特許第5969940号(P5969940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969940
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】発泡成形体の成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/00 20060101AFI20160804BHJP
   B29K 25/00 20060101ALN20160804BHJP
【FI】
   B29C67/22
   B29K25:00
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-42021(P2013-42021)
(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-168901(P2014-168901A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅光
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】砥上 武廣
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−108870(JP,A)
【文献】 特開2008−221814(JP,A)
【文献】 特開2011−68817(JP,A)
【文献】 特開2011−58008(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0274890(US,A1)
【文献】 特開2007−83904(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3176075(JP,U)
【文献】 特開昭54−63170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00
B29K 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な一対の成形型を閉じることで形成されるキャビティと、該キャビティを仕切るための仕切手段とを具えた成形装置を用いて、
仕切手段によってキャビティを仕切る仕切ステップと、
仕切られたキャビティの一空間にポリアクリル酸アルキルエステル系樹脂粒子を含有する改質ポリスチレン系樹脂又はハイインパクトポリスチレンを充填する充填ステップと、
前記一空間とは異なるキャビティの他空間に前記改質ポリスチレン系樹脂又は前記ハイインパクトポリスチレンと同じ発泡倍率であるポリスチレン系樹脂を充填する充填ステップと、
仕切手段による前記仕切りを開放する開放ステップと、
0.04乃至0.12Mpaの蒸気圧を加えて加熱成形する加熱ステップと
を備えることを特徴とする発泡成形体の成形方法。
【請求項2】
開閉可能な一対の成形型を閉じることで形成されるキャビティと、該キャビティを仕切るための仕切手段とを具えた成形装置を用いて、
仕切手段によってキャビティを仕切る仕切ステップと、
仕切られたキャビティの一空間にスチレン改質ポリプロピレン系樹脂を充填する充填ステップと、
前記一空間とは異なるキャビティの他空間に前記スチレン改質ポリプロピレン系樹脂と同じ発泡倍率であるポリプロピレン系樹脂を充填する充填ステップと、
仕切手段による前記仕切りを開放する開放ステップと、
0.2乃至0.5Mpaの蒸気圧を加えて加熱成形する加熱ステップと
を備えることを特徴とする発泡成形体の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡倍率が同じ異種の発泡樹脂材同士を接合してなる発泡成形体の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発泡成形体の成形方法としては、固定型と可動型により形成されたキャビティと、固定型側から可動型に対してスライド可能に出没してキャビティを仕切るシャッターを備えた成形装置を用いて、シャッターによって仕切られた第1キャビティと第2キャビティとの一方に第1発泡樹脂粒子を、他方に第1発泡樹脂粒子とは異なる第2発泡樹脂粒子を充填して、シャッターを開放し、所定の蒸気圧を加えて加熱成形する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、第1発泡樹脂粒子と第2発泡樹脂粒子との組合せとしては、発泡成形体の重量管理を鑑みた場合、発泡倍率を同じにした異種材の組合せが求められていたところ、例えば、発泡倍率を同じにしたスチレン改質ポリエチレンとポリエチレン系樹脂との組合せが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3176075号公報
【特許文献2】特開2007−83904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の発泡成形体の成形方法にあっては、発泡倍率が同じスチレン改質ポリエチレンとポリエチレン系樹脂とのうち一方を第1キャビティに、他方を第2キャビティに充填して、所定の蒸気圧を加えて加熱成形した場合、成形された発泡成形体のうちポリエチレン系樹脂で成形された部分に対してスチレン改質ポリエチレンで成形された部分の寸法が極端に小さくなってしまうなど、発泡倍率が同じ異種の発泡樹脂材同士を接合してなる発泡成形体を適切に成形することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、発泡倍率が同じ異種の発泡樹脂材同士を接合してなる発泡成形体を適切に成形できる発泡成形体の成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発泡成形体の成形方法は、開閉可能な一対の成形型を閉じることで形成されるキャビティと、該キャビティを仕切るための仕切手段とを具えた成形装置を用いて、仕切手段によってキャビティを仕切る仕切ステップと、仕切られたキャビティの一空間にポリアクリル酸アルキルエステル系樹脂粒子を含有する改質ポリスチレン系樹脂又はハイインパクトポリスチレンを充填する充填ステップと、前記一空間とは異なるキャビティの他空間に前記改質ポリスチレン系樹脂又は前記ハイインパクトポリスチレンと同じ発泡倍率であるポリスチレン系樹脂を充填する充填ステップと、仕切手段による前記仕切りを開放する開放ステップと、0.04乃至0.12Mpaの蒸気圧を加えて加熱成形する加熱ステップとを備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成からなる発泡成形体の成形方法によれば、ポリアクリル酸アルキルエステル系樹脂粒子を含有する改質ポリスチレン系樹脂又はハイインパクトポリスチレンと、ポリスチレン系樹脂との発泡倍率を同じにしたものを採用し、かつ、加熱成形の蒸気圧を0.04乃至0.12Mpa(ゲージ圧)にする。かかる構成によって、前記異種材同士の融着率を70%以上とし、かつ、前記異種材同士の寸法収縮率に所定差が生じないようにすることができる。即ち、加熱成形の蒸気圧が0.04Mpaより小さい場合には、前記異種同士の融着率が70%以下となり、前記異種材同士の接着力は低くなる。一方、加熱成形の蒸気圧が0.12Mpaより大きい場合には、前記異種材同士の融着率は高くなるが、前記異種材同士の寸法収縮率に所定差が生じる。従って、かかる発泡成形体の成形方法では、加熱成形の蒸気圧を0.04Mpa以上かつ0.12Mpa以下にすることによって、発泡倍率が同じ両材に含まれるスチレンによる異種材同士の接着力を向上させ、かつ、両材の寸法収縮率を等しく又は略等しくできるので、発泡倍率が同じ異種の発泡樹脂材同士を接合してなる発泡成形体を適切に成形することができる。
【0009】
また、本発明に係る発泡成形体の成形方法は、開閉可能な一対の成形型を閉じることで形成されるキャビティと、該キャビティを仕切るための仕切手段とを具えた成形装置を用いて、仕切手段によってキャビティを仕切る仕切ステップと、仕切られたキャビティの一空間にスチレン改質ポリプロピレン系樹脂を充填する充填ステップと、前記一空間とは異なるキャビティの他空間に前記スチレン改質ポリプロピレン系樹脂と同じ発泡倍率であるポリプロピレン系樹脂を充填する充填ステップと、仕切手段による前記仕切りを開放する開放ステップと、0.2乃至0.5Mpaの蒸気圧を加えて加熱成形する加熱ステップとを備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成からなる発泡成形体の成形方法によれば、スチレン改質ポリプロピレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂との発泡倍率を同じにしたものを採用し、かつ、加熱成形の蒸気圧を0.2乃至0.5Mpa(ゲージ圧)にする。かかる構成によって、前記異種材同士の融着率を70%以上とし、かつ、前記異種材同士の寸法収縮率に所定差が生じないようにすることができる。即ち、加熱成形の蒸気圧が0.2Mpaより小さい場合には、前記異種同士の融着率が70%以下となり、前記異種材同士の接着力は低くなる。一方、加熱成形の蒸気圧が0.5Mpaより大きい場合には、前記異種材同士の融着率は高くなるが、前記異種材同士の寸法収縮率に所定差が生じる。従って、かかる発泡成形体の成形方法では、加熱成形の蒸気圧を0.2Mpa以上かつ0.5Mpa以下にすることによって、発泡倍率が同じ両材に含まれるプロピレンによる異種材同士の接着力を向上させ、かつ、両材の寸法収縮率を略等しくできるので、発泡倍率が同じ異種の発泡樹脂材同士を接合してなる発泡成形体を適切に成形することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発泡成形体の成形方法によれば、発泡倍率が同じ両材に含まれるスチレン又はプロピレンによる異種材同士の接着力を向上させ、かつ、両材の寸法収縮率を等しく又は略等しくできるので、発泡倍率が同じ異種の発泡樹脂材同士を接合してなる発泡成形体を適切に成形することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る発泡成形体の成形方法において、成形装置の一対の成形型を閉じる前の状態を示す。
図2】同一対の成形型を閉じ、仕切手段で仕切ったキャビティに発泡樹脂粒子材を充填した状態を示す。
図3】同仕切手段による仕切りを開放して加熱成形した状態を示す。
図4】成形した発泡成形体を取り出す(離型する)ために、同一対の成形型を開けた状態を示す。
図5】本実施形態に係る発泡成形体の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る発泡成形体の成形方法の一実施形態について、図1から図4を参照して説明する。かかる発泡成形体の成形方法では、図1に示すような成形装置1が用いられる。
【0014】
本実施形態の成形装置1は、発泡樹脂粒子を充填して発泡成形体を成形するための開閉可能な一対の成形型2,3を有する。具体的には、成形装置1は、図1に示すように、固定設置される一方の成形型2(以下、固定型2という)と、移動可能に設置される他方の成形型3(以下、移動型3という)とから構成されている。この成形装置1は、固定型2が第一金型2Aを有し、移動型3が第二金型3Aを有し、移動型3を固定型2に対して接近させて、第一金型2Aと第二金型3Aとを近接又は当接させる(閉じる)ことによりキャビティ(成形空間)を形成させて、発泡成形体を成形するものである。
【0015】
本実施形態の固定型2は、開閉方向に沿って凸状又は凹状に形成された第一金型2Aと、該第一金型2Aの裏側(キャビティを形成しない側)で第一金型2Aを支持するバックプレート2Bとを有してなる。第一金型2Aとバックプレート2Bとによって形成される空間は、蒸気室2Cである。また、第一金型2Aには、蒸気室2Cから蒸気をキャビティに供給するためのベント(蒸気孔)2Dと、後述するシャッター21の側部が嵌合(又は挿入)される凹状の側部用溝2Eとが設けられている。
【0016】
かかる固定型2には、キャビティを仕切るために、平板状のシャッター(仕切手段)21と、キャビティを仕切る仕切位置L1と仕切りを開放した開放位置L2とに前記シャッター21をスライド移動させる開閉機構22とが設けられている。また、固定型2には、キャビティに発泡樹脂粒子を充填するための充填装置23と、キャビティで成形された発泡成形体を第一金型2Aから押し出して離型するための離型手段(図示しない)とが設けられている。
【0017】
本実施形態の移動型3は、開閉方向に沿って凸状又は凹状に形成されて第一金型2Aと対をなす第二金型3Aと、該第二金型3Aの裏側(キャビティを形成しない側)で第二金型3Aを支持するバックプレート3Bとを有してなる(図1参照)。第二金型3Aとバックプレート3Bとによって形成される空間は、蒸気室3Cである。また、第二金型3Aには、蒸気室3Cから蒸気をキャビティに供給するためのベント(蒸気孔)3Dと、シャッター21の一端部21aが嵌合(又は挿入)される凹状の一端用溝3Eとが設けられている。
【0018】
かかる成形装置1を用いた本実施形態の発泡成形体の成形方法は、図1から図4に示すように、シャッター21によってキャビティを仕切る仕切ステップと、仕切られたキャビティの第一空間S1に第1発泡樹脂粒子R1を充填する充填ステップと、前記一空間S1とは異なるキャビティの第二空間S2に第1発泡樹脂粒子R1と発泡倍率が同じ(略同じを含む)である第2発泡樹脂粒子R2を充填する充填ステップと、シャッター21による前記仕切りを開放する開放ステップと、所定の蒸気圧を加えて加熱成形する加熱ステップとを備えてなる。より経時的に説明すると、本実施形態の発泡成形体の成形方法では、シャッター21を仕切位置L1に移動させることで仕切られたキャビティの第一空間S1に第1発泡樹脂粒子R1を充填すると共に、第二空間S2に第2発泡樹脂粒子R2を充填して、シャッター21を開放位置L2に移動させて前記仕切りを開放し、所定の蒸気圧を加えて加熱成形して、発泡倍率が同じ(略同じを含む)異種の発泡樹脂材同士を接合してなる発泡成形体を得る。
【0019】
具体的には、移動型3を固定型2に接近させて(図1参照)、一対の成形型2,3を閉じることにより第一金型2Aと第二金型3Aとでキャビティを形成する。そして、シャッター21を開放位置L2から仕切位置L1に移動させてキャビティを第一空間S1と該第一空間S1に隣接する第二空間S2とに仕切る(図2参照)。このとき、シャッター21の側部は、第一金型2Aの側部用溝2Eに嵌合し、シャッター21の一端部21aは、第二金型3Aの一端用溝3Eに嵌合している。
【0020】
キャビティの第一空間S1と第二空間S2とに、充填装置23によって、発泡倍率が互いに同じ(略同じを含む)異種材である第1発泡樹脂粒子R1と第2発泡樹脂粒子R2とが各々充填される(図2参照)。本実施形態では、第一空間S1に対して、第1発泡樹脂粒子R1としてポリアクリル酸アルキルエステル系樹脂粒子を含有する改質ポリスチレン系樹脂又はハイインパクトポリスチレンが充填され、第二空間S2に対して、第2発泡樹脂粒子R2として第1発泡樹脂粒子R1と発泡倍率が同じ(略同じを含む)であるポリスチレン系樹脂が充填される。
【0021】
ここで、第2発泡樹脂粒子R2のポリスチレン系樹脂は、例えば、ポリスチレン重合体を用いることができる。ポリスチレン重合体は、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンの単独重合体又は共重合体、及びスチレン‐無水マレイン酸共重合体、スチレン‐アクリル酸共重合体、スチレン‐メタクリル酸共重合体の群から選ばれる1種又は2種以上を含むもので構成することができる。
【0022】
また、第1発泡樹脂粒子R1の改質ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン系樹脂に、ポリアクリル酸アルキルエステル系樹脂微粒子が分散してなり、例えば、スチレンとポリアクリル酸アルキルエステル系樹脂微粒子との割合が9:1で構成することができる。また、第1発泡樹脂粒子R1のハイインパクトポリスチレンは、ポリスチレンの衝撃強度(耐衝撃性)を向上させる性能を有し、例えば、ブタジエンゴム、エチレン‐プロピレンゴム、スチレン‐ブタジエンゴムの1種以上と、ポリスチレン重合体とを共重合させたもので構成することができる。
【0023】
充填装置23によって、第一空間S1に第1発泡樹脂粒子R1を充填し、第二空間S2に第2発泡樹脂粒子R2を充填した後、シャッター21を仕切位置L1から開放位置L2に移動させて、キャビティの仕切りを開放する(図2,3参照)。このとき、第1発泡樹脂粒子R1と第2発泡樹脂粒子R2とは、シャッター21が開放位置L2に移動する前に位置していたキャビティ内の仕切位置L1に充填される(図3参照)。
【0024】
続いて、蒸気室2C,3Cからベント2D,3Dを通して、圧力が0.04乃至0.12Mpa(ゲージ圧)である蒸気を成形空間に供給することにより発泡樹脂粒子を加熱して、発泡させた後、冷却する。その後、移動型3を固定型2に対して離間させて一対の成形型2,3を開き(図4参照)、離型手段によって発泡成形体4を押して固定型2から離型する。
【0025】
このようにして成形された発泡成形体4は、例えば、図5に示すような自動車等の車両部材(例えば、下肢部衝撃吸収パッド又はフロアスペーサの芯材)として用いられるものであり、第1発泡樹脂粒子R1と第2発泡樹脂粒子R2とが接合界面Jで融着されることで、第1発泡樹脂粒子R1が成形された部分と第2発泡樹脂粒子R2が成形された部分とが接合界面Jで接合してなる。発泡成形体4のうち第1発泡樹脂粒子R1が成形された部分は、第2発泡樹脂粒子R2が成形された部分よりも衝撃吸収性能を有している。この第1発泡樹脂粒子R1が成形された部分と第2発泡樹脂粒子R2が成形された部分とは、密度又は比重が等しく、空隙率も等しくなっている。また、発泡成形体4の第1発泡樹脂粒子R1と第2発泡樹脂粒子R2との接合界面Jの外周には、一対の成形型2,3における側部用溝2Eと一端用溝3Eとに発泡樹脂粒子が充填されて成形された凸状の突条部41が形成されている(図4,5参照)。この突条部41は、追加工用のケガキ線として目印になるため、発泡成形体4の追加工の際に、作業者の作業効率を向上させることができる。
【0026】
かかる発泡成形体4では、第1発泡樹脂粒子R1が成形された部分における寸法収縮率は、0.3乃至0.5%程度であり、第2発泡樹脂粒子R2が成形された部分における寸法収縮率は、0.2乃至0.3%程度となっている。よって、かかる発泡成形体4では、第1発泡樹脂粒子R1が成形された部分と第2発泡樹脂粒子R2が成形された部分とのうち、何れか一方の寸法が接合界面Jを境にして極端に小さいなどの寸法上の不整合は生じない。また、接合界面Jでは、発泡倍率が同じ(略同じを含む)第1発泡樹脂粒子R1と第2発泡樹脂粒子R2とに含まれるスチレンによって異種材同士の接着力(又は融着力)が向上することで、接合強度が向上しているので、接合界面Jにおける割れや破断が生じ難い。また、第1発泡樹脂粒子R1と第2発泡樹脂粒子R2との発泡倍率が同じであるので、成形された発泡成形体4では、重量管理が容易にでき、例えば、重量管理に基づくエネルギー吸収材の衝撃吸収性能のばらつきを抑制して品質を安定させることができる。
【0027】
更に、かかる発泡成形体4では、加熱成形の蒸気圧を0.04乃至0.12Mpa(ゲージ圧)とすることによって、第1発泡樹脂粒子R1と第2発泡樹脂粒子R2との融着率が70%以上であり、かつ、第1発泡樹脂粒子R1と第2発泡樹脂粒子R2との寸法収縮率が上記のように等しく又は略等しくなっている。この点、加熱成形の蒸気圧が0.04Mpaより小さい場合には、前記融着率が70%以下となって異種材同士の接着力は低くなり、加熱成形の蒸気圧が0.12Mpaより大きい場合には、前記融着率は高くなるが、異種材同士の寸法収縮率に所定差(例えば、品質に影響を及ぼし得るような数mm以上の外寸上の差異をもたらす所定差)が生じてしまう。
【0028】
以上のように、本実施形態の発泡成形体の成形方法では、ポリアクリル酸アルキルエステル系樹脂粒子を含有する改質ポリスチレン系樹脂又はハイインパクトポリスチレンと、ポリスチレン系樹脂との発泡倍率を同じにしたものを採用し、かつ、加熱成形の蒸気圧を0.04乃至0.12Mpaにすることで、発泡倍率が同じ両材に含まれるスチレンによる異種材同士の接着力を向上させ、かつ、両材の寸法収縮率を等しく又は略等しくできるので、発泡倍率が同じ異種の発泡樹脂材同士を接合してなる発泡成形体4を適切に成形することができる。
【0029】
また、他実施形態に係る発泡成形体の成形方法は、上記実施形態の発泡成形体の成形方法において、第1発泡樹脂粒子R1と第2発泡樹脂粒子R2との組合せ、及び、加熱成形の際の蒸気圧が変更されてなる。具体的には、第1発泡樹脂粒子R1は、スチレン改質ポリプロピレン系樹脂であり、第2発泡樹脂粒子R2は、前記スチレン改質ポリプロピレン系樹脂と同じ(略同じを含む)発泡倍率であるポリプロピレン系樹脂で構成される。また、加熱成形の際には、圧力が0.2乃至0.5Mpa(ゲージ圧)である蒸気を成形空間に供給することにより発泡樹脂粒子が加熱されるように構成される。尚、かかる蒸気圧は、例えば、0.2乃至0.3Mpa、又は、0.3乃至0.5Mpaを用いることができる。
【0030】
ここで、第2発泡樹脂粒子R2のポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体、又はプロピレン単量体を主成分とし、プロピレン単量体と共重合可能な他の単量体成分との共重合体で構成することができ、例えば、プロピレン単独重合体ならびにプロピレン単量体を主成分とするエチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−アクリル酸共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体及びプロピレン−メチルメタクリレート共重合体のような重合体で構成され得る。また、第1発泡樹脂粒子R1のスチレン改質ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂を核にして、スチレンを重合させて構成することができる。
【0031】
かかる他実施形態の発泡成形体の成形方法により成形された発泡成形体では、第1発泡樹脂粒子R1が成形された部分における寸法収縮率は、0.6乃至1%程度であり、第2発泡樹脂粒子R2が成形された部分における寸法収縮率は、1.5乃至2%程度となっている。よって、かかる発泡成形体では、第1発泡樹脂粒子R1が成形された部分と第2発泡樹脂粒子R2が成形された部分とのうち、何れか一方の寸法が接合界面を境にして極端に小さいなどの寸法上の不整合は生じない。また、接合界面では、発泡倍率が同じ(略同じを含む)第1発泡樹脂粒子R1と第2発泡樹脂粒子R2とに含まれるプロピレンによって異種材同士の接着力が向上することで、接合強度が向上しているので、接合界面における割れや破断が生じ難い。
【0032】
更に、かかる発泡成形体では、加熱成形の蒸気圧を0.2乃至0.5Mpa(ゲージ圧)とすることによって、第1発泡樹脂粒子R1と第2発泡樹脂粒子R2との融着率が70%以上であり、かつ、第1発泡樹脂粒子R1と第2発泡樹脂粒子R2との寸法収縮率が上記のように略等しくなっている。この点、加熱成形の蒸気圧が0.2Mpaより小さい場合には、前記融着率が70%以下となって異種材同士の接着力は低くなり、加熱成形の蒸気圧が0.5Mpaより大きい場合には、前記融着率は高くなるが、異種材同士の寸法収縮率に所定差が生じてしまう。
【0033】
以上のように、他実施形態の発泡成形体の成形方法では、スチレン改質ポリプロピレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂との発泡倍率を同じにしたものを採用し、かつ、加熱成形の蒸気圧を0.2乃至0.5Mpaにすることで、発泡倍率が同じ両材に含まれるプロピレンによる異種材同士の接着力を向上させ、かつ、両材の寸法収縮率を略等しくできるので、発泡倍率が同じ異種の発泡樹脂材同士を接合してなる発泡成形体を適切に成形することができる。
【0034】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、一方の成形型2は固定型で、他方の成形型3は移動型で構成される場合について説明したが、一方及び他方の成形型2,3は、互いに対して接離可能な移動型で構成されることも可能である。或いは、一方の成形型2は移動型で、他方の成形型3は固定型で構成されることも可能である。
【0035】
また、上記実施形態では、シャッター21がキャビティを第一空間S1と第二空間S2との2つに仕切る場合について説明したが、平板状のシャッター21を成形装置に複数設けて、シャッター21がキャビティを2つ以上の複数空間に仕切るように構成することも可能である。この場合、複数空間のうち互いに隣接する空間の一方に第1発泡樹脂粒子R1、他方に第2発泡樹脂粒子R2が充填され得る。
【0036】
また、上記実施形態では、第一空間S1に第1発泡樹脂粒子R1を充填するタイミングと、第二空間S2に第2発泡樹脂粒子R2を充填するタイミングとは、同時、又は、いずれか一方が先のいずれの構成も可能である。また、第1発泡樹脂粒子R1及び/又は第2発泡樹脂粒子R2を各空間に充填しつつ、シャッター21を仕切位置L1から開放位置L2に移動させてキャビティの仕切りを開放することや、キャビティの仕切りを開放しつつ、加熱成形することも可能である。
【0037】
また、上記実施形態では、発泡成形体が自動車等の車両部材として下肢部衝撃吸収パッドの芯材に用いられる場合について説明したが、かかる用途に限定はされず、種々の用途に用いられることができる。例えば、発泡成形体は、自動車のバンパーやドアパッド、容器又は梱包資材などに用いられることが可能である。また、発泡成形体は、用途に応じて種々の形状で構成され得る。
【0038】
尚、本明細書で用いられている用語の説明として、「融着率」の定義を説明しておく。まず、平面略矩形の板状発泡成形体を成形可能な成形装置を用いて、板状空間をなすキャビティの一辺に平行となるように、キャビティをシャッターで仕切り、仕切られたキャビティの一方及び他方に異種材料を各々充填し、シャッターを開放して加熱成形することにより板状発泡成形体を成形する。そして、前記一辺に直交する方向に板状発泡成形体を破断する。このとき、破断面のうち、発泡粒子が100〜150個含まれるような任意の範囲内で計数される全粒子数(A)と破断している粒子数(B)とを用いて、以下の式として融着率(%)は定義される。かかる融着率は、70%以上を良好、70%未満を不良として評価され得る。
【数1】
【0039】
また、本明細書で用いられている「寸法収縮率」の定義を説明しておく。まず、上記「融着率」の定義で説明したように、板状発泡成形体を成形する。このとき、発泡成形体は、縦300mm×横400mm×高さ10mmの寸法で発泡成形されており、かかる成形直後の寸法に対して、23℃の温度条件下で16時間以上経過後の寸法の変化率をJIS K6767:1999に準拠して測定した値が発泡成形体の「寸法収縮率」である。
【符号の説明】
【0040】
1…成形装置、2…固定型(一方の成形型)、2A…第一金型、2B…第一金型のバックプレート、2C…第一金型の蒸気室、2D…第一金型のベント、2E…第一金型の側部用溝、21…シャッター(仕切手段)、22…開閉機構、23…充填装置、3…移動型(他方の成形型)、3A…第二金型、3B…第二金型のバックプレート、3C…第二金型の蒸気室、3D…第二金型のベント、3E…第二金型の一端用溝、4…発泡成形体、41…突条部、J…接合界面、L1…仕切位置、L2…開放位置、R1…第1発泡樹脂粒子、R2…第2発泡樹脂粒子、S1…第一空間、S2…第二空間
図1
図2
図3
図4
図5