特許第5969996号(P5969996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5969996セルロースパルプウェブを乾燥させる少なくとも2つのゾーンを備えた乾燥ボックス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969996
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】セルロースパルプウェブを乾燥させる少なくとも2つのゾーンを備えた乾燥ボックス
(51)【国際特許分類】
   D21F 5/18 20060101AFI20160804BHJP
   F26B 13/20 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   D21F5/18
   F26B13/20
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-538687(P2013-538687)
(86)(22)【出願日】2011年11月15日
(65)【公表番号】特表2013-543935(P2013-543935A)
(43)【公表日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】SE2011051367
(87)【国際公開番号】WO2012067570
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年11月13日
(31)【優先権主張番号】1051200-2
(32)【優先日】2010年11月16日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】513118421
【氏名又は名称】アンリツ テクノロジー アンド アセット マネージメント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ANDRITZ TECHNOLOGY AND ASSET MANAGEMENT GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】カンプリス,ローランド
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2002/050370(WO,A1)
【文献】 米国特許第06230422(US,B1)
【文献】 特開平06−248593(JP,A)
【文献】 米国特許第06282811(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0064967(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/141841(WO,A1)
【文献】 特開2004−190982(JP,A)
【文献】 特表平10−509792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21C 9/18
D21F 5/18
F26B 13/00− 13/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥ボックス(1)内でセルロースパルプのウェブ(18)を乾燥させる装置であって、前記乾燥ボックス(1)が、浮揚ウェブの原理に従って前記パルプを乾燥させるように、セルロースパルプの前記ウェブ(18)に向かって空気を吹き付けるように動作可能であるブローボックス(26、32)を備える、装置において、
前記乾燥ボックス(1)が、前記ウェブ(18)を支持するように構成された第1下部ブローボックス(26)を備える第1乾燥ゾーン(4)と、前記ウェブ(18)を支持するように構成された第2下部ブローボックス(32)を備える第2乾燥ゾーン(6)とを備え、前記第1下部ブローボックス(26)が前記第2下部ブローボックス(32)とは機械的に異なる設計であり、それにより前記それぞれの乾燥ゾーン(4、6)における前記パルプウェブ(18)の乾燥を、その所定ゾーンにおける乾燥条件または前記ウェブの強度に応じて最適化し、
少なくとも、前記それぞれの下部ブローボックスとセルロースパルプの前記ウェブ(18)との間の1つの距離(H3、H1)に対して、前記第2下部ブローボックス(32)の相対揚力が、前記第1下部ブローボックス(26)の相対揚力より高いことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記第1乾燥ゾーン(4)が、セルロースパルプの前記ウェブ(18)を前進させる方向で見ると、前記第2乾燥ゾーン(6)の上流に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、少なくとも、前記それぞれの下部ブローボックス(32、26)とセルロースパルプの前記ウェブ(18)との間の前記距離(H3、H1)が2mm〜8mmである限り、前記第2下部ブローボックス(32)の前記相対揚力が、前記第1下部ブローボックス(26)の前記相対揚力より高いことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置において、前記第1下部ブローボックス(26)に、前記第1下部ブローボックス(26)に供給される前記空気の少なくとも一部を、前記それぞれのブローボックス(26)の上面(44)に対して角度をなして放出するように適合された傾斜型開口部(46)が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置において、前記乾燥ボックス(1)が複数の乾燥デッキ(24、30)を備え、前記乾燥デッキ(24、30)が各々、下部ブローボックス(26、32)を備え、かつ前記乾燥ボックス(1)の所定レベルで水平経路に沿って移動する際に前記ウェブ(18)を乾燥させるように適合されており、前記第1乾燥ゾーン(4)が、前記乾燥ボックス(1)の乾燥デッキ(24、30)の総数の10%〜70%を含むことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置において、前記第1下部ブローボックス(26)に、前記第1下部ブローボックス(26)に供給される前記空気の少なくとも30%を放出するように適合された傾斜型開口部(46)が設けられており、前記第2下部ブローボックス(32)に、前記第2下部ブローボックス(32)に供給される前記空気の少なくとも75%を放出するように適合された非傾斜型の開口部(60)が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置において、前記第1乾燥ゾーン(4)の前記下部ブローボックスの少なくとも75%が前記第1下部ブローボックス(26)であり、前記第2乾燥ゾーン(6)の前記下部ブローボックスの少なくとも75%が前記第2下部ブローボックス(32)であることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置において、前記乾燥ボックス(1)が、前記第2乾燥ゾーン(6)の下流に配置された冷却ゾーン(8)をさらに備え、前記冷却ゾーン(8)が前記第1下部ブローボックス(26)を備えていることを特徴とする装置。
【請求項9】
セルロースパルプのウェブ(18)を、浮揚ウェブの原理に従って前記パルプを乾燥させるブローボックスによってセルロースパルプの前記ウェブ(18)に向かって空気を吹き付けることによって乾燥させる方法において、
前記ウェブ(18)を、前記ウェブ(18)を支持する第1下部ブローボックス(26)を備える第1乾燥ゾーン(4)を通して前進させるステップと、その後
前記ウェブ(18)を、前記ウェブ(18)を支持する第2下部ブローボックス(32)を備える第2乾燥ゾーン(6)を通して前進させるステップであって、前記第2下部ブローボックス(32)が前記第1下部ブローボックス(26)とは機械的に異なる設計であり、それにより前記それぞれの乾燥ゾーン(4、6)における前記パルプウェブ(18)の乾燥を、その所定ゾーンにおける乾燥条件または前記ウェブの強度に応じて最適化する、ステップと、
を含み、
前記第1下部ブローボックス(26)に供給される前記空気の少なくとも30%が、傾斜型開口部(46)を介して前記第1下部ブローボックス(26)から吹き出され、前記第2下部ブローボックス(32)に供給される前記空気の少なくとも75%が、非傾斜型開口部(60)を介して前記第2下部ブローボックス(32)から吹き出されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記ウェブ(18)と前記第2下部ブローボックス(32)との間の平均距離(H3)が、前記ウェブ(18)と前記第1下部ブローボックス(26)との間の平均距離(H1)より大きいことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法において、前記第2下部ブローボックス(32)が、前記ウェブ(18)に対して、前記第1下部ブローボックス(26)より高い伝熱をもたらすことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法において、前記第1下部ブローボックス(26)に供給される総空気流量の少なくとも30%が、前記第1下部ブローボックス(26)のそれぞれの上面(44)に対して60°未満の角度(α)で、それら第1下部ブローボックス(26)から吹き出され、前記第2下部ブローボックス(32)に供給される総空気流量の少なくとも75%が、前記第2下部ブローボックス(32)のそれぞれの上面(54)に対して少なくとも75°の角度で、それら第2下部ブローボックス(32)から吹き出されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法において、前記ウェブ(18)が、前記第1下部ブローボックス(26)の上方0.2mm〜3mmの平均距離(H1)で、かつ前記第2下部ブローボックス(32)の上方4mm〜15mmの平均距離(H3)で前進することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥ボックスにおいてセルロースパルプのウェブを乾燥させる装置であって、乾燥ボックスが、浮揚(airborne)ウェブの原理に従ってパルプを乾燥させるために、セルロースパルプのウェブに向かって空気を吹き付けるように動作可能なブローボックスを備えている、装置に関する。
【0002】
本発明は、さらに、浮揚ウェブの原理に従ってパルプを乾燥させるブローボックスを用いて、セルロースパルプのウェブに向かって空気を吹き付けることにより、セルロースパルプのウェブを乾燥させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
セルロースパルプを、浮揚ウェブの原理に従って動作する対流タイプの乾燥機で乾燥させることが多い。こうした乾燥機の例は、国際公開第2009/154549号パンフレットに記載されている。上部ブローボックスおよび下部ブローボックスにより、セルロースパルプのウェブ上に熱風が吹き付けられる。ブローボックスによって吹き出される空気は、ウェブを乾燥させるためにウェブに熱を伝達し、かつウェブを下部ブローボックスの上方で浮遊させ続ける。熱風は、ファンと乾燥空気を加熱する蒸気放熱器とを備えている循環空気システムによって、ブローボックスに供給される。
【0004】
パルプミルにおける増大するパルプ製造に対する要求が高まるに従い、パルプ乾燥機のサイズを増大させることなく、またはそのサイズをわずかに増大させるのみで、パルプ乾燥機の乾燥容量を増大させることが望まれている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、セルロースパルプウェブを乾燥させる装置であって、従来技術による装置より空間効率が高い装置を提供することである。
【0006】
この目的は、乾燥ボックス内でセルロースパルプのウェブを乾燥させる装置であって、乾燥ボックスが、浮揚ウェブの原理に従ってパルプを乾燥させるように、セルロースパルプのウェブに向かって空気を吹き付けるように動作可能であるブローボックスを備える、装置において、乾燥ボックスが、ウェブを支持するように構成された第1下部ブローボックスを備える第1乾燥ゾーンと、ウェブを支持するように構成された第2下部ブローボックスを備える第2乾燥ゾーンとを備え、第1下部ブローボックスが第2下部ブローボックスとは異なる、装置によって達成される。
【0007】
この装置の利点は、パルプウェブの乾燥を、各乾燥ゾーンにおいて、乾燥条件、パルプのウェブの強度等に関してその所定ゾーンにおいて優勢である条件に適合するように最適化することができる、ということである。それにより、従来技術に比較してより小さい乾燥機で、十分な乾燥容量を達成することができる。
【0008】
一実施形態によれば、第1乾燥ゾーンは、セルロースパルプのウェブを前進させる方向で見ると、第2乾燥ゾーンの上流に配置されている。乾燥ゾーンがこの順序で配置されることにより、乾燥ゾーンを、ウェブが乾燥ボックスを通して前進する際に変化するウェブ強度、ウェブ乾燥度等の特性に対して適合させることができる。
【0009】
一実施形態によれば、水平ウェブ面積の1平方メートルおよび時間の単位当たりの空気の所定流量において、少なくとも、それぞれの下部ブローボックスとセルロースパルプのウェブとの間の1つの距離に対して、第2下部ブローボックスの相対揚力が、第1下部ブローボックスの相対揚力より高い。この実施形態の利点は、第2下部ブローボックスが、ウェブとそれぞれのブローボックスとの間のより大きい距離に関連することが多い、より高い効率でウェブを乾燥させることができる、ということである。
【0010】
一実施形態によれば、各乾燥ゾーンは少なくとも4個の連続した下部ブローボックスを備えている。
【0011】
一実施形態によれば、少なくとも、それぞれの下部ブローボックスとセルロースパルプのウェブとの間の距離が2mm〜8mmである限り、第2下部ブローボックスの相対揚力が、第1下部ブローボックスの相対揚力より高い。この実施形態の利点は、乾燥が通常最も効率的である、ウェブと下部ブローボックスとの間の距離の範囲で、第2下部ブローボックスの相対揚力が第1下部ブローボックスの相対揚力より高い、ということである。
【0012】
一実施形態によれば、第1下部ブローボックスに、第1下部ブローボックスに供給される空気の少なくとも一部を、それぞれのブローボックスの上面に対して角度をなして放出するように適合された傾斜型開口部が設けられている。この実施形態の利点は、第1下部ブローボックスが、ウェブに対して固定力を与えることができ、それが第1乾燥ゾーンにおいてウェブを安定化するのに役立つ、ということである。
【0013】
一実施形態によれば、乾燥ボックスは、複数の乾燥デッキを備え、乾燥デッキは各々、下部ブローボックスを備え、かつ乾燥ボックスの所定レベルにおいて水平経路に沿って移動するウェブを乾燥させるように適合されており、第1乾燥ゾーンは、乾燥ボックスの乾燥デッキの総数の10%〜70%を含む。この実施形態の利点は、第1乾燥ゾーンが、ウェブがある程度まで乾燥するために、かつ増大した強度を得るために好適な長さを有し、それにより、ウェブが、第2乾燥ゾーンで発生する可能性があるウェブ張力の増大に対して影響を受けにくくなる、ということである。
【0014】
一実施形態によれば、第1下部ブローボックスに、第1下部ブローボックスに供給される空気の少なくとも30%を放出するように適合された傾斜型開口部が設けられており、第2下部ブローボックスに、第2下部ブローボックスに供給される空気の少なくとも75%を放出するように適合された非傾斜型の開口部が設けられている。この実施形態の利点は、第1下部ブローボックスがウェブに対して固定力を与え、第2下部ブローボックスがウェブを乾燥させるのに非常に効率的である、ということである。
【0015】
一実施形態によれば、第1乾燥ゾーンの下部ブローボックスの少なくとも75%が前記第1下部ブローボックスであり、第2乾燥ゾーンの下部ブローボックスの少なくとも75%が前記第2下部ブローボックスである。この実施形態の利点は、第1乾燥ゾーンが、ウェブを安定した経路に沿って移動させるのに効率的となり、第2乾燥ゾーンがウェブを乾燥させるのに効率的となる、ということである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、セルロースパルプウェブを従来技術の方法より効率よく乾燥させる方法を提供することである。
【0017】
この目的は、セルロースパルプのウェブを、浮揚ウェブの原理に従ってパルプを乾燥させるブローボックスによってセルロースパルプのウェブに向かって空気を吹き付けることによって乾燥させる方法において、ウェブを、ウェブを支持する第1下部ブローボックスを備える第1乾燥ゾーンを通して前進させるステップと、その後、ウェブを、ウェブを支持する第2下部ブローボックスを備える第2乾燥ゾーンを通して前進させるステップであって、第2下部ブローボックスが第1下部ブローボックスとは異なる、ステップとを含む方法によって達成される。
【0018】
この方法の利点は、乾燥を、より効率的にすることができ、ウェブが前進する際の経路に沿ったさまざまな位置において、ウェブの異なる機械的強度に適合させることができる、ということである。
【0019】
一実施形態によれば、ウェブと第2下部ブローボックスとの間の平均距離は、ウェブと第1下部ブローボックスとの間の平均距離より大きい。この実施形態の利点は、平均距離が大きくなることにより伝熱が促進されるということである。
【0020】
一実施形態によれば、第1下部ブローボックスに供給される総空気流量の少なくとも30%が、それらの第1下部ブローボックスのそれぞれの上面に対して60°未満の角度で、第1下部ブローボックスから吹き出され、第2下部ブローボックスに供給される総空気流量の少なくとも75%が、それらの第2下部ブローボックスのそれぞれの上面に対して少なくとも75°の角度で、第2下部ブローボックスから吹き出される。この実施形態の利点は、第1乾燥ゾーンにおいてウェブの効率的な固定が得られ、第2乾燥ゾーンにおいて効率的な伝熱が得られる、ということである。
【0021】
一実施形態によれば、ウェブは、第1下部ブローボックスの上方0.2mm〜3mmの平均距離で、かつ第2下部ブローボックスの上方4mm〜15mmの平均距離で前進する。この実施形態の利点は、第1下部ブローボックスによるウェブの効率的な安定化、および第2下部ブローボックスのウェブに対する効率的な伝熱である。
【0022】
本発明のさらなる目的および特徴は、本明細書および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
ここで、添付図面を参照して本発明についてより詳細に説明する。
【0024】
図1図1は、概略側面図であり、セルロースパルプのウェブを乾燥させる乾燥ボックスを示す。
図2図2は、概略側面図であり、図1の領域IIを示す。
図3図3は、概略上面図および断面図を示し、図2の矢印III−IIIの方向で見た第1下部ブローボックスを示す。
図4図4は、概略側面図であり、図1の領域IVを示す。
図5図5は、概略上面図であり、図4の矢印V−Vの方向で見た第2下部ブローボックスを示す。
図6図6は、略図であり、垂直方向においてパルプウェブに対して第1下部ブローボックスおよび第2下部ブローボックスによって与えられる力を示す。
図7図7は、略図であり、第1下部ブローボックスおよび第2下部ブローボックスの伝熱を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態によるセルロースパルプを乾燥させる乾燥ボックス1を示す。乾燥ボックス1は、ハウジング2を備えている。ハウジング2の内側には、第1乾燥ゾーン4、第2乾燥ゾーン6および任意選択的な冷却ゾーン8が配置されており、第1乾燥ゾーン4はハウジング2の上方領域に配置され、冷却ゾーン8はハウジング2の下方領域に配置され、第2乾燥ゾーン6は、第1乾燥ゾーン4と冷却ゾーン8との間に配置されている。
【0026】
ハウジング2の第1端部10には、回転ロール12の第1列が配置されており、ハウジング2の第2端部14には、回転ロール16の第2列が配置されている。湿潤したパルプウェブ18が、ハウジング2に配置された入口20を介して乾燥ボックス1に入る。図1の実施形態では、入口20は、ハウジング2の上方部分に配置されているが、代替実施形態では、入口を、ハウジングの下方部分に配置することができる。ウェブ18は、乾燥ボックス1内を水平方向に、図1に示すように右に向かって、回転ロールに達するまで前進する。図1に示す乾燥ボックス1では、ウェブ18は、まず回転ロールの第2列の回転ロール18に達する。ウェブ18は、回転ロール16の周囲で方向転換し、その後、図1に示すように、乾燥ボックス1内を水平方向に左に向かって、回転ロールの第1列の回転ロール12に達するまで移動し、回転ロール12で再度方向転換する。このように、ウェブ18は、矢印Pによって示すように、乾燥ボックス1の頂部から底部までジグザグに移動する。ウェブ18は、第1乾燥ゾーン4および第2乾燥ゾーン6において乾燥し、冷却ゾーン8において冷却された後、ハウジング2に配置された出口22を介して乾燥ボックス1から出る。図1の実施形態では、出口22は、ハウジング2の下方部分に配置されているが、代替実施形態では、出口をハウジングの上方部分に配置することができる。
【0027】
通常、乾燥プロセスに対して、80℃〜250℃の温度の空気が利用される。図1には示さない上流ウェブ形成ステーションから乾燥ボックス1に入るセルロースパルプのウェブ18は、通常、乾燥固形分含有量が40重量%〜60重量%であり、乾燥ボックス1から出るセルロースパルスのウェブ18は、通常、乾燥固形分含有量が85重量%〜95重量%である。乾燥ボックス1から出るセルロースパルプのウェブ18は、通常、乾燥物質1kgにつき0.11kgの水の含水量で測定した場合、坪量が800g/m〜1500g/mであり、厚さが0.8mm〜3mmである。
【0028】
第1乾燥ゾーン4は、少なくとも1つの第1乾燥デッキ24、概して3個〜15個の第1乾燥デッキ24を備えている。図1の実施形態では、第1乾燥ゾーン4は、8個の第1乾燥デッキ24を備えている。こうした第1乾燥デッキ24の各々は、後により詳細に説明するように複数のブローボックスを備え、ウェブ18が1つの回転ロール12、16から次の回転ロール16、12まで水平に移動する間に、ウェブ18を乾燥させるように動作可能である。各第1乾燥デッキ24は、セルロースパルプウェブ18に向かって高温乾燥ガスを吹き付けるように配置されている、複数の第1下部ブローボックス26および複数の第1上部フローボックス28を備えている。通常、各第1乾燥デッキ24は、20個〜300個の第1下部ブローボックス26および同じ数の第1上部ブローボックス28を備えているが、図1では、例示の明確さを維持するために、数個のブローボックスしか図示していない。後により詳細に説明するように、第1下部ブローボックス26は、ウェブ18を「浮遊する」かつ「固定」状態で維持するように動作可能であり、それにより、ウェブ18は、乾燥プロセス中に第1下部ブローボックス26から距離をおいて浮揚する。
【0029】
第2乾燥ゾーン6は、少なくとも1つの第2乾燥デッキ30、概して5個〜40個の第2乾燥デッキ30を備えている。図1の実施形態では、第2乾燥ゾーン6は、11個の第2乾燥デッキ30を備えている。こうした第2乾燥デッキ30の各々は、後により詳細に説明するように、複数のブローボックスを備えており、ウェブ18が1つの回転ロール12、16から次の回転ロール16、12まで水平に移動する間にウェブ18を乾燥させるように動作可能である。各第2の乾燥デッキ30は、セルロースパルプウェブ18に向かって高温乾燥ガスを突き付けるように配置されている、複数の第2下部ブローボックス32および複数の第2上部ブローボックス34を備えている。通常、各第2乾燥デッキ30は、20個〜300個の第2下部ブローボックス32および同じ数の第2上部ブローボックス34を備えているが、図1では、例示の明確さを維持するために、数個のブローボックスしか図示していない。後により詳細に説明するように、第2下部ブローボックス32は、ウェブ18を「浮遊する」状態で維持するように動作可能であり、それにより、ウェブ18は、乾燥プロセス中に第2下部ブローボックス32から距離をおいて浮揚する。
【0030】
第1乾燥ゾーン4の第1乾燥デッキ24は、後により詳細に説明するように、機械的設計が第2乾燥ゾーン6の第2乾燥デッキ30とは異なっている。多くの場合、後に例を用いて説明するように、第1乾燥デッキ24の第1下部ブローボックス26は、第2乾燥デッキ30の第2下部ブローボックス32とは機械的設計が異なっている。各乾燥ゾーン4、6は、概して、少なくとも4個の連続したそれぞれのブローボックス26、32を備えている。従って、たとえば、第1乾燥ゾーン4は、概して、少なくとも4個の連続した第1下部ブローボックス26を備え、第2乾燥ゾーン6は、概して、少なくとも4個の連続した第2下部ブローボックス32を備えている。概して、各乾燥ゾーン4、6は、それぞれの乾燥デッキ24、30に含まれるブローボックス26、28、32、34を含む少なくとも1つの完全な乾燥デッキ24、30を備えている。
【0031】
冷却ゾーン8は、少なくとも1つの冷却デッキ36を備えており、図1には2つのこうした冷却デッキ36が図示されており、こうしたデッキ36の各々は、セルロースパルプウェブ18に向かって冷却ガスを吹き付けるように配置されている、複数の第3下部ブローボックス38および第3上部ブローボックス40を備えている。下部ブローボックス38は、ウェブ18を「浮遊する」状態で維持するように動作可能であり、それにより、ウェブ18は、冷却プロセス中に浮揚する。通常、冷却プロセスに対する冷却ガスとして、15℃〜40℃の温度の空気が利用される。隔離壁42が、冷却ゾーン8から第2乾燥ゾーン6を分離する。
【0032】
図2は、図1の領域IIの拡大側面図であり、図1に示す第1乾燥ゾーン4の第1乾燥デッキ24の一部を示す。第1乾燥デッキ24は、ウェブ18の下方に配置された第1下部ブローボックス26と、ウェブ18の上方に配置された第1上部ブローボックス28とを備えている。第1乾燥デッキ24は、図2に示すように、少なくとも4個の連続した第1下部ブローボックス26を備えることができる。従って、図1に示す第1乾燥ゾーン4は、少なくとも4個の連続した第1下部ブローボックス26を備えることができる。第1下部ブローボックス26は、ウェブ18に向かって垂直方向上方に(図2に矢印VUによって示す)、かつ図2の矢印IUによって示すように、水平面に対して概して5°〜60°の角度で傾斜して、ウェブ18に向かって高温乾燥空気を吹き付ける。第1下部ブローボックス26として使用することができるブローボックスの例は、国際公開第97/16594号パンフレットに記載されており、たとえばその文献の図2および図3を参照されたい。本出願の図2に戻ると、第1下部ブローボックス26によって水平面に対して傾斜角で乾燥空気を吹き付けることにより、ウェブ18をブローボックス26から離れる方向に押し上げる力と、ウェブ18をブローボックス26に向かって押し下げる力とがともにもたらされる。これにより、ブローボックス26がウェブ18に固定力を与えることになり、ウェブはブローボックス26から同等に明確に定義された距離に保持される。概して、ウェブ18の下側と第1下部ブローボックス26の上面との間の平均距離、すなわち高さH1は、乾燥ボックス1の動作中、0.2mm〜3mmである。ウェブ18が上方に移動する傾向にある場合、ブローボックス26の固定力は、ウェブ18を下方に引きずり、ウェブ18が下方に移動する傾向にある場合、ブローボックス26によって吹き出される空気により、ウェブ18は上方に押し上げられる。従って、ウェブ18は、第1乾燥デッキ24に沿って水平方向に、比較的固定されて、垂直方向にはほとんど移動なしに搬送され、それは、ウェブ18が受ける伸縮力が限られていることを意味する。第1タイプの上部ブローボックス28は、ウェブ18に向かって垂直方向下方にウェブ18に向かって高温乾燥空気を吹き付ける(図2の矢印VDによって示、)。概して、ウェブ18の上側と第1上部ブローボックス28の下面との間の平均距離、すなわち高さH2は、10mm〜80mmである。ブローボックス26、28によって吹き出される高温乾燥空気は、水平に隣接するブローボックス26、28の間に形成された間隙Sを介して排気される。多くの場合、図1に示す第1乾燥ゾーン4は、図2に示すように配置された少なくとも4個の連続した第1下部ブローボックス26を備えている。さらに、図1に示す第1乾燥ゾーン4は、図2に示すように配置された少なくとも4個の連続した第1上部ブローボックス28を備えていることが多い。
【0033】
図3は、概略上面図であり、図2の矢印III−IIIの方向で見た第1下部ブローボックス26を示す。矢印Pは、図3には示さないウェブが第1下部ブローボックス26の上面44の上を通過する際の意図された経路を示す。上面44は、中心に配置された第1タイプの開口部46を備え、それらは、「まぶた状孔(eyelid perforation)」と呼ばれることがあるタイプの「傾斜型」開口部である。「傾斜型」開口部とは、図3の断面B−Bにもっともよく示すように、それらの開口部46から吹き出される空気の少なくとも25%が、第1下部ブローボックス26の上面44に対して60°未満の角度αで吹き付けられることを意味する。第1下部ブローボックス26では、そこに供給される空気の総流量の少なくとも30%、多くの場合は少なくとも40%が、たとえばまぶた状孔46を介して、「傾斜型」の開口部から吹き出される。まぶた状孔46を介して吹き出される空気の流れの一部を、図3の断面B−Bに矢印Uによって示すように、60°より大きい角度で吹き出すことができる。下部ブローボックス26に供給される総空気流量のうち、少なくとも30%が、第1下部ブローボックス26の上面44に対して60°未満の角度αで吹き出される。
【0034】
国際公開第97/16594号パンフレットにおいて「まぶた状孔6」と呼ばれている開口部と同様の設計とすることができ、かつ国際公開第97/16594号パンフレットの図2および図3を参照して記載されているまぶた状孔46は、そこを通って吹き出される高温乾燥空気に傾斜を与え、それにより、本出願の図2に示す傾斜流IUが発生する。本出願の図3から分かるように、孔46は、面44の上に交互に配置されており、それにより、すべての第2流IUが図3に示すように左に向けられ、すべての第2流IUが右に向けられる。
【0035】
本出願の図3の説明を続けると、上面44に、ブローボックス26の側面50、52に近接して配置されている第2タイプの開口部48が設けられている。第2タイプの開口部48は、上面44にわたって分散されている「非傾斜型」である。「非傾斜型」とは、それらの開口部48から吹き出される空気の少なくとも80%が、上面44に対して少なくとも70°である角度で吹き出されることを意味する。概して、空気の略流れ全体が、非傾斜型の開口部48から上面44に対して垂直に、すなわち90°に近い角度で吹き出される。開口部48は、直径が概して1mm〜10mmの円形の穴であり得る。第2タイプの開口部48は、高温乾燥空気を、図3の例示では読者に向かって垂直方向上方に向けられている流れVUを形成するように、上方に吹き出す。
【0036】
第1タイプの開口部46の数およびサイズと、第2タイプの開口部48の数およびサイズとを変更することにより、第1タイプの開口部46と第2タイプの開口部48との間の好適な圧力降下関係を達成することができ、それにより、第1下部ブローボックス26に吹き付けられる空気の総流量のたとえば65%が、第1タイプの開口部46を介して放出され、第1下部ブローボックス26に吹き付けられる空気の総流量の35%が、第2タイプの開口部48を介して放出される。
【0037】
上面44の代表部分の開口部46、48の総開口面積を、上面44の代表部分の水平投影面積で割ることにより、ブローボックス26の穿孔度を計算することができる。「代表部分」とは、ウェブに向かう空気の吹付けに関して代表的である、すなわち、たとえばブローボックスの空気入口部分を無視する、上面44の部分を意味する。穿孔度は、たとえば1.5%であり得る。穿孔度を、乾燥させるウェブ18の重量、乾燥度等に適合するように変更することができる。多くの場合、第1下部ブローボックス26の穿孔度は0.5%〜3.0%である。
【0038】
図4は、図1の領域IVの拡大側面図であり、図1に示す第2乾燥ゾーン6の第2乾燥デッキ30の部分を示す。第2乾燥デッキ30は、ウェブ18の下方に配置された第2下部ブローボックス32と、ウェブ18の上方に配置された第2上部ブローボックス34とを備えている。第2乾燥デッキ30は、図4に示すように、少なくとも4個の連続した第2下部ブローボックス32を備えることができる。従って、図1に示す第2乾燥ゾーン6は、少なくとも4個の連続した第2下部ブローボックス32を備えることができる。第2下部ブローボックス32は、ウェブ18に向かって垂直方向上方に、ウェブ18に向かって高温乾燥空気を吹き付ける(図4に矢印VUによって示す)。第2乾燥デッキ30の第2下部ブローボックス32は、ウェブ18に対して、図2および図3に示す第1乾燥デッキ24の第1下部ブローボックス26に比較して低い固定力を与える。第2下部ブローボックス32によってウェブ18に与えられる固定力は、通常は幾分低く、またはさらには存在しない。図4に戻ると、第2下部ブローボックス32から供給される高温乾燥空気は、ウェブ18の重量が、第2下部ブローボックス32によって供給される高温乾燥空気の揚力と平衡する高さまで、ウェブを持ち上げる。概して、ウェブ18の下側と第2下部ブローボックス32の上面との間の平均距離、すなわち高さH3は4mm〜15mmである。第2下部ブローボックス32によってウェブ18に与えられる固定力が制限されているかまたはさらには存在しないため、ウェブ18の垂直位置は、乾燥ボックス1の動作中、第2乾燥デッキ30を通過している時、第1乾燥デッキ24を通過している時に比較して、幾分かより変動する傾向がある。従って、ウェブ18は、第2乾燥デッキ30に沿って水平方向に比較的自由に、垂直方向に幾分か移動して搬送され、それは、ウェブ18が幾分か伸縮力を受けることを意味する。第2タイプの上部ブローボックス34は、ウェブ18に向かって垂直方向下方に、ウェブ18に向かって高温乾燥空気を吹き付ける(図4において矢印VDによって示す)。概して、ウェブ18の上側と第2上部ブローボックス34の下面との間の平均距離、すなわち高さH4は、5mm〜80mmである。ブローボックス32、34によって吹き付けられる高温乾燥空気は、水平方向に隣接するブローボックス32、34の間に形成された間隙Sを介して排気される。多くの場合、図1に示す第2乾燥ゾーン6は、図4に示すように配置された、少なくとも4個の連続した第2下部ブローボックス32を備えている。さらに、図1に示す第2乾燥ゾーン6は、多くの場合、図4に示すように配置された少なくとも4個の連続的な第2上部ブローボックス34を備えている。
【0039】
図5は、概略上面図であり、図4の矢印V−Vの方向に見た第2下部ブローボックス32を示す。矢印Pは、図5に示さないウェブが、第2下部ブローボックス32の上面54の上を通過する際の意図された経路を示す。上面54は、ブローボックス32の側面56、58の間に延在し、上面54の上に分散されている「非傾斜型」の開口部60を備えている。「非傾斜型」とは、先の定義に従って、それらの開口部60から吹き出される空気の少なくとも80%が、上面54に対して少なくとも70°である角度で吹き出されることを意味する。概して、空気の略全流量が、非傾斜型の開口部60から上面54に対して略垂直に、すなわち90°に近い角度で吹き出される。第2下部ブローボックス32では、そこに供給される空気の総流量の少なくとも75%が、非傾斜型の開口部から吹き出される。図5に示す実施形態では、第2下部ブローボックス32に供給される空気の総流量の100%が、非傾斜型の開口部60から吹き出される。開口部60を、面54にわたって均一に分散させることができるが、不均一に分散させることも可能である。図5から分かるように、開口部60の密度(上面54の1平方センチメートル当たりの開口部)は、側面56、58に隣接するほど幾分か高い。ブローボックス32の開口部60は、直径が概して1mm〜10mmである円形穴であり得る。開口部60は、高温乾燥空気を、図5の図において読者に向かって垂直方向上方に向けられている流れVUを形成するように垂直方向上方に吹き出す。
【0040】
開口部60の総面積を上面54の総面積で割った値を意味する穿孔度は、たとえば1.5%であり得る。穿孔度を、乾燥させるウェブ18の重量、乾燥度等に適合するように変更することができる。多くの場合、第2下部ブローボックス32の穿孔度は0.5%〜3.0%である。
【0041】
図2に示す第1乾燥デッキ24の第1上部ブローボックス28および図4に示す第2乾燥デッキ30の第2上部ブローボックス34は、図5において破線矢印によって示すように、概して、図5に示す第2下部ボックス32と同じ概略設計であり得る。従って、第1上部ブローボックス28および第2上部ブローボックス34に、概して、直径が1mm〜10mmである円形穴であり得る開口部を設けることができる。
【0042】
さらに、冷却ゾーン8の第3下部ブローボックス38および第3上部ブローボックス40もまた、破線によって示すように、図5に示す第2下部ブローボックス32と同様の設計であり得る。代替実施形態によれば、第3下部ブローボックス38は、破線によって示すように、図3に示す第1下部ブローボックス26と同様の設計であり得る。
【0043】
上述した平均距離H1、H2、H3、H4はすべて、それぞれのブローボックス26、28、32、34の面44、54とウェブ18との間の最短距離を指す。
【0044】
図6は、略図であり、第1乾燥デッキ24の第1下部ブローボックス26により、かつ第2乾燥デッキ30の第2下部ブローボックス32により、垂直方向にウェブ18に与えられた力の例を概略的に示す。ウェブ18の下側とそれぞれのブローボックス26、32の上面44、54との間の、図2および図4に示す平均距離、すなわち高さH1およびH3は、ウェブ18の坪量とそれぞれのブローボックス26、32によってウェブ18に与えられる揚力との間の平衡によって決まる。揚力は、ウェブ18の下側とそれぞれのブローボックス26、32の上面44、54との間の平均距離によって決まる。揚力がウェブの坪量に等しいその平均距離では、ブローボックス26、32によって吹き出される空気によって発生する揚力によってウェブが支持され、ウェブが安定して「浮遊」する。従って、安定して「浮遊している」ウェブ18の下側と、それぞれのブローボックス26、32の上面44、54との間の平均距離は、ウェブの坪量によって変化する。
【0045】
一方で坪量と、他方でウェブ18の下側とそれぞれのブローボックス26、32の上面44、54との間の平均距離、すなわち高さH1およびH3との関係を、さまざまな乾燥固形分含有量を有することができるモデルウェブを見ることによって示すことができる。モデルウェブは、100重量%の乾燥固形分含有量で1.0の相対坪量を有している。ウェブは、乾燥機に入る時、50重量%の乾燥固形分含有量しか有しておらず、それは乾燥機に入る時のモデルウェブの相対坪量が、ウェブが乾燥固形分含有量に加えて水も含むため、2.0であることを意味する。従って、水が多いほど、モデルウェブの相対坪量が大きくなる。1.0の相対揚力は、100重量%の乾燥固形分含有量での1.0の相対坪量でのモデルウェブを、第1下部ブローボックス26および第2下部ブローボックス32それぞれの上方に安定して浮遊させたままにするために必要である揚力として定義される。
【0046】
図6において、Y軸は相対揚力を示し、X軸は、ウェブ18の下側とそれぞれのブローボックス26、32の上面44、54との間のそれぞれの平均距離、すなわち高さH1およびH3を示す。曲線「26」は、第1下部ブローボックス26に対する相対揚力と平均距離H1との間の関係を示し、曲線「32」は、第2下部ブローボックス32に対する相対揚力と平均距離H3との関係を示す。相対揚力の定義に戻ると、曲線「26」から、1.0の相対揚力が約1.3mmの平均距離H1に対応することが分かる。従って、100重量%の乾燥固形分含有量で1.0の相対坪量を有する上述したモデルウェブは、1.0の相対揚力に晒される場合、第1下部ブローボックス26の上方1.3mmの平均距離H1で、安定して浮遊する。50%重量%の乾燥固形分含有量では、モデルウェブは2.0の相対坪量を有する。こうしたウェブを安定して「浮遊」させるためには、2.0の相対揚力が必要である。再び曲線「26」を見ると、約0.8mmの平均距離H1が、2.0の相対揚力に対応することが分かる。
【0047】
概して、ブローボックス26、32によって供給される、水平ウェブ面積の1平方メートルおよび時間の単位当たりの空気の流量は、500m/(m,h)〜2000m/(m,h)に対応する。この流量は、実際にウェブ18に向けて送られる流量である。ブローボックスの間に形成される間隙Sがウェブ面積の計算に含まれており、それは、間隙Sを無視すると、各ブローボックスの面からの流量が概して10%〜25%高くなることを意味する。
【0048】
一例によれば、モデルウェブは、第1乾燥ゾーン4を通過する時、概して、2.0の相対坪量に対応する最初の50重量%から、ウェブ18から湿気が蒸発している効果としての第1乾燥ゾーン4の終端部における、1.4の相対坪量に対応する約70重量%まで、乾燥固形分含有量が増大する。図6の第1下部ブローボックス26に対する曲線「26」を見ると、2.0の相対揚力は約0.8mmの高さH1に対応することが明らかである。従って、モデルウェブ18と、第1乾燥ゾーン4の開始部に隣接する第1下部ブローボックス26との間の平衡距離H1は約0.8mmであり、それは、こうした距離H1において、ウェブ18の相対坪量が下部ブローボックス26の相対揚力と平衡するためである。ウェブ18が、第1下部ブローボックス26からたとえば2mmの距離H1まで一時的に移動する場合、第1下部ブローボックス26は、負の相対揚力、すなわち約−0.5の相対固定力を与え、それによりウェブ18が下方に引きずられる。ウェブ18が、第1下部ブローボックス26に向かってたとえば0.5mmの距離H1まで下方に一時的に移動する場合、第1下部ブローボックス26は約3.5の正の相対揚力を与え、それによりウェブ18が押し上げられる。従って、ウェブ18は、平衡距離H1で固定され、その平衡距離から容易には移動することができず、それは、揚力または固定力がウェブを平衡距離に戻すためである。第1乾燥ゾーン4の終端部において、1.4の相対坪量が1.4の相対揚力によって平衡がとられる平衡距離H1は、約1.1mmである。
【0049】
さらに、上記例を続けると、ウェブ18は、第2乾燥ゾーン6を通過している時、概して、乾燥固形分含有量が、1.4の相対坪量に対応する最初の70重量%から、ウェブ18から湿気が蒸発している効果として第2乾燥ゾーン6の終端部における、1.1の相対坪量に対応する約90重量%まで増大する。図6の第2下部ブローボックス32に対する曲線「32」を見ると、1.4の相対坪量と平衡する1.4の相対揚力が約4.5mmの高さH3に対応することが明らかである。従って、ウェブ18と第2乾燥ゾーン6の開始部に隣接する第2下部ブローボックス32との間の平衡距離H3は約4.5mmである。ウェブ18が、概して、第2下部ブローボックス32から上方にかつ離れる方向に、たとえば6.5mmの距離H3まで一時的に移動する場合、相対揚力が約1.0までわずかに低減するのみであり、それは、相対坪量に対応する十分な相対揚力に達するまで、ウェブ18が下方に下降することを意味する。ウェブ18が、第2下部ブローボックス32に向かって、たとえば3mmの距離H3まで一時的に下方に移動する場合、第2下部ブローボックス32が、約2.5に対応する正の相対揚力を与え、それによりウェブ18が押し上げられる。従って、ウェブ18は、平衡距離H3で「浮遊する」が、平衡距離からのわずかな変動により、幾分か適度な力がウェブ18をその平衡距離H3まで戻す結果となる。第2乾燥ゾーン6の終端部において、1.1の相対坪量が1.1の相対揚力によって平衡がとられる平衡距離H3は約6.0mmである。
【0050】
図7は、略図であり、それぞれ、ウェブ18と第1乾燥デッキ24の第1下部ブローボックス26との間の、かつ第2乾燥デッキ30の第2下部ブローボックス32による、相対伝熱を示す。水平軸すなわちX軸において、ウェブ18の下側とそれぞれのブローボックス26、32の上面44、54との間のそれぞれの平均距離、すなわちH1およびH3が示されている。垂直軸、すなわちY軸において、それぞれのブローボックス26、32からウェブ18までの相対伝熱が示されている。相対伝熱は、第2下部ブローボックス32の5mmの平均高さH3において1.0であり、他のすべての相対伝熱値は、その伝熱に関連して計算される。
【0051】
図6と関連して与えられる例を続けると、ウェブ18と第1乾燥ゾーン4の第1下部ブローボックス26との間の平衡距離H1は、そのゾーン4の開始部において約0.8mmであり、そのゾーン4の終端部において約1.1mmであったことを想起することができる。図7の第1下部ブローボックス26に対する曲線「26」を見ると、約0.63の相対伝熱が0.8mm〜1.1mmの高さH1に対応することが明らかである。さらに、図6と関連して与えられる例から、ウェブ18と第2乾燥ゾーン6の第2下部ブローボックス32との間の平衡距離H3が、そのゾーン6の開始部において約4.5mmであり、そのゾーン6の終端部において約6.0mmであったことを想起することができる。図7の第2下部ブローボックス32に対する曲線「32」を見ると、約0.98の相対伝熱が、第2乾燥ゾーン6の開始部における典型的な状態である約4.5mmの高さH3に対応することと、約1.01の相対伝熱が、第2乾燥ゾーン6の終端部における典型的な状態である約6.0mmの高さH3に対応することとが明らかである。
【0052】
図7および上記例から、第2乾燥ゾーン6の伝熱が、第1乾燥ゾーン4の伝熱より著しく高いことが明らかである。いかなる理論によっても束縛されることなく、第2乾燥ゾーン6の伝熱の方が優れていることは、ウェブ18とそれぞれのブローボックス26、32との間の距離が長いほど(少なくとも最大約10mmの距離)伝熱に有利であるという事実と、従って、高温の乾燥空気が主に垂直方向VUにウェブ18に向かって上方に吹き付けられている第2下部ブローボックス32が、高温乾燥空気の幾分かを傾斜して吹き付けている第1下部ブローボックス26より効率的であるように見えるという事実との両方によるかのように見える。一方、第1乾燥ゾーン4は、ウェブ18の前進のより安定した制御を可能にし、それにより、ウェブ18に対して加えられる伸縮力が小さくなる。ウェブ18の引張強さは、含水量が低減するほど増大する傾向がある。従って、ウェブ18は、図1に示す乾燥ボックスの入口20に隣接して比較的弱く、乾燥ボックス1の出口22に隣接して比較的強い。第1乾燥ゾーン4では、従って、ウェブは、低伸縮状態下で、ウェブの極めて安定した経路で、ウェブがたとえば約55%〜80%の乾燥固形分含有量まで乾燥するまで乾燥する。そして、ウェブ18は、より高い引張強度を得て、第2乾燥ゾーン6において、増大した伸縮状態であるが、また、乾燥を効率的にする非常に高い伝熱により乾燥する。
【0053】
上で、図1を参照して、乾燥ボックス1が第1乾燥ゾーン4、第2乾燥ゾーン6および冷却ゾーン8を備えていると述べた。多くの代替実施形態があり得ることが理解されよう。たとえば、冷却が必要でない場合に、第1乾燥ゾーン4および第2乾燥ゾーン6があるが冷却ゾーンのない乾燥ボックスを設計することも可能である。
【0054】
上述したように、冷却ゾーン8の第3下部ブローボックス38は、図3に示す第1下部ブローボックス26と同じ概略設計か、または図5に示す第2下部ブローボックス32と同じ概略設計であり得る。
【0055】
図5に示すような第2下部ブローボックス32と同じ概略設計である第3下部ブローボックス38を利用することには、伝熱が、図7と関連して例示し説明した第2下部ブローボックス32に対して例示した伝熱と同様に高くなるという利点がある。従って、冷却ゾーン8における冷却は非常に効率的になる。
【0056】
図3に示すような第1下部ブローボックス26と同じ概略設計である第3下部ブローボックス38を利用することには、出口22を介して乾燥ボックス1から出るウェブ18が、垂直移動がほとんどなく安定化するという利点がある。これは、乾燥ボックス1から出る乾燥したウェブ18を扱うウェブ位置制御ユニット、ウェブカッタ等、下流の機器に対して利点であり得る。
【0057】
従って、冷却ゾーン8において伝熱が最も優先される場合、第3下部ブローボックス38として、図5に開示する概略タイプの設計を利用することは好適である。一方、冷却ゾーン8においてウェブ安定性が最も優先される場合、第3下部ブローボックス38として、図3に開示する概略タイプの設計を利用することが好適である。さらなる選択肢は、効率的な冷却を得るために、図5に示す設計の下部ブローボックス38を有する1つまたは複数の冷却デッキ36を有する冷却ゾーン8を配置することであり、こうした冷却ゾーン8は、乾燥ボックス1の出口22のすぐ上流に、ウェブ18が乾燥ボックス1から出る直前に優れたウェブ安定性を得るように、図3に開示した概略タイプの設計の第3下部ブローボックス38が設けられている、最後の冷却デッキ36を有している。ウェブ安定性が最も優先されるが、乾燥ボックスに冷却ゾーンがない場合、第2乾燥ゾーンの下流に第3乾燥ゾーンを配置することができる。こうした第3乾燥ゾーンは、概して、第1乾燥ゾーン4の第1乾燥デッキ24に類似する乾燥デッキを有し、高いウェブ安定性をもたらす第1下部ブローボックス26を有している。こうした第3乾燥ゾーンは、概して、1個〜4個の乾燥デッキしか有していない。
【0058】
上述した実施形態の多数の変形形態が、添付の特許請求の範囲内であり得ることが理解されよう。
【0059】
上で、乾燥ボックス1が合計19個の乾燥デッキを有していると述べた。これらの乾燥デッキのうち、8個(乾燥デッキの総数の42%)が第1乾燥ゾーン4に属し、11個(乾燥デッキの総数の58%)が第2乾燥ゾーン6に属している。2つの乾燥ゾーン4、6を有する乾燥ボックスでは、概して、乾燥デッキの総数の10%〜70%が、第1乾燥ゾーン4に属し、それらに、図3に示すタイプの第1下部ブローボックス26が設けられ、対応して、乾燥デッキの総数の概して30%〜90%が、第2乾燥ゾーン6に属し、それらに、図5に示すタイプの第2下部ブローボックス32が設けられる。通常、第1乾燥ゾーン4は、ウェブ18が第2乾燥ゾーン6に対して十分な引張強さを得るために必要とされる程度の乾燥デッキのみを有している。第3乾燥ゾーン、さらには第4乾燥ゾーンがある場合、それらによって、通常、第2乾燥ゾーンの乾燥デッキの数が減少する。概して、第1乾燥ゾーン4は、少なくとも2個の第1乾燥デッキ24を備えている。
【0060】
上で、第1下部ブローボックス26に、国際公開第97/16594号パンフレットに開示されている「まぶた状孔」タイプの傾斜型開口部46が設けられていると述べた。傾斜型開口部46はまた別の設計でもあり得ることが理解されよう。こうした別の設計の例は、米国特許第5,471,766号明細書に開示されている。米国特許第5,471,766号明細書の図6において、上面に中心V字型溝があるブローボックスが開示されている。溝の側壁に、ブローボックスの上面に対して傾斜しているような穴が形成されている。この「溝壁孔」タイプの傾斜型開口部を、傾斜型開口部として第1下部ブローボックスに利用することができる。
【0061】
乾燥ボックスにおいてブローボックスの種々のタイプの固定タイプを利用することができることが理解されよう。従って、第1乾燥ゾーンに、図3に示すタイプの第1下部ブローボックス26を設けることができる。従って、第1乾燥ゾーンでは、比較的大きい固定力がすぐに使用可能である。第2乾燥ゾーンに、図3に示すタイプに類似しているが固定力が相対的に低い第1下部ブローボックスを設けることができる。こうした相対的に低い固定力を、たとえば第2タイプの開口部48の直径および/または数を低減して、まぶた状孔46を通過する乾燥空気を低減することにより、達成することができる。これにより、依然として許容可能であり得る相対的に低い固定力がもたらされ、それは、第1乾燥ゾーンにおいてウェブがすでに増大した引張強さを得ているためである。そして、第3乾燥ゾーンが開始し、こうした第3乾燥ゾーンは、図4および図5に示すタイプの乾燥デッキおよび第2下部ブローボックスを有している。従って、乾燥ボックス1において乾燥させる特定のウェブ18に対する固定力および伝熱に関して好適な状態を得るように、種々のタイプのブローボックスをさまざまな方法で配置することができる。従って、乾燥ボックスに、2個以上の乾燥ゾーン、通常は2個〜10個の乾燥ゾーンを設けることができる。
【0062】
図4に、各上部ブローボックス34がそれぞれの下部ブローボックス32の垂直方向上方に配置されることを示した。上部ブローボックスおよび下部ブローボックスの他の配置も利用することができることが理解されよう。こうした代替配置の一例は、いわゆる千鳥配置であり、そこでは、各上部ブローボックス34は、2つの隣接する下部ブローボックス32の間の間隙Sの上方を中心とする。
【0063】
上で、開口部48、60が円形穴であると述べた。開口部として使用するために円形穴以外の形状もまたあり得ることが理解されよう。たとえば、開口部48、60に対して、正方形、矩形、三角形、楕円形、五角形、六角形等の形状を与えることができる。
【0064】
上で、第1乾燥ゾーン4が第1下部ブローボックス26を備えており、第2乾燥ゾーン6が第2下部ブローボックス32を備えていると述べた。それぞれの乾燥ゾーンにおけるブローボックスの混合が可能であることが理解されよう。従って、第1乾燥ゾーン4は、たとえば、最大25%の第2下部ブローボックス32を備えることができ、第2乾燥ゾーン6は、最大25%の第1下部ブローボックス26を備えることができる。また、第1乾燥ゾーンおよび第2乾燥ゾーンに、他のタイプの下部ブローボックスを含めることができる。好ましくは、第1乾燥ゾーン4では、下部ブローボックスの少なくとも75%が第1下部ブローボックス26であるべきであり、第2乾燥ゾーン6では、下部ブローボックスの少なくとも75%が第2下部ブローボックス32であるべきである。一実施形態によれば、乾燥デッキは、1つのタイプのみのそれぞれの下部ブローボックスおよび上部ブローボックスを備えることができる。従って、たとえば、第1乾燥ゾーン4の第1乾燥デッキ24のうちの少なくとも1つが、第1下部ブローボックス26および第1上部ブローボックス28のみを備えることができ、第2乾燥ゾーン6の第2乾燥デッキ30のうちの少なくとも1つが、第2下部ブローボックス32および第2上部ブローボックス34のみを備えることができる。たとえば、乾燥デッキの第1部分が第1下部ブローボックス26を備え、こうした乾燥デッキの後続する第2部分が第2下部ブローボックス32を備えることも可能である。こうした場合、乾燥デッキのこうした第1部分は第1乾燥ゾーン3に属することができ、乾燥デッキのこうした後続する第2部分は第2乾燥ゾーン6に属することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7