(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
総繊度が100〜700dtex、引張強度が8.0〜11.5cN/dtex、沸水収縮率が4.0〜11.0%、下記(1)式で表される定長乾熱処理後たるみ回復率Aが0〜4.0%、かつ下記(2)式で表される引締指数Fが3.8以上であることを特徴とするポリアミド繊維。
A=[(Ta−Tb)/Ta]×100 (1)
(上記(1)式において、Taは熱処理直後たるみ量であり、Tbは熱処理後安定時たるみ量である。)
F=A+0.35×B (2)
(上記(2)式において、Aは定長乾熱処理後たるみ回復率であり、Bは沸水収縮率である。)
紡糸口金から紡出された糸条を冷延伸部および熱延伸部からなる多段延伸処理して巻き取る際に、全延伸倍率の25〜55%を150℃未満の冷延伸部で延伸し、残りの延伸を150℃以上の熱延伸部で行い、該多段延伸処理後、250〜50℃の間で段階的に温度が下がる2段階以上の段階的弛緩処理を施し、その後に巻き取ることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアミド繊維の製造方法。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド繊維は、強靭性、接着性、耐疲労性などに優れるため、各種産業資材用途、例えば、タイヤコード、搬送ベルト、伝動ベルト、ゴムホースなどのゴム補強用コード、安全ベルト、テント、組紐、縫糸およびエアバッグなどに広く用いられている。これらの産業用資材製品は、その機能を損なうことなく、繊維の量などの材料を削減する軽量化が求められている。
中でも、車両に搭載されるエアバッグは、車両の燃費向上の観点で軽量化、車内空間の確保のためのコンパクト化が望まれている。一方で、自動車事故から人体の安全を確保する装置として、高速高圧展開の際に破袋しない耐バースト性も求められる。
【0003】
近年では、運転席用や助手席用に加え、カーテンエアバッグ、サイドエアバッグ、ニーエアバッグ、リアエアバッグなどが実用化されてきており、収納箇所、容量によって要求特性も様々である。例えば、運転席用のエアバッグであれば、車両前方の視界の確保、装備される計器類を見やすくするために、コンパクトに折り畳めるエアバッグ用織物が望まれる。また、カーテンエアバッグは、車両の側面全体をカバーする必要があるため、運転席用のエアバッグに比べ、形体が大きくなったり、形状が複雑化しており、また、側面衝突後の車両横転を考慮し、展開後のバッグが膨張状態を一定時間保持することなどが求められる。さらにサイドエアバッグやニーエアバッグなど、収納部と乗員が接近しており、バッグ作動距離が制約を受ける場合は、より短時間にてエアバッグを展開しなければならない。したがって、軽量化、コンパクト化しながら高速展開し耐バースト性を向上維持することがいっそう求められている。
【0004】
下記特許文献1および特許文献2には、少なくとも95モル%がヘキサメチレンアジパミド単位からなり、硫酸相対粘度が3.0以上で、一定の繊維構造特性を有するポリヘキサメチレンアジパミド繊維を得る技術が開示されている。この繊維は強度が11.0g/d以上、伸度が16%以上、沸騰水収縮率が4%以下である、いわゆる高強度ナイロン66繊維であるが、このようなナイロン66繊維は機械的特性には優れるものの、製織工程における収率やエアバッグとして用いる際の耐バースト性については、なお課題が残るものであった。
【0005】
下記特許文献3には、収納性、低衝撃性、高速展開性に優れるサイドエアバッグ用織物を得る技術が開示されている。しかし、この技術に用いられている繊維は、絶対的に繊度が低く、収納性、低衝撃性、高速展開性には優れるものの、機械的強度が不足している。また、ポリエステルであることから、ポリアミドと比較し熱容量が小さく、このことは展開ガスが高温に達するエアバッグ展開において課題を残すものであった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリアミド繊維を構成するポリマーとしては、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・10、ポリアミド6・12、ポリアミド4・6、それらの共重合体およびそれらの混合物からなるポリマーが挙げられる。これらの中でもポリアミド6・6ポリマーが好ましく、ポリアミド6・6繊維は、主としてポリヘキサメチレンアジパミド繊維からなる。ポリヘキサメチレンアジパミド繊維とは100%のヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とから構成される融点が250℃以上のポリアミド繊維を指すが、本発明のポリアミド6・6繊維は融点が250℃未満とならない範囲で、ポリヘキサメチレンアジパミドにポリアミド6、ポリアミド6・I、ポリアミド6・10、ポリアミド6・Tなどを共重合、あるいはブレンドしてもよい。なお、かかる繊維には、原糸の製造工程や加工工程での生産性あるいは特性改善のために通常使用される各種添加剤を含んでいても良い。例えば熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、増粘剤、顔料、難燃剤などを含有せしめることができる。
【0013】
本発明のポリアミド繊維の総繊度は100〜700dtexの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは150〜600dtex、より好ましくは200〜470dtex、特に好ましくは210〜360dtexの範囲である。100dtex以上で大きいほど機械的強度が充分となり、700dtex以下で小さいほど収納性に優れる。
【0014】
単糸繊度としては1〜7dtexの範囲が好ましく、さらに好ましくは1.5〜6.0dtex、より好ましくは2.5〜5.7dtex、特に好ましくは3.3〜4.9dtexの範囲である。単糸繊度が1dtex以上であれば糸の生産性に問題が生じ難くなり、また製織性に適したものとなる。7dtex以下で小さいほど得られる織物が柔らかく、コンパクトに折畳めて収納性が向上するし、織物の平坦性が良くなって高速展開に有利なエアバッグとなる。エアバッグを展開する際のような高差圧下においても低通気性が得やすくなる。
【0015】
引張強度は8.0〜11.5cN/dtexの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは8.5〜11.5cN/dtex、より好ましくは9.5〜11.5cN/dtex、特に好ましくは9.8〜11.5cN/dtexの範囲である。強度が8.0cN/dtex以上で大きければ、本発明の意図した機械的特性が得られ、産業資材用繊維として十分であり、また、11.5cN/dtex以下の強度であれば、繊維品位に優れ、例えば毛羽の発生頻度も少なく、紡糸収率の低下を招いたり、後加工における製織トラブルの原因にならない。
引張り試験における中間伸度は12.5%未満が好ましい。より好ましくは12.0%以下であり、最も好ましくは11.5%以下である。中間伸度は12.5%未満であれば小さいほど、後述の定長乾熱処理後のたるみ回復率を高めるのに寄与する。一方、中間伸度は耐熱試験後の機械物性を保持しやすくするため8.0%以上が好ましい。
【0016】
本発明のポリアミド繊維は、製織し産業資材用途、特にエアバッグ用織物に好ましく用いられる。エアバッグ用織物としては、機械的特性および低通気性という面から、織密度を高くした高密度織物が多く用いられている。ここで、高密度織物とは、カバーファクターが1500以上のものを指す。本発明のエアバッグ用織物のカバーファクターは、低通気性の観点から、1500〜2500の範囲が好ましく、さらに好ましくは1550〜2225、より好ましくは1600〜2180、特に好ましくは1700〜2100の範囲である。カバーファクターが1500以上であれば織物の引張強度や引裂強度は充分であり、目開きし難い織物となる。またカバーファクターが2500以下であれば、織物の剛性が高くなりすぎず、折り畳み性を悪化することもなく、収納性を損なうことがない。ここでカバーファクターとは、経糸総繊度をD1(dtex)、経糸密度をN1(本/2.54cm)、緯糸総繊度をD2(dtex)、緯糸密度をN2(本/2.54cm)とすると、[√(D1)×(N1)+√(D2)×(N2)]で表される。
【0017】
また、エアバッグ用織物から得られたエアバッグの展開時に十分な抗目開き性を有するためには、織糸の特性として、適切な熱挙動を示す必要がある。製織後の熱処理時の織糸の挙動がバッグの通気度や目開きに影響してくるためである。織物は、熱処理後に冷却とともにたるみを生ずる。その後、たるみは一部回復するような挙動をする。これは、織糸の挙動を反映したものである。しかし、繊維の熱収縮率の代表値である沸水収縮率のみでは製織後の熱処理による織物の織糸状態を表すことができず、定長乾熱処理後のたるみ回復率を考慮する必要がある。ここで、定長乾熱処理後のたるみ回復率(A)とは、繊維の定長かせ巻き乾熱処理後のたるみ状態からたるみが回復収縮する変化率をいう。すなわち、下記式(1)で表される。
A(%)=[(Ta−Tb)/Ta]×100 (1)
上記(1)式において、Taは熱処理直後たるみ量であり、Tbは熱処理後安定時たるみ量である。
【0018】
定長乾熱処理後のたるみ回復率は0.1〜4.0%であることが好ましい。さらに好ましくは0.3〜3.5%である。たるみ回復率が4.0%以下であれば、織物の乾熱処理後の寸法変化率が少ない。また、熱経時後の繊維高分子構造が安定していて強伸度物性の変化が少ない。たるみ回復率が0.1%以上であれば、熱処理後織り糸が引き締まり、織り目開きを抑制する要因となることができる。たるみ回復率が0%とは、たるみ回復が起こらず、たるんだままの状態を意味する。たるみ回復率は、延伸条件の冷延伸および熱延伸間の比率によって、制御することができる。冷延伸段階を55%以下に抑えることで、熱延伸段階で充分に高分子構造を発達させることになり、たるみ回復率を大きくできる。冷延伸段階の割合は、全延伸倍率に対する、冷延伸倍率のことである。さらに、熱セットにおける温度を高温から低温に多段で設定する事で、たるみ回復率を大きくすることに寄与する。
【0019】
また、下記式(2)で表される引締指数(F)が織物の織り目の形態安定にかかわることを見出した。
F=A+0.35×B (2)
式(2)において、Aは定長乾熱処理後のたるみ回復率であり、Bは沸水収縮率である。
本発明において、この引締指数Fが3.8以上であることが好ましい。さらに好ましくは3.8〜8.0、より好ましくは3.8〜5.5、特に好ましくは3.8〜4.5の範囲である。Fが3.8以上であれば、製織後熱処理の後に生じるたるみの状態から回復することで、織り目開きが抑制され、目開きからの通気度も小さくなる。バッグ展開時の応力下目開きが抑制され、バッグ展開速度が速まる。一方、引締指数Fが8.0以下であれば、製織後の加工時に生ずる寸法変化が比較的安定であってシワなどの発生が少ない。引締指数Fは、定長乾熱処理後のたるみ回復率Aと、沸水収縮率Bの上限からも制約される。
【0020】
沸水収縮率は4.0〜11.0%であることが好ましい。さらに好ましくは5.0〜10.5%、特に好ましくは6.0〜10.5%である。沸水収縮率は、高強度繊維として毛羽品位などが安定化した織糸が得られるのは実質的に11.0%以下である。沸水収縮率が4.0%以上であれば、高密度織物が得やすい。沸水収縮率は熱セット温度およびロール接触滞留時間、リラックスロールによる弛緩率の量により制御する事ができる。これらの弛緩処理では熱延伸によって生じた歪みを取るだけでなく、熱セット温度及びロール接触滞留時間を調整し、延伸によって達成された構造を固定したり、非晶領域の配向を緩和させ、沸水収縮率及び熱処理後の収縮率を適正な関係にすることができる。熱セット温度を低く設定すると、沸水収縮率が大きくなる。ロール接触滞留時間を短くすれば、沸水収縮率は大きくなり、弛緩処理の割合を小さくすれば、沸水収縮率は大きくなる。
【0021】
また、エアバッグ収納後の長期間の環境負荷に耐え、展開時に十分な性能を維持することが大事である。本発明のポリアミド繊維は、110℃で3000時間の耐熱試験後の引張強度及び引張破断伸度の物性保持率は80%以上であることが好ましい。さらには、90%以上であることが一層好ましい。
このため、ポリアミド繊維は熱安定剤を含有することが好ましい。例えば、銅元素を20〜100ppm含有し、ヨウ素あるいはまた臭素を元素で500〜3500ppm含有することが好ましい。銅元素は、ヨウ化銅、臭化銅、酢酸銅などの化合物で添加することが可能である。また、ヨウ素、臭素は、ヨウ化カリウム、臭化カリウムなどの化合物で添加することが可能である。加えて、物性低下抑制のために繊維高分子構造の安定化因子としてたるみ回復率Aが4.0%以下であることが好ましい。さらには、たるみ回復率Aが3.5%以下であることが一層好ましい。
【0022】
本発明のポリアミド繊維は溶融紡糸法によって製造することができる。
図1は本発明のポリアミド繊維を製造する設備の一例であり、2段延伸プロセスを示している。
溶融紡糸機に設けられた紡糸口金パック1から紡出された糸条2は直ちに冷風筒3から供給される0.5〜1.2m/秒の冷風により、冷却固化される。
【0023】
次いで、油剤付与ノズル4にて油剤を0.5〜2.0%付与された後、引取ロール5に捲回して引き取られる。ここで、付与される油剤は、水系であっても非水系であっても良いが、好ましくは非含水油剤である。好ましい油剤組成としては、平滑剤成分としてアルキルエーテルエステル、界面活性剤成分として高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、極圧剤成分として有機ホスフェート塩等を鉱物油で希釈した非水系油剤を例示することができる。引取られた未延伸糸は、一旦巻き取られることなく、連続して延伸工程に供される。
【0024】
延伸プロセスは、多段延伸法が好ましい。紡出糸の延伸は、必要な引張強度を得るための全延伸倍率に対して、まず、150℃未満の低温で前段の延伸を行ない、引き続いて150℃以上の高温で後段の延伸を行ない、最後に構造固定の熱セットおよび弛緩処理により張力緩和を経て巻き取ることが好ましい。前段の延伸も後段の延伸もそれぞれ多段の延伸でもよい。糸条の延伸はロール間の速度差を利用して行うのが好ましい。延伸段数に特に決まりはないが、好ましくは2段延伸プロセス、より好ましくは3段延伸プロセスを用いる。図示した延伸工程は、第1延伸ロール6、第2延伸ロール7、第3延伸ロール8、リラックスロール9を備え、各ロールにて所望の物性が得られるよう、順次糸条を捲回して延伸熱処理等を行なう。まず、引取ロールと第1延伸ロール間では、軽度な緊張を保つ。ロール間の好ましい伸張率は0.5〜5% の範囲である。引取りロールの表面温度は20〜50℃ が好ましい。続いて、前段の延伸プロセスは、150℃未満の低い温度領域で延伸するため、第1延伸ロールの温度が40℃以上150℃未満が好ましい。後段延伸の、高い温度領域で延伸する第2延伸ロールの温度は150〜230℃である。引続いて、熱セットでは第3延伸ロール、および、リラックスロールの温度を150〜250℃とするのが好ましい。
【0025】
本発明においては、150℃未満の冷延伸においては、延伸倍率を全延伸倍率の25%〜55%に設定することが好ましい。
図1の例示では、第1延伸ロールと第2延伸ロール間で行われる1段目の延伸を全延伸倍率の25%〜55%に設定すればよい。より好ましくは30〜50%である。引き続く150℃以上の熱延伸においては、目的とする強度を出すに足るような全延伸倍率に達するまで行えばよい。たとえば、1段目の冷延伸の後に第2延伸ロールと第3延伸ロール間で行われる2段目の熱延伸を残りの延伸倍率で実施すればよい。冷延伸が全延伸倍率の25%未満の場合は、全延伸倍率に対する熱延伸割合が相対的に高くなり、延伸による配向結晶化とロール加熱による熱結晶化が相俟って進行し、結果として強度が高い糸が得られなかったり、得られたとしても毛羽が多く、品質に問題があったりする場合がある。冷延伸段階を55%以下に抑えることは、引続く熱延伸段階で充分に高分子構造を発達させることになり、定長乾熱処理後たるみ回復率Aを大きくすることになる。したがって、織物にした際の抗目開き性が改善され、好ましいものである。従来は、1段目の冷延伸を55%より大きくし、2段目の熱延伸部の熱延伸切れを防いでいた。しかし、本発明においては、熱延伸部の初段熱延伸ロール(第2延伸ロール7)を表面梨地として、粗度を大きくし、糸をロール上で適度に滑らせ、延伸を速度差のある前段ロールと後段ロールの間だけではなく、同段ロール上でも糸条とロール速度が同速度に達するまでの滑りを利用して行うことで、歪速度変化を緩やかに行う緩延伸により、2段目の熱延伸比率を大きくすることが可能となった。初段熱延伸ロール(第2延伸ロール7)の粗度Raは2.0μm以上が好ましい。より好ましくは、2.0〜5.0μmである。さらに好ましくは、3.0〜5.0μmである。特に好ましくは、3.5〜5.0μmである。粗度が2.0μm以上であれば、ロール上で糸条速度とロール速度間の速度差が十分生まれ、緩延伸となる。一方、粗度が5.0μm以下であれば、ロール表面粗度を十分均一に加工できる。
【0026】
延伸に引続く弛緩処理および熱セットでは、熱延伸によって生じた歪みが除去される。すなわち、非晶領域の配向が緩和され、延伸によって達成された構造が固定される。その結果、沸水収縮率及びたるみ回復率が調整される。熱セット温度を低く設定すると沸水収縮率が大きくなる傾向にあり、また、第3延伸ロールとリラックスロールの温度を調節して多段に温度を下げると、たるみ回復率が大きくなる傾向にある。
弛緩処理および熱セットの工程では、糸条に内在する応力ひずみを緩和するために、延伸後から巻取り機までに、全体として0%を超え14.0%以下の弛緩処理を施すことが好ましい。また、弛緩処理は段階的な弛緩を行なうことが好ましい。
【0027】
例えば、弛緩処理および熱セットは、第3延伸ロールの温度をリラックスロールの温度よりも高く設定し、まず第3延伸ロールの温度によりリラックスロールで弛緩引き取りを行ない、続いて第3延伸ロールよりも低い温度のリラックスロールから巻取り機の間で再度弛緩しながら巻き取る。つまり、熱セットの温度を下げつつ2段階で実施する。熱セット温度となる第3延伸ロールとリラックスロールの温度はそれぞれ、250〜150℃、180〜50℃の範囲にあることが好ましい。リラックスロール温度は、さらに好ましくは160〜70℃、特に好ましくは150〜80℃である。熱セットおよび弛緩処理において段階的に温度を下げて熱処理することが好ましい。
【0028】
さらには、段階的な弛緩処理のうち、特に、はじめの弛緩処理すなわち第3延伸ロールとリラックスロールの間では2.0%を超える弛緩を行うことがたるみ回復率Aを大きくするためには好ましい。
また、リラックスロールと巻取り機間で0.5%を超える弛緩処理とすることが好ましく、弛緩条件で巻き取れば耐熱試験後の機械物性を保持しやすい。巻取り以前に50℃以上での弛緩処理を完了して緊張条件で巻き取る場合は、耐熱試験後の機械物性を保持し難い。
【0029】
弛緩処理を施された糸条は巻取り機10にて巻き取られる。製織工程における糸条のバラケを防止するため、リラックスロールと巻取り機の間で糸条に高圧流体を吹き付けて糸条に交絡を付与し、糸条を集束させながら巻き取ってもよい。糸条を交絡させるための装置は公知の交絡付与装置を用いて何ら問題はない。
【0030】
引取りロールから最終延伸ロールすなわち上述の2段延伸プロセスの場合は第3ロールまでの全延伸倍率は、ポリマーの性状や紡出糸の紡出および冷却条件に依存するが、必要とする引張強度を発現する延伸倍率に設定するものであり、4.0倍から6.0倍が好ましい。
【0031】
本発明のエアバッグ用織物の織組織は、平組織、綾組織、朱子組織及びこれらの変形組織等を使用することができるが、これらに特に限定されるものではない。これらの織組織の中でも、織物コスト及びエアバッグの等方展開性の面から平組織が好ましく使用される。かかる織物としては、対称組織である必然性はなく、非対称組織であってもよい。ここでいう非対称組織とは、経糸と緯糸の間での関係を意味するものであり、例えば糸密度や組織の違い、つまり、平組織織物で経糸と緯糸の糸本数が異なるもの、経、緯の一方の糸種が異なるもの、経、緯の一方がリップストップや空羽組織になっているもの等の組織が異なるものを意味するものである。また、ジャカード織機で2重織物を製織し、袋織でエアバッグとなすこともできる。製織機は特に限定されるものではなく、ウォータージェットルーム、エアージェットルーム、レピアルームなどが用いられる。
【0032】
製織後の精練は、公知の方法で実施できる。例えば、回分法であればジッガー精練機など、連続法ならオープンソーパーなどを用い、湯洗したり、洗浄剤を用いた温水洗ができる。水温は60℃から120℃で加圧精練も可能である。回分法では繰返し巻き返しで複数回にわたって温浴を通過させることができるし、温浴を換えて順次温度を変えたり、洗浄剤成分を変えることもできる。連続法でも、浸漬浴を多段にして複数回浸漬したり、多段浴を順次温度を変えたり、洗浄剤成分を変えることができる。また、製織後の精練を省略することも可能である。とりわけ、製織をウォータージェットルームで実施した場合は、製糸油分が概ね脱落することがあり、製織後の精練を省略することができ、経済的に好ましい。
【0033】
ウォータージェット製織や精練などの後に、織物乾燥をすることができる。乾燥方法は、熱風乾燥機や熱ロール加熱機などが用いられる。温度は100℃から200℃まで設定できる。経糸方向すなわち織物走行方向や、緯糸方向すなわち織物幅方向について張力制御できる装置で熱セットを同時に行なってもよい。熱セットの装置としては、熱ロール加熱機やテンターなどを用いることができる。とりわけ、織物の経緯方向の熱収縮応力に対する抗力を制御すると、織物を加熱した際の織物形態、経緯のクリンプ率差が制御できて好ましい。テンターを用いて経緯方向ともに加熱中の張力制御することが好ましい。
【0034】
織物は高密度に製織することでノンコートのエアバッグ基布として用いることができる。一方、織物にコーティングすることで皮膜によって非通気にすればコーティングエアバッグ基布として用いることができる。コーティング方法は、ナイフコーティング、コンマコーティング、ロールコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティングなどいずれの方法も実施できる。とりわけ、エアナイフコーティングは比較的薄膜を織物表面上に形成し、コーティング剤の織物への浸み込みも少なく柔軟なコーティング基布を得るのに好ましい。コーティング剤は様々なエラストマーを用いることができる。シリコーンは冷寒柔軟性に優れ、耐久性もあって好ましく、とりわけ、無溶媒の付加型シリコーンが好ましい。付加型シリコーンは150℃から200℃で架橋反応するため、加熱加硫工程を通る。ここで加熱過程を与え、織物を加熱した際の織物形態、経緯のクリンプ率差を制御することも好ましい。
【0035】
本発明のエアバッグ用織物は、裁断縫製してエアバッグとすることができる。また、エアバッグ用織物を袋織で製織した場合は、接結組織で袋が形成された部分の外側を裁断してエアバッグが形成される。得られたエアバッグは、エアバッグのガス導入口にインフレーターが取り付けられ、エアバッグ装置として用いられる。インフレーターは、パイロ型、ハイブリッド型、ストアードガス型などが用いられる。エアバッグとしては、運転席用エアバッグ、助手席用エアバッグ、サイドエアバッグ、サイドカーテンエアバッグ、リアウィンドシールドエアバッグ、歩行者保護エアバッグなどが挙げられる。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本明細書および実施例にて言及される物性の定義および測定方法は次の通りである。
【0037】
(1)蟻酸相対粘度(VR)
試料4.5gを濃度8.4wt%になるように、90%蟻酸に十分溶解した後、ウベローデ粘度計を用いて、水温25℃の環境下に10分放置後、該溶液の落下時間を測定した。溶媒の落下時間を同一の方法にて評価し、以下の式に基づいてVRを求めた。
VR=試料溶液の落下時間(秒)/溶媒の落下時間(秒)
(2)粗度
表面粗さ測定器(小坂(株)製、サーフレコーダSE−40D)を用い、JISB0651の触針式表面粗さ測定の基準に準じて測定した値で、中心線平均粗さ(Ra)を測定した。
【0038】
(3)総繊度(dtex)
JIS L 1017 8.3記載の方法で測定した。
(4)単糸繊度(dtex)
JIS L 1017 8.3記載の方法で求めた総繊度を、糸条を構成する単糸フィラメントの本数で除して求めた。
(5)引張強度(cN/dtex)、引張破断伸度(%)
JIS L 1017 8.5記載の方法で測定した引張強さを総繊度で除して求めた。また、破断時の伸度を求めた。
(6)中間伸度(%)
JIS L 1017 8.7記載の方法で測定した一定荷重伸び率を中間伸度とした。
【0039】
(7)定長乾熱処理後たるみ回復率A(%)
図2(a)に示すように糸条を400mm幅の枠に巻き(巻き張力0.2cNで15回)、端糸を枠に結び固定し、熱風乾燥機を用いて120℃の環境下で24時間熱処理を行い、その後標準状態に静置し、経時的に随時、
図2(b)に示すように負荷をかけ、たるみを測定した。おもりにより荷重を、5本の糸条にかけ、0.01cN/dtexとなるようにした。熱処理後の経時測定は、直後(1hr以内)、6hr、24hr、48hr、72hr後に測定し、前回測定時との変位が0.1mm以下となった時点を安定とした。熱処理後、1時間以内に測定したたるみ量と、安定時のたるみ量との変化量の比率をたるみ回復率(A)とした。試行は経時毎に3回測定し、その平均値を用いた。
A(%)=[(Ta−Tb)/Ta]×100 (1)
上記(1)式において、Taは熱処理直後たるみ量であり、Tbは熱処理後安定時たるみ量である。
(8)沸騰水収縮率B(%)
JIS L 1017 8.14記載の方法で測定した。
【0040】
(9)展開性(msec)
直径30cmが確保できる円形状に織物を裁断し、これを2枚貼りあわせるかたちで模擬エアバッグを縫製した。
図3(a)に示すように、該エアバッグには100mm×80mmのガス導入口を設け、導入口のエアバッグ貼りあわせ箇所の一部を筒状になったガス噴出口に挿入し、ガスが漏れないように密閉固定した。次に、
図3(b)〜(d)に示すように、ガス導入口を中心とし、左右に半円状に広がる模擬バッグを中心に向かいそれぞれが重ならないように畳んだ後、ガス導入口の反対側から導入口側に向かい10cm間隔で3回折り畳んだ。展開性評価は、バッグ内に720ccタンクで7.5MPaの圧縮ヘリウムガスを一気に導入させた際のバッグ内圧が最大となった時点を展開完了点とし、その到達時間から展開性を相対的に評価した。30msecの展開完了時間を基準(100)とし、展開性を展開完了時間によって下記の如く評価した。なお、試行は3回とし、展開完了時間はその平均値を用いた。
○:展開完了時間が90未満のもの
△:展開完了時間が90以上〜110以下のもの
×:展開完了時間が110を超えるもの
【0041】
(10)抗目開き性および耐バースト性
展開性評価を720ccタンクで15MPaの高圧圧縮ガスで実施した後、エアバッグを概観検査した結果、次の基準にて評価した。
○:バースト(破裂)、織り目開きともになし
△:織り目開きあり
×:バースト
【0042】
[実施例1]
図1に示した装置を用いて紡糸した。蟻酸相対粘度が100であり、銅元素を50ppm、ヨウ素を1600ppm含有するペレット状のナイロン66ポリマーを温度295℃にてエクストルーダー式押出機を用いて融解させ、その後、スピンヘッドにて300℃に均温化させた。スピンヘッドから表1に示す繊度となるようにギアポンプにて計量し、パックより紡出させた。紡出されたポリマーは、冷風により冷却固化され、糸条を形成させた。固化した糸条に油剤を付与した後、一旦巻き取ることなく引取りロールで引取った。引取った糸条を引取りロールと第1延伸ロール間で1%のストレッチをかけ、第1延伸ロールと第2延伸ロール間で2.25倍の1段目の延伸を、第2延伸ロールと第3延伸ロール間でさらに2.35倍の2段目の延伸を行った。延伸後の糸条は第3延伸ロールとリラックスロール間で3.5%弛緩処理を施した後、交絡付与装置(図示されていない)にて適度な交絡を付与しながら、リラックスロールと巻き取り機間で3.5%の弛緩、すなわち速度比0.965にて巻取った。引取りロール、第1延伸ロール、第2延伸ロール、第3延伸ロール、リラックスロールの温度はそれぞれ、非加熱、60℃、200℃、170℃、150℃であり、糸条のロールへの捲回数はそれぞれ、1回、2回、3回、2回、1回とした。この時の総延伸倍率は5.34倍である。熱延伸ロール(第2延伸ロール)の粗度Raは、4.0μmとした。得られたナイロン66原糸を500m/分の速度で整経し、次いで津田駒製ウォータージェットルーム(ZW303)を用いて、回転速度800rpmで製織し織物を得た。120℃のシリンダー乾燥をして経糸及び緯糸の織密度を2.54cmあたり74本×74本として、エアバッグ用織物基布とした。これを裁断縫製し、展開性試験、ならびに抗目開き性および耐バースト性試験に用いた。得られた結果を糸条の評価結果と共に表1に示す。
【0043】
[実施例2]
実施例1と同様のナイロン66ポリマーを用いて、表1に示す繊度となるように実施例1と同様に溶融紡糸した。引取った糸条を引取りロールと第1延伸ロール間で1%のストレッチをかけ、第1延伸ロールと第2延伸ロール間で1.90倍の1段目の延伸を、第2延伸ロールと第3延伸ロール間で2.80倍の2段目の延伸を行った。延伸後の糸条は第3延伸ロールとリラックスロール間で5.5%弛緩処理を施した後、交絡付与装置にて適度な交絡を付与しながら、巻取り機にて巻取った。リラックスロールと巻き取り機間は4.0%の弛緩で巻取った。引取りロール、第1延伸ロール、第2延伸ロール、第3延伸ロール、リラックスロールの温度はそれぞれ、非加熱、60℃、200℃、200℃、150℃であり、糸条のロールへの捲回数、熱延伸ロール(第2延伸ロール)の粗度は実施例1と同様にした。得られたナイロン66原糸を用いて、経糸及び緯糸の織密度を55本×55本としたことを除いて、実施例1と同様にエアバッグ用織物を得、展開性試験、ならびに抗目開き性および耐バースト性試験に用いた。得られた結果を糸条の評価結果と共に表1に示す。
【0044】
[実施例3]
実施例1と同様のナイロン66ポリマーを用いて、表1に示す繊度となるように実施例2と同様に溶融紡糸した。引取りロールで引き取った糸条を、第1延伸ロールと第2延伸ロール間の延伸倍率を2.00倍、第2延伸ロールと第3延伸ロール間の延伸倍率を2.45倍、第3延伸ロールとリラックスロール間の弛緩率を4.5%にしたことを除いて、実施例2と同様に延伸および弛緩処理して巻き取った。得られたナイロン66原糸を用いて、経糸及び緯糸の織密度を55本×55本となるようにしたことを除いて、実施例1と同様にエアバッグ用織物を得、実施例1と同様に評価した。得られた結果を糸条の評価結果と共に表1に示す。
【0045】
[実施例4]
実施例3と同様にして得られたナイロン66原糸を、かせに巻き、端糸を結び固定し、熱風乾燥機の中で110℃×3000hrの熱エージングを行った。エージング前後のナイロン66原糸の引張強度、引張破断伸度を測定し、物性保持率を算出した。測定は10回行い、平均をとった。得られた結果を表1に示す。
【0046】
[実施例5]
実施例1と同様のナイロン66ポリマーを用いて、表1に示す繊度となるように実施例2と同様に溶融紡糸した。引取りロールで引き取った糸条を、第1延伸ロールと第2延伸ロール間の延伸倍率を1.65倍、第2延伸ロールと第3延伸ロール間の延伸倍率を3.00倍、第3延伸ロールとリラックスロール間の弛緩率を4.0%、リラックスロールと巻き取り機間の弛緩率を2.0%、第3延伸ロールの温度を170℃にしたことを除いて、実施例2と同様に延伸および弛緩処理して巻き取った。得られたナイロン66原糸を用いて、経糸及び緯糸の織密度を55本×55本となるようにしたことを除いて、実施例1と同様にエアバッグ用織物を得、実施例1と同様に評価した。得られた結果を糸条の評価結果と共に表1に示す。
【0047】
[実施例6]
実施例5と同様にして得られたナイロン66原糸を、かせに巻き、端糸を結び固定し、熱風乾燥機の中で110℃×3000hrの熱エージングを行った。エージング前後のナイロン66原糸の引張強度、引張破断伸度を測定し、物性保持率を算出した。測定は10回行い、平均をとった。得られた結果を表1に示す。
【0048】
[比較例1]
実施例1と同様のナイロン66ポリマーを用いて、表1に示す繊度となるように実施例1と同様に溶融紡糸した。引取りロールで引取った糸条を、第1延伸ロールと第2延伸ロール間の延伸倍率を3.45倍、第2延伸ロールと第3延伸ロール間の延伸倍率を1.50倍、熱延伸ロール(第2延伸ロール)の粗度Raを1.5μm、リラックスロールと巻き取り機間の弛緩率を3.0%、第2延伸ロールの温度を210℃、第3延伸ロールの温度を180℃、さらに、糸条の第3延伸ロールへの捲回数を3回としたことを除いて、実施例1と同様に延伸および弛緩処理して巻き取った。得られたナイロン66原糸を用いて、実施例1と同様にエアバッグ用織物を得、実施例1と同様に評価した。得られた結果を糸条の評価結果と共に表1に示す。展開性については良好な結果が得られたが、バッグ外観観察にて織り目開きが観察された。
【0049】
[比較例2]
蟻酸相対粘度が110であり、銅元素を50ppm、ヨウ素を1600ppm含有するペレット状のナイロン66ポリマーを温度295℃にてエクストルーダー式押出機を用いて融解させ、その後、スピンヘッドにて300℃に均温化させた。スピンヘッドから表1に示す繊度となるようにギアポンプにて計量し、パックより紡出させた。紡出されたポリマーを冷風により冷却固化し、糸条を形成させた。固化した糸条に油剤を付与した後、一旦巻き取ることなく引取りロールで引取った。引取った糸条を引取りロールと第1延伸ロール間で1%のストレッチをかけ、第1延伸ロールと第2延伸ロール間で3.72倍の1段目の延伸を、第2延伸ロールと第3延伸ロール間でさらに1.30倍の2段目の延伸を行った。延伸後の糸条は第3延伸ロールとリラックスロール間で6.0%弛緩処理を施した後、交絡付与装置にて適度な交絡を付与しながら、リラックスロールと巻き取り機間は4.0%の弛緩で巻取り機にて巻取った。引取りロール、第1延伸ロール、第2延伸ロール、第3延伸ロール、リラックスロールの温度はそれぞれ、非加熱、60℃、210℃、230℃、170℃であり、糸条のロールへの捲回数はそれぞれ1回、2回、3回、4回、1回とした。この時の総延伸倍率は4.88倍である。熱延伸ロール(第2延伸ロール)の粗度は比較例1と同様とした。得られたナイロン66原糸を500m/分の速度で整経し、次いで津田駒製ウォータージェットルーム(ZW303)を用いて、回転速度800rpmで製織し織物を得た。次いで120℃のシリンダー乾燥をして経糸及び緯糸の織密度を55本×55本としエアバッグ用織物基布とした。この基布にてエアバッグを縫製し、展開性試験、ならびに抗目開き性および耐バースト性試験に用いた。得られた結果を糸条の評価結果と共に表1に示す。展開性については比較的良好であったが、バッグ外観観察にて織り目開きが観察された。
【0050】
[比較例3]
実施例1と同様のペレット状のナイロン66ポリマーを用いて、表1に示す繊度になるように、比較例2と同様に溶融紡糸した。引取った糸条を引取りロールと第1延伸ロール間で1%のストレッチをかけ、第1延伸ロールと第2延伸ロール間で3.40倍の1段目の延伸を、第2延伸ロールと第3延伸ロール間でさらに1.4倍の2段目の延伸を行った。延伸後の糸条は第3延伸ロールとリラックスロール間で8.0%弛緩処理を施した後、交絡付与装置にて適度な交絡を付与しながら、リラックスロールと巻き取り機間は1.5%の弛緩として巻取り機にて巻取った。引取りロール、第1延伸ロール、第2延伸ロール、第3延伸ロール、リラックスロールの温度はそれぞれ、非加熱、60℃、210℃、150℃、150℃であり、糸条のロールへの捲回数はそれぞれ1回、2回、3回、2回、1回とした。熱延伸ロール(第2延伸ロール)の粗度は比較例1と同様とした。得られたナイロン66原糸を用いて、比較例2と同様にしてエアバッグ用織物基布を得、エアバッグを縫製し、展開性試験、ならびに抗目開き性および耐バースト性試験に用いた。得られた結果を糸条の評価結果と共に表1に示す。展開速度が遅く、バッグバーストも確認された。
【0051】
[比較例4]
実施例1と同様のナイロン66ポリマーを用いて、表1に示す繊度となるように溶融紡糸した。引取りロールで引取った糸条を引取りロールと第1延伸ロール間で1%のストレッチをかけ、第1延伸ロールと第2延伸ロール間で3.27倍の1段目の延伸を、第2延伸ロールと第3延伸ロール間で1.56倍の2段目の延伸を行った。延伸後の糸条は第3延伸ロールとリラックスロール間で4.5%弛緩処理を施した後、交絡付与装置にて適度な交絡を付与しながら、リラックスロールと巻き取り機間は3.0%の弛緩として巻き取り機にて巻取った。引取りロール、第1延伸ロール、第2延伸ロール、第3延伸ロール、リラックスロールの温度はそれぞれ、非加熱、60℃、210 ℃、200℃、150℃であり、糸条のロールへの捲回数はそれぞれ1回、2回、3回、2回、1回とした。熱延伸ロール(第2延伸ロール)の粗度は比較例1と同様とした。得られたナイロン66原糸を用いて、比較例2と同様にしてエアバッグ用織物基布を得、エアバッグを縫製し、展開性試験、ならびに抗目開き性および耐バースト性試験に用いた。得られた結果を糸条の評価結果と共に表1に示す。展開性については比較的良好であったが、バッグ外観観察にて織り目開きが観察された。
【0052】
[比較例5]
実施例1と同様のナイロン66ポリマーを用いて、表1に示す繊度となるように実施例1と同様に溶融紡糸した。但し、本例では図中のリラックスロールを用いなかった。引取りロールで引取った糸条を、引取りロールと第1延伸ロール間で1%のストレッチをかけ、第1延伸ロールと第2延伸ロール間で2.0倍の1段目の延伸を行い、第2延伸ロールと第3延伸ロール間で2.7倍の2段目の延伸を行い、糸条の引取りロール、第1延伸ロール、第2延伸ロール、第3延伸ロールへの捲回数はそれぞれ1回、2回、3回、4回とし、交絡付与装置にて適度な交絡を付与しながら、第3ロールと巻取り機の間で5.0%弛緩処理を施して巻取り機にて巻取った。引取りロール、第1延伸ロール、第2延伸ロール、第3延伸ロールの温度はそれぞれ、非加熱、70℃、225℃、190℃、とし、また、第2延伸ロールの粗度Raは、4.0μmとした。得られたナイロン66原糸を用いて、経糸及び緯糸の織密度を2.54cmあたり55本×55本としたことを除いて実施例1と同様にエアバッグ用織物を得、展開性試験、ならびに抗目開き性および耐バースト性試験に用いた。得られた結果を糸条の評価結果と共に表1に示す。展開速度が遅く、バッグ外観観察にて織り目開きも観察された。
【0053】
【表1】