特許第5970186号(P5970186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トムソン ライセンシングの特許一覧

特許5970186集積アンテナを有するフロントエンド・ブロック
<>
  • 特許5970186-集積アンテナを有するフロントエンド・ブロック 図000002
  • 特許5970186-集積アンテナを有するフロントエンド・ブロック 図000003
  • 特許5970186-集積アンテナを有するフロントエンド・ブロック 図000004
  • 特許5970186-集積アンテナを有するフロントエンド・ブロック 図000005
  • 特許5970186-集積アンテナを有するフロントエンド・ブロック 図000006
  • 特許5970186-集積アンテナを有するフロントエンド・ブロック 図000007
  • 特許5970186-集積アンテナを有するフロントエンド・ブロック 図000008
  • 特許5970186-集積アンテナを有するフロントエンド・ブロック 図000009
  • 特許5970186-集積アンテナを有するフロントエンド・ブロック 図000010
  • 特許5970186-集積アンテナを有するフロントエンド・ブロック 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5970186
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】集積アンテナを有するフロントエンド・ブロック
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/18 20060101AFI20160804BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20160804BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   H04B1/18 A
   H01Q13/08
   H01Q23/00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-515395(P2011-515395)
(86)(22)【出願日】2009年6月25日
(65)【公表番号】特表2011-526109(P2011-526109A)
(43)【公表日】2011年9月29日
(86)【国際出願番号】EP2009058006
(87)【国際公開番号】WO2009156489
(87)【国際公開日】20091230
【審査請求日】2012年6月22日
【審判番号】不服2014-21625(P2014-21625/J1)
【審判請求日】2014年10月24日
(31)【優先権主張番号】0854289
(32)【優先日】2008年6月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(74)【復代理人】
【識別番号】100115624
【弁理士】
【氏名又は名称】濱中 淳宏
(74)【復代理人】
【識別番号】100173761
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 和晃
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ミナード
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ロー イネ トン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ チャンベリン
(72)【発明者】
【氏名】コリーヌ ニコラス
【合議体】
【審判長】 新川 圭二
【審判官】 林 毅
【審判官】 萩原 義則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−196614(JP,A)
【文献】 特開2003−209421(JP,A)
【文献】 特表2004−533166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/18
H01Q13/08
H01Q23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板を部分的に覆うように配置された第2の基板にRF部品が集積されたRF集積フロントエンド・モジュールと、
を備えるRFフロントエンド・ブロックであって、
アンテナが、
前記第1の基板の、前記第2の基板により覆われていない部分のみにより支持される第1の放射部と、
前記第2の基板上で支持される第2の放射部と、
前記第1の放射部と、前記第2の基板により支持される前記第2の放射部と、を接続する接合部と、
により構成され
前記RF部品は、前記第2の基板の上側に実装され、第3の基板によって、前記RF集積フロントエンド・モジュールの前記RF部品を覆う保護カバーを構成し、
前記第2の放射部は、前記第3の基板の前記上側に少なくとも部分的に対応し、
第4の基板によって、前記第1の基板を覆い、前記第4の基板は、前記第1の基板よりも高い誘電率を有し、前記第1の放射部は、前記第4の基板の上側部分を少なくとも部分的に覆い、
前記第1の基板は、FR4型であり、前記第2の基板、前記第3の基板、及び前記第4の基板は、LTCC型である、前記RFフロントエンド・ブロック。
【請求項2】
前記第1の放射部は、前記第1の基板の上側部分を少なくとも部分的に覆う、請求項1に記載のRFフロントエンド・ブロック。
【請求項3】
前記第1の放射部と前記第2の放射部との接合部は、前記RF集積フロントエンド・モジュールの少なくとも1つの側面上に実装された垂直メタライゼーションである、請求項1に記載のRFフロントエンド・ブロック。
【請求項4】
前記垂直メタライゼーションは、少なくとも1つのビアにより、前記RF集積フロントエンド・モジュールの少なくとも1つの側面に実装されている、請求項に記載のRFフロントエンド・ブロック。
【請求項5】
前記垂直メタライゼーションは、伝送線路により実装されている、請求項に記載のRFフロントエンド・ブロック。
【請求項6】
前記第1の放射部と前記第2の放射部との接合部は、電磁結合により実装されている、請求項1に記載のRFフロントエンド・ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積されたフロントエンド・ブロックに関し、より詳細には、RF集積フロントエンド・モジュールへのアンテナの集積に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ギガビットワイヤレステクノロジー(Gigabit Wireless Technology)プロジェクトの範囲に属する。当該プロジェクトの目的の1つは、WLAN規格、特に802.11bg及び802.11aを実装するアプリケーションのためのRF集積フロントエンド・モジュール及びそれに関連するアンテナに対するソリューションを提案することである。
【0003】
「システム・イン・パッケージ」(SIP)技術の使用によって、そのようなモジュールの製造コストを低減させることができる。それゆえ、モジュール内に、バラン、フィルタ、電力増幅器、低雑音増幅器、並びにスイッチ型機能部及びこれらの機能部のいくつかと関連するアダプテーションネットワークが集積される。特定の製造方法において使用されるLTCC(低温同時焼成セラミックス)と呼ばれるセラミック等の高誘電率を有する材料が使用される。このような材料は、接続部の長さの低減を可能にする。それゆえ、関連するアンテナが、これらのモジュールに可能な限り近接して集積される。
【0004】
非特許文献1は、RFフロントエンド・モジュール回路を支持するのと同じ半導体基板上に、「パッチアンテナ」として知られる小型アンテナを集積する概念を説明する。
【0005】
特許文献1の「無線周波数アンテナを有するパッケージングされた集積回路(PIC)」は、モジュール内に含まれるRF部品と、それに関連するRFアンテナとを備えるブロックについて説明する。
【0006】
特許文献2の「微小アンテナを有する集積回路パッケージ」は、図1に示されるような、RF部品のモジュールに並置され、そのモジュール自体と同一基板上に集積されたアンテナを提案する。特許文献2で提示される一組のソリューションは、基板のグランドプレーンを空洞化し、RFフロントエンド・モジュールに集積されたアンテナの放射パターンにとって有利な形でRFフロントエンド・モジュールをその空洞上に移送することを要する。
【0007】
これらのソリューションの主な欠点は、アンテナの機能とRFモジュールの機能とを並置させることは大きさの観点から最適ではないということである。
【0008】
そのような集積モジュールの使用は、関連するアンテナをこれらのモジュールに可能なかぎり近接して集積可能な場合に限り有益である。
【0009】
しかし、RFフロントエンド・モジュールへのアンテナの集積は一般に、モジュールのサイズ又は厚さの増大を必要とし、しばしば大きさの問題を引き起こす。
【0010】
事実、WLANアプリケーション向けのこれらのRFフロントエンド・モジュールのサイズは、一辺1cmの正方形より小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1126522号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/042868号
【非特許文献1】S. T. R. Song et. al., “Novel RF Front end antenna package,” IEEE 2003, vol. 150, No. 4, August 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、共振アンテナを2.45GHz又は5.25GHzにある基本モードで集積するためには、使用されるセラミックの誘電体誘電率において、四分の一波長が既に3cm又は1.4cmより大きく、集積RFフロントエンド・モジュールのサイズよりもかなり大きいことが考慮されなければならない。
【0013】
加えて、WLAN802.11bg規格及び802.11a規格の使用は、2次のダイバーシティを有するシステムにつながる。それゆえ、空間ダイバーシティ又はダイヤグラムダイバーシティのために少なくとも2本のアンテナを集積可能であること、あるいは、1本のアンテナではあるが2つの直交する偏波を与えるアンテナが必要である。
【0014】
したがって、本発明は、上記問題の解決を可能とする、RFフロントエンド・モジュールにアンテナを集積する新たなシステムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、第1の基板S1と、アンテナの放射部P2を支持する第2の基板S2の上に集積されたRF集積モジュールとを備えるRF受信フロントエンド・ブロックにある。
【0016】
前記アンテナは、加えて、前記第1の基板S1により支持される第1の放射部P1と、前記第1の放射部P1と前記第2の基板S2により支持される前記放射部P2とを接続する第3の放射部P3により構成された接合部とによって構成されている。
【0017】
本発明は、SIP技術によるRFモジュールと、アンテナとの間の相互接続ロスの最小化と、RFモジュールとアンテナを合わせた大きさの最小化という利点を有する。
【0018】
好ましくは、前記第1の放射部P1は、前記第1の基板S1の上側に少なくとも部分的に及ぶ。
【0019】
本発明の一変形形態によれば、第4の基板S4によって、前記第1の基板S1を覆い、前記第4の基板S4は、前記第1の基板S1よりも高い誘電率を有し、前記第1の放射部P1は、前記第4の基板S4の上側に少なくとも部分的に及ぶ。
【0020】
好ましくは、RF部品は、前記第2の基板S2の上側に実装され、第3の基板S3は、前記RFモジュールの前記RF部品のための保護カバーを構成し、前記第2の放射部P2は、前記第3の基板S3の上側に少なくとも部分的に及ぶ。
【0021】
本発明の一変形形態によれば、前記RFフロントエンド・モジュールの前記RF部品を、前記第2の基板S2の下側に実装し、前記第2の放射部P2は、前記第2の基板S2の上側に少なくとも部分的に及ぶ。
【0022】
好ましくは、第1の基板S1はFR4型であり、第2の基板S2、第3の基板S3及び第4の基板S4はLTCC型である。
【0023】
好ましくは、放射部P1と放射部P2との間の接合部P3は、前記RFモジュールの側面の少なくとも1つに実装された垂直メタライゼーションである。
【0024】
本発明の一変形形態によれば、前記垂直メタライゼーションは少なくとも1つのビア(via)により実装されている。
【0025】
本発明の一変形形態によれば、前記垂直メタライゼーションは伝送線路により実装されている。
【0026】
本発明の一変形形態によれば、放射部P1と放射部P2との間の接合部P3は電磁結合により実装されている。
【0027】
この解決策は、例えばPIFAアンテナ等、放射素子の下方にグランドプレーンを必要とする任意の種類のアンテナに適用することができる。
【0028】
このようにすることで、関連付けられたフロントエンド・モジュールとアンテナを取り付けるのに単一の動作のみが必要とされるので、回路の寸法が制限され、実装コストが低減される。
【0029】
前述の発明の特徴および利点は、添付図面を参照して行われる以下の説明を読むことでより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来技術による集積化を示す図である。
図2】本発明により集積されたフロントエンド・ブロックの実施形態の2つの異なる考え方を示す図である。
図3】本発明により集積されたフロントエンド・ブロックの三次元図である。
図4】特定の場合における、アンテナの3つの放射部を示す図である。
図5】本発明により集積されたフロントエンド・ブロックを示す図である。
図6】本発明により集積されたフロントエンド・ブロックによるシミュレーション結果に対応する図である。
図7】本発明により集積されたフロントエンド・ブロックの一実施形態を示す図である。
図8図7に従って集積されたフロントエンド・ブロックによるシミュレーション結果を示す図である。
図9】本発明により集積されたフロントエンド・ブロックの一実施形態であって、二重偏波のための二重アクセスを有するものを示す図である。
図10】デュアルバンド及び多様な周波数におけるパッチアンテナ受信のための本発明により集積されたフロントエンド・ブロックの一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
説明の簡単のため、後述の図面において、同一の参照符号を使用して、同じ機能を実現する素子を示す。
【0032】
本発明の主眼点は、アンテナ機能の支持部を3つの放射部に分割することである。それらは、その位置が、第2の基板S2ではなく、集積RFフロントエンド・モジュールが置かれた第1の基板S1に対応する第1の放射部P1と、集積RFフロントエンド・モジュールの第2の基板S2の位置に対応する第2の放射部P2と、第1の放射部P1と第2の放射部P2との間の接合部の位置に対応する第3の放射部P3である。それゆえ、当該アンテナには、追加の給電線を必要とすることなく、RF集積フロントエンド・モジュールへの直接アクセスにより、電力を直接供給することができる。
【0033】
図2(a)及び(b)に、一次共鳴での機能を可能にする寸法がRF集積フロントエンド・モジュールの寸法よりも大きい「パッチ」アンテナを有する実施形態の考え方の例を示す。
【0034】
図2(a)は、本発明に従って集積されたフロントエンド・ブロックの側面図である。
【0035】
当該ブロックは、基板S1を備える。
【0036】
「パッチ」型のアンテナが集積されている実施例においては、基板S1の下側表面を金属導電層で覆い、グランドプレーンをその上にエッチングする。
【0037】
他のアンテナにおいては、機能を確保するために、グランドプレーンを部分的にエッチングすることができる。
【0038】
基板S1の上側表面を、以下「RFモジュール」と称されるRF集積フロントエンド・モジュールを支持する導電層により覆う。
【0039】
RFモジュール自体は、例えばLTCC技術によって、RF機能のために必要な部品により覆われた基板S2により実現され、少なくとも1つのアクセスアンテナを有する。あるいは、これらの部品を基板内に集積することができる。
【0040】
RFモジュールに応じた、本発明の種々の変形形態を説明する。
【0041】
第1の変形形態によれば、RFモジュールの部品は、第2の基板S2の外部にあり、これらの部品は、第2の基板S2の上側部分に配置される。これらの部品は、基板S1と対向しない。図2(a)に、第2の基板S2の外部にある部品の保護を可能にする保護カバーの役割を果たす基板S3を示す。保護カバーを構成するこの基板S3は、アンテナ機能のために使用される。基板S3又は基板S2は、放射部P3−2及び放射部P3−3を用いて空洞を形成して、基板S3を、RFモジュールの外部にある部品の高さに対して、基板S2から所要の高さで維持するように実装することができる。
【0042】
基板S2により覆われていない基板S1の上側には、アンテナの第1の放射部P1をエッチングする。
【0043】
基板S1は、全体的に又は部分的に、例えばLTCC基板よりも高誘電率の基板S4を支持することもできる。基板S4の上または中には、アンテナの第1の放射部をエッチングする。
【0044】
基板S1、S2、S3及びS4は多層基板とすることができるため、多層基板を構成する基板層間の金属層をエッチングすることが可能である。
【0045】
RFモジュールの基板S2の大きさは、RF機能に特有の放射部の大きさよりも大きい可能性がある。RFモジュールの機能に特有の部分により使用されていない基板S2の部分を、同様にアンテナ機能に使用することができる。言い換えると、基板S2の使用されていない部分を直接的にエッチングすることもできるし、または、アンテナの一部がその上に又は中にエッチングされる、例えばLTCC基板より高誘電率の基板S4を支持することもできる。
【0046】
アンテナ機能は、例えばフロントエンド・モジュール自体と同一の材料で実装される。これにより、アンテナ機能の少なくとも一部を有するRFフロントエンド・ブロックを、単一の製造手順により実装することができる。波長の短縮と関連する所望の集積度合いに応じて、基板S4は任意選択である。
【0047】
このアンテナの第3の放射部P3は、垂直位置において、アンテナの第1の放射部P1と第2の放射部P2との間の接合部の一部である。第3の放射部P3は、基板S2のRF機能により使用されていない基板S2の上/中および領域P3−1の上/中の両方に位置づけられる。この例では、垂直放射部P3は、アンテナの放射部P1と放射部P2が直接接触により電気的に接続することを可能にする。放射部P1と放射部P2との間の接合部P3−1は、基板S2又はS4の一方である。同様に、放射部P3−2は、基板3の一部である。放射部P3−3は、2つの放射部P3−1及びP3−2の間の垂直接合部の純粋な放射部である。この垂直接合部は、例えば1つ又は複数のビアを使用したメタライゼーションにより実装することもできる。
【0048】
他の方法としては、2本の結合線路間の電磁結合を使用して放射部P1と放射部P2を電磁的に結合することや、電磁結合を可能にする他の任意のシステムが挙げられる。
【0049】
他の方法としては、2つの放射部の接合に、例えばコプレナー線路、マイクロストリップ線路、又は導電線を使用することが挙げられる。これらの線は、可撓接続層を形成する。
【0050】
好ましい例において、アンテナは、基板S1及び基板S2並びにこれら2つの基板の間の接合部を全体的または部分的に覆う基板S3及び基板S4で構成された基板と同一基板上に均一にエッチングすることができる。波長の短縮と関連する所望の集積度に応じて、基板S4は設けてもよいし、設けなくともよい。
【0051】
図2(b)に示された本発明の第2の変形形態によれば、RF集積フロントエンド・モジュールの部品は、第2の基板S2の外部にあり、基板S1と対向する。これらの部品を、第2の基板S2の下側部分に配置する。基板S2は、基板S2を基板S1から所要の距離に位置づけることを可能にする空洞を形成するように実現される。
【0052】
基板S2の上側部分は、アンテナの第2の放射部P2がエッチングされるグランドプレーンを支持することができる。
【0053】
垂直位置にある第3の導電性放射部P3は、前述したように実装することができる。
【0054】
アンテナ機能は、フロントエンド・モジュール自体と同じ材料、例えばLTCC型の材料で実装することが好ましい。これにより、単一の製造プロセスで、必要に応じてアンテナ機能の少なくとも1つの放射部を有する集積フロントエンド・ブロックを作製することができる。
【0055】
RFフロントエンド・モジュールとアンテナとの間でRF信号を伝送するために、いくつかの手段を実装することができる。例えば、
1−1つ又は複数のビアによるもの、
2−マイクロストリップ、ストリップライン、コプラナー型または接地コプラナー型伝送線路を介するもの、
3−電磁結合、例えばスロット型の電磁結合を介するもの等
が挙げられる。
【0056】
RFフロントエンド・モジュールに関連するアンテナの集積を促進するために、例えば「パッチ」アンテナ、「PIFA(printed inverted F antenna)」アンテナ、スロット等の平面アンテナを使用するのが好ましい。
【0057】
図3に、集積フロントエンド・ブロックのX、Y及びZ軸に従った三次元図を示す。
【0058】
図3は、一次共鳴における動作を可能にする寸法が、RFフロントエンド・モジュールの寸法よりも大きい「パッチ」アンテナの例を描写している。パッチアンテナのメタライゼーションの第1の部分を、基板S1自体の上に配置する。パッチアンテナの第2の導電性部分を、RFモジュールを覆う基板S3の上に配置する。第3の導電性部分を、垂直位置において、基板S3の上/中と、基板S2のRF機能によって使用されていない領域の上/中の両方に配置する。この実施例において、この垂直放射部が、「パッチ」アンテナの放射部P1及び放射部P2を直接接触により電気的に接続することを可能にする。この垂直メタライゼーションは、例えば、1つ又は複数のビアを使用することにより作製することができる。
【0059】
アンテナ給電点(supply point)のその位置が、共鳴周波数での動作を可能にする。
【0060】
RFモジュール(基板S2)に対するアンテナの位置は、
−アンテナの励起点(excitation point)としても知られる給電点、
−RFフロントエンド・モジュールの出力端におけるアクセスアンテナに対する位置、
−RFフロントエンド・モジュールの出力数
に従う。好ましくは、そして1つ又は複数のRFモジュールを集積するカードのルーティングを促すために、アンテナは、使用されるアクセスを有するモジュールの側面に及ばない。図4に、アンテナの2つの放射部P1及びP2の間で、2つの側面のみが接続される「パッチ」アンテナの例を示す。
【0061】
しかしながら、アンテナ及びRFモジュールの位置と特にアンテナ励起の位置との間で妥協が必要な構成も存在する可能性がある。事実、アンテナのトポロジーによっては、(集積(RF)フロントエンド・モジュールの最大寸法の)アンテナの第2の放射部P2と、基板S1上のアンテナの第1の放射部P1との間で、RFフロントエンド・モジュールのいくつかの側面上で接続を必要とする場合がある。それゆえ、アンテナとRFモジュールとの間の相互接続と、RFモジュールと基板S1との間の相互接続とがRFモジュールの同一側面上に配置されると、RFモジュールと基板S1との間の相互接続をビア又は金属化された穴を用いて別の層を経由させなければならない。
【0062】
図5及び7に対応する特定の実施形態を次に説明する。
【0063】
図5は、集積RFフロントエンド・モジュールを表すユニットを集積する「パッチ」アンテナを示す。本発明の説明によると、パッチアンテナの放射部P1を、FR4型(誘電率=4.4、損失正接=0.022、基板厚さ=1.4mm)の基板S1上に配置する。アンテナの第2の放射部P2を、LTCC型(誘電率=9.4、損失正接=0.0014、基板厚さ=0.65mm)の基板S3上に移送する。正方形「パッチ」アンテナの23.5mmの辺を、一辺75mmのグランドプレーンの正方形上に配置する。ビアを通した給電を、端から6.6mmの中央の軸(median axis)上に配置する。シミュレーション結果を図6(a)、(b)及び(c)に示す。図6(a)において、曲線は、アンテナの周波数2.4GHzへの適合(adaptation)を示す。図6(b)では、曲線は、アンテナの約2.4GHzへの共鳴(Im(Z)=0)を示す。図6(c)は、アンテナ利得の周波数応答を示し、この図は2.4GHzに関連する。同じ共鳴周波数に対して、FR4よりも誘電率が高いLTCC型材料の使用により、アンテナの寸法が25%低減される。
【0064】
放射結果は、RFモジュールなしの応答と±0.5dBの範囲で等価である。
【0065】
図7は、RFモジュール上に部分的に構成されたアンテナを示し、「パッチ」アンテナの給電点を集積RFモジュールに集積する。シミュレーションパラメーターは、先のシミュレーションのものと同じである。図8は、RFフロントエンド・モジュールがパッチの下に実質的に挿入されている場合よりもパッチの実効誘電率が低いため、2.6GHzにおいて共鳴周波数のシフトを示す。
【0066】
本発明の種々の変形形態が検討された。
【0067】
事実、PIFA、デュアルバンド、又はマルチバンドパッチアンテナのプロフィールを、この集積解決策に適用することができる。この変形形態では、種々の周波数へのアンテナアクセスと基板S2のRF回路との間の複数の接続を実現することができる。
【0068】
また、アンテナダイバーシティを実施ことも可能である。したがって、いくつかのアンテナを、基板S1若しくは基板S2の自由な部分の上に、又は基板S3の上にエッチングする。
【0069】
また、「パッチ」アンテナの場合において、第2の偏波を挿入することにより、偏波のダイバーシティを生み出すことも可能である。ダブルアクセスアンテナは、2つの直交する励起を与えることを可能にする。図9に、「パッチ」アンテナを有するダイバーシティソリューションの模式的平面図を示す。アンテナをエッチングするのに適したグランドプレーンを有する基板S1と基板S3の上において、アンテナの第1の放射部P1と第2の放射部P2を区別する。第3の相互接続放射部は、例示的に接続線で示してある。RFモジュールの寸法は、アンテナの第2の放射部の寸法よりも大きく示してある。
【0070】
図10は、パッチアンテナによる、デュアルバンドダイバーシティ及び偏波ダイバーシティを有するソリューションの模式的平面図である。アンテナの放射部P2によって、最高周波数(例えば5GHz)におけるアンテナの放射部を形成する。放射部P1−1によって、最高周波数におけるアンテナのもう1つの放射部を形成する一方で、放射部P1−2によって、最低周波数におけるアンテナの放射部を形成する。
本発明の好ましい実施形態を、以下に示す。
付記1.第1の基板(S1)と、
アンテナの第2の放射部(P2)を支持する第2の基板(S2)の上に集積されたRF集積フロントエンド・モジュールと
を備えるRF受信フロントエンド・ブロックであって、
前記アンテナは、
前記第1の基板(S1)により支持される第1の放射部(P1)と、
前記第1の放射部(P1)と前記第2の基板(S2)により支持される前記第2の放射部(P2)とを接続する第3の放射部(P3)により構成される接合部と
により構成されていることを特徴とするRF受信フロントエンド・ブロック。
付記2.前記第1の放射部(P1)は、前記第1の基板(S1)の上側部分に少なくとも部分的に及ぶことを特徴とする付記1記載のRF受信フロントエンド・ブロック。
付記3.第4の基板(S4)によって、前記第1の基板(S1)を覆い、前記第4の基板(S4)は、前記第1の基板(S1)よりも高い誘電率を有し、前記第1の放射部(P1)は、前記第4の基板(S4)の上側部分に少なくとも部分的に及ぶことを特徴とする付記1記載のRF受信フロントエンド・ブロック。
付記4.RF部品は、前記第2の基板(S2)の上側の上に実装され、第3の基板(S3)によって、前記RF集積フロントエンド・モジュールの前記RF部品を覆う保護カバーを構成し、前記第2の放射部(P2)は、前記第3の基板(S3)の前記上側に少なくとも部分的に対応することを特徴とする付記1から3のいずれかに記載のRF受信フロントエンド・ブロック。
付記5.前記RF集積フロントエンド・モジュールのRF部品を、前記第1の基板(S1)に対向する前記第2の基板(S2)の下側の上に実装し、前記第2の放射部(P2)は、前記第2の基板(S2)の上側に少なくとも部分的に及ぶことを特徴とする付記1から3のいずれかに記載のRF受信フロントエンド・ブロック。
付記6.前記第1の基板(S1)は、FR4型であり、前記第2の基板(S2)、前記第3の基板(S3)、及び前記第4の基板(S4)は、LTCC型であることを特徴とする付記1から5のいずれかに記載のRF受信フロントエンド・ブロック。
付記7.前記第1の放射部(P1)と前記第2の放射部(P2)との接合部(P3)は、前記RF集積フロントエンド・モジュールの少なくとも1つの側面上に実装された垂直メタライゼーションであることを特徴とする付記1記載のRF受信フロントエンド・ブロック。
付記8.前記垂直メタライゼーションは、少なくとも1つのビアにより、前記RF集積フロントエンド・モジュールの少なくとも1つの側面に実装されていることを特徴とする付記7に記載のRF受信フロントエンド・ブロック。
付記9.前記垂直メタライゼーションは、伝送線路により実装されていることを特徴とする付記7に記載のRF受信フロントエンド・ブロック。
付記10.前記第1の放射部(P1)と前記第2の放射部(P2)との接合部(P3)は、電磁結合により実装されていることを特徴とする付記1記載のRF受信フロントエンド・ブロック。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10