特許第5970036号(P5970036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5970036
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】端部保護を有する耐湿性電極
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/04 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   A61N1/04
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-171284(P2014-171284)
(22)【出願日】2014年8月26日
(62)【分割の表示】特願2013-99088(P2013-99088)の分割
【原出願日】2007年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-237045(P2014-237045A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2014年8月26日
(31)【優先権主張番号】11/519,676
(32)【優先日】2006年9月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11/588,539
(32)【優先日】2006年10月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500369795
【氏名又は名称】アクセルガード・マニュファクチュアリング・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】アクセルガード,ジェンズ
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−276240(JP,A)
【文献】 特表2002−521526(JP,A)
【文献】 特開平2−126861(JP,A)
【文献】 実用新案登録第2543804(JP,Y2)
【文献】 実公平6−003533(JP,Y2)
【文献】 特表2002−521140(JP,A)
【文献】 特表2006−517130(JP,A)
【文献】 米国特許第5450845(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/0408 ― 5/0424
A61N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用電極であって、
上部側及び底部側を有する可撓性導電部材と、
前記可撓性導電部材と接触して外部装置との電気的接触を確立するコネクタと、
前記可撓性導電部材の上部側の上に配置される可撓性非導電シートであって、前記可撓性導電部材よりも大きい寸法を有し、連続的なシート周縁により前記可撓性導電部材からはみ出ている、可撓性非導電シートと、
前記可撓性非導電シートを前記可撓性導電部材の前記上部側に接着すると共に、前記コネクタを前記可撓性導電部材の上部側に固定する中央接着剤と、
前記連続的なシート周縁上で前記中央接着剤の周囲に配置され、使用者の皮膚に対する該電極のシールを可能にする非親水性の周縁接着剤と、
前記可撓性導電部材の底部側に前記周縁接着剤と離間した関係で配置され、電気的エネルギーを前記コネクタおよび前記可撓性導電部材を通じて前記使用者の皮膚に送るように構成される導電性のヒドロゲル接着剤と、
を備え、前記中央接着剤および前記非親水性の周縁接着剤が同一の層に配置される、医療用電極。
【請求項2】
前記中央接着剤が熱融解性接着剤を含む、請求項1記載の医療用電極。
【請求項3】
前記可撓性導電部材が導電性織物を含む、請求項1または2記載の医療用電極。
【請求項4】
請求項1記載の医療用電極において、前記中央接着剤および前記非親水性の周縁接着剤が共に、前記可撓性非導電シートに接着される、医療用電極。
【請求項5】
請求項4記載の医療用電極において、前記中央接着剤が前記非親水性の周縁接着剤の内側に配置される、医療用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には電極に関し、より詳細には、経皮神経刺激及び/又は筋肉刺激並びに生体信号記録に適した電極に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用電極は、適切な結合を確実にするために、電極の表面全体にわたって均一な電気分布を患者の皮膚に提供しなければならない。人体の曲線性のために、その上で使用される医療用電極は患者の皮膚の輪郭と一致するためだけでなく、患者の皮膚の相対運動に対応するためにも、可撓性でなければならないことは明らかである。
【0003】
電極の、患者の輪郭に対する不適切な屈曲及び成形の結果、患者の皮膚に炎症が生じる可能性があることが既知である。電極と皮膚との不均一な接触に起因する電気的な「ホットスポット」の結果、発疹又は灼熱感が生じる可能性がある。灼熱感は、神経刺激及び/又は筋肉刺激中の電気信号の印加後の数分以内に患者によって感じられる場合があり、一方、発疹状態は通常、発現するのにより長い時間期間がかかる。
【0004】
均一な電気的結合を提供するために、従来開発されてきた電極は、電気リード線若しくはコネクタへ且つ/又は電気リード線若しくはコネクタから電気信号を均一に結合するために、導電性織物及び導体箔を、導電性且つ可撓性の接着剤と組み合わせて利用してきた。
【0005】
たとえば、Axelgaardに対する、「ELECTRICAL STIMULATION ELECTRODE WITH IMPEDANCE COMPENSATION」と題する特許文献1、及び「CURRENT CONTROLLING ELECTRODE」と題する特許文献2のように、多数の電極が、電気パルスをリード線から電極全体に均一に導くためにインピーダンス補償を提供してきた。特許文献3は、導電性インク設計領域の使用による電極にわたる電流密度の制御を教示している。これらの特許文献は、この具体的な参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0006】
多数の従来技術の電極が、電極の接触領域全体にわたる十分な電流密度を提供するために、電極の可撓性について妥協してきた。このような電極は通常、導電性を提供するために金属メッシュ又は金属箔を利用しており、電極と患者の皮膚との間の運動に対応するために、それらの間に導電性ゲルを利用している。箔又はメッシュのこのような使用によって、炎症又は電極端部におけるホットスポットがしばしば引き起こされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,038,796号
【特許文献2】米国特許第5,904,712号
【特許文献3】米国特許第4,736,752号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
導電性接着剤を使用する医療用電極に伴う従来技術の共通の問題は、導電性接着剤又はゲルの端部からの電流の漏れであり、これは当該技術分野においては端部刺激(edge biting)として既知である。加えて、露出している接着剤又はゲルは、空気に曝されると乾燥する傾向を有し、加えて、ゲルは粘着性であるため、ゲルに異物が入る可能性がある。
【0009】
ほとんどの従来技術の電極に伴うさらなる問題は、電極と患者の皮膚との接触に利用される導電性ヒドロゲルが親水性であり、したがって水で飽和すると接着性を失うということである。したがって、このような電極を利用して患者を比較的長い時間期間にわたって監視する場合、吸水によってヒドロゲルの接着性の減衰が引き起こされる。
【0010】
この問題は、たとえば新生児保育器のような高湿度環境において特に重大である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、従来技術の電極に伴うこれらの問題に、導電部材と患者の皮膚との接触を防止すると共に、さらに導電性接着剤に耐湿性シールを提供することによって対処する。
本発明による医療用電極は通常、上部側及び底部側を有する可撓性導電部材と、当該可撓性導電部材と接触して外部装置との電極接触を確立するコネクタとを備える。
【0012】
可撓性非導電シートが、可撓性導電部材の上部側の上に配置され、当該可撓性非導電シートは、可撓性導電部材よりも大きい寸法を有し、シート周縁によりはみ出し部分が生じている。
【0013】
可撓性非導電部材を可撓性導電部材の上部側に接着すると共に、コネクタを可撓性導電部材の上部側に固定するために中央接着剤を提供することができ、シート周縁上で上記中央接着剤の周囲に周縁接着剤を配置することができ、以下でより詳細に論じられるように、使用者の皮膚に対する電極の耐湿性シールが可能になる。
【0014】
導電性接着剤が、電極を患者の皮膚に接着するために、可撓性導電部材の底部側に、周縁接着剤と離間した関係で提供及び配置される。この離間によって、導電性接着剤との水分の接触をさらに防止する。好ましくは、導電性接着剤はヒドロゲルであり、周縁接着剤はシリコーン接着剤である。
【0015】
本発明による改善は、可撓性導電部材の上部側のコネクタの上に配置される可撓性非導電シートを対象とする。上記のように、可撓性非導電シートの寸法は可撓性導電部材よりも大きく、それによりはみ出し部分が生じて、導電部材が使用者の皮膚と接触することを防止すると共に、さらに導電性接着剤にシールを提供する。周縁接着剤は、中央接着剤を囲むと共に、使用者の皮膚に対する電極の耐湿性シールを可能にするように提供される。
【0016】
本発明の別の実施の形態では、医療用電極は、上部側及び底部側を有する、複数の離間された可撓性導電部材と、複数のコネクタであって、各コネクタが対応する可撓性導電部材と接触して外部装置との電極接触を確立する、複数のコネクタとを備える。
【0017】
可撓性非導電シートが、可撓性導電部材上に提供及び配置され、当該可撓性非導電シートは、可撓性導電部材の合計寸法よりも大きい寸法を有し、それによって、シート周縁によりはみ出し部分が生じている。
【0018】
可撓性導電部材を可撓性非導電シートに接着すると共に、コネクタを対応する可撓性連結(connective)部材に固定するために複数の中央接着剤を提供することができる。シート周縁上で複数の中央接着剤の周囲に、使用者の皮膚に対する電極の耐湿性シールを可能にする周縁接着剤が配置される。導電性接着剤が、電極を患者の皮膚に接着するために、可撓性導電部材の底部側に、周縁接着剤と離間した関係で配置される。
【0019】
本発明は、添付の図面と合わせて解釈される場合に以下の詳細な説明を参照してより良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】概して、非導電シートと、接着層と、導電部材と、導電性接着剤とを備える、使用者/患者の皮膚上に配置されている従来技術の電極の断面図である。
図1a図1に示す電極の、電極が、加えられている外力に起因して巻き込まれている状態の、導電部材と皮膚との接触を示す断面図である。
図1b図1に示す従来技術の電極の、衣服が電極と擦れる動作に起因して、電極が使用者の皮膚から外れているところを示す断面図である。
図2】本発明による医療用電極であって、概して、上部側及び底部側を有する導電性織物と、当該部材の上部側と接触するコネクタと、可撓性導電部材を覆う可撓性非導電シートであって、はみ出し部分が生じている、導電部材及び導電性接着剤よりも大きい寸法を有する、可撓性非導電シートと、当該可撓性非導電シートを可撓性導電部材の上部側に接着する中央接着剤と、シート周縁で中央接着剤の周囲に配置される周縁接着剤であって、使用者の皮膚(図示せず)に対する電極のシールを可能にする、周縁接着剤とを示す、本発明による医療用電極の分解断面図である。
図3】導電性接着剤から離間されている周縁接着剤による、可撓性非導電シートの皮膚との直接の接着による、導電部材の皮膚との接触の防止を示す、患者の皮膚に付着された、図2に示される組み立てられた電極の端部の分解断面図である。
図4】複数の離間された可撓性導電部材と、コネクタと、導電部材上に配置される可撓性非導電シートであって、可撓性導電部材の合計寸法よりも大きい寸法を有し、それによって、シート周縁により完全なはみ出し部分が生じている、可撓性非導電シートとを示す、本発明の代替的な一実施形態の図である。
図5】中央接着剤及び周縁接着剤の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1図1a、及び図1bを参照すると、患者/使用者の皮膚12P上に配置されて示されており、概して、導電性接着剤14Pと、導電部材16Pと、接着層18Pと、非導電シート20Pとを備える、従来技術の電極10Pが示されている。
【0022】
図1は、皮膚12P上の最初の配置にある電極10Pを示している。しかしながら、図1Aに示されるように、電極10Pは矢印22Pによって示されるような非導電シートの動きを受けると、端部24Pが巻き上がることによって巻き込まれ、それによって導電部材16Pの端部26Pが接触し、皮膚12Pに灼熱感が与えられるか又は生じる。
【0023】
従来技術の電極10Pのさらなる欠点は、図1Bに示されるように、接着端部24Pが露出しているため、衣料品28Pに接触及び接着する可能性があり、矢印30Pによって示されるように衣服28Pが動くと、電極10Pは皮膚12Pから部分的に持ち上げられ、したがって電極10Pの効率が著しく低下する可能性があることである。
【0024】
従来技術の電極10Pのこれらの欠点は、図2及び図3に示される、概して、上部側14及び底部側16を有する可撓性導電部材12を備える、本発明による電極10によって克服される。
【0025】
可撓性導電部材は、導電性織物とすることができ、Axelgaardに対する米国特許第4,722,354号及び米国特許第4,708,149号に記載されており、これらの特許文献は、可撓性導電織物の説明を提供するために、その全体が本明細書に援用される。
【0026】
リード線22とジャック24とを備えることができるコネクタ20が、リード線22が部材の上部側14と接触した状態で設けられる。
オーバサイズの可撓性非導電シート26が、コネクタ20と共に可撓性導電部材12を覆い、シート26は、部材12と接触しているリード線22も保持する中央接着層28によって可撓性部材12に接着することができる。接着剤28は好ましくは、Bostick Findley、Borden、又は3Mによって製造される熱融解性接着剤である。中央接着剤28及び導電性接着剤44を、後述する同心周縁接着剤28aによってシールすることによって、湿気が防止される。
【0027】
重要なことに、シート26は部材12の全寸法よりも大きな寸法を有し、その結果、端部又は周縁26aは、部材12の外にはみ出る。図3を参照されたい。この構造によって、シート26を従来技術のように、その周縁に沿って部材と位置合わせする必要がなくなる。周縁接着剤28aは端部26aを覆い、好ましくはDow Corningから市販されているソフトスキンシリコーン接着剤である。この接着剤は非親水性であり、したがって、新生児保育器のような高湿度環境において特に重要な耐湿性シールを提供する。
【0028】
オーバサイズのシート26は、電極10が周縁26aに沿って使用者の皮膚に対してシールされることを可能にし、電極を垂直に位置合わせされた構成で安定化して、図1a及び図1bに示される従来技術の電極10Pの「巻き込み」動作を防止する。次に、これは、使用者による活動を可能にし、さらに、使用者が電極/皮膚結合を劣化させることなく入浴又はシャワーすることを可能にする。周縁接着剤28aによって、シート26の下の電極10に水が入ることが防止される。
【0029】
リード線22は、任意の適切な導電性材料から成ることができる。
再び図2を参照すると、導電性ヒドロゲル接着剤44を、電極10を図示されていない患者の皮膚に接着するのに利用することができる。適切な接着剤が米国特許第6,038,464号に記載されている。加えて、シート端部26a及び周縁接着剤28aはヒドロゲル接着剤44から離間されているため、間隙46によってヒドロゲル接着剤44への周囲の汚染がさらに防止される。
【0030】
患者の皮膚又は他の対象物が不注意で且つ/又は早まってヒドロゲルに接着されるのを防止するために、プラスチック、紙、又は他の適切な担体48を剥離コーティング50と共に設けることができる。プラスチック担体48及び剥離コーティング50は、電極10が患者の皮膚に付着される前に除去される。
【0031】
図4には、導電部材56の底部側68に配置される複数の高導電性インクパターン60、62、64を有する可撓性導電部材56を備える別の電極の実施形態54が示されている。パターン60、62、64の下の電極54の導電性をカスタマイズするために、導電性インクパターン60、62、及び64は、さまざまな形状及び格子パターンとすることができる。
【0032】
離間されているパターン60、62、及び64は、別個の電極として機能し、それぞれ、電極の実施形態10の説明に関して図2に示されている導電部材56の上部側(図4には示さず)に取り付けられているリード線72、74、76と連通する。
【0033】
離間されたインクパターン60、62、64を有する共通の導電部材56を利用することの利点は、この構造が、独立した電極間の離間の均一性を提供することである。これは事実上、患者の皮膚上の適切な電極配置を確実にするテンプレートを提供する。
【0034】
図4に示されるように、コネクタ72、74、76は、インクパターン60、62、64の上に配置されることは理解されたい。上記のように、電極ゲル44にわたる電流分布は独立して制御されるため、リード線72、74、76は、インクパターン60、62、64の境界80、82、84の間のいかなる場所にも配置することができる。
【0035】
本発明を有利に使用することができるように例示する目的で、本発明による特定の医療用電極を上記で説明してきたが、本発明はそれに限定されないことは理解されたい。すなわち、本発明は、記載されている要素を適切に備えるか、記載されている要素から成るか、又は基本的に記載されている要素から成ることができる。さらに、本明細書において適切に例示的に開示されている本発明は、本明細書において具体的に開示されていない任意の要素がない状態で実施してもよい。したがって、当業者には想起することができる、任意の及び全ての変更形態、変形形態、又は均等な構成は、添付の特許請求の範囲において画定される本発明の範囲内にあるとみなされるべきである。
図1
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5