(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種のセンサでは、そのダイアフラムのアスペクト比が感度と耐圧を決めるため、アスペクト比を変えることで、その測定レンジが分けられる。従って、一般的にアスペクト比の異なる、つまりレンジの異なるダイアフラムを1チップに搭載すれば、上述したような差圧/静圧複合センサ(差圧静圧のマルチバリアブルセンサ)を実現することが可能となる。しかしながら、この種のセンサにおいて、差圧の測定レンジのマルチ化は難しく、差圧のマルチレンジセンサは実現されていない。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、差圧の測定レンジのマルチ化を実現することが可能な圧力センサチップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために本発明は、基板と、基板の中央部に形成され一方の面および他方の面に受ける圧力差に応じた信号を出力する第1種のセンサダイアフラムと、基板上に第1種のセンサダイアフラムから離間して形成され一方の面および他方の面に受ける圧力差に応じた信号を出力する
第1種のセンサダイアフラムよりも受圧感度が低い第2種および第3種のセンサダイアフラムと、基板の一方の面および他方の面にその周縁部を第2種および第3種のセンサダイアフラムを挟んで対面させて接合された第1および第2の保持部材と、第1の保持部材に設けられ第1種のセンサダイアフラムの一方の面に第1の測定圧力を導く第1の導圧孔と、第2の保持部材に設けられ第1種のセンサダイアフラムの他方の面に第2の測定圧力を導く第2の導圧孔と、第1の保持部材に設けられ第1種のセンサダイアフラムに過大圧が印加された時の当該第1種のセンサダイアフラムの過度な変位を阻止する第1の凹部と、第2の保持部材に設けられ第1種のセンサダイアフラムに過大圧が印加された時の当該第1種のセンサダイアフラムの過度な変位を阻止する第2の凹部と、第1の保持部材の周縁部に第2種のセンサダイアフラムの一方の面に対向する空間として設けられた第1の室と、第2の保持部材の周縁部に第2種のセンサダイアフラムの他方の面に対向する空間として設けられた第2の室と、第1の保持部材の周縁部に第3種のセンサダイアフラムの一方の面に対向する空間として設けられた第3の室と、第2の保持部材の周縁部に第3種のセンサダイアフラムの他方の面に対向する空間として設けられた第4の室とを備え、第1の室および第2の室は、
第1の室が第1種のセンサダイアフラムの一方の面への第1の測定圧力が分岐して導かれる室とされ、第2の室が内部が基準圧とされた室とされ、第3の室および第4の室は、第4の室が第1種のセンサダイアフラムの他方の面への第2の測定圧力が分岐して導かれる室とされ、第3の室が内部が基準圧とされた室とされ、第1の保持部材は、第1種のセンサダイアフラムの一方の面への第1の測定圧力を分岐して第1の室に導く第1の通路を内部に有し、第2の保持部材は、第1種のセンサダイアフラムの他方の面への第2の測定圧力を分岐して第4の室に導く第2の通路を内部に有することを特徴とする。
【0009】
本発明において、基板には、その中央部に第1種のセンサダイアフラムが形成され、この第1種のセンサダイアフラムから離間して第2種および第3種のセンサダイアフラムが形成されている。そして、基板の一方の面および他方の面にその周縁部を第2種および第3種のセンサダイアフラムを挟んで対面させて第1および第2の保持部材が接合されており、第1の保持部材には第1種のセンサダイアフラムの一方の面に第1の測定圧力を導く第1の導圧孔と第1種のセンサダイアフラムの過度な変位を阻止する第1の凹部が設けられ、第2の保持部材には第1種のセンサダイアフラムの他方の面に第2の測定圧力を導く第2の導圧孔と第1種のセンサダイアフラムの過度な変位を阻止する第2の凹部が設けられている。また、第1の保持部材の周縁部に、第2種のセンサダイアフラムの一方の面に対向する空間として第1の室が、第3種のセンサダイアフラムの一方の面に対向する空間として第3の室が設けられ、第2の保持部材の周縁部に、第2種のセンサダイアフラムの他方の面に対向する空間として第2の室が、第3種のセンサダイアフラムの他方の面に対向する空間として第4の室が設けられている。
【0010】
本発明において、第1種のセンサダイアフラムの一方の面には第1の測定圧力が導かれ、第1種のセンサダイアフラムの他方の面には第2の測定圧力が導かれる。これにより、第1種のセンサダイアフラムは、第1の測定圧力と第2の測定圧力との圧力差に応じた信号を出力する。一方、第2種のセンサダイアフラムの
一方の面には、他方の面を基準圧として、第1種のセンサダイアフラムの一方の面への第1の測定圧力が第1の保持部材の内部に形成された第1の通路を通して分岐して導かれる。これにより、第2種のセンサダイアフラムは、第1の測定圧力と基準圧との圧力差に応じた信号を出力する。また、第3種のセンサダイアフラムの
他方の面には、一方の面を基準圧として、第1種のセンサダイアフラムの他方の面への第2の測定圧力が第2の保持部材の内部に形成された第2の通路を通して分岐して導かれる。これにより、第3種のセンサダイアフラムは、第2の測定圧力と基準圧との圧力差に応じた信号を出力する。
【0011】
すなわち、本発明において、第1種のセンサダイアフラムは第1の測定圧力と第2の測定圧力との差圧を検出する差圧センサを構成し、第2種のセンサダイアフラムは第1の測定圧力を静圧として検出する静圧センサを構成し、第3のセンサダイアフラムは第2の測定圧力を静圧として検出する静圧センサを構成する。ここで、第1の測定圧力が第2の測定圧力よりも高いものとした場合、第2種のセンサダイアフラムは高圧側の静圧センサを構成し、第3種のセンサダイアフラムは低圧側の静圧センサを構成する。第2の測定圧力が第1の測定圧力よりも高いものとした場合、第2種のセンサダイアフラムは低圧側の静圧センサを構成し、第3種のセンサダイアフラムは高圧側の静圧センサを構成する。
【0012】
本発明において、第2種および第3種のセンサダイアフラムの受圧感度
は第1種のセンサダイアフラムの受圧感度よりも低い。これにより、第1種のセンサダイアフラムから得られる圧力差を低圧レンジの差圧として、第2種のセンサダイアフラムから得られる静圧と第3種のセンサダイアフラムから得られる静圧との圧力差を高圧レンジの差圧として、低圧差圧印加時は、第1種のセンサダイアフラムでその差圧を高精度に測定し、高圧差圧印加時は、第2種および第3種のセンサダイアフラムでその差圧を高精度に測定するようにして、差圧の測定レンジのマルチ化を実現することが可能となる。高圧差圧印加時、第1種のセンサダイアフラムには過大圧が印加されるが、第1の保持部材および第2の保持部材には第1種のセンサダイアフラムの過度な変位を阻止する凹部が設けられているので、破壊されてしまうということはない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板の中央部に第1種のセンサダイアフラムを形成し、この第1種のセンサダイアフラムから離間して
第1種のセンサダイアフラムよりも受圧感度が低い第2種および第3種のセンサダイアフラムを基板上に形成し、基板の一方の面および他方の面にその周縁部を第2種および第3種のセンサダイアフラムを挟んで対面させて第1および第2の保持部材を接合し、第1の保持部材に第1種のセンサダイアフラムの一方の面に第1の測定圧力を導く第1の導圧孔と第1種のセンサダイアフラムの過度な変位を阻止する第1の凹部を設け、第2の保持部材に第1種のセンサダイアフラムの他方の面に第2の測定圧力を導く第2の導圧孔と第1種のセンサダイアフラムの過度な変位を阻止する第2の凹部を設け、第1の保持部材の周縁部に、第2種のセンサダイアフラムの一方の面に対向する空間として第1の室を、第3種のセンサダイアフラムの一方の面に対向する空間として第3の室を設け、第2の保持部材の周縁部に、第2種のセンサダイアフラムの他方の面に対向する空間として第2の室を、第3種のセンサダイアフラムの他方の面に対向する空間として第4の室を設け、
第1の室に第2の室を基準圧として第1種のセンサダイアフラムの一方の面への第1の測定圧力を第1の保持部材の内部に形成された第1の通路を通して分岐して導くようにし、第4の室に第3の室を基準圧として第1種のセンサダイアフラムの他方の面への第2の測定圧力を第2の保持部材の内部に形成された第2の通路を通して分岐して導くようにしたので、第1種のセンサダイアフラムから得られる圧力差を低圧レンジの差圧として、第2種のセンサダイアフラムから得られる静圧と第3種のセンサダイアフラムから得られる静圧との圧力差を高圧レンジの差圧として出力させるようにして、差圧の測定レンジのマルチ化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る圧力センサチップの第1の実施の形態(実施の形態1)の概略を示す図である。
【
図2】この圧力センサチップの基板における差圧用ダイアフラムおよび静圧用ダイアフラムの配置例を示す図である。
【
図3】この圧力センサチップにおけるストッパ部材の内部の非接合領域に離散的に形成された複数の凸部の形状を示す平面図である。
【
図4】この圧力センサチップにおけるストッパ部材の内部の非接合領域に離散的に形成された複数の凸部の形状の他の例を示す平面図である。
【
図5】この圧力センサチップにおける第1の静圧用ダイアフラムから得られる静圧と第2の静圧用ダイアフラムから得られる静圧との圧力差を求める演算処理部を示す図である。
【
図6】この圧力センサチップにおいて差圧用ダイアフラムがストッパ部材の凹部に着底した後の状態を示す図である。
【
図7】本発明に係る圧力センサチップの第2の実施の形態(実施の形態2)の概略を示す図である。
【
図8】実施の形態2の圧力センサチップにおいてストッパ部材の内部の環状の溝をスリット状(矩形状断面)とした例を示す図である。
【
図9】実施の形態2の圧力センサチップにおいてストッパ部材の内部の環状の溝を半円以上の溝と半円以下の溝とをずらした形状とした例を示す図である。
【
図10】実施の形態2の圧力センサチップにおいて差圧用ダイアフラムがストッパ部材の凹部に着底した後の状態を示す図である。
【
図11】本発明に係る圧力センサチップの第3の実施の形態(実施の形態3)の概略を示す図である。
【
図12】本発明に係る圧力センサチップの第4の実施の形態(実施の形態4)の概略を示す図である。
【
図13】第1および第2の静圧用ダイアフラムの別の構成例を示す図である。
【
図14】第1および第2の静圧用ダイアフラムの別の構成例を示す図である。
【
図15】本発明に係る圧力センサチップの第5の実施の形態(実施の形態5)の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下の説明では、本発明の権利範囲に含まれないものも実施の形態として記載されているが、ここでは全て実施の形態として説明する。
【0016】
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係る圧力センサチップの第1の実施の形態(実施の形態1)の概略を示す図である。同図において、11−1は基板、11−2および11−3は基板11−1を挟んで接合された第1および第2のストッパ部材、11−4および11−5はストッパ部材11−2および11−3に接合された第1および第2の台座である。ストッパ部材11−2,11−3や台座11−4,11−5はシリコンやガラスなどにより構成されている。
【0017】
この圧力センサチップ11Aにおいて、基板11−1には、第1種のセンサダイアフラムとして差圧用ダイアフラム1が、第2種のセンサダイアフラムとして第1の静圧用ダイアフラム2が、第3種のセンサダイアフラムとして第2の静圧用ダイアフラム3がドライエッチングにより形成されている。
【0018】
図2に基板11−1における差圧用ダイアフラム1および静圧用ダイアフラム2,3の配置例を示す。この例では、基板1の中央部に円形の差圧用ダイアフラム1を設け、この円形の差圧用ダイアフラム1を挟むようにして、半円帯状(C型)の静圧用ダイアフラム2および3を対向して設けている。
【0019】
すなわち、差圧用ダイアフラム1を囲むようにして環状のダイアフラムを分割して設け、一方を静圧用ダイアフラム2とし、他方を静圧用ダイアフラム3としている。本実施の形態において、静圧用ダイアフラム2および3の受圧面の面積は、差圧用ダイアフラム1の受圧面の面積よりも小さくされている。すなわち、静圧用ダイアフラム2および3の受圧感度は、差圧用ダイアフラム1の受圧感度よりも低くされている。
【0020】
この差圧用ダイアフラム1および静圧用ダイアフラム2,3が設けられた基板11−1はストッパ部材11−2とストッパ部材11−3との間に挟まれている。すなわち、基板11−1の一方の面および他方の面に、その中央部に差圧用ダイアフラム1を位置させて、またその周縁部を静圧用ダイアフラム2,3を挾んで対面させて、ストッパ部材11−2とストッパ部材11−3とを接合している。
【0021】
ストッパ部材11−2の周縁部には、静圧用ダイアフラム2の一方の面に対向する空間(半円帯状の空間)として室4が、また静圧用ダイアフラム3の一方の面に対向する空間(半円帯状の空間)として室6が設けられている。ストッパ部材11−3の周縁部には、静圧用ダイアフラム2の他方の面に対向する空間(半円帯状の空間)として室5が、また静圧用ダイアフラム3の他方の面に対向する空間(半円帯状の空間)として室7が設けられている。以下、ストッパ部材11−2に設けられている室4を第1の室、ストッパ部材11−3に設けられている室5を第2の室と呼ぶ。また、 ストッパ部材11−2に設けられている室6を第3の室、ストッパ部材11−3に設けられている室7を第4の室と呼ぶ。
【0022】
本実施の形態において、第2の室5および第3の室6の内部は基準圧(真空又は大気圧)とされており、静圧用ダイアフラム2の第1の室4に対向する一方の面の幅(静圧用ダイアフラム2の一方の面に対向する第1の室4の幅)W1は、静圧用ダイアフラム2の第2の室5に対向する他方の面の幅(静圧用ダイアフラム2の他方の面に対向する第2の室5の幅)W2よりも広くされている。また、静圧用ダイアフラム3の第4の室7に対向する他方の面の幅(静圧用ダイアフラム3の他方の面に対向する第4の室7の幅)W3は、静圧用ダイアフラム3の第3の室6に対向する一方の面の幅(静圧用ダイアフラム3の一方の面に対向する第3の室6の幅)W4よりも広くされている。
【0023】
また、ストッパ部材11−2の中央部には、差圧用ダイアフラム1の一方の面に対向する空間として室8が設けられており、ストッパ部材11−3の中央部には、差圧用ダイアフラム1の他方の面に対向する空間として室9が設けられている。室8および9は、差圧用ダイアフラム1の一方の面および他方の面に対峙する凹部11−2aおよび11−3aによって作られる空間とされ、この凹部11−2aおよび11−3aは差圧用ダイアフラム1の変位に沿った曲面(非球面)とされている。室8および9に対しては圧力導入孔(導圧孔)11−2bおよび11−3bが凹部11−2aおよび11−3aの頂部に形成されている。また、台座11−4,11−5にも、ストッパ部材11−2,11−3の導圧孔11−2b,11−3bに対応する位置に、圧力導入孔(導圧孔)11−4a,11−5aが形成されている。
【0024】
この圧力センサチップ11Aにおいて、ストッパ部材11−2は、導圧孔11−2bの周部に連通する非接合領域SA1を内部に有している。この非接合領域SA1は、基台11−1の一方の面と平行な面PLの一部を対向する第1の面PL1と第2の面PL2とに分けた領域として設けられている。
【0025】
また、この非接合領域SA1の対向する第1の面PL1およびPL2の少なくとも一方の面(この例では、第1の面PL1)上には、複数の凸部(柱)12が離散的に形成されており(
図3参照)、この複数の凸部12と凸部12との間の通路(溝)13が導圧孔11−2bの周部と非接合領域SA1の周端部14との間の連通路とされている。この例において、凸部12は円柱状とされているが、
図4に示すように、六角柱状とするなどしてもよい。
【0026】
この例において、ストッパ部材11−2は、基台11−1の一方の面と平行な面PLで2分割されており、この2分割された一方のストッパ部材11−21と他方のストッパ部材11−22とを、非接合領域SA1が設けられた面PLの非接合領域SA1を除く領域SB1同士を接合することにより1つのストッパ部材11−2としている。これにより、基台11−1の一方の面と平行な面PLは、導圧孔11−2bの周部に連通する非接合領域SA1と、導圧孔11−2bの周部には連通しない接合領域SB1とに分けられている。
【0027】
ストッパ部材11−3も、ストッパ部材11−2と同様、導圧孔11−3bの周部に連通する非接合領域SA2を内部に有している。この非接合領域SA2は、基台11−1の他方の面と平行な面PLの一部を対向する第1の面PL1と第2の面PL2とに分けた領域として設けられている。
【0028】
また、非接合領域SA2の対向する第1の面PL1およびPL2の少なくとも一方の面(この例では、第1の面PL1)上に、ストッパ部材11−2における非接合領域SA1と同様、複数の凸部(柱)12が離散的に形成されており、この複数の凸部12と凸部12との間の通路(溝)13が導圧孔11−3bの周部と非接合領域SA2の周端部14との間の連通路とされている。この例においても、凸部12は円柱状とされているが、六角柱状とするなどしてもよい。
【0029】
この例において、ストッパ部材11−3は、基台11−1の他方の面と平行な面PLで2分割されており、この2分割された一方のストッパ部材11−31と他方のストッパ部材11−32とを、非接合領域SA2が設けられた面PLの非接合領域SA2を除く領域SB2同士を接合することにより1つのストッパ部材11−3としている。これにより、基台11−1の他方の面と平行な面PLは、導圧孔11−3bの周部に連通する非接合領域SA2と、導圧孔11−3bの周部には連通しない接合領域SB2とに分けられている。
【0030】
ストッパ部材11−2において、第1の室4および第3の室6は凹部11−2aとともにストッパ部材11−21に設けられており、第1の室4と非接合領域SA1との間には圧力導入孔(導圧孔)11−2cが形成されている。また、ストッパ部材11−3において、第2の室5および第4の室7は凹部11−3aとともにストッパ部材11−31に設けられており、第4の室7と非接合領域SA2との間には圧力導入孔(導圧孔)11−3cが形成されている。
【0031】
この圧力センサチップ11Aでは、ストッパ部材11−2の導圧孔11−2bを通して測定圧力Paが室8の内部に導かれ、ストッパ部材11−3に設けられている導圧孔11−3bを通して測定圧力Pbが室9の内部に導かれる。これにより、差圧用ダイアフラム1が室8の内部に導かれた測定圧力Paと室9の内部に導かれた測定圧力Pbとの差に相当する変位を呈し、この変位により差圧用ダイアフラム1のエッジ部に発生する応力が差圧ΔPとして、差圧用ダイアフラム1のエッジ部に設けられているピエゾ抵抗素子(図示せず)の抵抗値の変化により検出される。
【0032】
一方、この圧力センサチップ11Aでは、ストッパ部材11−2の内部に設けられている非接合領域SA1に導圧孔11−2bを通して測定圧力Paが導かれ、この非接合領域SA1に導かれた測定圧力Paが導圧孔11−2cを通して静圧用ダイアフラム2の一方の面に対向する第1の室4に導かれる。静圧用ダイアフラム2の他方の面に対向する第2の室5の内部は基準圧(真空又は大気圧)とされている。これにより、静圧用ダイアフラム2が第1の室4の内部に導かれた測定圧力Paと第2の室5の内部の基準圧との差に相当する変位を呈し、この変位により静圧用ダイアフラム2のエッジ部に発生する応力が静圧Paとして、静圧用ダイアフラム2のエッジ部に設けられているピエゾ抵抗素子ra1〜ra4(
図2参照)の抵抗値の変化により検出される。
【0033】
また、この圧力センサチップ11Aでは、ストッパ部材11−3の内部に設けられている非接合領域SA2に導圧孔11−3bを通して測定圧力Pbが導かれ、この非接合領域SA2に導かれた測定圧力Pbが導圧孔11−3cを通して静圧用ダイアフラム3の他方の面に対向する第4の室7に導かれる。静圧用ダイアフラム3の一方の面に対向する第3の室6の内部は基準圧(真空又は大気圧)とされている。これにより、静圧用ダイアフラム3が第4の室7の内部に導かれた測定圧力Pbと第3の室6の内部の基準圧との差に相当する変位を呈し、この変位により静圧用ダイアフラム3のエッジ部に発生する応力が静圧Pbとして、静圧用ダイアフラム3のエッジ部に設けられているピエゾ抵抗素子rb1〜rb4(
図2参照)の抵抗値の変化により検出される。
【0034】
本実施の形態において、静圧用ダイアフラム2および3の受圧感度は、差圧用ダイアフラム1の受圧感度よりも低くされている。このため、低圧差圧印加時は、差圧用ダイアフラム1が差圧ΔPに相当する変位を呈するが、静圧用ダイアフラム2および3は静圧PaおよびPbに相当する変位を呈しない。高圧差圧印加時は、ストッパ部材11−2および11−3に設けられている凹部11−2aおよび11−3aによって差圧用ダイアフラム1の過度な変位が阻止されるので、差圧用ダイアフラム1は差圧ΔPに相当する変位を呈さず、静圧用ダイアフラム2および3が静圧PaおよびPbに相当する変位を呈する。
【0035】
そこで、本実施の形態では、
図5に示すように、第1の静圧用ダイアフラム2から得られる静圧Paと第2の静圧用ダイアフラム3から得られる静圧Pbとの圧力差をΔPab=|Pa−Pb|として求める演算処理部10を設け、この演算処理部10で求められる静圧Paと静圧Pbとの圧力差ΔPabを高圧レンジの差圧ΔP
Hとして出力する一方、差圧用ダイアフラム1から得られる圧力差ΔPを低圧レンジの差圧ΔP
Lとして出力するようにしている。
【0036】
これにより、低圧差圧印加時は、差圧用ダイアフラム(第1種のセンサダイアフラム)1でその差圧が高精度に測定され、高圧差圧印加時は、第1の静圧用ダイアフラム(第2種のセンサダイアフラム)2および第2の静圧用ダイアフラム(第3種のセンサダイアフラム)3でその差圧が高精度に測定されるものとなり、差圧の測定レンジのマルチ化が実現される。
【0037】
なお、高圧差圧印加時、差圧用ダイアフラム1には過大圧が印加されるが、ストッパ部材11−2および11−3に設けられている凹部11−2aおよび11−3aによって差圧用ダイアフラム1の過度な変位が阻止されるので、破壊されてしまうということはない。
【0038】
例えば、この圧力センサチップ11Aにおいて、測定圧力Pbを高圧側の測定圧とし、測定圧力Paを低圧側の測定圧とした場合、差圧用ダイアフラム1の他方の面に高圧側の測定圧力Pbがかかると、差圧用ダイアフラム1はストッパ部材11−2側に撓む。この際、ストッパ部材11−3には差圧用ダイアフラム1が撓んだ方向とは反対側に力が加わり、ダイアフラムエッジ(
図1中に点Gで示す箇所)に開きが生じようとする。なお、以下の説明では、
図1において、差圧用ダイアフラム1が撓んだ方向を上方向、撓んだ方向とは反対側を下方向と呼ぶ。
【0039】
この場合、本実施の形態では、ストッパ部材11−3の内部に設けられている非接合領域SA2に導圧孔11−3bを通して測定圧力Pbが導かれるので、この非接合領域SA2が測定圧力Pbの受圧面となって、ストッパ部材11−3に加わる下方向への力を抑制し、ダイアフラムエッジに開きを生じさせないようにする。これにより、差圧用ダイアフラム1の拘束による応力発生が低減され、ダイアフラムエッジへの応力集中が防がれる。
【0040】
この圧力センサチップ11Aにおいて、非接合領域SA2は、差圧用ダイアフラム1がストッパ部材11−2の凹部11−2aに着底した後、過大圧が大きくなったような場合、さらに大きな効果を発揮する。
【0041】
図6に差圧用ダイアフラム1がストッパ部材11−2の凹部11−2aに着底した後の状態を示す。差圧用ダイアフラム1の他方の面に過大圧がかかると、差圧用ダイアフラム1はストッパ部材11−2側に撓み、ストッパ部材11−2の凹部11−2aに着底する。この差圧用ダイアフラム1の凹部11−2aへの着底後、過大圧が大きくなると、ストッパ部材11−3に加わる下方向への力により、ストッパ部材11−3が変形し、ダイアフラムエッジに開きが生じようとする。
【0042】
この場合、本実施の形態では、ストッパ部材11−3の内部に設けられている非接合領域SA2にも、導圧孔11−3bを通して複数の凸部12と凸部12の間の通路13内に満遍なく過大圧が導かれるので、この非接合領域SA2が過大圧の受圧面となって、ストッパ部材11−31に上方向への力を加え、ストッパ部材11−31の変形を抑制、もしくは逆方向に変形させる。
図6の例では、差圧用ダイアフラム1の上方向への変形に追従する形で、ストッパ部材11−31を上方向へ変形させている。
【0043】
これにより、差圧用ダイアフラム1のストッパ部材11−2の凹部11−2aへの着底後、過大圧が大きくなっても、ダイアフラムエッジに開きが生じず、ダイアフラムエッジへの応力集中が避けられ、期待される耐圧が確保される。このため、静圧用ダイアフラム2および3による高圧レンジの差圧ΔP
Hの測定中、差圧用ダイアフラム1が破壊されてしまうということが防がれる。
【0044】
なお、本実施の形態において、ストッパ部材11−3の内部に設ける非接合領域SA2の面積は、すなわちストッパ部材11−3の内部の受圧面積は、ストッパ部材11−3の下方向への変形を抑制、もしくは逆方向に変形させるために、ストッパ部材11−3の凹部11−3aの受圧面積よりも十分大きな面積とすることが望ましい。
【0045】
また、本実施の形態では、ストッパ部材11−3の内部の非接合領域SA2の第1の面PL1の面上に複数の凸部12を離散的に形成するようにしているが、第2の面PL2の面上に複数の凸部12を離散的に形成するようにしてもよく、第1の面PL1と第2の面PL2の両方の面上に複数の凸部12を離散的に形成するようにしてもよい。
【0046】
また、上述では、測定圧力Pbを高圧側の測定圧とし、測定圧力Paを低圧側の測定圧とした場合を例にとって説明したが、測定圧力Paを高圧側の測定圧とし、測定圧力Pbを低圧側の測定圧とした場合には、ストッパ部材11−2の内部の非接合領域SA1がストッパ部材11−3の内部の非接合領域SA2と同じ役割を果たし、上述と同様の動作が得られる。
【0047】
また、本実施の形態では、ストッパ部材11−2,11−3の内部の非接合領域SA1,SA2の第1の面PL1の面上に、複数の凸部12を離散的に形成し、この複数の凸部12と凸部12との間の通路13を導圧孔11−2b,11−3bの周部と非接合領域SA1,SA2の周端部14との間の連通路としているので、通常用いられるオイル等の圧力伝達媒体の封入が容易となり、かつ圧力伝達媒体の伝達抵抗を下げることにより、伝達速度差による動作不良の影響を無くし、かつ、逆側からの圧力印加に対しては凸部12の面積を最適設計することにより、耐圧確保することが可能となるという効果も得られる。
【0048】
〔実施の形態2〕
図7にこの発明に係る圧力センサチップの第2の実施の形態(実施の形態2)の概略を示す。この実施の形態2の圧力センサチップ11Bでは、ストッパ部材11−2,11−3の内部に、非接合領域SA1,SA2に連続するストッパ部材11−2,11−3の肉厚方向へ張り出した環状の溝11−2d,11−3dを形成している。この環状の溝11−2d,11−3dは、離散的に分断された溝ではなく、連続した溝であり、溝断面の径を大きくすることが望ましい。
【0049】
なお、
図7に示した例では、環状の溝11−2d,11−3dの非接合領域SA1,SA2に直交する断面形状を円形としているが、必ずしも円形としなくてもよく、スリット状(矩形)としたり(
図8参照)、半円以上の溝と半円以下の溝とをずらした形状(
図9参照)としたりしてもよい。
【0050】
図10に
図7に示した圧力センサチップ11Bにおいて差圧用ダイアフラム1がストッパ部材11−2の凹部11−2aに着底した後の状態を示す。このような環状の溝11−2d,11−3dを形成することにより、この環状の溝11−2d,11−3dの内部に応力が分散されるものとなり、さらに高耐圧とすることが可能となる。
【0051】
〔実施の形態3〕
図11にこの発明に係る圧力センサチップの第3の実施の形態(実施の形態3)の概略を示す。この実施の形態3の圧力センサチップ11Cでは、ストッパ部材11−3中の非接合領域SA2に連通させた導圧孔11−3cを第4の室7ではなく、静圧用ダイアフラム3の一方の面側に位置する第3の室6に連通させるとともに、静圧用ダイアフラム3の他方の面側に位置する第4の室7の内部を基準圧(真空又は大気圧)としている。
【0052】
また、静圧用ダイアフラム3の第3の室6に対向する一方の面の幅(静圧用ダイアフラム3の一方の面に対向する第3の室6の幅)W4を、静圧用ダイアフラム3の第4の室7に対向する他方の面の幅(静圧用ダイアフラム3の他方の面に対向する第4の室7の幅)W3よりも広くしている。
【0053】
この圧力センサチップ11Cでは、ストッパ部材11−3の内部に設けられている非接合領域SA2に導圧孔11−3bを通して測定圧力Pbが導かれ、この非接合領域SA2に導かれた測定圧力Pbが導圧孔11−3cを通してストッパ部材11−21側に入り、静圧用ダイアフラム3の一方の面に対向する第3の室6に導かれる。静圧用ダイアフラム3の他方の面に対向する第4の室7の内部は基準圧(真空又は大気圧)とされている。
【0054】
これにより、静圧用ダイアフラム3が第3の室6の内部に導かれた測定圧力Pbと第4の室7の内部の基準圧との差に相当する変位を呈し、この変位により静圧用ダイアフラム3のエッジ部に発生する応力が静圧Pbとして、静圧用ダイアフラム3のエッジ部に設けられているピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化により検出される。
【0055】
この圧力センサチップ11Cでは、静圧用ダイアフラム2に加えられる測定圧力Paと同じ方向から静圧用ダイアフラム3に測定圧力Pbが加わり、基台11−1上で静圧用ダイアフラム2と3とが同方向に撓むものとなる。これにより、静圧用ダイアフラム2と3に加わる圧力の条件が同じとなり、高圧レンジの差圧ΔP
Hの測定精度が高まる。
【0056】
〔実施の形態4〕
図12にこの発明に係る圧力センサチップの第4の実施の形態(実施の形態4)の概略を示す。この実施の形態4の圧力センサチップ11Dは、実施の形態3の圧力センサチップ11Cの変形例であり、測定圧力Pa,Pbを同方向から取り入れるようにしている。
【0057】
この例では、測定圧力Paを測定圧力Pbと同方向側から取り入れるようにしており、台座11−5,ストッパ部材11−3,基台11−1,ストッパ部材11−2を貫通させて導圧孔15を設け、この導圧孔15を台座11−4を通してストッパ部材11−2の導圧孔11−2bに連通させることにより、測定圧力Pbと同方向側から取り入れた測定圧力Paを差圧用ダイアフラム1の一方の面および静圧用ダイアフラム2の一方の面へ導くようにしている。
【0058】
なお、上述した実施の形態では、静圧用ダイアフラム2および3を半円帯状(C型)のダイアフラムとしたが、
図13や
図14に示すように、差圧用ダイアフラム1を挾んで対向して設けた円弧状や矩形状のダイアフラム2−1,2−2で第1の静圧用ダイアフラム2を構成するようにし、角度を90゜ずらして同様に差圧用ダイアフラム1を挾んで対向して設けた円弧状や矩形状のダイアフラム3−1,3−2で第2の静圧用ダイアフラム3を構成するようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施の形態では、ストッパ部材11−2に非接合領域SA1を設け、ストッパ部材11−3に非接合領域SA2を設け、この非接合領域SA1,SA2を通して静圧用ダイアフラム2,3に測定圧力Pa,Pbを分岐して導くようにしたが、
図15に実施の形態5の圧力センサチップ11Eとして示すように、圧力センサチップ11Eの外側で測定圧力Pa,Pbを分岐させて、静圧用ダイアフラム2および3に測定圧力PaおよびPbを導くようにしてもよい。
【0060】
また、上述した実施の形態では、ストッパ部材11−2,11−3の内部の非接合領域SA1,SA2に複数の凸部(柱)12を離散的に形成し、この複数の凸部12と凸部12との間の通路(溝)13を導圧孔11−2b,11−3bの周部と非接合領域SA1,SA2の周端部14との間の連通路としたが、必ずしもこのような離散的に形成した凸部12によって作られる連通路としなくてもよく、単なるスリット状の隙間を連通路としても構わない。
【0061】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、各実施の形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。