(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成形品のスプリングバックを見込んで成形金型の金型形状を生成する際に、成形品の目標形状に応じた金型形状と、前記成形金型を用いてプレス成形した成形品のスプリングバック後形状との対応点を算出する対応点算出システムであって、
前記金型形状に設定された断面位置を取得する断面位置取得手段と、
前記断面位置における評価点を取得する評価点取得手段と、
前記金型形状と前記スプリングバック後形状とを位置合わせする位置合わせ手段と、
前記断面位置取得手段によって取得した前記断面位置の断面ごとに、前記位置合わせ手段によって位置合わせした前記スプリングバック後形状の断面形状を前記金型形状の断面形状にフィッティングさせるフィッティング手段と、
前記断面位置取得手段によって取得した前記断面位置の断面ごとに、前記金型形状の断面形状における評価点から最も近い前記スプリングバック後形状のフィッティング後の断面形状における最近点を算出する最近点算出手段と、
前記最近点算出手段によって算出された前記最近点を前記スプリングバック後形状のフィッティング前の断面形状に戻して、前記金型形状の評価点に対応する前記スプリングバック後形状の対応点として算出する対応点算出手段と、
を有していることを特徴とする対応点算出システム。
成形品のスプリングバックを見込んで成形金型の金型形状を生成する際に、成形品の目標形状に応じた金型形状と、前記成形金型を用いてプレス成形した成形品のスプリングバック後形状との対応点を算出する対応点算出プログラムであって、
コンピュータを、
前記金型形状に設定された断面位置を取得する断面位置取得手段、
前記断面位置における評価点を取得する評価点取得手段、
前記金型形状と前記スプリングバック後形状とを位置合わせする位置合わせ手段、
前記断面位置取得手段によって取得した前記断面位置の断面ごとに、前記位置合わせ手段によって位置合わせした前記スプリングバック後形状の断面形状を前記金型形状の断面形状にフィッティングさせるフィッティング手段、
前記断面位置取得手段によって取得した前記断面位置の断面ごとに、前記金型形状の断面形状における評価点から最も近い前記スプリングバック後形状のフィッティング後の断面形状における最近点を算出する最近点算出手段、及び、
前記最近点算出手段によって算出された前記最近点を前記スプリングバック後形状のフィッティング前の断面形状に戻して、前記金型形状の評価点に対応する前記スプリングバック後形状の対応点として算出する対応点算出手段として機能させる、
ことを特徴とする対応点算出プログラム。
【背景技術】
【0002】
金属板のプレス成形においては、成形品の目標形状に応じた金型形状を有する成形金型を用いてプレス成形しても、プレス成形時に生じた残留応力によってスプリングバックが生じ、成形品を目標形状に成形できない場合がある。これに対し、コンピュータを用いて成形品のスプリングバックを見込んで成形金型の金型形状を生成する手法が知られている。
【0003】
このような手法として、成形品の目標形状に応じた成形金型の金型形状と、この金型形状を有する実際の成形金型を用いてプレス成形した成形品のスプリングバック後形状との形状変化を差分法によって算出し、この形状差分を金型形状に反映するようにしたものが知られている。
【0004】
図17は、従来の形状差分を用いてスプリングバックを見込んで金型形状を生成する方法を説明するための説明図である。
図17では、長手方向に延びる断面ハット状の成形品を成形するための成形金型を示しており、成形品の目標形状に応じた金型形状を実線L101で示し、金型形状L101を有する成形金型を用いてプレス成形した成形品のスプリングバック後形状を金型形状L101に位置合わせして破線L102で示している。
【0005】
図17に示すように、従来の形状差分を用いてスプリングバックを見込んだ金型形状を生成する際には、先ず、成形金型の金型形状L101に設定された評価点P101からの法線と成形品のスプリングバック後形状L102との交点P102を、金型形状L101の評価点P101に対応するスプリングバック後形状L102の対応点P102として算出する。そして、評価点P101から対応点P102への法線ベクトルd101を算出し、法線ベクトルd101にα=−1である係数αを掛けてスプリングバックを見込むための見込みベクトルd’101を算出する。
【0006】
成形金型の金型形状L101全体に設定された多数の評価点について同様に、法線方向に金型形状とスプリングバック後形状の対応点を算出し、かかる対応点に基づいて法線ベクトル及び見込みベクトルを算出し、
図17において二点鎖線で示すスプリングバックを見込んだ見込み金型形状L103を算出する。
【0007】
このように、法線ベクトルを用いて成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点の算出を行うものとして、例えば特許文献1には、成形金型CADモデルの補正基準点に対応する成形金型の測定データの対応点、成形品CADモデルの対応点及び成形品の測定データの対応点を前記補正基準点の法線ベクトルとの交点として算出するようにしたものが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、法線ベクトルを用いて成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点を算出し、この対応点に基づいて見込み金型形状を算出する際に、プレス成形後にスプリングバックが大きくねじれやそりによる変形が大きい場合など、成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点を精度良く算出できず、スプリングバックを見込んだ見込み金型形状を精度良く算出できない場合がある。特に、金属板として、高張力鋼板などを用いる場合、軟鋼板を用いる場合に比してスプリングバックが大きく、このような傾向がより顕著になり得る。
【0010】
図18は、法線ベクトルを用いて算出した成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点を説明するための説明図であり、
図18では、ねじれによる変形が大きい場合について示している。
図18に示すように、成形品の目標形状に応じた成形金型の金型形状L111の評価点P111,P112,P113からそれぞれ法線方向に成形品のスプリングバック後形状L112の対応点Q111,Q112,Q113を算出すると、金型形状L111の評価点P111とP113の間に設定された評価点P112に対応するスプリングバック後形状L112の対応点Q112が、スプリングバック後形状L112の対応点Q111とQ113の間として算出されず、また、金型形状L111の評価点P111に対応するスプリングバック後形状L112の対応点Q111が、スプリングバック後形状L112の下側に突出する突出部115の先端よりも左側に位置すると考えられるところ該先端よりも右側に算出され、金型形状L111とスプリングバック後形状L112との対応点を精度良く算出できない場合がある。
【0011】
図19は、法線ベクトルを用いて算出した成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点を説明するための別の説明図であり、
図19では、長手方向にそりによる変形が大きい場合について示している。
図19に示すように、成形品の目標形状に応じた成形金型の金型形状L121の評価点P121,P122,P123からそれぞれ法線方向に成形品のスプリングバック後形状L122の対応点Q121,Q122,Q123を算出すると、金型形状L121の評価点P121と評価点P123の間に設定された評価点P122に対応するスプリングバック後形状L122の対応点Q122が、スプリングバック後形状L122の対応点Q121とQ123の間として算出されず、また、金型形状L121の評価点P121に対応するスプリングバック後形状L122の対応点Q121が、スプリングバック後形状L122の上側に突出する突出部125に位置すると考えられるところ下側に突出する突出部126上に算出され、金型形状L121とスプリングバック後形状L122の対応点を精度良く算出できない場合がある。
【0012】
このように、成形品のスプリングバックを見込んで成形金型の金型形状を生成する際に、法線方向に成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点を算出すると、成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点を精度良く算出できず、スプリングバックを見込んだ見込み金型形状を精度良く算出できない場合がある。
【0013】
そこで、本発明は、プレス成形後にスプリングバックが大きくねじれやそりによる変形が大きい場合においても、成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点を精度良く算出できる対応点算出システム及びプログラム、並びに、成形品のスプリングバックを見込んだ成形金型の金型形状を精度良く生成できる金型形状生成システム及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0015】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、成形品のスプリングバックを見込んで成形金型の金型形状を生成する際に、成形品の目標形状に応じた金型形状と、前記成形金型を用いてプレス成形した成形品のスプリングバック後形状との対応点を算出する対応点算出システムであって、前記金型形状に設定された断面位置を取得する断面位置取得手段と、前記断面位置における評価点を取得する評価点取得手段と、前記金型形状と前記スプリングバック後形状とを位置合わせする位置合わせ手段と、前記断面位置取得手段によって取得した前記断面位置の断面ごとに、前記位置合わせ手段によって位置合わせした前記スプリングバック後形状の断面形状を前記金型形状の断面形状にフィッティングさせるフィッティング手段と、前記断面位置取得手段によって取得した前記断面位置の断面ごとに、前記金型形状の断面形状における評価点から最も近い前記スプリングバック後形状のフィッティング後の断面形状における最近点を算出する最近点算出手段と、前記最近点算出手段によって算出された前記最近点を前記スプリングバック後形状のフィッティング前の断面形状に戻して、前記金型形状の評価点に対応する前記スプリングバック後形状の対応点として算出する対応点算出手段とを有していることを特徴とする。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、成形品のスプリングバックを見込んで成形金型の金型形状を生成する金型形状生成システムであって、成形品の目標形状に応じた成形金型の金型形状の形状データを取得する金型形状データ取得手段と、前記成形金型を用いてプレス成形した成形品のスプリングバック後形状の形状データを取得する成形品形状データ取得手段と、前記金型形状に設定された断面位置を取得する断面位置取得手段と、前記断面位置における評価点を取得する評価点取得手段と、前記金型形状データ取得手段によって取得した前記金型形状と前記成形品形状データ取得手段によって取得した前記スプリングバック後形状とを位置合わせする位置合わせ手段と、前記断面位置取得手段によって取得した前記断面位置の断面ごとに、前記位置合わせ手段によって位置合わせした前記スプリングバック後形状の断面形状を前記金型形状の断面形状にフィッティングさせるフィッティング手段と、前記断面位置取得手段によって取得した前記断面位置の断面ごとに、前記金型形状の断面形状における評価点から最も近い前記スプリングバック後形状のフィッティング後の断面形状における最近点を算出する最近点算出手段と、前記最近点算出手段によって算出された前記最近点を前記スプリングバック後形状のフィッティング前の断面形状に戻して、前記金型形状の評価点に対応する前記スプリングバック後形状の対応点として算出する対応点算出手段と、前記金型形状の評価点から、前記対応点算出手段によって算出された前記スプリングバック後形状の対応点への変位ベクトルを算出する変位ベクトル算出手段と、前記変位ベクトル算出手段によって算出された前記変位ベクトルにα<0である係数αを掛けて、前記金型形状の評価点における成形品のスプリングバックを見込むための見込みベクトルを算出する見込みベクトル算出手段と、前記成形金型の金型形状の解析モデルに、前記見込みベクトル算出手段によって算出された前記金型形状の評価点における前記見込みベクトルをマッピングし、金型形状の解析モデルに見込みベクトルを強制変位として与えて、有限要素法を用いて金型形状を変形させて、成形品のスプリングバックを見込んだ見込み金型形状を算出する見込み金型形状算出手段とを有していることを特徴とする。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記成形品形状データ取得手段は、成形金型を用いて成形した成形品のスプリングバック後形状を実測した位置データに基づいて作成された形状データを取得することを特徴とする。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記成形品形状データ取得手段は、有限要素法を用いて算出された前記成形品のスプリングバック後形状の形状データを取得することを特徴とする。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、成形品のスプリングバックを見込んで成形金型の金型形状を生成する際に、成形品の目標形状に応じた金型形状と、前記成形金型を用いてプレス成形した成形品のスプリングバック後形状との対応点を算出する対応点算出プログラムであって、コンピュータを、前記金型形状に設定された断面位置を取得する断面位置取得手段、前記断面位置における評価点を取得する評価点取得手段、前記金型形状と前記スプリングバック後形状とを位置合わせする位置合わせ手段、前記断面位置取得手段によって取得した前記断面位置の断面ごとに、前記位置合わせ手段によって位置合わせした前記スプリングバック後形状の断面形状を前記金型形状の断面形状にフィッティングさせるフィッティング手段、前記断面位置取得手段によって取得した前記断面位置の断面ごとに、前記金型形状の断面形状における評価点から最も近い前記スプリングバック後形状のフィッティング後の断面形状における最近点を算出する最近点算出手段、及び、前記最近点算出手段によって算出された前記最近点を前記スプリングバック後形状のフィッティング前の断面形状に戻して、前記金型形状の評価点に対応する前記スプリングバック後形状の対応点として算出する対応点算出手段として機能させることを特徴とする。
【0020】
また、請求項6に記載の発明は、成形品のスプリングバックを見込んで成形金型の金型形状を生成する金型形状生成プログラムであって、コンピュータを、成形品の目標形状に応じた成形金型の金型形状の形状データを取得する金型形状データ取得手段、前記成形金型を用いてプレス成形した成形品のスプリングバック後形状の形状データを取得する成形品形状データ取得手段、前記金型形状に設定された断面位置を取得する断面位置取得手段、前記断面位置における評価点を取得する評価点取得手段、前記金型形状データ取得手段によって取得した前記金型形状と前記成形品形状データ取得手段によって取得した前記スプリングバック後形状とを位置合わせする位置合わせ手段、前記断面位置取得手段によって取得した前記断面位置の断面ごとに、前記位置合わせ手段によって位置合わせした前記スプリングバック後形状の断面形状を前記金型形状の断面形状にフィッティングさせるフィッティング手段、前記断面位置取得手段によって取得した前記断面位置の断面ごとに、前記金型形状の断面形状における評価点から最も近い前記スプリングバック後形状のフィッティング後の断面形状における最近点を算出する最近点算出手段、前記最近点算出手段によって算出された前記最近点を前記スプリングバック後形状のフィッティング前の断面形状に戻して、前記金型形状の評価点に対応する前記スプリングバック後形状の対応点として算出する対応点算出手段、前記金型形状の評価点から、前記対応点算出手段によって算出された前記スプリングバック後形状の対応点への変位ベクトルを算出する変位ベクトル算出手段、前記変位ベクトル算出手段によって算出された前記変位ベクトルにα<0である係数αを掛けて、前記金型形状の評価点における成形品のスプリングバックを見込むための見込みベクトルを算出する見込みベクトル算出手段、及び、前記成形金型の金型形状の解析モデルに、前記見込みベクトル算出手段によって算出された前記金型形状の評価点における前記見込みベクトルをマッピングし、金型形状の解析モデルに見込みベクトルを強制変位として与えて、有限要素法を用いて金型形状を変形させて、成形品のスプリングバックを見込んだ見込み金型形状を算出する見込み金型形状算出手段として機能させることを特徴とする。
【0021】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、コンピュータを、前記成形品形状データ取得手段として機能させるときは、成形金型を用いて成形した成形品のスプリングバック後形状を実測した位置データに基づいて作成された形状データを取得するように機能させることを特徴とする。
【0022】
また、請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、コンピュータを、前記成形品形状データ取得手段として機能させるときは、有限要素法を用いて算出された前記成形品のスプリングバック後形状の形状データを取得するように機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上の構成により、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
【0024】
まず、本願の請求項1に記載の発明によれば、成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状とを位置合わせした後に、断面ごとに、スプリングバック後形状の断面形状が金型形状の断面形状にフィッティングされ、金型形状の断面形状における評価点から最も近いスプリングバック後形状のフィッティング後の断面形状における最近点が算出され、最近点をスプリングバック後形状のフィッティング前の断面形状に戻して、金型形状の評価点に対応するスプリングバック後形状の対応点として算出されることとなる。
【0025】
これにより、プレス成形後にスプリングバックが大きくねじれやそりによる変形が大きい場合においても、成形品のスプリングバックを見込んで成形金型の金型形状を生成する際に用いる成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点を精度良く算出できる。このようにして算出した成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点を用いることで、成形品のスプリングバックを見込んだ成形金型の金型形状を精度良く生成できる。
【0026】
また、請求項2に記載の発明によれば、成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状とを位置合わせした後に、断面ごとに、スプリングバック後形状の断面形状が金型形状の断面形状にフィッティングされ、金型形状の断面形状における評価点から最も近いスプリングバック後形状のフィッティング後の断面形状における最近点が算出され、最近点をスプリングバック後形状のフィッティング前の断面形状に戻して、金型形状の評価点に対応するスプリングバック後形状の対応点として算出される。
【0027】
そして、金型形状の評価点からスプリングバック後形状の対応点への変位ベクトルが算出され、変位ベクトルにα<0である係数αを掛けて、金型形状の評価点における見込みベクトルが算出され、成形金型の金型形状の解析モデルに金型形状の評価点における見込みベクトルをマッピングし、金型形状の解析モデルに見込みベクトルを強制変位として与えて、有限要素法を用いて金型形状を変形させて、成形品のスプリングバックを見込んだ見込み金型形状が算出されることとなる。
【0028】
これにより、プレス成形後にスプリングバックが大きくねじれやそりによる変形が大きい場合においても、成形品のスプリングバックを見込んで成形金型の金型形状を生成する際に用いる成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点を精度良く算出でき、成形品のスプリングバックを見込んだ成形金型の金型形状を精度良く生成できる。
【0029】
また、請求項3に記載の発明によれば、成形金型を用いて成形した成形品のスプリングバック後形状を実測した位置データに基づいて作成された形状データが用いられることにより、成形品のスプリングバックを見込んだ成形金型の金型形状を精度良く生成することができる。
【0030】
また、請求項4に記載の発明によれば、有限要素法を用いて算出された成形品のスプリングバック後形状の形状データが用いられることにより、成形金型を用いて実際にプレス成形する必要なしに、成形品のスプリングバックを見込んだ成形金型の金型形状を生成することができる。
【0031】
そして、請求項5〜8に記載のプログラムに関する発明によれば、これをコンピュータで実行することにより、システムに関する請求項1〜4に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
本発明の実施形態に係る金型形状生成では、成形金型の金型形状を生成するに際し、先ず、成形品の目標形状に応じた成形金型の金型形状の形状データと、前記成形金型を用いてプレス成形した成形品のスプリングバック後形状を実測した位置データに基づいて作成された形状データとを用い、成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状とを位置合わせする。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係る金型形状生成システムに用いる成形品の目標形状に応じた金型形状を有する成形金型を示す平面図である。
図1では、成形金型のダイのみを示しているが、成形金型のパンチは、ダイの形状に応じて形成されている。なお、
図1では、成形金型の成形面に、直交するX軸及びY軸をとり、成形面から法線方向にZ軸をとって示している。
【0035】
図1に示す成形金型の金型形状10は、略直方体状に形成され、成形面11には、平面視で長手方向に細長い略矩形状の成形品を成形するための成形部12が形成されている。金型形状10の成形面11は、成形品の目標形状に応じて形成され、成形面11には長手方向に延びる2つの凹部11a、11bが形成されている。
【0036】
図2は、
図1に示す成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状とを位置合わした状態を示す平面図である。
図2に示すように、
図1に示す成形金型の金型形状10と成形品のスプリングバック後形状15とは、形状誤差を最小とする既知のベストフィットや三点合わせなどを用いて位置合わせされる。本実施形態では、成形品のスプリングバック後形状15が成形金型の金型形状10に位置合わせされる。
【0037】
成形品のスプリングバック後形状15としては、成形金型を用いて実際にプレス成形した成形品のスプリングバック後形状を実測したSTLデータなどの位置データに基づいて作成された形状データが用いられる。
【0038】
図2ではまた、成形品の目標形状に対する変形量が斜線ハッチングを用いて表示されている。
図2に示す成形品のスプリングバック後形状15は、矢印R1及びR2で示す部位が成形品の目標形状に対して手前側に大きく変形すると共に矢印R3及びR4で示す部位が成形品の目標形状に対して奥側に大きく変形して長手方向の軸心回りにねじれによる変形が生じている。
【0039】
本実施形態では次に、金型形状に設定された断面位置及び該断面位置における評価点を取得し、断面位置の断面ごとに、位置合わせしたスプリングバック後形状を金型形状にフィッティングさせ、金型形状の評価点から最も近いスプリングバック後形状のフィッティング後の最近点を算出し、最近点をフィッティング前のスプリングバック後形状に戻して金型形状の評価点に対応するスプリングバック後形状の対応点として算出する。
【0040】
図1に示すように、成形品の目標形状に応じた成形金型の金型形状10に対して、成形品の長手方向を横切る方向、具体的には直交する方向に複数の断面位置がユーザによって設定される。本実施形態では、断面位置としてY座標位置C1〜C11が設定されている。この断面位置は、適宜設定することができ、例えば所定間隔ごとに設定することができる。
【0041】
また、金型形状10に対して、前記断面位置に、スプリングバックを見込むための評価点がユーザによって設定される。
図1では、断面位置C1に評価点P1のみを示しているが、後述する
図5に示すように多数の評価点が各断面位置に設定される。この評価点は、適宜設定することができ、例えば所定間隔ごとに設定することができる。
【0042】
金型形状10に対する断面位置C1〜C11及び評価点P1の設定は、ユーザによって成形金型の金型形状10と成形品のスプリングバック後形状15との位置合わせ前に行われるが、成形金型の金型形状10と成形品のスプリングバック後形状15との位置合わせ後に行うようにしてもよい。また、成形金型の金型形状10と成形品のスプリングバック後形状15との位置合わせ前に設定したものを、位置合わせ後に修正するようにしてもよい。
【0043】
このようにして設定された断面位置及び該断面位置における評価点を取得すると、断面位置の断面ごとに、位置合わせしたスプリングバック後形状の断面形状と金型形状の断面形状とが算出され、金型形状の断面形状とスプリングバック後形状の断面形状とがフィッティングされる。
【0044】
図3は、
図2の断面位置C1における金型形状の断面形状とスプリングバック後形状の断面形状とを示す断面図である。
図3に示すように、断面位置C1では、成形品のスプリングバック後形状L12は、成形金型の金型形状L11に対して、矢印R1で示す部位では成形面11に対して上側に変形し、矢印R3で示す部位では成形面11に対して下側に大きく変形している。
【0045】
図4は、スプリングバック後形状の断面形状を金型形状の断面形状にフィッティングした状態を示す断面図である。
図4では、
図3に示す金型形状L11とスプリングバック後形状L12とをフィッティングした後のスプリングバック後形状をL12’として示している。
【0046】
図4に示すように、断面位置C1における金型形状L11とスプリングバック後形状L12とは既知の最小二乗法を用いてフィッティングされ、金型形状L11にフィッティングされたフィッティング後のスプリングバック後形状L12’が算出される。フィッティング前のスプリングバック後形状L12が回転移動及び平行移動され、フィッティング後のスプリングバック後形状L12’が算出される。本実施形態では、Y軸回りの回転移動とX軸方向及びZ軸方向の平行移動とによってフィッティング後のスプリングバック後形状L12’が算出される。
【0047】
図5は、
図4の要部を拡大した要部拡大図であり、
図4の一点鎖線で示す部分を拡大して示している。前述したように、
図5に示す断面位置C1における金型形状L11には、多数の評価点P1、P2、P3が設定されている。なお、
図5及び後述する
図6から
図8では、評価点を黒丸印で表示し、評価点P1〜P3のみに符号を付している。
【0048】
断面位置において金型形状にスプリングバック後形状がフィッティングされると、金型形状の評価点からそれぞれ最も近いフィッティング後のスプリングバック後形状における最近点が算出され、最近点がフィッティング前のスプリングバック後形状に戻されて金型形状の評価点に対応するスプリングバック後形状の対応点として算出される。
【0049】
図6は、金型形状の断面形状における評価点から算出されるスプリングバック後形状のフィッティング後の断面形状における最近点を示す図である。
図6に示すように、金型形状L11における評価点P1、P2、P3からそれぞれ最も近いフィッティング後のスプリングバック後形状L12’における最近点Q1’,Q2’,Q3’が算出される。なお、
図6では、最近点を黒三角印で表示し、評価点P1,P2,P3と最近点Q1’,Q2’,Q3’とのペアをそれぞれ破線で接続して示している。
【0050】
図7は、スプリングバック後形状のフィッティング後の断面形状における最近点から算出された金型形状の評価点に対応するスプリングバック後形状の対応点を示す図である。フィッティング後のスプリングバック後形状L12’における最近点Q1’,Q2’,Q3’が算出されると、
図7に示すように、最近点Q1’,Q2’,Q3’がフィッティング前のスプリングバック後形状L12に戻されて金型形状の評価点P1,P2,P3に対応するスプリングバック後形状の対応点Q1,Q2,Q3がそれぞれ算出される。本実施形態では、フィッティングによって移動したY軸回りの回転移動とX軸方向及びZ軸方向の平行移動とをそれぞれ反対方向に移動することにより算出される。なお、
図7では、対応点を黒四角印で表示している。
【0051】
本実施形態では、フィッティングによる移動を反対方向に移動することにより最近点をスプリングバック後形状のフィッティング前の断面形状に戻して対応点を算出しているが、フィッティング後のスプリングバック後形状における端部から最近点の距離を算出し、算出した距離にあるフィッティング前のスプリングバック後形状における端部からの点を対応点として算出することにより、最近点をスプリングバック後形状のフィッティング前の断面形状に戻して対応点を算出するようにしてもよい。
【0052】
このように、断面ごとに、スプリングバック後形状を金型形状にフィッティングさせた後に、金型形状の評価点からフィッティング後のスプリングバック後形状の最近点を算出し、算出した最近点をフィッティング前のスプリングバック後形状に戻して、金型形状の評価点に対応するスプリングバック後形状の対応点を算出する。
【0053】
そして、金型形状の評価点に対応するスプリングバック後形状の対応点を算出すると、金型形状の評価点からスプリングバック後形状の対応点への変位ベクトルを算出し、変位ベクトルにα=−1である補正係数αを掛けて金型形状の評価点における見込みベクトルを算出する。
【0054】
図7に示すように、金型形状L11の評価点P1,P2,P3に対応するスプリングバック後形状L12の対応点Q1、Q2、Q3が算出されると、金型形状L11の評価点P1、P2、P3からそれぞれスプリングバック後形状L12の対応点Q1、Q2、Q3への変位ベクトルd1、d2、d3が算出される。
【0055】
図8は、スプリングバックを見込むための見込みベクトルを示す図である。金型形状L11の評価点P1,P2,P3からスプリングバック後形状L12の対応点Q1,Q2,Q3への変位ベクトルd1,d2,d3が算出されると、
図8に示すように、変位ベクトルd1,d2,d3にα=−1である補正係数αを掛けて、金型形状L11の評価点P1,P2,P3における見込みベクトルd1’,d2’,d3’が算出される。
【0056】
図8では、断面位置C1について金型形状L11の評価点P1,P2,P3における見込みベクトルd1,d2’,d3’を示しているが、他の断面位置C2〜C11についても、断面ごとに、同様にして金型形状L11の評価点P1,P2,P3における見込みベクトルがそれぞれ算出される。
【0057】
このようにして、全断面位置について、金型形状の評価点における見込みベクトルを算出すると次に、成形金型の金型形状の解析モデルに、評価点における見込みベクトルをマッピングし、金型形状の解析モデルに見込みベクトルを強制変位として与えて、有限要素法を用いて金型形状を変形させて、成形品のスプリングバックを見込んだ見込み金型形状を算出する。
【0058】
図9は、見込みベクトルをマッピングした金型形状の解析モデルを示す図である。
図9では、3つの断面位置について算出された金型形状L11、L21、L31の各評価点における見込みベクトルを矢印によって示している。
図9では、符号11cで示す部位のみ、金型形状10を有限要素分割した解析モデルとして示しているが、金型形状10全体が有限要素分割されている。
【0059】
図9に示すように、成形金型の金型形状10は、有限要素分割された解析モデルとして作成され、この金型形状10の解析モデルに、金型形状の評価点における見込みベクトルがマッピングされる。そして、成形金型の金型形状10の解析モデルに見込みベクトルを強制変位として与えて、有限要素法を用いて変形解析することにより、金型形状全体を連続的に変形させて、成形品のスプリングバックを見込んだ見込み金型形状が算出される。
【0060】
図9に示すように、金型形状10の見込みベクトルは、設定された断面位置の評価点に与えられ、金型形状10の解析モデルの節点の一部についてのみ与えられるが、金型形状10の解析モデルの他の節点は、有限要素法を用いた解析によって見込みベクトルが設定された節点につれて連続的に移動され、金型形状全体について見込み金型形状が算出される。
【0061】
金型形状10の解析モデルに、金型形状10の評価点における見込みベクトルをマッピングした際に、金型形状に設定された評価点が解析モデルの節点上に設定されていない場合、評価点から最も近い節点に該評価点における見込みベクトルを付与するようにして見込み金型形状の算出が行われる。なお、金型形状10の評価点が解析モデルの節点上に設定されていない場合に、該評価点に対応する新たな節点を形成するように解析モデルを作成し、見込み金型の算出を行うようにすることも可能である。
【0062】
次に、本発明の実施形態に係る金型形状生成システムについて説明する。
図10は、本発明の実施形態に係る金型形状生成システムの全体構成を示すブロック図である。
図10に示すように、本実施形態に係る金型形状生成システムは、コンピュータ20を中心として構成され、コンピュータ20は、中央演算装置21と、成形金型の金型形状の生成に必要なデータなどを入力するためのキーボードなどの入力装置22と、成形金型の金型形状や成形品のスプリングバック後形状などを表示するためのディスプレイなどの表示装置23と、金型形状を生成するためのプログラムなどを記憶するメモリなどの記憶装置24と、生成された金型形状などを出力するプリンタなどの出力装置25とを有している。
【0063】
中央演算装置21は、入力装置22、表示装置23及び出力装置25を制御すると共に、記憶装置24にアクセス可能に構成され、入力装置22を介して入力された情報と記憶装置24に記憶されているプログラムやデータを用いて、金型形状とスプリングバック後形状との対応点及び該対応点を用いて算出された見込み金型形状を記憶装置24に保存するように構成されている。
【0064】
図11は、
図10に示すシステムの記憶装置の構成を示す図である。
図11に示すように、記憶装置24は、プログラム記憶部とデータ記憶部とを有している。プログラム記憶部には、スプリングバックを見込んだ成形金型の金型形状を生成するための金型形状生成プログラム、形状差分を用いてスプリングバックを見込んだ見込み金型形状を算出するための形状差分金型見込み算出プログラム、成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点を算出するための対応点算出プログラム、成形金型の金型形状の形状データを有限要素分割して解析モデルを作成するための解析モデル作成プログラム、及び、入力画面や算出した見込み金型形状などを表示するための表示プログラムなどが記憶されている。
【0065】
一方、データ記憶部には、成形品の目標形状に応じた成形金型の金型形状の形状データが記憶される金型形状データファイル、成形金型を用いてプレス成形した成形品のスプリングバック後形状の形状データが記憶される成形品形状データファイル、金型形状に設定された断面位置が記憶される断面データファイル、前記断面位置における評価点が記憶される評価点データファイル、金型形状の評価点から算出されるスプリングバック後形状の対応点が記録される対応点算出結果データファイル、金型形状の評価点とスプリングバック後形状の対応点とから算出される見込みベクトルが記録される見込みベクトル算出結果データファイル、金型形状の解析モデルに見込みベクトルを与えて有限要素法を用いて算出された見込み金型形状が記録される金型見込み算出結果データファイルなどが設けられている。
【0066】
次に、スプリングバックを見込んで金型形状を生成する動作について説明する。
図12は、本発明の実施形態に係る金型形状生成システムによる金型形状生成動作を示すフローチャートである。スプリングバックを見込んだ金型形状を生成する前に、コンピュータ20には先ず、ユーザによって入力装置22を介して成形品の目標形状に応じた成形金型の金型形状の形状データが登録されると共に成形金型を用いてプレス成形した成形品のスプリングバック後形状の形状データが登録され、金型形状の形状データ及び成形品の形状データがそれぞれ金型形状データファイル及び成形品形状データファイルに記録される。また、ユーザによって、見込みベクトルを算出するための金型形状の断面位置及び該断面位置における評価点がそれぞれ登録され、断面データファイル及び評価点データファイルに記録される。
【0067】
このようにして、スプリングバックを見込んだ金型形状を生成するための各種データ、具体的には金型形状の形状データ、成形品のスプリングバック後形状の形状データ、断面位置及び評価点が登録された状態で、金型形状とスプリングバック後形状との対応点の算出及びスプリングバックを見込んだ金型形状の生成のための計算が行われる。
【0068】
金型形状を生成する際には先ず、
図12に示すように、金型形状を生成するための各種データが取得される。具体的には、成形品の目標形状に応じた成形金型の金型形状の形状データが取得され(ステップS1)、成形金型を用いてプレス成形した成形品のスプリングバック後形状の形状データが取得され(ステップS2)、見込みベクトルを算出するため金型形状に設定された断面位置が取得され(ステップS3)、見込みベクトルを算出するため前記断面位置に設定された評価点が取得される(ステップS4)。そして、形状差分を用いた金型見込みが行われる(ステップS5)。
【0069】
図13は、形状差分を用いた金型見込み動作を示すフローチャートである。ステップS5における形状差分を用いた金型見込みでは、
図13に示すように、ステップS1において取得された成形金型の金型形状とステップS2において取得された成形品のスプリングバック後形状とが位置合わせされ(ステップS11)、成形品のスプリングバック後形状15が成形金型の金型形状10に位置合わせされる。成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状とは、形状誤差を最小とする既知のベストフィットや三点合わせなどを用いて位置合わせされる。そして、成形金型の金型形状の評価点に対応する成形品のスプリングバック後形状の対応点の算出が行われる(ステップS12)。
【0070】
図14は、成形金型の金型形状における評価点に対応する成形品のスプリングバック後形状における対応点の算出動作を示すフローチャートである。ステップS12における金型形状の評価点に対応するスプリングバック後形状の対応点の算出では、
図14に示すように、所定断面における成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状がフィッティングされる(ステップS21)。
【0071】
先ず、ステップS3において取得された断面位置C1について、ステップS11において位置合わせられたスプリングバック後形状の断面形状と金型形状の断面形状とが算出され、算出されたスプリングバック後形状の断面形状と金型形状の断面形状とが既知の最小二乗法を用いてフィッティングされる。具体的には、金型形状の断面形状に対してスプリングバック後形状の断面形状がフィッティングされ、フィッティング後のスプリングバック後形状が算出される。
【0072】
次に、断面位置C1について、ステップS4において取得された断面位置における成形金型の評価点からそれぞれ最も近いフィッティング後の成形品のスプリングバック後形状における最近点が算出され(ステップS22)、ステップS22において算出された最近点がフィッティング前の成形品のスプリングバック後形状に戻されて金型形状の評価点に対応するスプリングバック後形状の対応点がそれぞれ算出される(ステップS23)。
【0073】
そして、全断面位置について、金型形状の評価点に対応するスプリングバック後形状の対応点が算出されたか否かが判定される(ステップS24)。本実施形態では、断面位置C1〜C11の全ての断面位置について、金型形状の評価点に対応するスプリングバック後形状の対応点が算出されるまで、ステップS21〜S24が繰り返される。
【0074】
ステップS24での判定結果がイエス(YES)になると、すなわち全断面位置について金型形状の評価点に対応するスプリングバック後形状の対応点が算出されると、
図13に示すように、金型形状の評価点からスプリングバック後形状の対応点への変位ベクトルが算出され(ステップS13)、算出された変位ベクトルにα=−1である補正係数αを掛けて金型形状の評価点における見込みベクトルが算出される(ステップS14)。金型形状に設定された全ての評価点においてスプリングバックを見込むための見込みベクトルが算出される。算出された金型形状の評価点に対応するスプリングバック後形状の対応点は、対応点算出結果データファイルに記録され、算出された見込みベクトルは、見込みベクトル算出結果データファイルに記録される。
【0075】
そして、ステップS14において算出された金型形状の評価点における見込みベクトルに基づいて、成形品のスプリングバックを見込んだ金型見込みが行われる(ステップS15)。ステップS1において取得された成形金型の金型形状が有限要素分割されて解析モデルが作成され、金型形状の解析モデルに、ステップS14において算出された金型形状の評価点における見込みベクトルがマッピングされ、金型形状の解析モデルに見込みベクトルが強制変位として与えられ、有限要素法を用いて金型形状を変形させて、成形品のスプリングバックを見込んだ見込み金型形状が算出される。
【0076】
成形金型の金型形状を有限要素分割して作成された解析モデルには、金型形状を構成する複数の節点が設けられ、前述したように、金型形状の解析モデルに金型形状の評価点における見込みベクトルがマッピングされる際に金型形状に設定された評価点が解析モデルの節点上に設定されていない場合、評価点から最も近い節点に該評価点における見込みベクトルが付与されて、有限要素法を用いて見込み金型形状の算出が行われる。
【0077】
ステップS15においてスプリングバックを見込んだ金型見込みが行われ、スプリングバックを見込んだ見込み金型形状が算出されると、成形品のスプリングバックを見込んだ金型形状の生成が終了される。算出された見込み金型形状は、金型見込み算出結果データファイルに記録される。
【0078】
本実施形態では、金型形状の評価点からスプリングバック後形状の対応点への変位ベクトルを算出した後に、変位ベクトルにα=−1である補正係数αを掛けて金型形状の評価点における見込みベクトルを算出しているが、α<0である補正係数αを適宜設定するようにすることも可能である。例えばα=−1.2などの補正係数αを設定することで、見込み量を調整することができる。
【0079】
このように、本実施形態によれば、成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状とを位置合わせした後に、断面ごとに、スプリングバック後形状の断面形状が金型形状の断面形状にフィッティングされ、金型形状の断面形状における評価点から最も近いスプリングバック後形状のフィッティング後の断面形状における最近点が算出され、最近点をスプリングバック後形状のフィッティング前の断面形状に戻して、金型形状の評価点に対応するスプリングバック後形状の対応点として算出される。
【0080】
そして、金型形状の評価点からスプリングバック後形状の対応点への変位ベクトルが算出され、変位ベクトルにα<0である係数αを掛けて、金型形状の評価点における見込みベクトルが算出され、成形金型の金型形状の解析モデルに金型形状の評価点における見込みベクトルをマッピングし、金型形状の解析モデルに見込みベクトルを強制変位として与えて、有限要素法を用いて金型形状を変形させて、成形品のスプリングバックを見込んだ見込み金型形状が算出されることとなる。
【0081】
これにより、プレス成形後にスプリングバックが大きくねじれやそりによる変形が大きい場合においても、成形品のスプリングバックを見込んで成形金型の金型形状を生成する際に用いる成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点を精度良く算出でき、成形品のスプリングバックを見込んだ成形金型の金型形状を精度良く生成できる。
【0082】
また、本実施形態では、成形金型を用いて成形した成形品のスプリングバック後形状を実測した位置データに基づいて作成された形状データが用いられることにより、成形品のスプリングバックを見込んだ成形金型の金型形状を精度良く生成することができる。
【0083】
本実施形態では、成形品のスプリングバック後形状15は、成形金型を用いて実際にプレス成形した成形品のスプリングバック後形状を実測した位置データに基づいて作成された形状データが用いられるが、既知の有限要素法を用いて成形金型による金属板の成形をシミュレーションして算出された成形品のスプリングバック後形状の形状データを用いることも可能である。
【0084】
このように、有限要素法を用いて算出された成形品のスプリングバック後形状の形状データが用いられることにより、成形金型を用いて実際にプレス成形する必要なしに、成形品のスプリングバックを見込んだ成形金型の金型形状を生成することができる。
【0085】
ここで、本実施形態に係る金型形状生成システムを用いて算出した成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点の具体例について説明する。
【0086】
図15は、本実施形態に係る金型形状生成システムを用いて算出した成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点の例を示す図である。
図15では、前述した
図18に示す金型形状L111とスプリングバック後形状L112とについて、本実施形態に係る金型形状生成システムを用いて金型形状L111とスプリングバック形状L112との対応点を算出した場合について示し、金型形状L111の評価点とその評価点に対応するスプリングバック後形状L112の対応点とをそれぞれ黒丸印と黒四角印とを用いて表示し、前記評価点から前記対応点への変位ベクトルを矢印によって表示している。
【0087】
図15から分かるように、ねじれによる変形が大きい場合についても、本実施形態に係る金型形状生成システムでは、金型形状L111の評価点からスプリングバック後形状L112の対応点への変位ベクトルが交差することなく、金型形状L111とスプリングバック後形状L112との対応点を精度良く算出することができる。
【0088】
図16は、本実施形態に係る金型形状生成システムを用いて算出した成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点の別の例を示す図である。
図16では、前述した
図19に示す金型形状L121とスプリングバック後形状L122とについて、本実施形態に係る金型形状生成システムを用いて金型形状L121とスプリングバック形状L122との対応点を算出した場合について示しており、金型形状L121の評価点とその評価点に対応するスプリングバック後形状L122の対応点とをそれぞれ黒丸印と黒四角印とを用いて表示し、前記評価点から前記対応点への変位ベクトルを矢印によって表示している。
【0089】
図16から分かるように、長手方向にそりによる変形が大きい場合についても、本実施形態に係る金型形状生成システムでは、金型形状L121の評価点からスプリングバック後形状L122の対応点への変位ベクトルが交差することなく、金型形状L121とスプリングバック後形状L122との対応点を精度良く算出することができる。
【0090】
このように、本実施形態では、スプリングバック後形状の断面形状を金型形状の断面形状にフィッティングし、金型形状の評価点から最も近いスプリングバック後形状のフィッティング後の最近点を算出し、この最近点をフィッティング前のスプリングバック後形状に戻して対応点として算出することにより、成形金型の金型形状と成形品のスプリングバック後形状との対応点を精度良く算出でき、成形品のスプリングバックを見込んだ成形金型の金型形状を精度良く生成できる。
【0091】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。