特許第5969885号(P5969885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5969885モータ軸と減速装置の入力部材の連結構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969885
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】モータ軸と減速装置の入力部材の連結構造
(51)【国際特許分類】
   F16D 1/05 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   F16D1/05 200
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-224627(P2012-224627)
(22)【出願日】2012年10月9日
(65)【公開番号】特開2014-77472(P2014-77472A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】西部 慎一
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲三
(72)【発明者】
【氏名】西谷 祐一
(72)【発明者】
【氏名】光藤 栄
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−109756(JP,A)
【文献】 特開昭50−100511(JP,A)
【文献】 特開2001−173722(JP,A)
【文献】 実開昭63−132124(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00− 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのモータ軸と減速装置の入力部材とを連結するモータ軸と減速装置の入力部材の連結構造であって、
前記モータ軸が、軸心に対して外周面が傾斜しているテーパ形状の外周部を有し、
前記入力部材が、内周面が軸と平行の中空部を有し、かつ、
前記モータ軸が挿入され該モータ軸の前記テーパ形状の外周部と摩擦締結可能なテーパ形状の内周部と、前記入力部材の中空部に挿入される軸と平行の外周部と、を有する継軸と、
該継軸の外周部と前記入力部材の中空部とを摩擦締結する摩擦締結機構と、を備え
前記摩擦締結機構は、前記継軸と前記入力部材との間に設けられた、くさび形の摩擦締結部材を備え、
前記摩擦締結部材は、その重心が前記入力部材を支持する軸受が配置されている軸方向位置とは異なる軸方向位置に位置するように配置されている
ことを特徴とするモータ軸と減速装置の入力部材の連結構造。
【請求項2】
請求項において、
前記摩擦締結機構は、前記摩擦締結部材を押圧する押圧部材を有し、
該押圧部材が、前記入力部材の反モータ側から前記中空部に挿入されるとともに、ボルトの締め付け力によって前記摩擦締結部材を軸方向に移動させる
ことを特徴とするモータ軸と減速装置の入力部材の連結構造。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記モータ軸の前記テーパ形状の外周部および前記継軸の前記テーパ形状の内周部が、キーによっても連結される
ことを特徴とするモータ軸と減速装置の入力部材の連結構造。
【請求項4】
請求項のいずれかにおいて、
前記入力部材と前記継軸は、前記入力部材の中空部と前記継軸の外周部が当接している部分と、該中空部と外周部の間に隙間が存在している部分とを有し、かつ、
前記摩擦締結部材が、当該隙間に配置されている
ことを特徴とするモータ軸と減速装置の入力部材の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ軸と減速装置の入力部材の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータのモータ軸と減速装置の入力部材とを連結する場合に、入力部材に内周面が軸と平行の中空部を形成して該中空部にモータ軸の先端を挿入し、キーを介して連結する方法が広く採用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−263878号公報(図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1にて開示されているような連結構造では、軸心に対して外周面が傾斜しているテーパ形状のモータ軸と連結する場合には、これに対応したテーパ形状の中空部を有する専用の入力部材が必要となるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであって、モータがテーパ形状のモータ軸を有する場合であっても、内周面が軸と平行の中空部を有する入力部材と連結することのできるモータ軸と減速装置の入力部材の連結構造を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、モータのモータ軸と減速装置の入力部材とを連結するモータ軸と減速装置の入力部材の連結構造であって、前記モータ軸が、軸心に対して外周面が傾斜しているテーパ形状の外周部を有し、前記入力部材が、内周面が軸と平行の中空部を有し、かつ、前記モータ軸が挿入され該モータ軸の前記テーパ形状の外周部と摩擦締結可能なテーパ形状の内周部と、前記入力部材の中空部に挿入される軸と平行の外周部と、を有する継軸と、該継軸の外周部と前記入力部材の中空部とを摩擦締結する摩擦締結機構と、を備え、前記摩擦締結機構は、前記継軸と前記入力部材との間に設けられた、くさび形の摩擦締結部材を備え、前記摩擦締結部材は、その重心が前記入力部材を支持する軸受が配置されている軸方向位置とは異なる軸方向位置に位置するように配置されている構成とすることにより、上記課題を解決したものである。
【0007】
本発明においては、内周にモータ軸のテーパ形状の外周部と摩擦締結可能なテーパ形状の内周部を有すると共に、外周に軸と平行の外周部を有する継軸を用意する。継軸は、モータ軸の外周部に外嵌・摩擦締結されると共に入力部材の中空部に挿入され、該入力部材の中空部と摩擦締結によって連結される。
【0008】
この構成により、モータがテーパ形状のモータ軸を有する場合であっても、内周面が軸と平行の中空部を有する入力部材と連結することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モータがテーパ形状のモータ軸を有する場合であっても、内周面が軸と平行の中空部を有する入力部材と連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の一例に係るモータ軸と減速装置の入力部材の連結構造の要部拡大断面図
図2図1の減速装置の全体断面図
図3】本発明の他の実施形態の一例に係るモータ軸と減速装置の入力部材の連結構造が適用されたモータ(一部)と減速装置の全体断面図
図4図3の連結構造の要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態の一例に係るモータ軸と減速装置の入力部材の連結構造を詳細に説明する。
【0012】
始めに、図1および図2を用いて減速装置G1の動力伝達系の概略構成から説明する。
【0013】
図2を参照して、この減速装置G1は、外歯歯車20が揺動しながら内歯歯車22に内接噛合する偏心揺動型の減速装置である。この減速装置G1は、モータM1のモータ軸50(共に図1参照)と連結されて、該モータ軸50からの動力を受ける入力軸24(減速装置G1の入力部材)を備える。モータ軸50と入力軸24と連結構造については、後に詳述する。
【0014】
入力軸24には偏心体26が一体的に形成されている。入力軸24は内歯歯車22の軸心位置に配置されている。偏心体26の外周は、入力軸24の軸O1に対して所定の偏心量だけ偏心している。偏心体26の外周にはころ28を介して外歯歯車20が組み込まれている。外歯歯車20は、内歯歯車22に内接噛合している。
【0015】
この例では、内歯歯車22はケーシング30と一体化されている。ケーシング30は、ケーシング本体30AとモータM1のモータケーシング31(図1参照)が連結されるサイドカバー30Bとで主に構成されている。なお、サイドカバー30Bには、モータケーシング31を連結するためのタップ穴30B1が形成されている。
【0016】
外歯歯車20の歯数は、内歯歯車22の歯数よりも僅かだけ(この例では1だけ)少ない。ピン状部材32が各外歯歯車20を貫通している。外歯歯車20の軸方向両側には一対の第1、第2キャリヤ34、36がアンギュラ玉軸受38、40を介してケーシング30に回転自在に支持されている。前記ピン状部材32は、この一対の第1、第2キャリヤ34、36のうちの第1キャリヤ34と一体化され、第2キャリヤ36とボルト42を介して連結されている。第1キャリヤ34には、タップ穴34Aを介して図示せぬ被駆動部材が連結される。
【0017】
なお、前記入力軸24は、該一対の第1、第2キャリヤ34、36に第1、第2玉軸受44、46を介して支持されている。
【0018】
この減速装置G1の動力伝達系の作用を簡単に説明しておく。入力軸24が回転すると、該入力軸24と一体化されている偏心体26が回転し、ころ28を介して外歯歯車20が揺動する。この結果、固定状態にある内歯歯車22に対する外歯歯車20の噛合位置が順次ずれて行く現象が発生する。外歯歯車20の歯数は、内歯歯車22の歯数よりも1だけ少ないため、外歯歯車20は入力軸24が1回回転する毎に、一歯分だけ内歯歯車22に対して位相がずれる(自転する)。この自転成分が、ピン状部材32を介して第1、第2キャリヤ34、36に伝達され、該第1キャリヤ34とタップ穴34Aを介して連結されている被駆動部材が駆動される。
【0019】
次に、図1の要部拡大断面図を合わせて参照して、本実施形態に係るモータ軸50と減速装置G1の入力軸24の連結構造について詳細に説明する。
【0020】
本実施形態の一方の連結対象であるモータ軸50は、軸O1に対して外周面が先細りに傾斜している(外径が直線的に小さくなっている)テーパ状外周部50A(テーパ形状の外周部)を有している。また、モータ軸50は、該テーパ状外周部50Aに隣接して先端側に設けられたくびれ部50Bを挟んで、雄ねじ部50Cを有している。
【0021】
本実施形態のもう一方の連結対象である減速装置G1の入力軸24は、軸O1と平行(内径が一定)の内周面で構成された円筒状中空部24Aを有している。この円筒状中空部24Aは、本実施形態においては、段差部24Sを境として、モータM1側の内径D1の小径中空部24A1と、反モータ側の内径D1より大きな内径D2の大径中空部24A2とで構成されている。
【0022】
この実施形態に係る連結構造では、上記構成のモータM1のモータ軸50と、減速装置G1の入力軸24とが、継軸54を介して連結される。
【0023】
継軸54は、モータ軸50が挿入されるテーパ状内周部54Aと、入力軸24の円筒状中空部24Aに挿入される円筒状外周部54Bとを有する。テーパ状内周部54Aは、モータ軸50のテーパ状外周部50Aに対応したテーパ形状の内周面を備えており、モータ軸50が挿入されることにより該モータ軸50のテーパ状外周部50Aと摩擦締結可能である(後述)。一方、継軸54の円筒状外周部54Bは、入力軸24の円筒状中空部24Aに挿入される。円筒状外周部54Bは、該円筒状中空部24Aの前記小径中空部24A1の内径D1と同一の外径d1を有している。したがって、内径D2の前記大径中空部24A2と外径d1の円筒状外周部54Bとの間には、(D2−d1)に相当する隙間δ1が存在している。
【0024】
換言するならば、この実施形態では、小径中空部24A1と円筒状外周部54Bが同一の内径D1および外径d1で当接している部分P1と、入力軸24の円筒状中空部24Aの内径D2が継軸54の円筒状外周部54Bの外径d1よりも大きくて隙間δ1が存在している部分P2とを有していることになる。この隙間δ1に、後述する摩擦締結機構60の第1、第2摩擦締結部材62、64が介在・配置される。
【0025】
継軸54は、六角ナット56によって軸方向モータ側に接近させることが可能である。六角ナット56は、モータ軸50の雄ねじ部50Cに螺合する雌ねじ部56Aと、図示せぬ六角レンチが差し込まれる六角穴部56Bとを有し、継軸54の当接部54Cと当接している。六角レンチを六角穴部56Bに差し込んで、六角ナット56を雄ねじ部50C周りで回転させることにより、継軸54の当接部54Cを介して該継軸54をモータM1側に移動させることができる。これにより、モータ軸50のテーパ状外周部50Aと継軸54のテーパ状内周部54Aが摩擦締結される。
【0026】
この実施形態に係る連結構造は、さらに、継軸54と入力軸24とを摩擦締結する摩擦締結機構60を備えている。具体的には、摩擦締結機構60は、継軸54の円筒状外周部54Bと入力軸24の大径中空部24A2との間に配置されたくさび形の第1、第2摩擦締結部材62、64、および該第1、第2摩擦締結部材62、64を押圧する押圧部材66を備える。
【0027】
第1、第2摩擦締結部材62、64は、それぞれの重心g1、g2が、入力軸24を支持する第2玉軸受46(第1、第2キャリヤ34、36のうち、モータM1側の第2キャリヤ36によって入力軸24を支持している軸受)が配置されている軸方向位置(軸方向範囲)P5とは異なる軸方向位置に位置するように配置されている。すなわち、第1、第2摩擦締結部材62、64は、その重心g1、g2を径方向から見たときに入力軸24を支持する第2玉軸受46と重なっていない。なお、より好ましくは、第1、第2摩擦締結部材62、64の全体が径方向から見て重ならないようにするとよい。
【0028】
第1、第2摩擦締結部材62、64は、互いに摺動可能な傾斜面62A、64Aを有している。第1摩擦締結部材62は、入力軸24の円筒状中空部24Aの段差部24Sに当接し、軸方向モータ側への移動が規制されている。これに対し、第2摩擦締結部材64は、押圧部材66によって軸方向モータ側に移動可能である。
【0029】
押圧部材66は、継軸54の円筒状外周部54Bと入力軸24の大径中空部24A2との間に挿入され第2摩擦締結部材64を押圧する押圧部66Aと、入力軸24の大径中空部24A2と当接している本体部66Bと、入力軸24の端部24Eと対向しているフランジ部66Cとを備える。フランジ部66Cは、ボルト貫通孔66C1を有している。ボルト貫通孔66C1に挿入されたボルト68(図2参照)は、入力軸24の端部24Eに形成されたタップ穴24Fと螺合可能である。該ボルト68をタップ穴24Fに締めこむことにより、押圧部材66を軸方向モータ側に押し込むことができ、第2摩擦締結部材64を軸方向モータ側へ移動させる押圧力を発生させることができる。
【0030】
なお、この実施形態では、モータ軸50のテーパ状外周部50Aおよび継軸54のテーパ状内周部54Aにキー溝50A1、54A1がそれぞれ形成されており、何らかの原因でモータ軸50と継軸54との間の摩擦締結力が失われたときのために、モータ軸50のテーパ状外周部50Aおよび継軸54のテーパ状内周部54Aが、キー70によっても連結状態を維持できるようにしている。
【0031】
次に、本実施形態に係るモータ軸50と減速装置G1の入力軸24の連結構造の作用を説明する。
【0032】
本実施形態において、モータ軸50と入力軸24の連結は以下のようにして行われる。
【0033】
まず、キー70をモータ軸50および継軸54のキー溝50A1、54A1に装着させ得る態様で、継軸54をモータ軸50のテーパ状外周部50Aに外嵌する。そして、図示せぬ六角レンジを六角ナット56の六角穴部56Bに差し込んでモータ軸50の雄ねじ部50Cに螺合させてねじ込み、当接部54Cを介して継軸54をモータM1側に押圧・移動させる。これにより、モータ軸50のテーパ状外周部50Aに継軸54のテーパ状内周部54Aが強く押し付けられ、モータ軸50のテーパ状外周部50Aに継軸54のテーパ状内周部54Aが摩擦締結される。そして、継軸54の締結されたモータ軸50を円筒状中空部24Aに挿入する。
【0034】
ここまでの作業は、モータM1のモータケーシング31を減速装置G1のサイドカバー30Bに固定する前に行ってもよいし、固定した後で行ってもよい。なお、減速装置G1のサイドカバー30Bとモータケーシング31との連結は、減速装置G1のサイドカバー30Bに形成されたタップ穴30B1を利用して行われる。
【0035】
次いで、継軸54の円筒状外周部54Bと入力軸24の大径中空部24A2との間に摩擦締結機構60の第1、第2摩擦締結部材62、64を組み込み、入力軸24の円筒状中空部24Aの反モータ側から摩擦締結機構60の押圧部材66を挿入する。そして、押圧部材66のフランジ部66Cに形成されているボルト貫通孔66C1と、入力軸24の端部24Eに形成されているタップ穴24Fとの円周方向の位置を揃えた後、ボルト68を挿入し(図2参照)、タップ穴24Fにねじ込んでいく。
【0036】
すると、第2摩擦締結部材64が軸方向モータ側に押され、第1摩擦締結部材62の傾斜面62Aに乗り上がるようになる。このため、第1、第2摩擦締結部材62、64を介して継軸54の円筒状外周部54Bと入力軸24の大径中空部24A2との間で強い径方向の押圧力が発生し、継軸54の円筒状外周部54Bと入力軸24の大径中空部24A2とが摩擦締結される。これにより、結果として、継軸54を介してモータ軸50と入力軸24が連結される。
【0037】
すなわち、テーパ状外周部50Aを有するモータ軸50を備えたモータM1を、円筒状中空部24Aを有する入力軸24を備えた減速装置G1と連結することができる。つまり、円柱形状のモータ軸とテーパ形状のモータ軸とに1種類の入力軸24で対応可能となる。また、継軸を複数種類用意することにより、テーパ形状の外周部を有する種々のモータ軸を、円筒状の中空部を有する種々の入力部材と自在に連結することができるようになる。
【0038】
また、この実施形態においては、前記摩擦締結機構60が、継軸54と入力軸24との間に設けられたくさび形の第1、第2摩擦締結部材62、64を備えた構成とされているため、継軸54と入力軸24との間の僅かな隙間δ1を利用して、該継軸54とを入力軸24とを摩擦締結することができ、特に径方向のコンパクト化を実現することができる。
【0039】
また、この第1、第2摩擦締結部材62、64は、それぞれの重心g1、g2が、入力軸24を支持する第2玉軸受46が配置されている軸方向位置P5とは異なる軸方向位置に位置するように配置されているため、摩擦締結機構60によって入力軸24に強い径方向の押圧力が掛かっても、第2玉軸受46の円滑な回転が阻害されることはなく、入力軸24を安定した状態で支持することができる。
【0040】
また、入力軸24と継軸54は、当接している部分と、隙間δ1が存在している部分とを有し、一方、摩擦締結機構60は、この隙間δ1に組み込んだ第1、第2摩擦締結部材62、64を押圧する押圧部材66を有している。そして、この押圧部材66が入力軸24の反モータ側から挿入されると共に、ボルト68の締め付け力によって第1、第2摩擦締結部材62、64を軸方向に押圧する構成を採用している。そのため、第1、第2摩擦締結部材62、64が入力軸24と継軸54との間の極めて狭い隙間δ1に設けられているにも拘わらず、第1、第2摩擦締結部材62、64に対して確実に押圧力を与えることができる。
【0041】
また、モータ軸50のテーパ状外周部50Aおよび継軸54のテーパ状内周部54Aが、摩擦締結に加え、キー70によっても連結されるように構成してあるため、何らかの原因でテーパ状外周部50Aとテーパ状内周部54Aの摩擦締結力が失われた場合であっても、モータ軸50と継軸54の連結状態を維持することができる。但し、本発明の場合、キーによる連結は、必須ではない。
【0042】
次に、図3および図4を参照して、本発明の他の実施形態の一例を説明する。
【0043】
図3は、本発明の他の実施形態の一例に係るモータ軸と減速装置の入力部材の連結構造が適用されたモータM101(一部)と減速装置G101の全体断面図、図4は、当該連結構造の要部拡大断面図である。
【0044】
この実施形態においては、テーパ状外周部150Aを有するモータ軸150を備えたモータM101と、入力部材として軸方向端部に入力ピニオン125が形成された入力軸124を備えた減速装置G101と、を連結する構造に本発明が適用されている。
【0045】
減速装置G101の動力伝達系を簡単に説明すると、入力軸124の回転は、入力ピニオン125を介して複数(この実施形態では3個:1個のみ図示)の偏心体軸歯車127に同時に伝達される。各偏心体軸歯車127には、内歯歯車122の軸心からオフセットされた位置に配置された偏心体軸129がそれぞれ連結されている。偏心体軸129には、偏心体126が一体的に設けられており、ころ128を介して外歯歯車120が組み込まれている。外歯歯車120は、内歯歯車122に内接噛合している。外歯歯車120の外歯の数は、内歯歯車122の内歯の数よりも僅かだけ(この例では1だけ)少ない。
【0046】
各偏心体軸129は、正面合わせで組み込まれたアンギュラローラ軸受131、133を介して第1、第2キャリヤ134、136に支持されている。第1、第2キャリヤ134、136は、背面合わせで組み込まれたアンギュラローラ軸受138、140を介して減速装置G101のケーシング130に支持されている。
【0047】
この減速装置G101では、モータM101のモータ軸150によって入力軸124が駆動されると、入力ピニオン125を介して偏心体軸歯車127が回転し、各偏心体軸歯車127と連結されている偏心体軸129が回転する。その結果、外歯歯車120が揺動回転し、先の実施形態と同様な外歯歯車120と内歯歯車122の相対回転を引き出すことができる。なお、先の実施形態では、ピン状部材32の公転成分を、第1、第2キャリヤ34、36から取り出すようにしていたが、この実施形態では、偏心体軸129の公転成分が、第1、第2キャリヤ134、136から取り出される。
【0048】
ここで、モータ軸150は、軸O101に対して外周面が傾斜しているテーパ状外周部150Aを有している。入力軸124は、軸O101と平行な有底の円筒状中空部124Aを有している。継軸154は、モータ軸150のテーパ状外周部150Aと摩擦締結可能なテーパ状内周部154A(テーパ形状の内周部)と、入力軸124の円筒状中空部124Aに挿入される円筒状外周部154Bを有している。
【0049】
モータ軸150のテーパ状外周部150Aと継軸154のテーパ状内周部154Aは、六角ナット156を用いて摩擦連結される。この摩擦連結の構造は、先の実施形態と同様である。しかし、この実施形態では、継軸154の円筒状外周部154Bと入力軸124の円筒状中空部124Aとを摩擦締結する摩擦締結機構160の構成が、先の実施形態とは異なる。
【0050】
すなわち、この実施形態では、入力軸124の円筒状中空部124Aは、軸の開口端側(モータM101側)に内径D102が大きな大径中空部124A2、軸の中央側(反モータ側)により小さな内径D101を有する小径中空部124A1が形成されている。継軸154の円筒状外周部154Bの外径d101は、小径中空部124A1の内径D101と同一とされ、継軸154の円筒状外周部154Bと入力軸124の大径中空部24A2との間には、D102−d101に相当する隙間δ101が確保されている。
【0051】
換言するならば、この実施形態も、小径中空部124A1と円筒状外周部154Bが同一の内径D101および外径d101で当接している部分P101と、入力軸124の円筒状中空部124Aの内径D102が継軸154の円筒状外周部154Bの外径d101よりも大きくて隙間δ101が存在している部分P102とを有していることになる。そして、この隙間δ101に、摩擦締結機構160の第1、第2摩擦締結部材162、164が配置されている。
【0052】
一方、入力軸124の開口端部側には、フランジ部124Gが形成されている。フランジ部124Gには、ボルト貫通孔124G1が形成されている。また、モータM101側では、加圧フランジ180が図示せぬボルトを介してモータケーシング131に固定されている。加圧フランジ180には、該入力軸124のフランジ部124Gのボルト貫通孔124G1に対応した位置に貫通孔180Aが形成されている。
【0053】
この実施形態においても、入力軸124のフランジ部124Gのボルト貫通孔124G1を介して加圧フランジ180の貫通孔180Aにボルト168をねじ込むことによって入力軸124をモータM101側に引き寄せ、この引き寄せ力によって第1、第2摩擦締結部材162、164を介して継軸154の円筒状外周部154Bと入力軸124の大径中空部124A2との間に強い押圧力を発生させることができる。したがって、この構成によっても、テーパ状外周部150Aを有するモータ軸150を、円筒状中空部124Aを有する入力軸124と連結することができる。
【0054】
その他の構成については、先の実施形態とほぼ同様であるため、同一または同一の機能を有する部材に、図中で先の実施形態と下2桁が同一の符号を付すに止め、重複説明を省略する。
【0055】
上記2つの例からも明らかなように、本発明においては、減速装置の具体的な減速機構の構成については、特に限定されない。また、入力部材も、継軸が挿入される軸と平行の中空部を有するものであれば、その全体的な形状や、偏心体の有無、ピニオンの有無、フランジ部の有無等に関係なく、本発明を適用できる。
【0056】
また、摩擦締結機構の構成も、上記構成に限定されない。例えば、上記実施形態においては、いずれも入力部材の中空部が小径中空部と大径中空部を有し、継軸側が単一外径の円筒状外周部を有していた。しかし、入力部材の中空部の内周と継軸の外周は、上記とは、逆の関係となっていてもよい。要するに、入力部材の中空部と継軸の外周部が当接している部分と、入力部材の中空部と継軸の外周部の間に隙間が存在している部分とを有し、かつ、摩擦締結部材が、該隙間に配置されているような構成ならば具体的構成は特に限定されない。例えば、入力部材が単一内径の中空部を有し、継軸の方が、該入力軸の中空部の内径と同一の大径外周部と入力軸の中空部よりも小さな外径の小径外周部を有するような構成であってもよい。
【0057】
この場合でも、結局、入力部材と継軸は、入力部材の中空部の内径と継軸の外周部の外径が同一であって該中空部と外周部が当接している部分と、入力部材の中空部の内径が継軸の外周部の外径よりも大きくて隙間が存在している部分とを有することになり、この隙間に摩擦締結部材を配置することができる。
【0058】
また、上記実施形態においては、摩擦締結機構は、いずれもくさび形の摩擦締結部材を備える構成とされていたが、本発明に係る摩擦締結機構は、この構成に限定されず、例えば、入力部材が径方向に形成された切り欠きを備え、該入力部材を円周方向に(切り欠きを小さくする方向に)締め付けるタイプの摩擦締結機構とされていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
G1…減速装置
M1…モータ
24…入力軸
24A…円筒状中空部
24A1…小径中空部
24A2…大径中空部
44、46…第1、第2玉軸受
50…モータ軸
50A…テーパ状外周部
50C…雄ねじ部
54…継軸
54A…テーパ状内周部
54B…円筒状外周部
54C…当接部
56…六角ナット
60…摩擦締結機構
62、64…第1、第2摩擦締結部材
66…押圧部材
66C…フランジ部
68…ボルト
図1
図2
図3
図4