(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該エナメルが、少なくとも1層の隠蔽塗料とともに、および/または少なくとも1層のエナメルとともに使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載のガラスセラミック物品。
ガラスセラミック物品であって、該物品が、曲げ試験の後でWeibullモデルにより得られた、少なくとも130MPaのスケール係数を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の物品。
ガラスセラミック物品であって、該物品が少なくとも1層のエナメルを用いて少なくとも部分的に被覆されており、該エナメルが結晶である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品。
請求項8または9に記載の組成物が、セラミゼーションの前に、前駆体ガラス物品に適用され、該セラミゼーションサイクルの間に、該組成物が焼成され、および/またはセラミゼーションの後で、該組成物が該ガラスセラミック物品に適用され、次に該組成物が焼成される、請求項12に記載のガラスセラミック物品の製造方法。
該ガラスセラミック物品が、少なくとも1つの加熱要素を被覆または収容することを目的としたガラスセラミックプレートである、請求項1に記載のガラスセラミック物品。
【背景技術】
【0002】
ガラスセラミック性電気式コンロの加熱部分等の物品の販売は、過去数年間伸び続けてきた。この成功は、特にそうした電気式コンロの加熱部分の魅力的な外観およびそれらの掃除の容易さによって説明される。
【0003】
ガラスセラミックは、元来、前駆体ガラス(またはマザーガラス。またはグリーンガラス)と呼ばれるガラスであって、セラミゼーション(ceramization)と呼ばれる好適な熱処理によって引き起こされる制御された結晶化を可能にする特定の化学組成物であることが想起される。この部分的に結晶化された特定の構造は、ガラスセラミックに独自の特性を与える。
【0004】
現在のところ、所望特性に好ましくない影響を与えるリスクなしでこれらのプレートを改変することおよび/またはそれらを得るための方法を変更することは非常に難しいことを考えると、広範囲な研究および多くの試験の結果であるそれぞれの変化形である種々のタイプのガラスセラミックプレートがある。特に、電気式コンロの加熱部分として使用できるためには、ガラスセラミックプレートは、通常、可視範囲の波長において透過性を有することが好ましく、同時に、使用しない場合には、マスク加熱要素の下にある少なくともいくつかを覆うのに充分なほど低く、そして(放射加熱、伝導加熱等の)場合によって、動作中には、使用者が安全のために、加熱要素を視覚的に検知できるように透過性が充分高くおよび/または適当な場所では、ディスプレイを見ることができることが好ましい。特に放射バーナーを有する電気式コンロの加熱部分の場合、赤外範囲の波長において高い透過性を有することが好ましい。
【0005】
ガラスセラミックプレートはまた、それらの使用分野において要求される程充分な(例えば、家庭用電気器具の分野における電気式コンロの加熱部分のためのEN60335−2ー6基準に従う)機械的強度を有することが好ましい。特に、電気式コンロの加熱部分として使用できるために、ガラスセラミックプレートは、(器具の保持および落下等の)生じる場合がある圧力および衝撃に充分な耐性を有することが好ましい。通常、ガラスセラミックプレートは、単独で、150〜180MPaの(下記で規定される)スケール係数(scale factor)によって特に表わされた機械的強度を有する。
【0006】
大部分の現在のプレートは、暗い色、特に黒色であるが、また(特にフランス国特許第2766816号明細書に記載されたような、例えば、少なくとも50%のヘイズがある白色の)明るい色プレート、または不透明な被膜を備えた透明なプレートがある。ガラスセラミックプレートのための公知の(機能性および/または装飾性)被膜の中で、ガラスフリットおよび顔料に基づく通常のエナメル、および例えば、アルキド樹脂に基づく高温に耐性のある塗料がある。特に、エナメルは、セラミゼーションの前に前駆体ガラス(またはマザーガラスもしくはグリーンガラス)の上に堆積でき、そしてセラミゼーションの間に焼成できる利点を有し、そしてまた、(プレートの種々の加熱手段の使用を可能にする)高温に耐えることができる利点を有する。しかし、エナメルは、通常、単一の堆積(エナメル重ね合わせは可能ではない)および薄い厚みのみが可能であり、そうでなければ、エナメルがはげ落ち、そしてガラスセラミックプレートに機械的に損傷を与えるという欠点を有する。塗料に関していえば、塗料は(必要な場合)幾層かで適用できる。しかし、塗料は、セラミゼーション(したがって、追加の焼成作業を必要とする)の後に適用されなければならず、そして(より低い温度で動作する)誘導バーナー(induction burner)用プレートに限られたままである。
【0007】
最近になって、ガラスセラミックプレートはまた、マグネトロンスパッタリングによって堆積された反射層に基づくか、または特殊な効果を有する顔料(酸化アルミニウムまたは金属酸化物を用いて被覆したマイカ薄片)を取り込んだガラスバッチ材料に基づく被膜を用いて提案されてきた。しかし、マグネトロンスパッタリングによって堆積された層に基づく被膜は、特殊設備を必要とし、そして通常誘導バーナー用のプレートに限られ、そしてセラミゼーションの後で行われるそれらの製造はさらに複雑であるか、またはやりにくいので、さらに高価である。特殊効果を有する顔料を用いたガラスバッチに基づく被膜に関しては、これらは、上記のエナメルと同じ欠点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
有利なことに、本発明によるエナメルを用いて被覆したガラスセラミック物品、特にガラスセラミックプレートは、(特に、従来のエナメル加工したプレートに比較して)改善された引っ張り強度を有する。この引っ張り強度を、約70mm×70mm(プレートの厚さはさらに、通常約4mmである)の寸法を有するエナメル加工したプレートであって、エナメル加工した面が細長い試験試料で、三脚上リング(ring−on−tripod)曲げ試験を使用して測定した。試験試料は、40mm直径の円の中で二等辺三角形の頂点にそれぞれ位置する3つの9.5mm直径の球の上にある。10mm直径の球を用いて、試験試料の中心を圧することにより力を掛ける(荷重は、この領域内で等方性である)。リングの前進速度は、約5mm/分である。’’A Statistical Theory of the Strength of Materials’’、Royal Swedish Institute For Engineering Research、W.Weibull、Stockholm 1939、1〜45の記事の中に記載されたWeibull Modelを使用して、結果を解析する。平均破断応力を明らかにする得られたデータは、MPaで表わされた「スケール係数」(このスケール係数は、言い換えれば、曲げ破壊係数(MOR)測定のWeibull法による処理の結果である)として公知のデータである。
【0016】
このように、本発明によるエナメルを用いて被覆したガラスセラミック物品、特にガラスセラミックプレートは、有利なことに、少なくとも130MPaの、特に少なくとも140MPaの、特に少なくとも150MPaの曲げ試験後のWeibullモデルにより得られたスケール係数を有し、この係数は、少なくとも280MPaの範囲まである。このより大きな引っ張り強度は、特に好都合、特に極端な輸送および貯蔵条件下で好都合であり、いくつかの従来のエナメル加工したプレートは、比較すると、ずっとより小さな力が掛けられた場合に、破壊する傾向がある(これらのプレートは、例えば、約70〜80MPaのスケール係数を有し、エナメル加工していないプレートそれ自身のスケール係数は、通常約150〜180MPaである)。この点で、衝撃の間に生じたクラックが表面に対して平行であり、恐らくこのように高いエネルギーの散逸およびより良好な機械的強度となることを、本発明によるエナメルを用いて被覆した物品のための本発明において確立することが特に可能であった。特に、エナメルが下記で特定するようにその後に焼成される場合、本発明によるエナメルを用いて被覆された(プレート等の)ガラスセラミック物品は、有利なことに、曲げ試験の後でWeibullモデルにより得られた180MPaより遙かに大きいスケール係数、つまり従来のエナメル加工したプレートのスケール係数より大きいだけでなく、生の(エナメル加工していない)ガラスセラミックプレートのスケール係数さえも著しく超えるスケール係数を有し、そうした機械的に強化されたガラスセラミック物品は、好ましくは本発明において目標とされている。
【0017】
本発明はまた、さらに通常、最大の張力が、ガラスセラミックの表面下、有利にはこの表面近傍に導入される(か、または、そうした工程を含む)ガラスセラミック物品を補強するための方法に関する。言い換えれば、ガラスセラミックの厚さにおける応力プロファイル(または残留応力の分布)がこのガラスセラミックの少なくとも一部の領域(特に、処理された領域)において、この表面の近傍(特に処理された/強化された表面から1/4の厚さ)におけるガラスセラミックの表面下で、最大張力(または最大の引張応力値)を有するように、このガラスセラミックは処理される。応力プロファイルにおける最大張力の存在は、適当な場合には、ガラスセラミックの屈曲の存在を明らかし(例2の場合、および/または下記のようにその後に焼成された本発明によるエナメルの使用の場合、得られたプロファイルは、
図3中に具体的に説明されている)、またはこの最大張力は、適当な場合には、このプロファイル(例1の場合、および/または下記のようにセラミゼーションの間に焼成された本発明によるエナメルの使用の場合、得られたプロファイルは、
図2中で具体的に説明されている)におけるピークによって、表わすことができる。(特に、最大張力が表面に向かう前に)表面下の圧縮区間がまた、通常観察された、この浅い深さの圧縮区間は、特に、適当な場合には衝撃の間に形成されたクラックを表面に平行になるように表面下で向けて、そしてこのようにこれらクラックの伝搬を防ぐ補強に参加する。
【0018】
本発明による方法によって得られた補強は、(例えば、得られたガラスセラミックが、従来のエナメルを用いて処理されたガラスセラミックに比較して、少なくとも遙かに脆化しておらず/脆くなく/補強されている本発明によるエナメルの、下記で説明する、使用の場合に、従来の様式で処理された同じ厚さの同じガラスセラミック基材に比較して)少なくとも相対的に補強されており、そして(生のまたは未処理の同じ厚さの同じガラスセラミックに比較して)好ましくは有利なことに、絶対的に補強されている。
【0019】
さらに特に、本発明による補強プロセスにおいて、ガラスセラミックの少なくとも1つの面の少なくとも一部の領域は、検討される領域/面の表面の下で、かつそれらの近傍に少なくとも1.2MPa、そして好ましくは、少なくとも1.5MPaの最大張力を導入することによって強化されている。好ましくは、補強は、上記に記載した検討された/処理された領域において、表面下少なくとも50μmの深さ、そして好ましくはガラスセラミックの表面に対してガラスセラミックの厚さ(例えば、ガラスセラミックプレートの場合は、プレートの厚さ)の最大限で25%の深さにおいて、少なくとも1.2MPaの(最大)引張応力であるように、ガラスセラミックを処理することによって得られる。物品が幾つかの面を有する場合には、補強は、1つもしくは2つ以上の部分または1つもしくは2つ以上の面、そして、有利には1つの面の少なくとも主要部に行うことができ、この1つの面(最大の引張応力の深さは、この面/表面から決定される)への補強は、通常充分であることができる。ガラスセラミックにおける厚さ応力プロファイルおよび最大張力(引張応力)は、’’Photoelasticity of Glass’’、H.Aben.C.Guillemet、Springer−Verlag Berlin Heidelberg 1993、126〜129’’の作品に記載されたビアソグラフ(biasographe)を使用して測定される。これらは、バピネ補正板(Babinet compensator)を備えた偏光顕微鏡を使用して測定でき(’’Photoelasticity of Glass’’、H.Aben、C.Guillemet.、Springer−Verlag Berlin Heidelberg 1993、65〜66)、装置(ビアソグラフまたは極性顕微鏡)によって与えられるそれぞれの光学遅延値(delay value)(δ)は、式σ=δ/(C×I)、(Iは、光が通過する幅である)による2.6ブリュースターに等しいブリュースター(Brewster)定数(C)を使用することによって、応力値(σ)に変換される。
【0020】
本発明はまた、強化されたガラスセラミック物品(特に、例えば、少なくとも1つの加熱要素を被覆または収容することを目的とするガラスセラミックプレート)、特に1つの面または1つの面の一部/一領域上(または少なくとも1つの面上もしくは1つの面の少なくとも一部上)の強化されたガラスセラミック物品に関し、この物品は、ガラスセラミックが、少なくともこの領域または面において、ガラスセラミックの表面に対して、(面の一部のまたは面の)表面の下の少なくとも50μmの深さで、そしてガラスセラミックの厚さの好ましくは最大25%の深さにおいて、少なくとも1.2MPa、そして好ましくは、少なくとも1.5MPaの(最大の)引張応力を有する(またはさらに具体的に言うと、ガラスセラミックは、少なくとも50μmの深さで、少なくとも1.2MPaの(最大の)引張応力を有するような、厚さにおける応力プロファイルを有する。)ことを特徴とする。
【0021】
好ましくは、(特に、本発明によるエナメル、特にその後に焼成される本発明によるエナメルの使用の場合)、本発明による強化ガラスセラミック物品、特に強化ガラスセラミックプレートは、有利なことに(特に、処理された/強化された領域で)180MPa超の曲げ試験後Weibullモデルにより得られるスケール係数を有し、従って、生のガラスセラミックプレートのスケール係数を超え、そしてさらに有利なことに高い(15超)であるWeibull係数(結果物の分散を表わし、係数が大きい場合、結果物はより分散していない)を有する。本発明は、このように、例えば、ガラスセラミックの厚さを減少させながら(厚さの減少は、通例ガラスセラミックの脆化を伴う)、改善された機械的強度を有するガラスセラミック物品を得ること、または良好な機械的強度を保証することが保たれることを可能にする。特に、本発明は、(通例、4mmの代わりに)約3mmの厚さを有し、そして特に、電気式コンロの加熱部分として使用されることを可能にする良好な機械的強度を保持するガラスセラミックプレートが得られることを可能にする。
【0022】
本発明はまた、上記に記載した補強ステップを含むことを特徴とする(そうした)強化ガラスセラミック物品を製造する方法に関する。
【0023】
上記に記載した補強工程またはステップでのガラスセラミックにおける最大張力の導入は、好適な処理または被膜によって、および例えば、本発明の1つの好都合な態様によって、本発明によるエナメルの使用によって行われ、好ましくは上記で説明したように、その後焼成される。そうした被膜の使用の場合の補強は、同じタイプの従来の被膜を用いて被覆したものと比較して(すなわち、この場合は、従来のエナメルを用いて被覆したガラスセラミックに比較して)、ガラスセラミックの脆化が全く無いかまたは著しく減少した脆化によって最初に示され、そして適当な場合には、生のまたは未処理のガラスセラミックに比較して機械的強度の増加(セラミゼーションの間またはセラミゼーションの後で焼成された本発明によるエナメル、最高値が得られた)により、有利に示された。
【0024】
ガラスセラミックの補強ができ、そして上記で規定した本発明によるエナメルの組成物は、下記でさらに正確に説明されるであろう。この組成物において、構成部分のそれぞれで規定された範囲は、高温におけるフリットの生産、基材上のエナメル被膜、所望の機械的強度および耐薬品性等を同時に可能にする範囲について、所望の特性を得るための最も良好な値である。
【0025】
上記で示したように、記載した組成物は、好ましくは2%未満のアルミナAl
2O
3を含み、そして特に好ましくは、この組成物にはアルミナがない。
【0026】
留意すべきは、上記の構成要素の他に、この組成物は、必要に応じて、構成要素が所望の特性を損なわない限り限定された量(5%未満、通常2%未満、特に1%未満)で、他の構成要素(例えば、原料の純度の程度に関連して微量の形態で)を含むことができ、この組成物はまた、有利なことに、鉛、水銀、カドミウムおよび六価クロム等の有毒な金属を含まない。
【0027】
驚くべきことに注目すべきは、前記のガラスフリットに基づく本発明によるエナメルは、少なくとも60×10
−7K
−1の(そして通常より高く、特に少なくとも80×10
−7または100×10
−7K
−1さえもの)膨張係数(この係数は、ガラスと考えられるエナメルのガラスフリットでさらに正確に測定される)を有し、すなわち、ガラスセラミック基材の膨張係数より遙かに高いことである。今日まで、ガラスセラミック基材の膨張係数に近い非常に低い膨張係数を有するエナメルを探すことが伝統的であり、膨張係数の違いが大きい場合、基材上のエナメルの挙動は比例して悪くなると考えられている。
【0028】
上記で具体的に記載したように、本発明により選択されたエナメル、およびこのエナメルを用いて被覆した物品、特にプレートは、種々のタイプのヒーター(誘導、放射、ハロゲン、ガス等のヒーター)の使用と適合する良好な耐熱性を有し、耐擦り傷性および耐摩耗性および耐熱衝撃性を有し、良好な耐老化性を有し、そして適当な場合には(特に、フリットが顔料と混合され、そして/または下記で説明する塗料の層等の別の層と組み合わされる場合は)、エナメルに通常望まれる不透明性と被覆されたプレートが曝される種々の機械的応力に対する耐性との間で優れた妥協を提供し、本発明により望まれるエナメルは、エナメルが堆積されるプレートの機械的強度に影響せず、そして改善さえ行い、本発明によるエナメルを用いて被覆した該プレートは特に、(衝撃試験において特に体系的に破壊する)従来のエナメルを用いて被覆されたプレートに比較して、(エナメル加工した表面に応力が掛けられた場合)改善された1種または2種以上の機械的強度特性(特に、屈曲引っ張り強度および耐衝撃性)を有する。
【0029】
懸念していた事項に反して、ガラスセラミックと、本発明によるエナメルの層との間のあらゆる相互作用は、ガラスセラミックの表面になんら損傷を与える改変または攪乱を生じない。加工の観点からは、堆積された組成物は、従来のエナメルと変わらず、そして既存の生産ラインと完全に適合し、特に、標準のスクリーン印刷機および素材を使用してスクリーン印刷によって適用できる。さらに、上記に記載したように、従来のエナメルの欠点(特に、上記に記載したような装飾面をほとんどまたは全く弱めないなど)を有さない。マグネトロンスパッタリングによって堆積された薄層と比較して、さらに経済的であり、そして電気的に絶縁されており、タッチセンサー式制御、通常の容量のタッチセンサー式制御と特別な調整なしで使用できる。また、マグネトロンスパッタされた塗料、そして、適当な場合には、通常あるタイプの加熱のための層と異なり(特に、放射加熱要素の700℃までの高温に耐え、そして誘導コイルの磁場に適するなど)全てのタイプの加熱に適合する。また、特に塗料と異なり、(ヒーター領域を含む)プレートの任意の領域に堆積できる。
【0030】
上記で説明した組成物を有するガラスフリット(またはガラス粒子)のほかに、本発明によるエナメルはまた、他の構成部分を含むことができる。エナメルは、(ガラス質のマトリックスを形成することが好ましい)ガラスフリット)(このフリットおよび顔料は、金属酸化物に基づいている)および顔料(着色剤として、特に、これらの顔料は、おそらくフリットの一部である)を含む粉末から(基材への適用および焼成の前に)、そして適用および基材へのエナメルの前接着を可能にする媒体または「キャリアー」から、通常形成されることが想起される。
【0031】
本発明によるエナメルは、このように顔料を含むことができ、エナメルのフリット/顔料の集成体においてフリットに加えられる顔料の含有量は、(フリット/顔料の集成体に対して)通常20〜80wt%、そして好ましくは40〜60%である。エナメルのための顔料は、酸化クロム、酸化銅、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化セリウム、酸化チタン、またはアルミナ等にさえ基づく等の金属酸化物を含む化合物から選択でき、またはクロム酸銅、クロム酸コバルト等から選択できる。これらは、着色および/または、適当な場合には、得ることが望まれる不透明の機能として使用される。特に本発明によるフリットに加えるための特に好適な顔料の一つの例は、特に鉄、クロム、コバルトおよびニッケル酸化物の混合物である。
【0032】
ガラスフリットおよび顔料は、通常媒体中で懸濁される前は、粉末形態である。粉末形態におけるフリット/顔料の集成体の粒径分布は、粉末を形成する少なくとも90wt%の粒子が20μm未満、特に10μm未満の直径を有するように、通常選択される。
【0033】
本発明による組成物のフリットは、好適な(天然または合成)原料の混合物を(1000℃超の)高温で溶解することによって得られる。次に、フリットは、(通常次に蒸発するエタノール等の溶媒中で)粉末形態で粉砕され、そして必要な場合には、顔料および/または乳濁剤が加えられる。(必要な場合には、ミリング溶媒の蒸発後に)結果となる粉状混合物(ガラス粉末+顔料および/または乳濁剤)は、基材上に堆積できる組成物(ペースト)を得るために、その後媒体中で懸濁される。
【0034】
直ちに堆積できる形態の本発明によるエナメルの組成物はまた、このように通常基材への適用に望まれる粘度に調整することを可能にし、そして基材と結合することを可能にする媒体を含む。フリットおよび顔料の粒子の良好な懸濁液を確かにするために選択され、そしてエナメルの焼成の間に最後に消費されることが好ましいこの媒体は、従来のエナメル組成物に通常使用される任意の媒体または有機バインダーであることができ、そして特に、溶媒、希釈剤、パイン油および他の植物油等の油、アクリル樹脂等の樹脂、石油部分、セルロース物質等のフィルム形成物質等を含むことができる。直ちに堆積できる組成物の媒体の比率は、該組成物の、好ましくは40〜60wt%、好ましくは45〜55wt%である。
【0035】
プレート等の物品の上への堆積の前のエナメル組成物は、このように通常ペースト状の稠度、(特にスクリーン印刷による)堆積工程に好適な粘度を有する、安定な液体固体混合物の形態である。
【0036】
物品または基材、特にプレートの上に堆積された本発明によるエナメルの層は、通常、物品の(特にプレートの)1つの面の少なくとも一部、特に、使用の間に(例えば、少なくともプレートの場合、面の端または主要部さえもで、被覆された領域は強化された領域である)応力(衝撃または他の応力)に曝される可能性がある全ての領域を覆い、そして(適当な場合には、例えば、ディスプレイを読むことを目的とした領域および/またはレジストの領域を除く)該面の全体を覆うことができる。焼成後のエナメルの1層の厚さ(下記で説明するように、前駆体ガラスにおいて堆積後のセラミゼーションの間に行われるか、またはガラスセラミック上への堆積の後に行われるかにかかわらず)1〜10μm、通常2.5〜5μmである。特に、プレートの場合には、本発明によって規定された層は、プレートの下面または上面上に堆積されることができ、そして好ましくは下面上に堆積される。
【0037】
有利なことに、エナメルは、1つまたは2つ以上の層および/または組み合わされた層として堆積でき、適当な場合には、他の層と堆積できる。特に、本発明によるエナメルは、幾つかの層において使用でき、そして/またはエナメル(特に異なる性質のエナメル)もしくは塗料の層等の別の層の下層として機能でき、特に、場合によっては、厚さを厚くし、そして/または2種のタイプの装飾を並置し、そして/またはより大きな不透明を得ること等を可能にする。本発明によるある態様は、本発明によるエナメルの少なくとも第1の(つまり最初に堆積された)層またはパス、それぞれの層またはパスのエナメルは、恐らく同じであるか、または恐らく1つのものに基づいており、そして同じフリットまたは異なるフリットであり、例えば恐らく異なる色であり、層またはパスの1つは、例えばベースフレームを形成し、そして他の装飾または特定のグラフィックスを形成するものを含む2層のエナメル加工した物品、特にプレート、つまり被膜としての、エナメルの少なくとも2つの層またはパス(pass)に関する。好ましくは、あらかじめ堆積されたエナメルの上に加えられたそれぞれの新規なエナメルは、適当な場合には、あらかじめ堆積されたエナメルの軟化点より低い軟化点を有する。
【0038】
好ましくは、エナメルは、少なくとも1層の隠蔽塗料とともに使用できる。適当な場合には、本発明によるエナメルと組み合される塗料の層は、有利なことに、高温に耐え、そしてそれらの色およびそれらのプレートとの凝集に関して安定であり、そしてプレートの機械的特性に影響を与えないように選択される。これらは、350℃超の分解温度を有利に有し、通常、(ポリシロキサン樹脂等、特に、Dow Corning(商標)804、805、806、808、840、249、409HSおよび418HS、RhodiaからのRhodorsil(商標)6405および6406、General Electric SiliconeからのTriplus(商標)およびWacker Chemie GmbHからのSILRES(商標)604等の、少なくとも1種のアルキド樹脂、またはポリイミド、ポリアミド、ポリフッ素化および/またはポリシロキサン樹脂の取り込みによって改質されたシリコーン樹脂等)に基づき、そして適当な場合には、(例えば、1種または2種以上の顔料または着色剤)を充填され、そして任意選択的に、それらの粘度を調整するように希釈され、適当な場合には、希釈は、その後の焼成の間に除去される。それぞれの塗料層の厚さは、1〜100μm(特に、5〜50μm)であることができ、そしてブラシ堆積、ドクターブレード堆積、スプレー、静電堆積、ディップコーティング、カーテンコーティング、スクリーン印刷等の任意の好適な技術により適用できる。通常、本発明により、スクリーン印刷、適当な場合には、その後の乾燥により堆積される。
【0039】
有利なことに、(焼成後に得られた)本発明によるエナメル(エナメルは、必要であれば、例えば、顔料を含み、そして/または塗料の層と組み合わされる)を用いて被覆された基材、特にガラスセラミックプレートは、特に下地となる要素を覆うことを可能にするように、不透明性を有する。不透明性は、(Byk−Gardner Color Guide45/0 colorimeterを使用して反射での比色分析が行われる)不透明白色背景の上に置かれた基材での、基材のエナメルを有する面と反対の面上で測定された色と、不透明の黒色背景上に置かれた基材での、基材のエナメルを有する面と反対の面上で測定された色との間の相違に対応する色変化ΔE
*を測定することによって、本発明との関連で評価される(CIEによって1976年に確立された式、白色背景上での第1の測定の色座標であるL
B*、a
B*、b
B*および黒色背景上での第2の測定の色座標であるL
N*、a
N*、b
N*によって、ΔE
*=((L
B*−L
N*)
2+(a
B*−a
N*)
2+(b
B*−b
N*)
2)
1/2)。有利なことに、本発明によるエナメルを用いて被覆したガラスセラミック基材は、0.5以下、好ましくは0.4以下のΔE
*値を有する。
【0040】
上記で記載したように、本発明はまた、本発明による物品、特にプレートを製造する方法、および有利なことに、上記で記載した強化された物品を製造する方法に関し、ここで、(本発明によるエナメルが使用される場合)先に適用される組成物が、セラミゼーション前に、好ましくは、スクリーン印刷によって、前駆体ガラス(またはマザーガラスもしくはグリーンガラス)の物品に適用され、該組成物は、セラミゼーションサイクルの間に焼成され、および/または先に適用される組成物が、セラミゼーションの後に、好ましくはスクリーン印刷によって、ガラスセラミック物品に適用され、次に該組成物が焼成される。
【0041】
好ましくは、エナメルの焼成が、その後に(セラミゼーションの後で、この手順はまた、再焼成を有する工程として公知である)行われる場合、該焼成は、エナメル中で結晶を成長させることを可能にする温度で行われる(通常、上記に記載した表面に平行な、ガラスセラミックとエナメルとの界面の中および/または下でクラックが成長するように、通常界面を改質しながら、エナメル中で生成したクラックは成長し、そして最終的に表面と平行になるように、界面中および/又は下で、実際数マイクロメートル走った後で向きを変える)。この温度は、エナメルによる良好な被覆および結晶の形成が、特に観察される温度範囲から選択され、この温度範囲は、本発明によるエナメルでは、通常700〜900℃である。通常そして好ましくは、この温度は、エナメルの(またはさらに正確には、エナメルを生成するガラスの/ガラスフリットの)膨張計の軟化温度(dilatometric softening temperature)に対して約250℃〜300℃高く、そして好ましくはエナメルの発熱結晶化ピークに相当(またはそれにちょうどあるか、またはそれ以内である)する。本発明による基材を被覆するエナメルは、このように、適当な場合には、焼成後に結晶化される。
【0042】
想起のために記載すると、ガラスセラミックプレートの製造は、通常次のように行われる:ガラスセラミックを生成させるために選択された組成を有するガラスが、溶融炉内で溶融され、次に、溶融したガラスは、回転するロールの間に溶融したガラスを通すことにより、標準のリボン(ribbon)またはシートに展開され、そしてガラスのリボンは、所望の寸法に切断される。次に、プレートはこのようにそれ自体公知の様式でセラミゼーションされ、このセラミゼーションは、ガラスを「ガラスセラミック」と呼ばれる多結晶の材料に転化させるために、選択された熱プロファイルを用いてプレートを焼成することからなり、この「ガラスセラミック」の膨張係数は、0またはほとんど0であり、そして恐らく700℃までの範囲の熱衝撃に耐性がある。セラミゼーションは、通常ガラス転移(glass conversion)範囲の近傍に通常位置する核生成(nucleation)範囲まで温度を徐々に上昇させるステップ、数分間、核生成範囲を通らせ、セラミゼーション保持温度までの温度にさらに進行させて上昇させ、このセラミゼーション保持温度は、数分間維持され、その後室温まで急速に冷却するステップを含む。適当な場合には、この工程はまた、切断操作(通常、セラミゼーションの前に)、例えば、水ジェット、スコアリングホイール(scoring wheel)を使用した機械的スコアリング等、その後のファッショニング(fashioning)操作(研削、面取り等)を含む。
【0043】
本発明による方法では、上記に記載した組成物は、ペーストの形態で、好ましくはスクリーン印刷により、ガラス前駆体物品上またはセラミゼーション後に得られたガラスセラミック物品上のいずれかに堆積され、この湿潤フィルムの厚さは、例えば、約数μm(特に20μm以下、そして、通常10μm以下)である。この組成物の堆積後に、被覆された物品は、溶媒(媒体)を蒸発させ、被膜を固定させ、そして物品を取り扱えるように、(例えば、赤外加熱を介し、またはオーブン中で)、通常、約100〜150℃の温度で通常乾燥され、その結果乾燥被膜となり、次に、場合によっては、(特に、上記で記載した)従来の高温セラミゼーションサイクル、基材の転化を伴う層の焼成を受け、または好ましくは上記で記載した結晶化ゾーンに位置する温度での、選択された温度の関数として適合された焼成時間(例えば、選ばれた温度がより低ければ、より長い時間)(再)焼成を受け、そして得られた被膜は、通常約数μm(通常、1〜10μm、特に2〜5μm)の厚さを有する。上記で記載したようにさらに好適な様式で焼成温度を適合させることが可能であり、そしてガラスセラミック製品のより強い補強を得ることを可能にするので、(再)焼成を有する工程が、通常好ましい。
【0044】
一態様では、本発明による物品は、本発明によるエナメルの層で被覆された(EurokeraによってKerablackの名称で販売されているプレート等)の5%未満の低い光線透過を有する黒色外観のガラスセラミックに基づくことができる。しかし、好ましくは、本発明によるエナメルの層で被覆された、(Eurokera and Keraglassにより、KeraLiteの名称の下で販売されているプレート等の)透明なまたは(EurokeraからKerawhite、KerabiscuitまたはKeravanillaの名称の下で販売されているプレート等の)半透明のガラスセラミックに基づく、通常、明るい色の物品、特にプレートであり、該層は、装飾性および/または機能性用途である(例えば、使用される場合に、また加熱要素およびあり得るディスプレイが検出されることを可能にしながら、使用しない場合には、加熱要素およびあり得るディスプレイ等の加熱要素および下地となる要素を少なくとも部分的に、覆うことを目的とすることができる。)。
【0045】
留意すべきは、本発明によるエナメル層に対する追加の層の数によって、セラミゼーションの前および/又は後に続けて(すなわち、直列でまたはその後に)エナメルは堆積されることができ、それぞれの堆積は、通常、その後熱処理が続く。また留意すべきは、本発明による層は、もし必要であれば、スクリーン印刷以外の方法によって堆積できる。
【0046】
本発明による物品がプレートの場合、該プレートは、適当な場合には、レリーフおよび/またはくぼみを含むことができ、そして/または1種または2種以上の追加の機能性または装飾性要素(枠、コネクター、ケーブル、制御要素、ディスプレイ、例えば、いわゆる「7−セグメント」発光ダイオードディスプレイまたは液晶ディスプレイ、タッチセンサー式の制御およびデジタルディスプレイを有する電子制御パネル等)を備える(またはと関連する)ことができる。本発明によるプレートは、適当な場合には、使用者の視界から装置の内部を隠す目的の中間複合体なしで、その内側に1つまたは2つ以上の加熱要素が配置された、絶縁支持体上に取り付けられることができる。
【0047】
本発明はまた、本発明による少なくとも1つの基材(プレートまたはドア)を含む高温を維持する器具および/または調理装置(または器具)(例えば、調理器具、作り付けのレンジ台上面、オーブン等)に関する。本発明は、単一のプレートを有する調理装置および幾つかのプレートを有する装置(これらのプレートはぞれぞれ、適当な場合には、単一のヒーターまたは複数のヒーターを有する。)に関する。「ヒーター」の用語は、調理する場所を意味すると理解される。本発明はまた、その電気式コンロの加熱部分が幾種類かのタイプヒーターを有するハイブリッド調理装置に関する。さらに、本発明は、調理器のための電気式コンロの加熱部分またはレンジ台上面の製造に限定されない。本発明によって製造されるプレートは、上記の様に、温度変化に非常に非感受性である他のプレート(煙突挿入物、ファイアースクリーン等)であることができる。
【0048】
以下の例は、本発明を具体的に示すが、しかし請求の範囲を限定するものではない。
【0049】
2つの滑らかな面を有するガラスセラミックプレートを、フランス国特許第2657079号明細書による組成を有するガラスから製造し、これは特に、重量パーセンテージで、以下の酸化物を含んでいた:
SiO
2 69.05
Al
2O
3 18.90
Li
2O 3.3
MgO 0.9
ZnO 1.55
BaO 0.75
K
2O 0.1
TiO
2 2.6
ZrO
2 1.75
As
2O
3 0.9
Na
2O 0.2。
【0050】
ガラスのリボンが、ロールされることができ、そこから56.5cm×56.5cm×0.4cmの最終寸法を有するリボンガラスプレートが切り出されるような量で、約1600〜1750℃において、このガラスを溶融した。
【0051】
プレートは、上記のように、例によって、セラミゼーションの前、またはセラミゼーションの後のいずれかにおいて、従来のポリエステルまたはポリアミド織物を使用して、スクリーン印刷可能な安定なエナメルの形態の組成物(それぞれの例において特定の組成を有する粉末に基づいて、この粉末は、粉末をプレート上に堆積させる目的でアクリル樹脂およびFerroによって参照MX54の下で販売されているパイン油に基づく媒体中でペーストに製造され、そして該媒体は、エナメルの焼成の間に最後に消費される)を用いて、それらの上面の上に被覆され、次に約100〜150℃で乾燥された。
【0052】
(例によってエナメルを用いて被覆する前または後で)プレートを、フランス国特許第2657079号明細書に記載されたサイクルによってセラミックトレイ上でセラミゼーションした。例に記載したように、セラミゼーションの後で、プレートをエナメルで被覆し、エナメルの堆積後に焼成操作をし、そしてエナメルを乾燥させた。
【0053】
エナメルの層を用いて被覆したガラスセラミックプレートが得られた。これらのプレートを切断して、70mm×70mmの試験試料を生成させ、装飾された表面が、伸ばされ、上記に記載したように、(MPaで表された)それらのスケール係数およびまたそれらの三脚上リング曲げ試験によるWeibull係数の測定により、機械的強度に関して分析し、その結果を、Weibullモデルを使用して解析した。ガラスセラミック中の厚さ応力プロファイルをまた、ある例において、上記の’’Photoelasticity of Glass’’、H. Aben、 C. Guillemet、 Springer−Verlag Berlin Heidelberg 1993、 126〜129に記載されたようにビアソグラフを使用して測定し、これらのプロファイルを
図1、2および3に示した。これらの図は、それぞれ以下の例の厚さ−応力プロファイルを具体的に示す:参照例3、例1および例2;
図1および2はまた、生の(被覆されていない)ガラスセラミックプレートが使用された場合の厚さ−応力プロファイルを具体的に示す。
【実施例】
【0054】
参照例1:
第1の参照例において、使用されたエナメルは、SiO
2:41.7%;Na
2O:0.9%;K
2O:3.5%;Li
2O:2.1%;CaO:2.8%;Al
2O
3:18.5%;ZrO
2:2.4%;B
2O
3:28%の組成を有する70wt%のガラスフリットを含む粉末に基づく標準エナメルであった、該粉末はまた、顔料として30wt%のTiO
2を含んでいた。本参照例によるこのエナメル(さらに具体的に言うと該エナメルを生成するガラスフリット)は、約52×10
−7K
−1膨張係数を有し、そして該エナメル(または、むしろ該エナメルを生成するガラスフリット)はまた、約590℃の膨張計の軟化温度を有した。この参照例において、エナメルは、プレート(前駆体ガラスまたはグリーンガラスまたはマザーガラスの)のプレート上に、セラミゼーションの前に堆積され、そしてセラミゼーションの間に焼成され、焼成後のエナメル層の厚さは、約3μmであった。
【0055】
(Weibullモデルにより、曲げ試験後に)得られたスケール係数は、約52MPであり、Weibull係数は、13に等しかった。
【0056】
参照例2:
第2の参照例において、使用したエナメルは、参照例1に記載された100wt%のガラスフリット(膨張係数およびエナメルの膨張計の軟化温度は、参照例1におけるのと同じ程度であった)を含む粉末に基づく標準エナメルであった。この第2の例において、エナメルを既にセラミゼーションしたプレートの上に堆積させ、この集成体を800℃で30分間、(再)焼成し、焼成後のエナメル層の厚さは、約3μmであった。
【0057】
得られたスケール係数約80MPaであり、Weibull係数は、54に等しかった。
【0058】
参照例3:
この第3の参照例において、使用したエナメルは、SiO
2:48.6%;MgO:3.8%;Na
2O:2.6%;K
2O:3.3%;Li
2O:1.3%;CaO:0.6%;BaO:17.8%;Al
2O
3:7.1%;ZrO
2:1.7%;ZnO:8%;B
2O
3:5.4%の組成を有する100wt%のガラスフリットを含む粉末に基づく標準エナメルであった。本参照例によるエナメルは、約75×10
−7K
−1の膨張係数および約600℃の膨張計の軟化温度を有した。この第3の例において、エナメルを、セラミゼーションの前に、プレート(グリーンガラスまたはマザーガラス)に堆積させ、そしてセラミゼーションの間に焼成させ、焼成後のエナメル層の厚さは、約3μmであった。
【0059】
得られたスケール係数は、約88MPaであり、Weibull係数は、27に等しかった。エナメル加工した表面近傍での最大張力の存在は観察されず、最大の応力値が約0.9MPaである、ガラスセラミック中の厚さ応力プロファイルを
図1に示す。比較で、被覆されていないプレートの応力プロファイルを示す。このプロファイルは、エナメル加工した表面近傍において最大張力を有さず、そうしたプレートは、約170MPaのスケール係数を有した。
【0060】
例1:
本発明によるこの第1の例において、使用したエナメルは、SiO
2:60.5%;MgO:4%;Na
2O:9.5%;Li
2O:5%;BaO:10%;ZrO
2:2%;ZnO:4%;B
2O
3:5%の組成を有する100wt%のガラスフリットを含む粉末に基づくエナメルであった。本例によるエナメルは、約100×10
−7K
−1の膨張係数および約523℃の膨張計の軟化温度を有した。この第1の例において、セラミゼーションの前に、エナメルを、プレート(グリーンガラスまたはマザーガラス)上に堆積させ、そしてセラミゼーションの間に焼成し、焼成後のエナメル層の厚さは、約3μmであった。
【0061】
得られたスケール係数は、約180MPaであり、Weibull係数は、27に等しかった。このガラスセラミックにおける厚さ応力プロファイルを
図2に示す。(エナメル加工した側/エナメルによって強化された側から)表面下(表面に垂直で測定した)0.45mmの深さで3.0MPaの最大の引張応力を有するピークの存在が観察された。比較として、被覆されていないプレートの応力プロファイルを示すが、このプロファイルは、参照例3において既に示したように、エナメル加工した表面近傍で最大張力を有さない。
【0062】
例2:
本発明によるこの第2の例において、使用したエナメルは、先の本発明による例1におけるのと同じエナメルであった、今回このエナメルを、既にセラミゼーションしたプレート上に堆積させ、集成体を770℃で30分間(再)焼成し、焼成後のエナメル層の厚さは、約3μmであった。
【0063】
得られたスケール係数は、約207MPaで、Weibull係数は、19に等しかった。
【0064】
ガラスセラミック中の厚さ応力プロファイルを
図3に示す。(エナメル加工した側/エナメルによって強化された側から)表面下0.7mmの深さで3.1MPaの最大引張り応力を有する最大の張力および曲げ力の存在が観察された。
【0065】
例3:
本発明によるこの第3の例において、使用したエナメルは、上記の本発明による例2に記載された45wt%のガラスフリットを含む粉末に基づき、該粉末はまた、鉄、クロム、コバルトおよびニッケル酸化物の混合物の形態で、55wt%の黒色顔料を含む(エナメルの膨張係数および膨張計の軟化温度は、本発明による例1と同じ程度であった)。エナメルを、既にセラミゼーションしたプレート上に堆積させ、そして本発明による例2におけるように焼成し、焼成後のエナメル層の厚さは、約6.75μmであった。
【0066】
得られたスケール係数は、約238MPa、Weibull係数は、20に等しかった、そして、得られたエナメル加工したプレートの色変化ΔE
*は、約0.04であった。表面(エナメル加工した側/エナメルによって強化された側から)表面下0.64mmの深さで、2.0MPaの最大の引張応力が観察された。
【0067】
例4:
本発明によるこの第4の例において、使用したエナメルは、SiO
2:63%;MgO:4%;Na
2O:9.5%;Li
2O:2.5%;BaO:10%;ZrO
2:2%;ZnO:4%;B
2O
3:5%の組成を有する100wt%のガラスフリットを含む粉末に基づくエナメルであった。本例によるエナメルは、約87×10
−7K
−1の膨張係数および約549℃の膨張計の軟化温度を有した。この第4の例において、エナメルを、既にセラミゼーションしたプレートの上に堆積させ、集成体を、800℃で30分間(再)焼成し、焼成後のエナメル層の厚さは、約4μmであった。
【0068】
得られたスケール係数は、約262MPaであり、Weibull係数は、16に等しかった。
【0069】
本発明によるプレートは、特に、調理器もしくはレンジ台上面のための電気式コンロの加熱部分の新たな範囲を製造するため、またはオーブン用もしくは壁(例えば、ドア)の要素を製造するため、または煙突挿入物またはファイアースクリーン等を製造するために有利に使用された。
(態様)
(態様1)
ガラスセラミック物品を補強するための方法であって、該ガラスセラミックの表面下、そして有利には該表面の近傍に最大張力が導入される、方法。
(態様2)
該ガラスセラミックの少なくとも1つの領域において、該ガラスセラミックの表面に対して、少なくとも50μmの深さで、そして好ましくは該ガラスセラミックの厚さの最大25%の深さにおいて、少なくとも1.2MPaの引張応力を有するように、該ガラスセラミックが処理されることを特徴とする、態様1に記載の方法。
(態様3)
1つの面もしくは少なくとも1つの面または少なくとも1つの面の少なくとも1つの領域にかけて強化された、強化ガラスセラミック物品、特に、例えば、少なくとも1つの加熱要素を被覆または収容することを目的とした強化ガラスセラミックプレートであって、少なくとも該領域または該面において、該ガラスセラミックが、表面の下、少なくとも50μmの深さ、そして好ましくは該ガラスセラミックの厚さの最大25%の深さにおいて、少なくとも1.2MPaの引張応力を有することを特徴とする、強化ガラスセラミック物品、特に強化ガラスセラミックプレート。
(態様4)
ガラスセラミック物品、特に、例えば、少なくとも1つの加熱要素を被覆または収容することを目的とするガラスセラミックプレートであって、該物品が、以下の組成を有し、
SiO2 50〜66%
MgO 3〜8%
Na2O 7〜15%
K2O 0〜3%
Li2O 0〜12%
CaO 0〜10%
BaO 0〜15%
Al2O3 0〜3%
ZrO2 0〜3%
ZnO 0〜5%
B2O3 0〜8%、
さらにアルカリ土類金属酸化物CaO+BaOの合計が、8〜15%であり、そしてさらにアルカリ金属酸化物Na2O+K2O+Li2Oの合計が、7〜20%であり、該比率が、重量パーセンテージとして表わされている、ガラスフリットでできた少なくとも1層のエナメルを用いて少なくとも部分的に被覆されている、ガラスセラミック物品、特にガラスセラミックプレート。
(態様5)
該組成物が、2%未満のアルミナAl2O3を含み、そして有利にはアルミナを含まないことを特徴とする、態様4に記載のガラスセラミック物品。
(態様6)
該エナメルが、少なくとも1層の隠蔽塗料とともに、および/または少なくとも1層のエナメルとともに使用されることを特徴とする、態様4または5に記載のガラスセラミック物品。
(態様7)
例えば、少なくとも1つの加熱要素を被覆または収容することを目的としたガラスセラミックプレート等のガラスセラミック物品であって、該物品が、曲げ試験の後でWeibullモデルにより得られた、少なくとも130MPaの、そして好ましくは少なくとも180MPaのスケール係数を有する、特に態様3〜6のいずれか一項に記載の物品。
(態様8)
例えば、少なくとも1つの加熱要素を被覆または収容することを目的としたガラスセラミックプレート等のガラスセラミック物品であって、該物品が少なくとも1層のエナメルを用いて少なくとも部分的に被覆されており、該エナメルが結晶である、特に態様3〜7のいずれか一項に記載の物品。
(態様9)
例えば、少なくとも1つの加熱要素を被覆または収容することを目的としたガラスセラミックプレート等のガラスセラミック物品であって、衝撃の間に形成されたクラックが、表面に平行に配向するように、該物品がなっている、特に態様3〜7のいずれか一項に記載の物品。
(態様10)
3mm厚のガラスセラミックプレートであることを特徴とする、態様3〜9のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
(態様11)
以下の組成を有するガラスフリットで生成されたガラスセラミック物品のためのエナメル組成物であって、
SiO2 50〜66%
MgO 3〜8%
Na2O 7〜15%
K2O 0〜3%
Li2O 0〜12%
CaO 0〜10%
BaO 0〜15%
Al2O3 0〜3%
ZrO2 0〜3%
ZnO 0〜5%
B2O3 0〜8%、
さらにアルカリ土類金属酸化物CaO+BaOの合計が、8〜15%であり、そしてさらにアルカリ金属酸化物Na2O+K2O+Li2Oの合計が、7〜20%であり、該比率が重量パーセンテージとして表わされている、組成物。
(態様12)
該エナメルが、少なくとも60×10−7K−1の膨張係数を有する、態様11に記載のエナメル組成物。
(態様13)
態様11または12に記載の組成物を焼成することによって得られる、ガラスセラミック物品のためのエナメル。
(態様14)
エナメルの生産に好適な鉱物性ガラスであって、該ガラスは、以下の組成を有し、
SiO2 50〜66%
MgO 3〜8%
Na2O 7〜15%
K2O 0〜3%
Li2O 0〜12%
CaO 0〜10%
BaO 0〜15%
Al2O3 0〜3%
ZrO2 0〜3%
ZnO 0〜5%
B2O3 0〜8%、
さらにアルカリ土類金属酸化物CaO+BaOの合計が、8〜15%であり、そしてさらにアルカリ金属酸化物Na2O+K2O+Li2Oの合計が、7〜20%であり、該比率が、重量パーセンテージとして表わされている、ガラス。
(態様15)
態様11または12に記載の補強ステップを含むことを特徴とする、強化ガラスセラミック物品の製造方法。
(態様16)
該ガラスセラミックにおける最大張力の導入が、態様11または12に記載のエナメル組成物を使用して行われることを特徴とする、態様15に記載の方法。
(態様17)
態様11または12に記載の組成物が、セラミゼーションの前に、前駆体ガラス物品に適用され、該セラミゼーションサイクルの間に、該組成物が焼成され、および/またはセラミゼーションの後で、該組成物が該ガラスセラミック物品に適用され、次に該組成物が焼成される、特に態様16に記載のガラスセラミック物品の製造方法。
(態様18)
セラミゼーションの後で、好ましくは、結晶化ゾーンに位置する温度で、好ましくは結晶化ピークに近い温度で、および/または該エナメルの膨張計の軟化温度に対して、約250℃〜約300℃高い温度で、該エナメルが焼成されることを特徴とする、態様17に記載の方法。
(態様19)
該ガラスセラミックの表面の全部または一部にかけて該ガラスセラミックを補強するための、態様11または12に記載の該エナメル組成物の使用。
(態様20)
態様3〜10のいずれか一項に記載されたガラスセラミックプレートおよび1種または2種以上の加熱要素を含む、高温で焼成するため、または高温で維持するための機器。