特許第5970345号(P5970345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5970345
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】追抜き加工用金型及び追抜き加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/00 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   B21D28/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-247164(P2012-247164)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2014-94394(P2014-94394A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 茂
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−230920(JP,A)
【文献】 特開平07−275964(JP,A)
【文献】 特開2012−000631(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/093523(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチ金型とダイ金型とを備えた追抜き加工用金型であって、前記パンチ金型は、パンチ本体の下部に断面形状が長方形状のパンチ刃部を下方向へ突出して備え、前記ダイ金型は、前記パンチ刃部の断面形状に対応した長方形状のダイ孔を備えており、前記パンチ刃部の先端部に、上下方向の段差部を備えることによって突出剪断刃と予備成形剪断刃とを備え、前記予備成形剪断刃に、前記突出剪断刃によって剪断分離される分離位置を形成するための成形剪断刃を下方向に突出して備えていることを特徴とする追抜き加工用金型。
【請求項2】
請求項1に記載の追抜き加工用金型において、前記成形剪断刃は下方向へ突出した三角形状に形成してあり、前記三角形状部の頂角は鈍角であって前記突出剪断刃の下面よりも高位置に位置してあることを特徴とする追抜き加工用金型。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の追抜き加工用金型を使用しての追抜き加工方法であって、
(a)板状のワークから切断分離する部分を前記突出剪断刃に対応した位置に位置決めする工程、
(b)前記パンチ金型におけるパンチ刃部を前記ダイ金型におけるダイ孔に浅く係合して、前記切断分離する部分を切断分離する工程、
(c)上記(b)工程時に、パンチ金型における前記予備成形剪断刃に対応しワーク部分を半抜き加工すると共に下方向に突出した形状に成形する工程、
(d)前記半抜き加工された部分を前記突出剪断刃に対応した位置に位置決めし、下方向へ突出成形した部分を前記突出剪断刃によって剪断する工程、
(e)前記(b)工程〜(d)工程を複数回繰り返す工程、
(f)最終工程において、前記ダイ孔に対して前記パンチ刃部をより深く係合して前記予備成形剪断刃によってワークの切断分離を行う工程、
の各工程を備えていることを特徴とする追抜き加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状のワークに追抜き加工を行う追抜き加工用金型及び追抜き加工方法に係り、さらに詳細には、ワークの追抜き加工時にワークから切断分離された部分(スクラップ)を短く剪断することができる追抜き加工用金型及び追い抜き加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状のワークの追抜き加工を行うとき、ワークの打抜き加工を行う毎に、ワークの表面に微細な塑性変形が生じるので、外観向上において問題があった。そこで、パンチ刃部が傾斜したパンチを用いて、前記パンチ刃部の途中までの打抜き加工を繰り返すことにより、前記塑性変形の発生を抑制する追抜き加工方法が提案されている。
【0003】
上記追抜き加工方法においては、ワークから切断分離されてスクラップとなる部分が長く生じるという新たな問題がある。このような問題を解決するために、ワークの追抜き加工を行う度に生じたスクラップを短く切断する追抜き加工用金型が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−297053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の追抜き加工用金型は、図5に示すごとき構成である。すなわち、追抜き加工用金型は、パンチ101とダイ103とを備えている。前記パンチ101は断面形状が長方形状の刃部本体105を備えており、この刃部本体105の先端部(下端部)には、共に傾斜した打抜刃部105Aと切込刃部105Bとを備えている。そして、前記打抜刃部105Aと切込刃部105Bの幅寸法A,Bはほぼ等しい寸法であり、前記打抜刃部105Aと切込刃部105Bとの間には段差部107が形成してある。
【0006】
前記ダイ103は、前記パンチ101の打抜刃部105Aに対応した打抜用貫通孔103Aに隣合ってスリット状の切込用凹部103Bを備えている。上記切込用凹部103Bは、前記パンチ101の切込刃部105Bに対応する部分であるが、切込刃部105Bの幅寸法Bよりも十分に長く構成してある。そして、前記切込用凹部103Bの底壁109には、前記段差部107に対応する切断エッジ109Aを備えた構成である。
【0007】
前記構成において、図5(A)に示すように、ダイ103上にワークWを位置決めした後、図5(B)に示すように、パンチ101を下降してワークWの打抜き加工を行うと、パンチ101における打抜刃部105AによってスクラップS1が打抜かれ、切断エッジ109Aと段差部107との協働によって切断分離される。また、前記スクラップS1に連続した連続部分S2は、前記パンチ101の切込刃部105Bによって打抜かれるものの、ワークWから切断分離されることなく、ダイ103の切込用凹部103B内において傾斜した状態にある(図5(B),(C)参照)。
【0008】
その後、前記ワークWの連続部分S2がダイ103の打抜用貫通孔103Aに位置するようにワークWを移動した後(図5(D)参照)、パンチ101を下降してワークWの打抜き加工を行うことにより、新たなスクラップS1及び連続部分S2が加工されることになる(図5(E)参照)。すなわち、ワークWからスクラップS1、連続部分S2を次々に打抜くことを繰り返すことによって、ワークWの追抜き加工を行うものである。
【0009】
したがって、上記構成のパンチ101,ダイ103においては、図5(F)に示すように、最終工程に連続部分S2が残るという問題があると共に、ダイ103における切断用凹部103Bの底に、切断エッジ109Aを備えた底壁109を必要とするものであり、ダイ103の構成が複雑になる、という問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、パンチ金型とダイ金型とを備えた追抜き加工用金型であって、前記パンチ金型は、パンチ本体の下部に断面形状が長方形状のパンチ刃部を下方向へ突出して備え、前記ダイ金型は、前記パンチ刃部の断面形状に対応した長方形状のダイ孔を備えており、前記パンチ刃部の先端部に、上下方向の段差部を備えることによって突出剪断刃と予備成形剪断刃とを備え、前記予備成形剪断刃に、前記突出剪断刃によって剪断分離される分離位置を形成するための成形剪断刃を下方向に突出して備えていることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記追抜き加工用金型において、前記成形剪断刃は下方向へ突出した三角形状に形成してあり、前記三角形状部の頂角は鈍角であって前記突出剪断刃の下面よりも高位置に位置してあることを特徴とするものである。
【0012】
また、前記追抜き加工用金型を使用しての追抜き加工方法であって、板状のワークから切断分離する部分を前記突出剪断刃に対応した位置に位置決めする(a)工程と、前記パンチ金型におけるパンチ刃部を前記ダイ金型におけるダイ孔に浅く係合して、前記切断分離する部分を切断分離する(b)工程と、上記(b)工程時に、パンチ金型における前記予備成形剪断刃に対応しワーク部分を半抜き加工すると共に下方向に突出した形状に成形する(c)工程と、前記半抜き加工された部分を前記突出剪断刃に対応した位置に位置決めし、下方向へ突出成形した部分を前記突出剪断刃によって剪断する(d)工程と、前記(b)工程〜(d)工程を複数回繰り返す(e)工程と、最終工程において、前記ダイ孔に対して前記パンチ刃部をより深く係合して前記予備成形剪断刃によってワークの切断分離を行う(f)工程、の各工程を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パンチ金型とダイ金型との協働によって板状のワークに追抜き加工を行うとき、ワークから半抜き加工された部分の先端側をワークから切断分離することができ、スクラップを短く剪断することができると共に、最終工程においては、半抜き加工された部分を残すことなく加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】パンチ金型の構成を示す説明図である。
図2】ダイ金型の構成を示す説明図である。
図3】パンチ金型とダイ金型との協働による追抜き加工の作用説明図である。
図4】打抜き加工時に生じる微細な塑性変形発生位置の説明図である。
図5】従来のパンチ,ダイの構成及び作用の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照するに、本発明の実施形態に係るパンチ金型1は断面形状が円形状のパンチ本体(パンチボディ)3を備えている。このパンチ本体3は、例えばタレットパンチプレスなどのパンチプレスにおける上型ホルダ(例えば上部タレット)に装着される上金型における筒状のパンチガイド内に上下動自在に嵌合されるものである。なお、上記上金型の構成はよく知られた構成であるから、理解を容易にするために、上金型の全体的な構成の説明は省略し、主要な構成のみについて説明することとする。
【0016】
前記パンチ本体3の下部中央部には、断面形状が長方形状でパンチ本体3の径方向に長いパンチ刃部5が下方向へ突出して備えられている。そして、このパンチ刃部5の先端部(下端部)には、上下方向の段差部7をほぼ中央部に備えることによって下方向へ突出した突出剪断刃9と予備成形剪断刃11とが区画して備えられている。
【0017】
前記突出剪断刃9の下面9Fは、前記段差部7側が低くなるように僅かに傾斜してあって、前記段差部7と下面9Fとが交差した角部9Cの角度は90°以下の鋭角に形成してある。そして、段差部7は、図1(B)に示すように、ほぼ円弧状の曲面に形成してある。なお、前記角部9Cの角度は90°であってもよいものである。前記予備成形剪断刃11は、前記段差部7から離反した位置に、下方向に突出した二等辺三角形状の成形剪断刃13が備えられている。この成形剪断刃13の最下端部の頂点13Tは前記突出剪断刃9の下面9Fよりも高位置に位置してあり、上記頂点13Tの頂角は鈍角に形成してある。
【0018】
前記パンチ金型1と協働してワークWの追抜き加工を行うダイ金型15は、図2に示すように、円盤形状のダイ本体17を備えており、このダイ本体17の上面には、前記パンチ刃部5の断面形状に対応した長方形状のダイ孔19が備えられている。
【0019】
以上のごとき構成において、ダイ本体17上に板状のワークWを載置位置決めした後、パンチ本体3を下降してダイ本体17のダイ孔19内に突出剪断刃9を挿入し係合すると、図3(A)に示すように、スクラップSがワークWから剪断分離される。そして、前記成形剪断刃13の頂点13TがワークWの下面にほぼ一致した位置でパンチ本体3の下降を停止する(すなわちダイ孔19にパンチ刃部5を浅く係合する)と、前記成形剪断刃13によって下方向へ突出した三角形状の突出成形部21が形成されることになる。
【0020】
前記突出成形部21において、前記成形剪断刃13における頂点13Tに対応した頂部21Tを間にした両側の傾斜面部21Sは、半抜き加工された部分であってワークWから切断分離されることなくワークWと接続した関係にある。そして、前記突出成形部21は、成形加工を受けることによって加工硬化を生じた状態にある。
【0021】
ところで、前述のごとく、突出剪断刃9によってスクラップSを打抜き加工するとき、上記スクラップSとなる部分の周囲はワークWと一体である。
【0022】
そして、パンチ刃部5における突出剪断刃9の段差部7に対応する部分以外の3方向は、ダイ本体17におけるダイ孔19の周縁部によって支持された状態にあり、剛性が大きいので、前述した従来の切断エッジ109Aに相当する構成がない場合であってもスクラップSの部分を切断分離できるものである。
【0023】
ところで、前述のごとく、初回にスクラップSを打抜くとき、前記突出剪断刃9の角部9E(図4参照)でワークWの打抜きを行うことになる。上記角部9Eで打抜き加工された部分に近接したワークの表面には、微細な塑性変形部分23(図4参照)が生じることになる。しかし、前記突出剪断刃9における前記段差部7は、ほぼ円弧状の曲面に形成してあって角部が存在しないので、前記段差部7によって打抜き加工される部分には、前述した塑性変形部分23を生じることはないものである。
【0024】
前述のごとく、初回のスクラップSを打抜き加工した後、前記突出成形部21における頂部21Tが前記パンチ刃部5における段差部7に対応するように位置決めする。その後、パンチ本体3を下降すると、図3(B)に示すように、前記突出剪断刃9に対応した部分が次のスクラップS1として切断分離されると共に、前記成形剪断刃13に対応した部分が次の突出成形部21として下方向へ突出成形されることになる。
【0025】
前述のごとく、スクラップS1となる部分をワークWから切断分離するとき、予め突出成形された突出成形部21はワークWに対して半抜き加工された部分であって、前記突出成形部21における頂部21Tの両側は予め傾斜面21Sに形成してあるので、塑性変形部分23Eを生じることなく切断分離することができるものである。この際、前記突出成形部21はワークWに接続した状態にあり、かつ加工硬化した状態にあるので、パンチ刃部5の段差部7に対応した部分の剛性は保持されており、初期のスクラップSと同様にスクラップS1の切断分離を行うことができるものである。
【0026】
前述のごとく、次のスクラップS1を切断分離すると共に、突出成形部21を形成することを複数回繰り返すことにより、ワークWに塑性変形部分23を生じることなく追抜き加工が行われることになる。そして、最終工程においては、図3(C)に示すように、パンチ刃部5における前記成形剪断刃13がダイ本体17のダイ孔19に深く入り込むように係合することにより、スクラップS1と同時に別個のスクラップS2がワークWから切断分離されることになる。この際、予備成形剪断刃11における前記成形剪断刃13の角部に対応した部分には、図4に示すように、微小の塑性変形部分23を生じることになる。
【0027】
以上のごとき説明より理解されるように、ワークWに追い抜き加工を行うとき、生じるスクラップS、S1、S2を短くすることができる。また、ワークWの打抜き加工を行うとき、微小の塑性変形部分23は、ワークWに対する初期の打抜き加工時と最終工程の打抜き加工時であって、追抜き加工の途中には前記塑性変形部分23を生じるようなことがなく、外観の向上を図ることができるものである。
【0028】
また、ダイ金型15は、パンチ金型1におけるパンチ刃部5の断面形状に対応したダイ孔19を備えていればよいものであり、ダイ金型15の構成の簡素化を図ることができるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 パンチ金型
3 パンチ本体(パンチボディ)
5 パンチ刃部
7 段差部
9 突出剪断刃
11 予備成形剪断刃
13 成形剪断刃
15 ダイ金型
17 ダイ本体
19 ダイ孔
21 突出成形部
図1
図2
図3
図4
図5