(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の工程では、前記ターゲットに接続されているターゲット電極用電源の周波数を40MHzから60MHzにした状態でプラズマを形成することによって、前記凹部の底部に前記第1の電極構成層を成膜することを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
前記第2の工程では、前記ターゲットに印加される電圧を前記第1の工程よりも低くした状態でプラズマを形成することによって、極薄の前記窒化層を形成することを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【背景技術】
【0002】
これまでの半導体集積回路では、ウェハ表面にゲート絶縁膜やゲート電極を形成後、エッチングにより加工する方法であるゲートファースト方式が用いられてきた。近年、素子微細化と共にMOSFETのゲート絶縁膜は、薄膜化が進んでおり、ゲート絶縁膜にSiO
2膜を用いた場合、近年の要求値である膜厚2nm以下ではトンネル電流が発生し、ゲートリーク電流が増大する。そこで、近年では、ゲート絶縁膜材料をSiO
2膜よりも比誘電率が高い高誘電体材料に置き換える検討が行われている。この方法により、実際の絶縁膜厚を厚くしてもSiO
2換算膜厚(EOT:Equivalent Oxide Thickness)は薄くできる。昨今のゲート長22nm以下のMOSFETで求められるEOT膜厚は、更なる低減の要求があり、この要求を満たすためには、高誘電体材料を用いて実際の絶縁膜厚を厚くし、ゲートリーク電流を低減することが必要である。しかし、ゲートファースト方式では、ゲート形成後にソース/ドレイン形成工程が行われるため、ゲート絶縁膜やゲート電極が加熱され、絶縁膜と金属膜の加熱による拡散が発生し、Mobilityの劣化や動作電圧(Vt)のズレが発生することが問題となってきている。そこで、これらの問題を解決するため、先にソース/ドレイン形成を行い、最後にゲート絶縁膜とゲート電極を形成するゲートラスト(Gate−Last)方式が盛んに研究開発されてきている。この方式においては、最後にゲート部を形成するため、ゲート部への加熱温度が低くでき、ゲートファースト方式で課題となっているMobilityの劣化や動作電圧(Vt)のズレを抑制することができると考えられている。ゲートラスト方式の課題は、15nm以下に開口され、深さ30nm以上の形状(以下、トレンチと記載)に各種金属薄膜を成膜し、トレンチ側壁や底部に成膜される材料を所望の膜厚に制御することである。また、各種金属薄膜を積層するため、金属薄膜間での相互拡散を抑制することも必要となる。
【0003】
ゲートラスト方式において、各種金属薄膜材料を形成する方法として、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、原子層吸着堆積法、スパッタ法が挙げられる。CVD法は、形成過程においてインキュベーションタイムが存在するため、膜厚の制御性、面内均一性、再現性が課題となる。原子層吸着堆積法は、膜厚の制御性に優れているが、厚い膜を形成する場合には、成長時間が長くなり、高価な原料ガスを用いるためコスト的な問題が発生する。これらの原料ガスの化学反応を用いた方法では、トレンチ部の底面だけでなく、側壁にも均等に膜が形成できるが、一方では成膜膜厚を厚くするとトレンチ開口部を狭くしてしまう。これらを解決する手段の一つとして、膜厚の制御性、面内均一性、再現性に優れたスパッタリング法により、各種金属薄膜材料を形成する方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、1Torr以上の高圧でスパッタする方法により、CVDと同様にトレンチ部の側壁へも成膜できる装置が示されている。この方法では、高圧でスパッタすることにより、スパッタイオンのウェハ表面に対する指向性が抑制されるため、トレンチ部側壁へも形成することができる。特許文献2では、スパッタ法を用いてTi、TiN積層バリア下地を形成した後、Al膜のマイグレーションを促進するためにSeed−Al層を形成し、Alを高温でマイグレーションさせて埋め込む技術及び装置が示されている。この方法では、Ti、TiN積層バリア下地により、Al拡散を抑制しつつ、トレンチにAlを埋め込みすることができることが示されている。
【0005】
特許文献3には、高温で成膜される低融点金属の凝集を防止ないしは低減し、十分なバリア性及びぬれ性を有するバリア層を形成して、凹部に低融点金属を付
き回り良く充填するため、被処理体と接する電極に第1のバイアス電力を印加し、プラズマ処理により被処理体の上にTiNxからなる第1のバリア層を成膜する手順と、電極に第1のバイアス電力よりも小さいイオン入射エネルギーを与える第2のバイアス電力を印加し、またはバイアス電力を印加しないで、プラズマ処理により第1のバリア層の上にTiNxからなる第2のバリア層を成膜する手順と、第2のバリア層上に低融点金属を充填する手順と、を有する電子部品の製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、開口径22nm以下の微細なトレンチでも開口径を減少させることなくAlを埋め込むことを可能とするため、複数のマグネットが多角形格子の格子点の位置にかつ隣接するマグネットが異極性となるように配置された磁石ユニットによりターゲット表面に磁場を形成させながら、スパッタリング法により、凹部が形成された被処理体に窒化チタンを含むバリア層を成膜する第1の工程と、バリア層上に直接低融点金属層を、低融点金属層が流動可能な温度条件下で充填する第2の工程と、を有する電子部品の製造方法が開示されている。
【0007】
上述の通り、近年の極微細パターンへの成膜においては、各種金属薄膜を積層するため、トレンチ開口径の減少が発生する。従って、各種金属薄膜を積層しても開口径の減少を極力抑制できる金属薄膜形成技術が必要となる。また、Al埋め込みにおいては、Alの拡散により、ゲート電極部に使用される金属膜の特性を劣化させることが解っており、Alの拡散を抑制する極薄膜バリア層形成技術も必要である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態)
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、被処理体に形成された凹部(例えば、トレンチ部)内に、第1の電極構成層(例えば、TiAl膜)を形成し(第1の工程)、第1の電極構成層(例えば、TiAl膜)の表面をプラズマ窒化して窒化層を形成することにより極薄バリア層(例えば、TiAlN膜)を形成し(第2の工程)、極薄バリア層(例えば、TiAlN膜)上に第2の電極構成層(例えば、Al配線層)を形成することにより(第3の工程)、極薄バリア層(例えば、TiAlN膜)と第2の電極構成層(例えば、Al配線層)との間に更にSeed−Al層が無くても、極薄バリア層(例えば、TiAlN膜)上に第2の電極構成層(例えば、Al配線層)を表面に凹凸無く平坦に、直接埋め込みができることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、極薄のTiAlNバリア膜を有し、TiAlN膜の上にAlを埋め込むことにより、トレンチ開口部の減少を抑制し、Al拡散を抑制できるバリア膜を用いることにより、トレンチ部へのAl埋め込み工程を有する電子部品の製造方法を見出した。
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るPCMスパッタ処理装置100の概略図である。PCMスパッタ処理装置100は、ターゲット電極402、チャンバ201、ターゲット電極402に対向して設けられた下部電極301から構成される。ターゲット電極402の下部には、隙間を設けてシールド403が配置されており、ターゲット電極402を保持するため、チャンバ201側壁には、ターゲット電極絶縁体404が取り付けられている。ターゲット電極402の上方には、磁石機構405が、ターゲット電極402から離れて配置されている。磁石機構405は、複数のマグネットピース406とマグネット支持板407と磁場調整用磁性体408で構成される。
なお、本明細書において、PCM(Point−Cusp Magnetic Field、ポイントカスプ磁場)とは、後述する
図2に示すような構成により、隣接する4つのマグネットにより閉じたカスプ磁場を形成することをいう。
【0019】
ターゲット電極402の大気側に設置されているチャンバ201は、上部壁(天井壁)202、円筒形側壁203、および底壁204の部分から構成される。ターゲット電極402は、チャンバ201の上方に設置されており、ターゲット電極絶縁体404を介してチャンバ201と電気的に絶縁されている。ターゲット電極402の主要部品は、Al、SUS、Cuなどの非磁性金属で製作されるが、ターゲット電極402の減圧側には、基板306上に成膜するのに必要な材料ターゲット材を設置する。図においてターゲット材の図示は省略している。
【0020】
ターゲット電極用高周波電源102は、ターゲット電極用整合機101を経由してターゲット電極402に高周波電力を供給する。また、ターゲット電極用整合機101には、直流電圧を印加するためのDC電源103が接続されている。チャンバ201内には、アルゴン等のプロセスガスをチャンバ201内に供給するための複数のガス導入口409が設けられている。チャンバ201は、ガス排気口205を経由して真空用排気ポンプ410によって排気される。また、チャンバ201にはチャンバ201内部の圧力を測定するダイヤフラムゲージ(DG)430が設けられており、ガス排気口205には該圧力応じて排気量を調整するバリアブルオリフィス431が設けられている。
【0021】
下部電極301はステージホルダー302と下部電極用絶縁体303から構成される。ステージホルダー302は下部電極用絶縁体303を介して底壁204に固定されており、ステージホルダー302とチャンバ201は下部電極用絶縁体303によって電気的に絶縁されている。基板306はステージホルダー302の上面に載置される。加えて
、下部電極301やステージホルダー302に温度制御機構412を設置して、基板306を成膜に必要な温度に制御することが可能である。下部電極用高周波電源305は、下部電極用整合機304を経由して下部電極301に高周波電力を供給する。
【0022】
図2は、本実施形態に係る処理装置内に設置される磁石機構405の配置図である。
図2を参照して、磁石機構405の形状について詳細に説明する。
図2は、磁石機構405をターゲット電極402側から見た平面図である。
図2に示すように、円盤状のマグネット支持体407には、複数のマグネットピース406と、該複数のマグネットピース406が配置されているターゲット電極402側の領域の外周の一部を覆うように配置された環状の磁場調整用磁性体408とが、支持されて設けられている。ここで、
図3において、記号403aはシールド403の内径を示しており、多数の小さな円は各々のマグネットピース406の外形を示している。また、各マグネットピース406は、同じ形状及び同じ磁束密度を有している。さらに、N及びSの文字はターゲット電極402側から見たマグネットピース406の磁極を示している。
マグネットピース406は、互いに略同一の間隔(5乃至100mmの範囲)を空けて、碁盤の目状(X軸方向、Y軸方向)に配置され、隣接する各マグネットピース406は、ターゲット電極402側から見て互いに反対の極性を有している。一方、X軸方向及びY軸方向に沿って配置された任意の4つのマグネットピース406からなる四角形において、対角線方向に沿って隣接するマグネットピース406のターゲット電極402側から見た極性は互いに同一である。このような配置によって、隣接する任意の4つのマグネットピース406により、ポイントカスプ磁場(PCM)411が形成される。
マグネットピース406の高さは、通常は2mmよりも大きくなっており、その断面形状は四角または円形である。マグネットピース406の直径や高さ、材質は、プロセスアプリケーションによって、適宜設定することができる。半導体製造装置100のターゲット電極402に高周波電力を供給したとき、プラズマは容量結合型のメカニズムによって生成される。このプラズマは、閉じたポイントカスプ磁場411によって作用を受ける。
磁場調整用磁性体408は、ターゲット電極402側におけるマグネットピース406が配置されている領域に、外周において部分的に重なるように延設されている。これにより、ターゲット電極402とシールド403との隙間において、磁場強度を抑制(制御)することできる。磁場調整用磁性体408は、ターゲット電極402とシールド403の隙間の磁場強度を制御できる材料であればよく、例えば、SUS430等の透磁率が高い材料が好ましい。磁石機構405において、マグネットピース406と磁場調整用磁性体408とが重なる面積を調整することにより、磁場調整することが可能である。すなわち、マグネットピース406と磁場調整用磁性体408とが重なる面積を調整すると、ターゲット電極402の最外周まで、ターゲット電極402をスパッタするのに必要な磁場を供給し、ターゲット電極402とシールド403との隙間には、磁場強度を調整することができる。
【0023】
図3Aは、低圧力スパッタの粒子輸送過程を説明する図である。
図3Aに示すように、低圧力スパッタでは、ターゲット電極402から基板306到着までの間に、スパッタの粒子の衝突による散乱が起こらない。
図3Bは、基板端部において低圧力スパッタによりトレンチ453に成膜されたスパッタ膜452の形状の説明図である。また、
図3Cは、基板中心部において低圧力スパッタによりトレンチ453に成膜されたスパッタ膜452の形状の説明図である。
図3B、
図3Cからわかるように、低圧力スパッタでは、基板中心部に比べて、基板端部においてはスパッタ膜452の形状に偏りが生じてしまう。なお、454は下地基板である。
一方で、
図3Dは、本実施形態の
図1のPCMスパッタ装置100を用いて高圧力でスパッタする場合の粒子輸送過程を説明する図である。
図3Dに示すように、高圧力スパッタでは、ターゲット電極402から基板306にスパッタ粒子450が到達するまでの間に、スパッタ粒子の衝突による散乱によって容器内に広がり、基板上306でのシース加速451が発生する。それによって、スパッタ粒子が均一に入射する。
図3Eは、基板端部において高圧力スパッタによりトレンチ453に成膜されたスパッタ膜452の形状の説明図である。また、
図3Fは、基板中心部において高圧力スパッタによりトレンチ453に成膜されたスパッタ膜452の形状の説明図である。
図3E、
図3Fからわかるように、本実施形態に係る高圧力スパッタによれば、基板全面のトレンチ453において、対称性の良い被覆形状を有するスパッタ膜452を堆積することができ、さらに側壁への成膜を抑制することができる。
【0024】
図4は、開口径32nm及び15nmの微細なトレンチの開口径に従来のCVD法を用いて各種材料を積層するゲートラスト形成技術の説明図である。微細なトレンチ構造601には、予め形成された下地絶縁膜602がある。下地絶縁膜602上に、高誘電率絶縁膜603を形成する。さらに、動作電圧を制御するための金属窒化膜A604、金属窒化膜B605、金属窒化膜C606、金属膜607、埋め込みのためのバリア膜608、Seed−Al膜609を形成する。これらの各種材料をCVD法で形成した場合は、トレンチ部の底面だけでなく、側壁にも均等に膜が形成できるが、一方では成膜膜厚を厚くするとトレンチ開口部を狭くしてしまうことが解る。このため、15nmの微細なトレンチにおいては、各層の膜厚を薄くしないと開口部を塞いでしまう。そのため、バリア性を高めるためにバリア下地層を厚くする必要がある場合であっても、充分な膜厚を確保できない。
一方、
図5は本実施形態の
図1に示すPCMスパッタ処理装置100を用いて各種材料を積層するゲートラスト形成技術の説明図である。微細なトレンチ構造601の底部には、下地絶縁膜602が予め形成されている。下地絶縁膜602上に、高誘電率絶縁膜(ゲート絶縁膜)603を形成する。その上に、第3の電極構成層として動作電圧を制御するための金属窒化膜A701、金属窒化膜B702、金属窒化膜C703を形成する。その上に、金属膜(第1の電極構成層)704、埋め込みのためのバリア膜(窒化層)705を形成する。本実施形態の装置では、側壁へのスパッタ膜の形成を抑制することができるため、
図4に示したCVD法に比べて、トレンチ開口部の減少を低減して各種材料を積層することができる。そのため、32nmトレンチと同じ膜厚でも15nmの微細パターンへ成膜ができる。従って、トレンチのサイズが微細化しても最適化された各種材料の膜厚を変更することなく積層することができる。さらに、本実施形態の方法を用いたバリア膜は、チタンアルミ単層膜をプラズマ窒化するのみであるため、積層構造の層数を減少することができる。
【0025】
上記点を
図1から
図3に基づいて更に説明する。本実施形態は
図2に示す隣接する任意の4つのマグネットピース406により、ポイントカスプ磁場411を形成し、チャンバ201内に高密度プラズマ密度(例えば、1×10
11個/単位体積)を発生させ、極薄バリア膜を形成している。本実施形態の方法を実施するための
図1のPCMスパッタ処理装置100の場合、プラズマ密度は、チャンバ201内の圧力、ターゲット電極用電源102のパワー、またはターゲット電極用電源102の周波数が高くなると高くなり、チャンバ201内の圧力、ターゲット電極402(カソード)
のパワー、またはターゲット電極402(カソード)
のRF周波数が低くなると低くなる。そのため、通常のスパッタ法に比べて、ターゲット電極用電源102の周波数を高く(例えば40MHz〜60MHz)し、ターゲット電極用電源102のパワーを高く(例えば3000W)し、そしてチャンバ201内の圧力を高く(例えば10Pa)すると、チャンバ201内で形成されたプラズマは、高イオン化率になりトレンチの段差の底部と側壁に均等にTiAl膜を形成することができる。また、被処理体に形成され
たトレンチ部に形成され
たTiAl膜の表面を、
図1のPCMスパッタ処理装置100を用いてプラズマ窒化して窒化層を形成すると、チャンバ201内で形成されたプラズマは、60MHzを用いているため高圧でも高イオン化率になっており、窒素イオンのエネルギーは抑制されているため、極薄のTiAlN膜バリア層を形成でき、極薄のTiAlN膜バリア層上に第2の電極構成層(例えば、Al配線層)を表面に凹凸無く平坦に、直接埋め込みができる。
【0026】
図6は、本実施形態に係る金属膜を埋め込む工程を有する電子部品の製造方法に用いられる半導体製造装置500である。半導体製造装置500は、第1の工程としてチタンアルミニウム膜を形成するチャンバ501と、第2の工程として前記チタンアルミニウム膜をプラズマ窒化するチャンバ502と、第3の工程としてAl埋め込みを行うチャンバ503と、その他の多種金属材料を成膜できるように取り付けられた金属膜を形成するチャンバ504、505を備え、501から505の各装置に基板を大気に晒すことなく搬送可能な真空搬送装置を備えたトランスファチャンバ506を備え、基板を大気から真空中に搬送するためのロードロックチャンバ507を備えている。尚、チャンバ501、502、503、504、505としては、
図1に示す本実施形態のPCMスパッタ処理装置100を用いることができる。本半導体製造装置500を用いることにより、基板を大気に晒すことなく連続的に処理を行うことができるため、界面への水分や炭素、酸素等の不純物の吸着を抑制することができる。そのため、各装置で形成された膜の特性を変えることなく、次の工程に基板を搬送することができる。なお、半導体製造装置500は、CPUなどの演算処理装置を備えたコントローラ(不図示)を備え、予め定められたプログラムに従って各処理装置501〜507に指示信号を出力することで、被処理基板に対し所定の処理を実行する。なお、各処理装置501〜507は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)などの制御装置(不図示)を夫々備えており、コントローラから出力された指示信号に従って、マスフローコントローラ、排気ポンプなどの装置を制御する。
【0027】
図7Aは、従来(上記特許文献2)に係るAl埋め込み工程のフローチャートである。
図7Bは、本実施形態に係るAl埋め込み工程のフローチャートである。従来のAl埋め込み工程は、Alの拡散を抑制するため、積層したバリア膜形成工程810を行い、積層したバリア膜の上にさらにAlの拡散を防止するためのバリア膜形成工程811を行い、さらにAlのマイグレーションを促進するためのSeed−Al層形成工程812を行い、その後、高温のAl埋め込み工程813を行う。
しかし、本実施形態の装置を用いたAl埋め込み工程は、第1の工程のチタンアルミニウム膜形成工程815を行い、第2の工程のチタンアルミニウム窒化膜形成工程816を行い、その上にSeed−Alを用いず直接的にAl埋め込み形成工程817を行っても完全な埋め込み性能を得ることができる。第1の工程815におけるTiAl単層膜の堆積は、ターゲットは、TiAlの金属合金ターゲットを用い、基板温度30℃、TiAlのターゲットRFパワーを1500W、DC電圧を430Vに設定し、不活性ガスとしてArを用い、Arの供給量を100sccmとして、チャンバ内圧力を自動調整機により10Paとして成膜を行う。また、成膜形状を制御するため、基板電極にRFパワー50Wに設定し成膜を行う。
次に、第2の工程816におけるチタンアルミニウム窒化膜の形成は、基板温度30℃、TiのターゲットRFパワーを3000W、DC電圧を0Vに設定し、反応性ガスである窒素の供給量を100sccmとして、チャンバ内圧力を自動調整機により10Paとしてプラズマ窒化を行う。DC電圧を0Vにすることにより、高密度かつ低エネルギーの窒素プラズマが生成されるため、チタンアルミニウム膜の表面層のみプラズマ窒化され、TiAlNバリア膜が形成される。ここで、高周波電源の周波数は、10−100MHzの間であることが好ましい。さらに望ましくは、上記圧力において、ポイントカスプ磁場を用いた高密度プラズマを形成するために、40−60MHzの間であることが、望ましい。
次に、第3の工程817におけるAlの堆積は、基板温度30〜450℃、AlのターゲットRFパワーを3000W、DC電圧を215Vに設定し、不活性ガスとしてArを用い、Arの供給量を100sccmとして、チャンバ内圧力を自動調整機により10Paとして成膜を行う。また、トレンチ底部への成膜膜厚量を増やすため、基板電極にRFパワー200Wに設定し成膜を行う。ここで、高周波電源の周波数は、10−100MHzの間であることが好ましい。さらに望ましくは、上記圧力において、ポイントカスプ磁場を用いた高密度プラズマを形成するために、40−60MHzの間であることが、望ましい。
【0028】
図8Aは、従来(特許文献2)の構造を示す説明図である。
図8Bは、本実施形態の構造を示す説明図である。従来はTiAlN膜5上にTiやTiN下地膜6を用いた構造であるが、本実施形態では、TiやTiN下地膜を用いなくてもプラズマ窒化によりTiAl膜4表面上にTiAlN膜5を形成し、TiAlN膜5上にAl膜7を有する構造である。なお、上記特許文献3の構造は、ゲート絶縁膜2上に第1の窒化チタン膜3(第1のバリア層)
を積層し、第1の窒化チタン膜3上に第2のTiN下地膜(第2のバリア層)を積層した構造であるため、バリア層が厚くなる。一方、特許文献4の構造は、ゲート絶縁膜2上に、窒化チタン膜3とAl膜7とを積層した構造であるが、Al膜7を流動可能な温度条件下で充填しなければならず、開口径15nm以下の微細なトレンチの場合、Al膜表面の凹凸が、電子部品の性能に影響する。
【0029】
図9は、本実施形態の
図1、
図6に記載のPCMスパッタ処理装置100を用い、様々な下地層を形成してAl埋め込み特性を確認した結果である。
図9の各写真にはX/Yの形で表される比率表示を付しており、分母(Y)は、観察されたトレンチの数を表し、分子(X)は第3の工程であるAlにより完全に埋め込まれたトレンチの数を表す。例えば、(c)の本実施形態のTiAlN下地層(RT)の場合の写真に記載された7/7は、観察された7個のトレンチのうち、完全にアルミで埋設されたトレンチが7個で、完全な埋設性であることを示している。また、(b)のTiAlN/Ti積層下地層(RT)の場合の写真に記載された1/7は、観察された7個のトレンチのうち、完全にアルミで埋設されたトレンチが1個であり、埋設性が低いこと示している。Al埋め込み特性は、SEM(Secondary Electron Microscopy;電子顕微鏡)による分析により評価した。
図9の(a)は、第1の工程であるTiAl膜の堆積を10nm成膜した後、第3の工程であるAl埋め込みを行った結果である(TiAl下地層という)。
図9の(b)は、第1の工程であるTiAl膜の堆積を10nm成膜した後、第2の工程であるチタンアルミニウム窒化膜形成工程を行い、さらにTi膜を形成し、第3の工程であるAl埋め込みを行った結果である(TiAlN/Ti積層下地層という)。
図9の(c)は、第1の工程であるTiAl膜の堆積を10nm成膜した後、第2の工程であるチタンアルミニウム窒化膜形成工程を行い、第3の工程であるAl埋め込みを行った結果である(本実施形態に係るTiAlN下地層という)。
図9の(d)は、第1の工程であるTiAl膜の堆積を10nm成膜した後、第2の工程であるチタンアルミニウム窒化膜形成工程を行い、さらにTiN膜を形成し、第3の工程であるAl埋め込みを行った結果である(TiAlN/TiN積層下地層という)。また、(a)〜(d)のそれぞれについて、第3の工程であるAl埋め込み温度をRT(室温)、250℃、450℃として評価した(ただし、(d)では250℃の結果は省略)。
図9の(a)では、Al埋め込み温度を室温から250℃、450℃に高くすることにより、空洞(以下Void)の発生率は改善されているが、Voidが多く見られている。
図9の(b)では、Al埋め込み温度を室温から250℃に高くすることにより、Voidの発生率は改善されており、さらに450℃に高くすることによりVoidの発生は見られなかった。一方、本実施形態に係る
図9の(c)では、室温でもVoidの発生率は改善されており、Al埋め込み温度を250℃、450℃に高くすることにより、Voidの発生は見られなかった。これは、TiAl下地層やTiAlN/Ti積層下地層では、Al埋め込みにおいてTiとAlの反応が起こり、合金化が促進され、Alのマイグレーションが抑制されていることが考えられる。
図9の(d)では、室温でもAl埋め込みはできているが、本実施形態に係るTiAlN下地層を用いる場合に比べて、平坦性が劣化することが解った。従って、本実施形態のTiAlN単層バリア膜を用いることにより、合金化が抑制され、Alのマイグレーションを促進することができ、さらに良好な表面の平坦性を得ることができることを示している。
さらに、(a)〜(c)のそれぞれについて、450℃では、表面上のAlに凝集が見られている。凝集が大きい場合、Alの反射率が劣化し、比抵抗値も高くなることが解っている。また、次工程においてCMPによる平坦化を行う場合、凝集によりAlの膜厚が一定では無いため、素子加工に不具合が出る。本実施形態のTiAlN膜を用いた場合であって、特にAl埋め込み温度250℃の場合では、その他の下地膜に比べ、完全にAl埋め込みができており、さらにAlの凝集が抑制できている。これは、TiAlN膜を下地に用いることにより、Alのマイグレーションが促進されるため、Al埋め込み温度を高くしなくても充分に埋め込み性が得られることを示している。
【0030】
図10Aは、様々な下地層を用いた場合の埋設率を示す図である。
図10Bは、様々な下地層を用いた場合のAl膜の反射率を示す図である。
図10Cは、様々な下地層を用いた場合のAl膜の比抵抗値を示す図である。なお、
図10A〜Cでは、それぞれAl埋め込み時の温度をRT(室温、すなわち20℃から30℃程度)、250度および450度に設定した結果を示している。
図10Aの縦軸は埋設率であり、
図10Bの縦軸は反射率であり、
図10Cの縦軸は比抵抗値である。
図10A〜Cの横軸は、下地層の種類を表す。具体的には、
図10A〜Cの各横軸において、AはTiAlN/TiN積層下地層(
図9の(d)に相当)の場合を示し、BはTiAlN/Ti積層下地層(
図9の(b)に相当)の場合を示し、CはTiAl下地層(
図9の(a)に相当)の場合を示す。また、D、EおよびFは全てTiAl層が窒化されてなる本実施形態に係るTiAlN下地層(
図9の(c)に相当)であるが、DはTiAl層の表面のみ窒化されている場合を示し、EはTiAl層の深さ方向の半分程度が窒化されている場合を示し、FはTiAl層の深さ方向の大部分が窒化されている場合を示す。
【0031】
図10Aより、Al埋め込みを室温で行った場合、埋設率は、本実施形態に係るTiAlN下地層を用いることにより改善され、室温でもTiAlN/TiN積層下地層を用いる場合と同等の埋設率が得られており、完全に埋め込みができている。
図10Bより、反射率は、本実施形態に係るTiAlN下地層を用いる場合であっても、Al埋め込み温度を高くすると劣化するが、TiAlN/TiN積層下地層を用いる場合に比較して反射率は改善できている。反射率が高いAl膜を形成するためには、TiAl上をプラズマ窒化してTiAlN下地層を形成し、Al埋め込み温度を250℃以下で成膜することが望ましい。また、
図10Cより、比抵抗値は、TiAlN/TiN積層下地層上やTiAl下地層を用いる場合ではAl埋め込み温度を高くすると劣化するが、本実施形態に係るTiAlN下地層を用いた場合では、Al埋め込み温度に依存せず、一定であることが解る。従って、埋設率が良く、反射率が高く、比抵抗値が低いAl膜を埋め込むためには、本実施形態のTiAlN膜を用いる必要がある。
【0032】
次に、
図11は第1の工程であるTiAl膜の堆積を10nm成膜した後、第2の工程であるチタンアルミニウム窒化膜形成工程を行い、第3の工程であるAl埋め込みを450℃で行った場合のTiAl層へのAl拡散量をSIMS分析(Secondary Mass Spectroscopy)を用いて調査した結果を示す図である。
図11の縦軸はAlの二次イオン強度であり、横軸はAl表面からの深さである。
図11において、▼はプラズマ窒化処理をしない場合、■は、下部電極301にバイアス電力を印加しない(0W)でプラズマ窒化処理をした場合、▲は下部電極301にバイアス電力を50W印加してプラズマ窒化処理をした場合、●は下部電極301にバイアス電力を200W印加してプラズマ窒化処理をした場合を示す。プラズマ窒化処理無しのTiAl層では、AlがTiAl層へ拡散しているが、本実施形態のプラズマ窒化処理をTiAl膜に施すことにより、TiAl層へのAlの拡散が抑制できていることが解る。また、下部電極301にバイアス電力を印加するかどうかによらずに、本実施形態のプラズマ窒化処理をTiAl膜に施すことにより、TiAl層へのAlの拡散が抑制できていることが解る。
【0033】
次に、
図12は、第2の工程であるTiAlN膜形成工程におけるTiAlN膜中の窒素濃度をXPS(X−Ray Photoelectron Spectroscopy)で測定した結果を示す図である。
図12の縦軸はN
2濃度であり、横軸は深さである。ここで、深さは、シリコン酸化膜をArでエッチングしたときのレートで換算したものである。測定方向は、TiAlN膜側(表面側)から測定を行っている。ここで、表面酸化層とTiAlN層の界面は、表面酸化層表面から1nm程度と定義した。本図において、■は、窒化処理なしの場合の窒素濃度分布を示したものである。◆は、バイアス電力50Wで、▲は、バイアス電力100Wで、●は、バイアス電力200Wで、□は、バイアス電力400Wで、△は、バイアス電力800Wで、それぞれ窒化処理した場合の窒素濃度分布を示したものである。基板印加電力を増加することによって、TiAlN膜中の窒素濃度は増加し、さらにTiAl膜を深くまで窒化されていることが解る。さらに、バイアス電力を高くするとともに、AlよりもTi含有量が増加していることから、AlNよりもTiN膜濃度が多いTiAlN膜が形成されており、そのため、Alの拡散を抑制できていると推測できる。
【0034】
次に、
図13は、本実施形態にて形成したTiAlN膜を用い、TiAlN膜上にAl膜を形成した素子の実効仕事関数値を示す図である。
図13の縦軸は実効仕事関数(eWF)であり、横軸はTiAl膜窒化時のバイアス電力である。なお、バイアス電力が0Wの地点には、TiAl膜の窒化処理を行わない場合の結果を示している。本図において、◆は素子形成後、熱処理なし、■は、素子形成後、400℃、15分の熱処理を施した場合、▲は、450℃、15分の熱処理を施した場合の実効仕事関数値を示したものである。450℃、15分の熱処理を施した後においても、下地層としてTiAlN膜を用いた場合には、N型MOSFETに適した実効仕事関数4.2eV以下となることが分かった。
【0035】
図14は、本実施形態を用いて形成したTiAlN膜上にAl膜を形成した後、熱処理を施した素子のリーク電流特性を示す図である。
図14の縦軸はリーク電流(Jg)であり、横軸は成膜後熱処理(PDA)時の温度である。本図において、◆は窒化処理なし(即ち、TiAlN膜でなくTiAl膜上にAl膜を形成した場合)、■は、基板印加電力50Wで窒化した場合、▲は、基板印加電力200Wで窒化した場合、リーク電流値を示したものである。本図より、特に450℃、15分間の高温の熱処理を施した場合に、窒化処理を施していない素子に比べて、窒化したTiAlN膜を用いた素子の方が、リーク電流の改善が見られていることがわかる。これは、TiAlN膜を用いた場合、
図11に示すように、Al拡散が抑制され、リーク電流が改善できたと推測する。以上より、本実施形態を用いて形成した窒化金属合金膜を用いた場合、N型MOSFETに適した実効仕事関数が得られ、リーク電流の改善が見られた。
【0036】
本実施形態によれば、第1の電極構成層(例えばTiAl)を成膜する第1の工程と、該第1の電極構成層をプラズマ窒化して窒化層を形成する第2の工程と、該窒化層の上に第2の電極構成層(例えばAl)を埋め込む第3の工程を備えるので、開口径15nm以下の微細なトレンチが形成された被処理体上でも開口径の減少を低減して、抵抗が低いAlを表面に凹凸無く、平坦に直接埋め込むことができる。
本実施形態では、第1の電極構成層の形成にスパッタ法を用いているため
、所望のターゲット組成に変更することにより、
凹部内の底部に形成される第1の電極構成層の合金組成を容易に制御することができるという効果を奏する。例えば、TiAl合金ターゲットを用いてスパッタにより第1の電極構成層を形成すると、TiAl合金組成制御性に優れる。例えば、Ti
50Al
50のターゲットを用いた場合では、凹部内の底部にターゲット組成同等のTi
50Al
50組成を有する第1の電極構成層が形成され、Ti
70Al
30のターゲットを用いた場合では、凹部内の底部にターゲット組成のTi
70Al
30組成を有する第1の電極構成層が形成される。したがって、TiAlターゲットの組成比率を変更することにより、第1の電極構成層のTiAl合金組成を所望に制御することができるという効果を奏する。
本実施形態では、第1の電極構成層の窒化処理にプラズマ処理を用いているため、被処理体の凹部内の底部と側壁部に形成された第1の電極構成層の表面を低温で窒化することができるという効果を奏する。一般的に用いられているCVD法では、金属合金を窒化するためのガス(NH
3等)を用いて処理が行われるが、ガス分解反応温度まで基板温度を増加する必要がある。そのため、素子を高温に加熱する必要があることによって、絶縁膜と第1の電極構成層との相互拡散が発生し、所望のデバイス特性が得られない。
本実施形態では、ポイントカスプ磁場を形成可能な磁石機構を用いているため、ターゲット表面に形成される磁場強度を面内で均一になり、かつプラズマ中のイオン粒子は、被処理体の凹部内の底部へ垂直入射する。その結果、第1の電極構成層の表面を均一にプラズマ窒化することができるという効果を奏する。また、ポイントカスプ磁場により高密度プラズマを発生できるため、所望のプラズマ窒素濃度を有する窒化膜層を短時間で形成することができる。また、即ち被処理体の凹部内の側壁へのスパッタ粒子の付着を抑制しつつ、被処理体の凹部内の底部への成膜ができる。第2の電極構成層(Al)埋め込みにもポイントカスプ磁場を用いているため、被処理体の凹部内の底部に対して効率的に成膜することができ、埋め込み不良率すなわち歩留りを改善できるという効果を奏する。
本実施形態では、第1の電極構成層の窒化処理の際に基板ホルダーにバイアス電力を印加しているため、イオンを被処理体の凹部底面に引き込むことができるので、均一性のよい窒化をおこなうことができるともに、バイアス電力を増減することにより、第1の電極形成層の表面窒化膜厚を制御することができ、ゲートラスト構造において第2の電極構成層の下部電極層への拡散を抑制できるという効果を奏する。
本実施形態では、第1の電極構成層の窒化処理を高圧(例えば1〜200Pa)の雰囲気中で行っているため、イオン化を促進することができ、かつプラズマ粒子のエネルギーが抑制できるため、第1の電極形成層の表面部のみをプラズマ窒化処理することができる。その結果、第2の電極構成層の下部電極層への拡散をより抑制できるという効果を奏する。
本実施形態では、低温(室温〜250℃)の温度で第2の電極構成層を形成しているため、第2の電極構成層は、表面平坦性に優れ、比抵抗は低く、反射率が高いという効果を奏する。
本実施形態では、各工程を大気暴露することなく実行しているため、各層への界面不純物吸着を抑制することができ、ゲートラストデバイスにおいて、所望の電気特性を有する膜構造を形成できるという効果を奏する。
【0037】
(第1の実施例)
本発明の第1の実施例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図15Dおよび
図15Eは、
図1、
図6に示す本発明のPCMスパッタ処理装置100を用いてトレンチ構造へ第1の工程のTiAl膜を形成し、第2の工程のプラズマ窒化処理により、TiAl表面層にTiAlN層を形成し、第3の工程のAl埋め込みを示した図である。まず、
図15Dに示すように、スパッタによってトレンチ構造901、902にTiAl膜905を堆積した。ターゲットは、TiAlの金属合金ターゲットを用い、スパッタガスとしてArを用いた。次に、Tiの金属ターゲットを用い、窒素プラズマを形成するためのガスとして窒素ガスを用いてTiAl膜905をプラズマ窒化し、TiAlN膜905に変換した。なお、本実施例ではプラズマ窒化によりTiAl膜905の全てをTiAlN膜905に変換したが、TiAl膜905の一部のみ(例えば、表面)を変換してもよい。次に、
図15Eに示すように、スパッタによってTiAlN膜905上にAl層906の埋め込みを行った。ターゲットは、Alの金属ターゲットを用い、スパッタガスとしてArを用いた。
【0038】
基板温度は25℃〜500℃、ターゲットパワーは100W〜5000W、スパッタガス圧は1Pa〜200Pa、Arガス流量は10sccm〜500sccm、窒素ガス流量は1sccm〜100sccm、の範囲内で適宜決定することができる。
【0039】
本実施例における具体的な成膜条件を以下に示す。第1の工程におけるTiAl膜905の堆積は、TiAlの金属合金ターゲットを用い、基板温度30℃、TiのターゲットRFパワーを1500W、DC電圧を430Vに設定し、不活性ガスとしてArを用い、Arの供給量を100sccmとして、チャンバ内圧力を自動調整機により10Paとして成膜を行った。また、成膜形状を制御するため、基板電極にRFパワー50Wに設定し成膜を行った。上述の形成工程を用いてTiAl膜905を膜厚5nm〜10nmの範囲で成膜した。次に、第2の工程におけるTiAl膜905のプラズマ窒化処理によるTiAlN膜905の形成は、基板温度30℃、TiのターゲットRFパワーを3000W、DC電圧を0Vに設定し、反応性ガスである窒素の供給量を100sccmとして、チャンバ内圧力を自動調整機により10Paとしてプラズマ窒化を行った。次に、第3の工程におけるAl層906の堆積は、基板温度400℃、AlのターゲットRFパワーを3000W、DC電圧を215Vに設定し、不活性ガスとしてArを用い、Arの供給量を100sccmとして、チャンバ内圧力を自動調整機により10Paとして成膜を行った。また、トレンチ底部への成膜膜厚量を増やすため、基板電極にRFパワー200Wに設定し成膜を行った。
【0040】
(第2の実施例)
第2の実施例は、ゲートラスト方式に適用した実施例である。
以下に本発明の第2の実施例を、図面を参照しながら説明する。
図15A〜
図15Fは本発明の第2の実施例である半導体装置の製造方法の工程を示した図である。本実施例では、第1の領域であるN型MOSFETを形成する領域と第2の領域であるP型MOSFETを形成する領域とのそれぞれに対して、第1の実施例における第1の工程であるTiAl膜の堆積と、第2の工程であるプラズマ窒化によるTiAlNバリア層形成と、第3の工程であるAl埋め込み工程を行い、それぞれに適した実効仕事関数を実現する金属ゲート電極を形成する。
図15Aに示すように、N型MOSFETを形成する領域とP型MOSFETを形成する領域に、それぞれトレンチ構造901と902を形成した。次に、
図15Bに示すように、トレンチ構造の内部を被覆するように、本発明におけるスパッタ処理装置を用いて金属窒化膜B903と金属窒化膜C904を形成した。次に、
図15Cに示すように、リソグラフィー技術とエッチング技術を用いてN型MOSFETを形成する領域におけるトレンチ構造901の底部を構成する金属窒化膜B903と金属窒化膜C904を除去した。本実施例では、金属窒化膜B903は硫酸と過酸化水素水と水の混合溶液を用いてウエットエッチングを行い、金属窒化膜C904は、Arプラズマによるエッチングにより除去した。
【0041】
次に、
図15Dに示すように、トレンチ構造の内部を被覆するように、本発明におけるスパッタリング方法を
実行する
図6に示した半導体製造装置にて、本発明の工程である第1の工程であるTiAl膜を堆積するためにチャンバ501に基板を搬送して、金属合金膜(TiAl膜)905を形成した。次に、
図15Eに示すように、第2の工程であるTiAl膜のプラズマ窒化を行うためにチャンバ502に基板を搬送してプラズマ窒化処理を行い、金属合金膜(TiAl膜)905を窒化金属合金膜(TiAlN膜)905に変換した。さらに、第3の工程であるAl埋め込みを行うためにチャンバ503に基板を搬送してAl埋め込みを行い、金属膜(Al膜)906を形成した。その後、CMP技術を用いて平坦化を行い
図15Fに示される構造を形成した。
【0042】
N型MOSFETを形成する領域であるトレンチ構造901では、Alからなる金属膜を形成する工程において、基板温度を300℃〜400℃に設定することで窒化金属合金膜905は、金属窒化膜900中を拡散し、N型MOSFETに適した実効仕事関数を達成することができることが解った。一方、P型MOSFETを形成する領域であるトレンチ構造902においては、金属窒化膜B903と金属窒化膜C904がAlの拡散を抑制するため、P型MOSFETに適した実効仕事関数を維持することができており、ゲートラストプロセスで必要な実効仕事関数が得られることが解った。更に、従来に比べて配線不良が改善されることが予想される。このことから、本発明の処理装置を用いたTiAlNバリア膜は、Alの拡散に対するバリア性が良いことを示している。作製した素子の、実効仕事関数、EOT、リーク電流特性を測定した結果、本発明におけるAl埋め込み方法を用いることで、EOTの増加を招くことなく、それぞれのMOSFETに適した実効仕事関数(N型MOSFETでは4.4eV以下、P型MOSFETでは4.6eV以上)が得られることを確認した。