(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5970096
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
A61F13/49 311Z
A61F13/49 312Z
A61F13/49 410
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-30876(P2015-30876)
(22)【出願日】2015年2月19日
(62)【分割の表示】特願2011-277922(P2011-277922)の分割
【原出願日】2011年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-91554(P2015-91554A)
(43)【公開日】2015年5月14日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川上 祐介
【審査官】
笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−143696(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3045174(JP,U)
【文献】
実開平03−122823(JP,U)
【文献】
特開平11−299828(JP,A)
【文献】
特開2004−298395(JP,A)
【文献】
特開2005−087622(JP,A)
【文献】
特開2010−279443(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/041639(WO,A1)
【文献】
特開2008−253583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 〜 13/84
A61L 15/16 〜 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体前側と身体後側とに延びる前後方向、前記前後方向に直交する幅方向、着用者に向かう内方向、及び前記内方向と反対側に向かう外方向を有する吸収体と、前記吸収体よりも前記内方向に配置された液透過性の表面シートと、前記吸収体よりも前記外方向に配置された不液透過性の裏面シートと、を備える吸収性本体と、
前記吸収性本体よりも前記外方向に配置され、前記着用者の腰回り及び胴回りを覆う外装体と、を備える吸収性物品において、
前記外装体は、前記外装体の前側端部及び後側端部において内方向に向かって折り返され、前記外方向に配置された折り元部と前記内方向に配置された折り返し部とが積層されており、
前記折り返し部の前記前後方向における内側端部は、前記前後方向において前記吸収性本体よりも外側に位置し、かつ前記吸収性本体の前記前後方向における外側端部と離間しており、
前記外装体は、
前記吸収性本体と前記外装体が接着状態である内側接着領域と、
前記内側接着領域の前記前後方向外側に位置し、かつ前記吸収性本体と前記外装体が非接着状態である内側非接着領域と、
前記内側非接着領域の前記前後方向外側に位置し、かつ前記折り元部と前記折り返し部とが非接着状態である外側非接着領域と、
前記外側非接着領域の前記前後方向外側に位置し、かつ前記折り元部と前記折り返し部とが接着状態である外側接着領域と、
前記幅方向に伸縮する伸縮性部材と、を備え、
前記吸収体及び前記伸縮性部材は、重なっており、
前記伸縮性部材は、前記内側接着領域、前記内側非接着領域、前記外側非接着領域、前記外側接着領域、及び前記前後方向における前記折り返し部と前記吸収性本体との間の領域のそれぞれに配置されることを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記折り返し部の前記内側端部には、前記幅方向に伸縮する先端側伸縮性部材が配置されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、吸収体と、吸収体よりも外方向に配置され、吸収体の外装を構成する内面シートと、内面シートよりも着用者側に配置された漏れ防止シートと、を有する吸収性物品が記載されている。吸収性物品の内面シートは、腰回り開口において内方向に折り返されている。漏れ防止シートは、腰回り開口において折り返された内面シート間に配置されている。
【0003】
漏れ防止シートは、不液透過性のシートであり、吸収体によって吸収しきれなかった体液等の漏れを防止するシートである。漏れ防止シートの前後方向の外側端部は、腰回り開口近傍に配置され、漏れ防止シートの前後方向の内側端部は、吸収体よりも着用者側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−287693号公報(
図2、
図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の吸収性物品は、以下の問題があった。上述の吸収性物品は、吸収体と着用者との間に不液透過性の漏れ防止シートが配置されており、着用者の股間部に漏れ防止シートが密着してしまうことがある。股間部は、体液が排出される排泄口当接領域が近接しており、蒸れが生じ易い。この股間部において不液透過性の漏れ防止シートが密着すると、更に蒸れやすくなり、装着感が悪化するおそれがある。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、吸収体近傍の通気性を向上させ、蒸れを抑制することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る吸収性物品は、身体前側と身体後側とに延びる前後方向、前記前後方向に直交する幅方向、前記着用者に向かう内方向、及び前記内方向と反対側に向かう外方向を有する吸収体と、前記吸収体よりも前記内方向に配置された液透過性の表面シートと、前記吸収体よりも前記外方向に配置された不液透過性の裏面シートと、を備える吸収性本体と、前記吸収性本体よりも前記外方向に配置され、着用者の腰回り及び胴回りを覆う外装体と、を備える吸収性物品において、前記外装体は、前記外装体の前記前側端部及び前記後側端部において内方向に向かって折り返され、前記外方向に配置された折り元部と前記内方向に配置された折り返し部とが積層されており、前記折り返し部の前記前後方向における内側端部は、前記折り元部と接着されてなく、前記吸収性本体の前記前後方向における外側端部は、前記外装体と接着されていないことを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る吸収性物品は、外装体の前側端部及び後側端部で折り返された折り返し部の内側端部が外装体の折り元部と接着されてないため、折り返し部の内側端部が折り元部と離間し、内方向に突出する。また、吸収性本体の外側端部が外装体と接着されてないため、吸収性本体の外側端部が外装体と離間し、内方向に突出する。よって、折り返し部の内側端部と吸収性本体の外側端部とが内方向に突出し、この突出した部分によって着用者と外装体との間に空間を設けることができる。よって、吸収体近傍の通気性を向上させ、蒸れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】
図2に示すX1−X1’の模式断面図である。
【
図4】吸収性物品の着用状態を模式的に示した図である。
【
図5】変形例に係る吸収性物品のX1−X1’の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から
図4を参照して、実施形態に係る吸収性物品1について説明する。本実施形態に係る吸収性物品1は、例えば、パンツタイプのおむつやオープンタイプのおむつ等である。おむつは、大人用のおむつであってもよいし、子供用のおむつであってもよい。
【0011】
本実施形態に係る吸収性物品1は、パンツタイプのおむつである。吸収性物品1は、着用者の腹側に配置される前胴回り領域S1と、着用者の背側に配置される後胴回り領域S2と、着用者の股下に対応し、前胴回り領域S1と後胴回り領域S2との間に位置する股下領域S3と、を有する。
【0012】
吸収性物品1は、吸収性本体1Aと、外装体1Bと、を備える。吸収性本体1Aは、液透過性の表面シート2と、液不透過性の裏面シート3と、表面シート2と裏面シート3との間に配置される吸収体4と、を有する。吸収体4は、着用者の身体前側と身体後側とに延びる前後方向Lと、前後方向に直交する幅方向Wと、着用者に向かう内方向T1と、内方向と反対側(着用者から離れる側)に向かう外方向T2とを有する。外装体1Bは、吸収性本体1Aよりも外方向T2に配置されており、着用者の腰回り及び胴回りを覆うように配置される。
【0013】
図2は、
図1に示す吸収性物品を展開した状態を示す展開平面図である。
図2に示す状態から前後方向Lにおける中心を起点に前胴回り領域S1と後胴回り領域S2とが重なるように折り畳み、前胴回り領域S1の幅方向Wにおける外側端部と後胴回り領域S2の幅方向における外側端部とを接合することにより、
図1に示すパンツタイプのおむつが形成される。吸収性物品1には、着用者の腰回りが挿入される腰回り開口21と、着用者の脚がそれぞれ挿入される一対の脚回り開口22と、が形成される。
【0014】
表面シート2は、吸収体4よりも内方向(着用者側)T1に位置する。表面シート2には、不織布や開口プラスチックフィルムなどの液透過性のシートなどが使用される。
【0015】
裏面シート3は、吸収体4よりも外方向T2であって、外装体1Bよりも内方向T1に配置される。裏面シート3には、液不透過性のシートなどが使用される。裏面シート3が不液透過性であるため、着用者から排出され吸収体に吸収された排泄部が外装体に漏れることを防止できる。
【0016】
吸収体4は、表面シート2及び裏面シート3の間に設けられ、着用者からの排泄物を吸収する。吸収体4には、粉砕パルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物などが使用される。パルプの目付は、250〜400g/m
2であり、高吸収性ポリマー粒子の目付は、140〜200g/m
2である。
【0017】
外装体1Bは、外装トップシート11と、外装トップシート11よりも外方向T2に配置された外装バックシート12と、幅方向Wに伸長した状態で配置された伸縮性部材と、を有する。外装体1Bは、吸収性本体1Aよりも前後方向外側及び幅方向外側に延出している。
【0018】
外装体1Bを構成する外装トップシート11と外装バックシート12との間に、伸縮性部材が幅方向に伸長した状態で配置されている。伸縮性部材は、腰回り開口21近傍に配置される腰回り伸縮性部材と、着用者の胴回りに配置される胴回り伸縮性部材と、を有する。腰回り伸縮性部材は、前胴回り領域S1に配置された前腰回り伸縮性部材13Aと、後胴回り領域S2に配置された後腰回り伸縮性部材13Bと、を有する。胴回り伸縮性部材は、前胴回り領域S1に配置された前胴回り伸縮性部材14Aと、後胴回り領域S2に配置された後腰回り伸縮性部材14Bと、を有する。
【0019】
外装バックシート12は、腰回り開口22を形成する外装体1Bの前側端部10A及び後側端部10Bの折り目を基点に内方向に向かって折り返され、折り返された折り返し部60Aが、折り返されていない外装体1Bである折り元部60Bに積層されている。折り元部60Bは、外方向側に配置された外装バックシート12及び外装トップシート11であり、折り返し部60Aは、内方向側に配置された外装バックシート12である。
【0020】
折り返し部60Aは、折り元部60Bに積層された状態で折り元部60Bに一部が接着されている。外装体1Bは、折り返し部60Aと折り元部60Bとが接着された接着領域62と、折り返し部60Aと折り元部60Bとが接着されていない非接着領域61と、を有する。接着領域62は、前後方向において外装体1Bの前側端部10A及び後側端部10Bから内側に向かう一定の範囲に設けられており、非接着領域61は、前後方向において折り返し部60Aの内側端部60Cから外側に向かう一定の範囲に設けられている。折り返し部60Aの前後方向における内側端部60Cは、折り元部60Bと接着されてなく折り元部60Bから離間し、内方向に突出して配置されている。
【0021】
なお、本実施の形態では、折り返し部60Aの内側端部60Cと吸収性本体1Aの外側端部71Cとが前後方向に離間しており、折り返し部60Aの内側端部60Cと吸収性本体1Aの外側端部71Cとの間に空間Sが設けられているが、この構成に限られない。例えば、折り返し部60Aの内側端部60Cと吸収性本体1Aの外側端部71Cとが前後方向に離間せずに、折り返し部60Aの内側端部60Cと吸収性本体1Aの外側端部71Cとの一部が重なって配置されていてもよい。このような構成によっても、吸収性本体1Aの外側端部71C又は折り返し部60Aの内側端部60Cと外装体の折り元部60Bとが離間することによって、着用者と外装体1Bとの間に空間Sを設けることができる。よって、吸収体近傍の通気性を向上させ、蒸れを抑制することができる。
【0022】
吸収性本体1Aは、外装体1Bの折り返し部60Aよりも前後方向内側に配置されている。吸収性本体1Aは、外装体1Bと接着された接着領域72と、外装体1Bと接着されていない非接着領域71と、を有する。非接着領域71は、前後方向において吸収性本体1Aの外側端部から内側に向かう一定の範囲に設けられており、接着領域72は、非接着領域71間に設けられている。非接着領域71の前後方向における外側端部71Cは、外装体1Bと接着されてなく外装体1Bから離間し、内方向T1に突出して配置されている。
【0023】
吸収性本体の非接着領域71は、吸収体4よりも前後方向外側に配置されている。よって、吸収体4は、接着領域72に配置されており、外装体1Bに接着されている。例えば、吸収体4の端部が非接着領域71に配置され、外装体1Bに接着されていない場合には、吸収体4の端部が外装体1Bから浮き上がって折れ曲がることがあり、違和感が生じるおそれがある。しかし、吸収体4が接着領域72に配置されているため、吸収体4の端部が折れ曲がることを抑制し、違和感が発生することを抑制できる。
【0024】
図4は、本実施の形態に係る吸収性物品1を着用者が着用した状態を模式的に示した図である。前後方向において隣接する折り返し部60Aの内側端部60Cと、吸収性本体1Aの外側端部71Cが内方向T1に向かって突出しているため、この突出した部分によって着用者と外装体1Bとの間に空間Sを設けることができる。よって、吸収体近傍の通気性を向上させ、蒸れを抑制することができる。
【0025】
また、外装体1Bの前後方向における折り返し部60Aと吸収性本体1Aとの間には、伸縮性部材としての前胴回り伸縮性部材14A及び後胴回り伸縮性部材14Bとが配置されている。外装体1Bの前後方向における折り返し部60Aと吸収性本体1Aとの間は、空間を囲んで配置されている。この空間を囲む外装体1Bに伸縮性部材が設けられていることにより、空間よりも外方向に位置する外装体1Bが伸縮して外方向に変形し、空間Sを広く設けることができる。
【0026】
更に、折り返し部60Aの前後方向における内側端部60Cと重なって配置される折り元部60Bには、伸縮性部材としての前胴回り伸縮性部材14A及び後胴回り伸縮性部材14Bとが配置されている。非接着領域61において折り返し部60Aよりも外方向側の折り元部60Bが伸縮し、折り返し部60Aの非接着領域61が接着領域62との境界を基点に更に内方向に立ち上る。よって、空間を広く設けることができ、通気性を向上させ、装着感を向上させることができる。
【0027】
また、吸収性本体1Aの前後方向における外側端部71Cと重なって配置される外装体1Bには、伸縮性部材としての前胴回り伸縮性部材14A及び後胴回り伸縮性部材14Bとが配置されている。非接着領域71において外装体1Bが伸縮し、吸収性本体1Aの非接着領域71が接着領域72との境界を基点に更に内方向に立ち上る。よって、空間を広く設けることができ、通気性を向上させ、装着感を向上させることができる。
【0028】
また、非接着領域61の折り返し部60Aには、幅方向に伸縮する伸縮性部材が配置されていてもよい。
図5は、変形例に係る吸収性物品のX1−X1’の模式断面図である。変形例に係る吸収性物品の非接着領域61の折り返し部60Aには、幅方向に伸縮する伸縮性部材15が配置されている。伸縮性部材15は、折り返し部60Aの内側端部60Cに配置されている。折り返し部60Aの内側端部60Cは、伸縮性部材15によって幅方向に収縮し、ギャザーのように折り元部から立ち上がる。よって、更に空間Sを広く設けることができ、通気性を向上させ、装着感を向上させることができる。
【0029】
なお、伸縮性部材15は、折り返し部60Aの内側端部60Cのみに設けてもよいし、折り返し部60Aの内側端部60Cのみならず、内側端部60Cに隣接して複数設けてもよい。
【0030】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0031】
例えば、本実施の形態では、前胴回り領域S1及び後胴回り領域S2の両方において、折り返し部の内側端部と吸収性本体の外側端部とが内方向に突出するように構成されているが、この構成に限られない。具体的には、前胴回り領域S1及び後胴回り領域S2のうち少なくともいずれか一方において、折り返し部の内側端部と吸収性本体の外側端部とが内方向に突出するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…吸収性物品
1A…吸収性本体
1B…外装体
2…表面シート
3…裏面シート
4…吸収体
10A…前側端部
10B…後側端部
11…外装トップシート
12…外装バックシート
13A…前腰回り伸縮性部材
13B…前腰回り伸縮性部材
14A…前胴回り伸縮性部材
14B…前胴回り伸縮性部材
15…伸縮性部材
21…腰回り開口
22…脚回り開口
60A…折り先部
60B…折り元部
60C…内側端部
61…非接着領域
62…接着領域
71…非接着領域
71C…外側端部
72…接着領域
S1…前胴回り領域
S2…後胴回り領域
S3…股下領域