(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
家庭内の消費電力を監視して電源をオン・オフ制御し、及び/又は、対象機器の動作状態を制御する情報処理装置と、前記情報処理装置から通知された情報を表示する情報表示装置とを有するホームエネルギー・マネージメントシステムにおいて、
周辺環境の情報を取得するセンシングデバイスと、通信ユニットと、メモリと、演算装置と、給電部を収容する可搬式装置と、
前記可搬式装置が存在する居室を特定する位置特定部と
を有し、
前記情報処理装置は、特定された居室と、前記可搬式装置の前記センシングデバイスが取得した周辺環境の前記情報とに基づいて、前記可搬式装置が存在する居室に関連する空調機器・設備の動作状態をフィードバック制御する
ことを特徴とするホームエネルギー・マネージメントシステム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、後述する実施例・使用態様例は、発明を説明するための一例に過ぎず、発明を実施例に限定して解釈すべきではない。
【0010】
まず、実施例の説明で使用する主要な用語について説明する。以下の説明において、「HEMS」は、家屋内に存在する全て又は一部の機器・設備又はそれらの付属機器・設備において消費されるエネルギー量を管理できる機能を備えるシステムの意味で使用する。従って、実施例で想定する「HEMS」は、空調機器・設備で消費されるエネルギー量の管理だけを目的とするものではない。また、実施例で想定する「HEMS」は、商用電源から供給され消費された電力量だけでなく、家屋に取り付けられた太陽電池パネルから供給され消費された電力量、燃料電池・車載電池から供給され消費された電力量、ガス機器で消費されたガス量、温水の消費量なども管理できるものとする。もっとも、前述した全てのエネルギー量を管理できる必要は無く、管理対象は各家屋の構築システムに応じて定まる。
【0011】
図1〜
図3に、実施例に係るHEMSの構成例を示す。なお、
図1〜
図3に示すHEMSの構成は一例であり、図示された全てのデバイス等を必要とするものではない。
【0012】
(構成例1)
(全体構成)
図1に示すHEMSは、可搬式装置100、宅内システム200、情報表示装置300で構成され、CEMS400との連携機能を有している。本実施例において、可搬式装置100は、特定の居住者やペットの周辺にあって、その環境情報や位置情報を取得するために使用される。このため、可搬式装置100は、可搬可能なサイズと重量を有する装置を想定する。例えば玩具(例えばぬいぐるみ、ロボット)、持ち運び可能な装身具(例えば腕時計、アクセサリー)、ペット用品(例えば首輪、えさ入れ)等を想定する。可搬式装置100は、センサネットワークのセンサノードを構成する。
【0013】
(可搬式装置100の構成)
可搬式装置100は、演算装置101、メモリ102、給電部103、通信ユニット104、目標設定スイッチ105、主観入力スイッチ106、センシングデバイス107、位置識別信号受信部108、表示装置109、アクチュエータ110、スピーカ111、マイク112等で構成される。
【0014】
演算装置101は例えばマイクロプロセッサで構成され、システム構成に応じた制御プログラム等に基づいて動作する。制御プログラムはメモリ102等に格納される。メモリ102は書き換え可能な記憶デバイスであり、不揮発性メモリであることが望ましい。この構成例の場合、メモリ102には、位置識別信号(変調パターン)と居室や居室内の特定範囲(1つの居室内に複数の空調機器が設置されており、主に空調する範囲が設定されている場合)を対応付けた対応表とが登録されている。また、メモリ102は制御プログラムの実行領域としても使用される。
図1における演算装置101は、この対応表を参照し、位置特定部として動作する。
【0015】
給電部103は可搬式装置100を構成するシステムに電力を供給するバッテリであり、例えば乾電池、ボタン電池等である。通信ユニット104は、宅内システム200の宅内サーバ201と無線通信するためのモジュールである。通信ユニット104は、宅内システム200側の無線ネットワークを通じて宅内サーバ201と通信可能であれば良く、通信方式は問わない。
【0016】
目標設定スイッチ105は、HEMSで収集されたエネルギー消費状況に応じ、子供や親が可搬式装置100に対応付けられた居住者個人の省エネルギー目標を設定するため等に使用されるスイッチである。もっとも、目標の設定は、宅内システム200側に用意された操作用のGUIを通じて行なっても良い。
【0017】
主観入力スイッチ106は、室温の快適性に対する主観情報(例えば温度が高すぎる/低すぎる、湿度が高すぎる/低すぎる等)の入力に使用するスイッチである。
【0018】
センシングデバイス107は、可搬式装置100を使用する居住者の周辺環境の情報を取得するためのセンサである。センシングデバイス107は、例えば温度センサ、湿度センサ、空気質センサ、可搬式装置100に加わった加速度を測定する加速度センサ(振動センサ)、イメージングセンサ(いわゆる撮像素子)、人又はペットの存在を検出する赤外線センサ、活動量センサ、体温計である。実際には、これらのセンサのうちいずれか1つ又は複数が可搬式装置100に搭載される。
【0019】
位置識別信号受信部108は、各居室に配置された位置識別信号送信部202からの位置識別信号を受信するデバイスである。なお、位置識別信号は、宅内の居室や居室内の特定範囲を特定するパターンで変調されており、宅内システム200から与えられる。位置識別信号には、例えば位置情報に応じて変調された赤外線信号、可視光信号、近距離無線通信信号が使用される。位置識別信号受信部108には、通信に使用する信号形態に応じたデバイスが使用される。例えば光を使用する場合には光の帯域に応じた受光器が用いられ、電磁波を使用する場合には電磁波の帯域に応じたアンテナが用いられる。なお、受信された位置検出信号は、位置特定部として機能する演算装置101に与えられる。演算装置101は、受信した位置識別信号を事前に登録された対応表と照合し、自身(可搬式装置100)が存在する居室の位置を特定する。
【0020】
表示装置109は、可搬式装置100の周囲の環境情報や宅内システム200から通知を受けた情報を、文字、画像等を用いて表示する。アクチュエータ110は、測定された周囲の環境情報を、可動部の動きやバイブレーションを通じて表現するための駆動機構である。例えばぬいぐるみやロボットの表情を可変するアクチュエータ、ぬぐるみやロボットの手足を動かすアクチュエータが想定される。アクチュエータ110は、環境情報の通知以外の目的でも駆動制御することができる。
【0021】
スピーカ111は、可搬式装置100の周囲の環境情報等を音声として出力する。マイク112は、目標設定や主観入力等を音声で行なう場合、使用者の存在等を音により検出する場合等に使用される。
【0022】
(宅内システム200の構成)
宅内システム200は、宅内サーバ201、位置識別信号送信部202、エネルギー測定装置203、センシングデバイス204、窓開閉装置205、換気口開閉・風量制御装置206、エアコン207、床暖房制御ユニット208、ミストサウナ制御ユニット209、情報表示装置(不図示)等で構成される。宅内システム200が狭義のHEMSである。
【0023】
宅内サーバ201は、宅内ネットワークを通じ、HEMSを構成する機器(可搬式装置100を含む)から情報(環境情報、動作情報、エネルギー消費量等)を収集し、対象機器の動作を制御する機能を備えている。さらに、宅内サーバ201は、不図示の通信ユニット(無線通信ユニット)を通じ、可搬式装置100と通信する機能を備え、可搬式装置100で測定された情報、スイッチを通じて入力された情報、特定された位置情報等も受信する。この構成例の場合、可搬式装置100が存在する位置の特定に必要となる位置識別信号(変調パターン)と居室等とを対応付けた対応表は、宅内サーバ201内で事前に作成・登録され、可搬式装置100に通知される。
【0024】
また、宅内サーバ201は、家屋内の居室と宅内システム200を構成する機器・設備とを対応付けた対応表も有している。宅内サーバ201は、居室と機器・設備を対応付けた対応表を使用し、可搬式装置100が存在する居室内の機器・設備を特定し、当該機器・設備の動作を可搬式装置100から受信される環境情報に基づいてフィードバック制御する。当該フィードバック制御機能の搭載により、可搬式装置100の周辺の環境(居住者等が居る室内環境)を、居住者等に快適な状態に保ち続けることができる。
【0025】
勿論、宅内サーバ201は、一般的なHEMSが有する基本的な機能も備えている。例えばセンシングデバイス204を通じて収集したエネルギー消費量や節電目標の達成度を情報表示装置300に通知する機能、情報表示装置300に表示されたGUIを通じて入力された操作指示に基づいて対応機器の動作を制御する機能等も備えている。
【0026】
位置識別信号送信部202は、各居室に配置され、居室を特定する位置識別信号を送信するデバイスである。なお、位置識別信号送信部202の通信範囲が広いと、可搬式装置100が存在する居室位置を正確に特定することができない。従って、位置識別信号送信部202による位置識別信号の送信距離が短いか送信範囲が限定される必要があり、異なる居室においては必ず異なる変調パターンの位置識別信号が受信される必要がある。このため、位置識別信号の送信には、例えば可視光信号を使用する。可視光信号を使用する場合、例えば照明光の変調パターンを居室毎に設定できるLED照明器具を使用する。
【0027】
エネルギー測定装置203は、例えば電力配線を通じて供給される電力量、ガス管を通じて供給されるガス量、給湯器から供給される温水量等を測定する装置である。当該装置は、既存のHEMSでも使用されている。
【0028】
センシングデバイス204は、宅内や屋外に備え付けられた各種のセンサで構成される。センシングデバイス204は、例えば外気温センサ、室外湿度センサ、室内温度センサ、室内湿度センサ、室内空気質センサ、室外空気質センサ、室内人感センサ、室内CO
2センサ、火災検知センサ、ガス漏れ検知センサ等で構成される。もっとも、前述した全てのセンサを備える必要はない。
【0029】
窓開閉装置205は、窓を自動的に開閉するための駆動装置であり、その動作は宅内サーバ201により制御可能である。換気口開閉・風量制御装置206は、換気口やダクトに取り付けられた風量調整板の開閉や角度調整を通じ、換気される風量を自動的に調整するための装置であり、その動作は宅内サーバ201により制御可能である。エアコン207は、設置された室内の温度や湿度を目標値に自動調整可能な装置であり、その動作は宅内サーバ201により制御可能である。床暖房制御ユニット208は、ガス式又や電気式の床暖房システムを制御するユニットであり、その動作は宅内サーバ201により制御可能である。ミストサウナ制御ユニット209は、浴室に設置されたミストサウナを制御するユニットであり、その動作は宅内サーバ201により制御可能である。
【0030】
(情報表示装置300の構成)
情報表示装置300は、可搬式装置100から通知された各種の情報(例えば装置周辺の温度や湿度、主観入力スイッチ106を通じて入力された主観に関する情報等)や宅内サーバ201で収集された各種の情報(例えばガス、お湯、電気の使用量、節電目標達成度等)を表示するデバイスである。情報表示装置300は、例えばタブレット端末、スマートフォン、携帯電話機、パーソナルコンピュータ等を想定し、いずれも宅内サーバ201と通信可能であるものとする。また、情報表示装置300は、受信した情報の表示だけでなく、宅内システム200を構成する機器に対する操作・制御の指示入力や省エネ・節電に向けたアドバイス表示にも使用される。
【0031】
(CEMS400の構成)
CEMS400は、地域単位でエネルギーの需要と供給を統合管理するシステムであり、HEMSとの連携を通じて地域全体の節電等を実現する。
【0032】
(構成例2)
図2に示すHEMSは、可搬式装置100が存在する居室位置の特定処理が宅内サーバ201内で実行される点で、
図1に示すHEMSと異なっている。このため、
図2に示すHEMSでは、宅内サーバ201内に位置特定部210が設けられている。この構成例の場合、可搬式装置100の演算装置101は、受信された位置識別信号(変調パターン)をそのまま宅内サーバ201の位置特定部210に通知(転送)する。
図2に示す構成例の場合、位置特定部210は、通知のあった位置識別信号に基づいて、位置識別信号(変調パターン)と居室や居室内の特定範囲を対応付けた対応表を照合し、可搬式装置100が存在する位置を特定する。
【0033】
(構成例3)
図1及び
図2に示すHEMSでは、宅内システム200側に位置識別信号送信部202が配置されており、可搬式装置100が位置識別信号を受信する構成であったが、
図3に示すHEMSでは、位置確認信号を送信する位置確認信号送信部113を可搬式装置100に設け、位置確認信号を受信する位置確認信号受信部211を宅内システム200側に配置する。なお、位置確認信号は、可搬式装置100の位置特定のために使用される信号である。
【0034】
位置確認信号送信部113は、可搬式装置100に内蔵された給電部103から給電を受けて動作しても良いし、位置確認信号受信部211から受信した電磁波から電力を取り出して動作しても良い。なお、位置確認信号送信部113の通信範囲が広く、複数の居室で受信されたのでは、可搬式装置100が存在する居室位置を正確に特定することができない。従って、位置確認信号送信部113による位置確認信号の送信距離は短いか送信範囲が限定され、複数の居室において同時に位置確認信号が受信されない必要がある。
【0035】
位置確認信号受信部211は、各居室に配置される。なお、位置確認信号受信部211は、専用装置として各居室に独立に設置される必要は無く、居室に設置された機器・設備(例えばエアコン207、床暖房制御ユニット208等)に内蔵されていても良い。位置確認信号受信部211は、位置確認信号の検出を宅内サーバ201に通知する。この通知の際、位置確認信号受信部211は、自装置を識別する情報も宅内サーバ201の位置特定部212に通知する。
【0036】
位置特定部212は、位置確認信号を受信した位置確認信号受信部211又は機器・設備の識別情報を対応表(機器・設備と居室を対応付けた対応表)と照合し、可搬式装置100が存在する居室を特定する。
【0037】
(位置特定時の処理動作)
ここでは、
図4〜
図6を用い、前述した構成を有するHEMSにおいて実行される可搬式装置100の位置特定処理について説明する。この可搬式装置100の位置特定処理は、常時又は定期的に位置特定部にて実行される。
図4は、
図1に示すHEMSにおいて実行される処理手順であり、
図5は、
図2に示すHEMSにおいて実行される処理手順であり、
図6は、
図3に示すHEMSにおいて実行される処理手順である。
【0038】
なお、
図4〜
図6のいずれの場合にも、子供がぬいぐるみ型の可搬式装置100(ぬいぐるみの内部に可搬式装置100が収納されたもの。以下「ぬいぐるみ型端末」ともいう。)を居室に持ち込む場合等を想定している。ぬいぐるみ型端末を例示するのは、子供に心理的な負担を与えることなく、周辺環境や所在等をより正確に測定・検出できると期待されるからである。
【0039】
勿論、居住者等の位置特定処理は例示の場合に限らない。例えば可搬式装置100を持ち運ぶ居住者は子供に限らないし、犬や猫などのペットでも良い。また、ぬいぐるみ型端末である必要は無く、可搬式装置100はその他の玩具、装身具、ペット用品等に搭載されていても良い。また、可搬式装置100が存在する居室を特定する処理(位置特定処理)は、可搬式装置100が居室を移動した場合だけでなく、移動の有無とは無関係に定期的に実行しても良いし、居住者からの要求に応じて又は宅内サーバ201からの要求に応じて適宜実行されても良い。
【0040】
まず、
図4の場合について説明する。
図4に示す処理手順は、位置識別信号送信部202が、シーリングライトや卓上スタンド等の照明機器に内蔵されている場合を想定している。例えば光源としてLEDを使用する場合が想定される。位置識別信号の送信媒体に可視光(照明光)を使用する場合、その変調信号の周波数は、人がフリッカーを感じない周波数に設定されている。また、位置識別信号送信部202に人感センサを搭載し、人感センサが人の入室を検知した場合に位置検出信号を送信する(位置識別信号の送信媒体に可視光を使用する場合には照明を点灯する)仕組みとしても良い。
【0041】
このように送信された位置識別信号をぬいぐるみ型端末に搭載された位置識別信号受信部108(例えばイメージセンサ)が受信する(ステップS101)。
図4では、位置識別信号が照明光であるので、位置識別信号受信部108は照明光を検知できる状態である(例えばぬいぐるみ型端末の表面に露出している)ことが必要である。位置識別信号受信部108は、受光された照明光の変調パターンを演算装置101に与える。
【0042】
演算装置101は、受光した照明光の変調パターンを対応表(変調パターンと居室とを対応付けた対応表)と照合し、自身が存在する居室を特定する(ステップS102)。
【0043】
この後、演算装置101は、通信ユニット104を通じ、特定された居室の情報(位置情報)を宅内サーバ201に送信する(ステップS103)。この居室の情報(位置情報)の通知により、宅内サーバ201は、特定された居室に限定した各種の処理を実行できる。処理動作の詳細については後述する。
【0044】
次に、
図5の場合について説明する。
図5に示す処理手順も、位置識別信号送信部202が、シーリングライトや卓上スタンド等の照明機器に内蔵されている場合を想定する。従って、ぬいぐるみ型端末に搭載された位置識別信号受信部108が、居室に固有の変調パターンで変調された照明光を位置識別信号として受信する(ステップS201)。位置識別信号受信部108は、受光された照明光の変調パターンを演算装置101に与える。
図5の場合、演算装置101は、受光した照明光の変調パターン又はその識別情報を通信ユニット104を通じ、宅内サーバ201に送信する(ステップS202)。
【0045】
宅内サーバ201の位置特定部210は、ぬいぐるみ型端末から通知を受けた照明光の変調パターン又はその識別情報を対応表(変調パターン等と居室とを対応付けた対応表)と照合し、ぬいぐるみ型端末が存在する居室を特定する(ステップS203)。
【0046】
最後に、
図6の場合について説明する。
図6に示す処理手順では、位置確認信号送信部113がぬいぐるみ型端末に内蔵されており、親や介護者がぬいぐるみ型端末を幼児や介護を受ける人の居室内に持ち込む。もっとも、子供自身が居室内に持ち込んでも良い。
【0047】
ぬいぐるみ型端末の位置確認信号送信部113は、位置確認信号を、居室内に設置されたエアコン207や床暖房制御ユニット208等に送信する(ステップS301)。ここで、位置確認信号の送信は常時送信でも、定期的な送信でも良い。
【0048】
位置確認信号は、エアコン207や床暖房制御ユニット208に内蔵された位置確認信号受信部211で受信される。位置確認信号を受信したエアコン207や床暖房制御ユニット208等は、位置確認信号の受信を示す信号(可搬式装置100の存在又は入室を示す検出信号)を位置確認信号受信部211又は機器・設備の識別情報と共に、宅内サーバ201の位置特定部212に送信する(ステップS302)。
【0049】
位置特定部212は、位置確認信号の受信を通知する機器・設備(位置確認信号受信部211を含む)の識別情報を対応表(機器・設備と居室とを対応付けた対応表)と照合し、ぬいぐるみ型端末が存在する居室を特定する(ステップS303)。
【0050】
(使用態様に応じた処理動作)
以下では、実施例に係るHEMSの構成例(
図1〜
図3)を用いて実現可能な様々な使用態様のうち主要な態様例を説明する。なお、後述する使用態様は一例である。よって、
図7〜
図10に示す処理動作も一例であり、その全てを実行する必要はなく、その一部だけを実行し、又は他の図面に示す処理動作と組み合わせた処理動作を実行しても良い。また、
図7〜
図10に示す処理に加え、後述する処理機能の実現に必要な適当な処理動作も適宜実行される。なお、後述の使用態様例では説明を省略するが、前述したぬいぐるみ型端末の位置の特定処理は既に実行されているものとする。
【0051】
(使用態様例1)
図7に、使用態様例1の場合に実行される処理動作例を示す。ここでは、子供がぬいぐるみ型端末で遊ぶ、持ち運ぶ、一緒に寝るような使用形態を想定する。この場合において、ぬいぐるみ型端末内のセンサは、常時又は逐次、その周辺の環境情報を計測する(ステップS401)。計測される環境情報は、ぬいぐるみ型端末に搭載されているセンサに依存する。例えば子供の体温、子供の周りの空気の湿度、子供の周囲の空気の質、ぬいぐるみ型端末で遊んでいること(在室)、子供の活動量等が測定される。ここでの計測値は、家屋内の壁や天井に設置されるセンサよりも子供の近くで測定できるため、子供の周辺環境をより正確に反映している蓋然性が高い。
【0052】
内蔵センサで計測された環境情報は、ぬいぐるみ型端末内のメモリ102に記録される(ステップS402)。ぬいぐるみ型端末内の演算装置101は、各センサから個別に収集された環境情報を処理し、端末測定情報とする(ステップS403)。ぬいぐるみ型端末内の演算装置101は端末測定情報を宅内サーバ201に送信し、宅内サーバ201は当該端末測定情報を受信する(ステップS404、S405)。
【0053】
一般的なHEMSでは、壁や天井に固定されたセンサや機器等から環境情報等が収集されることになるが、本実施例の場合には、ぬいぐるみ型端末から収集される端末測定情報に紐付けられる居室位置が測定時点で変化する。この点が、従来型のHEMSとの違いである。
【0054】
宅内サーバ201は、予め設定されていたモードに従って、ぬいぐるみ型端末が存在する居室の空調機等をフィードバック制御する(ステップS406)。ここでのフィードバック制御には、例えばぬいぐるみ型端末が存在する居室用に予め設定された設定温度の優先適用やCEMSからの節電要請による制御対象からの解除等が含まれる。本使用態様例のように、子供が日常的に持ち運ぶ「ぬいぐるみ」に可搬式装置100を内蔵することにより、子供が居室を移動しても、子供がいる室内の快適性を維持し続けることができる。なお、CEMSからの節電要請に応じた自動制御機能からの除外設定/除外解除は、情報表示装置300や宅内システム200の情報表示装置を通じて設定することもできる。
【0055】
また、宅内サーバ201は、受信した端末測定情報をタブレット端末に送信する処理を実行する(ステップS407)。この際、子供のいる室内(ぬいぐるみ型端末が存在する室内)を特定する情報も、タブレット端末に送信することが望ましい。この場合、親は、端末測定情報の内容(子供の在宅、子供の活動状況、体温、気温、湿度等)と共に子供がいる居室をタブレット端末の画面上で確認することができる(ステップS408)。また、現在の居室の環境が子供に適切でない又は快適でないと判断した場合には、親は、タブレット端末を操作して子供がいる居室の空調機器に対する設定情報(設定温度、湿度、換気量等)を入力することもできる。
【0056】
この設定情報はタブレット端末から宅内サーバ201に送信され(ステップS409)。一方、タブレット端末から設定情報を受信した宅内サーバ201は、受信した設定情報に基づいて対象機器を制御する(ステップS410)。
【0057】
(使用態様例2)
図8に、使用態様例2の場合に実行される処理動作例を示す。
図8には、
図7との対応部分に同一符号を付して示している。使用態様例2は、ぬいぐるみ型端末が存在する居室の環境を子供や親に簡便に伝えることを主眼として表している。このため、使用態様例1のように宅内サーバ201によるフィードバック制御やタブレット端末を通じての設定情報の入力等については記載を省略している。
【0058】
使用態様例2に特徴的な処理動作は、ぬいぐるみ型端末内の演算装置101が、計測された環境情報に基づいてぬいぐるみ型端末内のアクチュエータを制御し、ぬいぐるみの表情を可変する機能である(ステップS501)。なお、演算装置101が、測定された環境情報が子供に快適な環境か否かを判断するための条件(例えば温度、湿度、体温等やそれらの複合条件)は、メモリ102等に事前に登録されている。
【0059】
演算装置101は、例えば温度又は湿度センサで測定された温度又は湿度が事前に設定された数値範囲を超える場合、居室環境が変化したと判定する。この場合、演算装置101は、ぬいぐるみの表情を苦しそうな表情や泣き顔に変更する。ぬいぐるみの表情が苦しそうであれば、子供でも理解可能であるし、親に伝えることもできる。また、大人では分からない環境の変化を、ぬいぐるみの表情から親に気付かせることもできる。なお、表情による快適性の表示は、タブレット端末の画面でも確認できることが望ましい。この他、例えば計測された環境情報が快適な環境を示す場合には、演算装置101は、ぬいぐるみの表情を笑顔に変更させても良い。
【0060】
さらに、ぬいぐるみ型端末にスピーカが搭載されている場合には、音声によって快適性を報知することもできる。例えば泣き声や笑い声によって、現在の環境温度が子供にとって快適か否かを表現しても良い。
【0061】
(使用態様例3)
図9に、使用態様例3の場合に実行される処理動作例を示す。ここでは、子供自身がぬいぐるみ型端末の主観入力スイッチ106を押し、現在の環境が快適か否かを入力する形態を想定する。例えば病気で寝ている子供などを想定する。
【0062】
子供がぬいぐるみ型端末の主観入力スイッチ106を押すと、演算装置101は、メモリ102に操作情報を記録する(ステップS601)。この後、演算装置101は、主観入力スイッチ106の操作情報を宅内サーバ201に送信し、宅内サーバ201は当該操作情報を受信する(ステップS602、S603)。
【0063】
この使用態様の場合、宅内サーバ201は、主観入力スイッチ106の操作情報に基づいて、ぬいぐるみ型端末が存在する居室の空調機等をフィードバック制御する(ステップS604)。主観入力スイッチ106の操作情報が、例えば現在の環境が不快であることを示す場合、宅内サーバ201は、ぬいぐるみ型端末が存在する居室の環境がより快適な環境になるように予め定められたモードに従ってフィードバック制御を実行する。また、主観入力スイッチ106の操作情報が、例えば現在の環境が快適であることを示す場合、宅内サーバ201は、節電要請に応えるべく、ぬいぐるみ型端末が存在する居室の環境を維持しつつ消費電力を低下するようなフィードバック制御を実行する。例えば窓や換気口の開閉等を制御して外気を積極的に取り込み、室内環境の快適性を維持するようなフィードバック制御を実行する。
【0064】
また、宅内サーバ201は、受信した操作情報をタブレット端末に送信する処理を実行する(ステップS605)。タブレット端末は受信した操作情報を表示する(ステップS606)。この表示により、親は、子供が感じている室内の環境を確認することができる。この際、子供のいる居室(ぬいぐるみ型端末が存在する居室)を特定する情報も、タブレット端末に送信することが望ましい。
【0065】
現在の居室の環境を子供が不快であると感じている場合、親は、タブレット端末を操作して子供がいる居室の空調機器に対する設定情報(設定温度、湿度、換気量等)を入力することもできる。
【0066】
設定情報がタブレット端末から受信された場合、設定情報はタブレット端末から宅内サーバ201に送信される(ステップS607)。一方、宅内サーバ201は、受信した設定情報に基づいて対応機器を制御する(ステップS608)。
【0067】
(使用態様例4)
図10に、使用態様例1と他の使用態様例を組み合わせた例を示す。
図10でも、
図7との対応箇所には同一の符号を付して表している。この例では、宅内サーバ201に対する情報の入力が、ぬいぐるみ型端末と、宅内システムのセンシングデバイス204と、CEMS400の場合を想定する。
【0068】
このうち、ぬいぐるみ型端末から宅内サーバ201に環境測定情報が送信されるまでの処理(ステップS401〜S404)は、使用態様例1と同じである。
図10の場合、センシングデバイス204の1つである外気温センサが、測定された外気温情報を宅内サーバ201に送信する(ステップS701)。なお、外気温情報だけでなく、室外に設置された他のセンシングデバイスの測定情報、室内に設置された他のセンシングデバイスの測定情報も送信されても良い。また、CEMS400が、節電要請を宅内サーバ201に送信する(ステップS702)。従って、宅内サーバ201は、ぬいぐるみ型端末から環境測定情報を、宅内システム200から外気温情報を、CEMS400から節電要請をそれぞれ受信する(ステップS703)。
【0069】
図10の場合、宅内サーバ201は、これらの情報を総合的に判断し、ぬいぐるみ型端末周辺の適正な環境と現在値との差を演算する(ステップS704)。例えば宅内サーバ201は、ぬいぐるみ型端末がある居室の快適性を維持しつつ、節電要請に応えるためにぬいぐるみ型端末がある居室の空調機器の消費電力を下げるフィードバック制御に加え、窓の開閉や換気口の開閉も含めたフィードバック制御を実行する(ステップS705)。例えば夏季の節電要求にあって、室内温度よりも外気温の方が低い場合には、外気の取り込みも含めて節電と快適性との両立を図る。
【0070】
また、
図10では、この外気の取り込みを含む総合的な対策方法を提案としてタブレット端末に送信する(ステップS706)。親は、提案された情報をタブレット端末の画面で確認する(ステップS707)。親は、提案を受け入れる場合や提案を参考に空調機器等を制御する場合、各機器に対する設定情報をタブレット端末に設定する。タブレット端末に設定情報の入力があった場合、設定情報はタブレット端末から宅内サーバ201に送信される(ステップS708)。一方、宅内サーバ201は、受信した設定情報に基づいて対応機器を制御する(ステップS709)。
【0071】
(他の使用態様例)
ぬいぐるみ型端末は、子供が常に手元に置く可能性が高い。そこで、一部の使用態様では、ぬいぐるみ型端末に搭載されたアクチュエータ(ぬいぐるみの表情や手足の動作用)、表示装置、スピーカ等を用い、家庭内のインセンティブ付与ルールに基づいて付与されたポイント等を子供に通知することもできる。当該機能の前提として、宅内サーバ201は、ぬいぐるみ型端末を使用する子供に対してポイントを付与する機能、付与されたポイントを集計する機能を備えている必要がある。これらの機能は、既存のHEMSで採用されている機能を適用することで実現可能である。なお、宅内サーバ201には、集計結果等をぬいぐるみ型端末に通知する機能を新たに追加する。インセンティブ付与ルールの一例には、例えば子供部屋の照明や暖房の月間消し忘れ時間を目標時間内に抑制した場合にポイントを付与するルール、ごみ捨てや風呂掃除等のお手伝いをした場合にポイントを付与するルールなどが考えられる。
【0072】
また、インセンティブ付与ルールに基づいて付与されたポイントだけでなく、消費電力の測定結果及び/又は節電目標達成度に応じ、ぬいぐるみ型端末に搭載されたアクチュエータ(ぬいぐるみの表情や手足の動作用)、表示装置、スピーカ等を制御しても良い。なお、消費電力の測定結果及び/又は節電目標達成度は宅内サーバ201が把握しているため、この場合には、宅内サーバ201がぬいぐるみ型端末に制御信号を送信する。
【0073】
また、前述の使用態様例では、ぬいぐるみ型端末から受信した端末測定情報に基づいて、ぬいぐるみ型端末が存在する居室に取り付けられた空調機等をフィードバック制御しているが、ぬいぐるみ型端末に搭載された赤外線サンサや加速度センサにより人やペットの存在が確認された場合にのみフィードバック制御を実行する仕組みとしても良い。
【0074】
また、前述の使用態様例では明示していないが、宅内サーバ201がタブレット端末に通知する端末測定情報には、ぬいぐるみ型端末に内蔵された空気質センサで測定された空気環境が含まれていても良い。また、宅内サーバ201は、ぬいぐるみ型端末に内蔵された空気質センサで測定された空気環境に基づいて、ぬいぐるみ型端末が存在する居室の空調機器・設備をフィードバック制御しても良い。
【0075】
また、前述の説明では、ぬいぐるみ型端末の使用者の在室を赤外線サンサで検出したが、加速度センサ、活動量センサ、体温計からの出力の一つ又は複数に基づいて、ぬいぐるみ型端末の使用者やペットの在室を判定しても良い。また、これらのセンサ出力に基づいて、使用者やペットの体調を判定しても良い。勿論、これらの判定結果に基づいて、ぬいぐるみ型端末が存在する居室に対応する空調機器等をフィードバック制御しても良いし、これらの情報をタブレット端末に通知しても良い。
【0076】
(まとめ)
以上説明した可搬式装置100を使用してHEMSを構築すれば、以下のような使い方や利点が期待できる。
【0077】
居住者周辺の環境情報(気温、湿度等)をコストを掛けることなく簡易に測定することができる。また、手軽に居住者の主観を宅内サーバ201にフィードバックすることができる。また、これらの機能を通じ、居住者の見守りサービスを提供したり、住環境に対する気付きを与えることができる。
【0078】
また、可搬式装置100に入力された主観情報は、宅内サーバ201を通じて情報表示装置300に送信することもできるため、可搬式装置100を使用する人が感じている快適性に対する主観を他の居住者に知らせることができる。この場合、通知を受けた居住者は、現在の快適性を確認した上で、快適性を維持しつつ節電に応じられるかを判断することができる。この結果、節電行動の満足感や達成感を高めることができる。
【0079】
また、可搬式装置100に活動量センサや体温計を搭載すれば、子供の健康を定常的に測定し、記録することができる。また、子供の健康をリアルタイムで確認できるため、親に対して安心感を与えることができる。
【0080】
また、本実施例に係るHEMSでは、可搬式装置100がある居室内の気温だけでなく、外気の状態も同時に知ることができる。この場合において、居室内を冷房しなくても、外気を取り入れれば気温を下げれることも分かる。この場合には、冷房の無駄を省いて消費電力を下げることができる。
【0081】
また、本実施例に係るHEMSでは、居住者が可搬式装置100と共に移動する限り、滞在する居室の位置を特定できるため、CEMSからの節電要請時にも、可搬式装置100が存在する居室についてだけは節電要請による自動温度制御の対象から除外することができる。例えば子供、ペット、病人や高齢者などがいる居室のように、その空調状態を維持し続ける必要がある場合には、該当する居室に可搬式装置100を置くだけで、居住者の快適性や安全を維持することができる。
【0082】
また、本実施例に係るHEMSでは、居住者の主観や居住者のより正確な環境を把握できるため、従来のエネルギー情報の入出力中心のHEMSに対して、使用者中心のHEMSを提供することができる。
【0083】
また、本実施例に係るHEMSでは、住環境情報や節電に対する目標達成度を、玩具の意匠の変化等を通じて伝えることができる。このため、住環境情報や節電に対する目標達成度に対する気づきを子供に与えることもできる。