特許第5970306号(P5970306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5970306
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20160804BHJP
   E04F 11/02 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   E04B1/348 L
   E04B1/348 M
   E04F11/02
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-200195(P2012-200195)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-55430(P2014-55430A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】逸見 仁
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−026105(JP,A)
【文献】 特開平11−303216(JP,A)
【文献】 特開2006−009360(JP,A)
【文献】 特開平06−129122(JP,A)
【文献】 特開2001−081924(JP,A)
【文献】 特開2006−307565(JP,A)
【文献】 特開平11−350605(JP,A)
【文献】 特開2009−209550(JP,A)
【文献】 特開2010−095958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
E04F 11/00 −11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁及び柱を結合してなる建物ユニットを複数有し、上下に隣り合う下階部と上階部とを備えるユニット式建物であって、
上下階の建物ユニットの組み合わせであるユニットセットが互いに離間して離し置きされることにより、それら離し置きされたユニットセットの間には前記下階部と前記上階部とのそれぞれに梁及び柱を結合してなる建物ユニットの存在しない空間部が形成され、それら上下階の前記各空間部により前記下階部と前記上階部とに跨がる吹き抜け空間が形成されており、
前記吹き抜け空間には、前記下階部と前記上階部とを連絡する階段部が設けられており、
前記階段部は、平面視において長尺状でかつ矩形状をなしており、その長手方向を前記離し置きされたユニットセット同士が対向するユニット対向方向と直交する方向に向けて配置されていることを特徴とする建物。
【請求項2】
梁及び柱を結合してなる建物ユニットを複数有し、上下に隣り合う下階部と上階部とを備えるユニット式建物であって、
上下階の建物ユニットの組み合わせであるユニットセットが互いに離間して離し置きされ、それら離し置きされたユニットセットの間に前記下階部と前記上階部とに跨がる吹き抜け空間が形成されており、
前記吹き抜け空間には、前記下階部と前記上階部とを連絡する階段部が設けられており、
前記階段部は、平面視において長尺状でかつ矩形状をなしており、その長手方向を前記離し置きされたユニットセット同士が対向するユニット対向方向と直交する方向に向けて配置されており、
前記ユニット対向方向と直交する方向に前記吹き抜け空間と隣接して前記ユニットセットがさらに設けられており、
そのユニットセットの階間部分において上下に隣接する上階ユニットの上階床梁及び下階ユニットの下階天井梁のうちいずれかが前記離し置きされたユニットセットの間に跨がるように設けられた階段支持梁となっており、
前記階段部は、その下端部に床上又は基礎上に載置される載置部を有し、その上端側に前記階段支持梁に引っ掛け支持される引っ掛け部を有していることを特徴とする建物。
【請求項3】
梁及び柱を結合してなる建物ユニットを複数有し、上下に隣り合う下階部と上階部とを備えるユニット式建物であって、
上下階の建物ユニットの組み合わせであるユニットセットが互いに離間して離し置きされ、それら離し置きされたユニットセットの間に前記下階部と前記上階部とに跨がる吹き抜け空間が形成されており、
前記吹き抜け空間には、前記下階部と前記上階部とを連絡する階段部が設けられており、
前記階段部は、平面視において長尺状でかつ矩形状をなしており、その長手方向を前記離し置きされたユニットセット同士が対向するユニット対向方向と直交する方向に向けて配置されており、
前記離し置きされたユニットセットのうちの一方である第1ユニットセットに対して、前記ユニット対向方向と直交する方向に隣接してさらに前記ユニットセットとしての第2ユニットセットが設けられており、
前記第2ユニットセットは、前記ユニット対向方向の長さが前記第1ユニットセットよりも長くされており、前記ユニット対向方向において前記第1ユニットセットよりも前記吹き抜け空間側に延出した延出部を有しており、
前記延出部の延出長さは前記吹き抜け空間の前記ユニット対向方向の長さと同じとされていることを特徴とする建物。
【請求項4】
前記離し置きされたユニットセットにおいて互いに対向する各側面部にはそれぞれ間仕切壁が設けられており、
それら各間仕切壁によって、前記階段部により形成される昇降通路スペースの側面が規定されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の建物。
【請求項5】
前記吹き抜け空間は、前記ユニット対向方向と直交する方向において半屋外空間又は屋外空間と仕切壁を挟んで隣接しており、
前記仕切壁には、前記吹き抜け空間を前記半屋外空間又は前記屋外空間と連通させる建物開口部が設けられており、
前記階段部は、前記建物開口部に挿通可能に形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅等の建物として、梁及び柱を有してなる直方体状の建物ユニットを複数連結することにより構成されたユニット式の建物が知られている(例えば特許文献1参照)。かかるユニット式建物では、建物内に階段が設置される場合、建物ユニット内に階段が組み込まれる。この場合、階段は建物ユニットの柱や梁等に干渉しないように組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−42052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、階段として、その昇降方向が一直線に延びている直階段がある。かかる直階段は、平面視において長尺矩形状をなしているため、建物ユニット内に組み込もうとした場合に、建物ユニットの梁や柱と干渉し易い。このため、階段の配置に関する自由度が大きく制限されるおそれがある。例えば、直階段を平面視においてその長手方向が建物ユニットの短手方向を向くように建物ユニット内に設置することは、建物ユニットの梁の一部を取り除く等の特別な構成を採用しない限り不可能と考えられる。
【0005】
また、直階段を、平面視においてその長手方向が建物ユニットの長手方向を向くように建物ユニット内に設置することは可能であるものの、その場合建物ユニット内において直階段の側方(幅方向)に中途半端な余剰スペースが発生してしまうおそれがあり、建物内空間の有効利用の観点からすると好ましくないものとなってしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、平面視において長尺矩形状をなす階段部を設置する上で、その設置に関する自由度を高めることができ、しかも建物内空間の有効利用を図ることが可能な建物を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物は、梁及び柱を結合してなる建物ユニットを複数有し、上下に隣り合う下階部と上階部とを備えるユニット式建物であって、上下階の建物ユニットの組み合わせであるユニットセットが互いに離間して離し置きされ、それら離し置きされたユニットセットの間に前記下階部と前記上階部とに跨がる吹き抜け空間が形成されており、前記吹き抜け空間には、前記下階部と前記上階部とを連絡する階段部が設けられており、前記階段部は、平面視において長尺状でかつ矩形状をなしており、その長手方向を前記離し置きされたユニットセット同士が対向するユニット対向方向と直交する方向に向けて配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、上下階の建物ユニットの組み合わせであるユニットセットが離し置きされることにより形成された吹き抜け空間に平面視で長尺矩形状をなす階段部が設置されている。この場合、かかる長尺状の階段部を建物ユニットの外部に設置することができるため、かかる階段部を建物ユニットの梁や柱等による制約を受けることなく設置することができ、階段部の設置に関する自由度を高めることができる。
【0009】
また、階段部が建物ユニットの外部に設置されることから、階段部が建物ユニット内に設置される場合のように建物ユニット内に中途半端な無駄スペースが発生することがない。また、階段部は、その(平面視)長手方向を離し置きされたユニットセット同士が対向するユニット対向方向と直交する方向に向けて配置され、換言するとその短手方向(幅方向)をユニット対向方向に向けて配置されているため、ユニットセット同士を階段部の幅に合わせて離し置きすることで、吹き抜け空間において階段部の側方に無駄スペースが発生するのを回避することができる。これにより、建物内空間の有効利用を図ることができる。
【0010】
第2の発明の建物は、第1の発明において、記下階部と前記上階部との境界高さにおいて前記離し置きされたユニットセットの間に跨がるように階段支持梁が設けられており、前記階段部は、その下端部に床上又は基礎上に載置される載置部を有し、その上端側に前記階段支持梁に引っ掛け支持される引っ掛け部を有していることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、階段支持梁が、下階部と上階部との境界高さ(階間部分)にて離し置きされたユニットセット間に跨がるようにして設けられ、階段部は、その下端部に設けられた載置部が床上又は基礎上に載置され、その上端側に設けられた引っ掛け部が階段支持梁に引っ掛け支持されることで設置されている。この場合、階段部をその側面側で間仕切壁により支持しなくても済むため、階段部を昇降する際の振動や騒音が間仕切壁を介して吹き抜け空間と隣接する部屋に伝わるのを抑制することができる。
【0012】
第3の発明の建物は、第2の発明において、前記ユニット対向方向と直交する方向に前記吹き抜け空間と隣接して前記ユニットセットがさらに設けられており、そのユニットセットの階間部分において上下に隣接する上階ユニットの上階床梁及び下階ユニットの下階天井梁のうちいずれが前記階段支持梁となっており、その階段支持梁に前記引っ掛け部が引っ掛け支持されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、階段部の引っ掛け部が下階ユニットの下階天井梁又は上階ユニットの上階床梁に引っ掛け支持されているため、引っ掛け部を引っ掛け支持するための階段支持梁を別途設ける必要がなく、構成の煩雑化を抑制しながら第2の発明の効果を得ることができる。
【0014】
また、階段部の引っ掛け部を下階天井梁又は上階床梁に引っ掛け支持する構成では、上階部において階段部の階段下り口(階段上端の出入口)と建物ユニット(上階ユニット)の内部空間とを連続させることができるため、上階部において階段部の階段下り口と建物ユニット内とを連絡する床部を設けなくて済む。そのため、この点でも構成の煩雑化を抑制することができる。
【0015】
第4の発明の建物は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記離し置きされたユニットセットのうちの一方である第1ユニットセットに対して、前記ユニット対向方向と直交する方向に隣接してさらに前記ユニットセットとしての第2ユニットセットが設けられており、前記第2ユニットセットは、前記ユニット対向方向の長さが前記第1ユニットセットよりも長くされており、前記ユニット対向方向において前記第1ユニットセットよりも前記吹き抜け空間側に延出した延出部を有しており、前記延出部の延出長さは前記吹き抜け空間の前記ユニット対向方向の長さと同じとされていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、離し置きされたユニットセットのうちの一方(第1ユニットセット)に対してユニット対向方向と直交する方向に隣接して第2ユニットセットが設けられ、その第2ユニットセットが第1ユニットセットに対して吹き抜け空間側に延出させて設けられている。この場合、その延出した延出部が吹き抜け空間に対してユニット対向方向と直交する方向に隣接して配置されるため、吹き抜け空間に設置される階段部の階段下り口や階段上り口をその延出部に繋げることができ好都合である。
【0017】
ここで、ユニット対向方向の長さが吹き抜け空間の同方向の長さ(換言すると吹き抜け空間の幅)と同じ長さに設定されたユニットセットを、吹き抜け空間に対してユニット対向方向と直交する方向に隣接させて設置しても上記の効果を得ることは可能である。しかしながらこの場合、吹き抜け空間の幅が当該ユニットセットのユニット対向方向の長さと同じとなることから、吹き抜け空間を階段部の幅に合わせて小幅に形成することが困難となる。この点、本発明では、第2ユニットセットを第1ユニットセットよりも長く形成し、その第2ユニットセットにおいて第1ユニットセットから延出した延出部の(延出)長さを吹き抜け空間の幅と同じとしているため、吹き抜け空間を小幅に形成し易く、上記の効果を得る上で実用上好ましい構成といえる。
【0018】
第5の発明の建物は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記離し置きされたユニットセットにおいて互いに対向する各側面部にはそれぞれ間仕切壁が設けられており、それら各間仕切壁によって、前記階段部により形成される昇降通路スペースの側面が規定されていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、階段部により形成される昇降通路スペースの側面が間仕切壁によって規定されるため、階段部に階段側壁を設ける必要がなく、階段部の構成を簡素化することができる。また、階段部に階段側壁を設けないことで階段部のサイズを小型化することができるため、施工の際、まず各建物ユニットを設置して吹き抜け空間を形成し、その後吹き抜け空間に階段部を屋外側から玄関口等を通じて運び入れることが可能となる。この場合、階段部を予め製造工場で製造しておき、施工現場ではその製造した階段部を吹き抜け空間に設置するだけで済むため、施工工数の削減を図ることが可能となる。
【0020】
第6の発明の建物は、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記吹き抜け空間は、前記ユニット対向方向と直交する方向において半屋外空間又は屋外空間と仕切壁を挟んで隣接しており、前記仕切壁には、前記吹き抜け空間を前記半屋外空間又は前記屋外空間と連通させる建物開口部が設けられており、前記階段部は、前記建物開口部に挿通可能に形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、吹き抜け空間を半屋外空間又は屋外空間と仕切る仕切壁にそれら両空間を連通する建物開口部が設けられ、階段部はこの建物開口部に挿通可能に形成されている。ここで建物開口部としては、例えば下階部に設けられる玄関口や掃き出し窓等が挙げられる。この場合、階段部を予め製造工場にて製造しておき、施工の際はまず各建物ユニットを設置して吹き抜け空間を形成し、その後階段部を建物開口部を通じて吹き抜け空間に運び入れ設置することが可能となる。これにより、施工現場(吹き抜け空間)において階段部を組み立てたり、階段部を吹き抜け空間に運び入れる際階段部を一旦分解したりする等の作業をする必要がなく、施工工数の削減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)が建物全体を示す概略斜視図、(b)が建物本体を示す分解斜視図。
図2】建物の一階部分を示しており、(a)が一階部分の建物ユニットの並びを示す平面図、(b)が一階部分の間取りを示す平面図である。
図3】建物の二階部分を示しており、(a)が二階部分の建物ユニットの並びを示す平面図、(b)が二階部分の間取りを示す平面図である。
図4】建物ユニットを示す斜視図。
図5】床ユニットを示す斜視図。
図6】階段ユニットの構成を示す斜視図。
図7】階段ユニットの設置構成を示しており、(a)が同構成を示す正面図、(b)が平面図である。
図8】階段ユニットの下端部周辺の構成を示す断面図。
図9】階段ユニットの上端部周辺の構成を示す断面図。
図10】階段部の別例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物として、二階建てからなるユニット式建物について具体化している。ユニット式建物は、複数の建物ユニットが互いに結合されてなる建物本体を備える。図1において(a)が建物全体を示す概略斜視図であり、(b)が建物本体を示す分解斜視図である。図2は建物の一階部分を示しており、(a)が一階部分の建物ユニットの並びを示す平面図、(b)が一階部分の間取りを示す平面図である。図3は建物の二階部分を示しており、(a)が二階部分の建物ユニットの並びを示す平面図、(b)が二階部分の間取りを示す平面図である。
【0024】
図1(a)に示すように、建物10は、基礎11上に配設された建物本体12と、建物本体12の上方に配設された屋根13とを有して構成されている。建物本体12は、下階部としての一階部分14と、上階部としての二階部分15とからなる二階建てとなっている。建物本体12は、直方体状に形成された複数の建物ユニット20が互いに連結される等して構成されている。
【0025】
なお以下の説明では便宜上、一階部分14の建物ユニット20を下階ユニット20a、二階部分15の建物ユニット20を上階ユニット20bともいう。
【0026】
図4には、建物ユニット20の斜視図を示す。同図に示すように、建物ユニット20は、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備えている。そして、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして設置されている。
【0027】
建物ユニット20の長辺部の相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。同じく建物ユニット20の長辺部の相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。天井小梁25と床小梁26とはそれぞれ同間隔でかつ各々上下に対応する位置に設けられている。例えば、天井小梁25はリップ溝形鋼よりなり、床小梁26は角形鋼よりなる。天井小梁25によって天井面材27が支持され、床小梁26によって床面材28が支持されている。
【0028】
図1(b)に示すように、建物本体12は、大きく分けて2つの建物ユニット群X1,X2からなる。各建物ユニット群X1,X2はそれぞれ上下一対の建物ユニット20a,20bの組み合わせからなるユニットセット24を複数(具体的には4つ)備え、それら複数のユニットセット24が一列に並べられることで構成されている。各ユニットセット24では、一の下階ユニット20aと一の上階ユニット20bとが互いの長手方向(及び短手方向)を同方向に向けた状態で上下に配置されている。各建物ユニット群X1,X2はそれぞれユニットセット24がその短手方向に一列に並べられることで構成されている。
【0029】
建物本体12では、各建物ユニット群X1,X2が横並びで設けられている。この場合、各建物ユニット群X1,X2において隣り合うユニットセット24同士が互いの短辺側の側面(妻面)同士を向き合わせて配置されている。なお以下においては、図1(b)において左側の建物ユニット群を第1建物ユニット群X1といい、右側の建物ユニット群を第2建物ユニット群X2という。
【0030】
建物本体12は、建物ユニット20として、その長手方向(長辺部)の長さ寸法が異なる2種類の建物ユニット20X,20Yを組み合わせて構成されている。各建物ユニット20X,20Yのうち、長手方向の長さが短いものが短尺建物ユニット20X、長手方向の長さが長いものが長尺建物ユニット20Yとなっている。短尺建物ユニット20Xの長手方向の長さをL1、長尺建物ユニット20Yの長手方向の長さをL2とする。なお、短尺建物ユニット20Xと長尺建物ユニット20Yとはその短手方向(詳細には平面視における短手方向)の長さについては同じとなっている。
【0031】
第1建物ユニット群X1では、各ユニットセット24において上下階の各建物ユニット20a,20bがそれぞれ短尺建物ユニット20Xにより構成されている。第2建物ユニット群X2では、列方向(ユニット列方向)の両端部に配置された各ユニットセット24のうち一方側(図1(b)において紙面奥側)のユニットセット24の上下階の各建物ユニット20a,20bが長尺建物ユニット20Yにより構成されている(図2(a)及び図3(a)も参照)。
【0032】
また、他方側(図1(b)において紙面手前側)のユニットセット24では下階ユニット20aが短尺建物ユニット20Xにより構成され、上階ユニット20bが長尺建物ユニット20Yにより構成されている。この場合、当該ユニットセット24では、下階ユニット20aと上階ユニット20bとが互いの建物外周側(換言すると第1建物ユニット群X1とは反対側)の妻面同士を同一平面上に位置合わせした状態で配置されており、上階ユニット20bが下階ユニット20aよりも第1建物ユニット群X1側に張り出した状態で設けられている。この場合、上階ユニット20bの張り出し部分の下方には凹状スペースが形成され、そのスペースが後述するアルコーブ18とされている。また、ユニット列方向の中間部に配置された各ユニットセット24の上下階の各建物ユニット20a,20bはそれぞれ短尺建物ユニット20Xにより構成されている。
【0033】
第2建物ユニット群X2では、各ユニットセット24がそれぞれ建物外周側(第1建物ユニット群X1側とは反対側)の妻面を同一平面上に位置するように配置されている。この場合、第2建物ユニット群X2では、端部に位置するユニットセット24が中間部に位置するユニットセット24よりも第1建物ユニット群X1側に張り出して(延出して)おり、詳しくは長尺建物ユニット20Yの長辺長さL2と短尺建物ユニット20Xの長辺長さL1との差分(L2−L1)だけ張り出して(延出して)いる。これにより、第2建物ユニット群X2は、その平面視形状が溝部を第1建物ユニット群X1側に向けた略コ字状をなしている。
【0034】
なおここで、端部に位置するユニットセット24が「第2ユニットセット」に相当し、中間部に位置するユニットセット24が「第1ユニットセット」に相当する。また、端部に位置するユニットセット24において中間部に位置するユニットセット24よりも第1建物ユニット群X1側に延出した部分が「延出部」に相当する。
【0035】
第1建物ユニット群X1と第2建物ユニット群X2とは、互いの端部に配置されたユニットセット24同士を突き合わせた状態で配置されている。この場合、各ユニット群X1,X2において中間部に配置されたユニットセット24同士は互いに離間して離し置きされている。具体的には、それらユニットセット24同士はL3(=L2−L1)の間隔をあけて離し置きされている。これら離し置きされたユニットセット24同士の間には吹き抜け空間17が形成されている。吹き抜け空間17は、一階部分14と二階部分15とに跨がって延びる空間とされている。
【0036】
一階部分14には、吹き抜け空間17の床部を構成する床ユニット30が設けられている。図2(a)及び図3(a)では、便宜上、床ユニット30を建物ユニット20と区別するために破線で図示している。床ユニット30は、全体として矩形形状(長方形状)をなしている。具体的には、床ユニット30は、その長手方向の長さが建物ユニット20の短手方向(短辺部)の長さよりも長くかつ建物ユニット20の短手方向の長さの2倍よりも短くされており、その短手方向の長さが離し置きされたユニットセット24同士の離間距離L3と同じとされている。床ユニット30は、離し置きされたユニットセット24の間において基礎11上に設置されている。なお、床ユニット30は、建物ユニット20と同様、ユニット製造工場において予め製造されるものとなっている。
【0037】
図5には、床ユニット30の斜視図を示す。図5に示すように、床ユニット30は、矩形枠状に形成された床フレーム31と、その床フレーム31上に支持されている床面材32とを備える。床フレーム31は、建物ユニット20の床部と基本的に同様の構成を有しており、その四隅に配設される4本の床仕口33と、各床仕口33をそれぞれ連結する4本の床フレーム大梁34とを備え、床仕口33と床フレーム大梁34とにより矩形状のフレーム本体が形成されている。
【0038】
床仕口33は、2つの床フレーム大梁34を接合するための2つの仕口板部33aと、その下端部に設けられた下板部33bとを有する。2つの仕口板部33aは端部同士が直角に接合され、その頂部をユニット内側に向けて配置されている。床フレーム大梁34は床大梁23と同じ溝形鋼よりなり、その開口部をユニット内側に向けて設置されている。
【0039】
長辺部(桁部)の相対する床フレーム大梁34の間には、所定の間隔で複数の床フレーム小梁35が架け渡されて固定されている。床フレーム小梁35は床小梁26と同じ角形鋼よりなる。また、長辺部の相対する床フレーム大梁34の間には、床フレーム小梁35の他に、支持梁37が架け渡されて固定されている。支持梁37は、床フレーム大梁34と同じ溝形鋼よりなり、床フレーム小梁35よりも高強度に形成されている。支持梁37は、後述する階段ユニット50の下端部が設置される箇所に対応する位置に配置されている。
【0040】
床面材32は、例えばパーティクルボードよりなり、床フレーム31と略同じ大きさ(縦横寸法)で形成されている。床面材32は、床フレーム31上に載置された状態で同フレーム31にビス等で固定されている。
【0041】
続いて、一階部分14及び二階部分15の間取りについて図2(b)及び図3(b)を用いて説明する。
【0042】
図2(b)に示すように、吹き抜け空間17は、一階部分14において間仕切壁38(38a)によって一階居室U1と仕切られ、間仕切壁38(38b)によって一階居室U2と仕切られている。これらの間仕切壁38a,38bは吹き抜け空間17を挟んで対向して配置されている。また、図3(b)に示すように、吹き抜け空間17は、二階部分15において間仕切壁39(39a)によって二階居室U3と仕切られ、間仕切壁39(39b)によって二階居室U4と仕切られている。これらの間仕切壁39a,39bは吹き抜け空間17を挟んで対向して配置されている。また、二階部分15には、吹き抜け空間17と隣接してさらに二階居室U5が設けられている。
【0043】
一階部分14では、吹き抜け空間17が仕切壁41によってアルコーブ18と仕切られている。アルコーブ18は、互いの妻面同士を対向させて離し置きされた下階ユニット20a同士の間に形成されており、一側面において屋外に開口された凹状空間となっている。なお、アルコーブ18が半屋外空間に相当する。
【0044】
吹き抜け空間17において仕切壁41を挟んでアルコーブ18と隣接する一部のスペースは玄関スペース43となっている。玄関スペース43は、いわゆる土間空間となっており、上述した床ユニット30が配置されていない空間となっている。すなわち、床ユニット30は、吹き抜け空間17において玄関スペース43以外のスペースに対応させて配設されており、玄関スペース43には配設されていない。
【0045】
仕切壁41には、玄関スペース43とアルコーブ18とを連通する玄関口42が形成されている。この玄関口42を通じて玄関スペース43とアルコーブ18との間を行き来することが可能となっている。また、玄関口42には当該玄関口42を開閉する玄関ドア44が設けられている。なお、玄関口42が建物開口部に相当する。
【0046】
吹き抜け空間17において玄関スペース43を挟んで玄関口42とは反対側のスペース(以下、このスペースを階段設置スペース45という)には階段ユニット50が設けられている。すなわち、この階段設置スペース45に対応させて床ユニット30が設けられ、その床ユニット30上に階段ユニット50が設置されている。
【0047】
階段ユニット50は、一階部分14と二階部分15との間を行き来するための階段部を構成するものであり、予めユニット製造工場で製造されるものとなっている。具体的には、階段ユニット50は、直階段を構成するものとなっており、平面視において昇降方向(一方向)に延びる矩形形状をなしている。以下、この階段ユニット50の構成について図6に基づいて説明する。なお、図6は、階段ユニット50の構成を示す斜視図である。
【0048】
図6に示すように、階段ユニット50は、複数の踏板51と、その複数の踏板51の両端部を支持する一対の側板52と、各踏板51間に設けられる複数の蹴込み板53と、上下一対の支持部54,55とを備える。階段ユニット50は、その幅寸法が離し置きされたユニットセット24の間の離間距離L3と同じか又はそれよりも若干小さい寸法に設定されており、その平面視における長さ寸法(長手方向の長さ)が建物ユニット20(ユニットセット24)の短手方向の長さよりも長くなっている。
【0049】
各支持部54,55のうち、上側支持部54は、断面L字状をなす長尺状の鋼板により形成されている。上側支持部54は、最上段に配置された踏板51の下面側において一対の側板52の間に架け渡されており、その両端部がそれぞれ各側板52に対して固定されている。上側支持部54は、例えばアングルを介して側板52に固定されている。
【0050】
具体的には、上側支持部54は、最上段の踏板51の下面に当接された当接板部54aと、その当接板部54aにおける蹴込み板53側の端部から下方に延びる垂下板部54bとを有する。垂下板部54bには、厚み方向に貫通する複数の貫通孔部57が垂下板部54bの長手方向に沿って所定の間隔で設けられている。
【0051】
一方、下側支持部55は、平板状をなす長尺状の鋼板により形成されている。下側支持部55は、各側板52の下端部の間に架け渡されており、その長手方向の両端部がそれぞれ各側板52に固定されている。下側支持部55は、例えばアングルを介して側板52に固定されている。また、下側支持部55には、厚み方向に貫通する複数の貫通孔部55aが下側支持部55の長手方向に沿って所定の間隔で設けられている。
【0052】
次に、階段ユニット50の設置構成について図2(b)及び図3(b)に加えて図7に基づいて説明する。図7は階段ユニット50の設置構成を示しており、(a)が同構成を示す正面図、(b)が平面図である。
【0053】
図2(b)及び図3(b)に示すように、階段ユニット50は、吹き抜け空間17の階段設置スペース45において、その昇降方向を離し置きされたユニットセット24同士が対向する方向(ユニット対向方向)と直交する方向に向けて設置されている。この場合、階段ユニット50は、その階段上り口(階段下端側)を玄関スペース43の方に向けて配置されている。
【0054】
階段ユニット50は、図7(a)に示すように、その下端部が床ユニット30上に載置された状態で、かつ、その上端側が第2建物ユニット群X2において端部に位置するユニットセット24(詳細には図1(b)において紙面奥側のユニットセット24)の上階ユニット20bの床大梁23に引っ掛けられた状態で設置されている。階段ユニット50は、図7(b)に示すように、吹き抜け空間17を挟んで対向配置された間仕切壁38,39の間に設けられている。それらの間仕切壁38,39によって、同ユニット50により形成される昇降通路スペース46(吹き抜け空間17において階段ユニット50の上方空間)の側面が規定されている。
【0055】
間仕切壁38,39は、離し置きされた建物ユニット20(ユニットセット24)において互いに対向する各側面部に設けられる間仕切パネル49により構成されている。間仕切パネル49は石膏ボードを含んで構成されており、建物ユニット20の天井大梁22や床大梁23に固定されている。
【0056】
階段ユニット50を挟んだ両側の間仕切壁38a,38b(39a,39b)のうち一方の間仕切壁38a,39aには、手すり棒48が取り付けられている。手すり棒48は、階段ユニット50の昇降の際に用いられるものであり、階段ユニット50の昇降方向に沿って延びている。なお、手すり棒48は、階段ユニット50を挟んだ両側の間仕切壁38a,38b(39a,39b)のそれぞれに取り付けてもよい。
【0057】
続いて、階段ユニット50の支持構成について説明する。図8は階段ユニット50の下端部周辺の構成を示す断面図であり、図9は階段ユニット50の上端部周辺の構成を示す断面図である。
【0058】
図8に示すように、階段ユニット50は、その下端部に位置する下側支持部55が床ユニット30の床面材32上に載置された状態で同ユニット30に固定されている。下側支持部55は、床ユニット30の支持梁37の上方において同支持梁37に沿って配置されている。床面材32と支持梁37の上フランジ部37aとにはそれぞれ下側支持部55の貫通孔部55aに対応する位置に貫通孔部32a,37bが形成されており、支持梁37の上フランジ部37aの裏面には貫通孔部37bに対応する位置にナット58が溶接により固定されている。そして、それら各貫通孔部55a,32a,37bにはそれぞれボルト59が挿通されており、そのボルト59がナット58と締結されている。これにより、階段ユニット50の下端部が床ユニット30に固定されている。
【0059】
図9に示すように、階段ユニット50は、その上端側に位置する上側支持部54が上階ユニット20bの床大梁23上に引っ掛け支持された状態で同大梁23に固定されている。当該床大梁23(詳細にはその上フランジ部23b)の上面には、同大梁23に沿って根太61が設けられており、その根太61上にはパーティクルボードよりなる床面材62が設置されている。根太61は、床大梁23上においてその吹き抜け空間17側の端部が床大梁23のウェブ部23aに対して吹き抜け空間17とは反対側に位置するように配置されている。
【0060】
上側支持部54は、その当接板部54aが床大梁23(詳細にはその上フランジ部23b)の上面において根太61と隣接する位置に載置されている。かかる載置状態において、最上段の踏板51と床面材62とは互いの端面同士を当接させかつ互いの上面を略面一とした状態で配置されている。この場合、階段ユニット50の昇降通路スペース46(詳細にはその階段上り口)と上階ユニット20b内の二階居室U5とは連続している。
【0061】
上側支持部54は、その垂下板部54bが床大梁23のウェブ部23aの外側面に対してボルト65により固定されている。詳細には、床大梁23のウェブ部23aには、垂下板部54bの貫通孔部57に対応する位置に貫通孔部23cが形成されており、同ウェブ部23aの裏面には当該貫通孔部23cに対応させてナット64が溶接固定されている。そして、垂下板部54bの貫通孔部57と床大梁23(ウェブ部23a)の貫通孔部23cとにはそれぞれボルト65が挿通されており、そのボルト65がナット64と締結されている。これにより、上側支持部54が床大梁23に対して固定されている。
【0062】
階段ユニット50の設置構成に関して補足すると、同ユニット50は、その上端部が上階ユニット20bの床大梁23に支持され、かつ、その下端部が床ユニット30上に支持されているだけで、同ユニット50を挟んだ両側の間仕切壁38,39に対しては支持されてはいない。したがって、階段ユニット50を昇降する際に生じる騒音や振動が間仕切壁38,39を介して居室U1〜U4に伝わることを抑制することができる。
【0063】
なお、階段ユニット50は、間仕切壁38,39に接触した状態で配置してもよいし、非接触の状態で配置してもよい。ただ、階段ユニット50の昇降の際に生じる騒音や振動の伝達抑制の観点からすれば、非接触状態で配置することが望ましい。
【0064】
上記構成の階段ユニット50は、玄関口42を挿通可能な大きさで形成されている。したがって、施工時には、各建物ユニット20及び床ユニット30を基礎11上に設置した後、階段ユニット50を玄関口42を通じて吹き抜け空間17に運び入れることが可能となっている。具体的には、施工時には、各建物ユニット20及び床ユニット30を設置後、まず工事用の階段ユニットを玄関口42から吹き抜け空間17に運び入れ、同空間17に設置する。この工事用階段ユニットは、概ね階段ユニット50と同じ構成を有しているものであり、階段ユニット50と同じ固定構成で固定される。すなわち、工事用階段ユニットの上下端部がそれぞれ床ユニット30及び上階ユニット20bの床大梁23に固定される。そして、施工の際には、この工事用階段ユニットを用いて一階部分14と二階部分15との間を行き来しながら各階部14,15の内装工事等が行われる。
【0065】
内装工事等が終了した後、工事用階段ユニットが床ユニット30及び上階ユニット20bの床大梁23から取り外されて、工事用階段ユニットが玄関口42を通じて屋外に持ち出される。その後、階段ユニット50が玄関口42を通じて吹き抜け空間17に持ち運ばれて同空間17に設置される。これにより、一連の施工作業が終了する。
【0066】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0067】
上下階の建物ユニット20の組み合わせであるユニットセット24を互いに離し置きすることで、それら離し置きしたユニットセット24の間に吹き抜け空間17を形成し、その吹き抜け空間17に直階段を構成する階段ユニット50を設置した。この場合、かかる長尺状の階段ユニット50を建物ユニット20の外部に設置することができるため、階段ユニット50を建物ユニット20の梁や柱等による制約を受けることなく設置することができる。これにより、階段ユニット50の設置に関する自由度を高めることができる。
【0068】
また、階段ユニット50が建物ユニット20の外部に設置されることから、階段ユニット50が建物ユニット20内に設置される場合のように建物ユニット20内に中途半端な無駄スペースが発生することがない。また、階段ユニット50を、平面視にてその長手方向(昇降方向)が離し置きされたユニットセット24同士が対向するユニット対向方向と直交する方向に向くように配置した。すなわち、階段ユニット50を、その幅方向がユニット対向方向を向くように配置したため、ユニットセット24同士を階段ユニット50の幅に合わせて離し置きすることで、吹き抜け空間17において階段ユニット50の側方に無駄スペースが発生するのを回避することができる。これにより、建物内空間の有効利用を図ることができる。よって以上より、直階段よりなる階段ユニット50を設置するにあたって、階段ユニット50の設置に関する自由度を高めることができ、しかも建物内空間の有効利用を図ることができる。
【0069】
階段ユニット50を、その下端部に設けられた下側支持部55を床ユニット30上に載置させ、その上端側に設けられた上側支持部54を上階ユニット20bの床大梁23上に引っ掛け支持させた状態で設置した。この場合、階段ユニット50をその側面側で間仕切壁38,39により支持しなくても済むため、階段ユニット50を昇降する際の振動や騒音が間仕切壁38,39を介して一階居室U1,U2や二階居室U3,U4に伝わるのを抑制することができる。
【0070】
また、上側支持部54を上階ユニット20bの床大梁23に引っ掛け支持させるようにしたため、上側支持部54を引っ掛け支持するための階段支持梁を別途設ける必要がない。このため、構成の煩雑化を抑制しながら上記の効果を得ることができる。また、上階ユニット20bの床大梁23に上側支持部54を引っ掛け支持させたことで、二階部分15において階段ユニット50の階段下り口(階段上端の出入口)と上階ユニット20bの内部空間(ユニット内空間)とを連続させることができる。そのため、二階部分15において階段ユニット50の階段下り口と上階ユニット20b内とを連絡する床部を設けなくて済むため、この点においても構成の煩雑化を抑制することができる。
【0071】
第2建物ユニット群X2において、端部に位置するユニットセット24(以下、端部ユニットセット24という)のユニット対向方向の長さを、中間部に位置し離し置きされたユニットセット24(以下、中間ユニットセット24という)の同方向の長さよりも長くし、ユニット対向方向において端部ユニットセット24を中間ユニットセット24よりも吹き抜け空間17側に延出させ、その延出長さを吹き抜け空間17のユニット対向方向の長さ(すなわち吹き抜け空間17の幅)と同じとした。この場合、端部ユニットセット24の延出部が吹き抜け空間17に対してユニット対向方向と直交する方向に隣接して配置されるため、例えば階段ユニット50の階段下り口(階段上端の出入口)を延出部(詳細にはその内部の二階居室U5)に繋げることができ好都合である。また、端部ユニットセット24において中間ユニットセット24から延出した延出部の長さを吹き抜け空間17の幅と同じとするようにしたことで、吹き抜け空間17を階段ユニット50の幅に合わせて小幅に形成し易いという利点もある。
【0072】
離し置きされたユニットセット24において互いに対向する各側面部にそれぞれ間仕切壁38,39を設け、それら各間仕切壁38,39によって、階段ユニット50により形成される昇降通路スペース46の側面を規定したため、階段ユニット50に階段側壁を設ける必要がなく、階段ユニット50のサイズを小型化することが可能となる。これにより、施工の際、まず各建物ユニット20を設置して吹き抜け空間17を形成し、その後吹き抜け空間17に階段ユニット50を屋外側から玄関口42等を通じて運び入れることが可能となる。この場合、階段ユニット50を予め製造工場で製造し、施工現場ではその製造した階段ユニット50を吹き抜け空間17に設置するだけで済むため、施工工数の削減を図ることが可能となる。
【0073】
また、間仕切壁38,39を間仕切パネル49により形成し、その間仕切パネル49を製造工場にて建物ユニット20の側面に組み付けるようにしたため、間仕切壁38,39の設置作業を施工現場で行わなくても済む。換言すると、この場合階段ユニット50の階段側壁を構築する作業を施工現場で行わなくても済む。したがって、この点でも施工工数の削減を図ることができる。
【0074】
また、昇降通路スペース46の側面を規定する間仕切壁38a,39aに対して手すり棒48を取り付けたため、手すり棒48を支持する手すり子を不要とすることができる。これにより、部品点数削減やコスト削減等の効果を得ることができる。
【0075】
吹き抜け空間17をアルコーブ18と仕切る仕切壁41にそれら両空間17,18を連通する玄関口42を形成し、階段ユニット50をその玄関口42に挿通可能に形成した。これにより、階段ユニット50を予め製造工場で製造しておき、施工の際はまず建物ユニット20を設置して吹き抜け空間17を形成し、その後階段ユニット50を玄関口42を通じて吹き抜け空間17に運び入れ設置することが可能となる。これにより、施工現場(吹き抜け空間17)において階段ユニット50を組み立てたり、階段ユニット50を吹き抜け空間17に運び入れる際同ユニット50を一旦分解したりする等の作業をする必要がなく、施工工数の削減を図ることが可能となる。
【0076】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0077】
(1)隣り合うユニットセット24同士を互いの桁面(長辺側の側面)同士を対向させて離し置きし、その離し置きにより形成された吹き抜け空間に階段ユニット50を設置してもよい。また、隣り合うユニットセット24同士を一方のユニットセット24の桁面と他方のユニットセット24の妻面(短辺側の側面)とが対向する向きで離し置きし、その離し置きにより形成された吹き抜け空間に階段ユニット50を設置してもよい。
【0078】
(2)上記実施形態では、階段ユニット50の上側支持部54を上階ユニット20bの床大梁23上に引っ掛け支持させたが、これを変更して、上側支持部54を同床大梁23と対向配置された下階ユニット20aの天井大梁22上に引っ掛け支持させてもよい。この場合、上側支持部54を階段ユニット50において下階ユニット20aの天井大梁22の高さ位置に合わせて配置すればよい。
【0079】
また、上側支持部54は必ずしも建物ユニット20の大梁(天井大梁22や床大梁23)に引っ掛け支持させる必要はない。例えば離し置きされたユニットセット24の間に階段支持梁を一階部分14と二階部分15との境界高さ(階間部分)で架け渡し、その階段支持梁上に上側支持部54を引っ掛け支持させてもよい。階段支持梁は、例えば天井大梁22や床大梁23と同じ溝形鋼により長尺状に形成され、離し置きされた各ユニットセット24の上階ユニット20bの床大梁23間、又は、下階ユニット20aの天井大梁22間に架け渡される。かかる構成においても、階段ユニット50をその側面側で間仕切壁38,39により支持しなくても済むため、階段ユニット50を昇降する際の騒音や振動が間仕切壁38,39を介して居室U1〜U4に伝わるのを抑制することができる。また、この場合、階段支持梁の設置位置をユニット対向方向と直交する方向に調整することができるため、階段ユニット50の設置位置を同方向に自由に設定することが可能となる。このため、階段の設置プランに関して自由度を高めることができる。
【0080】
(3)上記実施形態では、吹き抜け空間17に床ユニット30を設置し、その床ユニット30上に階段ユニット50の下側支持部55を載置したが、吹き抜け空間17に床ユニット30を設置せず基礎11上に階段ユニット50の下側支持部55を載置してもよい。この場合、階段ユニット50の下方空間を土間空間として利用することが可能となる。なお、階段ユニット50の階段上り口(階段下端部)と玄関スペース43との間には床面材を離し置きされた下階ユニット20a間に架け渡す等して設置すればよい。
【0081】
(4)上記実施形態では、階段ユニット50を玄関口42に挿通可能に形成したが、階段ユニット50を玄関口42以外の建物開口部(屋内外を連通する開口部)に挿通可能に形成してもよい。例えば、階段ユニット50を建物開口部としての掃き出し窓に挿通可能に形成することが考えられる。
【0082】
(5)上記実施形態では、直階段よりなる階段ユニット50(階段部)に本発明を適用したが、平面視において長尺状でかつ矩形状をなす階段部であれば本発明を適用することができる。例えば、図10に示す階段部70は、その上端側で扇状をなす踏板71が並べられることで昇降方向が曲げられた階段となっているが、全体としては平面視において長尺状でかつ矩形状をなしている。かかる階段部70に対しても本発明を適用することが可能である。
【0083】
(6)一階部分14において吹き抜け空間17の全周に下階ユニット20aを配置して、吹き抜け空間17をそれら下階ユニット20aで囲んでもよい。例えば上記実施形態においてアルコーブ18を挟んで離し置きされた両下階ユニット20aのうちいずれか一方を長尺建物ユニット20Yにより構成し、当該下階ユニット20aをアルコーブ18の形成領域に跨がるようにして配置することが考えられる。
【0084】
(7)工事用階段ユニットを、その下端部を床ユニット30上に載置し、かつ、その上端側を床大梁23に引っ掛けるだけで設置するようにしてもよい。すなわち、工事用階段ユニットを床ユニット30及び床大梁23に対してボルト等で固定しない状態で設置するようにしてもよい。例えば、上階ユニット20bの床大梁23(詳細には上フランジ部23b)の上面に上方に突出する突出ピンを設け、工事用階段ユニットには最上段の踏板等にその突出ピンを挿通させる挿通孔部を設け、その挿通孔部に突出ピンを挿通させることで工事用階段ユニットを床大梁23に引っ掛け支持させることが考えられる。この場合、工事用階段ユニットを簡単に設置することができ、施工工数の削減が図れる。
【0085】
また、この場合、階段ユニット50の設置に際しても突出ピンを利用するようにしてもよい。例えば、上側支持部54の当接板部54aに挿通孔部を設け、その挿通孔部に突出ピンを挿通させるようにすることが考えられる。この場合、上側支持部54の当接板部54aを床大梁23上に載置した状態で垂下板部54bを床大梁23のウェブ部23aにボルト固定する際、上側支持部54(当接板部54a)が床大梁23上からずれ落ちないように手で押さえる必要がなく、固定作業を行う際の作業性向上が図れる。なお、この場合、突出ピンが、工事用階段ユニット及び階段ユニット50を床大梁23に連結するための連結手段に相当する。
【0086】
(8)上記実施形態では、一階部分14と二階部分15との間を連絡する階段部に本発明を適用したが、例えば3階建ての建物において二階部分と三階部分との間を連絡する階段に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0087】
10…建物、14…下階部としての一階部分、15…上階部としての二階部分、17…吹き抜け空間、20…建物ユニット、20a…下階ユニット、20b…上階ユニット、22…天井大梁、23…階段支持梁としての床大梁、24…ユニットセット、30…床ユニット、38,39…間仕切壁、42…建物開口部としての玄関口、50…階段部としての階段ユニット、54…引っ掛け部としての上側支持部、55…載置部としての下側支持部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10