴)の大まかな種別には、例えば、平面、円柱面、肩面、サイドノッチ、コーナノッチ、溝、座、ポケット、貫通ポケット等がある。
【0052】
平面には、例えば、矩形平面、円形平面、一般平面、複合平面、面取り等がある。円柱面には、例えば、円柱側面等がある。肩面には、例えば、肩、連続肩等がある。
【0053】
サイドノッチには、例えば、矩形サイドノッチ、円形サイドノッチ、U字サイドノッチ等がある。コーナノッチには、例えば、矩形コーナノッチ、円形コーナノッチ、U字サイドノッチ等がある。
【0054】
溝には、例えば、矩形溝、R付き矩形溝、長円形溝、円形溝、U溝、V溝、直角V溝、T溝、アリ溝等がある。座には、例えば、矩形座、長円形座、円形座、U字座等がある。ポケットには、例えば、矩形ポケット、長円形ポケット、フリーポケット等がある。貫通ポケットには、例えば、矩形貫通ポケット、長円形貫通ポケット、フリー貫通ポケット等がある。
【0055】
図5は、加工諸元32の一例を示す図である。加工諸元32には、段取り状態情報や加工領域情報が含まれる。段取り状態情報は、加工前のセッティングに関する情報である。加工領域情報は、加工すべき領域に関する情報である。
【0056】
段取り状態情報には、例えば、段取りモデルID、STL(Standard Triangulated Langage:三次元形状を表現するデータを保存するファイルフォーマット)ファイル名、素材コード、基準点(X,Y,Z)、サイズ(X,Y,Z)、基準軸ベクトル(I,J,K)、加工領域数等が含まれる。
【0057】
加工領域情報には、例えば、加工領域番号、識別コード、STLファイル名、フィーチャ種別記号、基準点(X,Y,Z)、領域サイズ(X,Y,Z)、Lベクトル(I,J,K)、面状態、素材厚み(削り代)、切削モードシンボル、フィーチャ情報等が含まれる。
【0058】
図5に示す例では、フィーチャ種別記号は、「corner_notch_straight」である。フィーチャ情報とは、このフィーチャ種別記号に対するフィーチャの形状を示す情報である。
【0059】
図6は、工程モードテーブル33の一例を示す図である。工程モードテーブル33は、加工機種別、フィーチャ区分、要求品位クラス、加工代区分、加工進捗区分ごとに、工程モードを記憶する。
【0060】
要求品位クラスは、形状特徴の仕上り状態を示す仕上り情報の一つである。工程モードは、単一の工具のみで加工するのか、又は複数の工具(マルチ工具)で加工するのかといった区分や、全加工、前加工、後加工、前後加工、加工なしといった区分によって特定されるモードである。
【0061】
図7は、切削モードテーブル34の一例を示す図である。切削モードテーブル34は、工程モード、要求品位クラスごとに、工程番号、切削モード、加工品位クラス、残し代等を記憶する。
【0062】
図8は、適用工具グループテーブル35の一例を示す図である。適用工具グループテーブル35は、フィーチャ種別、加工品位クラスごとに、適用工具グループ(第1優先、第2優先、第3優先、・・・)を記憶する。尚、2点鎖線は、右方向や下方向に連続するデータを省略したことを意味する。
【0063】
フィーチャ種別は、
図4にも例示されているように、フィーチャ(形状特徴)の種別を示す情報である。ここで、
図4のフィーチャ種別は、所定の基準座標系におけるフィーチャの種別を示しており、
図8と
図9のフィーチャ種別は、加工座標系におけるフィーチャの種別を示している。加工品位クラスは、例えば粗級加工、中級加工、上級加工、極上級加工、研削加工などであり、加工によって達成すべき(あるいは達成できる)精度と面粗度を総合的に表した指標である。適用工具グループテーブル35には、フィーチャ種別ごとに優先して使用すべき工具グループが記憶されている。適用工具グループテーブル35に記憶されるデータは、加工対象のフィーチャに対して、使用すべき工具グループ(加工工程に関する情報の一つ)を自動的に決定するための参照情報として用いられる。
【0064】
図9は、工具動作モードテーブル36の一例を示す図である。工具動作モードテーブル36は、フィーチャ種別、切削モード、素形材区分ごとに、工具動作モード(加工動作モード及び工具移動モード)を記憶する。尚、2点鎖線は、下方向に連続するデータを省略したことを意味する。
【0065】
工具動作モードテーブル36には、フィーチャ種別ごとに工具動作モードが記憶されている。工具動作モードテーブル36に記憶されるデータは、加工対象のフィーチャに対して、適用すべき工具動作モード(加工工程に関する情報の一つ)を自動的に決定するための参照情報として用いられる。
【0066】
図10は、加工工程決定手段22の処理の詳細を示すフローチャートである。
図10に示すように、まず、制御部11(加工工程決定手段22)は、形状特徴の加工諸元と素材の材質を入力する(S101)。次に、制御部11(加工工程決定手段22)は、形状特徴の加工諸元から要求加工品位を認識する(S102)。次に、制御部11(加工工程決定手段22)は、素材の材質にもとづいた工法データベース26の工程モードテーブル33及び切削モードテーブル34を参照して、要求加工品位が満たされる加工工程を決定する(S103)。そして、制御部11(加工工程決定手段22)は、決定された加工工程を、部分加工工程データ37として出力する(S104)。
【0067】
図11は、部分加工工程データ37の一例を示す図である。部分加工工程データ37は、ヘッダ情報や工程情報が含まれる。ヘッダ情報は、対象の部分加工工程に関する基本情報である。工程情報は、対象の部分加工工程に関する詳細情報である。
【0068】
ヘッダ情報には、例えば、段取りモデルID、基準点(X,Y,Z)、基準軸ベクトル(I,J,K)、加工部位の数等が含まれる。工程情報には、例えば、加工部位識別コード、加工部位タイプコード、工程数に加えて、工程ごとの工具情報、加工情報、加工残し、パス情報、切削条件等が含まれる。
【0069】
図12は、ツーリング決定手段23の処理の詳細を示すフローチャートである。尚、
図12に示す処理では、加工シミュレーションの実行部(専用のソフトウエアによって実現される。)を前提としている。加工シミュレーションの実行部については、
図13を参照しながら説明する。
【0070】
図12に示すように、まず、制御部11(ツーリング決定手段23)は、素材の形状、固定治具の形状、部分加工工程データ37、部分加工データ、加工機名を入力する(S201)。
【0071】
次に、制御部11(ツーリング決定手段23)は、素材の形状を加工シミュレーションの実行部にセットし(S202)、固定治具の形状を加工シミュレーションの実行部にセットし(S203)、加工機名にもとづいて設備データベース27の加工機テーブルから加工機データを取得して、加工シミュレーションの実行部にセットし(S204)、加工機名にもとづいて設備データベース27のツーリングテーブルからツーリング候補データを取得して、加工シミュレーションの実行部にセットする(S205)。
【0072】
次に、最初の部分加工工程に対して、制御部11(ツーリング決定手段23)は、部分加工工程データ37から各工程の工具名と部分加工データ名を読み取り、加工シミュレーションの実行部にセットする(S206)。そして、制御部11(ツーリング決定手段23)は、最初の部分加工工程の加工シミュレーションを実行し、適正ツーリング領域(非干渉領域)を生成し(S207)、適正ツーリング領域をもとにツーリング候補データを参照して、各工程の最適ツーリングを決定する(S208)。
【0073】
次に、制御部11(ツーリング決定手段23)は、工程数分、最適ツーリング決定処理を繰り返したか否か確認する(S209)。工程数分繰り返していない場合(S209のNo)、制御部11(ツーリング決定手段23)は、次の部分加工工程に対して、S206から処理を繰り返す。工程数分繰り返した場合(S209のYes)、制御部11(ツーリング決定手段23)は、最適ツーリングのデータを出力する(S210)。
【0074】
図13は、最適ツーリングの決定手法を説明する図である。
図13に示すように、制御部11(加工シミュレーションの実行部)は、初期状態の仮想ツーリング部を刃具の周囲に設定し、部分加工データに基づいて刃具を移動させていき、刃具によってワークを削るとともに、ワークと固定治具によって仮想ツーリング部を削っていく(逆切削)。
図13では、削られた後のワークと仮想ツーリング部の領域に対して模様を付している。そして、制御部11(加工シミュレーションの実行部)は、部分加工データに基づいて最後まで刃具を移動させた後の仮想ツーリング部を、適正ツーリング領域(非干渉領域)として生成する。そして、制御部11(加工シミュレーションの実行部)は、候補のツーリング形状を、仮想ツーリング部の適正ツーリング領域と照合し、適正ツーリング領域に候補のツーリング形状が納まる場合には、干渉がなく、使用可能と判断して、使用可能なツーリングについて剛性を比較し、最も剛性が高いツーリングを最適ツーリングとして提示する。
【0075】
図14は、切削条件決定手段24の処理の詳細を示すフローチャートである。
図14に示すように、まず、制御部11(切削条件決定手段24)は、素材の材質、使用工具、最適ツーリングを入力する(S301)。次に、制御部11(切削条件決定手段24)は、素材の材質と使用工具にもとづいて、設備データベース27の切削条件テーブルから基本切削条件を取得する(S302)。次に、制御部11(切削条件決定手段24)は、最適ツーリングの剛性を推定する(S303)。剛性の推定とは、素材の材質、使用工具、最適ツーリング、及び、基本切削条件に基づいて、使用工具のたわみ量などを計算することである。剛性推定処理は、公知の技術を適用することができる。尚、切削条件決定手段24は、ツーリング決定手段23からツーリング剛性の推定値を取得するようにしても良い。そして、制御部11(切削条件決定手段24)は、最適ツーリングの剛性に応じて、基本切削条件から最適切削条件を決定し(S304)、最適切削条件を出力する(S305)。ここで、前述したように、固定ツーリングとして登録されたツーリングテーブルから最適ツーリングを決定する手法の場合、切削条件決定手段24は、ツーリングの剛性に見合った切削条件が登録されている設備データベース27のツーリング切削条件を、最適ツーリングの切削条件として取得しても良い。
【0076】
図15は、加工データ生成手段21の処理の詳細を示すフローチャートである。
図15では、加工データ生成手段21を主体とし、加工データ一貫生成装置1の全体の処理の流れを示している。以下では、説明の都合上、各手段を処理の主体として記載するが、実際には、制御部11が、各手段として機能し、各ステップの処理を実行する。尚、
図15は、処理手順の一例であり、本発明は、この例に限定されるものではない。
【0077】
図15に示すように、加工データ生成手段21は、加工すべき製品の形状を入力し、別途、素材の形状諸元と材質、ならびに加工に使用する加工機名を、入力手段(例えば、メディア入出力部13、通信制御部14、入力部15、周辺機器I/F部17等)を介して入力する(S401:入力手段211による処理)。
【0078】
次に、加工データ生成手段21は、入力された素材の形状諸元と必要に応じて製品の形状も含めて、これらをもとに加工前の素材の形状を生成し(S402:素材形状生成手段212による処理)、必要に応じて、固定治具設定手段29が、入力された素材の形状に対して素材を加工機に固定するための固定治具の形状を付与し(S403)、製品の形状の中から形状特徴を抽出し(S404:形状特徴抽出手段213による処理)、形状特徴ごとの加工諸元を生成し(S405:加工諸元生成手段214による処理)、生成された形状特徴ごとの加工諸元と素材の材質を加工工程決定手段22に送信する(S406)。
【0079】
ここで、S403において付与された固定治具の形状については、以後の処理においては素材の形状とともに加工前の形状に含まれるものとして扱っても良い。
【0080】
また、製品形状設計手段28が加工前の素材の形状を生成し、加工データ生成手段21への入力情報に加工前の素材の形状が含まれるようにしても良い。この場合、加工データ生成手段21による素材の形状の生成は不要である。
【0081】
加工工程決定手段22は、
図10を参照して説明した通り、形状特徴ごとの部分加工工程を決定し、部分加工工程データ37を加工データ生成手段21に返信する。
【0082】
次に、加工データ生成手段21は、形状特徴ごとの部分加工工程データ37を加工工程決定手段22から取得し(S407)、部分加工工程データ37をもとに対象の形状特徴を加工するための工具経路(工具の移動経路)を計算し(S408)、これにもとづいて個々の形状特徴加工の部分加工データを生成し(S409:部分加工データ生成手段215による処理)、素材の形状、固定治具の形状、加工機名、部分加工工程データ37、生成された個々の形状特徴加工の部分加工データをツーリング決定手段23へ送信する(S410)。
【0083】
ツーリング決定手段23は、
図12及び
図13を参照して説明した通り、形状特徴ごとの最適ツーリングを決定し、加工データ生成手段21に返信する。
【0084】
次に、加工データ生成手段21は、形状特徴ごとの最適ツーリングをツーリング決定手段23から取得し(S411)、ツーリング決定手段23から取得した形状特徴ごとの最適ツーリングを切削条件決定手段24へ送信する(S412)。
【0085】
切削条件決定手段24は、
図14を参照して説明した通り、形状特徴ごとの最適切削条件を決定し、加工データ生成手段21に返信する。
【0086】
次に、加工データ生成手段21は、形状特徴ごとの最適切削条件を切削条件決定手段24から取得し(S413)、全ての形状特徴を加工するためのアプローチ経路とリトラクト経路を決定し(S414)、個々の形状特徴の部分加工データに形状特徴ごとの最適切削条件を付与し、さらに全ての形状特徴を加工するためのアプローチ経路とリトラクト経路にもとづいてこれらを統合して、全ての形状特徴を加工するための統合加工データを生成する(S415:統合加工データ生成手段216による処理)。
【0087】
そして、加工データ生成手段21は、加工工程決定手段22によって決定された形状特徴ごとの部分加工工程データ37、ツーリング決定手段23によって決定された形状特徴ごとの最適ツーリング、及び統合加工データを出力する(S416)。
【0088】
以上の通り、加工データ一貫生成装置1は、加工工程決定、ツーリング決定、切削条件決定の各機能を有機的に結合し、平面などの一般的な形状加工に対して、CADデータを入力データとして加工データを一気通貫で自動的に生成することができる。
【0089】
<本発明の実施の形態における作用>
・CADデータを入力するのみで人手を介さずに加工に必要な加工データが自動生成されることにより、CAMオペレータの作業工数が著しく低減し、対話処理による入力や操作などの人的ミスも防止される。また、人の熟練度に依存しない安定した品質の加工データが生成される。
・加工パスは工具刃形のみで計算し、生成した加工データを使ってツーリングを決定することで、干渉の発生による作業の後戻りが無くなる。
・加工工程決定やツーリング決定が工法テーブル、工具テーブル、ホルダテーブルなどのデータベース情報をもとに実行されるので、一元化された情報にもとづく加工が行われ、標準化が促進する。
・加工ノウハウをデータベースに集約することで、一定品質の現場ノウハウが保存され、かつ継続的に維持されて技術の継承に繋がる。
【0090】
<本発明の実施の形態における効果>
・人的な作業工数が著しく低減され、また安定した品質の加工データが生成される。
・作業の後戻りが無くなり、最適なツーリング決定が一発で完結する。
・加工の標準化や工具の標準化が推進され、治工具などの在庫が減り設備費の削減に繋がる。
・現場ノウハウの保存と継承が推進される。
【0091】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る加工データ一貫生成装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。