特許第5969984号(P5969984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969984
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】医療機器用針安全装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   A61M25/06 500
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-508606(P2013-508606)
(86)(22)【出願日】2011年5月4日
(65)【公表番号】特表2013-528424(P2013-528424A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】IB2011051972
(87)【国際公開番号】WO2011138746
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2014年5月1日
(31)【優先権主張番号】1058/DEL/2010
(32)【優先日】2010年5月5日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】510250652
【氏名又は名称】ポリー メディキュア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】リシ バイド
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/116080(WO,A2)
【文献】 特開2010−88521(JP,A)
【文献】 特開2008−237454(JP,A)
【文献】 特表2002−543939(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2127692(EP,A1)
【文献】 米国特許第5879337(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針(24)に移動可能に配置されている医療機器用の針安全装置(12)であって、
プラスチック材料からなる第1の部分(42)と、
金属板のストリップからなる第2の部分(44)と、
エラストマー材料からなる弾性特性を有し、前記第1の部分(42)および前記第2の部分(44)を包囲するリング(46)と、
を備え、
前記第1の部分(42)が、基部(50)と、中間部(52)と、第1のアーム(54)を形成する上部(48)と、を有し、
前記第2の部分(44)が、前記第1の部分(42)の基部(50)と係合する基部(66)と、中間部(68)と、偏向可能な第2のアームを形成する上部(64)と、を有し、
前記第1の部分(42)の前記上部(48)が、略半円柱状であり、前記基部(50)から軸方向に前記中間部(52)を通って全体に延在し、
前記第1の部分(42)の前記上部(48)が、前記針(24)の外側輪郭が確実に、前記第1の部分(42)の前記上部(48)の内壁(58)に設けられた溝(60)内に移動可能に置かれるように、前記第2の部分(44)の上部(64)に面している少なくとも2つの突起(62)を有し、
前記溝(60)が、略半円形状であり、該内壁(58)の全長に沿って前記基部(50)に向かって軸方向に延在する針安全装置(12)。
【請求項2】
前記第1の部分(42)の前記基部(50)が、略円柱状であり、前記針(24)を入れるように前記上部(48)に向かって軸方向に前記中間部(52)を通って全体に延在している針シャフト(38)の主な外側輪郭に合う輪郭を有する貫通穴(56)を備える請求項1に記載の針安全装置(12)。
【請求項3】
前記第2の部分(44)の前記基部(66)が、前記第2の部分(44)の前記上部(64)に対して略垂直に延在している請求項1に記載の針安全装置(12)。
【請求項4】
前記第2の部分(44)の前記基部(66)に、前記第1の部分(42)の前記基部(50)に設けられている貫通穴(56)に合わせて前記針(24)を入れる略円形の穴(72)が設けられている請求項3に記載の針安全装置(12)。
【請求項5】
前記第2の部分(44)の前記基部(66)に、前記第2の部分(44)が前記第1の部分(42)に取り付けられた時に、前記第1の部分(42)の前記基部(50)に形成されたピンを入れる開口部(74)が設けられている請求項4に記載の針安全装置(12)。
【請求項6】
前記第2の部分(44)の前記中間部(68)が2つの細長い翼状部分(76)を備え、
前記翼状部分(76)が、前記第2の部分(44)の前記中間部(68)に設けられている隆起(78)とは反対の方向に、約90°の角度で前記第1の部分(42)の中間部(52)に向かって、前記中間部(68)から内側に屈曲している請求項1に記載の針安全装置(12)。
【請求項7】
前記第2の部分(44)の前記上部(64)が、針先端(36)の遠位端を覆う、および/または止める空間を画定する略V字型形状を有し、
前記Vの先端(80)が、軸方向に向いている請求項1に記載の針安全装置(12)。
【請求項8】
前記リング(46)が、前記第1の部分(42)および前記第2の部分(44)を包囲し、全体として前記第1の部分(42)の中間部(52)および前記第2の部分(44)の中間部(66)を覆う請求項1に記載の針安全装置(12)。
【請求項9】
前記リング(46)は、偏向可能特性を有する前記第2の部分(44)の第2のアーム(70)を形成する上部(64)が前記針(24)が当該針安全装置(12)内全体に延在し、前記第2のアーム(70)が前記針(24)の針シャフト(38)に偏向可能に置き直される時、前記リング(46)の復元力に抗して外側に偏向するように構成される請求項8に記載の針安全装置(12)。
【請求項10】
第1のアーム(54)を形成する前記第1の部分(42)および第2のアーム(70)を形成する前記第2の部分(44)の両方の上部(48、64)の部分に、当該針安全装置(12)のカテーテル・ハウジング(14)内の保持を容易にする肩部(90)が設けられている請求項1に記載の針安全装置(12)。
【請求項11】
カテーテル・チューブ(16)と、
針ハウジング(22)と、
近位部(26)および遠位部(28)を有し、前記遠位部(28)が前記カテーテル・チューブ(16)に接合され、前記近位部(26)が使用前に請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の前記針安全装置(12)を保持する筐体(30)を画定するカテーテル・ハウジング(14)と、
近位部(26)および遠位部(28)を備えた針シャフト(38)を有し、前記遠位部(28)が針先端(36)を画定し、前記近位部(26)が前記針ハウジング(22)に取り付けられている針(24)と、
前記針(24)に前記カテーテル・ハウジング(14)と前記針ハウジング(22)との間で移動可能に配置され、前記針(24)が前記針安全装置(12)を通って延在し、前記針安全装置(12)の前記第2の部分(44)の前記第2のアーム(70)を形成する上部(48)が前記針(24)の上に偏向可能に置かれ、前記針安全装置(12)が前記カテーテル・チューブ(16)から前記針(24)を引き抜く際に、前記針先端(36)が前記針安全装置(12)に入れられると、前記カテーテル・ハウジング(14)の前記筐体(30)から取外し可能である針安全装置(12)と、
を備えるIVカテーテル・アセンブリ(10)。
【請求項12】
前記針安全装置(12)の保持を容易にするように、前記カテーテル・ハウジング(14)の前記筐体(30)に、1つまたは複数の突起もしくは突出部、または凹部もしくは窪み、またはそれらの組合せが設けられている請求項11に記載のIVカテーテル・アセンブリ(10)。
【請求項13】
前記針シャフト(38)が、前記針(24)の前記遠位部(28)の近くに、前記針シャフト(38)の外径を前記針安全装置(12)に設けられている前記貫通穴(56)の直径より全体として大きくする拡大部(86)を有している請求項11に記載のIVカテーテル・アセンブリ(10)。
【請求項14】
前記針先端(36)が、前記針安全装置(12)の前記第1のアーム(54)と前記第2のアーム(70)との間に入れられると、前記針安全装置(12)の前記第1の部分(42)の前記基部(50)の前記貫通穴(56)が、全体として前記拡大部(86)の下方に置かれ、前記針先端(36)を保護可能にする請求項11に記載のIVカテーテル・アセンブリ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年5月5日に出願されたインド仮特許出願第1058/DEL/2010号に対する優先権を主張する。その内容はすべて、参照することにより本明細書に組み込まれている。本出願人は、この仮特許出願の利益を主張する。
【0002】
本発明は、概して医療機器、特に静脈内カテーテル・アセンブリに関し、より詳細には、たとえば医療従事者が使用後の針で偶発的に刺すのを防止する針安全装置に関する。
【背景技術】
【0003】
医療用針は、特に、極めて鋭利であるように、また、薬剤を好都合に投与することができるように患者の皮膚および肉をほんのわずかな力のみで刺すように、設計され、製造されている。患者を治療している間に、偶然に針で刺してしまう危険も周知である。針は、一旦使用されると、患者の血液で汚染され、特に医療従事者に対し、感染症が広がる潜在的な脅威となる。手術中、鋭利な器具を扱うことにより、医療従事者をAIDSおよび肝炎等の感染症に晒す偶発的な突刺し、または刺し傷がもたらされる可能性がある。偶然に刺してしまう危険を意識し、医療従事者は、患者を治療している間、医療用針を不注意に刺すことがないように非常に用心している。
【0004】
緊急事態の間、いくつかの態様を取り扱う必要があり、針で刺してしまう可能性が増大する。同様に、廃棄中に、露出した針の先端が、医療廃棄物を取り扱う人に対して脅威となる可能性があり、通常は脅威となる。
【0005】
この種の針安全装置が一般に知られており、医療機器の針の先端用の保護装置として機能する。しかしながら、ある例では、針安全装置が、完全に自動ではなく、針安全装置の操作を開始するために、使用中に押したり、回転させたりといった多少余分な労力が必要である。このような非自動針保護装置には、針保護装置を固定する手動操作、別個の部品として存在する針保護装置、針先端に保護装置を押し出す困難性、時間の損失、偶然に刺してしまうことの明白な危険等、明らかな欠点がある。
【0006】
手動で操作される針先端保護装置に対して改良されている既存の針先端保護装置にも、いくつかの欠点がある。自動針保護装置の構成では、針保護装置が配置され、安全装置を備えた針が取り除かれた後、針保護装置が、クリンプ(crimp)および/または針先端に対して概して近位に設けられている穴/溝から滑り抜ける可能性がある。針保護装置が先端から引き抜かれるか、または偶発的に引っ張られた場合に、滑り抜けが起こり得る。針の先端が露出していることによる結果については、すでに上述した。
【0007】
したがって、患者を治療している間に、医療従事者が偶然に針で刺してしまうことによって病気に感染するのを防止するために、いかなる余分な労力を費やすことなく、使用後に静脈針の先端を自動的に覆い、また、過度の偶発的な圧力下であっても針の先端から引き抜くことができない、改良された針安全装置が常に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
医療機器から針を取り除いた後に、医療従事者がその針を偶然に刺してしまうことを防止する針安全装置を提供する。
【0009】
本発明の目的は、医療機器用の改良された針安全装置を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、非常に簡素かつ安価な医療機器の先端用の安全装置であって、たとえば、その動作に影響を与えることなくそっと抜け出る静脈内カテーテル針アセンブリ用の安全装置を提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、完全に自動で動作し、挿入および引抜きという通常のプロセス以外に医療従事者による追加行為を必要としない、改良された針安全装置を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、針の先端を自動的に封入する改良された手段および機構を有し、針が皮膚を突き刺した時に起動し、針が引き抜かれる時に針の先端にわたって針安全装置を自動的に配置する針安全装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、針に移動可能に配置されている医療機器用、特に、IVカテーテル・アセンブリ用の針安全装置であって、適切なプラスチック材料からなる第1の部分と、好ましくは適切な金属板のストリップ(strip)からなる第2の部分と、適切なエラストマー材料からなる弾性特性を有し、前記第1の部分および前記第2の部分を包囲するリングと、を備える針安全装置に関する。
第1の部分は、基部と、中間部と、第1のアームを形成する上部と、を有し、第2の部分が、第1の部分の基部と係合する基部と、中間部と、偏向可能な第2のアームを形成する上部と、を有している。第1の部分の上部は略半円柱状であり、基部から軸方向に中間部を通って全体に延在している。第1の部分の上部は、針の外側輪郭が確実に第1の部分の上部の内壁に設けられた溝内に移動可能に置かれるように、第2の部分の上部に面している少なくとも2つの突起を有している。溝は略半円形状であり、内壁の全長に沿って基部に向かって軸方向に延在している
【0014】
本発明はまた、カテーテル・チューブと、針ハウジングと、近位部および遠位部を有し、遠位部がカテーテル・チューブに接合され、近位部が使用前に前記針安全装置を保持する筐体を画定するカテーテル・ハウジングと、近位部および遠位部を備えた針シャフトを有し、遠位部が針先端を画定し、近位部が前記針ハウジングに取り付けられている針と、前記針の前記カテーテル・ハウジングと前記針ハウジングとの間に移動可能に配置され、前記針が前記針安全装置を通って延在し、前記針安全装置の第2の部分の第2のアームを形成する上部が前記針上に偏向可能に置かれ、針先端が前記カテーテル・チューブから針を引き抜く際に前記針安全装置に入れられると、前記カテーテル・ハウジングの前記筐体から取外し可能である針安全装置と、を備えるIVカテーテル・アセンブリに関する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1(a)】本発明に係る針安全装置を備えたIVカテーテル・アセンブリの組立分解図である。
図1(b)】本発明に係る針安全装置を備えたIVカテーテル・アセンブリの組立分解図である。
図2】本発明に係り、組み立てられた位置にあるIVカテーテル・アセンブリの斜視図である。
図3(a)】本発明に係る針安全装置の組立分解図である。
図3(b)】本発明に係る針安全装置の組立分解図である。
図4】本発明に係り、組み立てられた位置にある針安全装置の斜視図である。
図5(a)】本発明に係る針安全装置の縦断面図である。
図5(b)】本発明に係る針安全装置の側面図である。
図6(a)】本発明に係り、針安全装置がカテーテル・ハウジングの筐体内に保持されている、拡大されたIVカテーテル・アセンブリのシースルー側面図である。
図6(b)】本発明に係り、針安全装置が針に移動可能に配置されているIVカテーテル・アセンブリの側面図である。
図6(c)】本発明に係り、針安全装置が針に移動可能に配置されているIVカテーテル・アセンブリの側面図である。
図7(a)】本発明に係り、針安全装置が針の先端に取り付けられているIVカテーテル・アセンブリの斜視図である。
図7(b)】本発明に係り、針安全装置が針の先端に取り付けられているIVカテーテル・アセンブリの側面図である。
図7(c)】本発明に係り、針安全装置が針の先端に取り付けられているIVカテーテル・アセンブリの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で用いる「近位の」という用語は、IVカテーテル・アセンブリ10において、本発明の針安全装置12が、アセンブリ10を使用する臨床医に最も近く、かつアセンブリ10が通常動作で使用される患者から最も遠い位置を指す。逆に、「遠位の」という用語は、IVカテーテル・アセンブリ10において、本発明の針安全装置12がアセンブリ10を使用している臨床医から最も遠く、かつアセンブリ10が通常動作で使用される患者に最も近い位置を指す。
【0018】
「軸方向」という用語は、「A」によって示す方向を指す。
【0019】
ここで、図面を参照すると、図1(a)および図1(b)は、本発明に係るIVカテーテル・アセンブリ10の組立分解図を示す。カテーテル・アセンブリ10は、カテーテル・ハウジング14、カテーテル・チューブ16、翼状部分18、ポート20、針ハウジング22、針安全装置12、および針24を含む。カテーテル・ハウジング14は、近位部26および遠位部28を有している。カテーテル・ハウジング14の遠位部28は、カテーテル・チューブ16に接合され、近位部26は、使用前に前記針安全装置12を保持する筐体30を画定する。
【0020】
図2に示すように、カテーテル・アセンブリ10の使用前において、針ハウジング22は、カテーテル・ハウジング14に接続され、針先端36は、カテーテル・チューブ16の遠位端領域34から突出している。カテーテル・チューブ16は、近位端領域32および遠位端領域34を備えている。針安全装置12は、針24上をカテーテル・ハウジング14と針ハウジング22との間で移動可能に配置されている。図1(a)および図1(b)に示すように、針24は、カテーテル・ハウジング14およびカテーテル・チューブ16に入れられる。これにより、針シャフト38は、カテーテル・チューブ16の長さを通じて延在する。したがって、針24は、使用前に針安全装置12を完全に貫通する。さらに、突出している針先端36で偶然に刺してしまうのを防止するために、カテーテル・アセンブリ10を使用する前に、カテーテル・ハウジング14に保護キャップ40が取り付けられる。保護キャップ40は、カテーテル・チューブ16の長さ、およびカテーテル・チューブ16から突出している針先端36を覆う。
【0021】
図3(a)および図3(b)に示すように、針安全装置12は、第1の部分42と、第2の部分44と、弾性特性を有し、前記第1の部分42および前記第2の部分44を包囲するリング46と、を備えている。図4にさらに示すように、針安全装置12が組み立てられた形態では、第1の部分42、第2の部分44、およびリング46の各々は、互いに固定されている。
【0022】
第1の部分42は、適切なプラスチック材料から製造されており、第1のアーム54を形成する上部48と、基部50と、上部48と基部50との間の部分(以下、中間部52という)と、を備えている。「中間部」52という用語は、単に説明するための目的で使用されており、第1の部分42を等距離の構成または仕切りによって分割するということを意図しているわけではない。基部50は、略円柱状であり、貫通穴56を有している。貫通穴56は、針24を入れるように、中間部52において、上部48に向かって軸方向全体に延在している。上部48は、略半円柱状であり、基部50から中間部52を通って、軸方向全体に延在している。
【0023】
第1の部分42の上部48の内壁58には、溝60が設けられている。この溝60は、上部48の全長に沿い、基部50に向かって軸方向に延在している。溝60は、針24の主な外側輪郭に合う基部50に設けられた貫通穴56の略円形状とは対照的に、略半円形状である。
【0024】
上部48は、第2の部分44の上部64に面する少なくとも2つの突起62を含み、2つの突起62は、針24の外側輪郭が、内壁58に形成された溝60内に安定した状態で移動可能に収まることを確実にしている。針24が、第1の部分42の基部50に設けられた貫通穴56内を通って、前記第1の部分42の上部48および前記第2の部分44の上部64に向かって軸方向に延在するように通過する時、前記突起62は、針24を部分的に半円形に包囲する。
【0025】
第2の部分44は、偏向可能特性を有する第2のアーム70を形成する上部64と、基部66と、上部64と基部66との間の部分(以下、中間部68という)と、を備えている。本明細書において、「中間部」68という用語は、単に説明するための目的で使用されており、第2の部分44を等距離の構成または仕切りによって分割するということを意図しているわけではない。第2の部分44の基部66は、第1の部分42の基部50と係合するように形成されている。第2の部分44の基部66は、第2の部分44の中間部68に対して略垂直に延在している。基部66には、第1の部分42の基部50に設けられた貫通穴56に合わせて針24を入れる略円形の穴72が設けられている。
【0026】
穴72に加えて、第2の部分44の基部66には、第2の部分44が第1の部分42に取り付けられた時に、第1の部分42の基部50に形成されているピン(図示せず)を入れる開口部74が設けられている。組み立てられると、第2の部分44は、第1の部分42に対して正確な位置に組み込まれる。第2の部分44の開口部74を通って延在するピンは、ピンの直径を増大させるために、熱および/または圧力によって変形する。ピンの直径を開口部74の直径より大きくすることによって、第2の部分44は、第1の部分42に安全に取り付けられる。このため、第2の部分44は、熱封止接続によって第1の部分42に固定される。あるいは、溶接もしくは接着、または他のあらゆる適切な種類もしくは手段の接続によって、第1の部分42に第2の部分44を固定することができる。
【0027】
第2の部分44の中間部68は、2つの細長い翼状部分76を備えている。2つの細長い翼状部分76は、中間部68の部分の両側において延在し、かつ内側に、すなわち、第2の部分44に固定された時に、約90°の角度で第1の部分42の中間部52に向かって屈曲する。弛緩状態では、第2の部分44が第1の部分42に取り付けられた時、図5(a)および図5(b)において、第2の部分44の中間部68が、軸方向に正確に延在せず、第1の部分42の中間部52に向かってわずかに内側に傾斜していることが分かる。さらに、第2の部分44の中間部68には、前記細長い翼状部分76から外側に延在する隆起78が設けられている。
【0028】
第2の部分44の上部64は略V字型形状であり、Vの先端80は軸方向に向いている。V字型形状の遠位端は、内側に屈曲している。上部64のV字型形状の自由に偏向可能な脚は、第1の部分42に取り付けられると、全体として第1の部分42の上部48に向かって延在する。さらに、V字型形状は、針先端36が針安全装置12に入ると、針先端36の遠位端を覆う、および/または止める空間を画定する。本明細書の開示は、第2の部分44の上部64の部分の形状をV字型形状の構造のみに限定するように意図されておらず、その形状は、適切な他の形状、たとえば矩形ボックス型の構造を包含する。
【0029】
第2の部分44は、鋼等のばね状特性を有する適切な金属板のストリップからの単一部品構造として形成されている。あるいは、本明細書の開示は、適切なばね状特性を有する適切なプラスチック材料から形成される針安全装置12の第2の部分44の範囲を包含する。
【0030】
弾性特性を有するリング46は、第1の部分42の中間部52の部分と、第2の部分44の中間部68の部分と、を包囲する。第1の部分42および第2の部分44を包囲すると、リング46は、第1の部分42に向かって、第2の部分44をわずかに内側に傾斜させる。図3(b)に示すように、針安全装置12の第1の部分42の中間部52の外面には、略半円形突起(複数可)82が、前記突起82に対して略平行に伸びる窪み(複数可)84とともに設けられている。同様に、針安全装置12の第2の部分44の中間部68には、隆起78が設けられている。隆起78は、その隆起78に設けられている細長い翼状部分76に対して反対方向に外側に延在している。前記突起82および隆起78は、リング46が軸方向に滑り落ちることを防ぐため、前記リング46による針安全装置12の第1の部分42および第2の部分44の堅固な包囲を容易にする。
【0031】
リング46は、弾性特性を有する適切なエラストマー材料、たとえばゴムまたは合成ゴム等の適切な材料から製造されている。リング46の弾性特性により、針安全装置12の第1の部分42の第1のアーム54および第2の部分44の第2のアーム70の偏向をさらに容易にする張力が確実になる。さらに、リング46の略円形形状は、針24が針安全装置12の第1のアーム54および第2のアーム70の間の全体を通って延在する時に、第2の部分44の第2のアーム70を形成する偏向可能な上部64が、リング46の復元力に抗して偏向するように構成されている。
【0032】
さらに、カテーテル・アセンブリ10は、図6(a)に示すように、針シャフト38を有する針24を備え、針シャフト38が、近位部26および遠位部28を有している。針シャフト38の遠位部28は、針先端36を形成し、針シャフト38の近位部26は、針ハウジング22に取り付けられている。針シャフト38の遠位部28および近位部26はともに、全体として同じ外側輪郭を有している。針シャフト38には、針先端36を形成する遠位部28の近くの外側輪郭に拡大部86が設けられている。拡大部86は、針安全装置12に設けられている貫通穴56の直径よりも針24の外径を大きくする。拡大部86は、図7(a)、図7(b)、および図7(c)に示すように、針先端36が、針安全装置12の第1のアーム54と第2のアーム70との間に入れられた時に、針安全装置12が針24から滑り落ちるのを防ぐ。さらに、前記針安全装置12の前記第1のアーム54と前記第2のアーム70との間に入れられた前記針先端36により、前記針安全装置12の前記第1の部分42の基部50おける貫通穴56が、前記拡大部86の概して下部に置かれ、前記針先端36を保護することができる。拡大部86は、たとえば隆起またはクリンプであってもよい。あるいは、拡大部86は、たとえば穴または溝であってもよい。
【0033】
図1(a)および図1(b)に示すように、IVカテーテル・アセンブリ10を使用する前に、針24がカテーテル・チューブ16を通って延在し、針安全装置12が、カテーテル・ハウジング14内に移動可能に配置されている。この状況において、第2の部分44の第2のアーム70を形成する上部64は、針24上に偏向可能に置かれている。針シャフト38は、第2の部分44の内壁58に設けられている溝60内に固定して配置されている。このため、針シャフト38は、溝60内に支持されている。このため、針安全装置12の第2のアーム70を形成する第2の部分44の上部64が、外側に、すなわち、弾性特性を有するリング46の復元力に抗して針24から離れる方向に偏向する。この偏向した状況を、針安全装置12の偏向状態と呼び、図6(a)、図6(b)、および図6(c)にさらに示す。
【0034】
偏向状態とは反対に、図5(a)および図5(b)に示すように、針24が針安全装置12を通って延在していない時、第2のアーム70を形成する偏向可能な上部64は、前記第1の部分および第2の部分44を包囲するリング46の弾性特性のために、針安全装置12の第1の部分42の上部48に向かって内側に引き寄せられる。この状況を、針安全装置12の収納状態と呼ぶ。図7(a)、図7(b)、および図7(c)にさらに示すように、第2のアーム70が針シャフト38の長さを超えた時、また、前記第2のアーム70が針24上に偏向可能に置かれていない時、前記第2のアーム70は、同様に、前記第2の部分44および第1の部分42を包囲するリング46の弾性特性のために、針安全装置12の第1の部分42の第1のアーム54を形成する上部48に向かって内側に引き寄せられる。第2のアーム70がもはや針24上に偏向可能に置かれていないこの状況により、前記第2のアーム70は、弾性特性を有するリング46の使用によって補助される復元力のために元の位置に戻る。
【0035】
図1(b)に示すように、針24がカテーテル・アセンブリ10のカテーテル・チューブ16から引き抜かれている時、針24は、針先端36が前記針安全装置12に入れられるまで、針安全装置12に対して移動する(図6(b))。図7(b)に示すように、針先端36が針安全装置12に入れられると、針シャフト38の拡大部86(図6(a))は、安全装置12を針24とともにカテーテル・ハウジング14から引き出すことができるように、針安全装置12の基部50、66と係合する。こうした状況において、拡大部86と針安全装置12の基部50、66との間の係合により、針先端36が針安全装置12から取り除かれることを防ぐ。したがって、図7(a)、図7(b)、および図7(c)に示すように、針先端36は、針安全装置12によって安全に包囲されて確実に封入される。
【0036】
使用時、針24がカテーテル・チューブ16から引き抜かれている間、針安全装置12は、カテーテル・ハウジング14の筐体30内に保持される。針安全装置12が、カテーテル・ハウジング14の筐体30内に保持されるのを維持するために、第1のアーム54を形成する第1の部分42の上部48の部分と、第2のアーム70を形成する第2の部分44の上部64の部分との両方に、それぞれ、肩部90が設けられている(図1(a)および図1(b))。前記肩部90は、カテーテル・ハウジング14に設けられている1つまたは複数の突起もしくは突出物、または凹部もしくは窪み、またはその組合せ(図示せず)と係合する。前記突起または突出物は、カテーテル・ハウジング14の筐体30の内周全体に沿って延在する環状リング(複数可)を形成することができる。または、前記突起または突出物は、カテーテル・ハウジング14の筐体30の前記内周のそれぞれの部分のみに沿って延在する1つまたは複数のリング・セグメントを形成することができる。同様に、前記凹部または窪みは、カテーテル・ハウジング14の内周全体に沿って延在する環状溝(複数可)を形成することができる。または、前記凹部または窪みは、カテーテル・ハウジング14の内周のそれぞれの部分のみに沿って延在する1つまたは複数の溝セグメントを形成することができる。
【0037】
上述したように、収納状態では、第2のアーム70の再位置決めにより、肩部90が前記1つまたは複数の突起もしくは突出物、または凹部もしくは窪み、またはそれらの組合せから外れ、針安全装置12を、カテーテル・ハウジング14に設けられている筐体30から完全に引き抜くことができる。その際、針先端36は針安全装置12から安全に封入されている。さらに、前記係合手段により、針安全装置12は、針先端36が針安全装置12の前記第1のアーム54と第2のアーム70との間に入れられる前に、カテーテル・ハウジング14から偶然引き抜かれることを防ぐ。
【0038】
針安全装置12の簡素な設計のために、IVカテーテル・アセンブリ10全体を、低コストで製造することができる。過度の外力が針24および/または針安全装置12に加えられた場合であっても、針安全装置12の基部50、66と係合配置されている針先端36に対して近位の針シャフト38に設けられている拡大部86により、針安全装置12が針シャフト38から引き抜かれることを防ぐ。
【0039】
本発明について、特定の実施形態および例によって説明したが、当業者であれば、本発明によって示される本発明のより広い趣旨および範囲から逸脱することなく多くの形態で具現化することができる。したがって、開示される好ましい実施形態の変形は、上記説明により当業者には明らかとなり得る。
【0040】
したがって、本発明は、適切な法律によって許可されるように、本明細書における特許請求の範囲に列挙された主題のすべての変更形態および均等物を含む。さらに、上述した要素のすべてのあり得る変形でのあらゆる組合せは、本明細書において特に示されるか、または文脈によって明確に矛盾しない限り、本発明によって包含される。したがって、明細書および図面は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、限定ではなく例示とみなされるべきであり、本発明は後に添付する特許請求の範囲にある。
【符号の説明】
【0041】
10 IVカテーテル・アセンブリ
12 針安全装置
14 カテーテル・ハウジング
16 カテーテル・チューブ
18 翼状部分
20 ポート
22 針ハウジング
24 針
26 近位部
28 遠位部
30 筐体
32 近位端領域
34 遠位端領域
36 針先端
38 針シャフト
40 保護キャップ
42 第1の部分
44 第2の部分
46 リング
48 上部(第1の部分)
50 基部(第1の部分)
52 中間部(第1の部分)
54 第1のアーム
56 貫通穴
58 内壁
60 溝
62 突起
64 上部(第2の部分)
66 基部(第2の部分)
68 中間部(第2の部分)
70 第2のアーム
72 穴
74 開口部
76 細長い翼状部分
78 隆起
80 先端
82 半円形突起
84 窪み
86 拡大部
90 肩部
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】