(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
掘進機本体の後部の外殻をなし、かつ、内方でセグメントが組み立てられてセグメントリングが構築される筒状のテール部と、前記掘進機本体に設けられて前記掘進機本体を前方に推進する推進ジャッキと、前記掘進機本体に固定されて前記テール部の内方に位置する距離センサと、を含んで構成されるシールド掘進機のテールクリアランスを測定する方法であって、
前記推進ジャッキを短縮して前記テール部内で前記セグメントリングを構築する工程と、
前記距離センサを用いて、前記テール部内の基準位置から前記セグメントリングの内面までの距離を測定する工程と、
前記推進ジャッキを伸長して前記セグメントリングを前記テール部の後方に押し出してその反力により前記掘進機本体を前方に推進する工程と、
前記距離センサを用いて、前記テール部内の基準位置から前記テール部の内面までの距離を測定する工程と、
測定された前記テール部内の基準位置から前記テール部の内面までの距離と、測定された前記テール部内の基準位置から前記セグメントリングの内面までの距離と、に基づいて、テールクリアランス値を算出する工程と、
測定された前記テール部内の基準位置から前記セグメントリングの内面までの距離に基づいて前記セグメントリングの真円度を把握する工程と、
を含む、シールド掘進機のテールクリアランス測定方法。
掘進機本体の後部の外殻をなし、かつ、内方でセグメントが組み立てられてセグメントリングが構築される筒状のテール部と、前記掘進機本体に設けられて前記掘進機本体を前方に推進する推進ジャッキと、前記掘進機本体に固定されて前記テール部の内方に位置する距離センサと、を含んで構成されるシールド掘進機のテールクリアランスを測定する方法であって、
前記推進ジャッキを伸長して前記セグメントリングを前記テール部の後方に押し出してその反力により前記掘進機本体を前方に推進する工程と、
前記距離センサを用いて、前記テール部内の基準位置から前記テール部の内面までの距離を測定する工程と、
前記推進ジャッキを短縮して前記テール部内で前記セグメントリングを構築する工程と、
前記距離センサを用いて、前記テール部内の基準位置から前記セグメントリングの内面までの距離を測定する工程と、
測定された前記テール部内の基準位置から前記テール部の内面までの距離と、測定された前記テール部内の基準位置から前記セグメントリングの内面までの距離と、に基づいて、テールクリアランス値を算出する工程と、
測定された前記テール部内の基準位置から前記セグメントリングの内面までの距離に基づいて前記セグメントリングの真円度を把握する工程と、
を含む、シールド掘進機のテールクリアランス測定方法。
掘進機本体の後部の外殻をなし、かつ、内方でセグメントが組み立てられてセグメントリングが構築される筒状のテール部と、前記掘進機本体に固定されて前記テール部の内方に位置する距離センサと、を含んで構成されるシールド掘進機を用いて前記セグメントリングの真円度を把握する方法であって、
前記テール部内で前記セグメントリングを構築する工程と、
前記距離センサを用いて、前記テール部内の基準位置から前記セグメントリングの内面までの距離を測定する工程と、
測定された前記テール部内の基準位置から前記セグメントリングの内面までの距離に基づいて前記セグメントリングの真円度を把握する工程と、
を含む、セグメントリングの真円度把握方法。
前記距離センサは、レーザー光を前記セグメントリングの内面に向けて照射して前記セグメントリングの内面までの距離を測定するレーザー距離センサであり、かつ、レーザー光の照射方向を変更可能に構成されている、請求項7〜請求項9のいずれか1つに記載のセグメントリングの真円度把握方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態における推進ジャッキ短縮時のシールド掘進機の概略構成を示す。
図2は、推進ジャッキ伸長時のシールド掘進機の概略構成を示す。
図3は、
図1のI−I断面図である。尚、
図3においては、図示の簡略化のため、後述するエレクター及びセグメントリングの図示を省略している。
【0016】
尚、本実施形態では、便宜上、トンネル掘進方向を前進方向として前後左右を規定している。
また、本実施形態では、いわゆる泥土圧式のシールド掘進機を例にとってシールド掘進機の構成を説明するが、シールド掘進機の種類はこれに限らない。
【0017】
トンネルの構築に用いられるシールド掘進機1は、その本体(掘進機本体)2が、円筒形状の前胴3及び後胴4を含んで構成される。ここで、前胴3の側部に配置されるスキンプレート5と、後胴4の側部に配置されるスキンプレート6とは、それぞれ、掘進機本体2の外殻をなすものである。また、後胴4のスキンプレート6の後部60が、本発明の「テール部」に対応する。
【0018】
前胴3は、掘削用のカッタヘッド7とシールド隔壁(バルクヘッド)8とを有する。
カッタヘッド7は前胴3の前端部に配置されている。シールド隔壁8は、カッタヘッド7の後方に離間して前胴3に配置されている。
カッタヘッド7は、シールド隔壁8に回転自在に支持されており、シールド隔壁8の後面に設置された駆動用モータ9を駆動源として、回転しながら地山を掘削する。
【0019】
カッタヘッド7とシールド隔壁8との間には、これらとスキンプレート5とによりカッタチャンバ10が区画形成されている。
カッタチャンバ10内では、カッタヘッド7による掘削で生じた掘削土砂が滞留する。
【0020】
シールド掘進機1には、その前胴3の後部と後胴4の前部とを連結するように、複数の中折れジャッキ11が、胴の周方向に互いに間隔を空けて配置されている。
中折れジャッキ11は、シリンダ11aとロッド11bとにより構成される油圧ジャッキである。シリンダ11aは、その一端が後胴4の前部に固定されており、他端側にて、ロッド11bが進出・退入可能となっている。中折れジャッキ11のロッド11bは、その先端部が、前胴3の後部に固定されている。シールド掘進機1の掘進方向の変更・調整時には、各中折れジャッキ11の伸長量が変更・調整される。
【0021】
シールド掘進機1は、後胴4のスキンプレート6内にエレクター12を備える。
エレクター12は把持部12aを備える。エレクター12は、スキンプレート6の後部60(テール部)の内方にて、円弧状断面を有するセグメント13を把持部12aで把持しつつ、セグメント13をトンネル軸方向、径方向、周方向に適宜移動させることができる。エレクター12は、スキンプレート6の後部60(テール部)の内方にて、その周方向にセグメント13を組み立てて、円筒状のセグメントリング14を構築する。
【0022】
シールド掘進機1の後胴4の周縁部には、複数の推進ジャッキ15が、複数の中折れジャッキ11と干渉しないように、胴の周方向に互いに間隔を空けて配置されている。
推進ジャッキ15は、シリンダ15aとロッド15bとにより構成される油圧ジャッキである。シリンダ15aは、その一端側が後胴4に固定されており、他端側にて、ロッド15bが進出・退入可能となっている。推進ジャッキ15のロッド15bの先端部を既設のセグメントリング14に当接させた状態で推進ジャッキ15を伸長作動させることにより、シールド掘進機1(掘進機本体2)は推進力を得ることができる。それゆえ、推進ジャッキ15は、既設のセグメントリング14をスキンプレート6の後部60(テール部)の後方を押し出して、その反力により、シールド掘進機1(掘進機本体2)を前方に推進させることができる。
【0023】
シールド掘進機1は、カッタチャンバ10内の掘削土砂をシールド隔壁8の後方に搬出するスクリューコンベヤ16を備えている。
スクリューコンベヤ16は、シールド隔壁8に固定された円筒状のケース17とその内部に組み込まれたオーガ18とからなり、オーガ18を回転させることにより、カッタチャンバ10内の掘削土砂をシールド隔壁8の後方に搬出する。
【0024】
後胴4は、その中央部に足場20を備える。足場20は、機軸MCに沿うように延在している。
足場20の本体をなすフレーム部21は、機軸MCに沿うように延在し、平面視で略矩形状を有する上フレーム21a及び下フレーム21bと、下フレーム21bの左右両側より立ち上がって各々の上端が上フレーム21aに固定された複数の柱部材21cと、両端が上フレーム21aの左右両側に連結された複数のビーム部材21dと、両端が下フレーム21bの左右両側に連結された複数のビーム部材21eと、により構成されている。
【0025】
足場20(フレーム部21)の下方であって、かつ、エレクター12の後方には、エレクター12にセグメント13を供給するセグメント供給装置22が配置されている。また、足場20のうち、スキンプレート6の後部60(テール部)の内方に位置する部分には、機軸方向に沿って往復移動可能な移動足場(図示せず)が設けられている。この移動足場は、セグメント13同士を連結する作業等に用いられ得る。
【0026】
フレーム部21のうち、エレクター12の把持部12aの可動範囲に対応する部分には、複数(図では8個)の距離センサ31が設けられている。これら距離センサ31は、スキンプレート6の後部60(テール部)の内方に位置する。
図3に示すように、8個の距離センサ31は、フレーム部21の左側面上部、左側面中央部、左側面下部、上面中央部、下面中央部、右側面上部、右側面中央部、及び、右側面下部にそれぞれ配置されている。それゆえ、本実施形態では、8個の距離センサ31が、スキンプレート6の後部60(テール部)の内方にて、その周方向に互いに間隔を空けて配置されている。
【0027】
距離センサ31は、スキンプレート6の後部60内(テール部内)にて径方向外側に向けてレーザー光を照射する。距離センサ31は、照射したレーザー光が測定対象との間を往復する時間と光速度とに基づいて、距離センサ31から測定対象までの距離を算出することができる。すなわち、本実施形態では、距離センサ31は、レーザー光を測定対象に向けて照射して測定対象までの距離を測定するレーザー距離センサである。尚、本実施形態では、距離センサ31としてレーザー距離センサを用いているが、距離センサ31として用いられる距離センサの種類はこれに限らず、例えば、超音波距離センサを用いてもよい。
【0028】
距離センサ31から照射されるレーザー光をエレクター12の把持部12aが遮る場合には、把持部12aを後胴4の周方向に沿って移動させることで、レーザー光を測定対象に照射することができる。
距離センサ31にて測定された、測定対象までの距離に対応する信号は、後述する信号線41を介して、制御装置42に伝達される。
【0029】
図4は、距離センサ31、制御装置42、入力装置43、及び出力装置44の関係を示すブロック図である。ここで、制御装置42、入力装置43、及び出力装置44は、例えば、足場20に設けられた運転管理室45内に配置され得る。
距離センサ31は、信号線41を介して、制御装置42に接続されている。入力装置43は、信号線46を介して、制御装置42に接続されている。出力装置44は、信号線47を介して、制御装置42に接続されている。
制御装置42は、記憶部48、距離算出部49、及び、テールクリアランス値算出部50を備える。
【0030】
次に、本実施形態におけるテールクリアランスの測定方法について、上述の
図1〜
図4に加えて、
図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態におけるテールクリアランスの測定方法を示すフローチャートである。
【0031】
ステップS1では、推進ジャッキ15を短縮する(
図1参照)。
ステップS2では、エレクター12を作動させて、スキンプレート6の後部60(テール部)の内方にて、その周方向にセグメント13を組み立てて、セグメントリング14を構築する(
図1参照)。
【0032】
ステップS3では、テールクリアランスの測定対象であるセグメントリング14(ステップS2にて構築されたセグメントリング14)のリング番号を入力装置43に入力する。ここで、リング番号とは、セグメントリング14ごとに割り振られる番号である。入力されたリング番号に対応する信号は、信号線46を介して、制御装置46に伝達される。
【0033】
ステップS4では、各距離センサ31が、それぞれ、距離センサ31の設置位置から、測定対象であるセグメントリング14の内面までの距離D1を測定する。各距離センサ31にて測定された、距離D1に対応する信号は、それぞれ、信号線41を介して、制御装置42に伝達される。制御装置42では、上述のリング番号と、各距離センサ31にて測定された距離D1とが、関連付けられる。
【0034】
制御装置42の距離算出部49では、各距離センサ31にて測定された距離D1に、予め設定された、各距離センサ31の設置位置から機軸MC(基準位置)までの距離Dcを加算することで、機軸MC(基準位置)から、測定対象であるセグメントリング14の内面までの距離Dsを算出する。
算出された距離Dsは、リング番号に対応付けられて、記憶部48に格納される。
【0035】
このようにして、ステップS4では、距離センサ31を用いて、スキンプレート6の後部60内(テール部内)の基準位置(機軸MC)から、測定対象であるセグメントリング14の内面までの距離Dsを測定する。
【0036】
ステップS5では、推進ジャッキ15を伸長する(
図2参照)。これにより、セグメントリング14がスキンプレート6の後部60(テール部)の後方に押し出される。その反力により、シールド掘進機1(掘進機本体2)は、前方に推進される。
【0037】
ステップS6では、各距離センサ31が、それぞれ、距離センサ31の設置位置から、測定対象であるスキンプレート6の後部60(テール部)の内面までの距離D2を測定する。各距離センサ31にて測定された、距離D2に対応する信号は、それぞれ、信号線41を介して、制御装置42に伝達される。制御装置42では、上述のリング番号と、各距離センサ31にて測定された距離D2とが、関連付けられる。
【0038】
制御装置42の距離算出部49では、各距離センサ31にて測定された距離D2に、予め設定された、各距離センサ31の設置位置から機軸MC(基準位置)までの距離Dcを加算することで、機軸MC(基準位置)から、測定対象であるスキンプレート6の後部60(テール部)の内面までの距離Dtを算出する。
算出された距離Dtは、リング番号に対応付けられて、記憶部48に格納される。
【0039】
このようにして、ステップS6では、距離センサ31を用いて、スキンプレート6の後部60内(テール部内)の基準位置(機軸MC)から、測定対象であるスキンプレート6の後部60(テール部)の内面までの距離Dtを測定する。
【0040】
ステップS7において、制御装置42のテールクリアランス値算出部50では、同一のリング番号に関連付けられた距離Ds及び距離Dtを記憶部48より読み出して、当該距離Ds及び距離Dtに基づいて、テールクリアランス値Ctを算出する。具体的には、各距離センサ31の設置箇所について、距離Dtから、距離Ds及び予め設定されたセグメントリング14の厚さを差し引くことで、テールクリアランス値Ctを算出する。
【0041】
ステップS4にて算出された距離Dsに対応する信号、ステップS6にて算出された距離Dtに対応する信号、ステップS7にて算出されたテールクリアランス値Ctに対応する信号は、それぞれ、信号線47を介して、出力装置44に出力され得る。ここで、出力装置44としてはディスプレイ装置やプリンタ等を挙げることができる。
【0042】
尚、図示は省略するが、ステップS4にて算出された距離Dsに基づいて、セグメントリング14の真円度グラフを作成することが可能である。また、ステップS6にて算出された距離Dtに基づいて、スキンプレート6の後部60(テール部)の真円度グラフを作成することが可能である。
【0043】
また、ステップS7にて算出されたテールクリアランス値Ctに基づいて、トンネル横断面で見たテールクリアランス値Ctの分布と、スキンプレート6の後部60(テール部)に対するセグメントリング14の偏心度合いとを把握することができる。この例を、
図6及び
図7を用いて説明する。
【0044】
図6及び
図7は、それぞれ、テールクリアランスの測定結果の第1例及び第2例を示す。尚、これらの例において、測定位置Aは、フレーム部21の上面中央部に設置された距離センサ31の設置位置に対応している。また、測定位置Bは、フレーム部21の右側面上部に設置された距離センサ31の設置位置に対応している。また、測定位置Cは、フレーム部21の右側面中央部に設置された距離センサ31の設置位置に対応している。また、測定位置Dは、フレーム部21の右側面下部に設置された距離センサ31の設置位置に対応している。また、測定位置Eは、フレーム部21の下面中央部に設置された距離センサ31の設置位置に対応している。また、測定位置Fは、フレーム部21の左側面下部に設置された距離センサ31の設置位置に対応している。また、測定位置Gは、フレーム部21の左側面中央部に設置された距離センサ31の設置位置に対応している。また、測定位置Hは、フレーム部21の左側面上部に設置された距離センサ31の設置位置に対応している。
【0045】
図6(A)は、上記第1例を示す表であり、
図6(B)は、上記第1例におけるテールクリアランス値Ctの分布と、セグメントリング14の偏心度合いとを示す図である。
図7(A)は、上記第2例を示す表であり、
図7(B)は、上記第2例におけるテールクリアランス値Ctの分布と、セグメントリング14の偏心度合いとを示す図である。
尚、
図6及び
図7に示す誤差εは、テールクリアランス設計値Ctsからテールクリアランス測定値(測定されたテールクリアランス値)Ctを差し引いた値である。
【0046】
図6に示す第1例では、スキンプレート6の後部60(テール部)が略円形断面を有しており、それゆえ、テールクリアランス設計値Ctsが50mmで一定である。この第1例では、セグメントリング14の中心軸SCが、機軸MCより左方及び下方に位置していることがわかる。
【0047】
図7に示す第2例では、スキンプレート6の後部60(テール部)が左右方向に横長の略楕円形断面を有しており、それゆえ、左右方向(測定位置C、G)では、テールクリアランス設計値Ctsが54.5mmであり、上下方向(測定位置A、E)では、テールクリアランス設計値Ctsが47mmである。この第2例では、セグメントリング14の中心軸SCが、機軸MCより左方及び上方に位置していることがわかる。
【0048】
本実施形態におけるシールド工法では、
図6及び
図7に示したような、テールクリアランス値Ctの分布と、セグメントリング14の偏心度合いとに基づいて、シールド掘進機1の制御方向や、セグメント13の組み方(例えば、テーパーセグメントを用いるか否か)が決定され得る。
【0049】
本実施形態によれば、掘進機本体2の後部の外殻をなしてその内方でセグメント13が組み立てられてセグメントリング14が構築される筒状のテール部(スキンプレート6の後部60)と、掘進機本体2(後胴4)に設けられて掘進機本体2を前方に推進する推進ジャッキ15と、掘進機本体2(後胴4の足場20)に固定されてテール部の内方に位置する距離センサ31と、を含んで構成されるシールド掘進機1のテールクリアランスを測定する方法として、推進ジャッキ15を短縮してテール部内でセグメントリング14を構築する工程(ステップS1、S2)と、距離センサ31を用いて、テール部内の基準位置(機軸MC)からセグメントリング14の内面までの距離Dsを測定する工程(ステップS4)と、推進ジャッキ15を伸長してセグメントリング14をテール部の後方に押し出してその反力により掘進機本体2を前方に推進する工程(ステップS5)と、距離センサ31を用いて、テール部内の基準位置(機軸MC)からテール部の内面までの距離Dtを測定する工程(ステップS6)と、測定されたテール部内の基準位置(機軸MC)からテール部の内面までの距離Dtと、測定されたテール部内の基準位置(機軸MC)からセグメントリング14の内面までの距離Dsと、に基づいて、テールクリアランス値Ctを算出する工程(ステップS7)と、を含む。これにより、距離Dtと距離Dsとを、同一の距離センサ31で測定することができるので、機軸方向に複数の距離センサを配置することなく、比較的簡素な構成で、テールクリアランスを安定的に測定することができる。
【0050】
また本実施形態によれば、距離Dt及び距離Dsにおける基準位置はシールド掘進機1の機軸MC上に位置する。これにより、トンネル施工中に、テール部(スキンプレート6の後部60)の真円度と、セグメントリング14の真円度及び偏心度合いを把握することが可能となる。
【0051】
また本実施形態によれば、複数(図では8個)の距離センサ31が、テール部(スキンプレート6の後部60)の内方にて、その周方向に互いに間隔を空けて配置されている。これにより、移動速度が比較的遅いエレクター12に距離センサを設ける場合に比べて短時間で、テール部の横断面におけるテールクリアランスの分布を把握することができる。
【0052】
また本実施形態によれば、距離センサ31は、レーザー光を測定対象に向けて照射して測定対象までの距離D1、D2を測定するレーザー距離センサである。これにより、比較的簡素な構成で、精度良く、距離D1、D2を測定することができる。
【0053】
尚、本実施形態では、距離Ds及び距離Dtにおける基準位置が機軸MC上に位置するとして説明したが、基準位置はこれに限らない。例えば、基準位置として、各距離センサ31の設置位置を採用してもよい。
【0054】
図8は、本発明の第2実施形態におけるテールクリアランスの測定方法を示すフローチャートである。
上述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0055】
ステップS11では、テールクリアランスの測定対象であるセグメントリング14(後述するステップS15にて構築されるセグメントリング14)のリング番号を入力装置43に入力する。入力されたリング番号に対応する信号は、信号線46を介して、制御装置46に伝達される。
【0056】
ステップS12では、推進ジャッキ15を伸長する(
図2参照)。これにより、セグメントリング14がスキンプレート6の後部60(テール部)の後方に押し出される。その反力により、シールド掘進機1(掘進機本体2)は、前方に推進される。
【0057】
ステップS13では、各距離センサ31が、それぞれ、距離センサ31の設置位置から、測定対象であるスキンプレート6の後部60(テール部)の内面までの距離D2を測定する。各距離センサ31にて測定された、距離D2に対応する信号は、それぞれ、信号線41を介して、制御装置42に伝達される。制御装置42では、上述のリング番号と、各距離センサ31にて測定された距離D2とが、関連付けられる。
【0058】
制御装置42の距離算出部49では、各距離センサ31にて測定された距離D2に、予め設定された、各距離センサ31の設置位置から機軸MC(基準位置)までの距離Dcを加算することで、機軸MC(基準位置)から、測定対象であるスキンプレート6の後部60(テール部)の内面までの距離Dtを算出する。
算出された距離Dtは、リング番号に対応付けられて、記憶部48に格納される。
【0059】
このようにして、ステップS13では、距離センサ31を用いて、スキンプレート6の後部60内(テール部内)の基準位置(機軸MC)から、測定対象であるスキンプレート6の後部60(テール部)の内面までの距離Dtを測定する。
【0060】
ステップS14では、推進ジャッキ15を短縮する(
図1参照)。
ステップS15では、エレクター12を作動させて、スキンプレート6の後部60(テール部)の内方にて、その周方向にセグメント13を組み立てて、セグメントリング14を構築する(
図1参照)。
【0061】
ステップS16では、各距離センサ31が、それぞれ、距離センサ31の設置位置から、測定対象であるセグメントリング14の内面までの距離D1を測定する。各距離センサ31にて測定された、距離D1に対応する信号は、それぞれ、信号線41を介して、制御装置42に伝達される。制御装置42では、上述のリング番号と、各距離センサ31にて測定された距離D1とが、関連付けられる。
【0062】
制御装置42の距離算出部49では、各距離センサ31にて測定された距離D1に、予め設定された、各距離センサ31の設置位置から機軸MC(基準位置)までの距離Dcを加算することで、機軸MC(基準位置)から、測定対象であるセグメントリング14の内面までの距離Dsを算出する。
算出された距離Dsは、リング番号に対応付けられて、記憶部48に格納される。
【0063】
このようにして、ステップS16では、距離センサ31を用いて、スキンプレート6の後部60内(テール部内)の基準位置(機軸MC)から、測定対象であるセグメントリング14の内面までの距離Dsを測定する。
【0064】
ステップS17において、制御装置42のテールクリアランス値算出部50では、同一のリング番号に関連付けられた距離Ds及び距離Dtを記憶部48より読み出して、当該距離Ds及び距離Dtに基づいて、テールクリアランス値Ctを算出する。具体的には、各距離センサ31の設置箇所について、距離Dtから、距離Ds及び予め設定されたセグメントリング14の厚さを差し引くことで、テールクリアランス値Ctを算出する。
【0065】
ステップS13にて算出された距離Dtに対応する信号、ステップS16にて算出された距離Dsに対応する信号、ステップS17にて算出されたテールクリアランス値Ctに対応する信号は、それぞれ、信号線47を介して、出力装置44に出力され得る。これにより、上述の第1実施形態と同様に、セグメントリング14の真円度グラフを作成することが可能である。また、スキンプレート6の後部60(テール部)の真円度グラフを作成することが可能である。また、トンネル横断面で見たテールクリアランス値Ctの分布と、セグメントリング14の偏心度合いとについても把握することができる。
【0066】
特に本実施形態によれば、シールド掘進機1のテールクリアランスを測定する方法として、推進ジャッキ15を伸長してセグメントリング14をテール部(スキンプレート6の後部60)の後方に押し出してその反力により掘進機本体2を前方に推進する工程(ステップS12)と、距離センサ31を用いて、テール部内の基準位置(機軸MC)からテール部の内面までの距離Dtを測定する工程(ステップS13)と、推進ジャッキ15を短縮してテール部内でセグメントリング14を構築する工程(ステップS14、S15)と、距離センサ31を用いて、テール部内の基準位置(機軸MC)からセグメントリング14の内面までの距離を測定Dsする工程(ステップS16)と、測定されたテール部内の基準位置(機軸MC)からテール部の内面までの距離Dtと、測定されたテール部内の基準位置(機軸MC)からセグメントリング14の内面までの距離Dsと、に基づいて、テールクリアランス値Ctを算出する工程(ステップS17)と、を含む。これにより、距離Dtと距離Dsとを、同一の距離センサ31で測定することができるので、機軸方向に複数の距離センサを配置することなく、比較的簡素な構成で、テールクリアランスを安定的に測定することができる。
【0067】
図9は、本発明の第3実施形態における推進ジャッキ短縮時のシールド掘進機の概略構成を示す。
図10は、
図9のII−II断面図である。尚、
図10においては、図示の簡略化のため、エレクター及びセグメントリングの図示を省略している。
上述の第1及び第2実施形態と異なる点について説明する。
【0068】
本実施形態では、上述の8個の距離センサ31を用いる代わりに、2個の距離センサ32a、32bを用いている。距離センサ32a、32bは、スキンプレート6の後部60(テール部)の内方に位置する。
【0069】
距離センサ32aは、機軸MCの近傍であって、かつ、スクリューコンベヤ16のケース17の上面に取り付けられている。ここで、スクリューコンベヤ16のケース17は、掘進機本体2を構成する前胴3のシールド隔壁8に固定されている。それゆえ、距離センサ32aは、掘進機本体2と一体的に移動可能なように掘進機本体2に間接的に固定されている。
距離センサ32bは、フレーム部21の下面中央部に配置されている。
【0070】
図11は、距離センサ32aの概略構成を示す。
距離センサ32aは、その本体部33と、反射器34と、回転機構35とを備える。
距離センサ32aの本体部33は、機軸方向に沿うようにレーザー光を照射する。反射器34は、本体部33からのレーザー光を90°反射させて、その反射光を、スキンプレート6の後部60内(テール部内)にて径方向外側に向かわせる。距離センサ32aの本体部33は、反射器34からの反射光が測定対象との間を往復する時間と光速度とに基づいて、距離センサ32から測定対象までの距離を算出することができる。
【0071】
ここで、反射器34を回転機構35によりレーザー反射点34aを中心に回転させると、反射光が照射される対象(測定対象)の位置が、後胴4の周方向に沿って移動する。すなわち、距離センサ32aは、レーザー光の照射方向を変更可能に構成されている。尚、距離センサ32bは、距離センサ32aと同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0072】
図10は、距離センサ32aの距離測定可能範囲M1及び距離測定不可能範囲N1と、距離センサ32bの距離測定可能範囲M2とを示している。
距離測定不可能範囲N1は、距離センサ32aの反射器34からのレーザー光が足場20によって遮られる範囲である。
このようにして、2個の距離センサ32a、32bの距離測定可能範囲M1、M2を組み合わせることにより、スキンプレート6の後部60(テール部)の全周のうちの大部分を距離測定可能範囲としてカバーすることができる。
【0073】
距離センサ32a、32bの各々の反射器34からのレーザー光をエレクター12の把持部12aが遮る場合には、把持部12aを後胴4の周方向に沿って移動させることで、レーザー光を測定対象に照射することができる。
距離センサ32a、32bの各々にて測定された、測定対象までの距離に対応する信号は、その測定時の各距離センサの回転機構35の回転角に対応する信号と共に、信号線41を介して、制御装置42に伝達される。
【0074】
特に本実施形態によれば、距離センサ32a、32bは、レーザー光の照射方向を変更可能に構成されている。これにより、設置される距離センサの個数を上述の第1及び第2実施形態によりも少なくすることができるので、比較的簡素な構成で、スキンプレート6の後部60(テール部)の全周のうちの大部分を距離測定可能範囲としてカバーすることができる。
【0075】
尚、上述の第1〜第3実施形態では、泥土圧式のシールド掘進機1を用いて説明したが、シールド掘進機1の種類はこれに限らず、例えば、泥水式のシールド掘進機であってもよい。