【実施例】
【0021】
以下、本発明の管状体の布設方法の管体移送手段としてのレール構造の構成について添付図面を参照して説明する。
【0022】
施工を予定している管状体の全長区間において、基礎コンクリートに設けられる横引き作業用のレール構造は、全長にわたって形成された角溝内に設けられ、その上に鋼球が分散して満遍なく配置され、底面保護プレート等を介して支持された管体を、搬入起点から所定の設置位置まで、スムースに移送させるための平坦性と剛性とを有することが必要である。そのために、本発明では、管体底面側に所定の管体移送手段を取り付け、基礎側に管体支持手段としてのレール構造を構築している。以下、管体と管体に取り付けられた管体移送手段と、管体が支持、移送されるレール構造を主構成とする管体支持構造の構成について添付図面を参照して説明する。
【0023】
[管体移送手段の構成]
図1には、所定の法面勾配3で開削された地盤面2において、単位長さ(本実施例では1基の単位長さ2.0mの製品が使用されている。)のプレキャストコンクリート製品からなる管体1の一実施形態としての上半円形トンネル形状の水路トンネルと、この管体1を移送するための管体移送手段10と、管体移送手段10を介して管体を支持するレール30を主構成とする管体支持構造20とが示されている。
【0024】
管体1は、図示したように、水路トンネル(管状体)の全長にわたり地盤面2に所定厚さをなして敷設された管体支持構造20としての、下部基礎コンクリート22上に積層された上部基礎コンクリート21に構築されたレール30上に支持されている。
【0025】
上述した管体移送手段10を支持するために、上部基礎コンクリート21の対応表面には、溝23が形成され、溝23の底部の所定高さにレール30が構築されている。管体1は、レール30上に分散して収容された球状体としての鋼球31に、管体移送手段10を介して支持され、移送方向に移動可能に載置されている。なお、
図1には、円形上半部1Uと、側壁部と、円弧状の水路底面をなすインバートコンクリート1Lとで構成された水路トンネルが示されているが、本発明により移送され、所定延長の管状体を構成する管体1は、矩形、馬蹄形他の断面形状のボックスカルバートや、有蓋U字形溝、トンネルアーチ構造等が含まれる。また用語の意義としての「管体」以外にも逆T字形、L字形の「壁体」の移送、設置に適用することも可能である。
【0026】
図2は、
図1に示した管体1の支持状態を側方から示した側面図である。
図1(断面図)に示したように、管体1の底面1aには両側壁下方位置に2箇所の管体移送手段10が設けられている。これらの管体移送手段10の全体構成について、断面図(
図1)、側面図(
図2)を参照して説明する。管体1側の管体移送手段10は、両図に示したように、管体1としてのプレキャストコンクリート製品の底面1aの延長方向に延在する底面保護プレート11と、底面保護プレート11の延長方向の両端と管体1の端面との間にわたり取り付けられた端部ガイド部材12と、底面保護プレート11と端部ガイド部材12の両方の底面側に、管体1の長手方向全体にわたって取り付けられた高さ調整用スライダ14とから構成されている。
【0027】
底面保護プレート11は、本実施例では、厚さ28mm、幅75mm、長さ1.4mの平鋼からなる。この平鋼はインバートコンクリート1Lの底面1aに、図示しないアンカーを介して固着され、通常は、鋼球31に支持され、管体1の底面1aを保護して管体1の移送をガイドするスライダ部材として機能する。そして管体1の長手方向の両端には、
図2に示したように、それぞれ長さ0.3mの端部ガイド部材12が管体1の底面に固着されている。この端部ガイド部材12には型鋼あるいは鋼管が用いられ、管体底面と高さ調整用スライダ14との所定のクリアランス(本実施例では28mm)を埋め、管体端部での高さ調整用スライダ14の管体1への取付け安定性を図っている。
【0028】
(高さ調整用スライダの構成)
高さ調整用スライダ14は、本実施例では、
図3に示したように、全長が管体長と等しい角形鋼管(□80mm)からなる。この高さ調整用スライダ14は、管体支持手段20の上部基礎コンクリート21に形成された溝23内に敷設されたレール30上に分散して配置された鋼球31上に載置され、管体1をレール30の表面から所定高さに位置調整する役割を果たす。また
図2に示したように、管体1を矢印方向に移送させるソリ状の支持部材としても機能する。鋼管内部には補強コンクリート15が充填されており、鋼管の剛性が十分高められている。なお、高さ調整用スライダ14の他の実施例としては、所定高さのH形鋼等の形鋼を単独あるいは複数段重ねて使用することもできる。またH型鋼をリブで補強したビルトアップ鋼材等の各種の鋼材、複合構造材を使用できる。
【0029】
[管体支持構造の構成]
(基礎コンクリートの構成)
本発明では、上述した管体移送手段10が設けられた管体を支持する管体支持構造20として、
図1に示したように、図示しない均しコンクリート上に所定厚さで施工された下部基礎コンクリート22と、下部基礎コンクリート22上に、上述した管体の断面形状に応じたコンクリート厚をなして打設され、上面に所定深さの角溝23(以下、単に溝23と記す。)が形成された上部基礎コンクリート21と、溝23内の所定深さに設置されたレール30と、レール30上に分散して溝23内に収容された鋼球31とから構成されている。上部基礎コンクリート21のコンクリート厚は、管体の断面形状の相違(インバート厚の差)に応じて生じる段差量を考慮して設定されている。また、この上部基礎コンクリート21のコンクリート厚に応じて溝23の深さ、溝23内に敷設されるレール30の敷設面高さも定まる。
【0030】
(レールの設置構造)
以下、レール30の設置構造について、
図3各図を参照して説明する。
図3(a)と
図3(b)とは、基礎コンクリートに段差が設けられた状態において、上述した高さ調整スライダ14を用いて管体1を移送する状態を示している。すなわち、上部基礎コンクリート21のコンクリート厚は、その位置に設置される管体1のインバート厚さに応じて決定され、形成される溝23の深さも異なり、それぞれの深さにおいて、レール30が形成されている。この溝23の幅は、上述した管体移送手段10の底面保護プレート11、高さ調整スライダ14の幅より十分に広く設定されている。
【0031】
また、上部基礎コンクリート21に形成された溝23に沿った両側の開口縁には溝23の延長方向に沿って防護金物35が取り付けられている。この防護金物35は、上部基礎コンクリート21の打設のために組み立てる型枠の一部に形成される溝部分の箱抜き用せき板(図示せず)に一体的に取り付けられ、図示しないアンカーが打設したコンクリート内に埋設され、防護金物35の外面が溝23の開口縁を覆うように配置されている。防護金物35の一例としては、等辺山形鋼が好ましい。
【0032】
図3(a),(b)に示したように、溝深さが異なっている場合においても、レール30は、水平ないしは上部基礎コンクリート21の表面勾配に沿った緩い勾配で、それぞれの断面での溝23の底面部分に敷設されている。
【0033】
レール30の設置構造としては、
図3各図に示したように、レール30の支持部材としてボルト26が用いられている。このボルト26は、溝底面のコンクリート表面に溝延長方向に沿って所定ピッチ(本実施例では約1000mm)で埋設された、あと施工アンカー25としてのホールインアンカーの雌ねじ部に螺合され、締め込み量が調整されている。さらにボルト26の頭部にレール用の板材の端部が載置固定される。ボルト26の締め込み量は、溝23の長手方向に連続して配列されたボルト頭上に載置固定されるレール30となる平鋼(本実施例では厚さ9mm、幅100mm)が、溝23内において平坦面を構成するように設定されている。上述したボルト26の埋設ピッチは、平鋼の厚さとの関係で、適宜設定することができる。たとえばピッチ1500mmにした場合には、支持位置の中間位置での平鋼の撓み等を防止するモルタルブロック等の仮支持材を中間位置に配置することも好ましい。なお、あと施工アンカー25としては、施工性を考慮して公知のホールインアンカータイプの金属系拡張アンカーが好適である。
【0034】
レール30としての所定長さのプレート(平鋼)は、ボルト頭部26aに溶接固定され、さらにレール延長方向にわたり連結された状態で、無収縮モルタル27がレール30の下方空間に充填されている。これにより、レール30は下方が所定強度モルタルで支持されることにより、管体1の横引き時にレール30上に分散して配置された鋼球31上に管体荷重が作用した場合にも、レールの平坦性が確保される。
【0035】
図4は、レール30の設置構造の変形例として、管体質量等に応じて設定された管体移送手段の寸法(幅)に対応して広幅のレールを設置した例を示している。この場合にも上部基礎コンクリートに形成する溝幅と溝深さを適宜設定し、その後、この溝内に支持部材としてのホールインアンカー25をレール幅に対応させて打設する。そしてホールインアンカー25の雌ねじ部にボルト26を螺合し、トンネル延長方向、レール幅方向に沿って連続するボルト26の頭部が平坦な状態となるように、各ボルト26の突出高さ(締め込み量)を調整する。調整後のボルト頭に広幅の平鋼を載置固定して、その下方空間を無収縮モルタル27で充填する。このように、本発明では、広幅のレール30が必要になった場合でも、従来のように型鋼をサイズアップさせる必要が無く、上部基礎コンクリート21の施工への影響を最小限にすることができる。
【0036】
図5は、上部基礎コンクリート21の施工時に溝23の底面23aに不陸等が生じた場合にもボルト26の突出高さ(締め込み量)を調整することにより、レール面30aを水平に保持することができる。レール30の下方に無収縮モルタル27を充填するため、レール30下の空間は完全に充填され、溝底面23aに若干の不陸があったような場合でもレール30の平坦性が十分確保される。
【0037】
図6は、移送対象物が例えばトンネルアーチ状構造物18である場合、そのアーチ脚部18aでは、アーチ形状によってはアーチ部材の自重の荷重方向がわずか斜め外側を向く。このような荷重を鋼球31が分散しているレール30で支持する場合を想定して、レール30の横断方向に所定の傾斜を設けた変形例を示している。同図に示したように、レール30は荷重作用方向に垂直になるように、わずかに対象物中心軸側が低くなるように高さ調整されている。また、図示しない反対側のレール面は移送対象物の中心軸に関して対称形状をなすように同様にレール面の傾斜が設定されている。このときレール30上には鋼球31が分散して配置されるため、この鋼球31が斜面を転ってレール30の低い側に集積しないように、鋼球31をレール表面に安定させる鋼球保持手段38がレール表面に散布されている。鋼球保持手段38としては、対象物移送時における鋼球の転動作用を妨げない程度の粉粒状体が好適である。例えば川砂、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、微粒な火山灰等が使用できる。
【0038】
図7は、あと施工アンカーとして用いられるホールインアンカー等の金属系拡張アンカーに代えて、硬化時間が調整可能なケミカルアンカー24を用いてボルト26をアンカー固定するようにした変形例を示している。アンカー体としてケミカルアンカー24を使用した場合には、ホールインアンカーのようにボルト26に対する雌ねじ部が無いので、ボルト26本体を硬化体で固定保持することになる。そこで、ケミカルアンカー24を使用する場合には、
図7に示したように、支持プレート29を一体化させたナット28をボルト26に螺合して使用することが好ましい。この場合、レール30のレベル調整はナット28のねじ込み量を調整しておき、ボルト26をアンカー穴に挿入し、そのとき、支持プレート29がアンカー穴の口元を覆うようにする。これによりボルト頭部の高さ調整を行える。
【0039】
図8は、管状体等の構造物の設計線形が経路途中で屈曲あるいは湾曲するような地点(屈曲部40)を有する場合に対応したレール30の敷設例を示した平面図である。同図に示したように、管体移送時に、管体1(状態を(1)〜(4)で示す。)は底面に設けられた2列の管体移送手段としての底面保護プレート11(
図3)あるいは所定高さの高さ調整スライダ(図示せず)で2本の平行なレール30に支持されて、広幅レール30Wの設けられた屈曲部40まで移送される(
図8(1)〜(2))。この広幅レール30Wの敷設範囲では、管体1底面の底辺保護プレート11はレール30上に分散して収容された鋼球31上を移送方向に対して横方向(矢印方向)にもスライドさせることができる。したがって、管体1はこの広幅レール30Wの敷設範囲(屈曲部40)において、次の移送路のレール30に沿うように、所定角度分だけ任意に旋回させることができる(
図8(2)〜(3))。その後、新たな進行方向に沿って設けられたレール30上に向けて管体1の底面保護プレート11等を位置決めして管体1を、レール30に沿って移動させればよい(
図8(4))。
図8に示したようなレール30,広幅レール30Wの敷設例では、
図9各図に示したように、通常の管体支持手段の断面形(
図9(a))から溝幅を広く設定して内部に収容されるレール部材としての平鋼を広幅部材に変更する(
図9(b))だけで、ボルト26等の他の支持部材は同等でよい。
【0040】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。