特許第5970108号(P5970108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5970108
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】腕時計のブレスレットのバックル
(51)【国際特許分類】
   A44C 5/24 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   A44C5/24
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-101598(P2015-101598)
(22)【出願日】2015年5月19日
(62)【分割の表示】特願2013-262427(P2013-262427)の分割
【原出願日】2013年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-164567(P2015-164567A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2015年5月19日
(31)【優先権主張番号】13155028.7
(32)【優先日】2013年2月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ロッコ・カタネーゼ
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第2361523(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0297592(US,A1)
【文献】 特開2000−279217(JP,A)
【文献】 実開昭59−108411(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/00−5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕時計のブレスレットのバックルであって、
前記バックルはカバー(2)を備え、
前記カバー(2)は、第2のブレスレットのストランド(8)と前記バックル(1)の前記カバー(2)との間に挿入された接続手段によって、第1の側部において第1のブレスレットのストランド(4)に、そして第2の側部において前記第2のブレスレットのストランド(8)に接続され、
前記接続手段は端部リンク(10)を備え、
前記端部リンク(10)は、前記端部リンク(10)が前記バックル(1)の前記カバー(2)に少なくとも部分的に係合する第1の位置と、前記端部リンク(10)が前記バックル(1)の前記カバー(2)の外にある第2の位置との間で、前記バックル(1)の長手方向に沿って摺動し、
前記端部リンク(10)は押しボタン(36)を備え、
前記押しボタン(36)を押すと、歯付き要素(38)は、前記歯付き要素(38)がラック歯部(14)と噛み合う第1の位置から、前記歯付き要素(38)が前記ラック歯部(14)との係合から解放される第2の位置へと変化する、バックルにおいて、
前記端部リンク(10)は、前記端部リンク(10)が前記バックル(1)の前記カバー(2)から外れるのを防ぐ制止手段を備え、前記制止手段は少なくとも1つの固定されたラグを備え、前記ラグは前記カバー(2)の底部に配設された溝(16)に突き出ており、前記溝は2つの端部停止部材(18)を画定することを特徴とする、腕時計のブレスレットのバックル。
【請求項2】
前記端部リンク(10)は、前記端部リンク(10)と前記カバー(2)の前記底部との間の摺動表面を画定する少なくとも1つのスキッド(48)を含む、請求項1に記載の腕時計のブレスレットのバックル。
【請求項3】
前記カバー(2)は、展開式バックル締結システム(6)によって前記第1のブレスレットのストランド(4)に接続され、
前記展開式バックル締結システム(6)を作動させる際の、前記端部リンク(10)のいずれの意図しない起動を防ぐために、一対の停止部材(50)が配設される
ことを特徴とする、請求項1に記載の腕時計のブレスレットのバックル。
【請求項4】
前記カバー(2)は、前記展開式バックル締結システム(6)によって前記第1のブレスレットのストランド(4)に接続され、
前記展開式バックル締結システム(6)を作動させる際の、前記端部リンク(10)のいずれの意図しない起動を防ぐために、一対の前記停止部材(50)が配設される
ことを特徴とする、請求項2に記載の腕時計のブレスレットのバックル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腕時計のブレスレット又はストラップのバックルに関する。より具体的には、本発明はブレスレットの長さを微調整する手段を備える、腕時計のブレスレットのバックルに関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計のブレスレットの長さを微調整する手段を備えるバックルは先行技術において既に公知である。ブレスレットの長さの微調整を有するバックルとは、ブレスレットの長さを短い範囲にわたって調整し、可能な限りフィットさせて、腕時計を装着する人の快適性を最適化することができるバックルを意味する。このようなバックルは通常、ブレスレットのストランドの1つをバックルカバーに接続する端部リンクを含む。この端部リンクは、端部リンクがバックルカバー内に収容される第1の「イン」位置と、端部リンクがバックルの外にある第2の「アウト」位置との間で、バックルの長手方向に摺動できる。その結果、微調整のために利用できる長さは、第1の位置と第2の位置との間の端部リンクの移動距離によって決定される。
【0003】
端部リンクは歯付き要素を介してラック歯部と協働し、これによって端部リンクの位置が定まる。歯付き要素がラック歯部と噛み合うと、端部リンクは固定される。歯付き要素をラック歯部との噛合から解放するために、弾性連結解除手段を設ける。
【0004】
上述のタイプのバックルは、例えば本出願人が出願した特許文献1から公知である。その特徴の1つによると、このバックルは端部リンクがバックルカバーから外れるのを防ぐ制止手段と嵌合する。この特徴によると、バックルカバーと端部リンクに接続されたブレスレットのストランドとの間の接続は、リンクを破壊しない限り分解不可能である。
【0005】
好ましい実施形態によると、制止手段は取り外し可能であり、これにより腕時計をアフターサービスに戻す際に必要に応じて端部リンクを交換できる。従って、第1のネジを螺入するネジ山付き貫通孔を端部リンクに設ける。第1のネジの先端は、バックルカバーの底部に配設された溝に突き出る。この溝は両端を、溝の底部に跡を付ける停止部材で制限されているため、第1のネジをひとたび螺入すると、この微調整端部リンクを分解することは全く不可能である。次に、キャップを打ち込むか又は接着して第1のネジを隠し、孔をユーザから見えないよう維持する。しかしながらこの場合、バックルを分解することは永久に不可能である。この欠点を克服するために、第1のネジの延長上に配設された第2のネジを用いて、第1のネジをユーザから見えないように隠すことが提案されている。このようにすると、第1のネジを取り外すために、第2のネジを取り外すだけで、アセンブリを分解できるよう保つことができる。
【0006】
以上から、端部リンクを確実に分解可能とするためには、バックルの構成が比較的複雑でなければならないことが明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第11192833.9号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、動作の信頼性が高い簡素な機械的構成を有する、腕時計のブレスレットのバックルを提供することにより、上述の欠点及びその他の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って本発明は、腕時計のブレスレットのバックルであって、このバックルはカバーを備え、このカバーは、第2のブレスレットのストランドとバックルのカバーとの間に挿入された接続手段によって、第1の側部において第1のブレスレットのストランドに、そして第2の側部において第2のブレスレットのストランドに接続され、接続手段は端部リンクを備え、この端部リンクは、端部リンクがバックルカバーに少なくとも部分的に係合する第1の位置と、端部リンクがバックルカバーの外にある第2の位置との間でバックルの長手方向に沿って摺動し、端部リンクは押しボタンを備え、押しボタンを押すと歯付き要素は、歯付き要素がラック歯部と噛み合う第1の位置から、歯付き要素がラック歯部との係合から解放される第2の位置へと変化する、バックルにおいて、端部リンクは端部リンクがバックルカバーから外れるのを防ぐ制止手段を備え、上記制止手段は少なくとも1つのラグを備え、このラグはカバーの底部に配設された溝に突き出て2つの端部停止部材を画定することを特徴とする、バックルに関する。
【0010】
これらの特徴の結果として、本発明は、ブレスレットの長さの微調整機構が、バックルカバーの底部に配設された溝に突き出る少なくとも1つのラグを備えた摺動端部リンクを含む、腕時計のブレスレットのバックルを提供する。端部リンクは固定されているか又は分解不可能であり、ラグはユーザから見ることはできず、これによってラグを隠すためのいずれの方策を取る必要もなくなる。
【0011】
本発明の補足的な特徴によると、端部リンクは、端部リンクとカバーの底部との間の摺動表面を画定する少なくとも1つのスキッドを含む。
【0012】
このもう1つの特徴の効果として、端部リンクとカバーの底部との間の接触表面は減少し、これによって摩擦力が制限され、端部リンクを動かしやすくなる。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明による腕時計のブレスレットのバックルの実施形態に関する以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。この例は、図面を参照して単なる非限定的な例として挙げるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、組み立て前の状態における、本発明のバックルの斜視図である。
図2図2は、微調整端部リンクを「イン」位置とした組み立て状態における、図1のバックルの斜視図である。
図3図3は、微調整端部リンクを「アウト」位置とした、図2と同様の図である。
図4図4は、微調整端部リンクを反転させた斜視図である。
図5図5は、本発明による微調整端部リンクの横方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ユーザから見えない制止手段を有する、ブレスレットの長さの微調整システムの摺動端部リンクを提供することからなる一般的発明概念に由来する。その結果、制止手段を隠すために注意を払う必要がなくなり、これによってバックルの設計が実質的に簡素になる。その上、端部リンクは少なくとも1つのスキッドの上でバックルの底部上を摺動し、このスキッドは端部リンクとカバーとの間の表面接触を減少させる。これによって摩擦力が低減され、端部リンクがより容易に移動できるようになる。
【0016】
図1は組み立て前の状態における本発明のバックルの斜視図であり、図2は組立状態における同一のバックルの斜視図である。全体を通して一般参照番号1で示す本発明によるバックルは、第1の側部において第1のブレスレットのストランド4に接続されたカバー2を含み、第1のブレスレットのストランド4の2つのリンクだけが図示されている。展開式バックル締結システム6をカバー2と第1のブレスレットのストランド4との間に挿入するが、この締結システムは公知のものであり、従ってここでこれ以上説明しない。なお、展開式バックル締結システム6は省略してよく、カバー2は第1のブレスレットのストランド4に直接接続してよいことに留意すべきである。カバー2は、その第2の側部において第2のブレスレットのストランド8に接続され、第2のブレスレットのストランド8の3つのリンクが図示されている。腕時計のブレスレットの長さを微調整するための端部リンク10を、カバー2と第2のブレスレットのストランド8との間に挿入する。
【0017】
図1を参照すると分かるように、カバー2は概ねU字型の部分を有し、互いに対面する2つの羽状部12を備える。これら羽状部12はそれぞれ、カバー2の内側に面する表面上にラック歯部14を備える。更に、カバー2の底部に配設された溝16は2つの端部停止部材18を画定し、この端部停止部材18の役割については以下に詳述する。最後に、端部リンク10は、カバー2の内側においてカバー2の底部と羽状部12との間で上記リンクを摺動可能にガイドする、側部ガイド表面20を含む。図2図3とを比較すると、端部リンク10は、端部リンク10がバックル1のカバー2に係合する第1の位置(図2)と、端部リンク10がバックル1のカバー2の外にある第2の位置(図3)との間で、バックル1の長手方向に沿って摺動できることがわかる。ブレスレットを調整するために利用できる長さは、第1の位置と第2の位置との間の端部リンク10の移動距離によって決定される。
【0018】
端部リンク10は、リンクが第2のブレスレットのストランド8の近傍に備える2つの端部ナックル24の間に入れ子状に配置される、中央ナックル22を含む。リンクはバー26によって互いに組付けられ、このバー26は固定されない状態でナックル22、24を貫通し、2つの端部ネジ28で保持される。
【0019】
端部リンク10は、バックル1の長手方向対称軸に対して横断方向に延在する溝30を含み、この溝30内にはV字型のバネ32が配設される。ネジ34を用いて溝30内に固定されるバネ32は、押しボタン36で覆われる。
【0020】
押しボタン36は、実質的に直線状の起動バーの形態であり、これはバックル1の長手方向対称軸に対して横断方向に延在し、両端に例えば半円柱形状の歯付き要素38を有する。これら歯付き要素38はラック歯部14と噛み合う構成になっている。図2に示すように、端部リンク10及びその押しボタン36をバックル1のカバー2の内側において2つの羽状部12の間で摺動させると、圧縮状態で設置されたバネ32は押しボタン36をラック14の方向へ押し、これによって歯付き要素38はラック歯部14と噛み合うことが明らかである。反対に、押しボタン36をバネ32の弾性復元力に対して矢印Aの方向に押圧すると、歯付き要素38はラック歯部14との係合から解放される。
【0021】
図4、5を参照すると、バネ32を固定するネジ34を螺入するネジ山付き貫通孔40が、端部リンク10に機械加工されていることがわかる。更に本発明によると、カバー2の底部に対面する端部リンク10の底面42には、カバー2の底部に配設された溝16に突き出る少なくとも1つ、好ましくは2つのラグ44を設ける。この溝16は各端部において、溝16に制限を設定する停止部材18によって制限されているため、微調整端部リンク10は、ひとたびバックル1のカバー2内に配置すると、分解することは全く不可能である。実際、端部リンク10を組付けるために、以下のステップを実行する:端部リンク10及びその押しボタン36をカバー2の羽状部12の間で摺動させ、その後ネジ46を用いて、カバー2の内側を向いた羽状部12の表面上にラック歯部14をネジ止めする。
【0022】
本発明の別の特徴によると、端部リンク10の底面42に少なくとも1つ、好ましくは2つのスキッド48を有する端部リンク10を設け(図4を参照)、端部リンク10はこのスキッド48を介して、バックル1のカバー2の底部全体にわたって摺動する。これらスキッド48により、端部リンク10とカバー2の底部との間の接触表面は減少し、これによって摩擦力が制限され、端部リンク10をカバー2の内部で摺動させやすくなる。図示していない本発明の第1の変形実施形態によると、スキッド48は端部リンク10の底面42の全長にわたって延在する。図1に示す第2の変形実施形態によると、スキッド48はカバー2の底面42の長さの一部のみに延在し、これにより、端部リンク10がバックル1のカバー2の外にある第2の位置(図3)に端部リンク10を引き出した場合でさえ、スキッド48とカバー2の底部との間の接触跡は見えないままである。実際、スキッド48はカバー2の底部に跡を付ける傾向を有し、これはユーザから見える摩耗跡を残すことが分かった。
【0023】
最後に、展開式バックル締結システムを作動させる際の、本発明による微調整デバイスの意図しない起動を防ぐために、一対の停止部材50を配設する。
【0024】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではないこと、及び当業者は、本特許出願に添付の請求項によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な単純な改変及び変形を想定できることは言うまでもない。ラグ及びスキッドは端部リンクの主要部に機械加工してよいことに特に留意されたい。代替として、ラグ及びスキッドを備える端部リンクを、チタン又は鋼鉄等の金属粉末を用いて金属射出成形(MIM)によって単一部品として作製してよい。更に、端部リンクと第2のブレスレットのストランドとの間にダイバーズエクステンションを配置できる。
【符号の説明】
【0025】
1 バックル
2 カバー
4 第1のブレスレットのストランド
6 展開式バックル締結システム
8 第2のブレスレットのストランド
10 端部リンク
12 羽状部
14 ラック歯部
16 溝
18 端部停止部材
20 側部ガイド表面
22 中央ナックル
24 端部ナックル
26 バー
28 端部ネジ
30 溝
32 バネ
34 ネジ
36 押しボタン
38 歯付き要素
40 ネジ山付き貫通孔
42 端部リンク10の底面
44 ラグ
46 ネジ
48 スキッド
50 停止部材
図1
図2
図3
図4
図5