【実施例】
【0059】
C.elegans遺伝子のRNA介在阻害の解析
unc−22遺伝子活性と動物の可動性表現型の間の半定量的比較を与える予備的遺伝子解析の結果から、活性の初期比較するため、unc−22遺伝子を選択した
3、8。活性の減少は激しい痙攣表現型の増加をもたらしたが、完全な機能の喪失は筋肉構造の欠損および減少した自発運動性の付加的出現をもたらした。unc−22は、多くの、しかし非必須の筋肉線維タンパク質をコードしている
7−9。unc−22mRNAは、横紋筋細胞当り数千コピー存在する
3。
【0060】
unc−22の742ntセグメントをカバーする精製アンチセンスおよびセンスRNAsは、ほんの限界的阻害活性を有しており、観察し得る効果を得るためには非常に高投与量の注入RNAを必要とする(
図4)。対照的に、センス+アンチセンス混合物は、内部遺伝子活性の阻害に高い効果をもたらした(
図4)。混合物は、少なくとも、遺伝子発現の阻害において、一本鎖よりも二桁の大きさで、より効果があった。試験したセンス+アンチセンス混合物の最低投与量、成体当り各鎖の約60,000分子、は平均100子孫で痙攣表現型をもたらした。unc−22発現は、約500細胞で胚において始まる。この点で、始めに注入された物質は、最大限細胞当り数分子に稀釈されている。
【0061】
センス+アンチセンス混合物の強力な阻害活性は、二本鎖RNA(dsRNA)の精製を反映しているか、または鎖間に何らかの代りの相乗作用が考えられる。電気泳動分析は、注入された物質が大部分二本鎖であることを示した。dsRNAをアニール混合物からゲル精製し、強力な阻害活性が保持されていることが見出された。注入前のアニーリングは阻害と両立できるが、その必要はなかった。低塩でセンス+アンチセンスRNAsの混合(最小dsRNA生成条件下)、或いはセンス+アンチセンス鎖の急速な逐次注入は、完全な阻害をもたらした。センス+アンチセンスRNAの逐次注入の間の長い間隔(>1時間)は、阻害活性の劇的な減少の結果となった。このことは、注入された一本鎖が分解したか、さもなくば相補鎖がないと到達し得ないことになったのであろう。
【0062】
dsRNAに対する公知の細胞応答を考慮するとき、特異性の問題が生じる。ある種の生物体は、パニック応答機構を活性化するdsRNA依存性プロテインキナーゼを有している
10。多分、センス+アンチセンス相乗効果が、そのようなパニック機構によりアンチセンス効果の非特異的増強を反映した可能性がある。このことは、このケースでは見出せなかった:unc−22に関連しないdsRNAセグメントを共注入したが、阻害を媒介するunc−22一本鎖の作用を増強しなかった。また、しらべたことは、二本鎖構造を、一本鎖セグメントに対しcisに配置したとき、阻害活性を増強することができたかどうか、であった。そのような増強は見られなかった。一本鎖unc−22セグメントの5′または3′に位置した非関連二本鎖配列は阻害を促進しなかった。そして、遺伝子特異的阻害は、dsRNA配列が標的遺伝子のホモロジー領域内に存在するときにのみ観察された。
【0063】
unc−22dsRNAによって産生される表現型は特異的であった。注入された動物の子孫は、特徴的なunc−22機能喪失突然変異と区別できない行動を示した。dsRNAの標的特異性は、よく特徴づけられた表現型と3つの付加的遺伝子を用いて効果を表わした(
図1および表1)。unc−54は、全筋肉収縮に必要な体壁筋肉ミオシン重鎖イソ型をコードしており
7、11、12、fem−1は、精子生産の両性に必要なアンキリンリピートを有するタンパク質をコードしており
13、14、そしてhlh−1は、適切な体型および自動運動性に必要なミオDファミリーのC.elegansホモロジーをコードしている
15、16。これらの遺伝子のそれぞれについて、dsRNAの注入により、公知のヌル突然変異表現型を表わした時期別産子群の子孫を生産したが、精製一本鎖は遺伝子発現において有意な減少を生じなかった。一つの例外と共に、dsRNA注入の表現型の結果の全てが、相当する遺伝子の阻害から期待されるものであった。例外(セグメントunc54C、これはunc−54ヌル突然変異では見られなかった胚性および幼生分裂停止表現型を誘導した)は例示的であった。このセグメントは高度にカバーされたミオシン運動領域をカバーしており、別の高度に関連するミオシン重鎖遺伝子の活性を阻害することが期待された
17。このことの解釈は、dsRNAと標的遺伝子のヌクレオチド配列の比較で100%より少ない同一性を示している本発明の使用を支持している。unc54Cセグメントは今日までの我々の全体の経験でユニークなものであった:別の18のdsRNAの効果は、全て特徴的なヌル突然変異から予期される効果に限定されていた。
【0064】
dsRNA注入後に続いてみられる強力な表現型は、細胞の高い画分に生じる阻害効果を示唆している。unc−54およびhlh−1筋肉表現型は、特に、多数の欠損筋肉細胞となることが知られている
11、16。細胞レベルでのdsRNAの阻害効果を試験するため、体筋肉の二つの異なったGFP由来蛍光レポータータンパク質を発現するトランスジェニック系を使用した。gfpを目標としたdsRNAの注入は、蛍光細胞の画分の劇的な減少を生じた(
図2)。両レポーター遺伝子は、陰性細胞にはなく、少数の陽性細胞が一般的に両GFP型を発現していた。
【0065】
gfp阻害で観察されたモザイク現象は、不規則ではなかった。dsRNAの低投与量では、本発明者らは、動物がふ化したときに存在する胚から由来した筋肉細胞にしばしば阻害を見た。これらの分化した細胞における阻害効果は、幼生の生長中持続した。これらの細胞は、影響された動物が生長するに従って僅かに或いは全くさらにGFPを生産しなかった。14の出生後に由来した横紋筋は初期の幼生期に生じたものであり、それはより阻害に耐性であった。これらの細胞は、更に分裂を繰り返した(胎仔筋肉に対し13−14対8−9
18、19)。gfpdsRNAの高濃度では、胎生期または胎生期以降に生じた細胞を含め偶然の単一逸脱細胞と共に、事実上全ての横紋筋体壁筋肉において、阻害が認められた。後期幼生発達の間に生じた非横紋筋性外陰筋は、注入RNAの試験した全ての濃度で遺伝子阻害に耐性を示した。後者の結果は、他の系における本発明の使用を評価するのに重要である。第一に、生物体からの細胞の一組において失敗が見られたことは、その生物体に本発明の応用が完全にできないことを示しているものではないことを示している。第二に、必ずしも生物体の全ての組織で、生物体に使用されている本発明が影響を及ぼす必要はないことが判ることが重要である。このことは、ある種の状況における進歩として役立つであろう。
【0066】
2〜3の観察が、C.elegansにおいてRNA介在遺伝子阻害に対する可能な標的および機構の本質を明らかにするのに役立つ。
【0067】
第一に、種々のイントロンおよびプロモーター配列に相当するdsRNAセグメントは、検出される阻害を生じない(表1)。転写後レベルでの阻害の可能性と整合性があるが、これらの実験は遺伝子のレベルでの阻害を排除していない。
【0068】
第二に、dsRNA注入は、内部mRNA転写のレベルで劇的な減少を生じた(
図3)。ここでは、性腺および初期胚に豊富なmex−3転写
20が標的とされ、明白なin situハイブリダイゼーションを行うことができる
5。mex−3から由来したdsRNAセグメントが注入された動物において、内部のmex−3mRNAは観察されなかった(
図3D)、しかし精製mex−3アンチセンスRNAの注入は、実質的な内部mRNAレベルを保持した動物をもたらした(
図3C)。
【0069】
第三に、dsRNA介在阻害は、細胞の境界と交差する驚くべき作用を示した。unc−22、gfp、またはlacZに対しdsRNAの頭または尾部の体腔への注入は、子孫の時期別産子群における遺伝子発現の特異的および健全な阻害を生じた(表2)。阻害が、これら注入における性腺の一過性「狭窄」を除いて、両性腺腕部の子孫において見られた。若年成体の体腔または性腺に注入したdsRNAは、また、注入した動物の体性組織における遺伝子特異的阻害を生じた(表2)。
【0070】
表3は、C.elegansは、遺伝子特異的様相で、環境で遭遇したdsRNAに応答することができる。細菌がC.elegansの天然の食餌源である。細菌は摂取され、動物の咽頭で砕かれ、そして細菌内容物が消化管に取り込まれる。結果は、dsRNAを発現するE.coli細菌は、それを採取したC.elegans線虫幼生に特異的阻害効果を与えることができることを示している。
【0071】
三つのC.elegans遺伝子を解析した。各遺伝子について、コード領域のセグメントを、バクテリオファージR7RNAポリメラーゼにより二方向転写するようにデザインされたプラスミド構造体に挿入することによって、E.coliに、相当するdsRNAが発現された。これら実験に使用されたdsRNAセグメントは、前記マイクロインジェクション実験において使用されたものと同じであった(
図1を参照)。これら細菌をC.elegantに給餌した結果から得られた効果を、dsRNAをマイクロインジェクションした動物によって達成された効果と比較した。
【0072】
C.elegant遺伝子unc−22は、多くの筋肉線維タンパク質をコードする。unc−22ヌル突然変異は、動物が一過性の筋肉収縮のみを続けることができる、特徴的な均一の痙攣表現型を生産する。野生型動物にunc−22からdsRNAセグメントを発現している細菌を給餌すると、高画分(85%)が、unc−22遺伝子に対し部分的な機能喪失を特徴とする、弱いがしかし顕著な痙攣表現型を表わした。C.elegansfem−1遺伝子は、性決定経路の後期成分をコードする。ヌル突然変異は、精子の生産を防ぎ、雌性として発生する正倍数体(XX)動物に導き、それに対し野生型XX動物は雌雄同体として発生する。野生型動物がfem−1に相当するdsRNAを発現する細菌を食すると、画分(43%)が精子欠損(雌)表現型を示し、それは不妊である。最後に、導入遺伝子の遺伝子発現を阻害する作用を評価した。gfp導入遺伝子を保有する動物にgfpレポーターに相当するdsRNAを発現する細菌を給餌すると、GFP蛍光の全体のレベルでの明らかな減少が、集団の約12%に観察された(
図5、パネルBおよびCを参照)。
【0073】
これらの食餌されたRNAの効果は特異的であった。fem−1およびgfpからの異なったdsRNAを有する細菌は、痙攣を生じなかった、unc−22およびfem−1からのdsRNAsはgfp発現を減少しなかった、そしてgfpおよびunc−22からのdsRNAは雌を生産しなかった。これらの阻害効果は、明らかにdsRNAによって媒介されていた:gfpまたはunc−22のいずれかに対しセンスまたはアンチセンス鎖のみを発現する細菌は、それらの捕食者C.elegansに明らかな表現型効果をもたらさなかった。
【0074】
表4は、dsRNAを含有する溶液にC.elegansをつけた効果を示す。幼生を記載したdsRNA(1mg/ml)の溶液に24時間つけ、そして正常の培地に戻し、2日間標準条件下で生育させた。unc−22dsRNAは、
図1からのフラグメントds−unc22Aである。pos−1およびsqt−3dsRNAsは全長cDNAクローンからのものである。pos−1は胚発生の初期に必要とされる母性を与えるのに必須の成分をコードする。pos−1活性を除く突然変異は、skn様突然変異の特徴がある初期胚停止を有する
29、30。sqt−3のクローニング活性パターンは記載されている
31。C.elegans sqt−3突然変異体はcol−1コラーゲン遺伝子において突然変異を有する
31。影響された動物の表現型が注目される。これらの実験における明らかな表現型の効果の出現率は、unc−22に対し5−10%、pos−1に対し50%、およびsqt−3に対し5%であった。これらは不確定な表現型模写の頻度である。他の処理動物は観察し得ない標的遺伝子に相当する限界欠損を有していたかもしれない。各処理は全く遺伝子特異的であり、unc−22dsRNAはUnc−22表現型のみを生産し、pos−1dsRNAはPos−1表現型のみを生産し、そしてsqt−3dsRNAはSqt−3表現型のみを生産した。
【0075】
ここに記載したいくつかの結果は、われわれの予備的出願が提出された後に出版されたものである。それらの出版および総説は、Fire,A.et al.,Nature,391,806−811,1998;Timmons,L.& Fire,Nature,395,854,1998;およびMontgomery,M.K.& Fire,A.Trends in Genetics,14,255−258,1998に記載されている。
【0076】
ここに記載した効果は、C.elegansおよび他の生物体における遺伝子機能の研究のために使われる道具を著しく増強するものである。特に、機能解析は、特異的な機能が決定されていない目的のコード領域
21の多くに適応可能である。それらのいくつかの観察結果は、遺伝子発現の阻害プロセスのデザインに影響するdsRNAの性質を示している。例えば、観察された一例では、ミオシン遺伝子の間を占めているヌクレオチド配列が、関連する遺伝子ファミリーのいくつかのメンバーの遺伝子発現を阻害する。
【0077】
RNA合成法およびマイクロインジェクション
RNAをT3およびT7RNAポリメラーゼのファージミドクローンから合成し
6、次いで二つの逐次DNase処理で鋳型の除去を行った。センス、アンチセンス、および混合RNA集団を比較しなければならない場合においては、RNAは、低ゲル化温度アガロースの電気泳動により精製した。ゲル精製産物は、元の「センス」および「アンチセンス」調製物に見られた少数のバンドの多くがなくなっていた。それでもなお、精製RNA調製物の10%以下のRNA種が観察されなかった。ゲル精製なしに、「センス」および「アンチセンス」調製物は著しい阻害を生じた。この阻害活性は、ゲル精製によって減少されたか除去された。対照的に、ゲル精製および非ゲル精製のRNA調製物のセンス+アンチセンス混合物は、同じ効果を生じた。
【0078】
二次構造を除去するための68℃での短時間(5分)処理に続いて、センス+アンチセンスアニーリングを、37℃、10−30分間、注入バッファー
27中で行った。大部分が二本鎖物質の生成を、標準(非変性)アガロースゲルでの移動試験により確認した。各RNA対につき、適切な長さの二本鎖RNAに予期されたように、ゲルシフトが観察された。低塩バッファー(5mM・Tris−HCl、pH7.5、0.5mM・EDTA)での二つの鎖の共インキュベーションは、in vitroでの二本鎖RNAの可視的生成には不十分であった。unc22BおよびgfpGに対する非アニールセンス+アンチセンスRNAsを阻害効果で試験した、そして個々の一本鎖よりもより活性であることが見出されたが、同じもののプレアニール処理調製物よりも2−4倍活性が劣っていた。
【0079】
unc22Aに対する一本鎖のプレアニーリングの後、dsRNAに予期されるサイズに相当する単一電気泳動した種を、ゲル電気泳動で二回精製を行った。この物質は、高い阻害活性を保持していた。
【0080】
特に記載しない限り、注入混合物は、動物が平均0.5×10
6から1.0×10
6分子のRNAを注入されるよう構成された。センス、アンチセンス、およびdsRNA活性の比較のため、注入はRNAの等量(即ち、一本鎖のモル濃度の半分のdsRNA)で比較した。成体当り注入された分子数は、注入された物質中のRNAの濃度(エチジウムブロミド染色から推定)および注入容量(注入部位における目に見える変化から推定)に基いた概算の近似値として与えられた。個々の動物間で注入容量の数倍の変動が可能である。しかし、そのような変動は本明細書での結論に影響しなかった。
【0081】
表現型の解析方法
内部遺伝子の阻害は、一般的に野生型遺伝的背景(N2)で測定される。解析される特徴は、行動、食餌、ふ化、体型、性的同一性、および生殖能力であった。gfp
27およびlacZ活性の阻害はPD4251株を用いて評価された。この株は、三つのプラスミド:pSAK4(ミトコンドリア標的GFPを誘導するmyo−3プロモーター)、pSAK2(核標的GFP−LacZ融合を誘導するmyo−3プロモーター)、および選択し得るマーカーとしてdpy−20サブクローン
27、より作られた集積アレイ(ccIs4251)を含有する安定したトランスジェニック株である。この株は、全ての体筋肉で、ミトコンドリアおよび核局在の組み合わせで、GFPを産生する。二つの顕著なコンパートメントはこれらの細胞中で容易に見分けることができ、元のGFP構造体のいずれかまたはどちらでもないの両者を発現する細胞の間の区別を容易にしている。
【0082】
性腺注入は、マイクロインジェクション針を成体の性腺シンシチウムに挿入し、20−100plの溶液を排出することにより行われた(文献25を参照)。体腔注入は同様な手順で、二つの性腺腕部の位置を超えた頭部および尾部の領域に針を挿入することにより行われた。間質細胞の細胞質への注入は、RNA輸送の別の効果的な意味があり、動物にとって最も非破壊的である。回収そして標準固形培地に移した後、注入された動物は、16時間の間隔で新鮮培地プレートに移された。この結果、表現型の相異を単純に同定する一連の半同調コホート(cohorts)が得られた。表現困難性の特徴的な一過性のパターンが子孫の間にみられた。先ず、影響を受けない子孫が造られる短い「クリアランス」期間がある。これらは、注入時に存在する非透過性孵化卵を含む。クリアランス期間の後、阻害表現型を示す個体が産生される。幾日かかけて、注入された動物が産卵した後、ある場合においては、性腺は「復帰」し、不完全に影響されたまたは表現型として正常な子孫をつくることができる。
【0083】
結果の付加的記載
図1は、C.elegansにおいてRNA介在遺伝子阻害を研究するために使用された遺伝子を示す。RNA介在阻害を試験するために使用した遺伝子に対するイントロン・エクソン構造を示す(エクソン:塗りつぶしたます目;イントロン:空白のます目;5′および3′非翻訳領域:斜線;unc−22
9、unc−54
12、fem−1
14、およびhIh−1
15)。これらの遺伝子は、(1)決定された分子構造、(2)ヌル表現型の性質を示す古典的遺伝子データ、を基準として選択された。阻害効果について試験された各セグメントは、遺伝子名に単文字が続く形で表わした(例えば、unc22C)。ゲノムDNA由来のセグメントは、遺伝子の上に示し、cDNA由来のセグメントは遺伝子の下に示す。これら遺伝子の各々に対する注入した二本鎖RNAの結果を、表1に記載する。各遺伝子のコード領域からのdsRNA配列は、その遺伝子に対するヌル表現型に類似した表現型を産生した。
【0084】
阻害RNAの効果は、個々の細胞について解析した(
図2、パネルA−H)。これらの実験は、二つの異なったレポータータンパク質を発現するレポーター株(PD4251と称される)、核GFP−LacZおよびミトコンドリアGFPにおいて実施された。これらレポータータンパク質の蛍光性状は、遺伝子の観察された阻害の範囲および普遍性を決定するために蛍光顕微鏡下で個々の細胞を検査することを可能にした。ds−unc22ARNAは陰性対照として注入された。これら注入動物の子孫におけるGFP発現は、影響されなかった。これら子孫のGFPパターンは、核(核に局在したGFP−LacZ)およびミトコンドリア(ミトコンドリアの標的GFP)に顕著な傾向を伴って、親株と同じように出現した:若年の幼生(
図2A)、成体(
図2B)、および高倍率の成体体壁(
図2C)。
【0085】
対照的に、ds−gfpGRNAを注入された動物の子孫は影響された(
図2D−F)。観察され得るGFP蛍光は細胞の95%に亙って完全に失われている。幼生に僅かな活性細胞がみられた(
図2Dは一つの活性細胞のある幼生を示す;非注入対照は全ての81体壁筋肉細胞にGFP活性を示した)。阻害は全ての組織において効果がなかった:全外陰部筋組織は成体動物で活性GFPを発現した(
図2E)。まれにGFP陽性体壁筋肉細胞が成体動物にみられた(2つの活性細胞を
図2Fに示す)。阻害は標的特異的であった(
図2G−I)。動物にds−lacZLRNAを注入した。これは核には影響しミトコンドリアレポーター構造には影響しない筈のものである。この注入から誘導された動物において、ミトコンドリア標的GFPは影響が現れなかった(
図2Gにおける幼生)が、核標的GFP−LacZがほとんど全ての細胞で欠失していた。典型的な成体は、ほとんど全ての体壁筋肉において核GFP−LacZが欠失していたが、外陰部筋肉には活性が残存した(
図2H)。
図2のスケールバーは20μmである。
【0086】
内因性mRNAレベルにおけるmex−3に相当する二本鎖RNAの効果を、胚に対するin situハイブリダイゼーションによって示した(
図3、パネルA−D)。1262ntのmex−3cDNAクローン
20を、少し(325nt)オーバーラップしている二つのセグメント、mex−3Aおよびmex−3B、に分割した。mex−3BアンチセンスまたはdsRNAは成体動物の性腺に注入し、そして固定前に、標準培養条件下で24時間保持し、in situハイブリダイゼーションを行った(文献5を参照)。mex−3BdsRNAは100%胚休止を作り出したが、これに対し、アンチセンス注入からの胚の>90%が孵化した。mex−3Aに相当するアンチセンスプローブを内在性mex−3mRNAの分布を測定するために使用した(暗く染色)。4細胞期の胚を測定した。1から8細胞期および注入した成体の生殖細胞系において、類似の結果が観察された。陰性対照(ハイブリダイゼーションプローブを欠く)は染色を欠くことが示された(
図3A)。非注入親は内在性mex−3RNAの正常パターンを示した(
図3B)。mex−3RNAの観察されたパターンは、文献20に前に書いた通りであった。精製mex−3BアンチセンスRNAの注入は、せいぜい穏当な効果を生み出した。得られた胚はmex−3mRNAを保持したが、レベルは幾分か野生型よりも低かった(
図3C)。対照的に、mex−3Bに相当するdsRNAを注入した親からの胚では、mex−3RNAは検出されなかった(
図3D)。
図3のスケールは、各胚が約50μm長である。
【0087】
unc−22ARNAによる遺伝子特異的阻害活性をRNA構造および濃度の関数として測定した(
図4)。unc22Aからの精製アンチセンスおよびセンスRNAをそれぞれ或いはアニール混合物として注入した。「対照」は関連のないdsRNA(gfpG)である。注入動物は、新鮮な培養プレートに、注入後6時間(カラム標識1)、15時間(カラム標識2)、27時間(カラム標識3)、41時間(カラム標識4)、および56時間(カラム標識5)に移した。成体に生育した子孫を、生育環境での運動性でスコアー化し、0.5mMレバミゾール中で試験した。主グラフは、各々の行動クラスの画分を示す。子宮におけるおよび注入時に既に卵殻に覆われた胚は、影響されないので含まれていない。下の左のダイヤグラムは、unc−22遺伝子投与とunc−22ヘテロ接合体および倍数体の間の遺伝的に導かれる関係を示す
8、3。
【0088】
図5A−Cは、発現細菌からのdsRNAのC.elegansによる摂食後の遺伝子阻害の例を示す。dsRNAを生産するための一般的な戦略は、バクテリオファージT7プロモーターのフランキングコピーの間の目的とするセグメントを、細菌のプラスミド構造体にクローニングすることである(
図5A)。誘導し得る(Lac)プロモーターからのT7ポリメラーゼ遺伝子を発現する細菌株(BL21/DE3)
28を宿主として使用した。ヌクレアーゼ耐性dsRNAが形質移入された細菌の溶解物中に検出された。比較し得る阻害結果が、二つの細菌発現系で得られた。GFP発現C.elegans株、PD4251(
図2参照)、は天然細菌宿主を摂食した。これらの動物は体筋肉に、均一に高いレベルのGFP蛍光を示す(
図5B)。PD4251動物は、fgpのコード領域に相当するdsRNAを発現する細菌の食餌で飼育された。この実験の条件下で、これら動物の12%がGFPの劇的な減少を示した(
図5C)。別の戦略として、T7プロモーターの単一コピーを、unc−22或いはgfpのいずれかの標的遺伝子のセグメントに対する、逆方向複製の発現を推進するのに使用した。これは、比較的有効であった。
【0089】
本明細書に引用した全ての文献(例えば、書籍、記事、出願、および特許)は、当業者のレベルの例示であり、それらの開示は、本明細書にそれらの全部をとりいれている。
【0090】
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【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
表1の説明
各RNAは6−10成体雌雄同体に注入された(0.5−1×10
6モルを各生殖腺腕部に)。4−6時間後(子宮から清澄な授精前の卵に)注入した動物を移し、20−22時間に卵を採取した。子孫表現型は孵化およびそれに続く12−24時間間隔でスコア化した。
a:RNA投与量と表現型応答の間の関係について半定量的な評価を得るため、我々は、一連の異なった濃度で各々のunc22ARNA調製物を注入した。試験した最高濃度(性腺当たり3.6×10
6モル)で、個々のセンスおよびアンチセンスunc22A調製物は幾分か識別できる痙攣(それぞれ子孫の1%および11%)を生じた。ds−unc22ARNAの比較投与で、全ての子孫で識別できる痙攣を生じたが、ds−unc22ARNAの120倍低い投与量で子孫の30%に識別できる痙攣を生じた。
b:unc22Cは、また、介在イントロン(43nt)を有する。
c:fem1Aもまた、イントロン10の部分(131nt)を有する。
d:最初の影響を受けた時期別産子群(注入後4−24時間に産卵)の動物は、unc−54のヌル突然変異体と区別できない運動欠損を示した。これらの動物のいくつかは(25−75%)産卵できなかった(unc−54ヌル突然変異体の別の表現型)が、しかし抑制動物の残りは産卵陽性であった。このことは、外陰筋におけるunc−54活性の部分的阻害を示している。後期の時期別産子群の動物は、しばしば体壁筋のサブセットに収縮性を伴った、著しい部分的機能喪失表現型を示す。
e:hlh−1阻害RNAの表現型は、ds−hlh1A注入体の事実上全ての子孫、およびds−hlh1Bとds−hlh1Cからの影響を受けた動物の約半数、にみられる休止胚および部分的に伸長したL1幼生(hlh−1ヌル表現型)ならびに(ds−hlh1Bおよびds−hlh1Cからの動物の残りにみられる)余り激しくない一連の欠損を含む。余り激しくない表現型はhlh−1の機能の部分的喪失の特徴である。
f:これらの注入宿主、PD4251、はミトコンドリアGFPおよび核GFP−LacZの両者を発現する。このことは、gfp(全ての蛍光を喪失)およびlacZ(核の蛍光を喪失)の阻害を同時に測定することが可能となる。表に、L1幼生としての動物のスコアリングを記載する。ds−gfpGは、これら幼生において、85体筋肉の0−3を除く全てでGFPの喪失をもたらした。これらの動物は成体に成熟するにつれて、GFP活性は0−5の別の体壁筋および8つの外陰筋においてみられた。
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
【表5】
【0097】
表2において、性腺注入は、ミトコンドリアGFPおよび核GFP−LacZの両者を発現する、GFPレポーター株PD4251に対して行われた。これは、gfp(よりかすかな全体の蛍光)、lacZ(核蛍光の喪失)、およびunc−22(痙攣)の阻害を同時に測定することを可能にする。体腔注入は、性腺に注入する事故を最小にするため、尾部に対して行った;同等の結果が、体腔の前部領域に注入する際に観察された。注入の同じ組合せが単一性腺腕部に行われた。注入の全ての部位に対して、全ての子孫の時期産別子群は、表1に記載されたのと同じ表現型を示した。これには、注入および非注入性腺腕から得られた子孫を含んでいる。注入動物は、回復後3日間スコア化し、その結果は、それらの子孫よりも幾分少ない劇的な表現型を示した。このことは、注入された成体に既に存在する産物の残存に一部起因したのであろう。ds−unc22B注入後、注入動物の一部が、標準的生長条件下で弱い痙攣を生じた(21動物中10)。レバミゾール治療の結果、これら動物の100%(21/21)に痙攣が生じた。類似の効果が、ds−unc22Aでも見られた。ds−gfpG或いはds−lacZLの注入は対応するGFP活性の劇的な減少を生じた(しかし、除去はできなかった)。ある場合には、単離細胞または動物の一部は強力なGFP活性を保持した。これらは、外陰部の前部領域および周辺に最もしばしばみられた。ds−gfpG或いはds−lacZLの注入は、痙攣を生じなかったが、これに対し、ds−unc22AはGFP蛍光パターンの変化を生じなかった。
【0098】
本発明は、何が現時点で実際的であり、好ましい実施態様であると考えられるか、に関連して記載されているが、本発明は、開示された実施態様に限定され或いは制限されるものではなく、反対に、付属する請求項の精神および範囲内に包含される種々の修飾および等価の組み合わせを包括することが意図されていることが理解される。
【0099】
それゆえ、記載された発明における変形は、本発明の新規な観点から離れること無く、当業者に自明のことであり、そのような変形は、本発明の範囲内に入ることが意図されていると理解されるべきである。