特許第5970074号(P5970074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5970074
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】センサー・データを分析する装置と方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20160804BHJP
   A63B 71/06 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   A63B69/00 Z
   A63B71/06 Z
【請求項の数】25
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-539247(P2014-539247)
(86)(22)【出願日】2011年10月31日
(65)【公表番号】特表2015-505681(P2015-505681A)
(43)【公表日】2015年2月26日
(86)【国際出願番号】EP2011069166
(87)【国際公開番号】WO2013064174
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2014年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ムトシュラー,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】フランケ,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィット,ニコラス
【審査官】 青山 玲理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−104533(JP,A)
【文献】 特開2003−000788(JP,A)
【文献】 特表2009−528119(JP,A)
【文献】 特開2008−211781(JP,A)
【文献】 特表2004−522149(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0231198(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0043803(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0059060(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00−71/16
G01C 21/00−25/00
G06F 15/16−15/177
G06F 19/00
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポーツの試合のなかの関心の対象となるイベントである関心対象イベント(30;102)を検出する装置であって、
前記装置は、センサー・データ・ストリーム(4)を使って第1の基本イベントのストリーム(10b)を生成する第1の基本イベント検出部(8b)を備え、前記センサー・データ・ストリーム(4)は、運動学的データおよび関連するタイムスタンプを、あるセンサー・データ転送速度で未加工データとして運んでおり、前記未加工データは、複数の観察物体(72)について、前記タイムスタンプに示されている時間に、1つあるいは複数のセンサーを使って割り出された1つあるいは複数の運動学的性質に関連しており、前記第1の基本イベントのストリーム(10b)のデータ転送速度は、前記センサー・データ転送速度よりも小さく、
前記装置は、前記センサー・データ・ストリーム(4)を使って異なる第2の基本イベントのストリーム(10c)を生成する第2の基本イベント検出部(8c)を備え、前記第2の基本イベントのストリーム(10c)のデータ転送速度は前記センサー・データ転送速度よりも小さく、
さらに前記装置は、前記第1の基本イベントのストリーム(10b)と前記第2の基本イベントのストリーム(10c)とを使って、前記関心対象イベント(30;102)を割り出すために作動可能なイベント検出部(16;100)を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記運動学的データは、前記タイムスタンプに示されている時間における観察物体の地理的な位置を示す場所データに基づいており、前記場所データは前記観察物体に配置されている複数のセンサーからの場所情報から得られることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記運動学的データは、観察物体の位置情報と速度情報と加速度情報とを含むことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の基本イベント検出部(8b)および前記第2の基本イベント検出部(8c)は、前記センサー・データ・ストリーム(4)のみを入力として使うように作動可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
第1の観察物体の所定の近隣領域内に第2の観察物体があるという事を前記第1の観察物体の位置情報と前記第2の観察物体の位置情報とが示す場合、前記第1の基本イベントあるいは前記第2の基本イベントとして、近接イベントが生成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記所定の近隣領域は、前記第1の観察物体と前記第2の観察物体との間の所定の最大距離によって定義されることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
第1の観察物体の所定の近隣領域の外に第2の観察物体があるという事を前記第1の観察物体の位置情報と前記第2の観察物体の位置情報とが示す場合、前記第1の基本イベントあるいは前記第2の基本イベントとして、遠隔イベントが生成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
観察物体の速度の変化あるいは加速度の変化が所定の閾値を超える場合、前記第1の基本イベントあるいは前記第2の基本イベントとして、方向変化イベントが生成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
観察物体の速度が所定の閾値よりも小さい場合、前記第1の基本イベントあるいは前記第2の基本イベントとして、アイドリングイベントが生成されることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記アイドリングイベントは、前記観察物体の前記速度が所定の最低持続時間の間は少なくとも前記所定の閾値よりも小さい場合にのみ生成されることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
観察物体の速度が所定の閾値よりも大きい場合、前記第1の基本イベントあるいは前記第2の基本イベントとして、動作活発化イベントが生成されることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記動作活発化イベントは、前記観察物体の前記速度が所定の最低持続時間の間は少なくとも前記所定の閾値よりも大きい場合にのみ生成されることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の観察物体の位置情報の成分あるいは前記第2の観察物体の位置情報の成分が所定の閾値を超えるか所定の閾値よりも低くなる場合、前記第1の基本イベントあるいは前記第2の基本イベントとして、ライン超えイベントが生成されることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の基本イベント検出部(8b)が、前記第1の物体および前記第2の物体について近接イベントを検出し、前記第2の基本イベント検出部(8c)が、前記第2の物体について方向変化イベントを検出する場合、前記関心対象イベント(30;102)として、ヒットイベントが検出され、このヒットイベントは前記第1の物体が前記第2の物体に当たったことを示すことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の基本イベントおよび前記関心対象イベントを用いて、追加関心対象イベント(30;102)を検出する追加イベント検出部(18)をさらに備えることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記第1の基本イベント検出部(8b)によって近接イベントが検出され、前記イベント検出部(16)によってヒットイベントが検出される場合、前記追加関心対象イベント(30;102)として、物体保持イベントが生成されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記第1の基本イベント検出部(8b)によって遠隔イベントが検出され、前記イベント検出部(16)によってヒットイベントが検出される場合、前記追加関心対象イベント(30;102)として、物体喪失イベントが生成されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記イベント検出部(16;100)がステートマシン(100)として構成されていることを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
イベント検出部を用いてスポーツの試合のなかの関心の対象となるイベントである関心対象イベント(30;102)を検出する方法であって、
前記方法は、センサー・データ・ストリーム(4)を使って第1の基本イベントのストリーム(10b;20)を生成する工程を含み、前記センサー・データ・ストリーム(4)は、運動学的データおよび関連するタイムスタンプを、あるセンサー・データ転送速度で未加工データとして運んでおり、前記未加工データは、複数の観察物体について、前記タイムスタンプに示されている時間に、1つあるいは複数のセンサーを使って割り出された1つあるいは複数の運動学的性質に関連しており、前記第1の基本イベントのストリーム(10b;20)のデータ転送速度は前記センサー・データ転送速度よりも小さく、
前記方法は、前記センサー・データ・ストリーム(4)を使って異なる第2の基本イベントのストリーム(10c;26)を生成する工程を含み、前記第2の基本イベントのストリーム(10c;26)のデータ転送速度は前記センサー・データ転送速度よりも小さく、
さらに、前記方法は、前記第1の基本イベントのストリームと前記第2の基本的イベントのストリームとを使って、前記関心対象イベント(30;102)を割り出す工程を含む方法。
【請求項20】
スポーツの試合のなかの関心の対象となる関心対象イベント(30;102)を少なくとも1つ特定するために未加工データ部分を分析する分析フレームワークであって、前記未加工データ部分は、センサー・データ・ストリーム(4)の中で、あるセンサー・データ転送速度で伝送されており、各未加工データ部分は、観察物体について1つあるいは複数のセンサーを使って、前記タイムスタンプに示されている時間に割り出された1つあるいは複数の運動学的性質および関連するタイムスタンプに関連しており、
前記分析フレームワークは、少なくとも2つ以上の基本イベント検出部(8a−8e)を備える入力層(6)を備え、この入力層(6)は、前記センサー・データ・ストリーム(4)のみを入力として使って、少なくとも第1の基本イベントのストリーム(10b)と第2の基本イベントのストリーム(10c)とを生成し、前記第1の基本イベントのストリームのデータ転送速度および前記第2の基本イベントのストリームのデータ転送速度は、前記センサー・データ転送速度よりも小さく、
さらに、前記分析フレームワークは、前記関心対象イベント(30;102)を検出する1つ以上のイベント検出部(16,18)を備える1つ以上のイベント層(12,14)を備え、前記1つ以上のイベント検出部(16,18)のいずれも、入力として、唯一、前記第1の基本イベントのストリーム(10b)および前記第2の基本イベントのストリーム(10c)、あるいは、ある他のイベント検出部(16)によって提供された他のイベントのストリームを使うようになっていることを特徴とする分析フレームワーク。
【請求項21】
前記1つ以上のイベント層(12,14)の前記1つ以上のイベント検出部は、ネットワークを介して、前記入力層(6)の前記少なくとも2つ以上の基本イベント検出部(8b,8c)と接続されていることを特徴とする、請求項20に記載の分析フレームワーク。
【請求項22】
前記ネットワークは有線ネットワークであることを特徴とする請求項21に記載の分析フレームワーク。
【請求項23】
前記ネットワークの通信はインターネット・プロトコルに基づくことを特徴とする請求項21または請求項22に記載の分析フレームワーク。
【請求項24】
前記第1の基本イベント検出部(8b)および前記第2の基本イベント検出部(8c)は、観察物体の運動学的データのみを前記未加工データとして使うように作動可能であることを特徴とする請求項20から23のいずれか1項に記載の分析フレームワーク。
【請求項25】
コンピューターに実行されている場合に請求項19に記載の方法を行うことを特徴とするコンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る実施形態は、概して、センサー・データの分析に関する発明である。具体的に、本発明に係る実施形態は、高速で提供されるセンサー・データを分析するための装置と方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
場所を特定するために、様々な技術を駆使した無線センサー・ネットワークが使われる事がある。例えば、人間やその他の物体の場所を特定したり、人間やその他の物体を追跡したりするために、無線センサー・ネットワークを使う事がある。ここで、「場所を特定する」とは、地理的な場所や位置を検出し、割り出す事を意味する。一方、追跡するとは、短時間の間隔をおいて、何度も場所を特定する事を意味する。このような追跡は、動いている観察物体の位置やその他の運動学的変数を、時間を追って取得するために行う。例えば、サッカーやアメリカン・フットボールやラグビーやテニスなどのスポーツ競技で、選手や他の物体(例えばボール)の場所を特定するために、専用の場所特定システムや位置追跡システムを使う事がある。
【0003】
選手やボールの地理的な場所や位置について集めたデータを分析すると、サッカーの試合などのスポーツのイベント全体に関する統計情報や、個別のチームや個別の選手に関する統計情報が得られる。このようにして得られた統計情報は、様々な理由により、関心の対象になる場合がある。その一例として、様々な商業的関心が存在する。なぜなら、競技場で観戦している人々や家のテレビの前で観戦している視聴者にとって、特定の統計やその統計に関する分析が特に関連性があるかもしれないためである。したがって、特定の統計を提供すれば、スポーツ競技への関心を高める事ができる可能性がある。他の例では、位置に関する未加工データから得られる統計データをトレーニングに活用する事も可能である。具体的には、自分のチームの動きや対戦相手を分析したり、個別の選手の成績や健康状態を分析したりする事ができる。
【0004】
前述した場所特定システムや位置追跡システムは、様々な技術に基づいて構築できる。例えば、場所情報は、無線電波信号や磁場を分析する事によって割り出される。このため、送信機や受信機を個別の物体(例えば選手やボール)に装着して、システムでその個別の物体の場所を特定できるようにするという方法がある(この送信機や受信機は、通常、センサーとも呼ばれる)。また、対応する受信装置や送信装置を、関心の対象となる、サッカーの競技フィールドなどの地理的な領域にわたって、あらかじめ決められた場所に設置するという方法がある。信号の強度や伝播時間や位相を分析すると、センサー・データ・ストリームが得られる。このセンサー・データ・ストリームは、様々な瞬間における、個別の選手や物体(検出または観察される選手や物体)の地理的な位置や場所を示す。なお、信号の強度や伝播時間や位相を分析する事は、利用できる様々な技術的手法の一部にすぎない。場所に関するデータ・サンプルを、物体がその位置や場所にいつあったかという事を示すタイム・スタンプに関連付けてもよい(結合させてもよい)。場所に関するデータに加えて、速度(速さ)、加速度などの運動学的変数も同様に、結合させる情報として提供されてもよい。この場所に関するデータは、例えば、x座標、y座標、z座標を備えている。以下、当明細書では、場所特定センサー・システムによって提供される、場所に関するデータや運動学的データも、未加工(センサー)データと呼ぶ事にする。
【0005】
無線追跡システムの具体例について説明する。この無線追跡システムは、人間や物体に、非常に小さな送信機を装着する仕組みになっていてもよい。この送信機は、靴やユニフォームやボールに埋め込む事ができる。この送信機からの信号は、複数のアンテナに感知される。これらのアンテナは、サッカーのフィールドなど、観察の対象になっている場所を囲むように配置される。受信機のユニットは、収集された信号を処理し、それらの信号の到着時間(ToA)を割り出す。観察されている全ての物体を追跡するために、伝播遅延の差を計算し、この計算に基づいて各送信機の位置を絶え間なく割り出す。ある具体例では、送信機は、全世界でライセンスなしで利用できるように、2.4GHzの周波数帯で作動するようになっている。そして、その具体例では、個別の送信機を見分ける技術としてCDMA(符号分割多重アクセス方式)が使われている。
【0006】
ところが、スポーツの試合で、物体をある程度正確に追跡すれば、すぐに大量のセンサー・データが発生する。例えば、サッカーの試合で、ボールを、約3cmの正確さで追跡する場合、ボールの最大速度が約150km/hならば、1秒間に最大2000回ほどボールの位置を予想しなければならない可能性がある。150km/hは、サッカーボールの最大速度として妥当だろう。しかし、テニスや野球などの他のスポーツでは、さらに高い頻度でサンプリングや予想を行う必要がある事が確かである。また、サッカーの試合では、ボールの動きを追跡するだけでは不十分である。22人の選手の動きを追跡する事も、同様に重要である。前述したシステムは、基本的に、1cmの正確さであれば追跡に使える。このため、選手1人あたりに複数の追跡センサーを使う事が望ましいだろう。これによって、その選手の位置が得られるだけではなく、その選手がどのような姿勢を取っているか、解明できる。このようにして、例えば、オフサイドかどうか等を判断する事ができる。適度な数のセンサーを、両チームの選手と、サッカーの試合で必ず使用する用具に装着した場合、1秒あたり、最大で50000の位置データや未加工データのサンプルが発生する可能性がある。これに対応するセンサー・データ・ストリームのセンサー・データ転送速度は、毎秒50000になる可能性がある。
【0007】
前述したようなセンサー・データを分析するには、1つ1つの判断を行うたびに、複数のセンサーあるいは全てのセンサーの未加工データを、1度に全て把握する必要がある。なぜなら、各出来事を分析したり各結論を出したりする際、その都度、センサーの未加工データ全体のうちの、別々の未加工データに基づく情報が必要になるからである。つまり、従来の分析フレームワークを使うと、分析を行う全ての要素(entities)に、全てのデータが、同時に配信される必要がある。データを複数の観点から分析するために分析を行う要素の数を増やした場合、これらに全てのデータを同時に配信する事は不可能になる。このようなデータ配信を、実際に物事が起こっているタイミングと同時にあるいはほぼ同時に行う事は、前記システムでは、到底できない。それでも、これは、サッカーの試合でオフサイド・ポジションを指摘する場合や、別のスポーツの試合中に同様に瞬時に結論を出さないといけない場面では、必要になる可能性がある。
【0008】
したがって、関心のある情報を抽出するために、より効率良くセンサー・データ・ストリームを分析できるような構想の提供が必要とされる。
【発明の概要】
【0009】
本発明に係る一態様によれば、上記課題は、未加工データ部分を分析する分析フレームワークを利用することによって解決できる。この未加工データ部分は、センサー・データ・ストリームの中で、あるセンサー・データ転送速度で伝送されている。前記分析フレームワークは、入力層を備える。この入力層は、少なくとも2つ以上の基本イベント検出部を備える。そして、前記入力層は、前記センサー・データ・ストリームのみを入力として使い、少なくとも、第1の基本イベントのストリームおよび第2の基本イベントのストリームを生成する。さらに、前記分析フレームワークは、1つ以上のイベント層を備える。各イベント層は、関心の対象となるイベント(関心対象イベント)を検出する1つ以上のイベント検出部を備える。前記1つ以上のイベント検出部は、いずれも、入力源として、唯一、前記第1の基本イベントのストリームおよび前記第2の基本イベントのストリーム、あるいは、他のイベント検出部によって提供された他のイベントのストリームを使う。つまり、前記分析フレームワークは、イベントに基づいて階層的に分析を行う手法に従っている。この手法で、相互イベントは、従属状態が異なる別々の階層で、割り出され、または検出されたりする。
【0010】
一般的に、イベントとは、ある時点において瞬間的に起きた、興味を惹く出来事、と定義できる。イベントは、一般的に、センサーで感知可能な、関係のある特定の量の変化と関連している。このイベントは、階層の基盤、すなわち入力層から得られる、基本イベントであってもよい。この場合、基本イベントは、センサーのデータ(例えば、追跡システムによって提供される運動学的データ)に直接基づいている事になる。この結果、この基本イベントは、センサーで感知された、関係のある特定の量の変化を示している可能性がある。関心対象イベント(関心の対象となるイベント)とは、より高次の階層におけるイベントである。つまり、関心対象イベントは、他のイベントや基本イベント(基本的なイベント)に従属しているのである。より一般的に述べると、関心対象イベントは、以前に検出された他のイベントに従属しているのである。別の見方をすると、イベントや基本イベントは、ある判断基準を別のイベントあるいは前記未加工データに当てはめる事によって得られる情報を含んでいる。
【0011】
イベントに基づいて分析を行う手法を使えば、複数の処理ノードがネットワーク上で通信している状態で、元になっているデータを、並行して分析できる。これは、データ転送速度の高いセンサー・データ・ストリームが入力層の基本イベントの検出部に提供されるだけでよい。この入力層では、センサー・データ・ストリームが処理され、通常、低いデータ転送速度で基本イベントが割り出される。このため、尚更、元になっているデータを平行して分析する事が可能になる。より高次の階層では、基本イベントに基づいて分析が行われる。このため、判断を行う全ての要素(entities)にセンサー・データ・ストリームが配信される必要はない。センサー・データ・ストリームを、全てのイベント検出部に配信する必要もない。この結果、位置に関する、さらに大量のデータを分析できるようになる。
【0012】
また、より高次の階層にあるイベント検出部には、イベントが、削減された(比較的低い)データ転送速度で入力される。この結果、処理を並行して行えるようになる。例えば、いくつかのCPUあるいは演算ノードを有する分析フレームワークでは、イベント検出部や基本イベント検出部を、その分析フレームワークの中の、異なるCPUやコンピューターに振り分ける事によって、前述したように処理を並行して行う事ができる。イベントのデータの転送速度が削減されているので(小さいので)、イベントが起きたという事を、イーサネット(登録商標)に基づくLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)などの従来のネットワークを介して伝達する事さえ可能になる。この場合、たとえ、実際に物事が起こっているタイミングとほぼ同時に分析する必要があったとしても、分析フレームワークの性能を落とさなくて済む。イベントに関する情報として、未加工データではなく、イベント検出部の判断基準が満たされた(つまり、イベントが起こった)という事実だけを、互いに関連しているイベント検出部同士で伝達すればよい。この結果、イベント検出部同士で交換されるデータの量を低く抑える事も可能になる。なぜなら、各メッセージの長さは、一つの未加工データのサンプルの長さよりも短いからである。つまり、一定時間あたりのデータ・パケットの個数を減らせるだけでなく、伝送されるデータ・パケットのサイズも小さく抑える事ができる。他の実施形態では、イベントについて交換されるデータには、イベント検出部が割り出した、2つ、3つ、あるいはそれ以上の、あり得る(起こり得る)状態に関する情報が含まれる事もある。すなわち、割り出されたイベントや基本イベントには、YES/NOという2つの成分の情報よりも多くの情報が含まれてもよい。
【0013】
本発明に係る別の態様によれば、前述した課題は、関心対象イベントを検出する装置によって解決できる。この装置は、前記センサー・データ・ストリームを使って第1の基本イベントのストリームを生成する第1の基本イベント検出部を備える。さらに、前記装置は、前記センサー・データ・ストリームを使って異なる第2の基本イベントのストリームを生成する第2の基本イベント検出部を備える。ここで、前記第1の基本イベントのストリームのデータ転送速度も、前記第2の基本イベントのストリームのデータ転送速度も、前記センサー・データ転送速度より小さい。
【0014】
イベント検出部は、前記第1の基本イベントのストリームと前記第2の基本イベントのストリームとを使うことで、前記関心対象イベントを割り出すように動作可能になっている。このように、イベント検出部は、低いデータ転送速度で起こる基本イベントに基づいて判断し、分析を行うことができる。このイベント検出部は、高いデータ転送速度のセンサー・データ・ストリームに直接アクセスする必要がない。
【0015】
ここで、データ転送速度という用語には、ある瞬間におけるデータ転送速度という意味だけでなく、平均のデータ転送速度という意味もある、と解釈されるべきである。平均のデータ転送速度とは、ある一定期間にわたる瞬間的なデータ転送速度の平均を意味する。選択される基本イベントの集合体(セット)によっては、短期間で、特定の基本イベントがセンサー・データの転送速度で割り出されるという事もある。しかし、観察している期間、例えばサッカーの試合が行われている間における、その特定の基本イベントのデータ転送速度の平均は、ずっと小さくてもよい。
【0016】
本発明に係るいくつかの態様によれば、基本イベント検出部は、運動学的データのみを未加工データとして使う事もできる。これは、スポーツの試合などで追跡データの分析結果を即時に提供するためである。運動学的データとは、観察物体(観察される物体)の位置情報や速度情報や加速度情報の任意の集合体、と定義できる。このデータは、1次元、2次元、あるいは3次元の空間において提供されるようになっていてもよい。この結果、ここで使われる運動学的データは、どのような構成で使われるか次第で、ベクトルあるいはスカラーとなる。本発明に係る他の態様によれば、基本イベント検出部は、提供された位置情報に基づいて自ら速度情報や加速度情報を導きだしてもよい。この場合、センサーは、シンプルな追跡装置や測位装置などであってもよい。
【0017】
階層的な分析では、高い次元(高次の階層)で行われる全ての判断に必要な基礎情報を得るために、基礎イベントが的確に選択される。そして、これらの基本的な事象に基づいて分析が行われる。
【0018】
本発明に係る一態様によれば、第1の観察物体の所定の近隣領域内に第2の観察物体があるという事を、前記第1の観察物体の位置情報と前記第2の観察物体の位置情報とが示す場合、基本イベントとして、近接イベント(近くにあるというイベント)が生成される。前記所定の近隣領域は、どのような催しやスポーツの試合が観察されているかに依存する(つまり、前記所定の近隣領域は、催しやスポーツの試合の内容に依存して変化する。この内容によっては、複雑な形をした立体である場合もあるし、前記第1の観察物体と前記第2の観察物体との間の距離によって定義される場合もある)。近接は、他の多数のイベントを検出する際の入力データとして使われる事がある。例えば、ある選手やバッターやその他の用具がボールやその他の観察物体に当たったかどうか解明する際に、近接イベントは、入力データとして使われる。
【0019】
本発明に係る別の態様によれば、前記第1の観察物体の所定の近隣領域の外に前記第2の観察物体があるという事を、前記第1の観察物体の位置情報と前記第2の観察物体の位置情報とが示す場合、基本イベントとして、遠隔イベント(遠くにあるというイベント)が生成される。
【0020】
本発明に係る別の態様によれば、観察物体の速度(の方向あるいは大きさ)の変化あるいは加速度の変化が、所定の閾値を超える場合、基本イベントとして、方向変化イベント(方向が変わったというイベント)が生成される。この基準は、一般的に、スポーツや追跡に関するアプリケーションに役立つ。しかし、閾値の大きさは、観察されるスポーツによって異なる。したがって、閾値は、スポーツによって異なる場合があり、さらに、1つの試合の中でも、雨が降ってきたなど、環境の変化を反映させるために閾値が変動する場合もある。
【0021】
本発明に係る別の態様によれば、観察物体の速度が所定の閾値よりも小さくなる場合、その物体が不活発である事や静止しているという事を示すために、基本イベントとして、アイドリングイベント(暇な状態になったというイベント)が生成される。いくつかの実施形態では、アイドリングイベントは、観察物体の速度がある所定の最低持続時間の間は少なくとも前記所定の閾値よりも小さい状態が維持される場合にのみ生成される。
【0022】
本発明に係る別の態様によれば、観察物体の速度が所定の閾値よりも大きくなる場合、基本イベントとして、動作活発化イベント(動いている状態になったというイベント)が生成される。いくつかの実施形態では、動作活発化イベントは、観察物体の速度が、ある所定の最低持続時間の間は少なくとも前記所定の閾値よりも大きい状態が維持される場合にのみ生成される。
【0023】
本発明に係る別の態様によれば、観察物体の位置情報の少なくとも1つの成分が、所定の閾値を超え、あるいは、所定の閾値よりも低くなる場合、基本イベントとして、ライン超えイベント(ラインを越えたというイベント)が生成される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
次に、装置や方法に係るいくつかの実施形態を例に挙げて説明する。その際、次の図面に言及する。
図1図1は、センサー・データ・ストリームを分析する分析フレームワーク(仕組み)を示す模式図である。
図2図2は、センサー・データ・ストリームを使って、関心対象イベントを検出する方法の一態様を模式的に示すブロック図である。
図3図3は、イベントを検出するスキームの一例を模式的に示す図である。この例では、サッカーの試合でゴールに向けてシュートが放たれたというイベントが検出される。
図4図4は、イベントを検出するスキームの一例を模式的に示す図である。この例では、サッカーの試合でダブル・パスが行われたというイベントが検出される。
図5図5は、複数のイベントを模式的に示す図である。図5によれば、観察物体が所定の領域内にあるという事を効率良く割り出せる。
図6図6は、イベント検出部の一態様を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、少なくとも1つの関心対象イベント(関心の対象となるイベント)を特定(識別)するために未加工データ部分を分析する分析フレームワーク2を示す模式図である。この未加工データ部分は、センサー・データ・ストリーム4の中で、あるセンサー・データ転送速度で送信される。この未加工データ部分は、1つあるいは複数のセンサーを使って観察された物体(観察物体)の1つあるいは複数の性質に関するデータである。本実施形態と、その後で説明する実施形態では、サッカーの試合で観察される選手に関する運動学的変数およびボールに関する運動学的変数のみが未加工データに含まれる、と仮定する。
【0026】
フレームワーク2のうち、入力層6は、基本イベント検出部8a−8eを備える。これらは、センサー・データ・ストリーム4のみを入力(入力源)として、基本イベントのストリームを生成する。つまり、未加工データの入力を高速のセンサー・データ転送速度で受信するのは、分析フレームワーク2の入力層にある、基本イベント検出部8a−8eのみである。
【0027】
第1の基本イベント検知部8bと、第2の基本イベント検知部8cとは、センサー・データ・ストリーム4のみを入力(入力源)として、第1の基本イベントに関するストリーム10bと、第2の基本イベントに関するストリーム10cとを生成する。データの提供に適した技術であれば、どのような技術でも、センサー・データ・ストリーム4を提供するために利用できる。例えば、銅ケーブルやファイバー・ケーブルを使ったイーサネット・ネットワークを利用する事が可能である。その他、様々な有線、無線の技術も利用できる。これらの技術は、標準化された通信プロトコルや、特別に設定した通信プロトコルを用いている。
【0028】
分析フレームワーク2は、2つのイベント層12、14を備える。それぞれのイベント層は、関心対象イベントを検出するイベント検出部を備える。イベント層12、14の各々のイベント検出部が唯一入力(入力源)として用いるのは、基本イベント検出部が提供するストリームか、イベント層12、14の他のイベント検出部が提供するストリームである。例えば、イベント検出部16は、第1の基本イベント検出部8bのストリーム10bと、第2の基本イベント検出部8cのストリーム10cとを使って、関心対象イベントを割り出す。ストリーム10bは、さらにイベント検出部18にも提供される。当然、構成要素同士が任意の別の方法で相互依存していてもよい。しかし、説明の便宜上、ここでは、いくつかの相互依存の形態や接続形態だけを例に挙げている。
【0029】
イベント検出部同士は、有線のイーサネットで接続されていてもよい。また、本願に係る技術分野で知られている任意の技術に基づいた他のネットワーク接続で接続されていてもよい。個々のイベント検出部は、別々の演算ノード上で別々のソフトウェア処理として作動してもよい。また、いくつかのイベント検出部は、同じ演算ノード上で作動してもよい。さらに、イベント検出部は、専用ハードウェア、あるいは、プログラムで制御できるハードウェア等として構成されてもよい。したがって、図1に示されているイベント検出部同士の相互依存関係は、物理的なハードウェアの接続の例や論理的な接続の例として理解されるべきである。これらは、一つのイベント検出部から別のイベント検出部への情報の流れや、イベント検出部同士がどのように相互依存しているかを示している。
【0030】
図2は、センサー・データ・ストリーム4を使って関心対象イベントを検出する方法の一態様を模式的に示す。このセンサー・データ・ストリーム4は、あるセンサー・データ転送速度で未加工データを運んでいる。未加工データは、1つあるいは複数のセンサーを使って観察された物体(観察物体)の1つあるいは複数の性質に関連している。
【0031】
第1の基本イベント生成工程20では、第1の基本イベントに関するストリーム22が生成される。ここで、第1の基本イベントに関するストリーム22のデータ転送速度は、センサー・データ転送速度よりも小さい。第2の基本イベント生成工程24では、第2の基本イベントに関するストリーム26が生成される。ここで、第2の基本イベントに関するストリーム26のデータ転送速度は、センサー・データ転送速度よりも小さい。
【0032】
イベント生成工程28では、第1の基本イベントに関するストリーム22と第2の基本イベントに関するストリーム26とを使って、関心対象イベント30が割り出される。第1の基本イベント生成工程20と第2の基本イベント生成工程24とは、どちらが先に実行されても構わない。つまり、関心対象イベント30を割り出すのに使われる第1、第2のストリームの特定の基本イベントに関するデータは、同時に生成される必要がなく、同時に配信される必要もない。
【0033】
この目的のために、イベント検出部を、例えば、図6に示すようなステートマシン(状態機械)として構成する事もできる。
【0034】
次に説明する図3図5は、的確に選ばれた基本イベントのいくつかの態様を示す。これらの基本イベントは、サッカーの試合にとって、より高い次元で関心対象イベントを得るために使われる。
【0035】
図3および図4は、分析フレームワークの例を示している。これらの例では、多数の関心対象イベントを特定(識別)するために、サッカーの試合の選手やボールの位置情報を分析する。図3および図4に示される実施形態には、個別の階層にある、判断を行う要素(entities)や、複数のイベント検出部同士の相互依存関係や接続状態が全て示されているわけではない。図3および図4は、主に、階層的な分析方法がどのようなものかという事をより分かりやすく説明するために描かれている。具体的に、図3および図4は、いくつかの基礎イベントを使ってデータを分析すると、いくつかの基本イベントからある程度複雑な情報が得られる、という事を分かりやすく示すための図である。
【0036】
図3は、サッカーの試合でゴールへのシュートがブロックされたというイベント(関心対象イベント)を特定するために選手やボールの位置情報を分析する分析フレームワークの一例を示している。フレームワークの入力層では、ボールについて、「方向変化イベント」40が検出される。これは、例えば、提供された加速度を閾値と比較する事によって、あるいは、ボールの位置データの1次導関数と2次導関数とを演算することによって、ボールの方向の変化を断定(conclude)するものである。さらに、ライン越えイベント42が、生成、あるいは、得られる。このイベント42は、競技フィールドにおいてあらかじめ定められた仮想ライン(virtual line)を、ボールが越えたことを示す。
【0037】
ライン越えイベント42によって、ボールが特定領域内にあるという事が特定(識別)され、これによって領域イベント44が生成される。どのようにして特定領域を特定(識別)するのかは、図5に関する説明で、より詳しく解説する。ボールが競技フィールド内にあるという事から、観察されるボールが動作中のボール46である事を断定できる。この動作中のボール46は、サッカーの試合中に実際に使われているボールであり、競技フィールドの外に保管されている予備のボールではない。接近イベント48が、選手とボール、さらに、ボールとゴールに関して起こったとすると、方向変化イベントに示されるボールの方向の変化は、特定の選手がそのボールを蹴った事に起因すると断定される。イベント50が特定の選手がそのボールを蹴った事に対応する。同様に、イベント52によって、ゴールに向けてシュートが放たれたという事が断定される。その後、さらに、ボールとゴールキーパーについて、接近イベントが起これば、選手がボールを蹴ってもそのシュートがブロックされ、点数は入らなかった、という事を断定できる。図3から明らかなように、最終的に得られる複雑な情報は、的確に選ばれたほんのわずかな基本イベントから推測(gathered)される。
【0038】
図4は、サッカーの試合中の2人の選手によるダブル・パスを識別(特定)するために選手やボールの位置情報を分析する分析フレームワークの一例を示している。特定の選手がボールを蹴った事の割り出し(検出)は図3を参照して説明したようにして実行される。さらに、ボールの高さがピークに到達するイベント56は、ボールの速度の符号の変化やボールの速度ベクトルの成分の変化から割り出される。これにより、ボールがただドリブルされたのではなく、シュートされたということを示すことができる。近接イベント48によって、ボールの保持が始まってから終わったというイベント58が割り出される(特定できる)。このイベント58は、ボールが特定の選手に近い場所にあるという事を示す。特定の選手がボールをコントロールしているという事実は、符号60で表され、同じ1人の選手がボールを保持した状態でボールの加速度が変化しているという情報(ボールが様々な加速度になるという情報)から得ることができる。パス62は、1人の選手がもうボールの保持を止めてから、別の選手がボールを保持し始めるまでの間、ボールが動いている、という情報から割り出せる。これは、高さのイベント56によって検出される。最後に、ダブル・パス64は、その後、同じ選手同士が互いに2度パスをしたという事から割り出せる。図4の例でも、複雑な情報が分析され断定されているが、これらの複雑な情報も、的確に選択され明らかにされたほんのわずかな基本イベントに基づいて分析され断定される。
【0039】
図5は、ボール72が競技フィールドの中の特定領域74内に位置しているという情報を、わずか一種類の基本イベントから、非常に効率的に推測(収集)できるという事を示している。もとになる基本イベントは、ライン超えイベントである。このイベントは、競技フィールドを多数の区域に分けるために仮想的に設定されるまっすぐなライン(a straight line virtually projected)をボールが越えた事を示す。領域72は、4つのライン76〜82によって形成されている。これらのライン76〜82は直角に交差し、長方形の領域74を形成している。図5に示されているような直交座標系を使うと、これは(ボールが特定領域内に位置しているか否かの情報)、ボールの位置ベクトルの成分が、所定の閾値よりも大きいか小さいかを判断する事によって、実際に獲得できる。しかし、ここで説明する実施形態では、観察される領域の形状として、他にも様々な形状があり得る。すると、ラインを越えたかどうかを判断する際、例えば判断に用いる値(determinate)の設定などを違う計算方法で行わなければならない可能性がある。
【0040】
従来の手法を使って、ボール72が領域74内にあるかどうかを判断するには、各領域の四隅に対してボールがどの位置にあるかを、競技フィールド内の全ての領域について繰り返し判断する必要がある。つまり、従来の方法では、例えば、判断に用いる全ての値が同じ符号である場合、ボール72が領域74内にあるという事を断定する(結論付ける)ためには、領域74の四隅一つ一つについて、判断に用いる値を計算する必要があった。このような処理を、1秒間あたり、ボールがある例えば2000個の位置について即時に行うのは、ほとんど不可能であろう。
【0041】
ところが、本発明に係る実施形態を使えば、「ライン超え」という基本イベントに基づいてボールの位置を割り出すことができる。この、「ライン超え」という基本イベントが起きたかどうかは、フィールドを複数の区域に分けるライン一本一本について判断される。それらのラインの例が、領域74の境界を定めているライン76〜80である。ライン一本一本について、ボールがラインを越える時、ライン超えイベントあるいは相対的位置に関するイベントが割り出される(検出される)。図5に示されるように、ボールは、以前そのボールがあった位置84から、領域74内の現在の位置に移動する。この結果、ライン82に関連した基本イベント検出部の出力状態が変わる。すなわちライン82に関連した基本イベント検出部は、ライン超えイベントを生成するのである。
【0042】
ライン82に関連した基本イベント検出部が、ラインを越えたという要素(element)を生成する場合、イベント生成部は、このイベント(ラインを越えたというイベント)を受信し、さらに、ライン76、78、80に関連した基本イベント検出部が割り出したイベントも受信する。この結果、イベント生成部は、ボール72が現在、領域74内にある、というイベントを生成できる。イベント検出部は例えばステートマシン(状態機械)として構成する事ができる。この点については、図6に言及して説明する際にさらに詳しく解説する。従来の手法と比べると、所定の領域に対してボールがどこにあるか検知する際の計算負荷が、大幅に減る可能性がある。所定の領域の例として、ペナルティー・エリアが挙げられる。
【0043】
つまり、従来の手法では、定義された各領域に対して次の工程を行う必要がある:
この領域のまっすぐな境界(ライン)一本一本について:
観察された物体の位置に関して、判断に用いる値(determinate)を算出し;
算出された判断に用いる値を比較し、その物体が前記領域内にあるのかどうかを断定する(結論付ける)。
【0044】
これに対して、本発明に係る実施形態では、例えば図5に描かれているように、競技フィールドをn個の区域に分けるk本の線を定める事ができる。すると、次のような工程で検出作業を行う事ができる:
基本イベント検出部をk個起動させる。各検出部は、基本イベントとして、ボールがラインの一方の側(第1の側)にあるか他方の側(第2の側)にあるかを割り出すために(判断するために)、夫々が一本のラインに関連している。
イベント検出部をn個起動させる。これは、ボールが、各イベント検出部が関連する(担当する)領域の中に入った事を示すイベントを割り出すためである。各イベント検出部は、各自が関連する(担当する)領域の境界線についての基本イベント検出部に接続されている。
接続されている全ての基本イベント検出部は、各自が対応する情報を提供する場合、イベント検出部と一体となってイベントを割り出す。
【0045】
イベント検出部100はステートマシン(状態機械)として構成されてもよく、図6は、その例を模式的に示している。このステートマシンは、入力される4つのイベント、すなわち、入力値A,B,C,Dに依存している。これらの入力値は、例えば、一つあるいは複数の、基本イベント検出部から提供されるようになっていてもよい。このステートマシンが状態102になった時、ステートマシン、すなわちイベント検出部は、それに関連する関心対象イベントを生成するか、割り出す(判断する)。これは、当然、イベント検出部の入力に依存して決まる。このステートマシンは、その状態が起動設定(starting configuration)104に初期化される。イベントAが起こると、ステートマシンは状態106へと移行する。イベントBが起こると、ステートマシンは、状態106から状態108へと移行する。イベントCが起こると、ステートマシンは、最終的な状態102へと移行する。そして、ステートマシンは、関連したイベントが何か、割り出す(判断)する。イベントDが起こると、ステートマシンは、状態106,108から、最初の起動設定104に再び初期化される。このイベントDは、リセット信号のようなものであると解釈してもよい。図6に示される特定の実施態様では、最終的な状態102にたどり着くためには、信号A〜Cがどのような順番で発生するかが重要である。しかし、どのような順番でイベントが入力されても無関係であるような、別の態様のステートマシンを使う事も可能である。一般的に、ステートマシンをイベント検出部として使えば、それをハードウェア内に組み込める可能性がある。そのようにすれば、分析フレームワークにおいて計算負荷が減り、全般的な処理速度が上がる可能性がある。
【0046】
関心対象イベントの一部についてのみ説明したが、任意のさらなる関心対象イベントを、基本イベントに基づいて割り出す事もできる。任意のさらなる関心対象イベントとしては、例えば、一人の選手から別の選手へのシングル・パスや、ダブル・パスや、ゴールをめがけたシュートや、ドリブルや、フリーキックや、キックオフや、コーナーキックが挙げられる。
【0047】
当明細書ではサッカーの試合を代表例に挙げて説明したが、本発明に係る他の複数の実施形態は、もちろん、他のいかなるスポーツの試合にも応用できる。例えば、バスケットボールやハンドボールやバレーボールの試合やラグビーやアメリカン・フットボールやアイスホッケーやフィールドホッケーやポロや野球やテニスやゴルフなどへの応用が可能である。
【0048】
説明や図面は、本発明に係る原理の例を示しているにすぎない。したがって、これらの説明や図面に明示されていなくても、本発明に係る原理や趣旨に適合していて本発明の範囲に含まれているような様々な組み合わせを、当業者が作り出す事は可能であろう。さらに、上記の説明や図面に登場する全ての例は、主に教育的な目的で紹介されているにすぎない。つまり、これらの例は、本発明に係る原理や、当業者がどのような概念を創出して技術分野に貢献したかという事が、読者にとって理解しやすいものとなるように、提供されている。本発明は、明示されている特定の例や条件に限定されずに解釈されるべきである。さらに、本発明に係る原理や本発明の一態様や実施形態やそれらの具体例を紹介する全ての説明は、上記のものの均等物についても言及する事を意図して書かれている。
【0049】
(特定の機能を果たす)「・・・のための手段」のように表現されている機能ブロックは、それぞれ、特定の機能を果たすために構成された電気回路を備える機能ブロックとして理解するものとする。したがって、「何かをするための手段」といった表現は、「何かに適している、あるいは、何かのために操作可能な手段」と理解する事ができる。したがって、特定の機能を果たすための手段は、必ずしも(ある特定の瞬間に)その機能を果たしているとは限らない。
【0050】
図面に描かれている、機能ブロックなどの様々な構成要素の機能は、専用のハードウェアを使う事によって提供できる。専用のハードウェアの例として、プロセッサーや、目的に適したソフトウェアと連動してソフトウェアを実行できるハードウェアが挙げられる。機能がプロセッサーによって提供される場合、前記の機能は、一つの専用プロセッサー、一つの共有プロセッサー、あるいは、複数の個別のプロセッサーによって提供されてもよい。前記複数の個別のプロセッサーのうちのいくつかのプロセッサーは、共有プロセッサーであってもよい。さらに、「プロセッサー」や「制御部」という用語が使われていても、これらの用語は、ソフトウェアを実行できるハードウェアだけを意味すると解釈されるべきではない。「プロセッサー」や「制御部」という用語は、言外の意味として、例えば、次のものを含む事がある:デジタル・シグナル・プロセッサー(DSP)ハードウェア、ネットワーク・プロセッサー、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、ソフトウェアを格納するための読み取り専用メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、不揮発性記憶装置。従来から使われている他のハードウェアや、特別に設定されたハードウェアも「プロセッサー」や「制御部」という用語の意味に含まれてもよい。
【0051】
本願で紹介されているブロック図は、本発明に係る原理の実施形態の具体例である電気回路を概念化した図であるという事を、当業者は理解すべきである。同様に、フローチャートや工程系統図や状態遷移図や擬似コードなどは、様々なプロセスの例を示している。これらのプロセスは、コンピューターで読み取れる媒体内で実質的に表される事があり、本願でコンピューターやプロセッサーが紹介されていなくても、前記プロセスはコンピューターかプロセッサーで実行される。
【0052】
また、後述するクレームは、詳細な説明に組み込むものとする。一つ一つのクレームが、それぞれ独立した実施形態になり得るものとする。一方で、他の一つあるいは複数のクレームとの組み合わせについて言及している従属クレームがあるが、他の実施形態も、同様に、前記従属クレームと他の各従属クレームの内容との組み合わせを含む場合がある。そのような組み合わせは、本願で提示されているものとする。ただし、特定の組み合わせを外すという意図が明示されている場合は、その特定の組み合わせは本願の内容に含まれない。さらに、クレームに記載されている特徴点は、他のどの独立クレームにも含まれるという意図で記載されている。上記のクレームが特定の独立クレームを従属先として指定していなくても、その独立クレームは上記のクレームの特徴点を含むものとする。特に、従属クレームが符号器や送信機に言及している時、関連する符号器や送信機の、対応する特徴点も、明細書の開示内容の一部も、含まれるものとする。
【0053】
そして、明細書やクレームに開示されている方法は、その方法の各工程を実施するための手段を備えた装置によって実行される事が可能である。
【0054】
さらに、明細書やクレームに複数の工程や機能が開示されていても、それらを特定の順番で行うべきだとは限らない。したがって、複数の工程や機能が開示されていても、これらを特定の順番で行うべきだという限定は生じない。ただし、技術的な理由により工程や機能を互いに入れ替える事が不可能な場合を除く。
【0055】
さらに、いくつかの実施形態では、一つの工程が複数のサブ工程を含んでいる場合がある。一つの工程を複数のサブ工程に分解できる場合もある。サブ工程を除く、と明記されていない限り、サブ工程も、開示されている単一の工程の一部に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6