(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969902
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】モータ冷却装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/20 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
H02K1/20 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-254206(P2012-254206)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-103770(P2014-103770A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】吉野 靖
【審査官】
槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−153495(JP,A)
【文献】
特開2009−261181(JP,A)
【文献】
実開昭55−128463(JP,U)
【文献】
特開2007−060740(JP,A)
【文献】
特開平07−298524(JP,A)
【文献】
特開平09−215270(JP,A)
【文献】
特開平06−054469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層鋼板により固定子(1)が形成され、その各鋼板(2)は、それぞれ外周が整合すると共に、複数の突出部(3)が放射状に設けられ、その積層鋼板の前記突出部(3)が電磁極(4)を形成し、その各電磁極(4)の外周に磁極形成用のコイル(5)が巻回されたモータ冷却装置において、
その積層鋼板は、第1鋼板(2a)と第2鋼板(2b)とを有し、第1鋼板(2a)と第2鋼板(2b)とは互いに冷媒の出入口を形成する一対の連通部(6)(7)で積層方向に連通され、
第1鋼板(2a)は各突出部(3)の平面に放射方向にスリット(8)が形成され、そのスリット(8)に前記連通部(6)(7)が連通され、
その第1鋼板(2a)のスリット(8)に整合する位置で、第2鋼板(2b)の平面は平坦に形成され、
冷媒が前記連通部(6)(7)を介して各第1鋼板(2a)のスリット(8)に供給されるように形成され、
第1鋼板(2a)と第2鋼板(2b)との両者に前記スリット(8)が形成されると共に、両鋼板(2a)(2b)の各スリット(8)の位置は積層方向に重ならないように位置ずれして配置されたモータ冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ冷却装置において、
第1鋼板(2a)と第2鋼板(2b)とが交互に積層されたモータ冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの固定子をその内部から冷却するモータ冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の電気自動車用モータおよびその冷却方法が提案されている。これは、固定子を形成する積層鋼板の積層方向に複数の孔を穿設し、そこに冷媒を流通させ、固定子のコイルの通電に基づく発熱を吸収するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−46972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の冷却方法は、固定子を構成する積層鋼板の積層方向に複数の貫通孔を設け、その貫通孔に冷媒を流通させるものである。そのため、冷媒の接触する放熱面積が極めて小さく、冷却効果があまり期待できない欠点があった。
そこで、本発明は、冷媒が接触する流路面積を可及的に広くした、冷却効果の高いモータの冷却装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、積層鋼板により固定子(1)が形成され、その各鋼板(2)は、それぞれ外周が整合すると共に、複数の突出部(3)が放射状に設けられ、その積層鋼板の前記突出部(3)が電磁極(4)を形成し、その各電磁極(4)の外周に磁極形成用のコイル(5)が巻回されたモータ冷却装置において、
その積層鋼板は、第1鋼板(2a)と第2鋼板(2b)とを有し、第1鋼板(2a)と第2鋼板(2b)とは互いに冷媒の出入口を形成する一対の連通部(6)(7)で積層方向に連通され、
第1鋼板(2a)は各突出部(3)の平面に放射方向にスリット(8)が形成され、そのスリット(8)に前記連通部(6)(7)が連通され、
その第1鋼板(2a)のスリット(8)に整合する位置で、第2鋼板(2b)の平面は平坦に形成され、
冷媒が前記連通部(6)(7)を介して各第1鋼板(2a)のスリット(8)に供給されるように形成され、
第1鋼板(2a)と第2鋼板(2b)との両者に前記スリット(8)が形成されると共に、両鋼板(2a)(2b)の各スリット(8)の位置は積層方向に重ならないように位置ずれして配置されたモータ冷却装置である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のモータ冷却装置において、
第1鋼板(2a)と第2鋼板(2b)とが交互に積層されたモータ冷却装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、その第1鋼板2aの各突出部3の平面に放射方向にスリット8が形成され、その第1鋼板2aのスリット8に整合する位置で、第2鋼板2bの平面は平坦に形成され、冷媒が連通部6,7を介して各第1鋼板2aのスリット8に供給されるものである。このとき第2鋼板がスリット2の上下両面を閉塞して偏平な冷媒通路を平面方向に形成する。
すると、平面方向へスリット8の形状の偏平な流路が形成され、このような流路が積層方向に多数並列し、冷媒の接触面積が大きくなる。そのスリット8を介して冷媒を放射方向に供給するため、効果的に固定子を冷却することができる。そのスリット8は、磁力線が集中し、発熱の特に大きな電極を形成する第1プレート2aの突出部3にあるため、固定子1をより効果的に冷却することができる。
【0013】
さらに、第1鋼板2aと第2鋼板2bとの両者に前記スリット8が形成されると共に、両鋼板2a,
2bの各スリット8の位置は積層方向に重ならないように位置ずれして配置されたものである。そのため、さらに効果的に固定子1の発熱を吸熱することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、
上記構成に加えて、第1鋼板2aと第2鋼板2bとが交互に積層されたものである。そのためスリット8を少なくとも一枚おきの鋼板に形成して、冷媒19の流路を積層方向により多く並列し、効果的に固定子1を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の固定子を形成する第1鋼板2aの平面図。
【
図7】本発明の第2実施例の第1鋼板2aの平面図。
【
図9】本発明の第3実施例の第1鋼板2aの平面図。
【
図13】本発明の第4実施例の第1鋼板2aの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1〜図6、図9〜図12、図13、図14は参考例を示し、図7、図8が本発明の実施例を示す。
このモータは
図5に示す如く、その中心に固定子1が存在し、その外周に回転子10が配置されるものである。その固定子1は、
図3及び
図5に示す積層鋼板とその突出部3に巻回された磁極形成用の電磁コイル5とからなる。積層鋼板は、互いに外周が整合する
図1の第1鋼板2aと、
図2の第2鋼板2bとの積層体からなる。この例では第1鋼板2aと第2鋼板2bが交互に配置されている。第1鋼板2a及び第2鋼板2bの平面形状は、この例では、中心から放射方向に6つの突出部3が突設されている。
【0020】
そして、第1鋼板2a、第2鋼板2bにはそれぞれ互いに整合する位置に一対づつの連通部6,7が設けられている。
さらに、第1鋼板2aは
図1に示すごとく、一方の連通部6から他方の連通孔7に向け、各突出部3の平面にそれをU字状に貫通するスリット8が星型に形成されている。そのスリット8は一筆書きからなり、その一端と他端とは離間している。これは、第1鋼板2aをプレス成形により、一体的に形成するとき、各部が分離しないようにするためである。そして、このスリット8はそれぞれの突出部3の外周に沿って形成されている。
【0021】
次に、第2鋼板2bにはスリット8が存在せず、孔よりなる連通部6,7のみが存在する。
このようにしてなる第1鋼板2aと第2鋼板2bは、それらが交互に配置されて、積層鋼板を形成する。そして、
図5において、その積層鋼板の上下両端のプレートは、各鋼板の一対の連通部6,7間を連通する図示しない連通路が形成されている。また、
図4において、図示しない最下端の鋼板の端蓋は、一対の連通部6,7に接続される一対の出入口パイプ18が設けられている。
そして、積層鋼板の各突出部3に電磁極4が形成され、その外周に磁極形成用の電磁コイル5が巻回されている。第1鋼板2aと第2鋼板2bとの間は冷媒がもれないように、シールされている。シールの手段としては、電気絶縁性のシール材、接着剤、ゴム材、Oリング、その他が利用できる。
【0022】
このようにしてなる固定子1は、
図6に示す如く、ベース12に固定され、それを貫通する一対の出入口パイプ18が各連通部6,7を介して第1鋼板2aのスリット8と連通する。そして、ベース12の中心には、ベアリング15を介して回転軸13が貫通する。そして、回転軸13の一端に有底筒状の回転子10が固定され、その内周面に複数の永久磁石9が配置されている。この回転子10の各永久磁石9間には
図5に示す如く、磁気センサー11が配置されている。この磁気センサー11は、回転子10の磁極を検出し、その検出信号に基づき固定子1の電磁極4の極性を制御し、回転子10を連続的に回転させるものである。
【0023】
(作用)
次に、本発明のモータ冷却装置の冷却作用につき説明する。
図6において、入口側の出入口パイプ18から連通部6を介して各第1鋼板2aの各スリット8に冷媒19(一例として冷却水)が導かれ、それが
図1に示すスリット8の流路に沿って、星型に且つ、蛇行状に流通し、他方の連通部7から出入口パイプ18を介し、ベース12の下方に流出する。そして、固定子1の電磁コイル5の電流によって電磁極4に誘導磁界が生じ、それに基づく各鋼板のヒステリシス損によって生じる発熱は、第1鋼板2aのスリット8に流通する冷媒19によって吸熱される。特に、スリット8は突出部3の外周に沿ってU字状に流通するため、最も発熱の激しい突出部3を効果的に冷却することができる。
【実施例2】
【0024】
次に、
図7及び
図8は、第1鋼板2aと第2鋼板2bの実施例であり、
この例が前記参考例と異なる点は、第2鋼板2bにもスリット8が形成され、その第1鋼板2aのスリット8と第2鋼板2bのスリット8とが互いに重ならないように配置された点である。したがって、冷媒は第1鋼板2aにも第2鋼板2bにも流通する。
【実施例3】
【0025】
次に、
図9〜
図12は
参考例であり、この例は各第1鋼板2aの突出部3にそれぞれ一対づつの連通部6と連通部7とが配置され、それらの間をスリット8がU字状に連通している。そして、それぞれの連通部6、連通部7に整合する位置で、第2鋼板2bには連通部6と連通部7が配置されている。半径方向の内側の各連通部7は、同心円上に配置され、その外側の連通部6も同心円上に配置されている。そして、
図11、
図12に示すごとく、積層方向の上端には端板16が配置されている。
【0026】
この端板16は、半径方向の外側の連通部6に整合する位置と、内側の連通部7に整合する位置とにそれぞれ環状溝17が設けられ、各連通部6間及び、各連通部7間を互いに連通する。そして、一対の出入口パイプ18が内側の環状溝17と外側の環状溝17とに連通され、一方の出入口パイプ18から外側の各連通部6に冷媒が供給され、内側の各連通部7から他方の出入口パイプ18に導かれる。なお、端板16は固定子1の積層方向の上下両端に配置され、一方の端板16には出入口パイプ18が設けられていない。
【実施例4】
【0027】
次に、
図13及び
図14は
参考例であり、この例はモータの外周側が固定子である。その固定子を形成する第1鋼板2a、第2鋼板2bには複数の突出部3が放射方向中心側に突設されている。そして、第1鋼板2a、第2鋼板2bにそれぞれ連通部6、連通部7が穿設され、連通部6と連通部7間をスリット8によって連結している。スリット8は、第1鋼板2aの各突出部3の外周に沿ってU字状に形成されるとともに、各突出部3間を連通している。
【0028】
次に、第2鋼板2bにはこの例ではスリット8が配置されていない。そして、一例として、第1鋼板2aと第2鋼板2bとを交互に積層して、固定子1を形成する。固定子の各突出部の外周には図示しない電磁コイルが巻回される。そして、その固定子の内側に回転子10が配置される。
なお、
各、参考例および実施例において、各鋼板の連通部6、連通部7は絶縁性の被膜が塗布され、積層方向に渦電流が通電するのを防止している。また、各鋼板の両面には公知の絶縁被膜が被覆され、積層鋼板は互いに図示しないボルト等により締結され、冷媒の漏れを防止している。
【0029】
(他の実施の形態)
上記実施例では、第1鋼板2aと第2鋼板2bとを交互に配置したが、それに替えて2枚おきに第2鋼板2bを配置してもよい。その場合は、スリット8の流路断面積を大きくすることができる。
逆に、2枚ごとの第2鋼板2bの間に第1鋼板2aを1つ配置してもよい。あるいはそれらを3枚ごと、さらには複数枚ごとに第1鋼板2aと第2鋼板2bを配置することも可能である。それらはモータの発熱量その他の条件に応じて適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 固定子
2 鋼板
2a 第1鋼板
2b 第2鋼板
3 突出部
4 電磁極
5 電気コイル
6 連通部
7 連通部
8 スリット
9 永久磁石
【0031】
10 回転子
11 磁気センサー
12 ベース
13 回転軸
15 ベアリング
16 端板
17 環状溝
18 出入口パイプ
19 冷媒