特許第5969968号(P5969968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969968
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】環境試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   G01N17/00
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-197465(P2013-197465)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-64250(P2015-64250A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】宮前 雅彰
(72)【発明者】
【氏名】高木 一郎
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−276715(JP,A)
【文献】 実開平04−030042(JP,U)
【文献】 実開平06−040845(JP,U)
【文献】 特開2011−206661(JP,A)
【文献】 特許第3232446(JP,B2)
【文献】 実開平04−065129(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00 − 17/04
B01L 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験物を配置する試験室と、空気の温度を調節する温度調節部と、試験室の異なる領域に空気を吐出する複数台数の送風機とを有し、
前記送風機によって前記温度調節部と前記試験室との間で空気を循環させて試験室内の環境を所望の環境に調節する環境試験装置であって、
前記試験室内又は温度調節部内又は前記送風機近傍の少なくともいずれかの温度分布に関する情報を検知可能な温度分布検知手段を有し、
複数台数の送風機の一部または全部は送風量を変更可能であり、温度分布検知手段で検知された情報に基づいて前記送風機は個別に制御され、送風機の送風量を個々に又は一部相違させて運転することが可能であることを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
温度調節部は通風路を有し、当該通風路に加熱装置及び冷却装置が配され、温度分布検知手段は、前記通風路の横断面方向における温度分布に関する情報を検知するものであることを特徴とする請求項に記載の環境試験装置。
【請求項3】
温度分布検知手段は、複数の温度センサーによって構成され、温度調節部は通風路を有し、当該通風路に加熱装置及び冷却装置が配され、さらに通風路の末端近傍に前記送風機があり、前記通風路であって前記送風機の吸込口側に前記温度センサーが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
温度分布検知手段は、複数の温度センサーによって構成され、温度調節部には、加熱装置及び冷却装置が設けられ、前記温度分布検知手段は、加熱装置及び/又は冷却装置あるいはその近傍における所定の箇所の温度を検知するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項5】
前記温度分布検知手段は、温度センサーによって構成され、送風機の吸込口側又は吐出口側の温度を検知するものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項6】
前記温度分布検知手段は、複数の温度センサーによって構成され、各温度センサーによって、試験室内の温度あるいは試験室に配置された被試験物の温度を検知するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項7】
前記複数の送風機の合計送風量は、一定範囲の風量となるように設定されており、各送風機の送風量が個別に異なる場合であっても、その合計送風量は、前記一定範囲の風量に維持されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項8】
前記複数の送風機の合計送風量は、試験条件ごとに一定範囲の風量となるように設定されており、各送風機の送風量が個別に異なる場合であっても、その合計送風量は、前記一定範囲の風量に維持されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項9】
各送風機の吐出側の送風量を周期的に変更させることが可能であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項10】
各送風機の送風量の変化と、試験室内各部の温度及び/又は湿度の環境のばらつきの変化との関係が予め記憶されており、前記関係を加味して各送風機の送風量が制御されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の環境試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験室内の環境を目標とする温度や湿度に調節する環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品や素材等の性能や耐久性を調べる方法の一つとして環境試験が知られている。環境試験は、試験対象となる被試験物を所定の環境下に置き、性能や性状の変化等を調べる試験である。環境試験を実施するための装置として環境試験装置が知られている。
環境試験装置は、試験対象となる被試験物が載置される試験室と、空気を所望の温度に調節する温度調節部と、送風機とを備えている。また温度調節部は、空気が通過する通風路を有し、その内部に、加熱装置、冷却装置(除湿装置を兼ねる)が内蔵されたものである。なお環境試験装置には更に加湿装置を備えたものも多い。ただしバーンイン試験を実施する環境試験装置は、加湿装置を持たないものが多い。
環境試験装置は、温度調節部で温度や湿度を調節し、この空気を、試験室を経由して循環させ、試験室内の雰囲気を所望の環境に調節するものである(例えば特許文献1)。即ち環境試験装置は、送風機を運転して試験室内の空気を温度調節部に導入し、温度調節部で温度調節した空気を試験室側に送る。
【0003】
従来技術の環境試験装置では、例えば試験室の一部や、送風機の吹き出し口の近傍に温度センサーが一個だけ設けられていた。そして従来技術の環境試験装置では、この一個の温度センサーの検知温度が、目標の試験温度と一致する様に温度調節部内の機器が制御されていた。
【0004】
また従来技術においては、温度調節部と試験室との間における空気の吹き出し口の風速分布を均一にし、さらに空気循環量を多くすることにより、試験室内の温度分布のばらつきを解消していた。
環境試験装置は、一定の温度等の環境下に被試験物をさらして性能を調べる試験であるから、試験室内の温度分布のばらつきを小さくする必要がある。
理論上、温度調節部と試験室との間における空気の循環量が多い程、試験室内の温度分布のばらつきが小さくなる。そのため環境試験装置に搭載される送風機は、比較的大容量のものが採用される傾向にある。従来技術においては、温度調節部と試験室との間における空気の循環量を、試験室に要求される温度分布性能が厳しいほど増大させることによって、試験室内の温度分布のばらつきを小さくしている。
【0005】
また試験室の容積が大きい場合は、所望の送風量を確保する目的から、送風機を複数台搭載する場合がある。ここで従来技術においては、送風機を複数台搭載する場合、採用する複数台の送風機は、吹き出す風の分布を均一にするために、仕様や規格が同一のものが選定される。
【0006】
また従来技術の環境試験装置において、送風機を複数台、例えば2台搭載する理由は、前記した様に所望の送風量を確保し、風量分布を均一化することが目的であるから、環境試験を実施する際に、各送風機は、同一の運転条件で運転される。
二つの送風機の送風能力は同じであり、且つ一方の送風機がフル能力で運転される場合には、他方の送風機もフル能力で運転される。また一方の送風機が50%出力で運転される場合には、他方の送風機も50%出力で運転される。
【0007】
従来技術においては、送風機が一台の場合についても、2台の送風機を搭載する場合であっても、温度センサーは一台であり、一台の温度センサーの検知温度を試験室内の全体の代表温度として温度調節部内の機器が運転される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−231943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記した様に従来技術の環境試験装置は、試験室を経由する空気の循環量として、相当量を確保し、試験室内の温度分布のばらつきを小さくしている。しかしながら、実際問題として試験室内の温度分布が均一(温度差の範囲が一定未満の状態)になっていない場合もあった。即ち試験室内の温度分布にばらつきが生じる場合があった。
【0010】
そこで、試験室内の温度分布が不均一な状態とならないように、実際の試験室内の温度分布の状態を検知し、その検知情報に基づいて、試験室内の温度を制御するフィードバック機能を付加することが勘案される。
【0011】
例えばその1つの方法として、送風機からの空気の吐出方向の変更制御が可能な可動板を設け、フィードバック制御により、その可動板の姿勢を変更して送風機から吐き出される風向きを切り換える方策が考えられる。送風が行き渡り難く、温度変化の鈍い箇所があれば、可動板をその箇所に向け、そのポイントに対して空気を流す。こうすることで、試験室内に空気が流れにくいデッドスペースが形成されなくなるため、試験室内における温度分布のムラを解消することができると考えられる。
【0012】
しかしながら、送風機の吐出方向を可動板によって変更しようとすれば、当該可動板の向きを制御するための何らかの駆動源(例えばモータ)が必要となり、コストを大幅に増大させてしまう問題が生じる。
また可動板を設ける構成は、故障が発生し易く、メンテナンス等の手間が増大する懸念がある。環境試験装置は、極低温環境や高温環境を人工的に作り出す装置であるから、前記した可動板は、当然に極低温環境や高温環境にさらされる。その結果、可動板を駆動させるモータや駆動機構等が傷み、故障が頻発することがある。
そのため、この種の環境試験装置においては、別の手段を用いて、試験室の温度分布の不均一を改善することが望まれていた。
【0013】
そこで、本発明では、従来技術の問題点に鑑み、可動板等の機械的機構によることなく、試験室内の温度分布をほぼ均一化することができる環境試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記した課題を解決するため、試験室内の温度分布にばらつきが生じる原因を検討した。
試験室内の温度分布にばらつきが生じる原因は、大きく分けて温度調節部側にある場合と、試験室側にある場合とがある。
試験室内の温度分布にばらつきが生じる原因の一つとして、温度調節部の断面における温度分布のばらつきがあることが判った。
即ち温度調節部は、通風路を有し、その内部に、加熱装置、冷却装置(除湿装置を兼ねる)、加湿装置等が内蔵されたものである。そして送風機によって、温度調節部で一定の温度や湿度に調整された空気を試験室に送り込む。
ところが本発明者らが調査したところによると、通風路の横断面における温度は、必ずしも一定ではなく、温度の高い部位や低い部位があった。そのため、送風機が吐出する送風にも、断面位置における温度ばらつきが存在した。送風機から吐出される空気は、均一に吹き出していたとしても一様の温度とは言えず、温度の高い部位と、温度の低い部位が存在した。そのため試験室にも温度が高い部位と、温度の低い部位ができてしまっていた。
またもう一つの原因は、被試験物に由来するものであった。即ち試験室に配置された被試験物によって風の流れが妨げられたり、被試験物自身が発熱することによって試験室内の温度分布がばらついてしまうのであった。
【0015】
上記した知見に基づいて開発された請求項1に記載の発明は、被試験物を配置する試験室と、空気の温度を調節する温度調節部と、試験室の異なる領域に空気を吐出する複数台数の送風機とを有し、前記送風機によって前記温度調節部と前記試験室との間で空気を循環させて試験室内の環境を所望の環境に調節する環境試験装置であって、前記試験室内又は温度調節部内又は前記送風機近傍の少なくともいずれかの温度分布に関する情報を検知可能な温度分布検知手段を有し、複数台数の送風機の一部または全部は送風量を変更可能であり、温度分布検知手段で検知された情報に基づいて前記送風機は個別に制御され、送風機の送風量を個々に又は一部相違させて運転することが可能であることを特徴とする環境試験装置である。
【0016】
本発明の環境試験装置では、送風機を複数台有している。そして複数台数の送風機の一部または全部は送風量を変更可能であり、各送風機は個別に制御され、送風機の送風量を個々に相違させて運転することが可能である。
そのため、送風機に導入される空気の温度にばらつきがあっても、送風量を加減して吐出側の温度ばらつきを小さくし、試験室側に送ることができる。
また複数台数の送風機の送風量を加減し、風速に強弱を付けることにより、試験室の各部に熱的に均等に送風を行き渡らせることができる。
【0017】
また請求項1に記載の発明は、前記試験室内又は温度調節部内又は前記送風機近傍の少なくともいずれかの温度分布に関する情報を検知可能な温度分布検知手段を有し、温度分布検知手段で検知された情報に基づいて送風機が個別に制御されること特徴とする。
【0018】
温度分布検知手段は、何らかのセンサーを使用するものであることが推奨されるが、本発明はセンサーに限定されるものではなく、運転パターンによって温度偏向を予測するソフトウェアによって温度分布検知手段を構築してもよい。例えば蒸発器の温度分布を解析するソフトウェアによって温度分布検知手段を構築してもよい。
本発明によると、試験室の各部の温度ばらつきを小さくすることができる。
【0019】
請求項に記載の発明は、温度調節部は通風路を有し、当該通風路に加熱装置及び冷却装置が配され、温度分布検知手段は、前記通風路の横断面方向における温度分布に関する情報を検知するものであることを特徴とする請求項に記載の環境試験装置である。
【0020】
本発明は、温度調節部の通風路の横断面における温度分布のばらつきに起因する試験室の各部の温度ばらつきを解消するものである。
【0021】
請求項に記載の発明は、温度分布検知手段は、複数の温度センサーによって構成され、温度調節部は通風路を有し、当該通風路に加熱装置及び冷却装置が配され、さらに通風路の末端近傍に前記送風機があり、前記通風路であって前記送風機の吸込口側に前記温度センサーが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置である。
【0022】
本発明についても、温度調節部の通風路の横断面における温度分布のばらつきに起因する試験室の各部の温度ばらつきを解消するものである。
【0023】
請求項に記載の発明は、温度分布検知手段は、複数の温度センサーによって構成され、温度調節部には、加熱装置及び冷却装置が設けられ、前記温度分布検知手段は、加熱装置及び/又は冷却装置あるいはその近傍における所定の箇所の温度を検知するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0024】
本発明についても、温度調節部の通風路の横断面における温度分布のばらつきに起因する試験室の各部の温度ばらつきを解消するものである。特に本発明では、加熱装置及び/又は冷却装置あるいはその近傍における所定の箇所の温度を測定している。
本発明者らの調査によると、特に冷却装置は、その表面の温度が一定ではなく、相当に相違している場合がある。
即ち冷却装置は、一般に冷凍サイクルを構成する冷凍機の蒸発器であり、その内部で冷媒を気化させて熱を奪っている。
ところが、蒸発器における冷媒の蒸発状況は、負荷の大小によって相違する。冷却能力に比べて負荷が小さい場合には、蒸発器の内部は、その全域で液状の冷媒と気体状の冷媒とが混在した状態となり、蒸発器の表面温度はいずれの部位も低温であってばらつきは小さい。これに対して冷却能力に比べて負荷が大きい場合には、蒸発器の冷媒導入口近傍においては、液状の冷媒と気体状の冷媒とが混在した状態であるが、その先の領域においては、全ての冷媒が気化した状態となり、蒸発潜熱を消費してしまった状態となっている。そのため冷媒導入口の近傍の温度が低く、冷媒吐出口近傍の温度が高いものとなっている。
そこで本発明では、冷却装置あるいはその近傍における所定の箇所の温度を検知することとした。
また加熱装置は、一般に冷却装置の下流側にあり、その近傍の温度は、上流側の冷却装置の影響を受ける。そのため加熱装置あるいはその近傍における所定の箇所の温度を検知しても同様の作用効果が期待できる。
【0025】
請求項に記載の発明は、前記温度分布検知手段は、温度センサーによって構成され、送風機の吸込口側又は吐出口側の温度を検知するものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0026】
本発明についても、温度調節部の通風路の横断面における温度分布のばらつきに起因する試験室の各部の温度ばらつきを解消するものである。
【0027】
請求項に記載の発明は、前記温度分布検知手段は、複数の温度センサーによって構成され、各温度センサーによって、試験室内の温度あるいは試験室に配置された被試験物の温度を検知するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0028】
本発明は、温度ばらつきの原因が試験室側にある場合に対処するものであり、試験室内の温度あるいは試験室に配置された被試験物の温度を検知して送風機の送風量の調整に反映させる。
【0029】
請求項に記載の発明は、前記複数の送風機の合計送風量は、一定範囲の風量となるように設定されており、各送風機の送風量が個別に異なる場合であっても、その合計送風量は、前記一定範囲の風量に維持されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0030】
本発明の環境試験装置は、各送風機の吐出側の送風量を個別に制御する場合であっても、複数の送風機の合計風量が一定風量に維持されるため、試験室内の風量が過剰に少なくなったり、逆に多くなることはない。本発明においては、送風機を個別制御したとしても、試験室内の全体風量が適切な範囲に保たれるため、制御前よりも試験室内の温度分布のムラが酷くなることはない。
【0031】
請求項に記載の発明は、前記複数の送風機の合計送風量は、試験条件ごとに一定範囲の風量となるように設定されており、各送風機の送風量が個別に異なる場合であっても、その合計送風量は、前記一定範囲の風量に維持されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0032】
本発明の環境試験装置は、試験条件ごとに複数の送風機の合計風量が設定されているため、試験室内を効率的に目標温度に至らせることが可能となる。さらに、本発明では、各送風機の吐出側の風速を個別に制御する場合であっても、複数の送風機の合計送風量が一定風量に維持されるため、試験室内の風量が過剰に少なくなったり、逆に多くなることはない。つまり、本発明によれば、試験の効率化を図りつつ、好適な試験環境の形成を行うことができる。
なお、ここで言う「試験条件」とは、例えば試験室内を高温状態に制御したり、低温状態に制御する等の条件であり、例えば設定温度や設定湿度、維持時間等である。
【0033】
請求項に記載の発明は、各送風機の吐出側の送風量を周期的に変更させることが可能であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0034】
本発明の環境試験装置では、各送風機の吐出側の送風量を周期的に変更させることが可能である。そのため、扇風機に首振りをさせたり、空調機のルーバーを動作させた様な送風状態を擬似的に作り出すことができ、試験室内の温度ばらつきを小さくすることができる。
【0035】
請求項10に記載の発明は、各送風機の送風量の変化と、試験室内各部の温度及び/又は湿度の環境のばらつきの変化との関係が予め記憶されており、前記関係を加味して各送風機の送風量が制御されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0036】
本発明の環境試験装置では、送風機の送風量の変化と、試験室内各部の温度等のばらつきの変化との関係が、予め調査される。例えば、一方の送風機の送風量を数10パーセント増加させると、試験室のA箇所に対する送風量が増加するといったデータを集め、記憶しておく。そしてこのデータを加味して各送風機の送風量が制御される。そのため、試験室内の温度のばらつきを、より小さなものとすることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の環境試験装置は、複数の送風機を個別に制御して、送風機を相対的に異なる送風量にすることができるため、可動板等の機械的機構を用いることなく、試験室内の温度分布のばらつきを好適に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態に係る環境試験装置を示す概念図であり、環境試験装置を正面側から観察した概念図である。
図2図1の環境試験装置の温度調節部を構成する各機器のレイアウトを示す斜視図であり、環境試験装置を正面側から観察した斜視図である。
図3図1の環境試験装置の温度調節部を構成する各機器のレイアウトを示す斜視図であり、環境試験装置を右側面側から観察した斜視図である。
図4図1の環境試験装置をより簡略化した説明図であり、(a)は内部を正面側から示しており、(b)は内部を側面側から示している。
図5図4の環境試験装置をベースに風の流れを示した説明図である(2台の送風機の風速同一)。
図6】(a)は図5のE−E断面図であり、(b)は図5のF−F断面図である。
図7図4の環境試験装置をベースに風の流れを示した説明図である(2台の送風機の風速相違)。
図8】(a)は図7のE−E断面図であり、(b)は図7のF−F断面図である。
図9】本発明の他の実施形態の環境試験装置の斜視図である。
図10図9に示す環境試験装置の概念図であり、(a)は内部を側面側から示しており、(b)は内部を上面側から示している。
図11図10の環境試験装置をベースに風の流れを示した説明図である(2台の送風機の風速同一)。
図12】(a)は図11のE−E断面図であり、(b)は図11のF−F断面図である。
図13図10の環境試験装置をベースに風の流れを示した説明図である(2台の送風機の風速相違)。
図14】(a)は図13のE−E断面図であり、(b)は図13のF−F断面図である。
図15】本発明のさらに他の実施形態の環境試験装置における2台の送風機の運転状況を示すタイムチャートである。
図16】本発明のさらに他の実施形態の環境試験装置における送風機の近傍を示す斜視図である。
図17】本発明のさらに他の実施形態の環境試験装置における送風機の近傍を示す斜視図である。
図18】本発明のさらに他の実施形態の環境試験装置における送風機と、冷却装置及びヒータとの位置関係を示す斜視図である。
図19】本発明のさらに他の実施形態の環境試験装置における送風機と、冷却装置及びヒータとの位置関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態に係る環境試験装置について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、2台の送風機12,13を備えたバーンイン試験装置である。
環境試験装置1は、バーンインボード(図示せず)に実装された被試験物Wを、通常の使用温度よりも高い温度にさらし、さらに通常の使用電圧よりも高い電圧に印加するバーンイン試験を行うものである。
【0040】
本実施形態の環境試験装置1は、被試験物Wとして、高発熱の半導体デバイスが想定されている。具体的には、被試験物Wとしては、従来公知のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )やC−MOS FET(Complementary Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor )、システムLSI(System Large Scale Integration)、DSP(Digital Signal Processor)に代表されるような通電時の発熱量が極めて大きなものが想定されている。
【0041】
環境試験装置1は、公知のそれと同様に恒温槽2を備えている。恒温槽2は、外周部分が断熱性の高い断熱壁20によって囲まれた箱体である。そして、恒温槽2は、図示しない開口が設けられ、当該開口を介して、試験室5に対する被試験物Wの出し入れが可能な構造となっている。なお、恒温槽2には、前記開口を開閉するための図示しない扉が備えられている。
【0042】
本実施形態では、恒温槽2内が、バーンイン試験が行われる試験室5と、試験室5に送る空気の温度を調節する温度調節部6とに区分されている。なお、説明を容易にするため、環境試験装置1を右側面側から観察した図3を基準とし、恒温槽2の前側の領域を領域Aとし、後側の領域を領域Bとする。
また試験室5の上段側の領域をC領域とし、下段側の領域をD領域とする。
そして、図3の様な枡目を想定し、AC領域、BC領域、BD領域、AD領域と称する。
【0043】
試験室5を図1の様に正面側から見たとき、図1,2,3の様に試験室5の左右方向の中央の領域が、棚設置領域32となっている。棚設置領域32には、被試験物Wを載置する棚31が複数設置されている。
また本実施形態では、図1の様に、試験室5内の両脇の領域が、送風路部7及び排気路部8となっている。棚設置領域32は、送風路部7と排気路部8とに挟まれた領域である。
送風路部7は、図1を基準として棚設置領域32の右側の領域であり、温度調節部6から棚設置領域32に対して温度・湿度が調整された空気を供給する空気供給路として機能する。
排気路部8は、図1を基準として棚設置領域32の左側の領域であり、棚設置領域32から温度調節部6に向かって空気を戻す空気回収路として機能する。
【0044】
試験室5の棚設置領域32は、環境試験装置1の中心部にあり、その周囲を、温度調節部6と、送風路部7と、排気路部8とに挟み込まれた配置となっている。より具体的には、棚設置領域32の周囲においては、その側面側に送風路部7と排気路部8が配され、上部側に温度調節部6が配されている。そして、棚設置領域32と、他の部分とを仕切るように、仕切り壁21、22が設けられている。なお、棚設置領域32と、送風路部7及び排気路部8との間に配された仕切り壁21、22は、多数の通気口が形成された多孔板(例えばパンチングメタル)が採用されている。
【0045】
また、棚設置領域32に設けられた棚31には、図示しないバーンインボードが設置されている。そのため本実施形態では、被試験物Wが実装される複数のバーンインボードが高さ方向に並列な状態で収容された状態となっている。
このバーンインボードは、複数の被試験物Wを実装することができ、実装された被試験物Wに対して通電することができる。そして、試験室5には、バーンインボードと電気的に接続するための電圧印加ユニット(図示せず)が設けられている。
【0046】
図4(a)、(b)に示す様に、温度調節部6は、試験室5の上部側に隣接した位置に形成された空間であり、一連の通風路10を形成している。温度調節部6の一端は、排気路部8に連通し、温度調節部6の他端は、送風路部7側に開いている。
そして通風路10には、図1,2,3に示すように、空気を加熱するヒータ15と、空気を冷却する冷却装置16と、温度調節部6から試験室5に向けて送風する複数(本実施形態では2台)の送風機12、13が備えられている。
【0047】
ここでヒータ15は、例えば公知の抵抗加熱式のヒータである。
冷却装置16は、例えば公知の冷却装置の一部(蒸発器)であり、図示しない圧縮機、凝縮器、膨張弁等と共に冷凍サイクルを構成するものである。冷却装置16は、内部に相変化する冷媒が流通する熱交換器であり、温度調節部6を通過する気体を冷却するものである。
【0048】
2台の送風機12、13は、いずれも遠心式のファンであり、図示しない制御装置によって、回転数の制御が可能である。本実施形態では、2台の送風機12、13は、インバータ制御されている。2台の送風機12、13は、基本的な能力が同一であるが、吹き出し口の位置が相違する。
一方の送風機12は、図2に示す様に吸い込み口から吸い込んだ空気をモータ30側から見て左側に吐出するのに対し、他方の送風機13は、吸い込み口から吸い込んだ空気をモータ30側から見て右側に吐出する。
前記した様に2台の送風機12、13は、同一容量である。また両者の回転数を同一の回転数に制御したり、異なる回転数に制御することが可能である。2台の送風機12、13は、共にモータ30の回転数を変化させて送風量を任意に変更することができる。
なお本実施形態では、送風機1台あたりの能力、具体的には最大送風量を例えば30〜70m3 /min(立法メートル毎分)としたものが2台採用されている。
【0049】
本実施形態では、温度調節部6において、これらの機器が所定の順番で配されている。図1,2,3に示すように、温度調節部6を通過する空気の流れを基準として、空気の流れ方向上流側から、冷却装置16、ヒータ15、2台の送風機12、13の順番で並べられている。
【0050】
ここで本実施形態では、ヒータ15及び冷却装置16は、図2,3の様に、ある程度の全長を有し、いずれも恒温槽2の前後の領域に跨がっている。即ちヒータ15及び冷却装置16は、図2,3の様に前側の領域Aと、後側の領域Bとに跨がっている。
2台の送風機12、13は同一高さの同一平面上に配置されている。そして送風機12は、後側の領域Bにあり、送風機13は、前側の領域Aにある。
従って、送風機12は、主として通風路10の領域Bを通過する空気を吸い込んで吐出することとなる。
また送風機13は、主として通風路10の領域Aを通過する空気を吸い込んで吐出することとなる。
また2台の送風機12、13の空気吐出口14は、いずれも試験室5の送風路部7側に向かって開口している。各送風機12、13は、空気を送風する空気吐出口14があり、これらはいずれも同一方向(送風路部7が位置する方向)に向けられている。ただし、2台の送風機12、13は、図3の様に空気吐出口14が互いに外側となる様に配置されている。
【0051】
送風路部7は、温度調節部6から吐き出された空気を試験室5の棚設置領域32内に導く気体流路であり、鉛直方向に延びている。送風路部7は、温度調節部6から吐き出された空気が流れる流路であり、当該流路では鉛直方向下方に向けて流通した空気が側面側(仕切り壁21側)から棚設置領域32に流れ込む。
【0052】
排気路部8は、棚設置領域32を通過した空気を温度調節部6に導く気体流路であり、鉛直方向に延びている。排気路部8は、試験室5の側面側(仕切り壁22側)から吐き出された空気が流れる流路であり、当該流路では鉛直方向上方に向けて流通した空気が温度調節部6内に流れ込む。
【0053】
また本実施形態の環境試験装置1は、特有の構成として、複数の温度センサーを有し、温度センサーの組み合わせによって温度分布検知手段を構成している。
即ち本実施形態の環境試験装置1では、温度調節部6の通風路10内に4個の温度センサーが内蔵されていて通風路側温度分布検知手段が形成されている。
【0054】
より具体的には、温度調節部6の通風路10内であって、ヒータ15の近傍にヒータ側温度センサー25、26が設けられている。
ここで二つのヒータ側温度センサー25、26は、通風方向に直交する方向に距離を置いて設置されている。
ヒータ側温度センサー25は、通風路10内のB領域に設けられている。またヒータ側温度センサー26は、通風路10内のA領域に設けられている。
さらに本実施形態では、冷却装置16に複数(本実施形態では2つ)の冷却装置側温度センサー27、28が設けられている。
冷却装置側温度センサー27、28は、いずれも冷却装置16たる蒸発器の表面温度を測定するものである。
二つの冷却装置側温度センサー27、28についても、通風方向に直交する方向に距離を置いて設置されている。
冷却装置側温度センサー27は、通風路10内のB領域に設けられている。また冷却装置側温度センサー28は、通風路10内のA領域に設けられている。
【0055】
また本実施形態の環境試験装置1では、棚設置領域32の各棚31にそれぞれ複数の温度センサー33が取り付けられていて、試験室側温度分布検知手段が形成されている。
さらに本実施形態の環境試験装置1では、試験室5内であって、一方の送風機13の吐出口近傍に代表温度センサー11が設けられている。
【0056】
次に、本実施形態の環境試験装置1の基本動作について説明する。
なお、以下に説明する試験は、バーンイン試験であり、試験室5に配した被試験物Wに通電し、試験室5の温度を高温の設定温度に昇温させて、その高温状態を一定時間維持させる試験である。
【0057】
本実施形態の環境試験装置1では、試験室5内の温度が、例えば摂氏125度程度の高温となる様に制御される。即ち本実施形態の環境試験装置1は、設定温度が摂氏125度程度の高温であり、温度調節部6内の冷却装置16、ヒータ15及び2台の送風機12、13を運転して、試験室5の温度がこの設定温度となる様に図示しない制御装置によって制御される。
【0058】
ここで試験開始前の試験室5内の温度は、外気温度程度であって常温であるから、試験開始直後においてはヒータ15だけが運転されて試験室5内の温度が昇温されることとなる。
運転初期においては、温度調節部6では、ヒータ15によって空気が加熱され、その加熱された空気が、2台の送風機12、13によって試験室5の送風路部7に向けて送り出され、棚設置領域32を通過して排気路部8に入る。そしてさらに空気は、排気路部8を上昇して温度調節部6に戻る。即ち送風機12,13によって温度調節部6と試験室5との間で空気を循環させ、試験室5内の環境を所望の環境に調節する。
【0059】
具体的に説明すると、ヒータ15が、代表温度センサー11の検知温度と、設定温度との偏差に基づいて、図示しない制御装置によって、オンオフ制御あるいは比例制御で制御される。また同時に、2台の送風機12、13は、その合計送風量が、設定温度に対応する所定の送風量(例えば100m3 /min)となるように、図示しない制御装置によって、各モータ30の回転数が制御される。なお、2台の送風機12、13は、通常時においては、いずれも同一送風量(例えば50m3 /min)となるように回転数が制御される。なお現実問題として、2台の送風機12、13の送風量を完全に同一にしたり、合計送風量を常に一定にすることは不可能であり、インバータの周波数(回転数)を同じにして制御することとなる。
例えば、2台の送風機12、13の送風量の合計が、プラスマイナス10%の範囲に納まる様に制御される。
【0060】
こうして、温度調節部6から試験室5内に高温の空気が送り込まれ、試験室5内が設定温度に至った後は、試験室5内の温度を設定温度に維持するために、冷却装置16が運転される。
なお実際には、試験室5内が設定温度に至るまでに冷却装置16が起動される場合も多い。この理由は、急に冷却装置16を起動すると、試験室5内の温度が乱れるためであり、温度の上昇過程で冷却装置16を起動しておくことにより、設定温度近傍に至った際における温度の乱れを防ぐ。
バーンイン試験は、被試験物Wに通電した状態で高温環境に晒す試験である。そのため、被試験物W自身が発熱する。また2台の送風機12、13が常時運転されており、送風機12、13の空気攪拌作用によって熱が発生する。
そのため、バーンイン試験が開始されると、試験室5内の温度は、上昇傾向となるので、バーンイン試験中は、ヒータ15を制御する。
また前記した様に、試験室5は断熱壁20で覆われ、且つ被試験物Wと送風機12、13に起因する発熱があるから、ヒータ15を停止しても、さらに試験室5の温度が上昇傾向となる。
そのためバーンイン試験が開始されて暫くした後は、試験室5内の気温を設定温度に維持するために、冷却装置16が運転され、試験室5内の温度が設定温度に保たれる。
【0061】
ここで本実施形態の環境試験装置1は、試験室5内の温度を設定温度に維持するために、特有の運転方法を実行する機能を備えている。
即ち本実施形態の環境試験装置1は、単に代表温度センサー11の温度だけを監視し、二つの送風機12,13を同一の送風量で運転する通常運転と、通風路側温度分布検知手段(温度センサー25〜28)の検知状況に基づいて送風機12,13の送風量を可変する通風路温度分布優先運転と、試験室側温度分布検知手段(複数の温度センサー33)の検知状況に基づいて送風機12,13の送風量を可変する試験室温度分布優先運転とを行うことができる。
通風路温度分布優先運転及び試験室温度分布優先運転は、試験室5の設定温度が高温である場合や、被試験物が発熱するものである場合に実施することが推奨される。
以下、順次説明する。
【0062】
(通常運転について)
通常運転は、2台の送風機12、13を同じ送風量で運転する運転モードである。
即ち本実施形態の環境試験装置1では、2台の送風機12、13から同一風量の空気を吐出させて運転することができる。
通常運転を実施する場合は、2台の送風機12、13から同一の風速で空気が送風されるため、各送風機12、13から吐出された気体は、図5に示すように、左右方向(2台の送風機の並列方向)に概ね均等な割合で下流に向けて流れる。図5に示すように、A領域とB領域に均等に吹き出され、図6(a)、(b)の様に送風路部7を下向きに流れる。
そのため図3の様な枡目を想定したとき、AC領域、BC領域、BD領域、AD領域に空気が均等に流れる。
【0063】
即ち一方の送風機12から吐出された空気と、他方の送風機13から吐出された空気は、図5に示すように、左右方向に概ね等しいバランスを維持した状態で試験室5内を通過する。
通常運転は、ごく普通の運転モードであり、多くの場合、この運転モードで運転しても、試験室5内の温度ばらつきは小さい。
【0064】
通常運転は、前記した様に2台の送風機12、13から同一風量の空気を吐出させて運転するものである。そのため試験室5内では、図5の様にA領域(AC領域、AD領域)は、温度調節部6のA領域に配された送風機13から吐き出される気体の温度に依存した雰囲気温度となり、逆にB領域(BC領域、BD領域)は、温度調節部6のB領域に配された送風機12から吐き出される気体の温度に依存した雰囲気温度となる。
そのため、温度調節部6の通風路10の断面における温度ばらつきが小さい場合は、二つの送風機12、13から吐出される空気の温度は等しい。一方の送風機12に導入される空気の温度と、他方の送風機13に導入される空気の温度が等しいならば、二つの送風機12、13から吐出される空気の温度は等しいものとなる。
【0065】
しかしながら、一方の送風機12に導入される空気の温度と、他方の送風機13に導入される空気の温度が異なる場合には、二つの送風機12、13から吐出される空気の温度が相違し、図3の領域A(AC領域、AD領域)とB領域(BC領域、BD領域)は雰囲気温度が違うものとなってしまう。
【0066】
なお、温度調節部6の通風路10に温度ばらつきが生じる理由は、前記した様に冷却能力に比べて負荷が大きい場合であり、冷却装置16たる蒸発器の冷媒導入口近傍においては、液状の冷媒と気体状の冷媒とが混在した状態であり、その先の領域においては、全ての冷媒が気化した状態となっている場合である。
この様な現象は、バーンイン試験を行う環境試験装置1では、頻繁に発生する。バーンイン試験は、被試験物W自身の発熱や、送風機12、13の攪拌熱によって温度上昇傾向となるから、冷却装置16で試験室5内の温度を低下させる必要がある。
しかしながら、環境温度自体が、例えば摂氏125度という様に相当に高い温度であるから、蒸発器(冷却装置16)に導入された液状の冷媒は、早い時期に気化してしまう。そのためバーンイン試験を行う環境試験装置1では、冷却装置16の上流側と下流側との温度差が大きく、上流側の表面温度は、下流側の表面温度に比べて著しく低いものとなる傾向がある。
【0067】
例えば、図2の様に、図面手前側に冷媒導入口35がある場合、送風機13側の領域Aは、送風機12側の領域Bに比べて通過する空気の温度が低い。
そのため、送風機13から吐出される空気の温度は、送風機12側から吐出される空気の温度よりも低温となってしまう。
そのため、温度調節部6に設けられた複数の送風機12,13のそれぞれが、同一送風量となるように回転数制御が行われた場合、冷却装置16の温度ムラの影響を受けて、試験室5内においても温度分布のムラが発生してしまう場合がある。即ち領域A(AC領域、AD領域)の温度が、B領域(BC領域、BD領域)の温度よりも低くなり、試験室5内に温度ばらつきが生じてしまう。
【0068】
本実施形態の環境試験装置1では、この問題に対処するため、通風路温度分布優先運転と、試験室温度分布優先運転とを行う機能を備えている。
【0069】
(通風路温度分布優先運転について)
本実施形態の環境試験装置1では、通風路温度分布優先運転を実施することが可能であり、通風路温度分布優先運転を実施することによって、二つの送風機12、13から吐出される空気の温度を略一致させることができる。
通風路温度分布優先運転は、通風路側温度分布検知手段(温度センサー25〜28)によって、温度調節部6の通風路10の断面における温度ばらつきを監視し、温度ばらつきに応じて二つの送風機12、13の送風量を相違させ、送風機12、13から吐出される送風の温度を揃える運転モードである。
【0070】
本実施形態の環境試験装置1では、環境試験の最中に、通風路側温度分布検知手段(温度センサー25〜28)によって、現在の温度調節部6内の温度分布に関する情報を検知し、その情報に基づいて、図示しない制御装置が、各送風機12,13の送風量を個別に制御(以下、単に送風機の独立制御ともいう)する。即ち、送風機12,13の独立制御によって、各送風機12,13の送風量を互いに異なる状態に切り換えることができる。
【0071】
本実施形態では、ヒータ15及び冷却装置16の温度ムラを監視するべく、通風路側温度分布検知手段が設けられている。具体的には、通風路側温度分布検知手段は、ヒータ15側に設けられる複数(本実施形態では2つ)のヒータ側温度センサー25、26と、冷却装置16側に設けられる複数(本実施形態では2つ)の冷却装置側温度センサー27、28よりなる。
【0072】
そして、2つのヒータ側温度センサー25、26及び2つの冷却装置側温度センサー27、28は、図2に示すように、2台の送風機12、13の配置レイアウトに合わせて設置されている。2つのヒータ側温度センサー25、26及び2つの冷却装置側温度センサー27、28は、空気の流れ方向に対して、ほぼ直交する方向に一定距離離した状態で設置されている。これらの温度センサー25〜28は、ヒータ15や冷却装置16における、送風機12、13の並列方向と同一方向の断面における温度差を検知可能な配置となっている。
【0073】
ヒータ側温度センサー25及び冷却装置側温度センサー27は、共に通風路10内のB領域に設けられており、通風路10のB領域を通過する空気の温度や、冷却装置16の表面温度を検知している。
またヒータ側温度センサー26及び冷却装置側温度センサー28は、共に通風路10内のA領域に設けられており、通風路10のA領域を通過する空気の温度や、冷却装置16の表面温度を検知している。
【0074】
これにより、一方の送風機12に流入する空気の温度は、当該送風機12と同一側に配された一方の温度センサー25、27によって検知でき、また他方の送風機13に流入する空気の温度は、当該送風機13と同一側に配された他方の温度センサー26、28によって検知できる。
【0075】
そして本実施形態では、冷却能力が高い領域により多くの空気が通過する様に、送風機12、13の回転数を変化させる。
本実施形態では、図2の様に、領域A側に冷媒導入口35があるから、冷却装置16は、A領域の方がB領域に比べて表面温度が低いものとなる傾向となる。そして冷却装置側温度センサー27,28を比較して、A領域の温度が一定以上、B領域に比べて低くなると、A領域に設置された送風機13の回転数を上げ、B領域に設置された送風機12の回転数を下げる。
即ち冷却能力に応じて、領域を通過する風量を増減し、二つの送風機12,13から吐出される空気の温度を揃える。
また冷却装置側温度センサー27、28に代わって、ヒータ側温度センサー25、26の検知温度を参照し、A領域とB領域を通過する温度を比較して二つの送風機12,13から吐出される空気の温度を揃えてもよい。
【0076】
この様に、本実施形態では、ヒータ15に設けた2つのヒータ側温度センサー25、26の検知温度あるいは冷却装置16に設けた2つの冷却装置側温度センサー27、28の検知温度が、一定以上の温度差となったことを条件に、2台の送風機12、13の回転数を相対的に異なる回転数に制御する機能(以下、風速変更制御機能ともいう)が、図示しない制御装置に付与されている。風速変更制御機能では、各送風機12、13の回転数を制御して、両者から吐出される空気の送風量を意図的に変更する制御が行われる。
以下、風速変更制御機能についてさらに具体的に説明する。
【0077】
本実施形態では、2つの冷却装置側温度センサー27、28の検知温度が、一定以上(例えば摂氏10度〜20度)の温度差を検知したことを条件に、風速変更制御が実施される。風速変更制御によって、他方の送風機13の回転数が通常時よりも増加する方向(高速)に制御されると共に、一方の送風機12の回転数が通常時よりも減少する方向(低速)に制御される。
【0078】
より具体的には、冷却装置16の冷媒の導入側(冷媒導入口35)が他方の送風機13側にあるとすれば、当該他方の送風機13の回転が通常時よりも高速(例えば60m3 /min)に制御され、逆に一方の送風機12の回転は通常時よりも低速(例えば40m3 /min)に制御される。これにより、他方の送風機13から吐出される空気量が通常時よりも増大し、一方の送風機12から吐き出される空気量は通常時よりも減少する。換言すれば、他方の送風機13から吐き出される空気の単位体積当たりの冷却装置16との熱交換率を意図的に減少させ、一方の送風機12から吐き出される空気の単位体積当たりの冷却装置16との熱交換率を意図的に増加させている。その結果、双方の送風機12、13から吐き出される空気の温度差が縮まる。また同時に、試験室5内において、他方の送風機13から吐き出される空気の通過する領域が増大する。
なお、送風機12、13の回転数を変化させる際の変化量は、何らかのセンサーの検出値をフィードバックしてもよい。また冷却装置側温度センサー27、28の検知温度差、又は運転パターンに応じた適切な回転数の差を実験によって定めておき、図示しない記憶装置に記憶しておいてもよい。
【0079】
本実施形態では、風速変更制御によって、2台の送風機12、13から吐き出される空気の温度差を縮めることができ、試験室5内の温度分布のムラが発生し難い。また、たとえ試験室5内に温度分布のムラが形成されたとしても、その温度差はごく小さいものに抑えることができる。
【0080】
また、本実施形態の風速変更制御では、2台の送風機12、13の回転数を変更する前後において、それらの送風機12、13の合計送風量が増減しないように制御される。つまり、風速変更制御では、通常時における2台の送風機12、13の合計送風量が維持される。具体的には、2台の送風機12、13の合計送風量は、通常時において、100m3 /minであったとすれば、風速変更制御の後においても、合計送風量が100m3 /minに維持される。
前記した様に、2台の送風機12、13の合計送風量を常に一定にすることは不可能であり、一定範囲に納まることを目標として制御することとなる。
例えば、2台の送風機12、13の送風量の合計が、プラスマイナス10%の範囲に納まる様に制御される。
【0081】
したがって、本実施形態では、風速変更制御の前後において、試験室5内に供給される合計送風量がさほど変化しないため、試験室5内の全体風量が適切な範囲に保たれて、制御前よりも試験室5内の温度分布の変動が酷くなるといった不具合は発生し得ない。
【0082】
そして、冷却装置16に設けられた冷却装置側温度センサー27,28の検知温度が、一定未満の温度差となれば、風速変更制御を終了し、通常の風速制御を行う。試験室5内の温度分布のムラが解消されれば、再び、2台の送風機12、13の風速を同一に制御する。換言すれば、本実施形態では、温度調節部6内の温度分布にばらつきが発生すると、それが解消されるまで風速変更制御が連続的に実施される。
【0083】
また冷却装置側温度センサー27、28に代わって、ヒータ側温度センサー25、26の検知温度を参照し、A領域とB領域を通過する空気の温度を比較して二つの送風機12,13から吐出される空気の温度を揃えてもよい。
また上記した実施形態では、送風機12,13の送風量を一段階だけ変化させたが、より多くの段数に変化させてもよい。さらに、送風機12,13の送風量を無段階に変化させてもよい。
【0084】
(試験室温度分布優先運転について)
本実施形態の環境試験装置1では、試験室温度分布優先運転を行うこともできる。試験室温度分布優先運転を実施することによって、試験室5内の温度分布のばらつきを解消することができる。
試験室温度分布優先運転は、棚設置領域32の各棚31に設けられた温度センサー33を監視し、図7図8(a)、(b)に示す様に、温度ばらつきに応じて二つの送風機12、13の送風量を相違させて、温度ばらつきの大きい領域に重点的に送風する運転モードである。
【0085】
本実施形態の環境試験装置1では、棚設置領域32の各棚31に複数の温度センサー33が設けられているから、棚設置領域32の立体的な温度分布を知ることができる。
また二つの送風機12,13の送風量を変化させると、各立体領域を通過する風量が変化する。
この変化の状態を予め試験によって調査して図示しない記憶装置に記憶しておく。そして、温度ばらつきが生じた場合には、その領域に重点的に送風を行うように、図示しない制御装置によって送風機12、13が制御される。
例えば、AC領域であって、排気路部8に近い側の領域が、他の領域に比べて一定温度以上高い場合は、例えば送風機13の送風量を増大して、前記領域を通過する送風量を増大させる。
【0086】
上記実施形態では、バーンイン試験に好適な環境試験装置1を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、被試験物に通電しない恒温装置(あるいは恒温恒湿装置)に好適な環境試験装置51(図9)に送風機12、13の風速変更制御機能を付加しても構わない。かかる構成においても、上記実施形態と同様の作用効果を期待することができる。
以下、先の実施形態と同様の機能を発揮する部材に同一の番号を付して重複した説明を省略する。
【0087】
図9に示す環境試験装置51は、通常の環境試験を行う装置であり、図9図10(a)、(b)の様に、試験室5を備えている。また温度調節部6は、図10(a)に示す様に、試験室5の側面にある。なお試験室5と温度調節部6との間は、仕切り壁23によって仕切られ、仕切り壁23と恒温槽2の内壁との間で一連の通風路10が形成されている。また試験室5と温度調節部6とは、仕切り壁23の上端部及び下端部に形成された開口53,55で連通している。
温度調節部6の通風路10には、加湿装置56と、空気を加熱するヒータ15と、空気を冷却する冷却装置16と、温度調節部6から試験室5に向けて送風する複数(本実施形態では2台)の送風機12、13が備えられている。
【0088】
本実施形態においても、複数の温度センサーを有し、温度センサーの組み合わせによって温度分布検知手段を構成している。
即ち本実施形態の環境試験装置1では、温度調節部6の通風路10内に4個の温度センサーが内蔵されていて通風路側温度分布検知手段が形成されている。
【0089】
より具体的には、温度調節部6の通風路10内であって、ヒータ15の近傍にヒータ側温度センサー25、26が設けられている。
ヒータ側温度センサー25は、通風路10内のB領域に設けられている。またヒータ側温度センサー26は、通風路10内のA領域に設けられている。
さらに本実施形態では、冷却装置16に2つの冷却装置側温度センサー27、28が設けられている。
冷却装置側温度センサー27、28は、いずれも冷却装置16たる蒸発器の表面温度を測定するものである。
冷却装置側温度センサー27は、通風路10内のB領域に設けられている。また冷却装置側温度センサー28は、通風路10内のA領域に設けられている。
【0090】
また本実施形態の環境試験装置51においても、図示しない温度センサーが立体的に配置され試験室側温度分布検知手段が形成されている。
さらに本実施形態の環境試験装置51では、試験室5内であって、一方の送風機12の吐出口近傍に代表温度センサー11が設けられている。
【0091】
本実施形態の環境試験装置51においても、単に代表温度センサー11の温度だけを監視し、二つの送風機12,13を同一の送風量で運転する通常運転と、通風路側温度分布検知手段の検知状況に基づいて送風機12,13の送風量を可変する通風路温度分布優先運転と、試験室側温度分布検知手段の検知状況に基づいて送風機12,13の送風量を可変する試験室温度分布優先運転とを行うことができる。
【0092】
図11図12(a)、(b)は、通常運転を行った場合における試験室5内の空気の流れを示している。本実施形態の通常運転を行う場合は、本実施形態においても、2台の送風機12、13が同じ送風量で運転される。
その結果、図11図12(a)、(b)の様に、空気は、左右方向(2台の送風機の並列方向)から概ね均等な割合で水平方向に吹き出され、試験室5内を巡って温度調節部6に戻る。
【0093】
また図13図14(a)、(b)は、通風路温度分布優先運転及び試験室温度分布優先運転を行った場合における試験室5内の空気の流れを示している。通風路温度分布優先運転を行う場合は、送風機12,13の一方側の回転数を増大し、他方を減少させて、二つの送風機12,13から吐出される空気の温度を平準化する。
また試験室温度分布優先運転を行う場合には、二つの送風機12,13の送風量をアンバランスにして、所望の箇所に重点的に送風を行う。
【0094】
上記した各実施形態では、冷却装置16及びヒータ15に温度センサーを設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、冷却装置16とヒータ15のいずれか一方に温度センサーを設けた構成であっても構わない。また、上記実施形態では、ヒータ15、冷却装置16に2つずつの温度センサー25〜28を設け、一定以上の温度差を検知したことを条件に、送風機12、13の風速制御を行う構成示したが、ヒータ15、冷却装置16の所定の箇所に1つの温度センサーを設けて、所定の温度となったことを条件に、送風機12、13の風速制御を行う構成であっても構わない。
【0095】
上記実施形態では、ヒータ15や冷却装置16等の熱源の温度に基づいて、試験室5内で生じるであろう温度分布のばらつきを抑制する構成を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、各送風機12、13から吐き出される空気又は各送風機12、13に吸い込まれる空気の温度を直接センサーで検知してもよい。
各送風機12,13の吸込口や、通風路10であって送風機12,13の吸込口側に温度センサーを設け、この検知温度に基づいて、送風機12、13から送風される空気の温度が等しくなる様に送風機12、13の送風量を制御してもよい。
さらに各送風機12、13の吐出口の近傍に温度センサーを設けて、吐出される空気の温度を直接的に測定し、両者から吐出される空気の温度が等しくなるように送風機12、13の送風量を増減してもよい。
【0096】
また試験室5内の温度分布を推測したり、試験室5内の雰囲気温度あるいは試験室5に配された被試験物Wの温度から試験室5内の温度分布を直接的に確認し、ばらつきの大きい箇所に重点的に送風を行ってもよい。例えば各送風機の吐出口近傍又は吸込口近傍に温度センサーを設けることで、試験室5内の温度分布のばらつきの推測が可能となる。また試験室5の複数箇所に雰囲気温度を検知する温度センサーを設けるか、複数の被試験物Wに当該被試験物Wの温度を検知する温度センサーを設けることで、試験室5内の温度分布のばらつきの確認が可能となる。
【0097】
上記した実施形態では、各送風機12、13の風速変更制御において、実験等によって予め決定された送風機12、13の回転数に制御する構成を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、風速変更制御の初期段階において、各送風機12、13の回転数を所定の回転数に制御して、その際の通風路側温度分布検知手段(温度センサー25〜28)の温度変化特性を測定し、その測定結果に基づいて、その後の風速変更制御を行う構成であっても構わない。
【0098】
また各送風機12、13の回転数を周期的に変えてもよい。即ち図15の様に、各送風機12、13の回転数を周期的に変える。そうすることにより、あたかも扇風機に首振りをさせたり、空調機のルーバーを動作させた様な送風状態を擬似的に作り出すことができ、試験室5内の温度ばらつきを小さくすることができる。
この場合においても、各送風機12、13の合計送風量が一定範囲となる様に制御することが望ましい。
【0099】
上記実施形態では、温度調節部6に2台の送風機12、13を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、3台以上の送風機を設けた構成であっても構わない。
図16は、3台の送風機61,62,63を備えた環境試験装置70である。
本実施形態の環境試験装置70では、3台の送風機61,62,63の回転数を個別に変更することができる。
なお本実施形態の環境試験装置70では、送風機61,62,63の吐出口の配置がアンバランスになってしまい、図面左側の領域Gの送風量が、図面右側の領域Hの送風量よりも多くなってしまう傾向がある。
本実施形態の環境試験装置70では、3台の送風機61,62,63の回転数を個別に変更することができるから、左端の送風機61の送風量を落とし、右端の送風機63の送風量を増大することもできる。その結果、各領域に均等に送風が行われることとなる。
【0100】
また送風機を複数設ける場合には、送風機のケーシングを横一列に並べることができず、図17の様に、前後にずらして配置せざるを得ない場合が考えられる。この様なレイアウトを採用する場合においても、本発明は、有効であり、3台の送風機61,62,63の回転数を個別に変更して、各領域に均等に送風を行わしめることができる。
【0101】
また図18の様に、冷却装置が専有する領域や、ヒータが専有する領域が、通風路10の断面領域で均一では無い場合についても、送風機の送風量を加減することにより、全体的な吹き出し温度を均一化することができる。
さらにこの考えを進めた実施形態として、冷却装置76とヒータ75を図19の様に、領域を分けて設置し、これに対応する送風機72,73を設ける構成も考えられる。
本実施形態では、送風機72は主として冷却装置76を経由する空気を吸引して吐出し、送風機73はヒータ75を経由する空気を吸引して吐出する。
もちろん、冷却装置76又はヒータ75の一方だけが運転され、他方が停止している場合は、停止している方の送風機(72又は73)は、空気循環だけに寄与することとなる。
【0102】
また上記した実施形態では、試験室5に温度センサーを複数設け、この検知温度に基づいて試験室温度分布優先運転を行うこととしたが、被試験物に温度センサーを設け、被試験物の温度を基準として試験室温度分布優先運転を行う構成も推奨される。
【0103】
図1乃至図8に示した第一実施形態の環境試験装置1では、通風路10内に、温度分布検知手段としての冷却装置側温度センサー27、28等を設け、通風路10内の温度分布を直接的に実測して、通風路温度分布優先運転を実施した。しかしながら本発明はこの構成に限定されるものではなく、ソフトウェアによって、温度分布検知手段を構築し、間接的な温度分布検知によって通風路温度分布優先運転を実施してもよい。
通風路10内に温度分布が生じるのは、前記した様に例えば冷却能力に比べて負荷が大きい場合である。従って、環境試験を実施する際の設定温度や、現状の温度、冷却装置16の能力によって、通風路10内に温度分布が生じるか否かが予想される。そこで、実験等によって、どの様な運転パターンの際に、通風路10内にどの程度の温度ばらつきが生じるかを検証し、これを制御装置に記憶しておく。また風速変更制御における各送風機12、13の最適な回転数についても、予め実験等によって定め、図示しない記憶装置に記憶しておく、そして温度分布が生じるであろう運転パターンとなった場合に、通風路温度分布優先運転を実施する。
【0104】
同様に、試験室温度分布優先運転を行うに際しても、ソフトウェアによる、温度分布検知手段を採用し、間接的な温度分布検知によって試験室温度分布優先運転を実施してもよい。
試験室5に温度分布が生じるのは、例えば被試験物が発熱する様な場合である。従って、被試験物の発熱量や個数、配置によって、試験室5内に温度分布が生じるか否かが予想される。そこで、実験等によって、どの様な試験状況の際に、試験室5のどの領域にどの程度の温度ばらつきが生じるかを検証し、これを制御装置に記憶しておく。また風速変更制御における各送風機12、13の最適な回転数についても、予め実験等によって定め、図示しない記憶装置に記憶しておく、そして温度分布が生じるであろう状況となった場合に、試験室温度分布優先運転を実施する。
【0105】
以上説明した実施形態では、通常運転と、通風路温度分布優先運転と、試験室温度分布優先運転の三者を行うことができる。
しかしながら本発明は、この構成に限定されるものではなく、通風路温度分布優先運転だけを実施し得るものであってもよく、試験室温度分布優先運転だけを実施し得るものであってもよい。
また通風路温度分布優先運転と、試験室温度分布優先運転のいずれか一方と、通常運転とを実施できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0106】
1、51 環境試験装置
2 恒温槽
5 試験室
6 温度調節部
10 通風路
11 試験室側温度センサー
12、13 送風機
15 ヒータ(熱源)
16 冷却装置(熱源)
25、26 ヒータ側温度センサー(通風路側温度分布検知手段)
27、28 冷却装置側温度センサー(通風路側温度分布検知手段)
33 温度センサー(試験室側温度分布検知手段)
W 被試験物
図1
図2
図3
図4
図5
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図19