(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969896
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20160804BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
B60C11/03 A
B60C11/03 300D
B60C11/13 C
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-242803(P2012-242803)
(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公開番号】特開2014-91408(P2014-91408A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米津 功
【審査官】
細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−136908(JP,A)
【文献】
特開2004−351953(JP,A)
【文献】
特開2011−152845(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0180190(US,A1)
【文献】
特開2010−076561(JP,A)
【文献】
特開平08−197910(JP,A)
【文献】
特開平06−115319(JP,A)
【文献】
欧州特許第00591002(EP,B1)
【文献】
特開2010−202079(JP,A)
【文献】
特開平09−030213(JP,A)
【文献】
米国特許第00641536(US,A)
【文献】
米国特許第05269357(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00−11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッチ長を異ならせた3種類以上のピッチ要素がバリアブルピッチで配列されたトレッドパターンを有し、タイヤ周方向に延びる主溝で区分されたトレッド面の陸部のうち、タイヤ幅方向の最外側に位置するショルダー陸部がブロック列により形成されている空気入りタイヤにおいて、
前記ブロック列を構成するブロックが、接地端よりもタイヤ幅方向内側に位置する屈曲部から前記主溝へ向かって延び且つタイヤ幅方向に対して傾斜した内側溝部と、前記屈曲部から前記接地端へ向かって延び且つタイヤ幅方向に対して前記内側溝部とは逆向きに傾斜した外側溝部とを有する平面視V字状の横溝により区分され、
前記ブロック列を区分する横溝のうち、ピッチ長が最も大きい最大ピッチ要素における横溝を第1横溝、ピッチ長が最も小さい最小ピッチ要素における横溝を第2横溝、ピッチ長が最大ピッチ要素よりも小さく且つ最小ピッチ要素よりも大きい中間ピッチ要素における横溝を第3横溝とするとき、
前記第1横溝の屈曲部がブロック幅中央からタイヤ幅方向に位置ずれしていて、その第1横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離が相対的に最も大きく、前記第2横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離が相対的に最も小さいことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第3横溝の屈曲部がブロック幅中央から前記第1横溝の屈曲部と同じ側に位置ずれし、前記ピッチ要素のピッチ長が大きいほど、そのピッチ要素における前記横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離が大きい請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
ピッチ長を異ならせてタイヤ周方向に隣り合う一対の前記ピッチ要素のうち、一方のピッチ要素における前記横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離と、他方のピッチ要素における前記横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離との差が、ブロック幅の5〜15%である請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1横溝の屈曲部と前記第3横溝の屈曲部とが、それぞれブロック幅中央からタイヤ幅方向外側に位置ずれしており、
前記第1横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離と、前記第2横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離との差が、ブロック幅の20〜40%である請求項1〜3いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1横溝の屈曲部と前記第3横溝の屈曲部とが、それぞれブロック幅中央からタイヤ幅方向内側に位置ずれしており、
前記第1横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離と、前記第2横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離との差が、ブロック幅の25%以下である請求項1〜3いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記内側溝部の溝幅が前記外側溝部の溝幅よりも小さい請求項1〜5いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリアブルピッチのトレッドパターンを有し、ショルダー陸部がブロック列により形成された空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、タイヤのトレッド面には、タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、それにより区分された複数の陸部とが設けられる。この複数の陸部のうち、タイヤ幅方向の最外側に位置するショルダー陸部をブロック列により形成した空気入りタイヤが従来公知である(例えば、特許文献1〜3)。
【0003】
ところが、そのような空気入りタイヤでは、パターンノイズと呼ばれる車外騒音が発生する傾向にある。パターンノイズは、タイヤの回転に伴って横溝内の空気が圧縮と開放を繰り返し、そのときに周期的に圧送される空気の圧力波に起因して発生する。パターンノイズを低減する手法として、パターンデザインの繰り返しの基本となるピッチ要素のピッチ長(タイヤ周方向長さ)を種々に異ならせて配列した、いわゆるバリアブルピッチが知られている(例えば、特許文献4〜6)。
【0004】
しかし、バリアブルピッチのトレッドパターンでは、ブロック列を構成するブロックのタイヤ周方向長さが互いに異なるために、ブロックの倒れ込みやすさに起因した剛性差を生じ、ブロック列の周方向剛性が不均一となる。その結果、ブロックの各々の摩耗量がタイヤ周方向長さに応じて変化し、タイヤ周方向での段差摩耗などの偏摩耗を生じやすい。また、ブロックを区分する横溝がタイヤ幅方向と平行に延びると、その横溝に面するブロックエッジが路面に一斉に当接し、その衝撃音により車外騒音が大きくなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−275406
【特許文献2】特開2004−352049
【特許文献3】特開2010−120473
【特許文献4】特開平3−136908
【特許文献5】特開2004−351953
【特許文献6】特開2007−45233
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、バリアブルピッチのトレッドパターンにおいて、ブロック列で形成されたショルダー陸部における偏摩耗と車外騒音を抑制できる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねたところ、ショルダー陸部をブロックに区分する横溝が平面視V字状に屈曲する構造によれば、車外騒音の抑制効果とともにブロックの倒れ込み抑制効果が得られること、及び、横溝の屈曲部をブロック幅中央に近付けるほどブロックの倒れ込み抑制効果を向上できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、下記の如き構成により上記目的を達成できるものである。
【0008】
即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、ピッチ長を異ならせた3種類以上のピッチ要素がバリアブルピッチで配列されたトレッドパターンを有し、タイヤ周方向に延びる主溝で区分されたトレッド面の陸部のうち、タイヤ幅方向の最外側に位置するショルダー陸部がブロック列により形成されている空気入りタイヤにおいて、前記ブロック列を構成するブロックが、接地端よりもタイヤ幅方向内側に位置する屈曲部から前記主溝へ向かって延び且つタイヤ幅方向に対して傾斜した内側溝部と、前記屈曲部から前記接地端へ向かって延び且つタイヤ幅方向に対して前記内側溝部とは逆向きに傾斜した外側溝部とを有する平面視V字状の横溝により区分され、前記ブロック列を区分する横溝のうち、ピッチ長が最も大きい最大ピッチ要素における横溝を第1横溝、ピッチ長が最も小さい最小ピッチ要素における横溝を第2横溝、ピッチ長が最大ピッチ要素よりも小さく且つ最小ピッチ要素よりも大きい中間ピッチ要素における横溝を第3横溝とするとき、前記第1横溝の屈曲部がブロック幅中央からタイヤ幅方向に位置ずれしていて、その第1横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離が相対的に最も大きく、前記第2横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離が相対的に最も小さいものである。
【0009】
この空気入りタイヤでは、ショルダー陸部をブロックに区分する横溝が平面視V字状に屈曲し、内側溝部と外側溝部がタイヤ幅方向に対して傾斜するため、その横溝に面するブロックエッジが路面と一斉に当接せず、その衝撃音による車外騒音を抑制できる。また、上記のように横溝の屈曲部の位置がピッチ要素のピッチ長に応じて変化していることで、短いブロックの倒れ込み抑制効果が相対的に大きく、長いブロックの倒れ込み抑制効果が相対的に小さくなり、それらの剛性差が低減する。これによってブロック列の周方向剛性の不均一が改善され、ショルダー陸部の偏摩耗を抑制できる。
【0010】
本発明では、前記第3横溝の屈曲部がブロック幅中央から前記第1横溝の屈曲部と同じ側に位置ずれし、前記ピッチ要素のピッチ長が大きいほど、そのピッチ要素における前記横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離が大きいものが好ましい。
【0011】
かかる構成によれば、ピッチ要素におけるピッチ長が長くなるにつれて、そのピッチ要素が含んだ横溝によるブロックの倒れ込み抑制効果が小さくなる。その結果、ブロック列を構成するブロック間の剛性差を適切に低減し、ブロック列の周方向剛性を良好に均一化せしめて、ショルダー陸部の偏摩耗を効果的に抑制できる。
【0012】
本発明では、ピッチ長を異ならせてタイヤ周方向に隣り合う一対の前記ピッチ要素のうち、一方のピッチ要素における前記横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離と、他方のピッチ要素における前記横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離との差が、ブロック幅の5〜15%であるものが好ましい。
【0013】
この距離の差をブロック幅の5%以上とすることにより、ブロックの倒れ込み抑制効果に相応の差異をもたらし、隣り合うブロック間の剛性差を適切に低減できる。また、距離の差をブロック幅の15%以下とすることにより、上述した横溝の屈曲部の位置変化をショルダー陸部内で設定しやすくなるとともに、横溝の屈曲部が主溝や接地端に近付き過ぎることなく、ブロックの倒れ込み抑制効果を確保するうえで都合が良い。
【0014】
本発明では、前記第1横溝の屈曲部と前記第3横溝の屈曲部とが、それぞれブロック幅中央からタイヤ幅方向外側に位置ずれしており、前記第1横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離と、前記第2横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離との差が、ブロック幅の20〜40%であるものでもよい。
【0015】
この距離の差をブロック幅の20%以上とすることにより、ブロックの倒れ込み抑制効果に相応の差異をもたらし、ブロック列の周方向剛性の不均一を適切に改善できる。また、距離の差をブロック幅の40%以下とすることにより、上述した横溝の屈曲部の位置変化をショルダー陸部内で設定しやすくなるとともに、横溝の屈曲部が接地端に近付き過ぎることを防いで、ブロックの倒れ込み抑制効果を良好に確保できる。
【0016】
本発明では、前記第1横溝の屈曲部と前記第3横溝の屈曲部とが、それぞれブロック幅中央からタイヤ幅方向内側に位置ずれしており、前記第1横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離と、前記第2横溝の屈曲部からブロック幅中央までのタイヤ幅方向距離との差が、ブロック幅の25%以下であるものでもよい。
【0017】
この場合、横溝の屈曲部が主溝に近付くことから、気柱管共鳴音のタイヤ幅方向外側への伝播を低めて車外騒音を抑制できる。それでいて、距離の差をブロック幅の25%以下とすることにより、横溝の屈曲部が主溝に近付き過ぎず、排水性の低下を抑えられる。加えて、上述した横溝の屈曲部の位置変化をショルダー陸部内で設定しやすくなるとともに、横溝の屈曲部が主溝に近付き過ぎることを防いで、ブロックの倒れ込み抑制効果を良好に確保できる。
【0018】
本発明では、前記内側溝部の溝幅が前記外側溝部の溝幅よりも小さいものでもよい。かかる構成によれば、気柱管共鳴音のタイヤ幅方向外側への伝播を低めて、車外騒音を良好に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】空気入りタイヤのトレッド面の一例を示す展開図
【
図3】横溝の屈曲部が曲率を有する場合における要部拡大図
【
図4】別実施形態におけるトレッド面の一部を示す拡大図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
本発明に係る空気入りタイヤは、例えば
図1に示すような、ピッチ長を異ならせた3種類以上のピッチ要素がバリアブルピッチで配列されたトレッドパターンを有する。本実施形態では、ピッチ長PL1を有する最大ピッチ要素PE1と、ピッチ長PL2を有する最小ピッチ要素PE2と、ピッチ長PL3を有する中間ピッチ要素PE3とからなる3種類が配列されている。このうちピッチ長PL1が最も大きく、ピッチ長PL2が最も小さく、ピッチ長PL3はピッチ長PL1よりも小さく且つピッチ長PL2よりも大きい。ピッチ要素の種類は、例えば3〜7種類である。
【0022】
トレッド面Trには、タイヤ周方向CDに沿って延びる複数の(本実施形態では4本の)主溝1と、それらにより区分された複数の(本実施形態では5つの)陸部が設けられている。この複数の陸部は、タイヤ幅方向の最外側に位置する一対のショルダー陸部2と、その内側に位置する一対のメディエイト陸部3と、タイヤ赤道CLを通るセンター陸部4とを含む。ショルダー陸部2のタイヤ幅方向内側に面する主溝1は、タイヤ周方向CDに連続して直線状に延びている。
【0023】
図2に拡大して示すように、ショルダー陸部2は、タイヤ周方向CDに配列された複数のブロック5からなるブロック列により形成されている。ブロック列を構成するブロック5の各々は、平面視でV字状に屈曲する横溝6により区分されている。横溝6は、接地端Eよりもタイヤ幅方向内側(
図2における上側)に位置する屈曲部6bから主溝1へ向かって延び且つタイヤ幅方向に対して傾斜した内側溝部6iと、屈曲部6bから接地端Eへ向かって延び且つタイヤ幅方向に対して内側溝部6iとは逆向きに傾斜した外側溝部6oとを有する。
【0024】
接地端Eは、タイヤをJATMA YEAR BOOK(2012年度版、日本自動車タイヤ協会規格)に規定されている標準リムに装着し、JATMAYEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%を内圧として充填し、最大負荷能力を負荷したときのタイヤ幅方向最外の接地部分を指す。使用地または製造地においてTRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
【0025】
ピッチ要素PE1〜PE3の各々には横溝6が含まれており、このうち最大ピッチ要素PE1における横溝6を第1横溝61、最小ピッチ要素PE2における横溝6を第2横溝62、中間ピッチ要素PE3における横溝6を第3横溝63としている。ショルダー陸部2では、第1横溝61の屈曲部6bがブロック幅中央BCからタイヤ幅方向に位置ずれしていて、その第1横溝61の屈曲部6bからブロック幅中央BCまでのタイヤ幅方向距離GLが相対的に最も大きく、第2横溝62の屈曲部6bからブロック幅中央BCまでのタイヤ幅方向距離GSが相対的に最も小さい。
【0026】
ブロック幅BWは、接地端Eと主溝1とのタイヤ幅方向距離として測定されるブロック5の幅(ショルダー陸部2の幅)である。ブロック幅中央BCは、ブロック幅BWを二等分するブロック5の中央位置(ショルダー陸部2の中央位置)である。距離GL、距離GS及び後述する距離GMの測定基準となる屈曲部6bの位置は、横溝6の溝中心線(溝幅の中央位置を通る仮想線)の屈曲箇所に基づいて定められる。
【0027】
このように横溝6がV字状に屈曲し、内側溝部6iと外側溝部6oがタイヤ幅方向に対して傾斜することにより、横溝6に面するブロックエッジが路面と一斉に当接せず、その衝撃音による車外騒音を抑制できる。また、上記のようにピッチ長に応じて屈曲部6bの位置が変化するため、比較的に低剛性となる短いブロック5では倒れ込み抑制効果が相対的に大きく、比較的に高剛性となる長いブロック5では倒れ込み抑制効果が相対的に小さくなり、それらの剛性差が低減する。これによってブロック列の周方向剛性の不均一が改善され、ショルダー陸部2の偏摩耗を抑制できる。
【0028】
既述のように、ブロック列を区分する横溝6のうち、第2横溝62の屈曲部6bがブロック幅中央BCに最も近く配置される。距離GSは、ブロック幅BWの0〜10%が好ましく、0〜5%がより好ましい。本実施形態では、第2横溝62の屈曲部6bがブロック幅中央BCに位置するとともに、第1横溝61の屈曲部6bがブロック幅中央BCからタイヤ幅方向外側に位置ずれしている。また、第3横溝63の屈曲部6bは、ブロック幅中央BCから第1横溝61の屈曲部6bと同じ側、即ちタイヤ幅方向外側に位置ずれしている。
【0029】
ショルダー陸部2では、ピッチ要素のピッチ長が大きいほど、そのピッチ要素における横溝6の屈曲部6bからブロック幅中央BCまでのタイヤ幅方向距離が大きくなり、距離GS<距離GM<距離GLの関係が成立する。距離GMは、第3横溝63の屈曲部6bからブロック幅中央BCまでのタイヤ幅方向距離である。4種類以上のピッチ要素が配列される場合には、ピッチ長が異なる数種類の中間ピッチ要素PE3において、それらにおける距離GMをピッチ長に応じて大きくすることが好ましい。
【0030】
ピッチ長を異ならせてタイヤ周方向CDに隣り合う一対のピッチ要素のうち、一方のピッチ要素における横溝6の屈曲部6bからブロック幅中央BCまでのタイヤ幅方向距離と、他方のピッチ要素における横溝6の屈曲部6bからブロック幅中央BCまでのタイヤ幅方向距離との差は、ブロック幅BWの5〜15%が好ましく、5〜10%がより好ましい。即ち、図例においては、距離GSと距離GMとの差、並びに、距離GMと距離GLとの差を、それぞれブロック幅BWの5〜15%とすることが好適である。
【0031】
本実施形態では、ピッチ要素PE1〜PE3を各々2つずつ並べてバリアブルピッチを構成しているが、これに限られるものではなく、例えばこれらを1つずつ並べたり、それらをランダムな個数でタイヤ周方向に繰り返し並べたりして配列することも可能である。パターンデザインの急激な変化を避けるうえでは、最大ピッチ要素PE1と最小ピッチ要素PE2が隣り合わないように、それらの間に中間ピッチ要素PE3を介在させることが好ましい。
【0032】
既述のように、本実施形態では、最大ピッチ要素PE1における第1横溝61の屈曲部6bと、中間ピッチ要素PE3における第3横溝63の屈曲部6bとが、それぞれブロック幅中央BCからタイヤ幅方向外側に位置ずれしている。かかる場合において、距離GLと距離GSとの差はブロック幅BWの20〜40%であることが好ましい。距離GMは、距離GLまたは距離GSと同じであっても構わないが、上述のように、それらの中頃とすることが好適である。
【0033】
横溝6は、屈曲部6bから主溝1まで延びた内側溝部6iと、屈曲部6bから接地端Eまで延びた外側溝部6oとを備えている。内側溝部6iと外側溝部6oは、それぞれ一定の溝幅で直線状に延びており、内側溝部6iの溝幅W1は、外側溝部6oの溝幅W2の90〜110%、若しくは95〜105%に設定される。車外騒音を良好に抑制するうえで、溝幅W1は、例えば溝幅W2の90%以上としつつ、溝幅W2よりも小さくすることが好ましい。溝幅W1,W2は、ショルダー陸部2の表面における溝幅として測定される。
【0034】
タイヤ周方向CDに対する内側溝部6iの傾斜角度θ1は、排水性の低下を防ぐうえで50°以上が好ましく、車外騒音を適切に抑制するうえで80°以下が好ましい。タイヤ周方向CDに対する外側溝部6oの傾斜角度θ2は、車外騒音を抑制する観点から90°未満が好ましく、80°以下がより好ましい。そのうえで、角度θ2を、例えばθ1±10°として、角度θ1と同等に設定することが好ましい。更に、排水性の低下を防ぐうえで、θ1+θ2≧120°を満たすことが好ましい。角度θ1,θ2は、横溝6の溝中心線を基準にして測定される。
【0035】
図3において、横溝6内の一点鎖線は、溝幅の中央位置を通る溝中心線である。横溝6の屈曲部6bは、このように曲率を持つものでもよく、その曲率半径Rは例えば5〜20mmに設定される。かかる場合において、距離GSなどの測定基準となる屈曲部6bの位置は、図示のように内側溝部6iと外側溝部6oにおける溝中心線の延長線を用いて定められる。
【0036】
図4は、最大ピッチ要素PE1における第1横溝61の屈曲部6bと、中間ピッチ要素PE3における第3横溝63の屈曲部6bとが、それぞれブロック幅中央BCからタイヤ幅方向内側(
図4における上側)に位置ずれした例であり、前述の実施形態と同様に距離GLが相対的に最も大きく、距離GSが相対的に最も小さい。かかる場合において、距離GLと距離GSとの差はブロック幅BWの25%以下が好ましい。また、ブロック列の周方向剛性の不均一を改善するうえで、距離GLと距離GSとの差はブロック幅BWの20%以上が好ましい。
【0037】
本実施形態では、上記の如き構造のショルダー陸部をタイヤ幅方向の両側に設けてある例を示すが、これをタイヤ幅方向の片側のみに設けても構わない。本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。したがって、例えば、トレッドパターンなどは使用する用途や条件に応じて適宜に変更することができる。
【0038】
この空気入りタイヤの内部構造は、一般的なラジアルタイヤと同様に構成できるため、内部構造についての説明は省略する。本発明の空気入りタイヤは、トレッド面に上記の如きショルダー陸部を設けること以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、従来公知の材料、形状、構造、製法などは何れも本発明に採用できる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示すため、耐偏摩耗性と車外騒音について評価したので説明する。これらの評価は下記(1)及び(2)のようにして行い、評価に供したタイヤのサイズは195/65R15、標準リムに組み付けて1500ccの乗用車に装着した。
【0040】
(1)耐偏摩耗性
上記車両に装着して乾燥路面を10000km走行し、ショルダー陸部を形成するブロック列での最大摩耗量と最小摩耗量との差を測定して、その逆数を算出した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、数値が大きいほど耐偏摩耗性に優れていることを示す。
【0041】
(2)車外騒音
ISO試験法に基づいて、上記車両に装着して乾燥路面を速度80km/hで走行したときの通過音を測定し、その逆数を算出した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、数値が大きいほど車外騒音が抑制されていることを示す。
【0042】
図1に示したバリアブルピッチのトレッドパターンにおいて、ショルダー陸部となるブロック列を区分する各横溝の屈曲部の配置を変えて比較例1,2及び実施例1〜5とした。比較例1は、各ピッチ要素における横溝の屈曲部がブロック幅中央に位置する例である。比較例2は、最大ピッチ要素における横溝の屈曲部がブロック幅中央に位置し、最小ピッチ要素と中間ピッチ要素における横溝の屈曲部がブロック幅中央からタイヤ幅方向外側に位置ずれする例である。表1における距離GS,GM,GLの数値は、ブロック幅に対する比率である。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示すように、実施例1〜5では、比較例1,2よりも耐偏摩耗性を改善できており、それでいて車外騒音の結果は比較例2と遜色がない。中でも実施例3〜5では、比較例1,2よりも車外騒音が抑制されている。
【符号の説明】
【0045】
1 主溝
2 ショルダー陸部
5 ブロック
6 横溝
6b 屈曲部
6i 内側溝部
6o 外側溝部
61 第1横溝
62 第2横溝
63 第3横溝
BC ブロック幅中央
BW ブロック幅
E 接地端
PE1 最大ピッチ要素
PE2 最小ピッチ要素
PE3 中間ピッチ要素