特許第5969926号(P5969926)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969926
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ポリアリーレンスルフィドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/0263 20160101AFI20160804BHJP
【FI】
   C08G75/0263
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-556972(P2012-556972)
(86)(22)【出願日】2011年3月8日
(65)【公表番号】特表2013-522386(P2013-522386A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】KR2011001594
(87)【国際公開番号】WO2011111982
(87)【国際公開日】20110915
【審査請求日】2014年2月17日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0021388
(32)【優先日】2010年3月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】キム スンギ
(72)【発明者】
【氏名】イム ジェボン
(72)【発明者】
【氏名】イ セホ
【審査官】 佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−031765(JP,A)
【文献】 特表2010−501661(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/082265(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/059059(WO,A1)
【文献】 特開2008−201885(JP,A)
【文献】 特開2009−248525(JP,A)
【文献】 特表2013−522387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G75/00−75/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヨード芳香族化合物、硫黄および重合停止剤を含む反応物を反応媒質として有機溶媒を用いないで重合させる工程と、更に硫黄を加えて重合させる工程と、140℃から160℃までの温度で1時間乃至2時間乾燥する工程と、を含むポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、
前記ポリアリーレンスルフィドは重合直後に2乃至10mmの大きさを有するペレット形態を有し、樹脂全体の重量に対して300ppm以下の残留溶媒含有量を有し、
前記重合停止剤は、ジフェニルスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジフェニルエーテル、ジベンゾチアジルジスルファイドまたはビフェニルであるポリアリーレンスルフィドの製造方法
【請求項2】
前記残留溶媒は水および有機溶媒を含む、請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法
【請求項3】
前記ポリアリーレンスルフィドの数平均分子量が3,000乃至1,000,000である、請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法
【請求項4】
前記ポリアリーレンスルフィドの数平均分子量が3,000乃至50,000である、請求項3に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法
【請求項5】
前記ポリアリーレンスルフィドの数平均分子量に対する重量平均分子量と定義される分散度が2.0乃至4.0である、請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法
【請求項6】
前記ポリアリーレンスルフィドの融点が265乃至320℃である、請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた物性の発現および保持が可能なポリアリーレンスルフィドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ポリアリーレンスルフィドは代表的なエンジニアリングプラスチック(Engineering Plastic)であって、高い耐熱性と耐化学性、耐火炎性(flame resistance)、電気絶縁性によって、高温と腐食性環境および電子製品の用途として需要が大きい。その主な用途は、コンピュータ付属品、自動車部品、腐食性化学物質が接触する部分のコーティング、産業用耐薬品性繊維などに使用される。
【0003】
ポリアリーレンスルフィドの中で商業的に販売されるものは、現在、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide;以下、「PPS」という)が唯一である。現在、PPSの商業的生産工程は、全てパラ−ジクロロベンゼン(p−dichlorobenzene;以下、「pDCB」という)と硫化ナトリウム(sodium sulfide)を原料として、N−メチルピロリドン(N−methylpyrrolidone)などの極性有機溶媒で反応させる方法である。この方法はメクコラム工程(Macallum process)と知られており、基本工程が米国特許第2,513,188号および第2,583,941号に開示されている。使用する極性溶媒はいくつかの種類が提案されているが、現在最も多く使われるものはN−メチルピロリドンである(NMP、boiling Temp。;202〜204℃)。この工程は原料として全て二塩化芳香族化合物(dichloro aromatic compound)を使用し、副産物として塩化ナトリウム(NaCl)が生じる。
【0004】
一方、このようなメクコラム工程で得られるPPSは、重合反応後に洗浄および乾燥などの過程を経て粉末状態として得られる。こういう工程を通して生産された粉末状態のPPSは、今後成型工程中または使用中に相当量のアウトガス(outgassing)を発生させて、重合直後と比較して物性の低下が現れる恐れがある。また、上記方法による場合、PPS中の残留物、例えば、水分、残留反応物または残留有機溶媒などによるPPSの分解によって射出物の表面に染みが生じることがある。また、このような射出物の表面の染み発生を防止するためには、射出モールド表面を度々清掃しなければならない面倒さがある。
【0005】
一方、このようなアウトガスは臭いも有していて、作業空間内の環境を汚染させるという問題点が指摘されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れた物性の発現および保持が可能なポリアリーレンスルフィド(polyarylene sulfide、以下、「PAS」)を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、このようなポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供することにある。
【0008】
さらに、本発明の他の目的は、このようなポリアリーレンスルフィドを成型して製造される成型品、フィルム、シート、または繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、重合直後に2乃至10mmの大きさを有するペレット形態を有し、樹脂全体の重量に対して300ppm以下の残留溶媒含有量を有するポリアリーレンスルフィドを提供する。
【0010】
本発明は、また、ジヨード芳香族化合物と硫黄化合物を含む反応物を重合反応させる段階;および前記重合された結果物を120乃至160℃で1乃至2時間乾燥する段階を含む、前記のようなポリアリーレンスルフィドを製造する方法を提供する。
【0011】
本発明において、前記反応物は、硫黄化合物100重量部に対して1乃至20重量部の重合停止剤を追加的に含むことができる。
【0012】
また、前記重合停止剤は、ジフェニルスルフィド(diphenyl sulfide)、ジフェニルエーテル(diphenyl ether)、ビフェニル(biphenyl)、ベンゾフェノン(benzophenone)、モノヨードアリール化合物(monoiodoaryl compound)、ベンゾチアゾール(benzothiazole)類、ベンゾチアゾールスルフェンアミド(benzothiazolesulfenamide)類、チウラム(thiuram)類、ジチオカルバメート(dithiocarbamate)類、およびジフェニルジスルファイドからなる群より選択される1種以上とすることができる。前記ジヨード芳香族化合物は、ジヨード化ベンゼン、ジヨード化ナフタレン、ジヨード化ビフェニル、ジヨード化ビスフェノール、およびジヨード化ベンゾフェノンからなる群より選択される1種以上とすることができる。
【0013】
また、本発明において、前記溶融重合反応させる段階は、温度180乃至250℃および圧力50乃至450torrの初期反応条件下で温度上昇および圧力降下を行って、最終反応条件である温度270乃至350℃および圧力0.001乃至20torrに変化させて、1乃至30時間重合反応を行う段階を含むことができる。前記重合反応は、ニトロベンゼン系触媒の存在下で行われることが好ましい。
【0014】
本発明は、また、前記ポリアリーレンスルフィドを成型して製造される製品を提供する。
【0015】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0016】
本発明の発明者らは、優れた物性の発現および保持が可能なポリアリーレンスルフィドに関する研究を重ねて本発明を完成した。
【0017】
従来の製造方法では、N−メチルピロリドン(NMP)のような有機溶媒の存在下で、ジクロロ芳香族化合物と硫化ナトリウムなどを重合反応させてポリアリーレンスルフィドを製造し、このような重合反応後に、塩化ナトリウム(NaCl)およびオリゴマー(oligomer)を除去するための洗浄および乾燥などの過程を経て、粉末状態のポリアリーレンスルフィドを得た。しかし、このような粉末状態のポリアリーレンスルフィドは、以後の成型工程または使用中にアウトガスを相当量発生させて、最終製品に生産時、物性が良くないことがある。また、上記方法によれば、ポリアリーレンスルフィド中に残留する残留反応物または残留有機溶媒などによるポリアリーレンスルフィドの分解により、機械的物性をはじめとする高分子の物性低下が観察された。また、従来の方法は、アウトガスによって射出物の表面に染みが生じたり、モールドの表面に汚染物が生成したりするなどの問題点があって、このような射出物の表面の染みおよび汚染物の生成を防止するためには、射出工程を止めて、射出モールドを度々清掃しなければならなかった。また、アウトガスが臭いを招くことで、作業空間の環境を汚染させるという短所があった。
【0018】
この時、このような従来工程を通して製造されたポリアリーレンスルフィド内に含まれている残留溶媒としては、水分(水)、フェノール(phenol)、N−メチルピロリドン(NMP)、およびブチロラクトン(Butyrolactone)などがある。反面、本明細書の全体において、残留溶媒とは、水分(水)と有機溶媒を含む概念と定義する。特に、本発明ではN−メチルピロリドン(NMP)を含まない。
【0019】
一方、本発明者らは、上記のような従来の問題点に鑑みて、重合後の乾燥工程や、成型工程、または製品に適用して使用する時に、重合直後と比較して同等以上の優れた物性を示すことができるポリアリーレンスルフィドに関して研究を進めてきた。そのうち、本発明者らは重合されたポリアリーレンスルフィドが粉末形態でない一定の大きさのペレット形状を有していて、重合された樹脂内に含まれている残留溶媒の含有量が300ppm以下のポリアリーレンスルフィドの場合、優れた物性の発現および保持が可能であることを見つけた。
【0020】
このようなポリアリーレンスルフィドは、以下に述べる製造方法によって製造できるが、既存のように別途の有機溶媒を反応媒質として用いることなく、単量体を含む反応物を重合した後、短時間乾燥することによって容易に得ることができる。つまり、従来に知られた重合方法によって重合されたポリアリーレンスルフィドが、重合直後に粉末形態を有することとは異なって、本発明の上述した具体例によるポリアリーレンスルフィドは、重合直後に一定水準以上の大きさを有するペレット形態を有するようになる。また、このようなポリアリーレンスルフィドは重合時に反応媒質として有機溶媒を用いないだけでなく、重合直後に一定の大きさのペレット形状を有することで、相対的に空気と接触する表面積が小さくて、乾燥後空気からの水分吸収量なども大きくないので、残留溶媒含有量が非常に低く現れる。
【0021】
また、このようなポリアリーレンスルフィドは、成型時または成型製品の使用中、アウトガスの発生量が少ないだけでなく、樹脂内に含まれている残留有機溶媒に起因するポリアリーレンスルフィドの分解およびこれに伴う物性の低下も少ない。
【0022】
このような本発明の一具体例によるポリアリーレンスルフィドは、重合直後に2乃至10mmの大きさ(平均粒径)を有し、好ましくはペレット形態を有し、樹脂全体の重量に対して300ppm以下の残留溶媒含有量を有する。
【0023】
このように、本発明で提供するポリアリーレンスルフィドは、重合直後にペレット形状を有し、残留有機溶媒の含有量も300ppm以下と極少量であるので、比較的に小さい比表面積を有し、これによって乾燥工程における所要エネルギーおよび時間を短縮させることができる。それだけでなく、本発明のポリアリーレンスルフィドは、残留する有機溶媒の含有量も極少量であって、樹脂の乾燥、あるいは成型や使用中、残留溶媒による樹脂内の起泡形成、およびこれに伴うアウトガスの発生および物性の低下現象が少ない。
【0024】
ここで、本明細書の全体で明示的な記載がない限り、上記「重合直後」とは「単量体を含む反応物を重合および短時間の乾燥(140℃から160℃までの温度で1時間乃至2時間乾燥)を通じて準備された樹脂」と定義し、以降の別途の溶融加工または成型工程を経る前のことを意味する。
【0025】
そして、上記で「ペレット形態の大きさ」とは、重合直後のポリアリーレンスルフィドが有するペレット形態の長さ、幅、厚さ、または直径などの長さに関する多様な測定値の中で最も大きい値と定義することができる。一方、このような「ペレットの大きさ」は、「重合直後」に得られたペレット形態の樹脂に対する平均粒径を測定する方法によって算出でき、このような平均粒径の測定のために、例えば、後述する実験例に示されているようにバーニアカリパス(Vernier Calipers)を利用して測定した後、算出できる。
【0026】
また、本発明において、残留溶媒は、水および有機溶媒を含むことができるが、本発明の重合される特性上、重合溶媒として有機溶媒を用いないため、上記残留溶媒は大部分水である。したがって、上記300ppm以下の残留溶媒含有量のうち上記有機溶媒の含有量は0乃至0.1ppmであり、残量は水分(水)含有量でありうる。最も好ましくは、本発明のポリアリーレンスルフィドは有機溶媒含有量が0ppmでありうる。
【0027】
そして、このようなポリアリーレンスルフィドは、数平均分子量が3,000乃至1,000,000であり、好ましくは3,000乃至50,000でありうる。また、このようなポリアリーレンスルフィドは、数平均分子量に対する重量平均分子量と定義される分散度が2.0乃至4.0で、比較的に均一な分散度を有するポリアリーレンスルフィドでありうる。
【0028】
このような数平均分子量、および/または分散度値を有するポリアリーレンスルフィドは、分子量または溶融粘度によって多様な製品形態に製作されて応用できる。
【0029】
上述した具体例によるポリアリーレンスルフィドは優れた熱的安定性を示し、融点(Tm)が265乃至320℃、好ましくは268乃至290℃、さらに好ましくは270乃至285℃である。このように高い範囲で融点(Tm)を確保することによって、本発明のポリアリーレンスルフィドは、エンジニアリングプラスチックに適用時、高強度および向上した耐熱性などの優れた性能を発揮することができる。
【0030】
そして、上述した具体例によるポリアリーレンスルフィドは、40重量%のガラス繊維とコンパウンディング後、140℃温度でモールドを維持させた後射出した時、射出した試片の表面に肉眼で観察される染みが殆どない特徴がある。上記で「染み」とは、試片の表面の本来の生地に他の色や点などが混ざった跡などと定義される。
【0031】
また、このようなポリアリーレンスルフィドの熱的特性は、使用中または成型前後にも大きい変化なしに維持されて、優れた熱安定性が要求される発熱家電製品、LEDランプソケット、およびモータインシュレータなどの製品の成型分野に有用に用いることができる。
【0032】
そして、上述した具体例によるポリアリーレンスルフィドは、引張強度値も従来の樹脂を射出した場合より高く現れる。また、このようなポリアリーレンスルフィドの機械的特性は、成型前後または使用中にも大きい変化なしに維持されて、高い機械的強度が要求される自動車用部品、電子機器のハウジング、およびCDレーザーピックアップスライディングハウジングなどの成型分野に有用に用いることができる。
【0033】
一方、本発明の他の具体例によって、ジヨード芳香族化合物と硫黄化合物を含む反応物を重合反応させる段階;および前記重合された結果物を120乃至160℃で1乃至2時間乾燥する段階を含む、上述した具体例によるポリアリーレンスルフィドを製造する方法を提供する。
【0034】
このような製造方法においては、反応媒質として有機溶媒などを用いず、単量体を含む反応物が重合されてポリアリーレンスルフィドが製造される。したがって、重合反応後に有機溶媒を除去するなどの工程を行う必要がなく、また、粉末形態でないペレット形態のポリアリーレンスルフィドを別途の加工や成型工程なしに直ちに得ることができる。
【0035】
上記ペレット形態のポリアリーレンスルフィドは、空気接触面積が小さくて、水分を含む残留溶媒含有量が非常に低いという特徴がある。特に、本発明は、重合後ポリアリーレンスルフィドの乾燥工程を最適化して、上記低い残留溶媒含有量を有する一定の大きさのペレット形態のポリアリーレンスルフィドを得ることができる。
【0036】
一方、本発明は、重合反応させる段階で反応物に追加的に重合停止剤を含むことができる。この時、重合停止剤の含有量の範囲は、硫黄化合物100重量部に対して1乃至20重量部で含まれる。重合停止剤の含有量が1重量部未満であれば、重合停止剤の添加による効果が微々たるものであり、20重量部を超える場合、過度に分子量が低いポリアリーレンスルフィドが製造されうる。
【0037】
上記重合停止剤は、重合される高分子に含まれるヨード基を除去して重合を中止させることができる化合物であれば、その構成の限定はないが、好ましくは、ジフェニルスルフィド(diphenyl sulfide)、ジフェニルエーテル(diphenyl ether)、ビフェニル(biphenyl:or diphenyl)、ベンゾフェノン(benzophenone)、モノヨードアリール化合物(monoiodoaryl compound)、ベンゾチアゾール(benzothiazole)類、ベンゾチアゾールスルフェンアミド(benzothiazolesulfenamide)類、チウラム(thiuram)類、ジチオカルバメート(dithiocarbamate)類、およびジフェニルジスルファイドからなる群より選択される1種以上とすることができる。さらに好ましくは、上記重合停止剤は、ヨードビフェニル(iodobiphenyl)、ヨードフェノール(iodophenol)、ヨードアニリン(iodoaniline)、ヨードベンゾフェノン(iodobenzophenone)、2− メルカプトベンゾチアゾール(2−mercaptobenzothiazole)、2,2’−ジチオビスベンゾチアゾール(2,2’−dithiobisbenzothiazole)、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(N−cyclohexylbenzothiazole−2−sulfenamide)、2−モルホリノチオベンゾチアゾール(2−morpholinothiobenzothiazole)、N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(N,N−dicyclohexylbenzothiazole−2−sulfenamide)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(tetramethylthiuram monosulfide)、テトラメチルチウラムジスルフィド(tetramethylthiuram disulfide)、亜鉛ジメチルジチオカルバメート(Zinc dimethyldithiocarbamate)、亜鉛ジエチルジチオカルバメート(Zinc diethyldithiocarbamate)、ジベンゾチアジルジスルファイド(Dibenzothiazyl Disulfide:同意語benzothiazyl Disulfide)、およびジフェニルジスルファイド(diphenyl disulfide)からなる群より選択される1種以上とすることができる。
【0038】
さらに好ましくは、上記重合停止剤は、ジフェニルスルフィド(diphenyl suldife)、ジフェニルエーテル(diphenyl ether)、ジベンゾチアジルジスルファイド(Dibenzothiazole Disulfide)、またはビフェニル(biphenyl)とすることができ、このような重合停止剤は、フェニルの間の作用基が電子ドナー(electron donor)と機能して、重合反応の反応性がさらに高く現れる。
【0039】
一方、このようなポリアリーレンスルフィドの重合反応に使用可能なジヨード芳香族化合物は、ジヨード化ベンゼン(diiodobenzene;DIB)、ジヨード化ナフタレン(diiodonaphthalene)、ジヨード化ビフェニル(diiodobiphenyl)、ジヨード化ビスフェノール(diiodobisphenol)、およびジヨード化ベンゾフェノン(diiodobenzophenone)からなる群より選択される1種以上を使用することができるが、これに限定されず、これら化合物にアルキル基(alkylgroup)やスルホン基(sulfone group)などが置換基として結合しているか、またはアリール化合物に酸素や窒素などの原子を含む形態のジヨード芳香族化合物も使用することができる。この時、上記ジヨード芳香族化合物は、ヨード原子が結合した位置によって種々のジヨード化合物の異性体(isomer)があるが、この中で最も好ましいものは、パラジヨード化ベンゼン(pDIB;p−diiodobenzene)、2,6−ジヨードナフタレン、またはp、p’−ジヨードビフェニルのように、分子の両端に最も遠い距離で対称的にヨードが結合している化合物を使用することができる。
【0040】
そして、本発明で使用可能な硫黄化合物の形態には制限がない。通常、硫黄は常温で原子8個が連結された環形態(cyclooctasulfur;S8)で存在するが、そうでなくても商業的に使用可能な固体または液体状態の硫黄であれば、どんな形態でも差し支えない。
【0041】
また、本発明において、ジヨード芳香族化合物は、硫黄化合物100重量部に対して1000乃至1400重量部で使用することができる。上記ジヨード芳香族化合物の含有量が1000重量部未満であれば、副反応が発生する問題があり、1400重量部を超えれば、反応基を所望する温度まで加熱するのが困難である問題がある。
【0042】
一方、このような重合段階において、ジヨード芳香族化合物、硫黄化合物、および重合停止剤を含む反応物を重合が開始できる条件であれば、その重合反応条件はその構成の限定がない。好ましくは、重合段階は、昇温減圧反応条件下で行うことができるが、この場合、温度180乃至250℃および圧力50乃至450torrの初期反応条件で温度上昇および圧力降下を行って、最終反応条件である温度270乃至350℃および圧力0.001乃至20torrに変化させて、1乃至30時間行うことができる。
【0043】
このような昇温減圧条件下で重合反応を行う場合、熱的安定性が優秀なこととなり、リサイクルのために溶融する場合にも溶融粘度の変化率が0以上となって、機械的物性がリサイクル前と比べて同等以上となる。
【0044】
また、本発明によれば、重合前に各反応物に対する溶融混合段階を追加的に行うことができる。このような溶融混合は、上述した反応物が全て溶融混合できる条件であれば、その構成の限定はないが、好ましくは、130℃乃至200℃の温度で行うことができる。
【0045】
このように重合前に溶融混合段階を行うことで、溶融重合反応がさらに容易に行える。
【0046】
一方、上述した具体例によるポリアリーレンスルフィドの製造方法において、重合反応はニトロベンゼン系触媒の存在下で行える。また、上述のように、重合反応前に溶融混合段階を経る場合、上記触媒は溶融混合段階で追加可能である。重合反応において、ニトロベンゼン系触媒の存在下でポリアリーレンスルフィドを重合する場合、無触媒下で重合する場合よりも高い融点を有するポリアリーレンスルフィドを製造することができるという事実を発見した。ポリアリーレンスルフィドの融点が低い場合、製品の耐熱性に問題があるため、耐熱性が必要なポリアリーレンスルフィドの製造のためにはニトロベンゼン系触媒の存在下で重合反応を行うことができる。ニトロベンゼン系触媒の種類としては、1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼン、または1−ヨード−4−ニトロベンゼンなどが挙げられるが、上述した例に限定されることではない。
【0047】
そして、上述した方法によって製造されたポリアリーレンスルフィドは、溶融重合直後に2乃至10mmの大きさ(平均粒径)を有するペレット形態を有し、樹脂全体の重量に対して300ppm以下の残留溶媒含有量を有する。
【0048】
また、このような方法によって製造されたポリアリーレンスルフィドの数平均分子量、数平均分子量に対する重量平均分子量と定義される分散度、融点、水および有機溶媒を含む残留溶媒の含有量、引張強度などの特性は、上述したポリアリーレンスルフィドの具体例で言及したことと同一である。
【0049】
本発明は、また、上記ポリアリーレンスルフィドを成型して製造される製品を提供し、上記製品は成型品、フィルム、シート、または繊維形態とすることができる。本発明のポリアリーレンスルフィドは、射出成型、押出成型などの方法によって各種成型品に加工して利用することができる。成型品としては、射出成型品、押出成型品、ブロー成型品とすることができる。射出成型する場合の金型温度としては、結晶化の観点から、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。また、試験片の変形の観点から、射出成型時の金型温度は、190℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましい。また、これら成型品は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、機械部品、日用品などとして利用することができる。そして、これら射出成型品は、ガラス繊維(glass fiber)または無機充填剤(mineral filler)などのような充填物と共にコンパウンディングされた後成型することができる。この時、前記充填物の包含量は限定されないが、ポリアリーレンスルフィド樹脂の優れた物性を保持しながらも、引張強度などの機械的強度などを高めるために、全体コンパウンディング組成物内に10乃至70重量%、好ましくは30乃至65重量%の含有量で含むことができる。その他に、成型品には通常使用される滑剤や酸化安定剤などの添加剤を含むことができ、その種類と含有量が限定されることではない。
【0050】
上記成型品がフィルム、またはシートとして提供される場合、未延伸、1軸延伸、2軸延伸などの各種フィルム、及びシートに製造することができる。上記成型品が繊維である場合は、未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維にして、織物、編物、不織布(スポンボンド、メルトブロー、ステープル)、ロープ、ネットとして利用することができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明のポリアリーレンスルフィドは、優れた物性の発現および保持が可能であり、特に製品内の起泡や表面への染みを発生させずに、引張強度などの機械的物性に優れて、ポリアリーレンスルフィドの製造およびこれを利用した成型品の製作に関する産業分野に有用に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の一実施例によるポリアリーレンスルフィド樹脂とガラス繊維のコンパウンディング射出試片の表面を示す写真である。
図2】比較例によるポリアリーレンスルフィド樹脂とガラス繊維のコンパウンディング射出試片の表面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、実施例および比較例を通して、本発明についてより具体的に説明するが、下記例に本発明の範疇が限定されることではない。
【0054】
[比較例]
ポリアリーレンスルフィドの重合およびコンパウンディング後射出
1.比較例1のポリアリーレンスルフィド
Chevron Philips社のRyton P6のポリアリーレンスルフィドを準備した。準備された比較例1のPASは粉末状態で、平均粒径が2μmであり、水分含有量は1500ppm、有機溶媒含有量は110ppmであった。
【0055】
2.比較例2のポリアリーレンスルフィド
比較例1と数平均分子量が異なる点を除いては、同様な方法で重合されたグレード(grade)の高分子として、Chevron Philips社のRyton PR26を準備した。比較例2のPASは粉末状態で、平均粒径が1μmであり、水分含有量は1900ppm、有機溶媒含有量は100ppmであった。
【0056】
3.比較例3のポリアリーレンスルフィド
比較例1と数平均分子量が異なる点を除いては同様な方法で重合されたグレード(grade)の高分子として、Deyang社のhb gradeのPASを準備した。比較例3のPASは粉末状態で、平均粒径が0.1mmであり、水分含有量は2000ppm、有機溶媒含有量は210ppmであった。
【0057】
4.比較例1乃至3のポリアリーレンスルフィドのコンパウンディングおよび射出
通常使用されるガラス繊維(glass fiber)40重量%、滑剤(lubricant)0.3重量%、酸化安定剤0.2重量%、および残部としてそれぞれ上記比較例1、2、3のPAS樹脂を含む三つの種類の組成物を準備した。次に、それぞれの組成物を二軸押出機(twin screw extruder)に投入してコンパウンディング後、(HAAKE社、PolyLab System、340℃)、射出モールド温度を140℃に固定後、射出機(Nissei社、110トン、320℃)で試片を射出した。
【0058】
[実施例]
ポリアリーレンスルフィドの重合およびコンパウンディング後射出
1.実施例1のポリアリーレンスルフィド重合
4000gのパラジヨードベンゼン(pDIB)、重合停止剤(ベンゾチアジルジスルファイド)10g、340gの硫黄、および15gの触媒(1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼン)を含む反応物を180℃で溶融混合させた。上記の混合された混合物を180℃から340℃まで昇温し、常圧で10torrまで減圧させながら重合反応を行わせた。重合が開始した以後、5時間が経過した時点で硫黄5gを投与した後、3時間さらに重合反応を行って、高分子(PAS)を得た。重合後、160℃で2時間乾燥を行った。得られた高分子は平均粒径が4mmであり、水分含有量は150ppm、有機溶媒含有量は0ppmであった。
【0059】
2.実施例2のポリアリーレンスルフィド重合
4000gのパラジヨードベンゼン(pDIB)、重合停止剤(ベンゾチアジルジスルファイド)12g、345gの硫黄、及び15gの触媒(1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼン)を含む反応物を180℃で溶融混合させた。上記の混合された混合物を180℃から340℃まで昇温し、常圧で10torrまで減圧させながら重合反応を行わせた。重合が開始した以後、5時間が経過した時点で硫黄10gを投与した後、4時間さらに重合反応を行って、高分子(PAS)を得た。
【0060】
重合後、150℃で1時間乾燥を行った。得られた高分子の平均粒径は3mmであり、水分含有量は180ppm、有機溶媒含有量は0ppmであった。
【0061】
3.実施例3のポリアリーレンスルフィド重合
4000gのパラジヨードベンゼン(pDIB)、重合停止剤(ベンゾチアジルジスルファイド)15g、340gの硫黄、および15gの触媒(1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼン)を含む反応物を180℃で溶融混合させた。上記の混合された混合物を180℃から340℃まで昇温し、常圧で10torrまで減圧させながら重合反応を行わせた。重合が開始した以後、5時間が経過した時点で硫黄15gを投与した後、5時間さらに重合反応を行って、高分子(PAS)を得た。
【0062】
重合後、140℃で1.5時間乾燥を行った。得られた高分子の平均粒径は5mmであり、水分含有量は200ppm、有機溶媒含有量は0ppmであった。
【0063】
4.実施例1乃至3のポリアリーレンスルフィドのコンパウンディングおよび射出
通常使用されるガラス繊維(glass fiber)40重量%、滑剤(lubricant)0.3重量%、酸化安定剤0.2重量%、および残部としてそれぞれ上記実施例1、2、3のPAS樹脂を含む三つの種類の組成物を製造した。次に、それぞれの組成物を二軸押出機(twin screw extruder)に投入してコンパウンディング後、(HAAKE社、PolyLab System、340℃)、射出モールド温度を140℃に固定後、射出機(Nissei社、110トン、320℃)で試片を射出した。
【0064】
一方、上述した比較例1乃至3および実施例1乃至3の重合反応の反応物、添加量の投与量、および投与時点を下記表1に示した。
【0065】
【表1】
[実験例]
比較例および実施例のポリアリーレンスルフィドの物性の測定
1.ポリアリーレンスルフィドの粒度分析
比較例によって得られたポリアリーレンスルフィドは粉末形態であって、走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、Hitachi社、S−300N)を利用して粒度を分析した。実施例によって得られたポリアリーレンスルフィドは数mmサイズのペレット形態で、バーニヤカリパス(Vernier Calipers)を利用して粒度を分析した。比較例1乃至3および実施例1乃至3から得られたポリアリーレンスルフィドの粒度分析結果を下記表2に示した。
【0066】
2.ポリアリーレンスルフィド内に含まれている残留有機溶媒含有量の測定
比較例および実施例による一定量の試料(約2g)をそれぞれ20mL密封バイアルに密封させた後、ヘッドスペース(HS(Head Space))を180℃で30分間加熱した後、発生したガスを自動的にGC/MS(Gas chromatography−Mass Spectrometer)に送った。次に、各成分をキャピラリーカラムで分離した後、定性分析し、標準物質(Benzothiazole)を用いて試料内の各成分の含有量を代替定量分析した。
【0067】
3.ポリアリーレンスルフィド内に含まれている残留水分含有量の測定
カールフィッシャー滴定(Karl Fischer Titrator)装置を使用して、一定量の試料が溶ける温度である280℃に加熱し、気化した水分を窒素ガスを利用してカールフィッシャー(Karl Fischer)溶液に捕集した後、電位差を利用して水分含有量を滴定した。
【0068】
4.溶融粘度の分析
比較例および実施例によって合成された高分子の物性分析において、溶融粘度(melt viscosity、以下、「MV」)は、回転円板粘度計(rotating disk viscometer)で300℃で測定した。周波数掃引(Frequency sweep)方法で測定するにあたり、角周波数(angular frequency)0.6から500rad/sまで測定し、1.84rad/sにおける粘度を溶融粘度(M.V.)と定義した。測定値は表3の通りである。
【0069】
5.融点(Tm)の測定
示差走査熱量分析器(Differential Scanning Calorimeter;DSC)を利用して、30℃から320℃まで10℃/minの速度で昇温後、30℃まで冷却後に、さらに30℃から320℃まで10℃/minの速度で昇温しながら融点を測定した。測定値は表3の通りである。
【0070】
6.試片表面の染みの評価
上記比較例および実施例のポリアリーレンスルフィドのコンパウンディング(ガラス繊維40wt%を含むコンパウンディング)後、モールド温度140℃で射出した試片表面の染みを肉眼で観察した。測定値は表3の通りである。この時、表面の染みの肉眼評価方法は次の通りである。
【0071】
*染みなし:射出試片で表面の染みが全くないか、または2%以下である場合
*染みあり:射出試片で表面の染みが4%以上の場合
代表的に実施例1および比較例3による試片の写真を、それぞれ図1および図2に示す。
【0072】
7.引張強度の測定
ASTM D638に記載の方法によって引張強度を測定した。つまり、type Iの試片をUTM(Universal testing machine、東一島津社のAG−X10kN)を使用して、5mm/minの速度で引っ張った時の値で引張強度を測定した。測定値は表3の通りである。
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
上記表2および表3に示したように、実施例によって作られた製品には残留溶媒含有量が小さいだけでなく、特にPAS樹脂内に有機溶媒が残留しないので、射出後試片表面の染みもないことと確認された。これだけでなく、実施例1乃至3によれば、引張強度の側面からも高い水準の物性を保有することと分析された。反面、比較例1乃至3の場合、水分含有量が多く、有機溶媒を100ppm以上含んで残留溶媒含有量が多く、そのために表面の染みが生じて引張強度も劣った。
【0075】
また、図1および図2は、それぞれ実施例および比較例によるコンパウンディング試片の表面を示す写真である。図1から分かるように、本発明の実施例のコンパウンディング射出では染みが全く現れない。反面、図2の比較例の試片表面の写真にはいくつかの染みがところどころ発見されることが確認できる。
【0076】
このような結果から、比較例のように有機溶媒が多い場合、有機溶媒が気体化されながら製品内に含まれて、上記のような現象を現わすことと解釈される。
図1
図2