特許第5969892号(P5969892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジクラの特許一覧

特許5969892光増感色素及びこれを有する色素増感太陽電池
<>
  • 特許5969892-光増感色素及びこれを有する色素増感太陽電池 図000022
  • 特許5969892-光増感色素及びこれを有する色素増感太陽電池 図000023
  • 特許5969892-光増感色素及びこれを有する色素増感太陽電池 図000024
  • 特許5969892-光増感色素及びこれを有する色素増感太陽電池 図000025
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969892
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】光増感色素及びこれを有する色素増感太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20160804BHJP
   C09B 57/10 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   H01G9/20 113A
   H01G9/20 113B
   H01G9/20 113C
   C09B57/10
【請求項の数】6
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-232388(P2012-232388)
(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2014-86191(P2014-86191A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 健治
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/017869(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/152318(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0087203(US,A1)
【文献】 特開2012−053985(JP,A)
【文献】 特開2012−053984(JP,A)
【文献】 特開2009−080988(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/075756(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0101650(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
C09B 57/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される光増感色素。
【化1】
(上記式(1)中、MはFe、Ru又はOsを表す。N−L−Nは下記一般式(2)〜(6)で表される二座の配位子を表す。ここで、X〜Xはそれぞれ独立に、−CO基、−SO基、−P(=O)(OR)(OR)基、水素原子、ハロゲン基、炭素数1〜15の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜15の置換若しくは無置換のアルコキシ基又は炭素数1〜15の置換若しくは無置換のチオアルコキシ基を表す。また、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は1価の陽イオンを表す。そして、X〜Xのうち少なくとも1つは−CO基、−SO基又は−P(=O)(OR)(OR)基である。Zはベンゼン環の数が2又は3である置換又は無置換のポリアセン基を表す。また、Y及びYはそれぞれ独立に、−NCS基、ハロゲン基又は−CN基を表す。また、Y及びYは互いに結合して、下記一般式(7)で表され且つ2個の酸素原子にてMに配位するβ−ジケトナート配位子を形成してもよい。)


【化2】
【化3】
(上記式(7)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜15の置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ芳香族基又は−CH=CHRを表す。Rは置換若しくは無置換のアリール基又は置換若しくは無置換のヘテロ芳香族基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、MがRuである請求項1に記載の光増感色素。
【請求項3】
前記一般式(1)において、Y及びYが−NCS基である請求項1又は2に記載の光増感色素。
【請求項4】
前記一般式(1)〜(6)において、X〜Xがそれぞれ独立に水素原子又は−CO基である請求項1〜3のいずれか一項に記載の光増感色素。
【請求項5】
透明基板及び前記透明基板上に設けられる透明導電膜を有する第1電極と、
前記第1電極に対向する第2電極と、
前記第1電極又は前記第2電極に設けられる酸化物半導体層と、
前記第1電極及び前記第2電極の間に設けられる電解質と、
前記酸化物半導体層に吸着される光増感色素と、
を備え、
前記光増感色素が請求項1〜4のいずれか一項に記載の光増感色素を含む色素増感太陽電池。
【請求項6】
前記酸化物半導体層に吸着される共吸着剤をさらに含む請求項5に記載の色素増感太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光増感色素及びこれを有する色素増感太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子として、安価で、高い光電変換効率が得られることから色素増感太陽電池が注目されており、色素増感太陽電池に関して種々の開発が行われている。
【0003】
色素増感太陽電池は一般に、作用極と、対極と、作用極及び対極の間に配置される電解質とを備えている。作用極は、酸化物半導体層を有しており、酸化物半導体層には光増感色素が吸着されている。
【0004】
色素増感太陽電池においては光電変換特性を向上させることが重要であり、そのために、例えば光増感色素に着目した種々の提案がなされている。
【0005】
例えば下記非特許文献1では、光増感色素としてN719と呼ばれるシス−ジ(チオシアネート)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)のテトラ−n−ブチルアンモニウム塩が開示されており、この光増感色素を色素増感太陽電池に用いた場合、高い光電変換効率を有する色素増感太陽電池が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,1993,115,6382−6390
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、色素増感太陽電池では、低照度下における光電変換効率に対する高照度下における光電変換効率の比が小さいことが望ましい。これは、低照度下における光電変換効率に対する高照度下における光電変換効率の比が大きいと、例えば照度が低い状態から高い状態に変化する際に、色素増感太陽電池において、急激に大きな電流が流れることとなり、色素増感太陽電池の耐久性が低下するおそれがあるためである。
【0008】
しかし、光増感色素としてN719を用いた色素増感太陽電池は、低照度下における光電変換効率に対する高照度下における光電変換効率の比の点で未だ改善の余地があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、色素増感太陽電池に用いた場合に、色素増感太陽電池の低照度下における光電変換効率に対する高照度下における光電変換効率の比を十分に小さくさせることができる光増感色素およびこれを有する色素増感太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために、色素増感太陽電池に用いた場合に、特に低照度下における光電変換効率を向上させることができる光増感色素を得ることができれば、その光増感色素を用いた色素増感太陽電池においては、低照度下における光電変換効率に対する高照度下における光電変換効率の比が十分に小さいものになるのではないか、と考え、鋭意検討を行った。
【0011】
先ず本発明者は、N719は、低照度下において励起される電子の寿命が十分に長くないため、N719を用いた色素増感太陽電池は、低照度下において取り出せる電子数が十分ではなく、低照度下における短絡電流の値が小さいのではないか、と考えた。
【0012】
そこで、本発明者は、光増感色素に立体障害を有する基を導入することにより、光増感色素分子の会合を抑制し、光増感色素から励起される電子の寿命を十分に長くすることができるのではないか、と考えた。そして、励起される電子の寿命を十分に長くすることができれば、色素増感太陽電池から取り出せる電子数を十分に増加させることができ、その結果、低照度下における色素増感太陽電池の短絡電流の値を十分に増加させることができるのではないか、と考えた。
【0013】
次に、本発明者は、N719のRu(II)錯体系光増感色素の紫外−可視吸光スペクトルにおいて、波長300〜400nmの近紫外領域におけるモル吸光係数が小さいことに着目した。
【0014】
そして、本発明者は、波長300〜400nmの近紫外領域においてモル吸光係数の大きい吸収ピークを有する基を光増感色素に導入することにより、光増感色素から励起される電子数を十分に増加させることができるのではないか、と考えた。そして、光増感色素から励起される電子数を十分に増加させることができれば、色素増感太陽電池から取り出せる電子数を十分に増加させることができ、その結果、低照度下における色素増感太陽電池の短絡電流の値を十分に増加させることができるのではないか、と考えた。
【0015】
本発明者は上記の着想に基づき鋭意研究を行った結果、立体障害を有し、且つ波長300〜400nmの近紫外領域においてモル吸光係数の大きい吸収ピークを有する基を導入した光増感色素により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される光増感色素である。
【化1】
(上記式(1)中、MはFe、Ru又はOsを表す。N−L−Nは下記一般式(2)〜(6)で表される二座の配位子を表す。ここで、X〜Xはそれぞれ独立に、−CO基、−SO基、−P(=O)(OR)(OR)基、水素原子、ハロゲン基、炭素数1〜15の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜15の置換若しくは無置換のアルコキシ基又は炭素数1〜15の置換若しくは無置換のチオアルコキシ基を表す。また、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は1価の陽イオンを表す。そして、X〜Xのうち少なくとも1つは−CO基、−SO基又は−P(=O)(OR)(OR)基である。Zはベンゼン環の数が2又は3である置換又は無置換のポリアセン基を表す。また、Y及びYはそれぞれ独立に、−NCS基、ハロゲン基又は−CN基を表す。また、Y及びYは互いに結合して、下記一般式(7)で表され且つ2個の酸素原子にてMに配位するβ−ジケトナート配位子を形成してもよい。)
【化2】
【化3】
(上記式(7)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜15の置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ芳香族基又は−CH=CHRを表す。Rは置換若しくは無置換のアリール基又は置換若しくは無置換のヘテロ芳香族基を表す。)
【0017】
本発明の光増感色素によれば、色素増感太陽電池に用いた場合に、色素増感太陽電池の低照度下における光電変換効率に対する高照度下における光電変換効率の比を十分に小さくさせることができる。従って、上記光増感色素を用いた色素増感太陽電池において、照度が低い状態から高い状態に変化する際に、大きな電流が急激に流れることが十分に抑制され、色素増感太陽電池の耐久性が低下することを十分に抑制することができる。
【0018】
前記光増感色素は、前記一般式(1)において、MがRuであることが好ましい。
【0019】
この光増感色素を色素増感太陽電池の光増感色素として用いると、色素増感太陽電池の耐久性が特に優れたものになる。
【0020】
前記光増感色素は、前記一般式(1)において、Y及びYが−NCS基であることが好ましい。
【0021】
この光増感色素を色素増感太陽電池の光増感色素として用いると、色素増感太陽電池の光電変換効率が特に優れたものになる。
【0022】
前記光増感色素は、前記一般式(1)〜(6)において、X〜Xがそれぞれ独立に水素原子又は−CO基であることが好ましい。
【0023】
この光増感色素を色素増感太陽電池の光増感色素として用いると、色素増感太陽電池の光電変換効率が特に優れたものになる。
【0024】
また本発明は、透明基板及び前記透明基板上に設けられる透明導電膜を有する第1電極と、前記第1電極に対向する第2電極と、前記第1電極又は前記第2電極に設けられる酸化物半導体層と、前記第1電極及び前記第2電極の間に設けられる電解質と、前記酸化物半導体層に吸着される光増感色素と、を備え、前記光増感色素が、上述した光増感色素を含む色素増感太陽電池である。
【0025】
本発明の色素増感太陽電池によれば、光増感色素が上述した光増感色素を含むことで、低照度下における光電変換効率に対する高照度下における光電変換効率の比を十分に小さくさせることができる。
【0026】
上記色素増感太陽電池は、前記酸化物半導体層に吸着される共吸着剤をさらに含むことが好ましい。
【0027】
この場合、酸化物半導体層に共吸着剤が吸着していない場合に比べて、酸化物半導体層から電解質への漏れ電流の量をより十分に抑制することが可能となり、開放電圧をより十分に増加させることができ、光電変換効率が特に優れたものになる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、色素増感太陽電池に用いた場合に、色素増感太陽電池の低照度下における光電変換効率に対する高照度下における光電変換効率の比を十分に小さくさせることができる光増感色素およびこれを有する色素増感太陽電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の色素増感太陽電池の一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明の光増感色素の合成経路を示す図である。
図3】本発明の光増感色素の合成経路を示す図である。
図4】実施例1及び比較例1に係る光増感色素の紫外可視(UV−vis)吸光スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の色素増感太陽電池の一実施形態を示す断面図である。
【0032】
図1に示すように、色素増感太陽電池100は、作用極10と、作用極10に対向する対極20と、作用極10及び対極20を連結する環状の封止部30とを備えており、作用極10、対極20及び封止部30によって形成されるセル空間には電解質40が充填されている。
【0033】
対極20は、導電性基板21と、導電性基板21の作用極10側に設けられて電解質40の還元に寄与する触媒層22とを備えている。
【0034】
一方、作用極10は、透明基板11及び透明基板11の上に設けられる透明導電膜12からなる透明導電性基板15と、透明導電性基板15の透明導電膜12の上に設けられる少なくとも1つの酸化物半導体層13とを有している。酸化物半導体層13は、封止部30の内側に配置されている。また酸化物半導体層13には、光増感色素及び共吸着剤が共に吸着されている。共吸着剤は、光増感色素同士の会合を減少させるためのものである。
【0035】
上記光増感色素は、下記一般式(1)で表される光増感色素を含む。
【化4】
【0036】
上記式(1)中、MはFe、Ru又はOsを表す。N−L−Nは下記一般式(2)〜(6)で表される二座の配位子を表す。ここで、X〜Xはそれぞれ独立に、−CO基、−SO基、−P(=O)(OR)(OR)基、水素原子、ハロゲン基、炭素数1〜15の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜15の置換若しくは無置換のアルコキシ基又は炭素数1〜15の置換若しくは無置換のチオアルコキシ基を表す。また、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は1価の陽イオンを表す。そして、X〜Xのうち少なくとも1つは−CO基、−SO基又は−P(=O)(OR)(OR)基である。Zはベンゼン環の数が2又は3である置換又は無置換のポリアセン基を表す。また、Y及びYはそれぞれ独立に、−NCS基、ハロゲン基又は−CN基を表す。また、Y及びYは互いに結合して、下記一般式(7)で表され且つ2個の酸素原子にてMに配位するβ−ジケトナート配位子を形成してもよい。
【化5】
【化6】
【0037】
上記式(7)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜15の置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ芳香族基又は−CH=CHRを表す。Rは置換又は無置換のアリール基又は置換若しくは無置換のヘテロ芳香族基を表す。
【0038】
上記一般式(1)で表される光増感色素は、サイズが大きく平面状であるポリアセン基Zが結合したビピリジン配位子を有しており、このビピリジン配位子において、ポリアセン基Zの分子平面がビピリジンの分子平面に対してねじれた立体配置をとっている。そのため、上記ビピリジン配位子由来の立体障害によってこの光増感色素同士の会合が十分に抑制される。したがって、上記一般式(1)で表される光増感色素から励起された電子の寿命は十分に長いものとなる。この結果、低照度下における色素増感太陽電池100の短絡電流の値は十分に増加する。
【0039】
また、上記一般式(1)で表される光増感色素は、N719においてモル吸光係数が小さかった波長300〜400nmの近紫外領域においてモル吸光係数の大きな吸収ピークを有するポリアセン基であるZを有している。そのため、上記一般式(1)で表される光増感色素が用いられた色素増感太陽電池から取り出せる電子数は十分に増加し、低照度下における色素増感太陽電池の短絡電流の値は十分に増加する。
【0040】
したがって、色素増感太陽電池100によれば、光増感色素が、上記一般式(1)で表される光増感色素を含むことで、低照度下における光電変換効率に対する高照度下における光電変換効率の比を十分に小さくさせることができる。従って、上記光増感色素を用いた色素増感太陽電池100において、照度が低い状態から高い状態に変化する際に、大きな電流が急激に流れることが十分に抑制され、色素増感太陽電池100の耐久性が低下することを十分に抑制することができる。
【0041】
また色素増感太陽電池100においては、酸化物半導体層13に光増感色素のほか、共吸着剤も吸着している。このため、酸化物半導体層13に共吸着剤が吸着していない場合に比べて、酸化物半導体層13から電解質40への漏れ電流の量をより十分に抑制することが可能となり、開放電圧をより十分に増加させることができ、光電変換特性をより十分に向上させることができる。
【0042】
次に、作用極10、対極20、封止部30、電解質40、光増感色素及び共吸着剤について詳細に説明する。
【0043】
(作用極)
作用極10は、上述したように、透明基板11と、透明基板11の上に設けられる透明導電膜12と、透明導電膜12の上に設けられる少なくとも1つの酸化物半導体層13とを有している。
【0044】
透明基板11を構成する材料は、例えば透明な材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、及び、ポリエーテルスルフォン(PES)などが挙げられる。透明基板11の厚さは、色素増感太陽電池100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば50〜40000μmの範囲にすればよい。
【0045】
透明導電膜12を構成する材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(Indium−Tin−Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO)、及び、フッ素添加酸化スズ(Fluorine−doped−Tin−Oxide:FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。透明導電膜12は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電膜12が単層で構成される場合、透明導電膜12は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOで構成されることが好ましい。透明導電膜12の厚さは例えば0.01〜2μmの範囲にすればよい。
【0046】
酸化物半導体層13は、酸化物半導体粒子で構成されている。酸化物半導体粒子は、例えば酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、酸化ニオブ(Nb)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化スズ(SnO)、酸化インジウム(In)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タリウム(Ta)、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO)、酸化アルミニウム(Al)又はこれらの2種以上で構成される。酸化物半導体層13の厚さは、例えば0.1〜100μmとすればよい。
【0047】
(対極)
対極20は、上述したように、導電性基板21と、導電性基板21のうち作用極10側に設けられて電解質40の還元に寄与する導電性の触媒層22とを備えるものである。
【0048】
導電性基板21は、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ステンレス等の耐食性の金属材料や、上述した透明基板11にITO、FTO等の導電性酸化物からなる膜を形成したもので構成される。導電性基板21の厚さは、色素増感太陽電池100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば0.005〜4mmとすればよい。
【0049】
触媒層22は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。ここで、炭素系材料としては、カーボンナノチューブが好適に用いられる。
【0050】
(封止部)
封止部30としては、例えば、変性ポリオレフィン樹脂、ビニルアルコール重合体などの熱可塑性樹脂、及び、紫外線硬化樹脂などの樹脂が挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体およびエチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。これらの樹脂は単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0051】
(電解質)
電解質40は、例えばI/Iなどの酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、バレロニトリル、ピバロニトリル、グルタロニトリル、メタクリロニトリル、イソブチロニトリル、フェニルアセトニトリル、アクリロニトリル、スクシノニトリル、オキサロニトリル、ペンタニトリル、アジポニトリルなどを用いることができる。酸化還元対としては、例えばI/Iのほか、臭素/臭化物イオン、亜鉛錯体、鉄錯体、コバルト錯体などのレドックス対が挙げられる。また電解質40は、有機溶媒に代えて、イオン液体を用いてもよい。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩であって、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が用いられる。このような常温溶融塩としては、例えば、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド、ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、エチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、ジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド、ブチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、又は、メチルプロピルイミダゾリウムアイオダイドが好適に用いられる。
【0052】
また、電解質40は、上記有機溶媒に代えて、上記イオン液体と上記有機溶媒との混合物を用いてもよい。
【0053】
また電解質40には添加剤を加えることができる。添加剤としては、LiI、I、4−t−ブチルピリジン、グアニジウムチオシアネート、1−メチルベンゾイミダゾール、1-ブチルベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0054】
さらに電解質40としては、上記電解質にSiO、TiO、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化した電解質を用いてもよい。
【0055】
(光増感色素)
光増感色素は、上記一般式(1)で表される。
【0056】
上述したように、色素増感太陽電池100によれば、光増感色素が、上記一般式(1)で表される光増感色素を含むことで、低照度下における光電変換効率に対する高照度下における光電変換効率の比を十分に小さくさせることができる。
【0057】
また、上述したように、上記一般式(1)で表される光増感色素は立体障害を有するポリアセン基Zを有している。そして、配位結合M−Y及びM−Yは、このZによって立体的に保護されている。このことにより、上記光増感色素の配位子Y及びYはHOなどにより置換されにくくなっている。したがって、上記光増感色素および上記光増感色素を用いた色素増感太陽電池100は、耐久性に優れたものになる。
【0058】
上記一般式(1)において、MはRuであることが好ましい。この場合、色素増感太陽電池100が作動する際に、光増感色素が光励起された後の電子移動過程において、発生するRuの酸化種が安定なものになるため、色素増感太陽電池100の耐久性が特に優れたものになる。
【0059】
ポリアセン基Zとしては、例えば置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のアントラシル基などが挙げられる。
【0060】
上記ポリアセン基Zが有する置換基としては、例えばハロゲン基、炭素数1〜15の炭化水素基、炭素数1〜15の置換若しくは無置換のアルコキシ基及び炭素数1〜15の置換若しくは無置換のチオアルコキシ基などが挙げられる。炭化水素基としては、置換又は無置換のフェニル基および炭素数1〜15の置換又は無置換の脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
【0061】
上記ハロゲン基としては、例えば−Cl基、−Br基及び−I基などが挙げられる。
【0062】
また、フェニル基の置換基としては、例えばハロゲン基、ニトロ基、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基及び炭素数1〜15のチオアルコキシ基などが挙げられる。置換フェニル基の具体例としては、例えば3,4,5−トリメチルフェ二ル基、3,5−ジフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0063】
また、上記炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基としては、例えば炭素数1〜15のアルキル基などが挙げられる。炭素数1〜15のアルキル基の具体例としては、tert−ブチル基などの分岐状アルキル基および−C19などの直鎖状アルキル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基の置換基としては、例えばハロゲン基、ニトロ基、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基及び炭素数1〜15のチオアルコキシ基などが挙げられる。
【0064】
また、上記炭素数1〜15のアルコキシ基の置換基としては、例えばハロゲン基、ニトロ基、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基及び炭素数1〜15のチオアルコキシ基などが挙げられる。
【0065】
また、上記炭素数1〜15のチオアルコキシ基の置換基としては、例えばハロゲン基、ニトロ基、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基及び炭素数1〜15のチオアルコキシ基などが挙げられる。
【0066】
上記ポリアセン基Zが有する置換基としては、特に−C19、tert−ブチル基又は3,4,5−トリメチルフェニル基が好ましい。この場合、上記ポリアセン基の立体障害が特に大きいものになり、光増感色素分子の会合が特に効果的に抑制される。
【0067】
上述したように、上記一般式(1)において、N−L−Nは上記一般式(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)で表される二座の配位子である。
【0068】
上記N−L−Nが上記一般式(2)で表される配位子である場合、光増感色素の有機溶媒への溶解性が特に優れたものになる。
【0069】
また、上記N−L−Nが上記一般式(3)で表される配位子である場合、光増感色素は、1分子あたり2個のZを有するものになる。したがって、光増感色素分子の会合がさらに効果的に抑制される。また、光増感色素は、波長300〜400nmの近紫外領域においてモル吸光係数がさらに大きい吸収ピークを有するものになる。
【0070】
また、上記N−L−Nが上記一般式(4)で表される配位子である場合、光増感色素は、さらに波長300〜600nmの領域において、吸収ピークを有するものになる。
【0071】
また、上記N−L−Nが上記一般式(5)で表される配位子である場合、光増感色素は、さらに波長800〜1000nmの領域において、吸収ピークを有するものになる。
【0072】
また、上記N−L−Nが上記一般式(6)で表される配位子である場合、光増感色素は、上記N−L−Nが上記一般式(5)で表される配位子である場合と同様に、さらに波長800〜1000nmの領域において、吸収ピークを有するものになる。また、この場合、光増感色素は、1分子あたり2個のキノリン部位を有することになる。したがって、波長800〜1000nmの吸収ピークの吸光度が、上記N−L−Nが上記一般式(5)で表される配位子である場合と比べ、さらに大きいものになる。
【0073】
上述したように、上記一般式(1)〜(6)において、X〜Xはそれぞれ独立に、−CO基、−SO基、−P(=O)(OR)(OR)基、水素原子、ハロゲン基、炭素数1〜15の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜15の置換若しくは無置換のアルコキシ基又は炭素数1〜15の置換若しくは無置換のチオアルコキシ基を表す。
【0074】
上記ハロゲン基としては、例えば−Cl基、−Br基及び−I基などが挙げられる。
【0075】
また、上記炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基としては、例えばアルキル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基の置換基としては、例えばハロゲン基、ニトロ基、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基及び炭素数1〜15のチオアルコキシ基などが挙げられる。
【0076】
また、上記炭素数1〜15のアルコキシ基の置換基としては、例えばハロゲン基、ニトロ基、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基及び炭素数1〜15のチオアルコキシ基などが挙げられる。
【0077】
また、上記炭素数1〜15のチオアルコキシ基の置換基としては、例えばハロゲン基、ニトロ基、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基及び炭素数1〜15のチオアルコキシ基などが挙げられる。
【0078】
上記R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は1価の陽イオンを表す。そして、X〜Xのうち少なくとも1つは−CO基、−SO基又は−P(=O)(OR)(OR)基である。
【0079】
ここで上記1価の陽イオンとしては、例えばLi、Na、K、Rb、Csなどの金属の陽イオン及び下記一般式(8)で表されるアンモニウムイオンなどが挙げられる。
【化7】
【0080】
上記式(8)中、R〜R11はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜15の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基を表す。ここで、脂肪族炭化水素基としては、例えばアルキル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基の置換基としては、例えばハロゲン基、ニトロ基、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基及び炭素数1〜15のチオアルコキシ基などが挙げられる。
【0081】
ここで、R、R、R10及びR11の全てがブチル基であることが好ましい。この場合、上記光増感色素の有機溶媒への溶解性が良好になる。
【0082】
上記X〜Xはそれぞれ独立に水素原子又は−CO基であることが好ましい。この場合、色素増感太陽電池100の光電変換効率を特に効果的に向上させることができる。
【0083】
上述したように、上記一般式(1)中、Y及びYはそれぞれ独立に、−NCS基、ハロゲン基又は−CN基を表す。また、Y及びYは互いに結合して、上記一般式(7)で表され且つ2個の酸素原子にてMに配位するβ−ジケトナート配位子を形成してもよい。
【0084】
上記ハロゲン基としては、例えば−Cl基、−Br基及び−I基などが挙げられる。
【0085】
また、上記一般式(7)で表され且つ2個の酸素原子にてMに配位するβ−ジケトナート配位子において、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜15の置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ芳香族基又は−CH=CHRを表す。Rは置換若しくは無置換のアリール基又は置換若しくは無置換のヘテロ芳香族基を表す。
【0086】
上記ヘテロ芳香族基としては、例えばチオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、チエノチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基などの硫黄原子含有ヘテロ芳香族基、ピリジル基、ピリミジル基、キノリル基、インドリル基などの窒素原子含有ヘテロ芳香族基、フリル基、ベンゾフリル基などの酸素原子含有ヘテロ芳香族基などが挙げられる。
【0087】
また、上記一般式(1)中、Y1及びYは−NCS基であることが好ましい。この場合、光増感色素は、モル吸光係数の大きい吸収ピークを有するため、色素増感太陽電池100の光電変換効率を効果的に向上させることができる。
【0088】
ここで、上記の光増感色素の合成方法について図2及び図3を用いて詳細に説明する。図2及び図3は、本発明の光増感色素の合成経路を表す図である。
【0089】
図2に示すように、一般式(1)においてY及びYが共にYである光増感色素、すなわち一般式(14)で表される光増感色素を合成する場合には、一般式(9)又は(10)で表される原料金属塩を、一般式(11)で表されるZ置換ビピリジン配位子と反応させて、一般式(12)で表される中間体を得た後、この中間体と一般式(13)で表される二座配位子N−L−Nとを反応させればよい。ここで、Yは、−Cl基、−Br基、−I基等のハロゲン基を表す。また、一般式(12)における「Solv」は、Mに配位した溶媒分子を表す。
【0090】
ここで、一般式(9)で表される原料金属塩は、一般式(1)においてMがFeである場合に用いられる。また、一般式(10)で表される原料金属塩は、一般式(1)においてMがRu又はOsである場合に用いられる。MがRuである場合、一般式(10)で表される原料金属塩としては、ジハロ(シメン)ルテニウムダイマーを用いることが好ましく、MがOsである場合は、ジハロ(シメン)オスミウムダイマーを用いることが好ましい。
【0091】
一般式(11)で表されるZ置換ビピリジン配位子は、クロスカップリングなどの公知の合成方法により合成することができる。
【0092】
また、一般式(13)で表される二座配位子N−L−Nも同様に、クロスカップリングなどの公知の合成方法により合成することができる。
【0093】
さらに図3に示すように、一般式(1)においてY及びYが共にYである光増感色素、すなわち一般式(16)で表される光増感色素を合成する場合には、上記一般式(14)で表される光増感色素(14)と一般式(15)で表されるテトラアルキルアンモニウム塩(R12NYとを反応させることにより、YをYに置換させればよい。ここで、Yは、−NCS基又は−CN基を表す。またR12はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基を表す。また、異なる種類のテトラアルキルアンモニウム塩(R12NYを上記一般式(14)で表される光増感色素と順次反応させることにより、一般式(16)で表される光増感色素においてMに配位した2個のYを互いに異なるものとすることができる。
【0094】
また、図2に示すように、一般式(14)で表される光増感色素を合成する際には、一般式(14)で表される光増感色素の前駆体、すなわち一般式(12)で表される中間体は、原料金属塩(9)又は(10)と一般式(11)で表されるZ置換ビピリジン配位子とを反応させる段階で、一般式(12’)で表される幾何異性体との混合物として得られる。したがって、この混合物と一般式(13)で表される二座配位子N−L−Nとを反応させると、一般式(14)で表される光増感色素と一般式(14’)で表される幾何異性体との混合物(以下、「混合物A」と呼ぶ)が得られる。また、図3に示すように、この混合物Aと、一般式(15)で表されるテトラアルキルアンモニウム塩(R12NYとを反応させると、一般式(16)で表される光増感色素と一般式(16’)で表される幾何異性体との混合物(以下、「混合物B」と呼ぶ)が得られる。上記混合物Aおよび混合物Bは、公知の精製方法により分離することができる。光増感色素は、一般式(14)又は(16)で表される光増感色素を含んでいればよい。従って、光増感色素は、混合物Aで構成されてもよいし、混合物Bで構成されてもよい。
【0095】
(共吸着剤)
共吸着剤は、上記光増感色素同士の会合を抑制するものであればよいが、共吸着剤としては下記一般式(17)で表される有機化合物又はその塩が用いられてもよい。ここで、有機化合物は非金属原子のみで構成される。
【化8】
【0096】
上記式(17)中、nは0〜5の整数を表し、R14は、ステロイド骨格を有する一価の基を表す。
【0097】
nは好ましくは0〜2の整数である。
【0098】
ステロイド骨格を有する一価の基としては、例えば下記一般式(18)で表される一価の基が用いられる。
【化9】
【0099】
上記式(10)中、R15、R16及びR17はそれぞれ独立に、水素原子又は水酸基を表す。
【0100】
ステロイド骨格を有する共吸着剤の具体例としては、例えばデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、コール酸、ヒオデオキシコール酸及びこれらの塩などが挙げられる。
【0101】
光増感色素に対する共吸着剤のモル比は通常、0.5〜200であり、好ましくは10〜100である。光増感色素に対する共吸着剤のモル比が上記範囲内にあると、上記範囲を外れる場合に比べて、漏れ電流をより効果的に低減することができると共に、発電電流をより増加させることができる。
【0102】
次に、上述した色素増感太陽電池100の製造方法について説明する。
【0103】
まず1つの透明基板11の上に、透明導電膜12を形成してなる透明導電性基板15を用意する。
【0104】
透明導電膜12の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法(SPD:Spray Pyrolysis Deposition)及びCVD法などが用いられる。
【0105】
次に、透明導電膜12の上に、酸化物半導体層13を形成する。酸化物半導体層13は、酸化物半導体粒子を含む多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを印刷した後、焼成して形成する。
【0106】
酸化物半導体層形成用ペーストは、上述した酸化物半導体粒子のほか、ポリエチレングリコールなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。
【0107】
酸化物半導体層形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、又は、バーコート法などを用いることができる。
【0108】
焼成温度は酸化物半導体粒子の材質により異なるが、通常は350〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子の材質により異なるが、通常は1〜5時間である。
【0109】
こうして作用極10が得られる。
【0110】
次に、作用極10の酸化物半導体層13の表面に、上記のようにして合成された光増感色素を吸着させる。このためには、作用極10を、光増感色素を含有する溶液の中に浸漬させ、その光増感色素を酸化物半導体層13に吸着させた後に上記溶液の溶媒成分で余分な光増感色素を洗い流し、乾燥させることで、光増感色素を酸化物半導体層13に吸着させればよい。但し、光増感色素を含有する溶液を酸化物半導体層13に塗布した後、乾燥させることによって光増感色素を酸化物半導体層13に吸着させてもよい。
【0111】
次に、作用極10の酸化物半導体層13の表面に、上述した共吸着剤を吸着させる。このためには、作用極10を、共吸着剤を含有する溶液の中に浸漬させ、その共吸着剤を酸化物半導体層13に吸着させた後に上記溶液の溶媒成分で余分な共吸着剤を洗い流し、乾燥させることで、共吸着剤を酸化物半導体層13の表面に吸着させればよい。但し、共吸着剤を含有する溶液を酸化物半導体層13に塗布した後、乾燥させることによって共吸着剤を酸化物半導体層13に吸着させてもよい。
【0112】
このとき、共吸着剤は、酸化物半導体層13の表面において、光増感色素が吸着していない領域に吸着されることになる。
【0113】
なお、共吸着剤は、光増感色素と混合し、同時に酸化物半導体層13の表面に吸着させてもよい。この場合、酸化物半導体層13を、光増感色素及び共吸着剤を含む溶液中に浸漬すればよい。このとき、溶液中における酸化物半導体層13の浸漬時間は、好ましくは10〜48時間であり、より好ましくは15〜25時間である。
【0114】
次に、酸化物半導体層13の上に電解質40を配置する。電解質40は、例えばスクリーン印刷等の印刷法によって配置することが可能である。
【0115】
次に、環状の封止部形成体を準備する。封止部形成体は、例えば封止用樹脂フィルムを用意し、その封止用樹脂フィルムに1つの四角形状の開口を形成することによって得ることができる。
【0116】
そして、この封止部形成体を、作用極10の上に接着させる。このとき、封止部形成体の作用極10への接着は、例えば封止部形成体を加熱溶融させることによって行うことができる。
【0117】
次に、対極20を用意し、封止部形成体の開口を塞ぐように配置した後、封止部形成体と貼り合わせる。このとき、対極20にも予め封止部形成体を接着させておき、この封止部形成体を作用極10側の封止部形成体と貼り合せてもよい。対極20の封止部形成体への貼合せは、大気圧下で行っても減圧下で行ってもよいが、減圧下で行うことが好ましい。
【0118】
以上のようにして色素増感太陽電池100が得られる。
【0119】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、透明導電性基板15の透明導電膜12上に多孔質酸化物半導体層13が設けられ、こちら側から受光する構造となっているが、多孔質酸化物半導体層13が形成される基材に不透明な材料(例えば金属基板)を用い、対極20を形成する基材に透明な材料を用いて対極側から受光する構造をとっても構わず、さらに、両面から受光する構造としても構わない。
【0120】
また上記実施形態では作用極10の酸化物半導体層13の表面に共吸着剤が吸着されているが、共吸着剤は必ずしも用いられなくてもよい。
【0121】
さらに上記実施形態では、光増感色素は、上記一般式(1)で表される光増感色素を含んでいるが、この光増感色素を第1光増感色素として、第1光増感色素と異なる第2光増感色素をさらに含んでいてもよい。
【0122】
ここで、第2光増感色素としては、第1光増感色素の吸収ピーク波長よりも短波長側に吸収ピークを有する光増感色素が好ましい。
【0123】
第2光増感色素の吸収ピーク波長は、第1光増感色素の吸収ピーク波長よりも短波長側にあることが好ましい。この場合、光電変換特性をより向上させることができる。ここで、第2光増感色素の吸収ピーク波長は、好ましくは300〜500nmであり、より好ましくは300〜450nmである。
【0124】
このような第2光増感色素としては、その吸収ピーク波長におけるモル吸光係数が、第1光増感色素の吸収ピーク波長におけるモル吸光係数よりも大きいものが好ましく用いられる。この場合、広い波長領域にわたってより優れた吸光特性を有することが可能となる。
【0125】
このような第2光増感色素としては、下記一般式(19)で表される色素が用いられる。
【化10】
【0126】
上記式(19)中、R18及びR19はそれぞれ独立に、水素原子、−CN、−COOH、又は炭素原子数1〜5の炭化水素基を表し、R20、R21、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜5の炭化水素基を表し、R22は炭素原子数1〜5のアルコキシ基で置換されたフェニル基、又は下記一般式(20)で表される置換基を表す。R23及びR24は互いに結合して5員環又は6員環を形成してもよい。
【化11】
【0127】
上記式(20)中、R25、R26、R27及びR28はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を表す。
【0128】
上記一般式(19)で表される色素としては、具体的には下記構造式(21)及び(22)で表されるものが挙げられる。
【化12】
【化13】
【0129】
なお、上記構造式(21)で表される第2光増感色素(D131)の吸収ピーク波長は420nmであり、上記構造式(22)で表される第2光増感色素の吸収ピーク波長は395nmである。
【0130】
上記第2光増感色素としては、下記一般式(23)で表される色素を用いることも可能である。
【化14】
【0131】
上記式(23)中、R29は水素原子又は−CNR3132を表し、R30は−CNR3132を表す。R31及びR32はそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0132】
上記一般式(23)で表される光増感色素のうち、R29が水素原子を表し、R30が−CNR3132を表す色素が好ましい。この場合、光電変換特性をより向上させることができる傾向にある。
【0133】
上記一般式(23)で表される光増感色素の具体例としては、例えば下記構造式(24)及び(25)で表されるものが挙げられる。
【化15】
【化16】
【0134】
なお、上記構造式(24)で表される第2光増感色素(NKX−2553)の吸収ピーク波長は455nmであり、上記構造式(25)で表される第2光増感色素(NKX−2554)の吸収ピーク波長は465nmである。
【実施例】
【0135】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0136】
<光増感色素の合成>
(合成例1)
6−(2−ナフチル)−2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸の合成
6−クロロ−2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸ジメチル1.34gをテトラヒドロフラン240mlに溶解させて溶液を得た。そして、この溶液に2−ナフチルボロン酸ピナコールエステル1.34g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.25g、炭酸ナトリウム0.56g及び水50mlを加え、反応溶液を得た。そして、この反応溶液を、アルゴン雰囲気下、2時間加熱還流させて反応を行わせた。反応終了後、得られた溶液を静置して水層と有機層とに分離させた。水層をクロロホルムで抽出処理し、この抽出処理により得られた抽出液を、上記有機層と合わせて一つの有機層とした。そして、この有機層を飽和食塩水で洗浄した。次に、飽和食塩水から有機層を分離した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、有機層から溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をクロロホルムにて再結晶し、固体1.19gを得た。この固体についてNMRを測定したところ、結果は以下に示す通りであった。

1H−NMR(270MHz/CDCl3)δ(ppm):4.04(s、6H)、7.55(m、2H)、7.92(m、2H)、8.02(m、2H)、8.40(d、1H)、8.52(s、1H)、8.66(s、1H)、8.89(d、1H)、8.93(s、1H)、9.17(s、1H)
【0137】
上記結果より、上記固体は、6−(2−ナフチル)−2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸ジメチルであることが分かった。
【0138】
上記のようにして得られた6−(2−ナフチル)−2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸ジメチルをメタノール−水混合溶媒に加えて懸濁液を得た。そして、この懸濁液を、水酸化ナトリウムを加えて加熱還流することにより、6−(2−ナフチル)−2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸を得た。
【0139】
(2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸)[6−(2−ナフチル)−2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸]ジチオシアナートルテニウム(II)の合成
上記のようにして得られた6−(2−ナフチル)−2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸110mgとジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー90mgとをジメチルホルムアミド40mlに溶解させ、アルゴン雰囲気下、80℃で4時間撹拌し、反応溶液を得た。続いてこの反応溶液を、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸38mgを加えて140℃で4時間加熱還流した。さらにこの反応溶液にテトラブチルアンモニウムチオシアナート2.7gを加え、140℃で4時間加熱還流した。加熱終了後、得られた溶液から溶媒を減圧留去し、残渣を0.1M水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液に溶解させた。そして、得られた溶液に硝酸を加えてpHを3.4に調整して沈殿物を得た。続いて、得られた沈殿物をろ別して粗生成物を得た。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(充填剤:Sephadex LH−20、溶離液:水)にて精製し、固体130mgを得た。この固体についてNMR及びMS(マススペクトル)を測定したところ、結果は以下に示す通りであった。

1H−NMR(270MHz/CD3OD)δ(ppm):6.22(d)、6.53(s)、6.94(d)、7.15−7.38(d)、7.42−7.90(m)、7.90−8.11(m)、8.23(m)、8.32(s)、8.58(m)、8.71(d)、9.00(s)、9.17(s)、9.52(d)
MS(ESI−MS):m/z=830.5
【0140】
上記結果より、上記固体は、(2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸)[6−(2−ナフチル)−2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸]ジチオシアナートルテニウム(II)であることが分かった。
【0141】
(実施例1)
まずガラスからなる厚さ1mmの透明基板の上に、厚さ1μmのFTOからなる透明導電膜を形成してなる透明導電性基板を準備した。
【0142】
次に、透明導電膜上に、チタニアを含む酸化物半導体層形成用ペーストを塗布し乾燥した後、500℃で1時間焼成した。こうして厚さ40μmの多孔質酸化物半導体層を有する作用極を得た。
【0143】
次に、作用極を、色素溶液中に一昼夜浸漬させた後、取り出して乾燥させ、酸化物半導体層に光増感色素を担持させた。色素溶液は、1−プロパノール溶媒中に、上記のようにして得られた合成例1の光増感色素を0.2mMとなるように溶解させることで作製した。
【0144】
次に、多孔質酸化物半導体層の上に、電解質を塗布した。電解質は、アセトニトリルからなる溶媒中に、ヨウ化リチウムを2.0M、Iを0.05Mとなるように溶解させることで調製した。
【0145】
次に、封止部を形成するための封止部形成体を準備した。封止部形成体は、10mm×10mm×50μmのアイオノマー(商品名:ハイミラン、三井・デュポンポリケミカル社製)からなる1枚の封止用樹脂フィルムを用意し、その封止用樹脂フィルムに、四角形状の開口を形成することによって得た。このとき、開口は、6mm×6mm×50μmの大きさとなるようにした。
【0146】
そして、この封止部形成体を、作用極の上に載せた後、封止部形成体を加熱溶融させることによって作用極に接着させた。
【0147】
次に、対極を用意した。対極は、15mm×15mm×1mmのFTO導電性ガラス基板の上にスパッタリング法によって厚さ600nmの白金からなる触媒層を形成することによって用意した。また、上記封止部形成体をもう1つ準備し、この封止部形成体を、対極のうち作用極と対向する面に、上記と同様にして接着させた。
【0148】
そして、作用極に接着させた封止部形成体と、対極に接着させた封止部形成体とを対向させ、封止部形成体同士を重ね合わせた。そして、この状態で封止部形成体を加圧しながら加熱溶融させた。こうして作用極と対極との間に封止部を形成した。
【0149】
こうして色素増感太陽電池を得た。
【0150】
(比較例1)
光増感色素としてN719を用いたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0151】
<特性の評価>
(1)光増感色素の評価
合成例1および比較例1の光増感色素をそれぞれエタノールに溶解させて0.05mMの溶液とし、紫外可視(UV−vis)分光光度計(島津製作所社製、製品名UV2550)で吸光度を測定し、モル吸光係数のスペクトルを得た。結果を図4に示す。図4において、実線がそれぞれ実施例1の吸光スペクトルであり、破線が比較例1の吸光スペクトルである。
【0152】
(2)色素増感太陽電池の光電変換特性の評価
まず、実施例1及び比較例1の色素増感太陽電池について、ソーラーシュミレーター(山下電装社製、製品名YSS−150A)を用いて、照射光100mW/cm(1sun)、エアマス1.5の条件での光電変換効率η(%)を測定し、これを高照度下における光電変換効率とした。
【0153】
次に、実施例1及び比較例1の色素増感太陽電池について、ソーラーシュミレーター(山下電装社製、製品名YSS−150A)を、照射光100mW/cm(1sun)、エアマス1.5の条件に設定し、色素増感太陽電池が実際に受光する光量が10mW/cm(0.1sun)となるように、メッシュを用いて色素増感太陽電池に影を作り、光電変換効率η(%)を測定し、これを低照度下における光電変換効率とした。
【0154】
そして、低照度における光電変換効率η、高照度下における光電変換効率ηの値を用いて、下記式で定義される「光電変換効率比η」を算出した。
光電変換効率比η=η/η
実施例1〜5及び比較例1について、光電変換効率比ηの値を表1に示す。
【表1】
【0155】
また図4に示す結果より、300〜400nmの近紫外領域において、実施例1の光増感色素のモル吸光係数は、比較例1の光増感色素のモル吸光係数よりも大きいものになることがわかった。
【0156】
また、表1に示す結果より、実施例1の色素増感太陽電池は、比較例1の色素増感太陽電池に比べて光電変換効率比ηの値が十分小さいものになる、すなわち、低照度下における光電変換効率に対する高照度下における光電変換効率の比が十分小さいものになることがわかった。
【0157】
以上より、本発明の光増感色素によれば、色素増感太陽電池に用いた場合に、色素増感太陽電池の低照度下における光電変換効率に対する高照度下における光電変換効率の比を十分に小さくさせることができることが確認された。
【符号の説明】
【0158】
10…作用極
11…透明基板
12…透明導電膜
13…酸化物半導体層
15…透明導電性基板(第1電極)
20…対極(第2電極)
40…電解質
100…色素増感太陽電池
図1
図2
図3
図4