(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
制御エリア毎にその空調温度又は照明の明るさを設定値に調整する機能を備える需要者設備と、需要者設備にエネルギーを供給するエネルギー供給設備と、利用者から収集した意見データに基づいて各制御エリアの空調温度又は照明の明るさの設定値を決定する情報処理装置とを有するスマートエネルギーシステムにおいて、
前記情報処理装置は、
制御エリアと利用者を対応付ける処理部と、
空調温度又は照明の明るさに対する意見データを利用者端末から収集する処理部と、
制御エリア毎に意見データを集計する処理部と、
集計結果に基づいて制御エリア毎に設定温度又は照明の明るさを決定する処理部と、
制御エリア毎に利用者全体の中での各利用者の意見ポジションを決定する処理部と、
各利用者に対し、利用者全体の中での各自の意見ポジションをフィードバックする処理部と、
少なくとも決定された設定値と意見が異なる利用者に対してインセンティブ情報を通知する処理部と
を有することを特徴とするスマートエネルギーシステム。
制御エリア毎にその空調温度又は照明の明るさを設定値に調整する機能を備える需要者設備と、需要者設備にエネルギーを供給するエネルギー供給設備と、利用者から収集した意見データに基づいて各制御エリアの空調温度又は照明の明るさの設定値を決定する情報処理装置とを有するスマートエネルギーシステムの制御方法において、
前記情報処理装置が、
各制御エリアに利用者を対応付ける処理と、
空調温度又は照明の明るさに対する意見データを利用者端末から収集する処理と、
制御エリア毎に意見データを集計する処理と、
集計結果に基づいて制御エリア毎に設定温度又は照明の明るさを決定する処理と、
制御エリア毎に利用者全体の中での各利用者の意見ポジションを決定する処理と、
各利用者に対し、利用者全体の中での各自の意見ポジションをフィードバックする処理と、
少なくとも決定された設定値と意見が異なる利用者に対してインセンティブ情報を通知する処理と
を実行することを特徴とするスマートエネルギーシステム制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の実施の態様は、後述する実施例に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々の変形が可能である。
【0010】
〔実施例〕
[システム構成]
図1に、実施例に係るスマートエネルギーシステム1の概念構成を示す。本システムは、地域冷暖房システム、地域エネルギーシステム等とも呼ばれるシステムを想定する。同システムは、利用者端末10と、ネットワーク20と、情報処理装置30と、エネルギー供給設備40と、需要者設備50とで構成される。
【0011】
利用者端末10は、制御エリア(例えば空調制御エリア、照明制御エリア)内に居る利用者が操作する端末であり、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末である。利用者端末10は、データ処理部と、メモリと、通信インタフェースと、表示デバイスとを有している。利用者端末10には、空調温度や照明の明るさに対する利用者個人の主観に基づく意見の入力を受付ける機能、受け付けた意見を意見データとして情報処理装置30に送信する機能、情報処理装置30から利用者全体の中での自身の意見ポジションを取得する機能、取得した意見ポジションを表示する機能を実行するアプリケーションがインストールされている。利用者端末10とネットワーク20との間の通信方式は無線通信方式でも有線通信方式でも良い。また、通信プロトコルは任意である。
【0012】
本実施例の場合、空調制御エリアは、空調機(AHU: Air Handling Unit)531によって個別に温度調整可能なエリア毎に設定される。照明制御エリアは、照明器具521によって明るさを個別に調整可能なエリア毎に設定される。なお、照明器具521の明るさの調整は、調光機能による調整や点灯制御する照明器具521の数の増減により実現する。
【0013】
ネットワーク20は、通信キャリアが提供する無線ネットワークやIPネットワーク等である。例えば利用者端末10との間の通信には無線ネットワークが使用され、情報処理装置30やエネルギー供給設備40等との間の通信にはIPネットワークが使用される。
【0014】
情報処理装置30は、物理的にはネットワーク20に接続された1つ又は複数のコンピュータ又はサーバで構成され、その処理機能は例えばクラウドコンピューティングサービス上のサービスの1つとして実現される。情報処理装置30には、後述するようにネットワーク20経由で利用者の意見データを収集する機能、収集した意見データを統計処理する機能、多数決判定により空調温度や照明の明るさの設定値を決定する機能(その制御に必要な目標数値を決定する機能を含む)、利用者全体の中での各利用者の意見ポジション(例えば平均値や最頻値からの離散値)をフィードバックする機能等を有している。統計処理では、多数決処理、正規化処理、重み付け処理等が必要に応じて実行される。
【0015】
エネルギー供給設備40は、エネルギー事業者が例えば熱需要に基づいてエネルギーを供給するシステムであり、中央監視システムと各種の熱源システムとで構成される。エネルギー供給設備40と一定地域内の需要者設備50とは地域導管を通じて接続されており、地域導管を通じ、冷水、温水、蒸気などの熱媒体や電力が供給される。なお、電力の供給は任意である。また、供給される熱媒体の種類も任意である。
【0016】
需要者設備50は、エネルギー供給設備40からエネルギーの供給を受けるビル内に設けられる設備であり、ビルオートメーションシステム51、照明設備52(照明器具521)、空調設備53(AHU531)、ダクト、ネットワーク、温度センサ、照度センサ等で構成される。ここで、ビルオートメーションシステム51は、ネットワーク20を通じて情報処理装置30やエネルギー供給設備40と接続されており、個々の照明器具521やAHU531を設定値に制御するために必要な制御情報を送受する。
【0017】
[情報処理装置の機能構成]
図2に、情報処理装置30の機能構成例を示す。前述したように、情報処理装置30は、物理的には1つ又は複数のコンピュータ又はサーバで構成される。
図2に示すように、情報処理装置30は、データベース31と、データ処理部32と、通信インタフェース33とで構成される。データベース31は、データ処理部32で発生する又はデータ処理に必要となる各種のデータを格納する記憶領域であり、例えばハードディスク装置で構成される。
【0018】
データ処理部32は、利用者位置確認処理部321、意見データ収集処理部322、エリア別集計処理部323、エリア別設定値決定処理部324、意見ポジション決定処理部325、設定値フィードバック処理部326、意見ポジションフィードバック処理部327、エネルギー情報フィードバック処理部328、ポイント付与処理部329を含んでいる。
【0019】
利用者位置確認処理部321は、利用者の現在位置と制御エリア(空調制御エリアや照明制御エリア)との対応関係を確認する処理を実行する。現在位置は、例えば利用者端末10が通信に使用するアクセスポイントやルータ等のIPアドレスと制御エリアとの対応関係から確認する。現在位置の確認処理により、個々の制御エリアと利用者との対応関係が確定する。
【0020】
意見データ収集処理部322は、利用者端末10の利用者に宛てて、現在の空調温度や照明の明るさについての意見を問い合わせ、各利用者端末10から意見データを収集する処理を実行する。利用者端末10に対する意見の入力には、後述する入力操作画面を使用する。意見の入力には主観や数値を選択項目から選択する方法、任意の数値を入力する方法などがある。なお、意見データの収集は、一定時間毎に繰り返し実行される。
【0021】
エリア別集計処理部323は、利用者から収集した意見データを制御エリア毎に集計する処理を実行する。ここでの集計結果は、制御エリア別に空調温度や照明の明るさを変更するか否かを決定するために使用される他、その判定ロジックの選択にも使用される。
【0022】
エリア別設定値決定処理部324は、判定ロジックと意見データの集計結果に基づいて、空調温度や明るさを変更するか否かを決定する処理を実行する。
【0023】
意見ポジション決定処理部325は、制御エリア別に利用者全体の中での各利用者の意見ポジションを決定する処理を実行する。例えば意見が主観を表す項目名(例えば「暑い」、「ちょうどいい」、「寒い」)で入力されている場合、同じ項目名を意見ポジションに使用する。例えば利用者が意見を数値で入力する場合、入力された数値を意見ポジションとする他、平均値や最頻値に対する離散値等を意見ポジションとする。
【0024】
設定値フィードバック処理部326は、制御エリア毎に決定した空調温度や照明の明るさの設定値を、対応する制御エリアの利用者にフィードバックする処理を実行する。
【0025】
意見ポジションフィードバック処理部327は、制御エリア毎に集計された集計結果に対する利用者の意見ポジションを対応する利用者にフィードバックする処理を実行する。このフィードバック機能は本実施例に特徴的な機能の一つである。この機能の搭載により、利用者は、利用者全体の中での自身の意見ポジションを客観的に認識することが可能になる。利用者全体の中での意見ポジションが分かることで、利用者の納得感は少なからず向上するものと期待される。また、納得感の向上に伴い、利用者の主体的な行動(例えば卓上扇風機や卓上電気スタンドの設置、上着の着用、薄着への変更等)を促すことができ、快適性とより積極的なエネルギーの需要調整を実現できる。
【0026】
エネルギー情報フィードバック処理部328は、エネルギー情報(例えばエネルギー消費やエネルギーコスト、二酸化炭素発生量など)に関する増減を利用者にフィードバックする処理を実行する。
【0027】
ポイント付与処理部329は、自身の意見が設定値に反映されなかった利用者に対してポイントを付与する処理を実行する。ポイントの付与は、利用者の意見が設定値を基準にある数値範囲に収まる場合に限定しても良い。極端な意見にポイントを付与すると、エネルギー消費の低減に反する可能性があるためである。なお、利用者毎に付与されたポイントは、データベース31に保存する。ここでのポイントの付与やエネルギー情報のフィードバックは、設定値の決定に対する利用者の不満を低減させるインセンティブとしての効果も期待できる。
【0028】
[設定温度の調整処理]
図3に、情報処理装置30を通じて実行される空調制御手順例を示す。なお、
図3では、空調制御エリア毎に空調温度を制御する場合を前提とするが、照明制御エリア毎に照明の明るさを制御する場合も同様の手順で実現することができる。なお、照明制御手順の場合には、
図3における「空調制御エリア」を「照明制御エリア」と、「暑い」を「明るい」と、「寒い」を「暗い」と、「温度設定」を「照明設定」等と読み替えれば良い。
【0029】
空調制御を開始した情報処理装置30は、初期設定温度T0を確認する(S100)。次に、情報処理装置30は、利用者個人の位置を確認する(S101)。ここで、情報処理装置30は、例えば利用者が使用する利用者端末10がアクセスしたネットワーク機器のIPアドレスを取得する。この後、情報処理装置30は、2系統の処理を並行に実行する。一方の系統はS102〜S104であり、他方の系統はS105〜S107である。
【0030】
まず、S102〜S104で規定される系統において、情報処理装置30は、取得した利用者の位置情報と空調制御エリアとの対応付けを実行する(S102)。次に、情報処理装置30は、空調制御エリアに居る人数を決定する(S103)。その後、情報処理装置30は、空調制御エリアに居る人数に応じ、設定温度の決定時に使用する温度制御判定ロジックを決定する。
【0031】
一方、S105〜S107で規定される系統において、情報処理装置30は、現空調温度に対する利用者の意見を問い合わせる(S105)。具体的には、確認対象とする空調制御エリアに居る利用者全員に対し(具体的には各自の利用者端末10を宛て先として)現空調温度に対する意見を問い合わせるメッセージを送信する。例えば「暑い」、「寒い」、「ちょうどいい」のいずれに該当するかを問い合わせるメッセージを送信する。その後、情報処理装置30は、メッセージ送信時点からの経過時間tが閾値t1を越えたか否か判定する(S106)。ここでの閾値t1は利用者が確認メッセージに応答するために与えられた時間(秒)である。経過時間tが判定時間t1を超えると、情報処理装置30は、その時点で利用者端末10からの意見データの収集を締め切り、集計する(S107)。
【0032】
これらの処理の後、情報処理装置30は、空調制御エリア毎に設定温度の決定処理を実行する(S108)。本実施例の場合、
図4−1に示す温度制御判定ロジックと
図4−2に示す温度制御判定ロジックのいずれか一方がS104の決定に従って選択され、情報処理装置30において実行される。
【0033】
図4−1に示す温度制御判定ロジックが選択された場合、情報処理装置30は、まず「暑い」が最多か否かを判定する(S1081)。S1081で肯定結果が得られた場合、情報処理装置30は、設定温度を現在値よりもT1℃低い値に決定する(S1082)。これに対し、S1081で否定結果が得られた場合、情報処理装置30は、「寒い」が最多か否か判定する(S1083)。S1083で肯定結果が得られた場合、情報処理装置30は、設定温度を現在値よりもT1℃高い値に決定する(S1084)。これに対し、S1083でも否定結果が得られた場合、情報処理装置30は、設定温度の変更が必要ないと判定し、そのまま次の処理S109に進む。
【0034】
一方、
図4−2に示す温度制御判定ロジックが選択された場合、情報処理装置30は、まず最も多い意見と2番目に多い意見の頻度を比較する(S1181)。次に、情報処理装置30は、2つの意見の間にある頻度の差が全体のx%以上か否かを判定する。xの値は判定状況に応じて修正可能である。頻度の差が小さい場合、情報処理装置30は、設定温度の変更が必要ないと判定し、そのまま次の処理S109に進む。一方、頻度の差がx%よりも大きかった場合、情報処理装置30は、「寒い」が最も頻度の高い意見か否か判定する(S1183)。S1183で肯定結果が得られた場合、情報処理装置30は、設定温度を現在値よりもT1℃高い値に決定する(S1184)。これに対し、S1183で否定結果が得られた場合、情報処理装置30は、「暑い」が最も頻度の高い意見か否か判定する(S1185)。S1185で肯定結果が得られた場合、情報処理装置30は、設定温度を現在値よりもT1℃低い値に決定する(S1186)。これに対し、S1185でも否定結果が得られた場合、情報処理装置30は、設定温度の変更が必要ないと判定し、そのまま次の処理S109に進む。
【0035】
この設定温度の決定後、情報処理装置30は、決定された設定温度に従ってビルオートメーションシステム51に対して温度の制御を指示すると共に、各利用者に対して温度制御の結果をフィードバックする(S109)。
図5に、S109で実行される処理内容の詳細を示す。まず、情報処理装置30は、空調制御エリア毎に設定温度の変更の有無を確認する(S1091)。次に、情報処理装置30は、フィードバック対象者の意見と対応する空調制御エリアにおける設定温度の変更の有無との関係を整理する(S1092)。例えば設定温度の変更の有無とフィードバック対象者の意見との一致・不一致を確認する。この後、情報処理装置30は、フィードバック対象者に対して設定温度の変更の実施・未実施をフィードバックする(S1093)。このS109の処理では、例えば「設定温度を27℃から26℃に変更しました。あなたの意見が反映されました。」や「設定温度は引き続き27℃です。他の多くの方の意見が反映されています」等のメッセージがフィードバックされる。
【0036】
続いて、情報処理装置30は、集団内における個人の意見ポジションをフィードバックする(S110)。
図6に、S110で実行される処理内容の詳細を示す。まず、情報処理装置30は、空調制御エリア毎に温度設定の決定に参加した利用者の人数を整理する(S1101)。例えば空調制御エリア1については30人、空調制御エリア2については23人というように整理する。次に、情報処理装置30は、空調制御エリア毎に温度設定の決定に参加した利用者の意見を人数別に整理する(S1102)。例えば空調制御エリア1の場合、「寒い」が3人、「ちょうどいい」が18人、「暑い」が「9人」というふうに同じ意見区分に属する人数を整理する。次に、情報処理装置30は、フィードバック対象者が送信した意見を確認する(S1103)。その後、情報処理装置30は、集団内におけるフィードバック対象者の意見ポジションをフィードバックする(S1104)。
【0037】
この後、情報処理装置30は、エネルギー情報(例えばエネルギー消費量、エネルギーコスト、二酸化炭素等)の増減をフィードバックする(S111)。その後、情報処理装置30は、データベース31に、利用者個人の意見と設定温度の変更の有無等を保存する(S112)。これらの後、情報処理装置30は、今回の判定開始からの経過時間tが閾値t2を越えたか否か判定する(S113)。ここでの閾値t2は利用者に空調温度に対する意見を問い合わせる周期(インターバル)を与える時間(秒)である。
【0038】
[インタフェース例]
図7及び
図8に、主観に基づく意見を利用者に問い合わせる際に使用するインタフェース画面例と意見ポジションをフィードバックする際に使用するインタフェース画面例を示す。なお、
図7と
図8は空調制御エリアの空調温度を利用者の意見に基づいて制御する場合の例である。
【0039】
図7(a)は、主観に対応する「暑い」、「ちょうどいい」、「寒い」を選択方式で入力するためのインタフェース画面である。
図7(b)は、主観による入力方式である点では
図7(a)と同じであるが、さらに詳細なニュアンスを入力可能なインタフェース画面である。本例の場合、スライダー71を軸線に沿って左右に移動させることにより、主観を入力する。
図7(c)は、利用者の意見を数値入力する際に使用するインタフェース画面である。図では、数値入力の基準として現在温度が表示されている。
【0040】
図8(a)は、利用者の意見を主観表現で収集した場合に用いるインタフェース画面である。
図8(a)は、利用者の意見ポジションを他の意見の棒グラフとは異なる色又は輝度で表す例であり、意見ポジションが「ちょうどいい」の場合を表している。
図8(b)は、利用者の意見を数値で収集した場合のインタフェース画面の一例である。この場合、集計結果を表示する数値範囲(上下限値)を一定範囲に限定したり、数値の表示範囲を一定刻みに加工しても良い。この場合も、色や輝度の違いで利用者の意見ポジションを表示することも可能であるが、
図8(b)では矢印にて利用者の意見ポジションを表す手法を採用している。
図8(c)は集計結果を正規分布図で表す例である。この例では、利用者の意見ポジションを矢印で表している。
【0041】
[具体例のイメージ]
最後に、具体例に基づいて、意見ポジションのフィードバック機能のイメージを説明する。ここでは、ある部屋に10人の在室者がおり、現在の室温が27℃に設定されているものとする。また、各人は、システム側からの問い合わせに対し、現在の室温が「暑い」、「寒い」、「ちょうどいい」のいずれかを回答するものとする。本例では、例えば10人のうち9人が「ちょうどいい」を回答し、1人が「暑い」を回答したとする。
【0042】
この場合、情報処理装置30は、これらの10人が在室する部屋の空調を行うAHU531の設定温度を「変更しない」に決定する。なお、従来方式のように「暑い」と回答した人に対して情報をフィードバックしない場合、自分の希望が採択されなかった人は、その決定に対して不満を持つ。この状態は、メンバーが代わらない限り基本的に繰り返され、空調温度を「暑い」と感じる人の不満が蓄積されることになる。
【0043】
これに対し、本実施例では、意見が反映されなかった人が、自身の意見が在室者全体の中でどのような位置づけにあるかを客観的に確認できるため、納得感の向上を図ることができる。また、温度を1℃下げるために、○○○のエネルギー量(あるいは◎◎◎の電気代)が追加で必要である場合に、本実施例では、「暑い」と感じた人に対して「◎◎◎円の費用節減に貢献できました。」というようなメッセージをフィードバックする。すなわち、今回の我慢に対する心理的なインセンティブ(代償)をフィードバックする。なお、インセンティブは、ポイントの付与の形態で行うこともできる。この納得感の向上とインセンティブの付与により、多くの利用者の我慢は肯定的なものに変化し、意見が反映されないことに対する不満の解消や軽減が期待されることになる。
【0044】
[まとめ]
前述したように、集中制御方式(セントラル方式)では、「個の意見」を「全体の意見」に発展させて設定温度や明るさを決定するため、どうしても「全体の意見」と一致しない「個の意見」が生じることになる。
【0045】
しかし、本実施例では、意見が棄却される根拠を利用者全体の中での個人の意見ポジションとしてフィードバックすることにより、意見が棄却されたことに対する納得感を高め、その結果としての主体的な対応行動(例えば卓上扇風機、卓上電気スタンドの設置、上着の着用、薄着への変更等)を促すことができ、快適性とより積極的なエネルギーの需要調整を実現することができる。
【0046】
また、前述の実施例では、意見が棄却された利用者の我慢に対してインセンティブを与えているが、エネルギーコストの削減により発生するメリットを個人や所属団体に対するインセンティブ(例えばポイント)として還元する仕組みを導入することにより、集中制御方式(セントラル方式)における制御をエネルギーコストが削減される方向に誘導することもできる。