特許第5970303号(P5970303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5970303
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】管状体の布設方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 3/06 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   E03F3/06
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-194944(P2012-194944)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2014-51783(P2014-51783A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】舟生 明浩
(72)【発明者】
【氏名】市川 順一
(72)【発明者】
【氏名】小渡 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 旬也
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−196439(JP,A)
【文献】 特開平05−071159(JP,A)
【文献】 特開2006−152642(JP,A)
【文献】 特開2005−105780(JP,A)
【文献】 特開2007−262848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数基を連結して管状体を構成する単位管体を、基礎コンクリート上に搬入し、該基礎コンクリート上に敷設されたレール面に球状体を分散して配置し、前記単位管体を前記球状体で支持し、該球状体の転動により前記管体を連結位置まで移送し、既設の管体と連結して管状体を構築するようにした管状体の布設方法において、
前記基礎コンクリートを構築する際に、該基礎コンクリートの所定位置に前記レール面が略平坦をなして底部に位置するような所定の深さと幅とを有し、開口縁に沿って防護金物を設けた角溝を延設し、該角溝の延長方向に沿って底面に平鋼板の支持部材を配設し、該支持部材によって前記角溝の深さに応じたレベル調整を行いながら前記平鋼板をレール延長方向に沿って支持部材上に載置固定し、前記平鋼板の下方と前記角溝の内壁とで囲まれた空間に固化材を充填して前記平鋼板を下方から補剛し、前記平鋼板の上面を、前記管状体を移送するレール面とすることを特徴とする管状体の布設方法。
【請求項2】
前記支持部材は、前記基礎コンクリートに打設された、あと施工アンカー側ナットに螺合可能なボルトからなることを特徴とする請求項1に記載の管状体の布設方法。
【請求項3】
前記ボルトは、前記あと施工アンカー側ナットに、前記平鋼板の載置時のレベル調整に応じた締め込み量で締め込まれることを特徴とする請求項2に記載の管状体の布設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管状体の布設方法に係り、特に複数基の管体を設置位置まで基礎コンクリートに設けた溝内のレール面に沿って移送(横引き)して連結し、所定延長の管状体を構築するようにした管状体の布設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、都市部等の幹線道路直下に上下水道、電力配線、各種地下道などのための共同溝や管渠を構築する工法として、先行して地盤を開削して土留めを行って、所定延長の開削地下空間を形成し、その地下空間の搬入地点に、プレキャストコンクリート製の単位長さの管体(以下、本明細書では、具体的な呼び名として知られる、矩形断面形状、上半円形トンネル形状等からなる各種ボックスカルバート、ヒューム管、トンネルカルバート、あるいは上半アーチトンネル等の総称を指すこととする。)を搬入し、搬送路に沿ってウィンチ等で牽引(本明細書では、「横引き」と呼ぶ。)して、所定の布設位置まで移送して既設の管体に連結し、これを順次繰り返して連続したトンネル状の共同溝や暗渠、アーチ構造(総称して管状体と呼ぶ。)を構築する横引き工法を採用して多くの実績を挙げている(特許文献1参照)。
【0003】
ここで、従来の横引き工法の工法内容について簡述する。地下空間に形成される管体の移送路は、ほぼ水平な上面にレールが形成された基礎コンクリートからなる。レールは、基礎コンクリートの表面に溝型鋼あるいはH型鋼を、ウェブ面が上面となるように埋設して構成したもので、この型鋼で囲まれた溝内に、例えばφ11程度の鋼球(ベアリングボール)を、適当な間隔をあけて平面上に分散するように多数収容させる。この鋼球上で、管体の下面に装着されたガイド突起(型鋼あるいは型鋼とコンクリートの複合体で構成する)を載置し、鋼球の回転、転動等によってその移送時の摩擦抵抗が低減された状態で、管体を所定の布設位置まで移送することができる。
【0004】
管体の底版には、所定数のグラウト充填孔を設けておき、布設位置で既設の管体と連結された状態で、管体の底版下方と移送路との間の空間、移送路を構成する鋼球間の空隙等にグラウト等を充填硬化することで、連続して連結され、管体として構成された管体と移送路を構成する基礎コンクリートとの一体化が図られる。
【0005】
このように、布設位置に順次移送設置された管体同士が一体に連結されることにより、所定の縦断線形および長さを有した共同溝、暗渠、トンネルアーチ構造が構築される。
【0006】
上述した、横引き工法(もしくはボックスベアリング横引き工法)については、出願人等によって各種の関連技術が提案、開示されている。これらの開示された技術として、たとえば横引き工法に関する基本発明(特許文献1)、基礎コンクリートに埋設されたH型鋼のウェブをレール面として、そのレール面を下方から補剛してレール面の平坦性を確保した発明(特許文献2)を例示することができる。
【0007】
上述したように、管体を支持する鋼球を収容するために、H形鋼が、そのウェブをレール面としてフランジとで囲まれた上方が開放したコ字形をなすように基礎コンクリートに埋設されている。このレール内に分散して収容された多数の鋼球で管体を支持し、鋼球の滑らかな転動により管体の横引きがスムーズに行えるように、レールは管体の荷重が作用しても平坦性が保持できる剛性を有し、鋼球の転動を円滑に行える必要がある。
【0008】
特許文献2では、そのために、H型鋼のレールの設置方法として、H型鋼のウェブにあらかじめ所定間隔で空気抜き孔を設けておき、基礎コンクリートがレール下面まで確実に充填されるようになっている。その設置方法として、まずレールとなるH形鋼を、基礎コンクリートの天端面を考慮して所定のレベルとなるように、形鋼等で組んだ仮設架台に載せて固定して位置保持させる。その状態で基礎コンクリートを打設する。コンクリートは、ガイドレールのレール面の下面側を満たすようにH形鋼のレールの下側に流れ込み、ウェブの下面側に溜まった空気はウェブの空気抜き孔から排出される。そして排出されたモルタル分をはつり取り、凹溝状のレール面を平坦に仕上げる。このときウェブの下側面にはコンクリートが密実に充填されているので、鋼球を介して管体の荷重がレール面(ウェブ)に作用してもウェブはほとんど変形しないで、レールの平坦性が保持される。
【0009】
施工時にレール下面の補強をする手間を省くために、特許文献2には、あらかじめレール下面に相当する部位をプレキャストコンクリートで補強した鉄骨プレキャストコンクリート複合製品も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2879021号公報
【特許文献2】特開2007−262848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に開示されたレールの補剛方法により、管体移送時のレールの平坦性が確保される。しかし、基礎コンクリート用の型枠組み立てと同時に、レール部材としてのH形鋼を所定位置に保持させるため、型枠作業が煩雑になるという問題がある。コンクリート打設時にH形鋼が流動するコンクリートによって位置ズレし、レールの直線精度が保持できないおそれもある。また、あらかじめH形鋼の一部をコンクリートで補剛した鉄骨プレキャストコンクリート製品は、部材が重いため、部材の取り扱い、所定位置への設置等のにおいて作業負担が増える。
【0012】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、鋼球を用いた横引き工法によって所定延長において管状体を布設する場合等、たとえば段差が設けられた基礎コンクリート等においても、レールの延長方向の平坦性を確保し、精度の高いレールを容易に構築し、レール上を安定して管体移送ができるようにした管状体の布設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、複数基を連結して管状体を構成する単位管体を、基礎コンクリート上に搬入し、該基礎コンクリート上に敷設されたレール面に球状体を分散して配置し、前記単位管体を前記球状体で支持し、該球状体の転動により前記管体を連結位置まで移送し、既設の管体と連結して管状体を構築するようにした管状体の布設方法において、前記基礎コンクリートを構築する際に、該基礎コンクリートの所定位置に前記レール面が略平坦をなして底部に位置するような所定の深さと幅とを有し、開口縁に沿って防護金物を設けた角溝を延設し、該角溝の延長方向に沿って底面に平鋼板の支持部材を配設し、該支持部材によって前記角溝の深さに応じたレベル調整を行いながら前記平鋼板をレール延長方向に沿って支持部材上に載置固定し、前記平鋼板の下方と前記角溝の内壁とで囲まれた空間に固化材を充填して前記平鋼板を下方から補剛し、前記平鋼板の上面を、前記管状体を移送するレール面とすることを特徴とする。
【0014】
前記支持部材は、前記基礎コンクリートに打設された、あと施工アンカー側ナットに螺合可能なボルトからなることが好ましい。
【0015】
前記ボルトは、前記あと施工アンカー側ナットに、前記平鋼板の載置時のレベル調整に応じた締め込み量で締め込まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、管体の横引き工法において、基礎コンクリートに設けた溝内に、平坦性に優れ、剛性が確保された精度のよいレール面を効率よく施工でき、該レール面上に分散させた鋼球を介して管体を効率よく横引きして設置位置まで移送することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による管状体の布設方法における管体および管体移送手段を示した断面図。
図2図1に示した管体の移送状態を側面から示した状態説明図。
図3図1に示した管体移送手段のレール構造の構成を拡大して示した部分拡大断面図。
図4】レール構造の他の実施形態(広幅レール)を示した部分断面図。
図5】レール構造における高さ調整後の設置状態を示した部分断面図。
図6】レール構造の他の実施形態を示した部分断面図。
図7】レール構造の他の実施形態を示した部分断面図。
図8】レールレイアウト例(方向変換部)における管体の移送状態を示した模式平面図。
図9図8に示した断面線におけるレール構造の断面を示した部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の管状体の布設方法の実施形態例として、以下の実施例について添付図面を参照して説明する。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の管状体の布設方法の管体移送手段としてのレール構造の構成について添付図面を参照して説明する。
【0022】
施工を予定している管状体の全長区間において、基礎コンクリートに設けられる横引き作業用のレール構造は、全長にわたって形成された角溝内に設けられ、その上に鋼球が分散して満遍なく配置され、底面保護プレート等を介して支持された管体を、搬入起点から所定の設置位置まで、スムースに移送させるための平坦性と剛性とを有することが必要である。そのために、本発明では、管体底面側に所定の管体移送手段を取り付け、基礎側に管体支持手段としてのレール構造を構築している。以下、管体と管体に取り付けられた管体移送手段と、管体が支持、移送されるレール構造を主構成とする管体支持構造の構成について添付図面を参照して説明する。
【0023】
[管体移送手段の構成]
図1には、所定の法面勾配3で開削された地盤面2において、単位長さ(本実施例では1基の単位長さ2.0mの製品が使用されている。)のプレキャストコンクリート製品からなる管体1の一実施形態としての上半円形トンネル形状の水路トンネルと、この管体1を移送するための管体移送手段10と、管体移送手段10を介して管体を支持するレール30を主構成とする管体支持構造20とが示されている。
【0024】
管体1は、図示したように、水路トンネル(管状体)の全長にわたり地盤面2に所定厚さをなして敷設された管体支持構造20としての、下部基礎コンクリート22上に積層された上部基礎コンクリート21に構築されたレール30上に支持されている。
【0025】
上述した管体移送手段10を支持するために、上部基礎コンクリート21の対応表面には、溝23が形成され、溝23の底部の所定高さにレール30が構築されている。管体1は、レール30上に分散して収容された球状体としての鋼球31に、管体移送手段10を介して支持され、移送方向に移動可能に載置されている。なお、図1には、円形上半部1Uと、側壁部と、円弧状の水路底面をなすインバートコンクリート1Lとで構成された水路トンネルが示されているが、本発明により移送され、所定延長の管状体を構成する管体1は、矩形、馬蹄形他の断面形状のボックスカルバートや、有蓋U字形溝、トンネルアーチ構造等が含まれる。また用語の意義としての「管体」以外にも逆T字形、L字形の「壁体」の移送、設置に適用することも可能である。
【0026】
図2は、図1に示した管体1の支持状態を側方から示した側面図である。図1(断面図)に示したように、管体1の底面1aには両側壁下方位置に2箇所の管体移送手段10が設けられている。これらの管体移送手段10の全体構成について、断面図(図1)、側面図(図2)を参照して説明する。管体1側の管体移送手段10は、両図に示したように、管体1としてのプレキャストコンクリート製品の底面1aの延長方向に延在する底面保護プレート11と、底面保護プレート11の延長方向の両端と管体1の端面との間にわたり取り付けられた端部ガイド部材12と、底面保護プレート11と端部ガイド部材12の両方の底面側に、管体1の長手方向全体にわたって取り付けられた高さ調整用スライダ14とから構成されている。
【0027】
底面保護プレート11は、本実施例では、厚さ28mm、幅75mm、長さ1.4mの平鋼からなる。この平鋼はインバートコンクリート1Lの底面1aに、図示しないアンカーを介して固着され、通常は、鋼球31に支持され、管体1の底面1aを保護して管体1の移送をガイドするスライダ部材として機能する。そして管体1の長手方向の両端には、図2に示したように、それぞれ長さ0.3mの端部ガイド部材12が管体1の底面に固着されている。この端部ガイド部材12には型鋼あるいは鋼管が用いられ、管体底面と高さ調整用スライダ14との所定のクリアランス(本実施例では28mm)を埋め、管体端部での高さ調整用スライダ14の管体1への取付け安定性を図っている。
【0028】
(高さ調整用スライダの構成)
高さ調整用スライダ14は、本実施例では、図3に示したように、全長が管体長と等しい角形鋼管(□80mm)からなる。この高さ調整用スライダ14は、管体支持手段20の上部基礎コンクリート21に形成された溝23内に敷設されたレール30上に分散して配置された鋼球31上に載置され、管体1をレール30の表面から所定高さに位置調整する役割を果たす。また図2に示したように、管体1を矢印方向に移送させるソリ状の支持部材としても機能する。鋼管内部には補強コンクリート15が充填されており、鋼管の剛性が十分高められている。なお、高さ調整用スライダ14の他の実施例としては、所定高さのH形鋼等の形鋼を単独あるいは複数段重ねて使用することもできる。またH型鋼をリブで補強したビルトアップ鋼材等の各種の鋼材、複合構造材を使用できる。
【0029】
[管体支持構造の構成]
(基礎コンクリートの構成)
本発明では、上述した管体移送手段10が設けられた管体を支持する管体支持構造20として、図1に示したように、図示しない均しコンクリート上に所定厚さで施工された下部基礎コンクリート22と、下部基礎コンクリート22上に、上述した管体の断面形状に応じたコンクリート厚をなして打設され、上面に所定深さの角溝23(以下、単に溝23と記す。)が形成された上部基礎コンクリート21と、溝23内の所定深さに設置されたレール30と、レール30上に分散して溝23内に収容された鋼球31とから構成されている。上部基礎コンクリート21のコンクリート厚は、管体の断面形状の相違(インバート厚の差)に応じて生じる段差量を考慮して設定されている。また、この上部基礎コンクリート21のコンクリート厚に応じて溝23の深さ、溝23内に敷設されるレール30の敷設面高さも定まる。
【0030】
(レールの設置構造)
以下、レール30の設置構造について、図3各図を参照して説明する。図3(a)と図3(b)とは、基礎コンクリートに段差が設けられた状態において、上述した高さ調整スライダ14を用いて管体1を移送する状態を示している。すなわち、上部基礎コンクリート21のコンクリート厚は、その位置に設置される管体1のインバート厚さに応じて決定され、形成される溝23の深さも異なり、それぞれの深さにおいて、レール30が形成されている。この溝23の幅は、上述した管体移送手段10の底面保護プレート11、高さ調整スライダ14の幅より十分に広く設定されている。
【0031】
また、上部基礎コンクリート21に形成された溝23に沿った両側の開口縁には溝23の延長方向に沿って防護金物35が取り付けられている。この防護金物35は、上部基礎コンクリート21の打設のために組み立てる型枠の一部に形成される溝部分の箱抜き用せき板(図示せず)に一体的に取り付けられ、図示しないアンカーが打設したコンクリート内に埋設され、防護金物35の外面が溝23の開口縁を覆うように配置されている。防護金物35の一例としては、等辺山形鋼が好ましい。
【0032】
図3(a),(b)に示したように、溝深さが異なっている場合においても、レール30は、水平ないしは上部基礎コンクリート21の表面勾配に沿った緩い勾配で、それぞれの断面での溝23の底面部分に敷設されている。
【0033】
レール30の設置構造としては、図3各図に示したように、レール30の支持部材としてボルト26が用いられている。このボルト26は、溝底面のコンクリート表面に溝延長方向に沿って所定ピッチ(本実施例では約1000mm)で埋設された、あと施工アンカー25としてのホールインアンカーの雌ねじ部に螺合され、締め込み量が調整されている。さらにボルト26の頭部にレール用の板材の端部が載置固定される。ボルト26の締め込み量は、溝23の長手方向に連続して配列されたボルト頭上に載置固定されるレール30となる平鋼(本実施例では厚さ9mm、幅100mm)が、溝23内において平坦面を構成するように設定されている。上述したボルト26の埋設ピッチは、平鋼の厚さとの関係で、適宜設定することができる。たとえばピッチ1500mmにした場合には、支持位置の中間位置での平鋼の撓み等を防止するモルタルブロック等の仮支持材を中間位置に配置することも好ましい。なお、あと施工アンカー25としては、施工性を考慮して公知のホールインアンカータイプの金属系拡張アンカーが好適である。
【0034】
レール30としての所定長さのプレート(平鋼)は、ボルト頭部26aに溶接固定され、さらにレール延長方向にわたり連結された状態で、無収縮モルタル27がレール30の下方空間に充填されている。これにより、レール30は下方が所定強度モルタルで支持されることにより、管体1の横引き時にレール30上に分散して配置された鋼球31上に管体荷重が作用した場合にも、レールの平坦性が確保される。
【0035】
図4は、レール30の設置構造の変形例として、管体質量等に応じて設定された管体移送手段の寸法(幅)に対応して広幅のレールを設置した例を示している。この場合にも上部基礎コンクリートに形成する溝幅と溝深さを適宜設定し、その後、この溝内に支持部材としてのホールインアンカー25をレール幅に対応させて打設する。そしてホールインアンカー25の雌ねじ部にボルト26を螺合し、トンネル延長方向、レール幅方向に沿って連続するボルト26の頭部が平坦な状態となるように、各ボルト26の突出高さ(締め込み量)を調整する。調整後のボルト頭に広幅の平鋼を載置固定して、その下方空間を無収縮モルタル27で充填する。このように、本発明では、広幅のレール30が必要になった場合でも、従来のように型鋼をサイズアップさせる必要が無く、上部基礎コンクリート21の施工への影響を最小限にすることができる。
【0036】
図5は、上部基礎コンクリート21の施工時に溝23の底面23aに不陸等が生じた場合にもボルト26の突出高さ(締め込み量)を調整することにより、レール面30aを水平に保持することができる。レール30の下方に無収縮モルタル27を充填するため、レール30下の空間は完全に充填され、溝底面23aに若干の不陸があったような場合でもレール30の平坦性が十分確保される。
【0037】
図6は、移送対象物が例えばトンネルアーチ状構造物18である場合、そのアーチ脚部18aでは、アーチ形状によってはアーチ部材の自重の荷重方向がわずか斜め外側を向く。このような荷重を鋼球31が分散しているレール30で支持する場合を想定して、レール30の横断方向に所定の傾斜を設けた変形例を示している。同図に示したように、レール30は荷重作用方向に垂直になるように、わずかに対象物中心軸側が低くなるように高さ調整されている。また、図示しない反対側のレール面は移送対象物の中心軸に関して対称形状をなすように同様にレール面の傾斜が設定されている。このときレール30上には鋼球31が分散して配置されるため、この鋼球31が斜面を転ってレール30の低い側に集積しないように、鋼球31をレール表面に安定させる鋼球保持手段38がレール表面に散布されている。鋼球保持手段38としては、対象物移送時における鋼球の転動作用を妨げない程度の粉粒状体が好適である。例えば川砂、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、微粒な火山灰等が使用できる。
【0038】
図7は、あと施工アンカーとして用いられるホールインアンカー等の金属系拡張アンカーに代えて、硬化時間が調整可能なケミカルアンカー24を用いてボルト26をアンカー固定するようにした変形例を示している。アンカー体としてケミカルアンカー24を使用した場合には、ホールインアンカーのようにボルト26に対する雌ねじ部が無いので、ボルト26本体を硬化体で固定保持することになる。そこで、ケミカルアンカー24を使用する場合には、図7に示したように、支持プレート29を一体化させたナット28をボルト26に螺合して使用することが好ましい。この場合、レール30のレベル調整はナット28のねじ込み量を調整しておき、ボルト26をアンカー穴に挿入し、そのとき、支持プレート29がアンカー穴の口元を覆うようにする。これによりボルト頭部の高さ調整を行える。
【0039】
図8は、管状体等の構造物の設計線形が経路途中で屈曲あるいは湾曲するような地点(屈曲部40)を有する場合に対応したレール30の敷設例を示した平面図である。同図に示したように、管体移送時に、管体1(状態を(1)〜(4)で示す。)は底面に設けられた2列の管体移送手段としての底面保護プレート11(図3)あるいは所定高さの高さ調整スライダ(図示せず)で2本の平行なレール30に支持されて、広幅レール30Wの設けられた屈曲部40まで移送される(図8(1)〜(2))。この広幅レール30Wの敷設範囲では、管体1底面の底辺保護プレート11はレール30上に分散して収容された鋼球31上を移送方向に対して横方向(矢印方向)にもスライドさせることができる。したがって、管体1はこの広幅レール30Wの敷設範囲(屈曲部40)において、次の移送路のレール30に沿うように、所定角度分だけ任意に旋回させることができる(図8(2)〜(3))。その後、新たな進行方向に沿って設けられたレール30上に向けて管体1の底面保護プレート11等を位置決めして管体1を、レール30に沿って移動させればよい(図8(4))。図8に示したようなレール30,広幅レール30Wの敷設例では、図9各図に示したように、通常の管体支持手段の断面形(図9(a))から溝幅を広く設定して内部に収容されるレール部材としての平鋼を広幅部材に変更する(図9(b))だけで、ボルト26等の他の支持部材は同等でよい。
【0040】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1 管体
10 管体移送手段
11 底面保護プレート
14 高さ調整用スライダ
15 充填コンクリート
20 管体支持手段
21 上部基礎コンクリート
23 溝
25 あと施工アンカー
26 ボルト
30 レール
30W 広幅レール
31 鋼球
35 防護金物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9