特許第5970265号(P5970265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5970265
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】光学的立体造形物の処理装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 71/00 20060101AFI20160804BHJP
   B29C 67/00 20060101ALI20160804BHJP
   B33Y 99/00 20150101ALI20160804BHJP
【FI】
   B29C71/00
   B29C67/00
   B33Y99/00
【請求項の数】8
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2012-149425(P2012-149425)
(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-8765(P2014-8765A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】391064429
【氏名又は名称】シーメット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093377
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 良子
(74)【代理人】
【識別番号】100108235
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 功
(72)【発明者】
【氏名】大場 好一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸吉
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−260230(JP,A)
【文献】 特開平04−238022(JP,A)
【文献】 特開2010−132751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C67/00
B29C71/04
C08J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られた光学的立体造形物を収容するためのハウジング、およびハウジング内に収容された光学的立体造形物に光を照射するための光照射手段を備える光学的立体造形物の後処理装置であって;
光照射手段が、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を光学的立体造形物に照射する光照射手段であり
ハウジング内に収容された光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を調節するための手段を有
光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を調節するための手段が、ハウジング内で前進および後退が可能な光照射手段の取付け手段であって、光照射手段が当該取付け手段に取り付けられている;
ことを特徴とする光学的立体造形物の後処理装置。
【請求項2】
複数の光照射手段を備え、当該複数の光照射手段の一部または全部が、ハウジング内で前進および後退が可能な光照射手段の取付け手段に取り付けられている請求項1に記載の光学的立体造形物の後処理装置。
【請求項3】
複数の光照射手段が、ハウジングの側周部、上部および下部のうちの少なくとも1つに整列状態で配置され、且つ当該複数の光照射手段の一部または全部がハウジング内で前進および後退が可能な光照射手段の取付け手段に取り付けられている請求項1または2に記載の光学的立体造形物の後処理装置。
【請求項4】
ハウジングが直方体形を有し、直方体形のハウジングの側周部、上部および下部のうちの少なくとも1つに、複数の光照射手段が整列状態で配置され、当該複数の光照射手段の一部または全部がハウジング内で前進および後退が可能な光照射手段の取付け手段に取り付けられている請求項1〜のいずれか1項に記載の光学的立体造形物の後処理装置。
【請求項5】
光照射手段が、青色LEDである請求項1〜のいずれか1項に記載の光学的立体造形物の後処理装置。
【請求項6】
光照射手段が、直管形の青色LEDである請求項に記載の光学的立体造形物の後処理装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の光学的立体造形物の後処理装置のハウジング内に、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られた光学的立体造形物を収容した後、ハウジング内で前進および後退が可能な光照射手段の取付け手段をハウジング内に収容された光学的立体造形物の方向に前進させることによって、当該取付け手段に取り付けられている光照射手段と光学的立体造形物との間の距離を低減させ、その状態で430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を光学的立体造形物に照射することを特徴とする光学的立体造形物の後処理方法。
【請求項8】
ハウジングに配置した複数の光照射手段の一部または全部が取り付けられているハウジング内で前進および後退が可能な光照射手段の取付け手段を、ハウジング内に収容された光学的立体造形物の方向に前進させることによって、ハウジングに配置した複数の光照射手段の一部または全部と光学的立体造形物の表面の少なくとも一部との間の距離が20mm以下になるようにし、その状態で430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を光学的立体造形物に照射する請求項に記載の光学的立体造形物の後処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形して得られる光学的立体造形物の後処理装置および後処理方法に関する。より詳細には、本発明は、光学的立体造形物の黄変などの変色を低減させて、無色透明性に優れるか、または着色剤を用いたものでは着色剤本来の優れた色調を呈する光学的立体造形物に変えるための後処理装置および後処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元CADに入力されたデータに基づいて光硬化性樹脂組成物を光硬化させて立体造形物を製造する光学的立体造形方法および装置が実用化されている。
この光学的立体造形技術では、光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に、コンピューターで制御された光を選択的に照射して所定の厚みに光硬化させて所定の形状パターンを有する硬化樹脂層を形成し、その硬化樹脂層の上に更に1層分の光硬化性樹脂組成物を施して造形面を形成させ、その造形面にコンピューターで制御された光を選択的に照射して所定の厚みに光硬化させて所定の形状パターンを有する硬化樹脂層を形成するという造形操作を、所定の寸法および形状の立体造形物が得られるまで多数回繰り返す方法が一般に広く採用されている。
【0003】
上記した光学的立体造形技術で得られる立体造形物は、設計の途中で各種工業製品の外観デザインを検証するためのモデル、部品の機能性をチェックするためのモデル、鋳型を製作するための樹脂型、金型を製作するためのベースモデルなどとして広く利用されており、近年では、美術品の復元、模造や現代アート、ガラス張りの建築物のデザインプレゼンテーションモデルのような美術工芸品などにも用いられるようになっている。
【0004】
光学的立体造形物の用途の拡大に伴って、黄変などの変色がなくて無色透明性に優れる光学的立体造形物、また染料や顔料などの着色剤を用いて製造した光学的立体造形物では変色などによる色調の悪化がなくて着色剤本来の良好な色調に着色された光学的立体造形物が求められるようになっている。
しかし、従来の光学的立体造形物の多くは、多少なりとも黄変などの変色が生じていて無色透明性に劣っていたり、着色剤を用いたものでは黄変などの変色によって色調の低下が生じていた。
光学的立体造形物における黄変などの変色や色調不良の原因は未だ十分に解明されていないが、光硬化性樹脂組成物中に含まれているラジカル重合性有機化合物、カチオン重合性有機化合物、光感受性ラジカル重合開始剤、光感受性カチオン重合開始剤などの化合物や、光硬化によって生成した樹脂成分などが、光学的立体造形時の光(特に紫外線)の照射によって化学的に不安定になって変質した結果、共役二重結合などの発色団・助色団を有する構造部分や成分が光学的立体造形物中に生成することによるものと推測される。
【0005】
黄変などの変色が少なくて透明性に優れる光学的立体造形物の提供を目的として、グリシジル型のエポキシ化合物の含有量が0〜30重量%未満であるエポキシ化合物、ヒドロキシル基を含まないかまたはヒドロキシル基の含有量の少ない多官能(メタ)アクリレート、ポリエーテルポリオール化合物、カチオン重合開始剤およびラジカル重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献1を参照)。しかし、この光硬化性樹脂組成物から得られる光学的立体造形物は、必ずしも無色透明性の点で十分に優れているとは言い難い。しかも、この光硬化性樹脂組成物では、特定の成分を組み合わせて用いることが必要であるため、硬化性樹脂組成物の配合設計や、得られる立体造形物の物性(力学的特性、寸法安定性、寸法精度、耐熱性など)に制約があり、目的とする力学的特性、造形精度、寸法精度、耐熱性などの特定を備える立体造形物を必ずしも製造することができない。
【0006】
また、高温環境下での黄変の少ない立体造形物を得ることを目的として、(A)ジフェニル(フェニルチオフェニル)スルホニウム系カチオン重合開始剤、(B)フェノール系酸化防止剤、(C)カチオン重合性化合物、(D)ラジカル重合開始剤、(E)ラジカル重合性化合物、(F)2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(4−モルフォリノジチオ)ベンゾチアゾール、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドおよびジフェニルジスルフィドからなる群から選択される1種以上の化合物および(G)ポリエーテルポリオール化合物を含有する光硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献2を参照)。
しかしながら、この特許文献2には、光造形直後の立体造形物の黄色度(イエローインデックス)と、立体造形物を80℃で2時間加熱した後の黄色度との差が示されているだけであり、光造形して得られた加熱前の立体造形物自体の色調(例えば黄色度など)については記載されておらず、そのため、光造形して得られた立体造形物自体の色調が不良である場合に、その色調を改善する方法については何ら開示されていない。
しかも、この特許文献2の発明では、光硬化性樹脂組成物を上記特定の成分(A)〜(G)を組み合わせて調製することが必要なため、やはり、光硬化性樹脂組成物の配合設計、得られる立体造形物の物性などにおける制約が大きい。
また、造形時の積層厚みを小さくしたり、レーザー出力を下げるかおよび/または走査速度を速くすることによって照射エネルギーを小さくすることで黄変を防ぐことも行われている。しかし、積層厚みを小さくすると、造形物の層が増えるため造形時間が長くなるばかりか、表面張力や泡によって生ずる層厚の不均一に対する許容範囲が小さくなるために造形が失敗する危険が高くなる。また、照射エネルギーを小さくすると、造形物の硬化度が低下して柔らかくなることで造形物の機械的強度が低下する上、層間密着性が低下して層間剥離が起こり易くなり、やはり造形が失敗しやすくなるという欠点があった。
【0007】
さらに、光造形して得られる光学的立体造形物の黄変などの変色を隠蔽するために、蛍光増白剤や染料などの使用も行われている。
しかし、蛍光増白剤は、一般に紫外部に吸収を持つため、光硬化性樹脂組成物中に配合すると、光造形時に光硬化性樹脂組成物に照射された紫外線のエネルギーの減少を招いて、光硬化性樹脂組成物の光硬化感度の低下や硬化厚みの変動が生じ、物性に優れる光学的立体造形物を製造することが困難になり易い。
また、染料も、蛍光増白剤と同様に、光硬化性樹脂組成物の光硬化感度を低下させる恐れがあり、さらに経時変化して望ましくない変退色を引き起こすことがあり、しかも淡色に着色したい場合には黄変などの変色を完全には隠蔽することができない。
また、造形物を長時間放置した場合に脱色が進んで無色となったり、逆に黄変したりする現象は知られていたものの、その原因については明らかではなく、脱色する場合でも数日以上を要していた。光学的立体造形法はラピッドプロトタイピングと呼ばれる技術の一つであり、造形物を数時間から一日以内で作製して即座に利用できることが求められているため、脱色するまでに数日放置することは実用性に大きく欠ける。
【0008】
上記の点から、光造形して得られる光学的立体造形物に黄変などの変色が生じていて、無色透明性に劣っていたり、色調が不良である場合に、光学的立体造形物の力学的特性やその他の物性を良好に維持しながら、光学的立体造形物の黄変などの変色を簡単に且つ速やかに解消または低減して、無色透明性に優れるか、または着色剤を用いたものでは着色剤本来の優れた色調を有する光学的立体造形物にすることができる技術が求められている。
【0009】
また、黄変の低減に係るものではないが、光学的立体造形して得られる光学的立体造形物の表面に付着している未硬化樹脂の洗浄および光学的立体造形物の後硬化を行うことを目的として、光学的立体造形物を収容するハウジングにクリーニング液の吹き付け手段と後硬化のための後硬化用の光源を設けた光学的立体造形物の後処理システムが提案されている(特許文献3を参照)。
しかし、この後処理システムでは、光学的立体造形物への光照射は、専ら光学的立体造形物の後硬化のために行われていることから、光源として波長が300〜480nm、特に350〜420nmの紫外線を発生する光源が用いられており、そのためこの後処理システムを用いても光学的立体造形物の黄変などの変色を短時間のうちに低減させることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2007−516318号公報
【特許文献2】特許第3930888号公報
【特許文献3】特表2011−520655号公報
【特許文献4】特開2010−260230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、光硬化性樹脂組成物を用いて光造形して得られる光学的立体造形物に黄変などの変色が生じていた場合に、光学的立体造形物の力学的特性やその他の物性を良好に維持しながら、黄変などの変色を、簡単に且つ短時間に解消または低減して、無色透明性に優れるか、または着色剤を用いたものでは着色剤本来の優れた色調を有する光学的立体造形物に変えることのできる後処理装置および後処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成すべく本発明者らは鋭意検討を重ね、その結果として、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる光学的立体造形物に黄変などの変色が生じていた場合に、当該光学的立体造形物に対して、430〜500nmの範囲内の波長を有する光(青色光)を含み且つ波長が400nm以下の光、特に紫外線を含まない光を所定の量で照射すると、光学的立体造形物本来の力学的特性やその他の物性を良好に維持しながら、黄変などの変色を短時間に速やかに解消または低減して、無色透明性に優れるか、または着色剤を用いたものでは着色剤本来の優れた色調を呈する光学的立体造形物が得られること、当該処理方法は、光学的立体造形後に紫外線の照射および/または加熱を行って後硬化処理を施した光学的立体造形物並びに光学的立体造形後に紫外線照射および/または加熱による後硬化処理を施さない光学的立体造形物の両方に対して有効であること、さらに当該処理方法は、ラジカル重合性有機化合物およびラジカル重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を用いて得られる光学的立体造形物、ラジカル重合性有機化合物、ラジカル重合開始剤、カチオン重合性有機化合物およびカチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を用いて得られる光学的立体造形物のいずれに対しても有効であることを見出して、先に出願した(特許文献4を参照)。
【0013】
そして、本発明者らが開発した上記特許文献4の発明に基づいて更に検討を重ねたところ、430〜500nmの範囲内の波長を有する光(青色光)を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光照射手段を光学的立体造形物に接触させるかまたは接近させて光照射処理を行うと、黄変などの変色をより短い時間で速やかに低減させ得ることを見出した。
そこで、当該知見を踏まえて、その実施に適する後処理装置を開発すべく更に研究を続けて、光学的立体造形物を収容するためのハウジングと、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を光学的立体造形物に照射する光照射手段を備え且つハウジング内に収容された光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を調節するための手段を有する後処理装置を作製することによって、サイズ、形状、構造などが異なる種々の光学的立体造形物に対して共通して使用することができて、当該種々の光学的立体造形物の黄変などの変色を簡単な操作で短時間で低減できることを見出して本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1) 光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られた光学的立体造形物を収容するためのハウジング、およびハウジング内に収容された光学的立体造形物に光を照射するための光照射手段を備える光学的立体造形物の後処理装置であって;
光照射手段が、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を光学的立体造形物に照射する光照射手段であり;且つ、
ハウジング内に収容された光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を調節するための手段を有する;
ことを特徴とする光学的立体造形物の後処理装置である。
【0015】
そして、本発明は、
(2) 複数の光照射手段を備え、当該複数の光照射手段の一部または全部と、光学的立体造形物との間の距離を調節するための手段を有する前記(1)の光学的立体造形物の後処理装置;
(3) 光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を調節するための手段が、光照射手段を光学的立体造形物に対して前進および後退させる手段、並びに光学的立体造形物を光照射手段に対して前進および後退させる手段のいずれか一方または両方である、前記(1)または(2)の光学的立体造形物の後処理装置;および、
(4) 光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を調節するための手段が、ハウジング内で前進および後退が可能な光照射手段の取付け手段であり、光照射手段が当該取付け手段に取り付けられている前記(1)〜(3)のいずれかの光学的立体造形物の後処理装置;
である。
【0016】
さらに、本発明は、
(5) 複数の光照射手段が、ハウジングの側周部、上部および下部のうちの少なくとも1つに整列状態で配置され、且つ当該複数の光照射手段の一部または全部がハウジング内で前進および後退が可能な光照射手段の取付け手段に取り付けられている前記(1)〜(4)のいずれかの光学的立体造形物の後処理装置;
(6) ハウジングが直方体形を有し、直方体形のハウジングの側周部、上部および下部のうちの少なくとも1つに、複数の光照射手段が整列状態で配置され、当該複数の光照射手段の一部または全部がハウジング内で前進および後退が可能な光照射手段の取付け手段に取り付けられている前記(1)〜(5)のいずれかの光学的立体造形物の後処理装置;
(7) 光照射手段が、青色LEDである前記(1)〜(6)のいずれかの光学的立体造形物の後処理装置;および、
(8) 光照射手段が、直管形の青色LEDである前記(7)の光学的立体造形物の後処理装置;
である。
【0017】
そして、本発明は、
(9) 前記(1)〜(8)のいずれかの光学的立体造形物の後処理装置のハウジング内に、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られた光学的立体造形物を収容した後、ハウジング内に収容された光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を調節するための手段によって光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を低減させ、その状態で430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を光学的立体造形物に照射することを特徴とする光学的立体造形物の後処理方法;および、
(10) 光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を調節するための手段によって、ハウジングに配置した複数の光照射手段の一部または全部と光学的立体造形物の表面の少なくとも一部との間の距離が20mm以下になるようにし、その状態で430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を光学的立体造形物に照射する前記(9)の光学的立体造形物の後処理方法;
である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光学的立体造形物の後処理装置のハウジング内に黄変などの変色が生じた光学的立体造形物を収容した後、ハウジング内に収容された光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を調節するための手段によって光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を低減させ、その状態で光学的立体造形物に430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を照射することによって、黄変などの変色が解消または低減されて、無色透明性に優れた光学的立体造形物、また着色剤を含有する光学的立体造形物では着色剤本来の優れた色調を有する光学的立体造形物を、短い後処理時間で円滑に得ることができる。
本発明の後処理装置を使用して光学的立体造形物を後処理することによって、黄変した光学的立体造形物の色調の改善だけでなく、例えば、褐色、黄橙色、黄褐色などに変色した光学的立体造形物の色調をも改善することができる。
本発明の後処理装置を使用する黄変などの変色の低減処理は、光学的立体造形後に紫外線の照射および/または加熱による後硬化処理を施した黄変などの変色の生じた光学的立体造形物、紫外線の照射や加熱による後硬化処理を施してない黄変などの変色の生じた光学的立体造形物のいずれに対しても有効である。
本発明の後処理装置では、ハウジング内に収容された光学的立体造形物とハウジングに配置した光照射手段との間の距離が、光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を調節するための手段によって調節可能になっていて、ハウジング内に収容される光学的立体造形物のサイズ、形状、構造などが異なっても、光照射手段を光学的立体造形物の接触または接近させた状態で光学的立体造形物に430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を照射することができるので、本発明の後処理装置は、サイズ、形状、構造などの異なる種々の光学的立体造形物に対して共通して有効に使用することができる。
本発明の後処理装置による場合は、ハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を照射する光照射手段を簡単な操作で接触または接近させることができる。
本発明の光学的立体造形物の後処理装置が備える光照射手段は、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を発射し、人体に有害な紫外線を発射しないので、安全に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の後処理装置の一例を示す図である。
図2図2は、本発明の後処理装置の別の例を示す図である。
図3図3は、本発明の後処理装置の更に別の例を示す図である。
図4図4は、本発明の後処理装置の更に別の例を示す図である。
図5図5は、本発明の後処理装置の更に別の例を示す図である。
図6図6は、実施例1〜2で採用した後処理方法に係る概略図である。
図7図7は、実施例3で採用した後処理方法に係る概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の光学的立体造形物の後処理装置は、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られた光学的立体造形物を収容するためのハウジングと、光学的立体造形物に光を照射するための光照射手段、ハウジング内に収容された光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を調節するための手段(以下これを単に「距離調節手段」ということがある)を少なくとも備えている。
【0021】
ハウジングの形状は特に制限されず、光学的立体造形物の全体を収容し得るハウジングであればいずれでもよく、例えば、立方体形をも含めた直方体形、円筒形、半円筒形、半球形、円錐台形、角錐台形などを挙げることができる。そのうちでも、ハウジングの形状は、立方体形をも含めた直方体形であることが、ハウジングの製造が容易であり、ハウジング内への光学的立体造形物の収容を円滑に行うことができ、ハウジングへの光照射手段の配置や取付けが容易であり、ハウジングへの距離調節手段の取付けが容易であり、ハウジング内での距離調節手段による光照射手段などの前進後退が容易であるなどの点から、好ましい。
【0022】
ハウジングは、側周部、上部および下部の全てが壁、板状部材(上板、下板など)などによって覆われた形状であってもよいし、側周部、上部および下部のうちの一部が壁、板状部材などによって覆われ残りの部分が外部に開放した形状であってもよいし、または側周部、下部および上部の全てが外部に開放した形状であってもよい(例えば、桟のみによって形成された、壁部、天井部および床部のない、6面の全てが外部に開放している直方体形に組んだ骨格だけからなるハウジングなど)。
本発明の光学的立体造形物の後処理装置が備える光照射手段は、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光[以下これを「光(α)」ということがある]を発射し、人体に有害な紫外線を発射せず、光学的立体造形物の後処理中に光(α)がハウジングから漏れても人体に害を与えないので、ハウジングは、外部に開放した構造であって何ら構わない。
【0023】
ハウジングへの光学的立体造形物の収容口は、ハウジングの形状や構造に応じて、ハウジングの側周部、下部または上部のいずれに設けてもよく、例えば、ハウジングの側周部、上部および下部の一部または全部が外部に開放した構造である場合には、当該開放した部分から光学的立体造形物をハウジング内に収容することができる。また、側周部、上部および下部の全てが壁や板状部材(上板、下板など)などによって覆われた構造を有するハウジングでは、その側周部、上部および/または下部のいずれかに、ハウジング内に光学的立体造形物を収容するための収容口を設け、当該収容口を扉や蓋などによって開閉するようにしてもよい。
【0024】
ハウジングのサイズは、後処理を行う光学的立体造形物のサイズ、形状、構造などに応じて決めることができる。ハウジングのサイズをある程度大きくしておくと、サイズ、形状、構造などが異なる種々の光学的立体造形物に対して共通して使用することができ、便利である。
【0025】
ハウジングを形成する素材の種類は特に制限されず、光照射手段による光照射によって劣化が生じにくく、丈夫で、形状保持性があり、光照射手段や距離調節手段などの配置や取付けを円滑に行うことのできる材料であればいずれでもよく、例えば、プラスチック、強化プラスチック、金属、ガラス、セラミックス、木材、段ボールやその他の強化紙、前記した材料の2つ以上を組み合わせた複合材料などから製造することができる。
ハウジングが、側周部および上部の一部または全部が開放した構造を有する場合には、ハウジングの内部の状態、特にハウジング内での光学的立体造形物の収容位置、ハウジング内に収容した光学的立体造形物と光照射手段との間の位置関係などを側周部および上部の当該開放箇所から観察して調整して光学的立体造形物の後処理理を円滑に行うことができる。
一方、側周部および上部の両方が開放しておらずに閉鎖されているハウジングでは、ハウジングの側周部および上部の一部または全部を透明な材料から形成しておくことによって、ハウジングの内部の状態、特にハウジング内での光学的立体造形物の収容位置、ハウジング内に収容した光学的立体造形物と光照射手段との間の位置関係などを外部から観察して調整することができるようになり、それによって本発明の後処理をより円滑に行なうことができる。
【0026】
本発明の光学的立体造形物の後処理装置では、ハウジングに、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光(α)を光学的立体造形物に照射する光照射手段が配置されている。
ハウジングが外部に開放した構造を有している場合や、光透明性の材料で覆われている場合には、光照射手段をハウジングの内部に配置してもよいし、ハウジングの外部に配置してもよいし、またはハウジングの内部と外部の両方に配置してもよい。
ハウジングが光を透さないかまたは光の透過の小さい材料で覆われている場合は、光照射手段をハウジングの内側に配置する。
【0027】
ハウジング内に配置する光照射手段の種類は、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光(α)を光学的立体造形物に照射し得る光照射手段である限りは特に制限されない。
430〜500nmの波長を有する光は青色を呈する可視光であり、本発明における光(α)に係る「430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含む」とは、光(α)が、430〜500nmの範囲内の波長の光(波長が430〜500nmの範囲内にある青色光)を少なくとも含んでいることを意味する。
光(α)は、「430〜500nmの波長範囲内に1つまたは2つ以上のエネルギー強度のピークを有し且つ波長が400nm以下の光を含まない光」であってもよいし、「430〜500nmの波長範囲内に光エネルギー強度のピークを持たないが、430〜500nmの波長範囲内に少なくとも光のエネルギーが分布していて且つ波長が400nm以下の光を含まない光」であってもよいし、または前記2つの光の併用であってもよい。
【0028】
光(α)が、「430〜500nmの波長範囲内に1つまたは2つ以上のエネルギー強度のピークを有し且つ波長が400nm以下の光を含まない光」である場合は、430〜500nmの波長範囲における光エネルギー強度のピーク形状は、なだらかな山型形状および尖った山型形状のいずれであってもよい。光(α)が430〜500nmの波長範囲内に2つ以上の光エネルギー強度のピークを有している場合は、個々のピークの形状および高さは同じであってもよいし、または異なっていてもいずれでもよい。
【0029】
また、光(α)が、「430〜500nmの波長範囲内に光エネルギー強度のピークを持たないが、430〜500nmの波長範囲内に少なくとも光のエネルギーが分布していて且つ波長が400nm以下の光を含まない光」である場合は、430〜500nmの波長範囲では、当該430〜500nmの波長範囲の全体にわたって光エネルギー強度が均一またはほぼ均一に分布していてもよいし(波長を横軸および光エネルギー強度を縦軸にとった場合に430〜500nmの波長範囲にわたって平坦またはほぼ平坦な光エネルギー強度分布を有し且つ波長が400nm以下の光を含まない光であってもよいし)、430〜500nmの波長範囲の一方から他方に向かって(430nmから500nmに向かってまたは500nmから430nmに向かって)光エネルギー強度がテーパー状をなして増加または低下していて且つ波長が400nm以下の光を含まない光であってもよい。場合によっては、光(α)は、430〜500nmの波長範囲のいずれかの波長箇所において光エネルギー強度が低くなった谷形の光エネルギー強度の分布を有し且つ波長が400nm以下の光を含まない光であってもよい。
【0030】
光(α)としては、例えば、
(a)波長が400nm以下の光を含まない波長430〜500nmの光(青色光);
(b)波長が400nm以下の光を含まない波長450〜500nmの光(青色光);
(c)430〜500nmの波長範囲内の光(青色光)と共に、500nmを超える波長を有する光[例えば、波長500〜570nmの光(緑色光)、波長530〜590nmの光(黄緑色光)、波長570〜590nmの光(黄色光)、波長590〜620nmの光(橙色光)、波長620〜750nmの光(赤色光)の1種または2種以上]を含み、且つ波長が400nm以下の光を含まない光;
(d)波長が400nm以下の光を含まない白色光;
などを挙げることができる。
【0031】
光学的立体造形物に光(α)を照射するための光照射手段に用いる光源の種類は特に制限されず、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光(α)を光学的立体造形物に照射することのできる光源であればいずれも使用でき、例えば、
《a》波長が400nm以下の光を放射せず、波長430〜500nmの光を放射する光源(好ましくは青色LEDなど);
《b》波長が400nm以下の光を放射せず、波長430〜500nmの光を含む光を放射する光源[430〜500nmの波長範囲内の光と共に、500nm以上の波長を有する光、例えば、波長500〜570nmの光(緑色光)、波長530〜590nmの光(黄緑色光)、波長570〜590nmの光(黄色光)、波長590〜620nmの光(橙色光)、波長620〜750nmの光(赤色光)の1種または2種以上を含む光を放射する光源];
《c》波長が400nm以下の光を含まない白色光を放射する光源(好ましくは白色灯など);
《d》紫外線および波長430〜500nmの光を含む光を放射する光源(例えば、蛍光灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプなど)と、当該光源から放射される光に含まれる波長が400nm以下の光を除くための紫外線カット手段(例えば、紫外線吸収コーティングを施すかまたは紫外線吸収フィルムを貼付したガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板、石英板や、紫外線吸収剤を添加した樹脂組成物を用いて製造した樹脂板などの、波長430〜500nmの光を通し、波長400nm以下の光を吸収する紫外線フィルターなど)を組み合わせたもの;
などを挙げることができる。
そのうちでも、本発明では、光(α)を照射するための光照射手段として、上記《a》〜《c》の光源が好ましく用いられ、特に上記《a》の光源(特に青色LED)が、光学的立体造形物の黄変などの変色の低減効果が大きく、ハウジング内での熱の発生が小さく、光エネルギー効率がよくて電気の使用量が少なくて済み、しかもハウジング内への配置や取付け、距離調節手段への取付けなどが簡単に行える点からより好ましく用いられる。
【0032】
光照射手段として用いられる光源の形状は、特に制限されず、管形(直管形、円管形、分岐管形)、球形や楕円球形(砲弾型、ランプ型)、点形、チップ形、多セグメント形、直方体形、可撓性チューブ形、コード形などのいずれでもよい。光照射手段として直管形の光源(特に直管形の青色LED)を用いると、少ない配置数または取付け数で広い光照射範囲を確保できて後処理装置の製作が容易であり、光(α)の照射量が多いので、光学的立体造形物の黄変などの変色をより短時間で効率よく低減することができる。
【0033】
ハウジングに配置する光照射手段の数は、ハウジング内に収容する光学的立体造形物のサイズや形状、光照射手段(光源)のサイズ、形状、種類、ハウジングのサイズ、形状、構造などに応じて1個以上の数から選択することができる。
光学的立体造形物のより多くの面に対して光(α)を照射すると、光学的立体造形物の黄変などの変色をより短時間で速やかに低減できるので、複数の光照射手段をハウジングに配置することが好ましい。
光照射手段の配置位置は、ハウジングの側周部、上部および下部のうちの1箇所だけであっても、2箇所以上であってもいずれでもよい。ハウジングの側周部と上部と下部の2箇所以上に、各箇所にそれぞれ複数の光照射手段を配置すると、光学的立体造形物の多くの面に光(α)が照射されるようになり、光学的立体造形物の黄変などの変色をより短時間で効率よく低減することができる。
限定されるものではないが、ハウジングが直方体形(立方体を含む)である場合には、上部のみに光照射手段を配置する態様、下部のみに光照射手段を配置する態様、上部と下部の両方にそれぞれ光照射手段を配置する態様、4つの方形の側面(側壁部分)のうちの1つの側面(側壁部分)に光照射手段を配置する態様、4つの方形の側面(側壁部分)のうちの2つ以上の側面(側壁部分)にそれぞれ光照射手段を配置する態様、4つの方形の側面(側壁部分)のうちの1つまたは2つ以上の側面(側壁部分)と上部と下部のいずれか一方または両方にそれぞれ光照射手段を配置する態様などの種々の態様を採用することができる。
ハウジングに複数の光照射手段を配置するに当たっては、複数の光照射手段を、例えば等間隔になるようにして整列した状態で配置すると、光学的立体造形物に光(α)を均等またはそれに近い状態で照射することができる。
具体的には、例えば、直管形の光照射手段(光源)を互いに平行に並べて複数配置する方式、球形(砲弾形)の光照射手段(光源)を縦と横方向に並べて複数配置する方式などが好ましく採用される。
【0034】
本発明の後処理装置は、ハウジング内に収容された光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を調節するための距離調節手段を有する。
距離調節手段を有することによって、ハウジング内に収容された光学的立体造形物と光照射手段の一部または全部との間の距離を低減させて、光学的立体造形物に光照射手段を接触または近接させることができ、光照射手段を光学的立体造形物に接触または近接させた状態で光学的立体造形物に光(α)を照射することによって、光(α)を光学的立体造形物に短時間照射するだけで、光学的立体造形物の黄変などの変色を速やかに効率よく低減させることができる。
【0035】
距離調節手段としては、ハウジング内に収容された光学的立体造形物のサイズ、形状、構造などに応じて、ハウジングに配置した光照射手段の一部または全部をハウジング内で前進および後退させる手段[以下これを「前進・後退手段(β1)」ということがある]、およびハウジング内に収容した光学的立体造形物を光照射手段に対して前進および後退させる手段[以下これを「前進・後退手段(β2)」ということがある]などを挙げることができる。
本発明の後処理装置は、光照射手段の前進・後退手段(β1)および光学的立体造形物の前進・後退手段(β2)のいずれか一方の手段を有していてもよいし、または両方の手段を有していてもよい。
距離調節手段として前進・後退手段(β1)を採用した場合には、前進・後退手段(β1)に光照射手段を取り付けることで、ハウジング内で、光照射手段を光学的立体造形物に対して前進および後退させることができる。
また、距離調節手段として前進・後退手段(β2)を採用した場合には、前進・後退手段(β2)に光学的立体造形物を載置したり、取り付けることによって、ハウジング内で、光学的立体造形物を光照射手段に対して前進および後退させることができる。
【0036】
前進・後退手段(β1)の機構は、特に制限されず、前進・後退手段(β1)に取り付けた光照射手段を、ハウジング内で、直線状の軌跡、曲線状の軌跡またはその他の軌跡で光学的立体造形物に対して前進および後退させ得る手段であればいずれでもよく、例えば、リンク式、クランク式、ネジ式、シリンダー式、バネ式などの前進・後退機構を採用することができる。
また、前進・後退手段(β2)の機構も特に制限されず、前進・後退手段(β2)に載置または取り付けた光学的立体造形物を、ハウジング内で、直線状の軌跡、曲線状の軌跡またはその他の軌跡で光照射手段に対して前進および後退させ得る機構であればいずれでもよく、例えば、リンク式、クランク式、ネジ式、シリンダー式、バネ式などを挙げることができる。
前進・後退手段(β1)および前進・後退手段(β2)の作動は、手動によって行うようにしてもよいし、または電動によって行うようにしてもよい。
【0037】
ハウジングへの距離調節手段の設置個所、設置数、設置方式などは特に制限されず、ハウジングの形状、構造、サイズ、ハウジングに配置した光照射手段の数、形状、構造、配置形態、ハウジング内に収容する光学的立体造形物のサイズ、形状、構造などに応じて、1個または2個以上の距離調節手段を、ハウジングの1箇所または2箇所以上に設置することができる。
【0038】
限定されるものではないが、本発明の光学的立体造形物の後処理装置における光照射手段の配置形態および距離調節手段の設置形態としては、例えば、以下の(1)〜(16)の態様を挙げることができる。
(1) ハウジングの上部に1つの距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けて、ハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を上方から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの他の箇所には光照射手段を配置しない態様。
(2) ハウジングの上部に1つの距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けて、ハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を上方から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの下部に光照射手段を固定配置する態様。
(3) ハウジングの上部に1つの距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けて、ハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を上方から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの側周部の1箇所または2箇所以上にも光照射手段を固定配置する態様。
(4) ハウジングの上部に1つの距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けて、ハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を上方から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの下部に光照射手段を固定配置すると共に側周部の1箇所または2箇所以上にも光照射手段を固定配置する態様。
【0039】
(5) ハウジングの下部に1つの距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けて、ハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を下方から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの他の箇所には光照射手段を配置しない態様。
(6) ハウジングの下部に1つの距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けて、ハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を下方から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの上部に光照射手段を固定配置する態様。
(7) ハウジングの下部に1つの距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けて、ハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を下方から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの側周部の1箇所または2箇所以上にも光照射手段を固定配置する態様。
(8) ハウジングの下部に1つの距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けて、ハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を下方から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの上部に光照射手段を固定配置すると共に側周部の1箇所または2箇所以上にも光照射手段を固定配置する態様。
【0040】
(9) ハウジングの側周部の1箇所または2箇所以上に1個または2個以上の距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けて、ハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を側周部から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの上部や下部には光照射手段を配置しない態様。
(10) ハウジングの側周部の1箇所または2箇所以上に1個または2個以上の距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けてハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を側周部から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの上部および下部の一方または両方に光照射手段を固定配置する態様。
(11) ハウジングの側周部の1箇所または2箇所以上に1個または2個以上の距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けてハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を側周部から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの側周部の他の箇所に光照射手段を固定配置する態様。
(12) ハウジングの側周部の1箇所または2箇所以上に1個または2個以上の距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けてハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を側周部から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの上部および下部の一方または両方に光照射手段を固定配置すると共にハウジングの側周部の他の箇所にも光照射手段を固定配置する態様。
【0041】
(13) ハウジングの上部に1つの距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けて、ハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を上方から前進および後退させるようにすると共に、ハウジングの側周部の1箇所または2箇所以上に1個または2個以上の距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けてハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を側周部から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの下部には光照射手段を配置しない態様。
(14) ハウジングの下部に1つの距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けて、ハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を下方から前進および後退させるようにすると共に、ハウジングの側周部の1箇所または2箇所以上に1個または2個以上の距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けてハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を側周部から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの上部には光照射手段を配置しない態様。
(15) ハウジングの上部に1つの距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けて、ハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を上方から前進および後退させるようにすると共に、ハウジングの側周部の1箇所または2箇所以上に1個または2個以上の距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けてハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を側周部から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの下部に光照射手段を個体配置する態様。
(16) ハウジングの下部に1つの距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けて、ハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を下方から前進および後退させるようにすると共に、ハウジングの側周部の1箇所または2箇所以上に1個または2個以上の距離調節手段を設置し、それに光照射手段を取り付けてハウジング内に収容した光学的立体造形物に対して光照射手段を側周部から前進および後退させるようにし、その際にハウジングの上部に光照射手段を固定配置する態様。
【0042】
上記した(1)〜(16)の態様において、ハウジングの上部、下部および/または側周部に距離調節手段を設置し、当該距離調節手段に光照射手段を取り付けるに当たっては、距離調節手段は、ハウジングの上部のほぼ全面、下部のほぼ全面および/または側周部の上部から下部に到る面のほぼ全体をカバーするように光照射手段が取り付けられた構造としてもよいし、またはハウジングの上部の面の一部、下部の面の一部および/または側周部の上部から下部に到る面の一部を位置するように光照射手段が取り付けられた構造としてもよい。
【0043】
距離調節手段への光照射手段の取り付け方は特に制限されず、距離調節手段に取り付けた光照射手段から発射された光(α)がハウジング内に収容された光学的立体造形物に対して良好に照射され、しかもハウジング内での距離調節手段およびそれに取り付けられた光照射手段の距離調節ための移動(例えば前進・後退)がスムーズに行なわれる取り付け構造や取り付け方式であればいずれでもよい。限定されるものではないが、例えば、距離調節手段の本体を板状体、棒状体、リング状体などの形状にしておき、それに当該本体に、本体をハウジング内で円滑に移動(例えば前進・後退)させるための上記した例えば、リンク式、クランク式、ネジ式、シリンダー式、バネ式などの機構を設け、当該本体のハウジングの内面側の面や箇所に光照射手段(光源)を取り付ける方式などを採用することができる。
【0044】
何ら限定されるものではないが、本発明の後処理装置について図を参照して説明する。
図1図5は、本発明の後処理装置の概略を示す図(透視図)であり、図1図5において、1は直方体形のハウジング、2a、2b、2c、2dおよび2eは管形の光照射手段(管形の青色LED)、2fは砲弾形(球形)の光照射手段[砲弾形(球形)の青色LED]、3aは距離調節手段の本体、3bは本体3aをハウジング1内で前進・後退させるための機構、3cは距離調節手段をハウジング1の上部、側周部または下部に取り付けるための部材を示す。
図1図3の後処理装置は、直方体形のハウジング1の上部、下部および側周部をなす3つの方形の側部または4つの方形の側部(図1図3では手前の側部については記載を省略している)の各々に、それぞれ複数の管形の光照射手段(管形の青色LED)を整列状態で配置した場合の具体例を示したものである。
図4の後処理装置は、直方体形のハウジング1の上部に、複数の砲弾形(球形)の光照射手段[砲弾形(球形)の青色LED]を縦横方向に整列させて配置した場合の具体例を示したものである。
図5の後処理装置は、直方体形のハウジング1の上部に、複数の管形の光照射手段(管形の青色LED)を整列状態で配置した場合の具体例を示したものである。
【0045】
図1の後処理装置では、下部に配置した光照射手段2aが、ハウジング1内で前進(上昇)および後退(下降)が可能な、3a、3bおよび3cから構成される距離調節手段3に取り付けられている。ハウジング1の内部に光学的立体造形物(図示せず)を収容した後、光照射手段2aを距離調節手段3によって前進(上昇)させて、光照射手段2aに載置されている立体造形物の上端がハウジング1の上部の内側に配置されている光照射手段2bに直接接触するかまたは光照射手段2bに近接する位置まで立体造形物を上昇させ、次いで光照射手段2aの移動を停止した状態で、ハウジング1の内側に配置されている光照射手段を作動(点灯)させて光照射手段から発射される光(α)を立体造形物に照射して、立体造形物に生じている黄変などの変色を低減させる。
【0046】
図2の後処理装置では、向かって右側の側周部(方形の側部)の内側に配置した光照射手段2cが、ハウジング1内で前進および後退が可能な、3a、3bおよび3cから構成される距離調節手段3に取り付けられている。ハウジング1の内部に光学的立体造形物(図示せず)を収容した後、光照射手段2cを距離調節手段3によって前進させて、ハウジング1の下部(ハウジング1の下部の内側に配置されている光照射手段2a)に載置されている立体造形物の右側端が、光照射手段2cに直接接触するかまたは光照射手段2cに近接する位置まで移動(向かって左側に移動)させ、次いで光照射手段2cの移動を停止した状態で、ハウジング1の内側に配置されている光照射手段を作動(点灯)させて光照射手段から発射される光(α)を立体造形物に照射して、立体造形物に生じている黄変などの変色を低減させる。
【0047】
図3の後処理装置では、上部に配置した光照射手段2bが、ハウジング1内で前進(下降)および後退(上昇)が可能な、3a、3bおよび3cから構成される距離調節手段3に取り付けられている。ハウジング1の内部に光学的立体造形物(図示せず)を収容した後、ハウジング1の上部に配置されている光照射手段2bを、距離調節手段3によって前進(下降)させて、ハウジング1の下部(光照射手段2a)の上に載置されている立体造形物の上端が位置調節手段3に取り付けられている光照射手段2bに直接接触するかまたは光照射手段2bに近接する位置まで下降させ、次いで光照射手段2bの移動を停止した状態で、ハウジング1の内側に配置されている光照射手段を作動(点灯)させて光照射手段から発射される光(α)を立体造形物に照射して、立体造形物に生じている黄変などの変色を低減させる。
【0048】
図4および5の後処理装置では、上部に配置した光照射手段2fまたは2bが、ハウジング1内で前進(下降)および後退(上昇)が可能な、3a、3bおよび3cから構成される距離調節手段3に取り付けられている。ハウジング1の内部に光学的立体造形物(図示せず)を収容した後、ハウジング1の上部に配置されている光照射手段2fまたは2bを、距離調節手段3によって前進(下降)させて、ハウジング1の下部に載置されている立体造形物の上端が光照射手段2fまたは2bに直接接触するかまたは光照射手段2fまたは2bに近接する位置まで下降させ、次いで光照射手段2fまたは2bの移動を停止した状態で、光照射手段2fまたは2bを作動(点灯)させて光照射手段から発射される光(α)を立体造形物に照射して、立体造形物に生じている黄変などの変色を低減させる。
【0049】
図1の後処理装置では下部の内側に配置した光照射手段2aを距離調節手段3によって上下に移動可能とし、図2の後処理装置では向かって右側の側周部の内側に配置した光照射手段2cを距離調節手段3によって左右に移動可能とし、図3図4および図5の後処理装置では上部の内側に配置した光照射手段2bまたは2fを距離調節手段3によって上下に移動可能としているが、それらに限定されるものではなく、ハウジング1の上部、下部および側周部のうちの2箇所以上に光照射手段をハウジング内で前進・後退可能に配置してもよいことは、上記で(1)〜(16)の態様を例示して説明したとおりである。
ハウジングの異なる位置に複数の距離調節手段を設け、それぞれの距離調節手段に光照射手段を取り付けて、複数の異なる個所(面など)に配置した光照射手段をそれぞれ移動可能にする場合は、複数の異なる箇所(面など)に配置した光照射手段の移動の自由度ができるだけ大きくなるようにして、距離調節手段のサイズ、形状、構造、光照射手段のサイズ、形状、構造、距離調節手段への光照射手段の取付け構造、ハウジング内での光照射手段の配置位置などを決めるとことが望ましい。
【0050】
また、図1図5に示す後処理装置では、1つの面の内側に配置した複数の光照射手段が、1つの距離調節手段3に取り付けられ、当該複数の光照射手段が一緒(同時)に移動するようになっているが、それに限定されるものではなく、1つの面に複数の距離調節手段を設けてそれぞれの距離調節手段に、1つの面の内側に配置した複数の光照射手段を分けて取り付けて、当該複数の光照射手段がそれぞれ個々に移動し得るようにしてもよい。例えば、図2の後処理装置において、向かって右側の側周部に対して手間側と後側に2つの距離調節手段を設け、手前側と後側の距離調節手段のそれぞれに光照射手段を取り付けて、手前側の光照射手段と後側の光照射手段とが互いに独立してハウジング内で左右に移動し得るようにしてもよい。
【0051】
図1図5に示すような後処理装置において、ハウジング1は、上部、下部および側周部の全てが覆われた構造であってもよいし、上部、下部および側周部のうちの一部が覆われて残りの部分が外部に開放した構造であってもよいし、上部、下部および側周部の全てが外部に開放した構造(例えば骨組みだけからなるスケルトン構造)であってもいずれでもよい。
【0052】
本発明の後処理装置を使用して、距離調節手段に取り付けた光照射手段をハウジング内で移動させて、ハウジング内に収容された光学的立体造形物に対して光照射手段を接触または接近させた状態で光学的立体造形物に光(α)を照射するに当たっては、ハウジング内に配置した複数の光照射手段の少なくとも一部と光学的立体造形物の表面の少なくとも一部との間の距離が20mm以下になるようにし、特に光照射手段の発光体と光学的立体造形物の表面が接触するようにしてようにして、光(α)を照射することが好ましく、それによって、光学的立体造形物における黄変などの変着色がより短い時間で効率よく低減することができる。
【0053】
また、本発明の後処理装置を使用して、距離調節手段に取り付けた光照射手段をハウジング内で移動させて、ハウジング内に収容された光学的立体造形物に対して光(α)を照射するに当たっては、ハウジングの内部に配置されている複数の光照射手段の全てを作動(点灯)させても後処理を行ってもよいし、または複数の光照射手段の一部を作動(点灯)させて後処理を行ってもよい。
複数の光照射手段のうちの一部を作動(点灯)させて後処理を行う場合には、どの位置に配置した光照射手段を作動(点灯)させ、どの位置に配置した光照射手段の作動(点灯)を停止させるかについては、ハウジングのサイズ、形状、構造、光照射手段の種類、形状、サイズ、ハウジングの内側での光照射手段の配置数や配置形態、立体造形物の形状、構造、サイズなどに応じて、より少ない光エネルギーの使用量で、より短い時間で、後処理を効率よく間に行なえる条件を選択して決めることが望ましい。
【0054】
本発明では、ハウジング内に黄変などの変色が生じた光学的立体造形物を収容した後、距離調節手段によって光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を低減させ、その状態で光(α)を照射することによって、黄変などの変色が解消または低減されて、無色透明性に優れた光学的立体造形物、また着色剤を含有する光学的立体造形物では着色剤本来の優れた色調の光学的立体造形物を得ることができる。
本発明の後処理装置を用いる後処理方法は、黄変した光学的立体造形物の色調の改善に特に有効であるが、黄変した光学的立体造形物に限らず、例えば、褐色、黄橙色、黄褐色などに変色した光学的立体造形物の色調の改善方法としても有効である。
【0055】
光照射手段から照射される光が、430〜500nmの範囲内の波長を有する光(青色光)を含む光であっても、波長が400nm以下の光、特に紫外線を含んでいると、光学的立体造形物に照射したときに、光学的立体造形物の黄変などの色調不良が増幅されたり、脱色と競合して脱色速度が遅くなるので、光照射手段から照射される光(α)は、波長が400nm以下の光、特に紫外線を含まないことが必要である。
また、波長が400nm以下の光を含まない光であっても、430〜500nmの範囲内の波長を有する光(青色光)を含まない光を光学的立体造形物に照射した場合には、光学的立体造形物の黄変などの変色の改善効果が小さく、場合によっては色調不良が増大することがある。光(α)は波長が400〜430nmの光を含んでいてもよいが、紫外線領域に近いため、脱色(色調改善)に対する寄与が小さい。
【0056】
本発明の後処理装置を使用して光学的立体造形物に光(α)を照射するに当っては、光(α)が照射される光学的立体造形物の表面での、波長が430〜500nmの範囲内の光の合計照射強度が15W/m2以上、更に25W/m2以上、特に30W/m2以上になるようにして光(α)を照射することが好ましい。光学的立体造形物の照射表面での波長が430〜500nmの範囲内の光の合計照射強度が低いと、脱色はある程度進行するが、黄変などによる色調不良を短時間で効率よく改善することが困難になることがある。
光学的立体造形物における光を照射される表面での波長が430〜500nmの範囲内の光の合計照射強度は、以下の《1》または《2》の方法で求めることができる。
《1》 光学的立体造形物への光照射処理時に、分光照度計を使用して、光を照射されている光学的立体造形物の表面での波長ごとの分光照射強度P(λ)(単位:W/m2・nm)を430〜500nmの波長範囲について測定して、430〜500nmの波長範囲における分光照射強度P(λ)を積分(合計)して、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長が430〜500nmの範囲内の光の合計照射強度(W/m2)を求める方法[430〜500nmの波長領域について波長ごとの分光照射強度P(λ)をそのまま直接測定できる分光照度計を用いる場合]。
《2》 光学的立体造形物への光照射処理時に、放射照度計を使用して、光学的立体造形物における光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)の光の合計光照射強度Q(単位:W/m2)を測定すると共に、光スペクトラムアナライザーを使用して、光学的立体造形物における光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)における相対分光強度曲線Fを求め、当該相対分光強度曲線Fから、380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBをそれぞれ算出し、式:Q×(LB/LA)から、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長が430〜500nmの範囲内の光の合計照射強度を求める方法[430〜500nmの波長領域について波長ごとの分光照射強度P(λ)をそのまま直接測定する分光照度計を使用しない場合]。
また、ハウジング内で光学的立体造形物に光(α)を照射するに当たっては、光源からの発熱や光学的立体造形物の温度上昇が過度にならないように注意することが望ましい。
【0057】
光学的立体造形物への光(α)の照射時間は、光学的立体造形物の変色の度合、光学的立体造形物と光照射手段との間の距離、光(α)を発射する光照射手段(光源)の種類、光照射手段(光源)から発射される光(α)のエネルギー強度、光学的立体造形物のサイズ、形状、光学的立体造形物を形成している樹脂の種類、光学的立体造形物の製造に用いた光硬化性樹脂組成物に含まれる成分の種類や成分組成などによって異なり得るが、一般的には30分〜48時間程度、特に1時間〜32時間程度の照射で、光学的立体造形物の黄変などの変色を大幅に低減させることができ、それによって無色透明性に優れる光学的立体造形物、また着色剤を使用した光学的立体造形物では着色剤本来の優れた色調を有する光学的立体造形物を得ることができる。
【0058】
光学的立体造形物に光(α)を照射する際の温度(光学的立体造形物の温度および/または雰囲気温度)は特に制限されないが、一般的には、15〜50℃の雰囲気温度、特に20〜40℃の雰囲気温度で光(α)による照射処理を行うことが、光(α)の照射操作の簡便性、光学的立体造形物における変色の改善効果、熱による光学的立体造形物の変形防止などの点から好ましい。
【0059】
光学的立体造形後に紫外線の照射および/または加熱を行って後硬化処理した光学的立体造形物に対して、本発明の後処理装置を使用して光(α)を照射する場合には、紫外線の照射および/または加熱による光学的立体造形物の後硬化処理と切り離して光(α)の照射処理を別途行ってもよいし、または紫外線の照射および/または加熱による後硬化処理に引き続いて光(α)の照射処理を行ってもよい。
【0060】
本発明の後処理装置を使用して処理を行う光学的立体造形物としては、光硬化性樹脂組成物を使用し、当該光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に、光を選択的に照射して所定の厚みに光硬化させて所定の形状パターンを有する硬化樹脂層を形成し、その硬化樹脂層の上に更に1層分の光硬化性樹脂組成物を施して造形面を形成させ、その造形面に光を選択的に照射して所定の厚みに光硬化させて所定の形状パターンを有する硬化樹脂層を形成する造形操作を多数回繰り返して行う光造形方法によって得られる光学的立体造形物、または当該光学的立体造形物を紫外線の照射および/または加熱して後硬化した光学的立体造形物であって、黄変などの変色による色調不良が生じている光学的立体造形物であればいずれでもよい。
【0061】
本発明の後処理装置を使用して後処理する光学的立体造形物は、(a)ラジカル重合性有機化合物および光感受性ラジカル重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物、(b)カチオン重合性有機化合物および光感受性カチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物、または(c)ラジカル重合性有機化合物、カチオン重合性有機化合物、光感受性ラジカル重合開始剤および光感受性カチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物のいずれから製造されていてもよい。そのうちでも、光学的立体造形物は、前記(c)の光硬化性樹脂組成物、すなわちラジカル重合性有機化合物、カチオン重合性有機化合物、光感受性ラジカル重合開始剤および光感受性カチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を用いて製造されていることが、光学的立体造形物を製造する際の造形速度が速く、しかも光学的立体造形物の力学的特性および造形精度などに優れることから好ましい。
前記(b)および(c)の光硬化性樹脂組成物、特に前記(c)の光硬化性樹脂組成物において、光硬化性樹脂組成物中に含まれるカチオン重合性有機化合物の一部として、オキセタン基を1個有するモノオキセタン化合物およびオキセタン基を2個以上有するポリオキセタン化合物から選ばれる少なくとも1種のオキセタン化合物を含有させると、光硬化性樹脂組成物の光硬化感度が向上すると共に、硬化時の体積収縮率の低減による寸法精度の向上、耐水性および耐湿性の改良による寸法安定性の向上などを図ることができる。
【0062】
前記(a)および(c)の光硬化性樹脂組成物で用いるラジカル重合性有機化合物としては、光感受性ラジカル重合開始剤の存在下に光を照射したときに重合反応および/または架橋反応を生ずる化合物のいずれもが使用でき、代表例としては、(メタ)アクリレート系化合物、不飽和ポリエステル化合物、アリルウレタン系化合物、ポリチオール化合物などを挙げることができ、前記したラジカル重合性有機化合物の1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリル基を有する化合物が好ましく用いられ、具体例としては、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物、アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0063】
上記したエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物としては、芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物および/または脂肪族エポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により得られる(メタ)アクリレート系反応生成物を挙げることができる。芳香族エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応により得られる(メタ)アクリレート系反応生成物の具体例としては、ビスフェノールAやビスフェノールFなどのビスフェノール化合物またはそのアルキレンオキサイド付加物とエピクロルヒドリンなどのエポキシ化剤との反応によって得られるグリシジルエーテルを、(メタ)アクリル酸と反応させて得られる(メタ)アクリレート、エポキシノボラック樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる(メタ)アクリレート系反応生成物などを挙げることができる。
【0064】
また、上記したアルコール類の(メタ)アクリル酸エステルとしては、分子中に少なくとも1個の水酸基をもつ芳香族アルコール、脂肪族アルコール、脂環族アルコールおよび/またはそれらのアルキレンオキサイド付加体と、(メタ)アクリル酸との反応により得られる(メタ)アクリレートを挙げることができる。
より具体的には、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート[ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなど]、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、前記したジオール、トリオール、テトラオール、ヘキサオールなどの多価アルコールのアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
そのうちでも、アルコール類の(メタ)アクリレートとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応により得られる1分子中に2個以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
また、前記した(メタ)アクリレート化合物のうちで、メタクリレート化合物よりも、アクリレート化合物が重合速度の点から好ましく用いられる。
【0065】
また、上記したウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとイソシアネート化合物を反応させて得られる(メタ)アクリレートを挙げることができる。前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、脂肪族2価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。また、前記イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのような1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0066】
さらに、上記したポリエステル(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
また、上記したポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有ポリエーテルとアクリル酸との反応により得られるポリエーテルアクリレートを挙げることができる。
【0067】
上記(b)および(c)の光硬化性樹脂組成物で用い得るカチオン重合性有機化合物としては、例えば、《1》脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂などのエポキシ化合物;《2》環状エーテルまたは環状アセタール化合物(オキセタン化合物、テトラヒドロフラン、2,3−ジメチルテトラヒドロフランのようなオキソラン化合物、トリオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキサンシクロオクタンなど);《3》環状ラクトン化合物(β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトンなど);《4》チイラン化合物(エチレンスルフィド、チオエピクロロヒドリンなど);《5》チエタン化合物(1,3−プロピンスルフィド、3,3−ジメチルチエタンなど);《6》ビニルエーテル化合物[エチレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、3,4−ジヒドロピラン−2−メチル(3,4−ジヒドロピラン−2−カルボキシレート)、トリエチレングリコールジビニルエーテルなど];《7》エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルソエステル化合物;《8》ビニルシクロヘキサン、イソブチレン、ポリブタジエンのようなエチレン性不飽和化合物などを挙げることができる。
【0068】
上記したうちでも、カチオン重合性有機化合物としては、エポキシ化合物[特に1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(エポキシ樹脂)]が好ましく用いられ、当該エポキシ化合物とオキセタン化合物の併用がより好ましい。特に、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式ポリエポキシ化合物(脂環族エポキシ樹脂)とオキセタン化合物を併用すると、光硬化性樹脂組成物の粘度が低くなって造形が円滑に行われ、しかもカチオン重合速度、厚膜硬化性、解像度、紫外線透過性などが良好になり、得られる光学的立体造形物の体積収縮率が小さくなる。
【0069】
上記した脂環族エポキシ樹脂(脂環式ポリエポキシ化合物)としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、或いはシクロヘキセンまたはシクロペンテン環含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。より具体的には、脂環族エポキシ樹脂(脂環式ポリエポキシ化合物)として、例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)などを挙げることができる。
【0070】
また、上記した脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。より具体的には、例えば、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルなどを挙げることができる。
【0071】
また、上記した芳香族エポキシ樹脂としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価または多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のモノまたはポリグリシジルエーテルを挙げることができ、具体的には、例えばビスフェノールAやビスフェノールFまたはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0072】
また、上記したオキセタン化合物としては、分子中にオキセタン基を1個有するモノオキセタン化合物(OXm)および分子中にオキセタン基を2個以上有するポリオキセタン化合物(OXp)の1種または2種以上を用いることができる。
モノオキセタン化合物(OXm)としては、1分子中にオキセタン基を1個有する化合物であればいずれも使用でき、例えば、トリメチレンオキシド、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタン、3−メチル−3−フェノキシメチルオキセタン、分子中にオキセタン基1個とアルコール性水酸基1個を有するモノオキセタンモノアルコールなどを挙げることができ、そのうちでも、反応性、光硬化性樹脂組成物の粘度などの点からモノオキセンタンモノアルコール化合物が好ましく用いられる。
特に、モノオキセタンモノアルコール化合物のうちでも、下記の一般式(I−a)で表されるモノオキセタン化合物(I−a)および下記の一般式(I−b)で表されるモノオキセタン化合物(I−b)から選ばれる少なくとも1種のモノオキセタン化合物が、入手容易性、反応性などの点から好ましく用いられる。特に、モノオキセタン化合物(OXm)として、下記の一般式(I−b)で表されるモノオキセタン化合物(I−b)を用いると、光造形用樹脂組成物およびそれから得られる立体造形物の耐水性がより良好になる。
【0073】
【化1】
(式中、R1およびR2は炭素数1〜5のアルキル基、R3はエーテル結合を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基、qは1〜6の整数を示す。)
【0074】
上記の一般式(I−a)において、R1の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルを挙げることができる。また、上記の一般式(I−a)において、qは1〜6のうちのいずれでもよいが、1であることが、入手性、反応性の点から好ましい。
モノオキセタン化合物(I−a)の具体例としては、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ノルマルブチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、入手の容易性、反応性などの点から、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンがより好ましく用いられる。
【0075】
上記の一般式(I−b)において、R2の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルを挙げることができる。
また、上記の一般式(I−b)において、R3は炭素数2〜10のアルキレン基であれば、鎖状のアルキレン基または分岐したアルキレン基のいずれであってもよく、或いはアルキレン基(アルキレン鎖)の途中にエーテル結合(エーテル系酸素原子)を有する炭素数2〜10の鎖状または分岐状のアルキレン基であってもよい。R3の具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、エトキシエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、3−オキシペンチレン基などを挙げることができる。そのうちでも、R3はトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘプタメチレン基またはエトキシエチレン基であることが、合成の容易性、化合物が常温で液体であり、取り扱い易いなどの点から好ましい。
【0076】
ポリオキセタン化合物(OXp)としては、オキセタン基を2個以上有する化合物、例えばオキセタン基を2個、3個または4個以上有する化合物のうちのいずれもが使用でき、そのうちでもオキセタン基を2個有するジオキセタン化合物が好ましく用いられる。
特に、ジオキセタン化合物としては、下記の一般式(II);
【0077】
【化2】
(式中、2個のR4は互いに同じかまたは異なる炭素数1〜5のアルキル基、R5は芳香環を有しているかまたは有していない2価の有機基、rは0または1を示す。)
で表されるジオキセタン化合物が、入手の容易性、反応性、低吸湿性、得られる硬化物の力学的特性などの点から好ましく用いられる。
【0078】
上記の一般式(II)において、R4の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルを挙げることができる。また、R5の例としては、炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキレン基(例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、n−ペンタメチレン基、n−ヘキサメチレン基など)、式:−CH2−Ph−CH2−または−CH2−Ph−Ph−CH2−で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基などを挙げることができる。
上記の一般式(II)で表されるジオキセタン化合物の具体例としては、下記の式(II−a)または式(II−b)で表されるジオキセタン化合物を挙げることができる。
【0079】
【化3】
(式中、2個のR4は互いに同じか又は異なる炭素数1〜5のアルキル基、R5は芳香環を有しているかまたは有していない2価の有機基を示す。)
【0080】
上記の式(II−a)で表されるジオキセタン化合物の具体例としては、ビス(3−メチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−プロピル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−ブチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどを挙げることができる。
また、上記の式(II−b)で表されるジオキセタン化合物の具体例としては、上記の式(II−b)において2個のR4が共にメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチル基で、R5がエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、n−ペンタメチレン基、n−ヘキサメチレン基など)、式:−CH2−Ph−CH2−または−CH2−Ph−Ph−CH2−で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基であるジオキセタン化合物を挙げることができる。
光造形用樹脂組成物は、前記したジオキセタン化合物のうちの1種または2種以上を含有することができる。
【0081】
そのうちでも、ポリオキセタン化合物(OXp)として、上記の式(II−a)において、2個のR4が共にメチル基またはエチル基であるビス(3−メチル−3−オキセタニルメチル)エーテルおよび/またはビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルが、入手の容易性、低吸湿性、硬化物の力学的特性などの点から好ましく用いられ、特にビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルがより好ましく用いられる。
【0082】
上記(b)および(c)の光硬化性樹脂組成物では、光硬化性樹脂組成物中に含まれるカチオン重合性有機化合物の質量に基づいて、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(エポキシ樹脂)を30質量%以上、更には40質量%以上、特に50質量%以上の割合で含有することが好ましい。
また、上記(b)および(c)の光硬化性樹脂組成物が、カチオン重合性有機化合物の一部としてオキセタン化合物を含有する場合は、オキセタン化合物の含有量は、カチオン重合性有機化合物の質量に基づいて、1〜70質量%であることが好ましく、1〜60質量%であることがより好ましい。
また、上記(c)の光硬化性樹脂組成物では、ラジカル重合性有機化合物:カチオン重合性有機化合物の含有割合が、質量比で、9:1〜1:9であることが好ましく、8:2〜2:8であることがより好ましい。
【0083】
上記(a)および(c)の光硬化性樹脂組成物が含有する光感受性ラジカル重合開始剤(以下「光ラジカル重合開始剤」という)としては、光を照射したときにラジカル重合性有機化合物のラジカル重合を開始させ得る重合開始剤のいずれもが使用でき、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトンなどのフェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどベンジルまたはそのジアルキルアセタール系化合物、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシメチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4′−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノンなどアセトフェノン系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインまたはそのアルキルエーテル系化合物、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラースケトン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノンなどベンゾフェノン系化合物、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどチオキサントン系化合物などを挙げることができる。
【0084】
上記(a)および(c)の光硬化性樹脂組成物は、光硬化性樹脂組成物の質量に基づいて、光ラジカル重合開始剤を0.5〜10質量%の割合で含有することが好ましく、1〜5質量%の割合で含有することがより好ましい。
【0085】
上記(b)および(c)の光硬化性樹脂組成物が含有する光感受性カチオン重合開始剤(以下「光カチオン重合開始剤」という)としては、光を照射したときにカチオン重合性有機化合物のカチオン重合を開始させ得る重合開始剤のいずれもが使用でき、例えば、テトラフルオロホウ酸トリフェニルフェナシルホスホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸トリフェニルスルホニウム、ビス−[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、ビス−[4−(ジ4’−ヒドロキシエトキシフェニルスルフォニォ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、ビス−[4−(ジフェニルスルフォニォ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロホウ酸ジフェニルヨードニウム、下記の一般式(III)で表される非アンチモン系の芳香族スルホニム化合物(III)などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0086】
【化4】
[上記の一般式(C−1)中、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して、下記の式《i》〜《vi》で表されるいずれかの基であり;
【0087】
【化5】
(式中、Xは塩素原子またはフッ素原子を示し、dは0または1である。)
Rfは炭素数1〜8のフルオロアルキル基であり、mは上記の一般式(III)におけるカチオン[S+(R6)(R7)(R8)]が有する前記式《vi》で表される基の合計個数に1を足した数であり、nは0〜6の整数である。]
また、反応速度を向上させる目的で、必要に応じて、カチオン重合開始剤と共に光増感剤、例えばベンゾフェノン、ベンゾインアルキルエーテル、チオキサントンなどを用いてもよい。
【0088】
上記(b)および(c)の光硬化性樹脂組成物は、光硬化性樹脂組成物の質量に基づいて、光カチオン重合開始剤を1〜10質量%の割合で含有することが好ましく、2〜6質量%の割合で含有することがより好ましい。
【0089】
光学的立体造形物の製造に用いる光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、顔料や染料等の着色剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、充填剤(架橋ポリマー粒子、シリカ、ガラス粉、セラミックス粉、金属粉等)、改質用樹脂などの1種または2種以上を適量含有していることができる。
【0090】
本発明の後処理装置を使用して後処理する光学的立体造形物は、光硬化性樹脂組成物を用いて従来既知の光学的立体造形方法および装置を使用して製造することができる。その際に好ましく採用される光学的立体造形法の代表例としては、液状をなす光硬化性樹脂組成物に所望のパターンを有する硬化層が得られるように光を選択的に照射して硬化層を形成し、次いでこの硬化層に未硬化の液状の光硬化性樹脂組成物を供給し、同様に活性エネルギー線を照射して前記の硬化層と連続した硬化層を新たに形成する積層操作を繰り返すことによって最終的に目的とする立体的造形物を得る方法を挙げることができる。
その際の光としては、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波などを挙げることができる。そのうちでも、300〜400nmの波長を有する紫外線が経済的な観点から好ましく用いられ、その際の光源としては、紫外線レーザー(例えば半導体励起固体レーザー、Arレーザー、He−Cdレーザーなど)、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、紫外線LED(発光ダイオード)、紫外線蛍光灯などを使用することができる。
【0091】
光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に光を照射して所定の形状パターンを有する各硬化樹脂層を形成するに当たっては、レーザー光などのような点状に絞られた光を使用して点描または線描方式で硬化樹脂層を形成してもよいし、または液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッター(DMD)などのような微小光シャッターを複数配列して形成した面状描画マスクを通して造形面に光を面状に照射して硬化樹脂層を形成させる造形方式を採用してもよい。
【0092】
本発明の後処理装置を使用して後処理して得られる光学的立体造形物は、種々の分野で幅広く用いることができ、何ら限定されるものではないが、代表的な応用分野としては、設計の途中で外観デザインを検証するための形状確認モデル、部品の機能性をチェックするための機能試験モデル、鋳型を制作するためのマスターモデル、金型を制作するためのマスターモデル、試作金型用の直接型、美術工芸品などとして用いることができる。より具体的には、例えば、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物などのモデル、母型、加工用のモデル、複雑な熱媒回路の設計用の部品、複雑な構造の熱媒挙動の解析企画用の部品、美術品の復元、模造や現代アート、ガラス張りの建築物のデザインプレゼンテーションモデルのような美術工芸品などの用途に有効に用いることができる。
【実施例】
【0093】
以下に本発明を実施例などによって具体的に説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
以下の例において、光硬化性樹脂組成物の粘度、有効光造形して得られた光学的立体造形物の全光線透過率および黄色度は以下のようにして測定または算出した。
【0094】
(1)光硬化性樹脂組成物の粘度:
光硬化性樹脂組成物を25℃の恒温槽に入れて、光硬化性樹脂組成物の温度を25℃に調節した後、B型粘度計(株式会社東機産業製)を使用して回転速度20rpmで測定した。
(2)光学的立体造形物の全光線透過率および黄色度:
下記の実施例および比較例において光学的立体造形を行って得られた光学的立体造形物(縦×横×厚さ=20mm×45mm×10mmの直方体)[紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化したもの]を、直径60mmの積分球を備えた分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製「U−3900H」)に取り付け、板厚10mmの全光線透過率を測定し、これにより得られた全光線透過率を、当該分光光度計に付属したソフトウェア(UV Solutions)を用いてJIS−K7373に規定された方法で数値計算することによって、補助イルミナントC、視野2度の条件における黄色度を求めた。
【0095】
《実施例1》
(1)後処理装置の作製:
図4に示す後処理装置と同じ基本構造を有する後処理装置を作製した。
具体的には、縦×横×高さ=16cm×11.5cm×25cm(内径)の直方体形のハウジング1[高さ20cmの壁部材によって直方体の下部の全周が覆われており、その上部では天井部分と対向する2つの方形の側面が板状体で覆われ、残りの対向する2つの方形の側面は覆われておらず開放された構造を有するハウジング]の距離調節手段3の本体3aのハウジング内面側に、100個の砲弾形の青色LED[Opto Supply社製「OSB5S511A」、放出波長=470±5nm、直径=5mm、輝度(C)=14.4cd、半減角(θ)=7.5°]を、互いに密接させて、縦5個×横20個=100個で取り付けて、本発明の後処理装置を作製した(青色LEDの全体の取付け面積=3cm×12cm)。
【0096】
(2)光学的立体造形物の製造:
(i) 3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製「Cel−2021P」)5.5質量部、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(新日本理化学株式会社製「HBE−100」)60質量部、3−エチル−3−ヒドロキシメチルキセタン(東亞合成株式会社製「OXT101」)7.5質量部、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成株式会社製「OXT221」)12.5質量部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(新中村化学工業株式会社製「A−9550W」)13質量部、ラウリルアクリレート(新中村化学工業株式会社製「NKエステル−LA」)10質量部、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸2モル付加物(昭和電工株式会社製「VR−77」)3質量部、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(数平均分子量650)(新中村化学工業株式会社製「A−PTMG−65」)1.5質量部、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学株式会社製「PTG−850SN」、数平均分子量801〜890)1.5質量部、サンアプロ株式会社製「CT−1PC」[前記の一般式(III)で表される非アンチモン系の芳香族スルホニウム化合物(III)の1種からなるカチオン重合開始剤溶液]1.5質量部、サンアプロ株式会社製「CT−1P」[前記の一般式(III)で表される非アンチモン系の芳香族スルホニウム化合物(III)の1種からなるカチオン重合開始剤溶液]1.5質量部および1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「イルガキュア−184」、ラジカル重合開始剤)2.5質量部をよく混合して光学的立体造形用樹脂組成物を調製した。この光学的立体造形用樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ、232mPa・sであった。
(ii) 上記の(i)で調製した光硬化性樹脂組成物を用いて、超高速光造形システム(ナブテスコ株式会社製「SOLIFORM500B」)を使用して、スペクトラフィジックス社製「半導体励起固体レーザーBL6型」(出力1000mW;波長355nm)を表面に対して垂直に照射して、照射エネルギー100mJ/cm2の条件下に、スライスピッチ(積層厚み)0.10mm、1層当たりの平均造形時間2分で光学的立体造形を行って、同じサイズの光学的立体造形物(縦×横×厚さ=45mm×20mm×10mmの直方体)4個(以下、光学的立体造形物A,B,C,Dとする)を製造した後、得られた4個の光学的立体造形物(試験片)に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、全体として透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は6.0±0.1および全光線透過率は90.6±0.2%であった。
【0097】
(3)後処理:
(i) 図6の(a)(縦断面図)および(b)[光照射手段2f(砲弾形の青色LED)を取り付けた距離調節手段の本体3aの背面側から見た透視図]に示すように、上記(1)で作製した後処理装置のハウジング1の底部の左側に、縦×横×高さ=50mm×25mm×14cmの台4aを置き、その台4aの上に光学的立体造形物Aを載置し(実験番号1)、次にその右隣に10mmの間隔をあけて縦×横×高さ=50mm×25mm×7cmの台4bを平行において、その台4bの上に光学的立体造形物Bを載置し(実験番号2)、更にその右隣に10mmの間隔をあけて縦×横×高さ=50mm×25mm×1cmの台4cを平行において、その台4cの上に光学的立体造形物Cを載置した(実験番号3)。
残りの光学的立体造形物Dは、ハウジング1内に収容せずに、ハウジング1の外(ハウジングを載置している実験台の上)に置いた(実験番号4)。
(ii) 次いで、図6の(a)に示すように、距離調節手段3の本体3aに取り付けた光照射手段2f(砲弾形の青色LED)の頂部が光学的立体造形物Aの上面に接触するまで距離調節手段3によって光照射手段2fを下降させて本体3aを停止させた(光照射手段2fの頂部と光学的立体造形物Aの上面との距離=0cm、光照射手段2fの頂部と光学的立体造形物Bの上面との距離=7cm、光照射手段2fの頂部と光学的立体造形物Cの上面との距離=13cm)。
(iii) その後、距離調節手段3の本体3aに取り付けた全ての光照射手段2fを点灯させて光照射手段2fから光学的立体造形物A〜Cに光(α)(波長=470±5nm)を55時間継続して照射した。なお、光照射手段2fから光(α)を照射するに当たっては、図6の(b)に示すように、光学的立体造形物A、BおよびCの上面が光照射手段2fから照射される光(α)によって完全にカバーされるようにした。
光照射を開始してから7時間後、24時間後、31時間後、48時間後および55時間後の各時点に、光学的立体造形物A〜Cの黄色度と全光線透過率を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった(実験番号1〜3)。
(iv) また、ハウジング1内に収容せずに実験台の上に置いた光学的立体造形物Dについては、実験室の蛍光灯をつけた状態のままで55時間放置し、光照射試験を開始してから7時間後、24時間後、31時間後、48時間後および55時間後の各時点に、光学的立体造形物Dの黄色度と全光線透過率を測定したところ、下記の表1に示すとおりであった(実験番号4)。
【0098】
【表1】
【0099】
上記の表1の結果にみるように、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光(α)を照射する光照射手段を有し且つハウジング内に収容された光学的立体造形物と光照射手段との間の距離を調節するための手段を有する本発明の光学的立体造形物の後処理装置を使用して、光学的立体造形物と光照射手段との間の距離ができるだけ小さくなるようにして光学的立体造形物に光(α)を照射すると、光学的立体造形物に生じていた黄変が短時間で大きく低減されて、無色透明に近く且つ光透過率が高くて透明性に優れる光学的立体造形物が短い時間で円滑に得られることが分かる。
【0100】
《実施例2》
(1)光学的立体造形物の製造:
(i) 水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(新日本理化株式会社製「HBE−100」)60質量部、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン(東亞合成株式会社製「OXT−101」)5質量部、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成株式会社製「OXT−221」)15質量部、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(サンアプロ株式会社製「CPI−101A」)(カチオン重合開始剤)4質量部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学工業株式会社製「A−9550」)10質量部、ラウリルアクリレート(新中村化学工業株式会社製)6質量部および1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケミカル社製「Irgacure 184」)(ラジカル重合開始剤)3質量部をよく混合して光硬化性樹脂組成物を調製した(粘度=200mPa・s)。
(ii) 上記の(i)で調製した光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)の(ii)と同じ操作を行って、同じサイズの光学的立体造形物(縦×横×厚さ=45mm×20mm×10mmの直方体)4個(以下、光学的立体造形物A,B,C,Dとする)を製造した後、得られた4個の光学的立体造形物(試験片)に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、全体として透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は5.2±0.2および全光線透過率は90.5±0.2%であった。
【0101】
(2)後処理:
(i) 実施例1の(1)で作製した後処理装置を用い、そのハウジング1の内部に実施例1の(3)の(i)で用いたのと同じ台4a、4bおよび4cを実施例1におけるのと同じように配置し、当該台4a、4bおよび4cの上に、上記(1)の(ii)で得られた3個の光学的立体造形物A〜Cを実施例1におけるのと同様にして図6のように載せた(実験番号1〜3)。
また、残りの光学的立体造形物Dは、ハウジング1内に収容せずに、ハウジング1の外(ハウジングを載置している実験台の上)に置いた(実験番号4)。
(ii) 次いで、図6の(a)に示すように、距離調節手段3の本体3aに取り付けた光照射手段2f(砲弾形の青色LED)の頂部が光学的立体造形物Aの上面に接触するまで距離調節手段3によって光照射手段2fを下降させて本体3aを停止させた(光照射手段2fの頂部と光学的立体造形物Aの上面との距離=0cm、光照射手段2fの頂部と光学的立体造形物Bの上面との距離=7cm、光照射手段2fの頂部と光学的立体造形物Cの上面との距離=13cm)。
(iii) その後、距離調節手段3の本体3aに取り付けた全ての光照射手段2fを点灯させて光照射手段2fから光学的立体造形物A〜Cに光(α)(波長=470±5nm)を55時間継続して照射した。なお、光照射手段2fから光(α)を照射するに当たっては、図6の(b)に示すように、光学的立体造形物A、BおよびCの上面が光照射手段2fから照射される光(α)によって完全にカバーされるようにした。
光照射を開始してから7時間後、24時間後、31時間後、48時間後および55時間後の各時点に、光学的立体造形物A〜Cの黄色度と全光線透過率を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった(実験番号1〜3)。
(iv) また、ハウジング1内に収容せずに実験台の上に置いた光学的立体造形物Dについては、実験室の蛍光灯をつけた状態のままで55時間放置し、光照射試験を開始してから7時間後、24時間後、31時間後、48時間後および55時間後の各時点に、光学的立体造形物Dの黄色度と全光線透過率を測定したところ、下記の表2に示すとおりであった(実験番号4)。
【0102】
【表2】
【0103】
《実施例3》
(1)後処理装置の作製:
図5に示す後処理装置と同じ基本構造を有する後処理装置を作製した。
具体的には、縦×横×高さ=70cm×60cm×70cm(内径)の直方体形のハウジング1[高さ60cmの壁部材によって直方体の下部の全周が覆われており、その上部では天井部分と対向する2つの方形の側面が板状体で覆われ、残りの対向する2つの方形の側面は覆われておらず開放された構造を有するハウジング]の距離調節手段3の本体3aのハウジング内面側に、直管形の青色LED(エクセル社製「EFL−20HD/1」、放出波長=470±5nm、直径=3.1cm、長さ=58cm)2bの5本を、60mmの間隔をあけて、図5に示すように平行に取り付けて本発明の後処理装置を作製した。
(2) 実施例1の(2)で調製した光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)の(ii)と同じ操作を行って、同じサイズの光学的立体造形物(縦×横×厚さ=45mm×20mm×10mmの直方体)4個(以下、光学的立体造形物A,B,C,Dとする)を製造した後、得られた4個の光学的立体造形物(試験片)に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、全体として透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は8.0±0.2および全光線透過率は89.7±0.1%であった。
【0104】
(2)後処理:
(i) 上記(1)で作製した後処理装置を用い、図7の(a)および(b)に示すように、そのハウジング1の内部に実施例1の(3)の(i)で用いたのと同じ台4a、4bおよび4cを実施例1におけるのと同じように配置し、当該台4a、4bおよび4cの上に、上記(2)で得られた3個の光学的立体造形物A〜Cを実施例1におけるのと同様にして載せた(実験番号1〜3)。
また、残りの光学的立体造形物Dは、ハウジング1内に収容せずに、ハウジング1の外(ハウジングを載置している実験台の上)に置いた(実験番号4)。
(ii) 次いで、図7の(a)に示すように、距離調節手段3の本体3aに取り付けた光照射手段2b(直管形の青色LED)の下端が光学的立体造形物Aの上面に接触するまで距離調節手段3によって光照射手段2bを下降させて本体3aを停止させた(光照射手段2bの下端と光学的立体造形物Aの上面との距離=0cm、光照射手段2bの下端と光学的立体造形物Bの上面との距離=7cm、光照射手段2bの下端と光学的立体造形物Cの上面との距離=13cm)。
(iii) その後、距離調節手段3の本体3aに取り付けた全ての光照射手段2bを点灯させて光照射手段2bから光学的立体造形物A〜Cに光(α)(波長=470±5nm)を55時間継続して照射した。なお、光照射手段2bから光(α)を照射するに当たっては、図7の(b)に示すように、光学的立体造形物A、BおよびCの上面が光照射手段2bから照射される光(α)によってカバーされるようにした。
光照射を開始してから7時間後、24時間後、31時間後、48時間後および55時間後の各時点に、光学的立体造形物A〜Cの黄色度と全光線透過率を上記した方法で測定したところ、下記の表3に示すとおりであった(実験番号1〜3)。
(iv) また、ハウジング1内に収容せずに実験台の上に置いた光学的立体造形物Dについては、実験室の蛍光灯をつけた状態のままで55時間放置し、光照射試験を開始してから7時間後、24時間後、31時間後、48時間後および55時間後の各時点に、光学的立体造形物Dの黄色度と全光線透過率を測定したところ、下記の表3に示すとおりであった(実験番号4)。
【0105】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の光学的立体造形物の後処理装置を使用して光学的立体造形の後処理を行うことにより、光学的立体造形物が本来有する力学的特性やその他の物性を良好に維持しながら、光学的立体造形物に生じていた黄変などの変色を、簡単に且つ短時間に速やかに解消または低減して、無色透明性に優れるか、または着色剤を用いたものでは着色剤本来の優れた色調を呈する光学的立体造形物に変えることができるので、本発明の後処理装置は、光学的立体造形物の黄変などの変色を低減またはなくすための後処理装置として有効に使用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 ハウジング
2a 管形の光照射手段
2b 管形の光照射手段
2c 管形の光照射手段
2d 管形の光照射手段
2e 管形の光照射手段
2f 砲弾形(球形)の光照射手段
3 距離調節手段
3a 距離調節手段の本体
3b 本体3aを前進・後退させるための機構
3c 取付け部材
4a 台
4b 台
4c 台
A 光学的立体造形物
B 光学的立体造形物
C 光学的立体造形物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7