(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
湿式凝固法によるシート状樹脂発泡体を用いる研磨布において、前記シート状樹脂発泡体の銀面表面と平行な面すべての空孔率(開孔面積/総面積)が0.6未満で、かつシート状樹脂発泡体の銀面表面の裏面に平均径150μm以下の研削による発泡の開孔を有することを特徴とする研磨布。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスク用アルミニウム基板およびガラス基板、液晶ディスプレイ用ガラス基板、シリコンウエハ等の被研磨物は、高精度な表面粗さが要求されるため、精密研磨用の研磨布を用いた研磨加工が行われている。
【0003】
これらの被研磨物の研磨加工は、通常、コロイダルシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム等の研磨剤を含むスラリ状の研磨液を供給しながら行われる。
【0004】
そしてこのような研磨加工における精密研磨用の研磨布としては、湿式凝固法や乾式成形法で作製された、発泡を有するシート状のものが一般に用いられている。
【0005】
この発泡を有するシート状の研磨布のうち、湿式凝固法によるものでは、エラストマー、樹脂等の凝固成分を水混和性の有機溶媒に溶解させた発泡用溶液を成膜用基材に塗布した後、水系凝固液中に浸漬して凝固成分を凝固させることにより成膜用基材の表面に発泡を有するシート状樹脂発泡体を形成させる。
【0006】
水系凝固液と発泡用溶液中の水混和性の有機溶媒の置換によりシート状樹脂発泡体内に発泡が出現する。また、水系凝固液と発泡用溶液が接するシート状樹脂発泡体の水系凝固液との置換面には、銀面が形成される。水系凝固液と発泡用溶液の接面からシート状樹脂発泡体内へ置換が進むにつれて、シート状樹脂発泡体内では水系凝固液中の水混和性の有機溶媒が溶け込みその濃度が変化する。その結果、シート状樹脂発泡体の発泡の形状を断面から観察すると銀面表面近くでは緻密な発泡形状であるが、厚みが増すにつれて発泡は膨らみ、銀面表面に平行な面における空孔率が0.5を上回ると、細長い形状の小さい発泡は大きな発泡に集合する。大きな発泡はさらに拡大膨張し、発泡の数も少なくなる。
【0007】
湿式凝固法によるシート状樹脂発泡体の銀面表面をバフ処理するスェードタイプの研磨布の発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
シート状樹脂発泡体内の縦長の発泡の径の大きさを制限することにより、具体的には研磨布の樹脂発泡体の厚さの少なくとも15%を超えるまで25μm以下の平均孔径を維持することにより、研磨布の長寿命化を図る発明が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
また、表面の開孔径および研磨面から一定の深さ位置における縦長の発泡の径を制限し、研磨布の寿命を向上させる発明が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
さらに、研磨布表面の表面粗さ向上を目的とし、銀面表面を残し、シート状樹脂発泡体の厚さがほぼ一様となるように銀面表面の反対面側が研削処理されている研磨布が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1のような従来のスェードタイプの研磨布の縦長の発泡は表層部では極微細であるが、シート状樹脂発泡体の内部では大きく膨らんでいる。
特許文献2の研磨布のように、その縦長の発泡は略水滴状でありシート状樹脂発泡体の厚さ15%まで平均25μmの孔径を維持しても、深くなるに従って大きく拡大し、発泡の数もシート状樹脂発泡体の内部に行くにしたがって少なくなっている。
具体的には、シート状樹脂発泡体の銀面表面よりの厚み5%で10μmであった発泡径は、厚み20%では20μmを越え、2倍以上となっている。発泡数もシート状樹脂発泡体の厚み5%では約60個あったが、厚み20%では30個以下と半分になっている。
特許文献3記載の研磨布においても研磨面から200μmの深さ位置までの縦長の発泡の径の拡大は抑制されているが、それより深い位置においては急に拡大している。
特許文献4記載の研磨布においては、研削処理により研磨面の裏面である基礎となる部分がなく、さらに研磨布の中ほどより下方にある大きな発泡が研削面において大きく開孔しているため、シート状樹脂発泡体に基材を接着すると、接着時の加圧と圧戻しによる歪みが研磨布の研磨面に現れる。また、銀面表面を残した特許文献4のような研磨布では、研磨加工開始時にドレス処理を行なうと、銀面表面の歪みやうねりにより研磨面に筋が発生する。この発生した筋を無くすため、更にドレス処理を行なう必要があった。
【0013】
このように従来の湿式凝固法によるシート状樹脂発泡体を用いた研磨布では、先に述べたように、シート状樹脂発泡体の銀面表面近くの領域と銀面表面の反対側面近くの領域における発泡の形状や空隙が大きく異なり、荷重に対する圧縮変形がシート状樹脂発泡体のそれぞれの領域で大きく異なる要因となっている。
【0014】
シート状樹脂発泡体の銀面表面近くの領域と銀面表面の反対側面近くの領域の圧縮変形量が異なると、研磨加工数量が増し、圧縮と復元を繰り返すにつれて、研磨面にかかる荷重が場所により不均一となり、研磨布の磨耗する量が研磨面の場所により異なってくる。このため、研磨開始時に研磨布の研磨面の開孔径を均一に調整しても、発泡が水滴状で、深くなるほど径が拡大すること、および研磨面が均一に摩耗しないことにより、表面の開孔径にばらつきが生じ、被研磨物の表面粗さを悪化させる。さらには、研磨面の一部であっても、加工条件で定められた開孔径以上となった場合、新たな研磨布と交換しなければならない。
【0015】
本発明は、上記観点に鑑み創作されたものであり、シート状樹脂発泡体の発泡形状に起因する圧縮変形量が小さく、研磨加工数量が増しても被研磨物の表面粗さを維持できる、研磨面の開孔径のばらつきが少ない研磨布を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
湿式凝固法により作製するシート状樹脂発泡体の発泡が細く均一に揃っている領域を使用することで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
上記の課題を解決するための第1の解決手段は、成膜用基材上に発泡用溶液を1300g/m
2以上塗布し、その塗布した成膜用基材を水系凝固液中に浸漬して凝固成分を凝固させた後、成膜用基材を剥離し、シート状樹脂発泡体を形成する工程と、前記シート状樹脂発泡体の銀面表面と平行な面すべての空孔率(開孔面積/総面積)が0.6未満となる面まで、成膜基材面より切削する工程とを含むことを特徴とする研磨布の製造方法である。
【0018】
第2の解決手段は、湿式凝固法によるシート状樹脂発泡体を用いる研磨布において、前記シート状樹脂発泡体の銀面表面と平行な面すべての空孔率(開孔面積/総面積)が0.6未満で、かつシート状樹脂発泡体の銀面の裏面に平均径150μm以下の研削による発泡の開孔を有することを特徴とする研磨布を構成としたものである。
【0019】
第3の解決手段は、前記シート状樹脂発泡体の銀面表面からの深さ100μmにおける断面の発泡径が平均30μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の研磨布を構成としたものである。
【0020】
(作用)
上記第1の課題解決手段による作用は、発泡層の縦長の発泡を銀面表面より厚み方向に細く、一様に伸びる形状に揃えることができる。
【0021】
上記第2の課題解決手段による作用は、発泡層内のすべての発泡の銀面表面に平行な面における径の大きさを一定範囲内とすることができる。
【0022】
上記第3の課題解決手段による作用は、発泡層の厚みに対する発泡の拡大の割合を一定範囲内とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上記構成、作用よって、拡大が少なく、形状が揃った縦長の発泡を有する研磨布とすることができる。
【0024】
さらに、シート状樹脂発泡体の発泡の形状に起因する研磨布の圧縮変形量が小さく、研磨荷重が研磨布全体に均一に分散し、研磨布の研磨面の片減りがなく、磨耗が均一に進むため研磨面上の位置や場所による開孔の大きさの差異の発生を防ぎ、被研磨物の表面粗さを維持でき、研磨布の寿命が延びる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の研磨布は、湿式凝固法によりシート状樹脂発泡体を作製する。
図1(a)は、湿式凝固法により作製したシート状樹脂発泡体および発泡層の一実施形態を概略的に示す断面図である。従来は、同図に示すシート状樹脂発泡体1をそのまま、もしくはその表面または裏面を浅く研削処理し、
図3に示すような研磨布14、16としていた。
【0028】
本発明では、従来よりも厚いシート状樹脂発泡体1を形成し、そのシート状樹脂発泡体1の銀面表面2に平行な面の空孔率が一定範囲を超える発泡層(以下、「下発泡層4」という)を除去し、そのすべての空孔率が一定範囲以内で、銀面表面2からの厚みが一定である発泡層(以下、「上発泡層3」という)を研磨布として用いる。
【0029】
図2はシート状樹脂発泡体1の銀面表面からの厚みと空孔率の関係を示すグラフである。空孔率はシート状樹脂発泡体1の厚さ方向の断面の拡大写真より、画像解析装置(三谷商事社製 WinRoof Ver.6.4)を用いて二値化し算出した。
本発明の上発泡層3とは、
図2に示すように銀面表面からシート状樹脂発泡体の厚みが増すにつれ、増える空孔率が0.6以上とならないシート状樹脂発泡体の厚み部分である。
上発泡層3としては0.5以下となることが好ましい。さらに好ましくは、空孔率が0.45以下である。
上発泡層3の空孔率が0.6以上の場合は、発明の効果を得られにくい。これは、空孔率が0.6以上の領域は、小さな発泡5が成膜基材面7の近傍にまで達する縦長の大きな発泡6に集合し、発泡6の空隙が急に大きくなり、ほぼ発泡6のみとなるためである。空孔率の下限には特に制限はないが、一例として、本発明によれば、上発泡層3の空孔率が0.3以上である研磨布が容易に得られる。
【0030】
なお、空孔率は、
図2に示すようにシート状発泡体の厚みが増すに連れ蛇行しながら増加し、0.6を超えた後に再び減少する。このため、空孔率が0.45、0.5、0.6となるシート状樹脂発泡体の厚みは二箇所(
図2中、空孔率0.45では(1)、(6)、空孔率0.5では(2)、(5)、空孔率0.6では(3)、(4))存在するが、銀面表面から
図2中(3)未満までの領域にて、本発明の効果が得られる。一方で、銀面表面から
図2中(4)を超える領域では、銀面裏面の空孔率は0.6未満であるもののその発泡層内に空孔率が0.6以上となる領域(
図2中(3)から(4))を含むため、本発明の効果は得られない。
【0031】
図1(b)に示すように、上発泡層3をそのまま研磨布8とすることもできるが、研磨機への着脱や取り扱いを容易にするため、
図1(c)に示す研磨布13のように、前記の上発泡層3に両面粘着テープ等により基材12を接着、積層させることもできる。
【0032】
まず、
図1(a)に示す、シート状樹脂発泡体1の形成について説明する。
【0033】
シート状樹脂発泡体1は、凝固成分を水混和性の有機溶剤に溶解させた発泡用溶液を成膜用基材に塗布し、その塗布した成膜用基材を水系凝固液中に浸漬して凝固成分を凝固させた後、成膜用基材を剥離し形成する。発泡用溶液の塗布量については、1300g/m
2以上が好ましい。さらに好ましくは、1600g/m
2以上である。 この塗布量が1300g/m
2未満の場合、得られる研磨布の圧縮変形量が大きく、被研磨物である基板の端部形状に影響を与え、ロール・オフと呼ばれる欠陥を生じる。発泡用溶液の塗布量の上限には特に制限はないが、一例として発泡用溶液の塗布量が3000g/m
2以下あれば、本発明による良好な研磨特性を有する研磨布が容易に得られる。
【0034】
さらに、シート状樹脂発泡体1に残留した水混和性の有機溶剤を水で良く洗い流し、マングルロール等で絞った後、乾燥させる。
【0035】
シート状樹脂発泡体1を上述の湿式凝固法により製造する場合、凝固成分としては、特に限定されないが、ポリウレタンエラストマーが好ましく用いられる。
ポリウレタンエラストマーは、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系あるいはこれらの共重合体等を用いることができ、目的に応じて単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
【0036】
凝固成分としてのポリウレタンエラストマーを溶解する水混和性の有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、エチルアセテート、ジオキサン等が挙げられる。有機溶剤は目的に応じて単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
【0037】
さらにエラストマー発泡用溶液には、凝固成分の凝固する速さを変化させ、樹脂発泡体内に形成される発泡の形状を整えるために顔料、発泡助剤、親水剤、撥水剤等を配合することができる。
【0038】
次に、上発泡層3の作製について説明する。
【0039】
上述の湿式凝固法により得られたシート状樹脂発泡体1の厚さ方向の断面の拡大写真により、上発泡層3が所定の空孔率となる、銀面表面2に平行な面(以下、「裏面10」という)を決定する。
【0040】
シート状樹脂発泡体1の成膜基材面7から裏面10までを研削除去し、上発泡層3を形成する。研削の方法としては、ベルトサンダー装置等による研削加工があるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
下発泡層4を除去することにより、発泡6は上発泡層3の裏面10において開孔する。その開孔11の平均径(A)は、200μm以下が好ましい。さらに好ましくは、180μm以下である。そして最適には、150μm以下である。
また、開孔11の平均径(A)が200μmを越える場合、研磨機の定盤に研磨布を貼り付けた場合、その研磨面に歪みを生じ、本発明の効果を得られない。平均径(A)の下限には特に制限はないが、一例として、本発明によれば、開孔11の平均径(A)が80μm以上である研磨布が容易に得られる。
【0042】
上発泡層3の裏面10の発泡の開孔11の平均径(A)と上発泡層3の厚み9(B)に対する比(A)/(B)の値は0.25以下が好ましい。さらに好ましくは、0.20以下である。そして最適には、0.18以下である。
また、(A)/(B)の値が0.25を超える場合、その圧縮変形量が大きくなる。圧縮変形量が大きいと被研磨物である基板の端部形状に影響を与え、ロール・オフと呼ばれる欠陥を生じる。(A)/(B)の値の下限には特に制限はないが、一例として、本発明によれば、平均径(A)と上発泡層3の厚み9(B)に対する比(A)/(B)の値が0.1以上である研磨布が容易に得られる。
【0043】
前記の発泡の開孔11の平均径(A)と厚み9(B)については、シート状樹脂発泡体1の原料や形成条件により適宜、調整することができる。
【0044】
本発明に用いられる成膜用基材および基材12としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィンやポリエステル等が挙げられる。
【0045】
本発明の研磨布8、13は、いわゆるドレッシング加工後に研磨加工に使用される。ドレッシング加工は、研磨加工前に研磨布用ドレッサを用いて行われるものであり、例えば、台金の表面にダイヤモンド砥粒が固着された研磨布用ドレッサを用いて研磨布の表面を予め純水を流しながらドレッシングすることによって行われる。このドレッシング加工により研磨布の研磨面の微細な凹凸が研磨用ドレッサにより取り除かれ、研磨布の研磨面が平坦化される。
【0046】
本発明の研磨布8、13を用いた被研磨物の研磨加工は、通常、コロイダルシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム等の研磨剤を含むスラリ状の研磨液を供給しながら行われる。
【0047】
本発明の研磨布8、13は、例えば、ハードディスク用アルミニウム基板およびガラス基板、液晶ディスプレイ用ガラス基板、シリコンウエハ等の研磨、特に仕上げ研磨に好適である。
【0048】
次に、発泡層および研磨布の物性の測定方法等について説明する。
1)開孔11の平均径の測定
裏面10のSEM画像(日立社製走査型顕微鏡S−2150)を撮り、画像解析装置(三谷商事社製 WinRoof Ver.6.4)を用いて平均円相当径を算出した。
2)圧縮変形量の測定
研磨布にW1:300gf/cm
2で1分間の荷重をかけ、厚みC1を測定する、次にW2:1800gf/cm
2で1分間の荷重をかけて、厚みC2を測定し、数式=〔(C1−C2)〕により算出する。
3)研磨面の開孔径の状態の観察
研磨機の上定盤、下定盤の研磨布の内径部(内径端から20mm)、中心部(内径端から100mm)、外径部(内径端から180mm)の計6ヶ所の研磨面の開孔の状態を100倍のSEM写真により観察した。
4)被研磨物の粗さ
平坦度評価は、ZYGO NEW VIEW200(ZYGO社製)を用い、研磨したアルミニウム基板の表裏4点を測定し、その粗さ(単位Å)を求め、その8点を平均化した。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
<実施例1>
固形分濃度30%のポリエステル系ポリウレタンエラストマー溶液100質量部に、ジメチルホルムアミド60質量部、発泡助剤1.5質量部、および顔料であるカーボンブラックを20質量%含有するジメチルホルムアミド分散液10質量部を加え、ポリウレタンエラストマー発泡用溶液を作製した。
【0051】
この発泡用溶液を成膜用基材にロールコーターで1600g/m
2塗布した後、凝固浴の中に浸漬して凝固、成膜用基材を剥離させ、温水で十分に脱溶媒した後、100℃にて熱風乾燥を行い、厚さ1650μmのポリウレタンエラストマーのシート状樹脂発泡体1を形成した。シート状樹脂発泡体1の断面拡大写真により、銀面表面2より最初に空孔率が0.5となる裏面10を特定した。
【0052】
次に、シート状樹脂発泡体1から下発泡層4を研削処理にて除去し、厚さ820μmの上発泡層3を得た。さらに、この上発泡層3の裏面10に両面粘着テープにより基材12を接着し、実施例1の研磨布13を作製した。
【0053】
<実施例2>
実施例2では、実施例1と同様の発泡用溶液の塗布量を増やして、1750g/m
2塗布し、シート状樹脂発泡体1の厚みを1800μmとし、また裏面10における空孔率を0.45とした。 これ以外は実施例1と同様にし、厚さ820μmの上発泡層3を得た。さらに、基材12を接着し実施例2の研磨布13を作製した。
【0054】
<比較例1>
比較例1では、実施例1と同様の発泡用溶液の塗布量を減らして、1230g/m
2塗布し、シート状樹脂発泡体1の厚みを1250μmとし、また裏面10における空孔率を0.6とした。これ以外は実施例1と同様にし、厚さ810μmの上発泡層3を得た。さらに、基材12を接着し比較例1の研磨布13を作製した。
【0055】
<比較例2>
比較例2では、実施例1と同様の発泡用溶液の塗布量を減らして、900g/m
2塗布し、シート状樹脂発泡体1の厚みを900μmとし、また裏面10における空孔率を0.6とした。これ以外は実施例1と同様にし、厚さ590μmの上発泡層3を得た。さらに、基材12を接着し比較例2の研磨布13を作製した。
【0056】
<比較例3>
比較例3では、実施例1と同様の発泡用溶液の塗布量を減らして、980g/m
2塗布し、シート状樹脂発泡体1の厚みを990μmとした以外は、比較例2と同様にし、厚さ660μmの上発泡層3を得た。さらに、基材12を接着し比較例3の研磨布13を作製した。
【0057】
<比較例4>
比較例4では、
図3(a)に示すように、実施例1と同様の発泡用溶液および湿式凝固法により、発泡用溶液の塗布量を減少させ、810g/m
2塗布し、厚さ810μmのシート状樹脂発泡体1を形成し発泡層15とした。銀面表面2の反対側に基材12を接着して、比較例4の研磨布14を作製した。
【0058】
<比較例5>
比較例5では、
図3(b)に示すように、実施例1と同様の発泡用溶液および湿式凝固法により、発泡用溶液の塗布量を減少させ、890g/m
2塗布し、厚さ890μmのポリウレタンエラストマーのシート状樹脂発泡体1を形成後、銀面表面2の反対側から100μmほど研削処理により除去し、銀面表面2の反対面の発泡を開孔させ、発泡層17とした。 その開孔の平均径は310μmであった。次に銀面表面2の反対側に基材12を接着にして、比較例5の研磨布16を作製した。
【0059】
また、実施例1、2および比較例1〜5について、シート状樹脂発泡体1をその銀面表面2より深さ100μmまで研削し、その研削面における発泡径を開孔11の平均径と同様に測定した。
【0060】
表1に実施例、比較例の研磨布の測定結果を示す。
【0061】
【表1】
[圧縮変形量]
圧縮変形量を次の基準で評価した。
◎:60μm未満
○:60μm以上80μm未満
×:80μm以上
【0062】
実施例および比較例の研磨布について次の試験を行った。
内径240mm、外径640mmのドーナツ状の研磨布をスピードファム社製「9B−5P−IV」に装着し、台金の表面にダイヤモンド砥粒が固着された研磨布用ドレッサを研磨布表面に4個セットし、純水を流しながら研磨布の研磨面の微細な凹凸を平坦化するために、研磨面のドレッシング加工(ダイヤモンドドレス)を行った。ドレッシング加工後に研磨面の開孔径の状況を上述の方法により観察した。
【0063】
なお、ダイヤモンドドレスは、加工圧力30g/cm
2、定盤回転数45rpm、純水供給量は1500cc/分、加工時間30分として行った。
【0064】
次に、研磨液(コロイダルシリカ)を用いて、3.5インチハードディスク用アルミニウム基板を研磨した。1バッチ当たり10枚の基板の研磨時間を3分間とし、1000バッチ、10000枚の研磨加工を行なった。
研磨条件は、加工圧力80g/cm
2、定盤回転数45rpm、研磨液供給量100cc/分とした。
【0065】
1000バッチの研磨終了後、研磨布を研磨装置から取り外し、研磨面の開孔径の状況を上述の方法により観察した。
また、1000バッチ目に加工したアルミニウム基板の平坦度を上述の方法により測定した。
【0066】
表2に実施例、比較例の評価結果を示す。
【0067】
【表2】
[研磨面の開孔径の状況の評価]
研磨面の開孔径の大きさを、研磨布の研磨面の写真、
図4の各基準に比較し、評価した。
大きさおよびばらつき(小)=A < B < C=大きさおよびばらつき(大)
図4に評価の基準とした、研磨布の上下・外中内部のSEM写真を示す。
図4(a)は評価Aの基準を示す。開孔は同図(b)(c)より小さく、場所による違いはほとんどない。
図4(b)は評価Bの基準を示す。開孔は同図(a)より大きいが、場所による違いは少ない。
図4(c)は評価Cの基準を示す。開孔は同図(a)(b)より大きく、場所によりその大きさが異なる。
[被研磨物の粗さ(Ra)]
被研磨物の粗さ(Ra)を次の基準で評価した。
○:Ra<2.2Å
△:2.2Å≦Ra≦2.5Å
×:2.5Å<Ra
【0068】
表2に示すように、裏面における空孔率が0.5以下で、発泡の開孔の平均径(A)が200μm以下で、厚み(B)に対する比A/Bが0.25以下である発泡層からなる実施例1、2の研磨布は、発泡形状に起因する圧縮変形量が小さく、研磨加工時の磨耗が進んでも研磨加工開始時の開孔径の分布を維持でき、被研磨物の得る良好な平坦性表面粗さを維持できる。
よって、これまでの研磨布に比べ、より長時間に渡り、良好な研磨特性が得られる。